(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【実施例1】
【0014】
図1は、第1の実施形態における電力変換装置の構成図である。本実施形態における電力変換装置はスイッチング電源装置1で構成される。スイッチング電源装置1の入力端子19は、高圧バッテリ16の正極17に接続される。スイッチング電源装置1の入力端子20は、高圧バッテリ16の負極18に接続される。
【0015】
入力コンデンサ21は、入力端子19、20に接続される。
【0016】
スイッチング電源装置1の入力端子19には、共通スイッチングレッグ2の一方の端子2aと、第一のスイッチングレッグ3の一方の端子3aと、第二のスイッチングレッグ4の一方の端子4aとが並列に接続される。スイッチング電源装置1の入力端子20には、共通スイッチングレッグ2の他方の端子2bと、第一のスイッチングレッグ3の他方の端子3bと、第二のスイッチングレッグ4の他方の端子4bとが並列に接続されている。
【0017】
共通スイッチングレッグ2、第一のスイッチングレッグ3、および第二のスイッチングレッグ4はそれぞれ、直列に接続されたMOSFETを有する。なお、本実施例ではMOSFETを使用しているが、IGBTなどのスイッチング素子を用いても良い。
【0018】
共通スイッチングレッグ2の中点2cは、第一のトランス5の一次巻線の一方の端子5aと、第二のトランス6の一次巻線の一方の端子6aに接続される。第一のスイッチングレッグ3の中点3cは、第一のトランス5の一次巻線の他方の端子5bに接続される。第二のスイッチングレッグ4の中点4cは、第二のトランス6の一次巻線の他方の端子6bに接続される。
【0019】
第一のトランス5は、ダイオードからなる整流回路7に接続される。整流回路7は、チョークコイルと平滑コンデンサからなる平滑回路9に接続される。平滑回路9の一方の端子9aは、接続端子22に接続される。平滑回路9の他方の端子9bは、接続端子23に接続される。第二のトランス6は、ダイオードからなる整流回路8に接続される。整流回路8は、チョークコイルと平滑コンデンサからなる平滑回路10に接続される。平滑回路10の一方の端子10aは、接続端子22に接続される。平滑回路10の他方の端子10bは、接続端子23に接続される。
【0020】
出力コンデンサ11は、出力端子24、25に接続される。スイッチング電源装置1は、接続端子22と出力端子24が接続される。接続端子23と出力端子25の間には、出力電流を検値する電流検出器12が接続される。負荷13の一方の端子14は、出力端子24に接続される。負荷13の他方の端子15は、出力端子25に接続される。
【0021】
スイッチング電源装置1は、制御回路26とを備える。制御回路26は、共通スイッチングレッグ2と、第一のスイッチングレッグ3と、第二のスイッチングレッグ4の動作を制御する。
【0022】
図1で説明した本実施形態では、第一のトランス5および第二のトランス6はセンタータップ方式を採用しているが、カレントダブラ方式やその他方式を使用しても良い。また、整流回路7、8はダイオード整流を用いているが、MOSFETを使用した同期整流方式などのその他整流方式を用いても良い。また、スイッチング電源装置1は、接続端子22と出力端子24が接続され、出力電流を検値する電流検出器12が接続端子23と出力端子25の間に接続されているが、接続端子23と出力端子25が接続され、出力電流を検値する電流検出器12が接続端子22と出力端子24の間に接続されても良い。また、第一のトランス5と第二のトランス6の巻き数比は互いに等しければ、巻数が異なっていても良い。
【0023】
制御回路26は、出力コンデンサ11の出力電圧および電流検出器12で検出した出力電流を監視している。制御回路26は、検出した出力電流に基づいて、出力電圧が所定の値となるように、スイッチング電源装置1の共通スイッチングレッグ2と、第一のスイッチングレッグ3と、第二のスイッチングレッグ4の動作を制御する。ここで、スイッチング電源装置1の入力端子19、20との間の(入力)電圧をVin、出力端子24、25との間の(出力)電圧をVoとし、電流検出器12で検出した出力電流をIoとし、出力電流の最大値をIomaxと定義する。
【0024】
スイッチング電源装置1には、2つのモードが存在する。一つ目は、負荷が大きい重負荷モードである。もう一方は、負荷が小さい軽負荷モードである。ここで、制御の動作モードを変更する電流値をIcとする。Icの条件は、Icの値がIomaxよりも小さいことである(Ic<Iomax)。Icの値の決定方法は、重負荷モードと軽負荷モードにおけるスイッチング電源装置1の変換効率が等しくなる出力電流値とするなどが可能であり、任意に定めることができる。以下では、重負荷モードと軽負荷モードの詳細を説明する。なお、以下では入力端子20の電位が零である場合を記載しているが、入力端子20の電位が零でない場合は、上記の各電位に入力端子20の電位が加算される。
【0025】
IoがIcよりも大きく、かつIoがIomaxよりも小さい状態(Ic<Io<Iomax)においては、以下で説明する重負荷モードで制御を実行する。
【0026】
図2は、重負荷モードにおけるゲート信号波形とトランス印加電圧を示す図である。
図2のゲート信号波形は、各スイッチングレッグを構成するスイッチング素子のうち、スイッチング電源装置1の入力端子19側に接続されるスイッチング素子に印加されるゲート電圧を示している。なお、入力端子20側に接続されるスイッチング素子に印加されるゲート信号波形は、
図2に示されるゲート信号を反転した波形となる。以下特に断らない限り、他の実施形態においても同様とする。
【0027】
制御回路26は、出力コンデンサ11の出力電圧および電流検出器12で検出した出力電流を監視している。重負荷モードでは、出力電圧が所定の値となるように、スイッチング電源装置1の共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオンとなる時間を基準に、第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオンとなる時間Tφ3及び第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンとなる時間Tφ4を制御する。時間Tφ3を制御することで、第一のトランス5への入力電圧の印加時間を制御する。また、Tφ4を制御することで、第二のトランス6への入力電圧の印加時間を制御する。このとき、共通スイッチングレッグ2と、第一のスイッチングレッグ3と、第二のスイッチングレッグ4のスイッチング周期をTとすると、第一のトランス5への印加電圧VT5は下記の(1)式で表され、第二のトランス6への印加電圧VT6は(2)式で表される。
【0028】
【数1】
【0029】
【数2】
【0030】
図3(a)乃至
図3(d)を用いて重負荷モードにおける動作を記載する。
図3(a)乃至
図3(d)はそれぞれ、
図2中の期間A乃至Dにおける動作パターンに対応して、高圧バッテリ側の回路を流れる電流を図示したものである。
