特許第6442284号(P6442284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許64422842型糖尿病の処置のためのリキシセナチド及びメトホルミン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442284
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】2型糖尿病の処置のためのリキシセナチド及びメトホルミン
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20181210BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20181210BHJP
   A61K 31/64 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20181210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   A61K38/16ZNA
   A61K31/155
   A61K31/64
   A61P3/04
   A61P3/10
   A61P43/00 121
【請求項の数】13
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2014-509752(P2014-509752)
(86)(22)【出願日】2012年5月11日
(65)【公表番号】特表2014-514356(P2014-514356A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2012058747
(87)【国際公開番号】WO2012156298
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年4月20日
【審判番号】不服2017-7(P2017-7/J1)
【審判請求日】2017年1月4日
(31)【優先権主張番号】11166120.3
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12163637.7
(32)【優先日】2012年4月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・ルース
(72)【発明者】
【氏名】ルイーズ・シルヴェストル
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ミオセ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ルイ・パンケ
(72)【発明者】
【氏名】アグネス・ヒンセリン−メリー
【合議体】
【審判長】 關 政立
【審判官】 田村 聖子
【審判官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 A Journal of the American Diabetes Association Abstract book 68th Scientific Sessions,2008年,A154 520−P
【文献】 LIXISENATIDE SIGNIFICANTLY REDUCES HBA1C WITHOUT INCREASING HYPOGLYCEMIA IN PATIENTS UNCONTROLLED ON SULFONYLUREAS,[ONLINE],2011年 4月12日,P1−2,IN PATIENTS UNCONTROLLED ON SULFONYLUREAS,URL,http://en.sanofi.com/binaries/20110412_LIXI_GETGOAL_S_EN_tcm28−31652.pdf
【文献】 ADDITIONAL POSITIVE RESULTS FROM GLOBAL PHASE III PROGRAM WITH LIXISENATIDE FOR TYPE 2 DIABETES,[ONLINE],2011年 4月12日,P1−2,URL,http://files.shareholder.com/downloads/ABEA−58QR0J/0x0x458202/3ccd84a6−5f99−451a−ada0−0a8282da3dad/ZEAL_News_2011_4_12Company_releases.pdf
【文献】 Idrugs,2009年,Vol.12,No.8,P.503−513
【文献】 Diabetes Care,2005年,Vol.28,No.5,P.1083−1091
【文献】 Diabetic Medicine,2010年,Vol.27,No.9,P.1024−1032
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/16
BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(b) メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(c) スルホニル尿素