【0031】
図3(a)は、
図2のAの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図2の期間Aにおいては、共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオンであり、第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオフであり、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオフである。そのため、共通スイッチングレッグ2の中点2cの電位はVinであり、第一のスイッチングレッグ3の中点3cの電位は零であり、第二のスイッチングレッグ4の中点4cの電位は零である。したがって、第一のトランス5への印加電圧VT5はVinとなり、第二のトランス6への印加電圧VT6はVinとなる。
【0032】
このとき、入力端子19から共通スイッチングレッグ2に流れる電流は、共通スイッチングレッグの中点2cから第一のトランス5及び第二のトランス6へ流れる。第一のトランス5に流れた電流は、第一のスイッチングレッグ3の中点3cから入力端子20へと流れる。第一のトランス6に流れた電流は、第二のスイッチングレッグ4の中点4cから入力端子20へと流れる。
【0033】
図3(b)は、
図2のBの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図2の期間Bにおいては、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6は零となる。
【0034】
まず、共通スイッチングレッグの中点2cから第一のトランス5及び第二のトランス6へと流れる。第一のトランス5に流れた電流は、第一のスイッチングレッグ3の中点3cから共通スイッチングレッグ2の一方の端子2aへと流れる。第二のトランス6に流れた電流は、第二のスイッチングレッグ4の中点4cから共通スイッチングレッグ2の一方の端子2aへと流れる。その後、第一のトランス5の漏れインダクタンスと、第二のトランス6の漏れインダクタンスにより、
図3(b)に示すように、電流経路の向きが逆となる。
【0035】
図3(c)は、
図2のCの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図2の期間Cにおいては、第一のトランス5への印加電圧VT5はVinとなり、第二のトランス6への印加電圧VT6はVinとなる。
【0036】
このとき、入力端子19から流れる電流は、第一のスイッチングレッグ3及び第二のスイッチングレッグ4に流れる。電流は、第一のスイッチングレッグ3の中点3cから、第一のトランス5を経由して、共通スイッチングレッグ2の中点2cへと流れる。また、電流は、第二のスイッチングレッグ4の中点4cから、第二のトランス6を経由して、共通スイッチングレッグ2の中点2cへと流れる。
【0037】
図3(d)は、
図2のDの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図2の期間Dにおいては、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6は零となる。
【0038】
まず、共通スイッチングレッグ2の他方の端子2bから、第一のスイッチングレッグ3及び第二のスイッチングレッグ4へと電流が流れる。第一のスイッチングレッグ3の中点3cからの電流は、第一のトランス5へと流れる。第二のスイッチングレッグ4の中点4cからの電流は、第二のトランス6へと流れる。第一のトランス5及び第二のトランス6を流れた電流は、共通スイッチングレッグ2の中点2cへと流れる。その後、
図3(d)に示すように、電流経路の向きが逆となる。
【0039】
IoがIcよりも小さく、かつIoが零よりも大きい状態(0<Io<Ic)においては、以下で説明する軽負荷モードで制御を実行する。
【0040】
図4は、軽負荷モードにおけるゲート信号波形とトランス印加電圧を示す図である。
図2と同様、
図4のゲート信号波形は、各スイッチングレッグを構成するスイッチング素子のうち、スイッチング電源装置1の入力端子19側に接続されるスイッチング素子に印加されるゲート電圧を示している。
【0041】
制御回路26は、軽負荷モードでは、スイッチング電源装置1の共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオンとなる時間を基準に、第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオンとなる時間Tφ3を零とする。また、出力電圧が所定の値となるように、スイッチング電源装置1の共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオンとなる時間を基準に、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンとなる時間Tφ4を制御する。Tφ3が零であるため、第一のトランス5への入力電圧の印加時間は零である。また、Tφ4を制御することで、第二のトランス6への入力電圧の印加時間が制御される。このとき、共通スイッチングレッグ2と、第一のスイッチングレッグ3と、第二のスイッチングレッグ4のスイッチング周期をTとすると、第一のトランス5への印加電圧VT5は下記の(3)式で表され、第二のトランス6への印加電圧VT6は(4)式で表される。
【0042】
【数3】
【0043】
【数4】
【0044】
図5(a)乃至
図5(d)を用いて軽負荷モードにおける動作を記載する。
図5(a)乃至
図5(d)はそれぞれ、
図4中の期間A乃至Dにおける動作パターンに対応して、高圧バッテリ側の回路を流れる電流を図示したものである。
【0045】
図5(a)は、
図4のAの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図4の期間Aにおいては、共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオンであり、第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオンであり、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオフである。そのため、共通スイッチングレッグ2の中点2Cの電位はVinであり、第一のスイッチングレッグ3の中点3cの電位はVinであり、第二のスイッチングレッグ4の中点4c電位は零となる。したがって、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6はVinとなる。
【0046】
このとき、電流は、入力端子19から共通スイッチングレッグ2及び第一のスイッチングレッグ3に流れる。共通スイッチングレッグ2を流れた電流は、共通スイッチング電流2の中点2cから第二のトランス6へと流れる。第一のスイッチングレッグ3を流れた電流は、第一のスイッチングレッグ3の中点3cから、第一のトランス5を経由して、第二のトランス6へと流れる。第二のトランスを流れた電流は、第二のスイッチングレッグの入力端子20側のスイッチング素子を通って、入力端子20へと流れる。
【0047】
図5(b)は、
図4のBの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図2の期間Bにおいては、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6は零となる。
【0048】
まず、電流は、第二のスイッチングレッグの一方の端子4aから共通スイッチングレッグ2及び第一のスイッチングレッグ3に流れる。共通スイッチングレッグ2を流れた電流は、共通スイッチング電流2の中点2cから第二のトランス6へと流れる。第一のスイッチングレッグ3を流れた電流は、第一のスイッチングレッグ3の中点3cから、第一のトランス5を経由して、第二のトランス6へと流れる。第二のトランスを流れた電流は、第二のスイッチングレッグの入力端子19側のスイッチング素子を通って、共通スイッチングレッグ2の一方の端子2aおよび第一のスイッチングレッグの一方の端子3aへと流れる。その後、
図5(b)に示すように、電流経路の向きが逆となる。
【0049】
図5(c)は、
図4のCの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図4の期間Cにおいては、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6はVinとなる。
【0050】
このとき、第二のスイッチングレッグ4から第二のトランス6に流れた電流は、共通スイッチングレッグ2の中点2cへと流れる。また、第二のスイッチングレッグ4から第二のトランス6に流れた電流は、第一のトランス5を経由して第一のスイッチングレッグの中点3cへと流れる。そして電流は、共通スイッチングレッグ2および第一のスイッチングレッグ3の入力端子20側のスイッチング素子を経由して入力端子20へと流れる。
【0051】
図5(d)は、
図4のDの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図4の期間Dにおいては、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6は零となる。
【0052】
まず、共通スイッチングレッグ2および第一のスイッチングレッグ3の入力端子20側のスイッチング素子を流れる電流は、第二のスイッチングレッグ4の他方の端子4bへと流れる。電流は、第二のスイッチングレッグ4の中点4cから第二のトランス6を流れる。第二のトランス6を流れた電流は、共通スイッチングレッグ2の中点2cへと流れるとともに、第一のトランス5を経由して第一のスイッチングレッグ3の中点3cへと流れる。その後、
図5(d)に示すように、電流経路の向きが逆となる。
【0053】
なお、上述した本実施形態では、スイッチング電源装置1の共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオンとなる時間を基準に、第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオンとなる時間Tφ3を零としたが、零とするスイッチングレッグはどちらでも良く、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンとなる時間Tφ4を零としてもよい。また、位相差を零とする順番も不定で良い。例えば、位相差を零とするスイッチングレッグを常に第一のスイッチングレッグ3としても良いし、位相差を零とするスイッチングレッグを交互にしても良い。
【0054】
本実施形態に係る電力変換装置によれば、共通スイッチングレッグ1を設け、共通スイッチングレッグ2のゲート信号と第一のスイッチングレッグ3のゲート信号の位相差および共通スイッチングレッグ2のゲート信号と第二のスイッチングレッグ4のゲート信号の位相差を制御することにより、重負荷モード(Ic<Io<Iomax)では、第一のトランス5と第二のトランス6に入力電圧が印加され、並列動作により、スイッチング電源装置1の銅損が低減することができる。また、軽負荷モード(0<Io<Ic)では、第一のトランス5の印加電圧が零となり、スイッチング電源装置1の固定損を低減することが可能である。つまり、スイッチング電源装置1の全負荷領域において、変換効率を向上することが可能となる。さらに、共通スイッチングレッグ1を設けることで、スイッチング素子の個数を削減することが可能であり、スイッチング電源装置のサイズおよびコストを削減することが可能となる。
【0055】
図6は、入力電圧Vinが400V、出力電圧Voが14V、Iomaxが150Aとした場合における、本実施形態の電力変換装置の出力電流Ioと変換効率の関係図である。図中で、軽負荷モードにおける変換効率は破線で表わされ、重負荷モードにおける変換効率は実線で表わされる。ここでは、重負荷モードにおける変換効率と低負荷モードにおける変換効率とが等しくなる出力電流値として、Icを75Aとしている。出力電流値Ioが75A<Io<150Aとなる領域では重負荷モードとすることで、並列接続されたスイッチング電源装置1が駆動するため、高効率を維持している。また、出力電流値Ioが0A<Io<75Aとなる領域では軽負荷モードとして、一方のトランスへの印加電圧を零とすることで、当該トランスの鉄損が零となり、重負荷モードより高効率となる。
【実施例2】
【0056】
図7は、第2の実施形態に係る電力変換装置の構成図である。本実施例の電力変換装置は、追加する素子を除き、実施例1と同様である。追加される素子は、第一のトランス5の温度を検出する温度検出器27および第二のトランス6の温度を検出する温度検出器28である。制御回路26は温度検出器27、28の値を監視している。その他の構成については、説明を省略する。
【0057】
本実施形態においては、重負荷モードから軽負荷モードに移行する際に、共通スイッチングレッグ2との位相差を零とするスイッチングレッグを、温度検出器27、28の検出温度により決定する。温度検出器27で検出した温度をT1、温度検出器28で検出した温度をT2とする。
【0058】
図8は、重負荷モードから軽負荷モードへ移行する際の温度条件と、軽負荷モードにおける共通スイッチングレッグ2、第一のスイッチングレッグ3、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号波形を表す図である。
【0059】
温度検出器27で検出した温度T1が温度検出器28で検出した温度T2より大きい場合(T1>T2)、第一のトランス5への印加電圧を零とする軽負荷モード1とする。つまり、共通スイッチングレッグ2のゲート信号と、第一のスイッチングレッグ3のゲート信号との位相差を零とする。
【0060】