を含む、2型糖尿病患者の血漿グルカゴンレベルの減少における使用のための組み合わせ医薬であって、ここで処置される対象者が、少なくとも14mmol/Lの食後2時間血漿グルコース濃度と少なくとも8%のHbA1c値を有し、前記2型糖尿病が、メトホルミン単独での処置では適切にコントロールされてない、上記組み合わせ医薬。
【請求項2】
処置される対象者が肥満である、請求項1に記載の組み合わせ医薬。
【請求項3】
処置される対象者が、少なくとも30kg/m2のボディマス指数を有する、請求項1又は2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項4】
処置される対象者が成人対象者である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項5】
処置される対象者が、治療開始の少なくとも1年前又は少なくとも2年前に2型糖尿病と診断されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項6】
処置される対象者が、8〜約10%のHbA1c値を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項7】
処置される対象者が、少なくとも8mmol/Lの空腹時血漿グルコース濃度を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項8】
処置される対象者が、少なくとも2mmol/L、少なくとも3mmol/L、少なく
とも4mmol/L又は少なくとも5mmol/Lのグルコース変動幅を有し、ここでグルコース変動幅は、食後2時間の血漿グルコース濃度と食事試験30分前の血漿グルコース濃度との差である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項9】
処置される対象者が、東洋人種又は/及びアジア人種である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項10】
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩が非経口投与用に調製される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項11】
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩が、10μg〜20μgの範囲から選択される日用量での投与用に調製される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項12】
メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩が経口投与用に調製される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項13】
スルホニル尿素が経口投与用に調製される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明の主題は、2型糖尿病患者における血糖管理における使用のための組み合わせ医薬(pharmaceutical combination)であって、該組み合わせ医薬は、(a) desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2 (AVE0010、リキシセナチド)又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに(b) メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む。別の局面は、2型糖尿病患者におけるグルカゴンレベルの減少における使用のための組み合わせ医薬であり、該組み合わせ医薬は、(a) desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに(b)メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む。
【背景技術】
【0002】
健常なヒトにおいて、膵臓によるインスリンの放出は、血中グルコース濃度と厳密に連動する。食後に現れる血中グルコースの増加したレベルは、インスリン分泌の各増加により迅速に釣り合いが取られる。空腹状態では、血漿インスリンレベルは基礎値まで降下し、この基礎値は、インスリン感受性器官及び組織へのグルコースの連続的な供給を確実にし、かつ夜間に肝臓グルコース産生を低レベルに維持するために十分である。
【0003】
1型糖尿病と対照的に、一般的に2型糖尿病においてインスリンの欠乏はないが、多くの場合、特に進行性の症例において、インスリンでの処置は、経口投与される抗糖尿病薬と組み合わせて必要とされる場合に最も適切な治療とみなされる。
【0004】
初期症状を伴わない数年にわたる増加した血中グルコースレベルは、重大な健康リスクを表す。慢性的に増加したレベルの血中グルコースが糖尿病合併症の発症の主な原因であるということが、米国における大規模DCCT研究において明確に示された(非特許文献1)。糖尿病合併症の例は、場合により網膜症、腎症又はニューロパシーで現れ、そして失明、腎不全及び四肢の喪失に至り、かつ心血管疾患の増加した危険性を伴う小血管及び大血管の損傷である。従って、糖尿病の改善された治療は、血中グルコースを生理学的範囲にできるだけ近く維持することを主に目指さなければならないと結論づけることができる。
【0005】
2型糖尿病に罹患した過体重の患者、例えば30以上のボディマス指数(BMI)を有する患者には特定の危険性が存在する。これらの患者において、糖尿病の危険性は過体重の危険性と重なり、例えば、標準体重の2型糖尿病患者と比較して心血管疾患の増加をもたらす。従って、これらの患者において、過体重を減少させながら糖尿病を処置することが特に必要である。
【0006】
メトホルミンは、食事改善に反応しない非インスリン依存性糖尿病(2型糖尿病)の処置において使用されるビグアニド血糖降下薬である。メトホルミンは、インスリン感受性を改善し、そしてグルコースの腸での吸収を減少させることにより血糖管理を改善する。メトホルミンは通常、経口投与される。しかし、肥満患者におけるメトホルミンによる2型糖尿病の管理は不十分であり得る。従って、これらの患者において、2型糖尿病を管理するためのさらなる手段が必要とされ得る。
【0007】
化合物desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2 (AVE0010、リキシセナチド)はエキセンジン−4の誘導体である。AVE0010は特許文献1において配列番号93として開示される:
配列番号1: AVE0010 (44 AS)
H−G−E−G−T−F−T−S−D−L−S−K−Q−M−E−E−E−A−V−R−L−F−I−E−W−L−K−N−G−G−P−S−S−G−A−P−P−S−K−K−K−K−K−K−NH2
配列番号2: エキセンジン−4 (39 AS)
H−G−E−G−T−F−T−S−D−L−S−K−Q−M−E−E−E−A−V−R−L−F−I−E−W−L−K−N−G−G−P−S−S−G−A−P−P−P−S−NH2
【0008】
エキセンジンは、血中グルコース濃度を低下させることができる一群のペプチドである。エキセンジン類似体AVE0010は、天然エキセンジン−4配列のC末端短縮化により特徴づけられる。AVE0010は、エキセンジン−4には存在しない6つのC末端リジン残基を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO01/04156
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】The Diabetes Control and Complications Trial Research Group(1993)N.Engl.J.Med.329,977−986
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の文脈において、AVE0010はその薬学的に許容しうる塩を含む。当業者は、AVE0010の薬学的に許容しうる塩が分かる。本発明において使用されるAVE0010の好ましい薬学的に許容しうる塩は酢酸塩である。
【0012】
本発明の実施例1において、メトホルミンに対する付加療法(add−on therapy)においてリキシセナチド(AVE0010)が血糖管理を有意に改善したということが2型糖尿病患者において実証された:
・ リキシセナチド(AVE0010)は、補正血漿グルコースAUC0:30-4:30h(hmg/dL)をベースラインから有意に減少させた:リラグルチド群における−72.83と比較して−227.25。
・ リキシセナチドは、標準化朝食後の血漿グルコースの増加を、リラグルチドと比較してかなりより大きな程度まで減少させた。
・ 最大PPGレベル(mg/dL)に対する有意な効果と共に、リキシセナチド群において28日目にPPG変動幅(excursion)の有意な改善があった:リラグルチドと比較してリキシセナチドについて−45.50の推定平均処置差と共に、リラグルチド群における−24.93と比較してリキシセナチド群における−70.43。この差は統計的に有意であった(p<0.0001)。
・ 4週間の処置の後(28日目)に140mg/dL未満の食後2時間後血漿グルコースレベルを有する患者の数はキシセナチド群においてより多かった。
・ −1日目と比較して28日目において、リキシセナチド及びリラグルチド処置についての24時間血漿グルコースプロフィールは、食事摂取に応じて生じるピークグルコースレベルの減少と共に、血漿グルコースの全体的な減少を示した。
・ 平均HbA1Cレベルは、両方の処置群において減少した。
・ 血漿グルカゴンレベルについての減少したAUCは、リラグルチド群と比較してリキシセナチド群においてより顕著であった。
【0013】
本発明の実施例2は、アジア諸州(counties)(中国、マレーシア、タイ、及び香港)における2型糖尿病患者における血糖管理に関する。これらの患者は、メトホルミン単独では適切に管理されない。アジア又は/及び東洋人種のこれらの患者において、研究24週目に、血糖管理の有意な改善が、プラセボ(メトホルミン単独)と比較してリキシセナチド及びメトホルミンの組み合わせにより達成され得るということが見出された:
・ リキシセナチド対プラセボの有効性を、プラセボ群(−0.47%)と比較してリキシセナチド群(−0.83%)においてHbA1cの有意な減少により実証した。プラセボに対するLS平均差異は−0.36%である(実施例2における表10)。表28は、中国人患者の部分群における同様の効果を示した。