一方、温度検出器27で検出した温度T1が温度検出器28で検出した温度T2より小さい場合(T1<T2)、第二のトランス6への印加電圧を零とする軽負荷モード2とする。つまり、共通スイッチングレッグ2のゲート信号と第二のスイッチングレッグ4のゲート信号の位相差を零とする。
【0061】
なお、温度条件は逆でも良い。温度検出器27で検出した温度T1が温度検出器28で検出した温度T2より小さい場合(T1<T2)に、軽負荷モード1とし、温度検出器27で検出した温度T1が温度検出器28で検出した温度T2より大きい場合(T1>T2)に、軽負荷モード2としてもよい。
【0062】
なお、上述した本実施形態では、第一のトランス5と第二のトランス6の温度検出を行い、動作モード切り替えスイッチングレッグの選択を行ったが、温度検出を行う素子はトランス以外でも良い。例えば、第一のスイッチングレッグ3と第二のスイッチングレッグ4でも良い。また、整流回路7、8でも良い。また、平滑回路9、10でも良い。
【0063】
本実施形態に係る電力変換装置によれば、温度検出器27、28より第一のトランス5の温度T1および第二のトランス6の温度T2を検出し、その検出した温度の大小により、共通スイッチングレッグ2のゲート信号との位相差を零とするスイッチングレッグを選択することが可能となる。つまり、軽負荷モード時に温度環境の厳しいトランスや整流回路、平滑回路を停止させることが可能となるため、素子の温度環境を緩和することが可能となり、スイッチング電源装置1の素子の長寿命化が可能となる。つまり、スイッチング電源装置1の信頼性を高めることが可能となる。
【実施例3】
【0064】
図9は、第3の実施形態に係る電力変換装置の構成図である。本実施例の電力変換装置は、追加する素子を除き、実施例1と同様である。追加される素子は、平滑回路9に流れる電流を検出する電流検出器29および平滑回路10に流れる電流を検出する電流検出器30である。制御回路26は、電流検出器29、30の値を監視している。その他の構成については、説明を省略する。
【0065】
ここで、平滑回路9に流れる電流量をI1、平滑回路10に流れる電流量をI2とする。I1とI2の合計は、出力電流Ioとなる(I1+I2=Io)。本実施形態に係る制御回路26は、共通スイッチングレッグ2のゲート信号と第一のスイッチングレッグ3のゲート信号の位相差をI1の値に基づいて制御する。また、共通スイッチングレッグ2のゲート信号と第二のスイッチングレッグ4のゲート信号の位相差をI2の値に基づいて制御する。平滑回路9に流れる電流量I1と、平滑回路10に流れる電流量I2を等しくしても良く、平滑回路9に流れる電流量I1と、平滑回路10に流れる電流量I2を等しくしなくても良い。
【0066】
電流検出器29、30を用いる場合、電流検出器12の省略が可能である。その場合、実施例1および実施例2における出力電流値Ioを、平滑回路9に流れる電流量I1と平滑回路10に流れる電流量I2の合計電流として制御を行えば良い。
【0067】
スイッチング電源装置1の出力電流のアンバランスは主に、第一のスイッチングレッグ3と第二のスイッチングレッグ4の素子ばらつき、整流回路7、8の素子ばらつき、平滑回路9、10の素子ばらつきや、スイッチング電源装置1の配線ばらつきにより生じる。特に重負荷モードでは、出力電流量も大きく、電流アンバランスが大きくなると、素子破壊などが生じてしまい、スイッチング電源装置の信頼性を低下させてしまう恐れがある。
【0068】
本実施形態に係る電力変換装置によれば、重負荷モードにおいて、共通スイッチングレッグ2のゲート信号との位相差をI1の値に基づいて制御し、共通スイッチングレッグ2のゲート信号と第二のスイッチングレッグ4のゲート信号の位相差をI2の値に基づいて制御することが可能である。つまり、平滑回路9に流れる電流量I1と、平滑回路10に流れる電流量I2を等しくする制御を行った場合、第一のスイッチングレッグ3と第二のスイッチングレッグ4の素子ばらつき、整流回路7、8の素子ばらつき、平滑回路9、10の素子ばらつきや、スイッチング電源装置1の配線ばらつきにより生じる電流アンバランスを抑制することが可能となる。従って、スイッチング電源装置1の素子の電流集中を抑制することが可能となり、スイッチング電源装置1の素子の長寿命化が可能となる。つまり、スイッチング電源装置1の信頼性を高めることが可能となる。
【実施例4】
【0069】
図10は、第4の実施形態に係る電力変換装置の構成図である。本実施例の電力変換装置は、追加する素子を除き、実施例1乃至実施例3と同様である。追加される素子は、共通スイッチング素子2の中点2cに接続する電流検出器31と、第一のスイッチングレッグ3の中点3cに接続する電流検出器32と、第二のスイッチングレッグ4の中点4cに接続する電流検出器33である。制御回路26は、電流検出器31、32、33の値を監視している。なお、電流検出器31、32、33は、共通スイッチング素子2と、第一のスイッチングレッグ3と、第二のスイッチングレッグ4の開放故障を検出できる検出装置としても良い。その他の構成については、説明を省略する。
【0070】
本実施例の構成においては、開放故障時においてもスイッチング電源装置1を動作させることが可能である。以下にその動作を説明する。まず、共通スイッチングレッグ2が開放故障した場合について説明する。
【0071】
図11は、共通スイッチングレッグ2が開放故障した場合におけるゲート信号波形及びトランス印加電圧波形である。共通スイッチングレッグ2が開放故障した場合、電流検出器31が異常を検出し、制御回路26へ異常検出信号を送る。異常検出信号を受け取った場合、制御回路26は、直ちに共通スイッチングレッグ2の動作を停止させる。共通スイッチングレッグ2の停止後は、第一のスイッチングレッグ3と第二のスイッチングレッグ4でスイッチング電源装置1を動作させる。共通スイッチングレッグ2が開放故障しているため、ゲート信号は常にオフとする。
【0072】
制御回路26は、出力電圧が所定の値となるように、スイッチング電源装置1の第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオンとなる時間を基準に、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンとなる時間Tφ4を制御する。時間Tφ4を制御することで、第一のトランス5および第二のトランス6への入力電圧の印加時間が制御される。このとき、第一のスイッチングレッグ3及び第二のスイッチングレッグ4のスイッチング周期をTとすると、第一のトランス5への印加電圧VT5および第二のトランス6への印加電圧VT6は、下記の(5)式で表される。
【0073】
【数5】
【0074】
図12(a)及至
図12(d)を用いて、共通スイッチングレッグ2が開放故障時における動作を記載する。
図12(a)乃至
図12(d)はそれぞれ、
図11中の期間A乃至Dにおける動作パターンに対応して、高圧バッテリ側の回路を流れる電流を図示したものである。
【0075】
図12(a)は、