・ HbA1c応答者の分析は、リキシセナチドとプラセボ群との間の統計学的に有意な処置差異を実証した。リキシセナチド群における患者の32.4%が6.5%以下のHbA1cを達成したが、一方でプラセボ群では、18.1%しかこの値を達成しなかった。リキシセナチド群における患者の53%は、プラセボ群における38.8%に対して7%未満のHbA1cを達成した(実施例2における表11)。
・ 標準化食事後の食後2時間後血漿グルコース(PPG)について、リキシセナチド群は、プラセボ群に勝る統計学的に有意な改善を示し、LS平均差異は−4.28mmol/Lであった(実施例2における表12)。グルコース変動幅の分析は、プラセボと比較してリキシセナチド群における−3.99mmol/LのLS平均差異を示した(実施例2の表17)。
・ プラセボと比較した空腹時血漿グルコース(FPG)の群間差異もまた、リキシセナチド群について統計学的に有意であり、−0.48mmol/LのLS平均差異であった(実施例2の表13)。
・ リキシセンチド(lixisentide)及びメトホルミンの組み合わせの全体的な安全性は、アジア/東洋患者において十分であった。
【0014】
本発明の第一の局面は、2型糖尿病患者における血糖管理における使用のための組み合わせ医薬であり、該組み合わせ医薬は、
(a) desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(b) メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む。
【0015】
本発明の実施例により実証されるように、本明細書に記載される組み合わせ医薬は、血糖管理を改善するために使用され得る。本発明において、「血糖管理の改善」又は「血糖管理」は特に、食後血漿グルコース濃度の改善、空腹時血漿グルコース濃度の改善、又は/及びHbA1c値の改善を指す。
【0016】
本発明の第二の局面は、2型糖尿病患者における血漿グルカゴンレベルの減少における使用のための組み合わせ医薬であり、該組み合わせ医薬は、
(a) desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(b) メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む。
【0017】
本発明の実施例1により実証されるように、本明細書に記載される組み合わせは、血漿グルカゴンレベルを減少させるために使用され得る。
【0018】
メトホルミンは、1,1−ジメチルビグアニド(CAS番号657−24−9)の国際的な一般名である。本発明において、用語「メトホルミン」はいずれかのその薬学的に許容しうる塩を含む。
【0019】
本発明において、メトホルミンは経口投与され得る。当業者は、経口投与による2型糖尿病の処置に適したメトホルミンの処方が分かる。メトホルミンは、それを必要とする対象者(subject)に、治療効果を誘導するために十分な量で投与され得る。メトホルミンは、少なくとも1.0g/日又は少なくとも1.5g/日の用量で投与され得る。経口投与のために、メトホルミンは固形投薬形態、例えば錠剤又は丸剤で製剤化され得る。メトホルミンは、適切な薬学的に許容しうる担体、アジュバント又は/及び補助物質を用いて製剤化され得る。
【0020】
本発明において、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及び薬学的に許容しうる塩は、メトホルミンの投与に対する付加療法で投与され得る。
【0021】
本発明において、用語「付加(add−on)」、「付加処置」及び「付加療法」は、メトホルミン及びAVE0010を用いた2型糖尿病の処置に関する。メトホルミン及びAVE0010は、24時間の時間間隔以内に投与され得る。メトホルミン及びAVE0010は、それぞれ1日1回の投薬量で投与され得る。メトホルミン及びAVE0010は異なる投与経路で投与され得る。メトホルミンは経口投与され得、そしてAVE0010は非経口投与され得る。
【0022】
本発明の組み合わせ医薬は、スルホニル尿素をさらに含み得る。この組み合わせ医薬において、スルホニル尿素は経口投与され得る。当業者はスルホニル尿素の適切な処方を知っている。スルホニル尿素は、本明細書に記載されるように、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2及びメトホルミンの組み合わせに対する付加処置で投与され得る。
【0023】
スルホニル尿素は、グリベンクラミド、グリベンクラミドMR、グリクラジド、グリクラジドLM、グリメピリド、グリピジド、グリピジドXL、グリキドン、及びトルブタミドから選択され得る。特定の実施態様において、本明細書において開示される特定のスルホニル尿素のいずれかが、本明細書に記載されるdesPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2及びメトホルミンの組み合わせの特定の局面と組み合わされ得る。
【0024】
グリベンクラミドの好ましい用量は10mg/日以下、10〜20mg/日又は20mg/日以上である。
【0025】
グリベンクラミドMRの好ましい用量は、6mg/日以下、6〜12mg/日、又は12mg/日以上である。
【0026】
グリクラジドの好ましい用量は、160mg/日以下、160〜320mg/日、又は320mg/日以上である。
【0027】
グリクラジドLMの好ましい用量は、60mg/日以下、60〜120mg/日、又は120mg/日以上である。
【0028】
グリメピリドの好ましい用量は、4mg/日以下、4〜8mg/日、又は8mg/日以上である。
【0029】
グリピジドの好ましい用量は、20mg/日以下、20〜40mg/日、又は40mg/日以上である。
【0030】
グリピジドXLの好ましい用量は、10mg/日以下、10〜20mg/日、又は20mg/日以上である。
【0031】
グリキドンの好ましい用量は、60mg/日以下、60〜90mg/日、又は90mg/日以上である。
【0032】
トルブタミドの好ましい用量は、1500mg/日以下、又は1500mg/日以上である。
【0033】
本発明の組み合わせ医薬により処置される対象者は、アジア又は/及び東洋の人種の対象者であり得る。本発明の実施例2において、アジア又は/及び東洋人種の患者において、血糖管理の有意な改善が、プラセボ(メトホルミン単独)と比較してリキシセナチド及びメトホルミンの組み合わせにより達成され得るということが見出された。
【0034】
本発明の医薬又は組み合わせにより処置される対象者は、2型糖尿病に罹患している対象者であり得る。実施例は、これらの患者において、メトホルミンと組み合わせたAVE0010の投与が有利な治療を提供するということを実証する。
【0035】
本発明の医薬又は組み合わせにより処置される対象者は2型糖尿病に罹患している対象者であり得、ここで2型糖尿病は、メトホルミン単独での処置(例えば、少なくとも1.0g/日のメトホルミン又は少なくとも1.5g/日のメトホルミンの用量を3ヶ月)では適切に管理されない。本発明において、その2型糖尿病が適切に管理されていない対象者は、7%〜10%の範囲のHbA1c値を有し得る。
【0036】
2型糖尿病に罹患している本発明の医薬又は組み合わせにより処置される対象者は、肥満対象者であり得る。本発明において、肥満対象者は少なくとも30kg/m2のボディマス指数を有し得る。
【0037】
2型糖尿病に罹患している本発明の医薬又は組み合わせにより処置される対象者は、正常体重を有し得る。本発明において、正常体重を有する対象者は、17kg/m2〜25kg/m2、又は17kg/m2から30kg/m2未満の範囲のボディマス指数を有し得る。
【0038】
本発明の医薬又は組み合わせにより処置される対象者は、成人対象者(adult subject)であり得る。対象者は、少なくとも18歳の年齢を有し得、18〜80歳、18〜50歳、又は40〜80歳、又は50〜60歳の範囲の年齢を有し得る。対象者は50歳より若くてもよい。
【0039】
本発明の医薬又は組み合わせにより処置される対象者は、好ましくは、例えばインスリン又は/及び関連する化合物による抗糖尿病処置を受けていない。
【0040】
本発明の医薬又は組み合わせにより処置される対象者は、2型糖尿病に、少なくとも1年間又は少なくとも2年間罹患し得る。特に、処置される対象者において、2型糖尿病は、本発明の医薬又は組み合わせによる治療の開始の少なくとも1年前又は少なくとも2年前に診断されている。
【0041】
処置される対象者は、少なくとも約8%又は少なくとも約7,5%のHbA1c値を有し得る。対象者はまた、約7〜約10%のHbA1c値を有し得る。本発明の実施例は、AVE0010による処置が2型糖尿病患者においてHbA1c値の減少を生じるということを実証する。
【0042】
本発明のさらに別の局面において、本明細書に記載される組み合わせは、2型糖尿病に罹患した患者においてHbA1c値を改善するために使用され得る。HbA1c値を改善することは、HbA1c値が、例えば、処置の後少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、又は少なくとも3ヶ月間、6.5%又は7%未満に減少されることを意味する。
【0043】
本発明のさらに別の局面において、本明細書に記載される組み合わせは、2型糖尿病に罹患している患者において耐糖能を改善するために使用され得る。耐糖能を改善することは、食後血漿グルコース濃度が本発明の活性薬剤により減少されることを意味する。減少は、特に、血漿グルコース濃度が正常血糖値に達するか、又は少なくともこれらの値に近づくことを意味する。
【0044】
本発明において、正常血糖値は、特に60〜140mg/dl(3,3〜(bis)7,8mM/Lに対応する)の血中グルコース濃度である。この範囲は、特に空腹時条件下及び食後条件下での血中グルコース濃度を指す。
【0045】
処置される対象者は、少なくとも10mmol/L、少なくとも12mmol/L、又は少なくとも14mmol/Lの食後2時間血漿グルコース濃度を有し得る。これらの血漿グルコース濃度は正常血糖濃度を超える。
【0046】
処置される対象者は、少なくとも2mmol/L、少なくとも3mmol/L、少なくとも4mmol/L又は少なくとも5mmol/Lのグルコース変動幅を有し得る。本発明において、グルコース変動幅は特に、食後2時間血漿グルコース濃度と食事試験30分前の血漿グルコース濃度との差である。
【0047】