図11のAの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図11の期間Aにおいては、第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオンであり、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオフである。そのため、第一のスイッチングレッグ3の中点3cの電位はVinであり、第二のスイッチングレッグ4の中点4cの電位は零である。第一のトランス5と第二のトランス6が直列に接続されているため、第一のトランス5への印加電圧VT5はVin/2となり、第二のトランス6への印加電圧VT6はVin/2となる。
【0076】
このとき、スイッチング電源装置1の電流経路は、入力端子19から、第一のスイッチングレッグ3の一方の端子3a、第一のスイッチングレッグ3の中点3c、第一のトランス5、第二のトランス6、第二のスイッチングレッグ4の中点4c、第二のスイッチングレッグ4の他方の端子4b、共通スイッチングレッグ2の他方の端子2b、入力端子20へと順に流れる。
【0077】
図12(b)は、
図11のBの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図11の期間Bにおいては、第一のスイッチングレッグ3及び第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンである。そのため、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6は零となる。
【0078】
まず、スイッチング電源装置1の電流経路は、第一のスイッチングレッグ3の一方の端子3aから、第一のスイッチングレッグ3の中点3c、第一のトランス5、第二のトランス6、第二のスイッチングレッグ4の中点4c、第二のスイッチングレッグ4の一方の端子4a、第一のスイッチングレッグ3の一方の端子3aへと順に流れる。その後、
図12(b)に示すように、電流経路の向きが逆となる。
【0079】
図12(c)は、
図11のCの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図11の期間Cにおいては、第一のスイッチングレッグ3の中点3cの電位は零であり、第二のスイッチングレッグ4の中点4cの電位はVinとなる。そのため、第一のトランス5への印加電圧VT5はVin/2となり、第二のトランス6への印加電圧VT6はVin/2となる。
【0080】
このとき、スイッチング電源装置1の電流経路は、入力端子19から、第二のスイッチングレッグ4の一方の端子4a、第二のスイッチングレッグ4の中点4c、第二のトランス6、第一のトランス5、第一のスイッチングレッグ3の中点3c、第一のスイッチングレッグ3の他方の端子3b、入力端子20へと順に流れる。
【0081】
図12(d)は、
図11のDの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図11の期間Dにおいては、第一のスイッチングレッグ3及び第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオフである。そのため、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6は零となる。
【0082】
まず、スイッチング電源装置1の電流経路は、第一のスイッチングレッグ3の他方の端子3bから、第二のスイッチングレッグ4の他方の端子4b、第二のスイッチングレッグ4の中点4cへ流れ、第二のトランス6、第一のトランス6、第一のスイッチングレッグ3の中点3c、第一のスイッチングレッグ3の他方の端子3bへと順に流れる。その後、
図12(d)に示すように、電流経路の向きが逆となる。
【0083】
なお、上述した本実施形態では、スイッチング電源装置1の第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオンとなる時間を基準に、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンとなる時間Tφ4を制御する回路動作を説明したが、スイッチング電源装置1の第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンとなる時間を基準に、第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオンとなる時間Tφ3を制御するとしても良い。
【0084】
続いて、第一のスイッチングレッグ3が開放故障した場合について説明する。
図13は、第一のスイッチングレッグ3が開放故障した場合におけるゲート信号波形及びトランス印加電圧波形である。第一のスイッチングレッグ3が開放故障した場合、電流検出器32が異常を検出し、制御回路26へ異常検出信号を送る。異常検出信号を受け取った場合、制御回路26は、直ちに第一のスイッチングレッグ3の動作を停止させる。第一のスイッチングレッグ3の停止後は、共通スイッチングレッグ2と第二のスイッチングレッグ4でスイッチング電源装置1を動作させる。第一のスイッチングレッグ3が開放故障しているため、ゲート信号は常にオフとする。なお以下では、第一のスイッチングレッグ3が開放故障した場合を記載するが、第二のスイッチングレッグ4が開放故障した場合でも同様の動作となる。
【0085】
制御回路26は、出力電圧が所定の値となるように、スイッチング電源装置1の共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオンとなる時間を基準に、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンとなる時間Tφ4を制御する。時間Tφ4を制御することで、第二のトランス6への入力電圧の印加時間が制御される。このとき、共通スイッチングレッグ2と、第二のスイッチングレッグ4のスイッチング周期をTとすると、第一のトランス5への印加電圧VT5および第二のトランス6への印加電圧VT6は、下記の(6)、(7)式で表される。
【0086】
【数6】
【0087】
【数7】
【0088】
図14(a)及至
図14(d)を用いて、第一のスイッチングレッグ3が開放故障時における動作を記載する。
図14(a)乃至
図12(d)はそれぞれ、
図13中の期間A乃至Dにおける動作パターンに対応して、高圧バッテリ側の回路を流れる電流を図示したものである。
【0089】
図14(a)は、
図13のAの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図13の期間Aにおいては、共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオンであり、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオフである。そのため、共通スイッチングレッグ2の中点2cの電位はVinであり、第二のスイッチングレッグ4の中点4cの電位は零である。よって、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6はVinとなる。
【0090】
このとき、スイッチング電源装置1の電流経路は、入力端子19から、共通スイッチングレッグ2の一方の端子2a、共通スイッチングレッグ2の中点2c、第二のトランス6、第二のスイッチングレッグ4の中点4c、第二のスイッチングレッグ4の他方の端子4b、共通スイッチングレッグ2の他方の端子2b、入力端子20へと順に流れる。
【0091】
図14(b)は、
図13のBの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図13の期間Bにおいては、共通スイッチングレッグ2及び第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンである。そのため、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6は零となる。
【0092】
まず、スイッチング電源装置1の電流経路は、共通スイッチングレッグ2の一方の端子2aから、共通スイッチングレッグ2の中点2c、第二のトランス6、第二のスイッチングレッグ4の中点4c、第二のスイッチングレッグ4の一方の端子4a、第一のスイッチングレッグ3の一方の端子3aへと順に流れる。その後、
図14(b)に示すように、電流経路の向きが逆となる。
【0093】
図14(c)は、
図13のCの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図13の期間Cにおいては、共通スイッチングレッグ2の中点2cの電位は零であり、第二のスイッチングレッグ4の中点4cの電位はVinとなる。そのため、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6はVinとなる。
【0094】
このとき、スイッチング電源装置1の電流経路は入力端子19から、第二のスイッチングレッグ4の一方の端子4a、第二のスイッチングレッグ4の中点4c、第二のトランス6、共通スイッチングレッグ2の中点2c、共通スイッチングレッグ2の他方の端子2b、入力端子20へと順に流れる。
【0095】
図14(d)は、
図13のDの状態におけるスイッチング電源装置1の高圧バッテリ側の回路図を示す。
図13の期間Dにおいては、共通スイッチングレッグ2及び第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオフである。そのため、第一のトランス5への印加電圧VT5は零となり、第二のトランス6への印加電圧VT6は零となる。
【0096】
まず、スイッチング電源装置1の電流経路は、共通スイッチングレッグ2の他方の端子2b、第二のスイッチングレッグ4の他方の端子4b、第二のスイッチングレッグ4の中点4c、第二のトランス6、共通スイッチングレッグ2の中点2c、共通スイッチングレッグ2の他方の端子2bへと順に流れる。その後、
図14(d)に示すように、電流経路の向きが逆となる。
【0097】
なお、上述した本実施形態では、スイッチング電源装置1の共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオンとなる時間を基準に、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンとなる時間Tφ4を制御する回路動作を説明したが、スイッチング電源装置1の第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンとなる時間を基準に、共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオンとなる時間を制御するとしても良い。
【0098】
スイッチング電源装置1は、素子への熱集中や、過電流、過電圧および振動や応力などの外的要因により、素子故障を生じる場合がある。特に、共通スイッチング素子2や、第一のスイッチングレッグ3、第二のスイッチングレッグ4が開放故障した場合、各スイッチングレッグを用いてトランスへ入力電圧を印加することができなくなり、スイッチング電源装置1を停止しなければならない。しかし、特に自動車においてスイッチング電源装置1は、エアコンやオーディオ、自動車のコントローラー等へ電力を供給する装置であるため、走行中にスイッチングレッグが故障した場合、自動車のコントローラーが動作しなくなり、重大な自動車事故を引き起こす可能性がある。そのため、スイッチング電源装置1は、開放故障時でも動作可能な状態を保つことが重要であり要求されている。
【0099】
本実施形態の電力変換装置によれば、共通スイッチングレッグ2の中点2cに接続する電流検出器31と、第一のスイッチングレッグ3の中点3cに接続する電流検出器32と、第二のスイッチングレッグ4の中点4cに接続する電流検出器33により、各スイッチングレッグが開放故障した場合に、制御回路26に異常検出信号を送ることで、共通スイッチングレッグ2もしくは第一のスイッチングレッグ3もしくは第二のスイッチングレッグ4が開放故障した場合でも、スイッチング電源装置1の動作を続けることが可能となる。従って、スイッチング電源装置1は、スイッチングレッグの開放故障時でも動作可能な状態を保つことが可能となり、スイッチング電源装置1の信頼性を高めることができる。また、本実施形態のスイッチング電源装置1を採用した自動車において、故障時でも自動車のコントローラーを動作することが可能であるため、自動車事故を抑制することが可能となる。
【実施例5】
【0100】
図15は、第5の実施形態に係る電力変換装置の構成図である。本実施例の電力変換装置は、変更および追加する素子を除き、実施例1乃至実施例4と同様である。変更される素子は、平滑回路7をスイッチング素子で構成される低圧側回路35と、平滑回路8をスイッチング素子で構成される低圧側回路36である。追加される素子は、共通スイッチングレッグ2の他方の端子2bと入力端子20の間に接続する電流検出器34である。その他の構成については、説明を省略する。
【0101】
本実施例の構成においては、昇圧動作時においてもスイッチング電源装置1を動作させることが可能である。以下にその動作を説明する。
【0102】
制御回路26は、入力コンデンサ21の電圧および電流検出器34で検出した電流を監視している。制御回路26は、検出した電流に基づいて、高圧バッテリ側のコンデンサ電圧が所定の値となるように、スイッチング素子で構成される低圧側回路35と、スイッチング素子で構成される低圧側回路36と、スイッチング電源装置1の共通スイッチングレッグ2と、第一のスイッチングレッグ3と、第二のスイッチングレッグ4の動作を制御する。ここで、スイッチング電源装置1の入力端子19、20との間の(入力)電圧をVHV、出力端子24、25との間の(出力)電圧をVLVとし、電流検出器34で検出した電流をIiとし、その電流の最大値をIimaxと定義する。
【0103】
スイッチング電源装置1には、負荷が大きい重負荷モードと、負荷が小さい軽負荷モードの2つのモードが存在する。制御の動作モードを変更する電流値をIc2とすると、Ic2の条件は、Icの値がIimaxよりも小さいことである(Ic2<Iimax)。Ic2の値の決定方法は、重負荷モードと軽負荷モードにおけるスイッチング電源装置1の変換効率が等しくなる電流値とするなどが可能であり、任意に定めることができる。以下では、重負荷モードと軽負荷モードの詳細を説明する。なお、以下では入力端子20の電位が零である場合を記載しているが、入力端子20の電位が零でない場合は、上記の各電位に入力端子20の電位が加算される。
【0104】
IiがIc2よりも大きく、かつIiがIimaxよりも小さい状態(Ic2<Ii<Iimax)においては、以下で説明する重負荷モードで制御を実行する。また、実施例1乃至実施例4に記載される低圧側の電流センサ12を用いて、負荷モードを選択しても良い。
【0105】
図16は、重負荷モードにおけるゲート信号波形とトランス印加電圧を示す図である。
図16のゲート信号波形は、スイッチング素子で構成される低圧側回路35の一方のスイッチング素子と、スイッチング素子で構成される低圧側回路36の一方のスイッチング素子を示しており、各スイッチングレッグを構成するスイッチング素子のうち、スイッチング電源装置1の入力端子19側に接続されるスイッチング素子に印加されるゲート電圧を示している。なお、スイッチング素子で構成される低圧側回路35の一方のスイッチング素子と、スイッチング素子で構成される低圧側回路36の一方のスイッチング素子および入力端子20側に接続されるスイッチング素子に印加されるゲート信号波形は、
図16に示されるゲート信号を1/2周期ずらした波形となる。
【0106】
重負荷モードでは、スイッチング電源装置1の入力端子19、20との間の(入力)電圧をVHVが所定の値となるように、スイッチング素子で構成される低圧側回路35の一方のスイッチング素子のゲート信号がオンとなる時間Tφ35及びスイッチング素子で構成される低圧側回路36の一方のスイッチング素子のゲート信号がオンとなる時間Tφ36を制御する。時間Tφ35を制御することで、第一のトランス5への電圧の印加時間を制御する。また、Tφ36を制御することで、第二のトランス6への電圧の印加時間を制御する。また、高圧側の共通スイッチングレッグ2と、第一のスイッチングレッグ3と、第二のスイッチングレッグ4を用いて、第一のトランス5および第二のトランスにより整流動作を行う。
【0107】
図17(a)乃至
図17(d)を用いて重負荷モードにおける動作を記載する。
図17(a)乃至
図17(d)はそれぞれ、
図16中の期間A乃至Dにおける動作パターンに対応して、回路を流れる電流を図示したものである。
【0108】
図17(a)は、
図16のAの状態におけるスイッチング電源装置1の回路図を示す。
図16の期間Aにおいては、スイッチング素子で構成される低圧側回路35の一方のスイッチング素子のゲート信号がオフであり、スイッチング素子で構成される低圧側回路35の一方のスイッチング素子のゲート信号がオフである。また、共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオフであり、第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオンであり、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオンである。そのため、トランス5の低圧側の一方の端子5cからトランス5の低圧側の中点5eに電圧が印加される。印加された電圧は、トランスの巻き数比に応じて昇圧され、トランス5の高圧側の一方の端子5aからトランス5の高圧側の一方の端子5bに電圧が印加される。高圧側の電圧は、共通スイッチングレッグ2の下側のスイッチング素子と、第一のスイッチングレッグ3の上側のスイッチング素子により、整流されて高圧バッテリ16に電力を供給する。
【0109】
このとき、出力端子24からスイッチング素子で構成される低圧側回路35に流れる電流は、低圧回路35におけるトランス端子5c側のスイッチング素子を通り、トランス5の低圧側の一方の端子5cからトランス5の中点5eへ流れ、出力端子23へと流れる。また、トランス5を用いて高圧側に印加された電圧により、トランス5には高圧側の一方の端子5aから高圧側の他方の端子5bへと電流が流れ、共通スイッチングレッグ2の下側のスイッチング素子と、第一のスイッチングレッグ3の上側のスイッチング素子および第二のスイッチングレッグ4の上側のスイッチング素子により、整流されて高圧バッテリ18に電力を供給する。共通スイッチングレッグ2の下側のスイッチング素子と、第一のスイッチングレッグ3の上側のスイッチング素子により、高圧バッテリ16に電力を供給する。
【0110】
また、トランス6に接続されるスイッチング素子で構成される低圧側回路36と、共通スイッチングレッグ2の下側のスイッチング素子と、第二のスイッチングレッグ4の上側のスイッチング素子も前記トランス5に接続されるスイッチング素子で構成される低圧側回路35と、共通スイッチングレッグ2の下側のスイッチング素子と、第一のスイッチングレッグ3の上側のスイッチング素子の動作と同様である。
【0111】
図17(b)は、
図16のBの状態におけるスイッチング電源装置1の回路図を示す。
図16の期間Bにおいては、第一のトランス5への印加電圧は、トランス5の低圧側の一方の端子5cからトランス5の低圧側の中点5eに電圧と、トランス5の低圧側の他方の端子5dからトランス5の低圧側の中点5eに電圧が印加される。この二つの電圧は互いに向きが逆であるため、電圧は打ち消しあう。そのため、トランス5の高圧側の一方の端子5aとトランス5の高圧側の一方の端子5bの間に電圧が印加されない状態となる。トランス6においても同様である。電流経路は出力端子24から低圧回路35のトランス端子5c側のスイッチング素子を通り、トランス5の一方の端子5cからトランス5の中点5eへ電流が流れ、出力端子25へと電流が流れる。また、出力端子24から低圧回路35のトランス端子5d側のスイッチング素子を通り、トランス5の他方の端子5dからトランス5の中点5eへ電流が流れ、出力端子25へと電流が流れる。低圧回路36に関しても同様であるので省略する。
【0112】
図17(c)は、
図16のCの状態におけるスイッチング電源装置1の回路図を示す。この期間は前記
図16のAの状態における電圧・電流経路が反転した動作である。詳細は省略する。
【0113】
図17(d)は、
図16のDの状態におけるスイッチング電源装置1の回路図を示す。この期間は前記
図16のBの状態と同様であるので省略する。
【0114】
IiがIc2よりも小さく、かつIiが零よりも大きい状態(0<Ii<Ic2)においては、以下で説明する軽負荷モードで制御を実行する。また、実施例1乃至実施例4に記載される低圧側の電流センサ12を用いて、負荷モードを選択しても良い。
【0115】
図18は、軽負荷モードにおけるゲート信号波形とトランス印加電圧を示す図である。
図18のゲート信号波形は、スイッチング素子で構成される低圧側回路35の一方のスイッチング素子と、スイッチング素子で構成される低圧側回路36の一方のスイッチング素子を示しており、各スイッチングレッグを構成するスイッチング素子のうち、スイッチング電源装置1の入力端子19側に接続されるスイッチング素子に印加されるゲート電圧を示している。なお、スイッチング素子で構成される低圧側回路35の一方のスイッチング素子と、スイッチング素子で構成される低圧側回路36の一方のスイッチング素子および入力端子20側に接続されるスイッチング素子に印加されるゲート信号波形は、
図18に示されるゲート信号を1/2周期ずらした波形となる。
制御回路26は、軽負荷モードでは、スイッチング電源装置1の入力端子19、20との間の(入力)電圧をVHVが所定の値となるように、スイッチング素子で構成される低圧側回路35の一方のスイッチング素子のゲート信号がオンとなる時間Tφ35を制御し、スイッチング素子で構成される低圧側回路36の一方のスイッチング素子のゲート信号がオンとなる時間Tφ36は零とする。時間Tφ35を制御することで、第一のトランス5への電圧の印加時間を制御する。また、Tφ36は零であるので、トランス6に電圧が印加されない。また、高圧側の共通スイッチングレッグ2と、第一のスイッチングレッグ3を用いて、第一のトランス5および第二のトランスにより整流動作を行う。第二のスイッチングレッグ4のゲート信号は、共通スイッチングレッグ2のゲート信号との位相差を零とする。
【0116】
図19(a)乃至
図19(d)を用いて軽負荷モードにおける動作を記載する。
図19(a)乃至
図19(d)はそれぞれ、
図18中の期間A乃至Dにおける動作パターンに対応して、回路を流れる電流を図示したものである。
【0117】
図19(a)は、
図18のAの状態におけるスイッチング電源装置1の回路図を示す。
図18の期間Aにおいては、スイッチング素子で構成される低圧側回路35の一方のスイッチング素子のゲート信号がオフであり、スイッチング素子で構成される低圧側回路35の一方のスイッチング素子のゲート信号がオフである。また、共通スイッチングレッグ2のゲート信号がオフであり、第一のスイッチングレッグ3のゲート信号がオンであり、第二のスイッチングレッグ4のゲート信号がオフである。そのため、トランス5の低圧側の一方の端子5cからトランス5の低圧側の中点5eに電圧が印加される。印加された電圧は、トランスの巻き数比に応じて昇圧され、トランス5の高圧側の一方の端子5aからトランス5の高圧側の一方の端子5bに電圧が印加される。高圧側の電圧は、共通スイッチングレッグ2の下側のスイッチング素子と、第一のスイッチングレッグ3の上側のスイッチング素子により、整流されて高圧バッテリ16に電力を供給する。
【0118】
このとき、出力端子24からスイッチング素子で構成される低圧側回路35に流れる電流は、低圧回路35におけるトランス端子5c側のスイッチング素子を通り、トランス5の低圧側の一方の端子5cからトランス5の中点5eへ流れ、出力端子23へと流れる。また、トランス5を用いて高圧側に印加された電圧により、トランス5には高圧側の一方の端子5aから高圧側の他方の端子5bへと電流が流れ、共通スイッチングレッグ2の下側のスイッチング素子と、第一のスイッチングレッグ3の上側のスイッチング素子および第二のスイッチングレッグ4の上側のスイッチング素子により、整流されて高圧バッテリ18に電力を供給する。共通スイッチングレッグ2の下側のスイッチング素子と、第一のスイッチングレッグ3の上側のスイッチング素子により、高圧バッテリ16に電力を供給する。
【0119】
一方、トランス6に接続されるスイッチング素子で構成される低圧側回路36は低圧側回路36の一方のスイッチング素子のゲート信号がオフであり、低圧側回路36の他方のスイッチング素子のゲート信号もオフであるため、トランス6に電圧が印加されない。また、共通スイッチングレッグ2の下側のスイッチング素子と、第二のスイッチングレッグ4の下側のスイッチング素子が互いにオンになっているため、共通スイッチングレッグ2の中点2cと第二のスイッチングレッグ4の中点4cの電位が等しいため、トランス6に電圧が印加されない。
【0120】
図19(b)は、
図18のBの状態におけるスイッチング電源装置1の回路図を示す。
図18の期間Bにおいては、第一のトランス5への印加電圧は、トランス5の低圧側の一方の端子5cからトランス5の低圧側の中点5eに電圧と、トランス5の低圧側の他方の端子5dからトランス5の低圧側の中点5eに電圧が印加される。この二つの電圧は互いに向きが逆であるため、電圧は打ち消しあう。そのため、トランス5の高圧側の一方の端子5aとトランス5の高圧側の一方の端子5bの間に電圧が印加されない状態となる。トランス6においても同様である。電流経路は出力端子24から低圧回路35の一方のスイッチング素子を通り、トランス5の一方の端子5cからトランス5の中点5eへ電流が流れ、出力端子25へと電流が流れる。また、出力端子24から低圧回路35の他方のスイッチング素子を通り、トランス5の他方の端子5dからトランス5の中点5eへ電流が流れ、出力端子25へと電流が流れる。低圧回路36に関しては
図18のAの状態と同様であるので省略する。
【0121】
図19(c)は、
図18のCの状態におけるスイッチング電源装置1の回路図を示す。この期間は前記
図18のAの状態における電圧・電流経路が反転した動作である。詳細は省略する。
【0122】
図18(d)は、
図19のDの状態におけるスイッチング電源装置1の回路図を示す。この期間は前記
図18のBの状態と同様であるので省略する。
【0123】
なお、上述した本実施形態では、低圧側回路36のスイッチング素子のゲート信号を零とし、共通スイッチングレッグ1と第二のスイッチングレッグ4のゲート信号の位相差を零としたが、零とする低圧側回路およびスイッチングレッグはどちらでも良く、低圧側回路35でも良く、第一のスイッチングレッグ3と共通スイッチングレッグ1のゲート信号の位相差を零としても良い。また、位相差を零とする順番も不定で良い。例えば、位相差を零とするスイッチングレッグを常に第一のスイッチングレッグ3としても良いし、位相差を零とするスイッチングレッグを交互にしても良い。
【0124】
本実施形態に係る電力変換装置によれば、重負荷モード(Ic<Ii<Iimax)では、第一のトランス5と第二のトランス6に入力電圧が印加され、並列動作により、スイッチング電源装置1の銅損が低減することができる。また、軽負荷モード(0<Ii<Ic)では、第二のトランス6の印加電圧が零となり、スイッチング電源装置1の固定損を低減することが可能である。つまり、スイッチング電源装置1の全負荷領域において、昇圧動作時においても変換効率を向上することが可能となる。さらに、共通スイッチングレッグ1を設けることで、スイッチング素子の個数を削減することが可能であり、スイッチング電源装置のサイズおよびコストを削減することが可能となる。