「食後」は、糖尿病学の技術分野における当業者に周知である。用語「食後」は特に、食事又は/及び実験条件下でのグルコースへの曝露の後の段階を記載する。健康なヒトにおいて、この段階は血中グルコース濃度の増加及びその後の減少により特徴づけられる。用語「食後」又は「食後段階」は、典型的には食事又は/及びグルコースへの曝露の2時間後までに終了する。
【0048】
本明細書において開示される処置される対象者は、少なくとも8mmol/L、少なくとも8,5mmol/L又は少なくとも9mmol/Lの空腹時血漿グルコース濃度を有し得る。これらの血漿グルコース濃度は正常血糖濃度を超える。
【0049】
本発明の別の局面において、本明細書に記載される組み合わせは、2型糖尿病に
罹患している患者において空腹時血漿グルコースを改善する(すなわち減少させる)ために使用され得る。減少は、特に血漿グルコース濃度が正常血糖値に達するか又は少なくともこれらの値に近づくことを意味する。
【0050】
本発明の組み合わせは、本明細書に記載される医療適用の1つ又はそれ以上の処置において、例えば2型糖尿病患者の処置において、又は2型糖尿病に関連する状態、例えば血糖管理の改善、空腹時血漿グルコース濃度の減少のため、グルコース変動幅の改善のため、食後血漿グルコース濃度の減少のため、耐糖能の改善のため、HbA1c値の改善のため、血漿グルカゴンレベルの減少のため、減量又は/及び体重増加の予防のために使用され得る。
【0051】
本発明において、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、それを必要とする対象者に、治療効果を誘導するために十分な量で投与され得る。
【0052】
本発明において、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、適切な薬学的に許容しうる担体、アジュバント又は/及び補助物質を用いて製剤化され得る。
【0053】
化合物desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、例えば注射(例えば筋内注射又は皮下注射により)により非経口投与され得る。適切な注射装置、活性成分を含むカートリッジ及び注射針を備えたいわゆる「ペン」が公知である。化合物desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、適切な量で、例えば用量あたり10〜15μg又は用量あたり15〜20μgの範囲内の量で投与され得る。
【0054】
本発明において、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、10〜20μgの範囲、10〜15μgの範囲、又は15〜20μgの範囲の日用量で投与され得る。DesPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、1日あたり1回の注射により投与され得る。
【0055】
本発明において、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、液体組成物で提供され得る。当業者は、非経口投与に適したAVE0010の液体組成物が分かる。本発明の液体組成物は、酸性又は生理的pHを有し得る。酸性pHは好ましくはpH1〜6.8、pH3.5〜6.8、pH3.5〜5の範囲である。生理学的pHは好ましくはpH2.5〜8.5、pH4.0〜8.5、又はpH6.0〜8.5の範囲である。pHは、薬学的に許容しうる希酸(典型的にはHCl)又は薬学的に許容しうる希塩基(典型的にはNaOH)により調整され得る。
【0056】
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む液体組成物は、適切な保存料を含み得る。適切な保存料は、フェノール、m−クレゾール、ベンジルアルコール、及びp−ヒドロキシ安息香酸エステルから選択され得る。好ましい保存料はm−クレゾールである。
【0057】
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む液体組成物は、等張化剤を含み得る。適切な等張化剤は、グリセロール、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、グルコース、NaCl、カルシウム又はマグネシウム含有化合物、例えばCaCl2から選択され得る。グリセロール、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、及びグルコースの濃度は、100〜250mMの範囲内であり得る。NaClの濃度は150mMまでであり得る。好ましい等張化剤はグリセロールである。
【0058】
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む液体組成物は、0.5μg/mLから20μg/mLまで、好ましくは1μg/mlから5μg/mlまでのメチオニンを含み得る。好ましくは、液体組成物はL−メチオニンを含む。
【0059】
本発明のさらなる局面は、2型糖尿病患者の血糖管理の改善のための方法であり、該方法は、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩を、メトホルミンと組み合わせて、それを必要とする対象者に投与することを含む。特に、本明細書に記載される組み合わせが投与され得る。本発明の方法において、対象者は本明細書において定義される対象者であり得る。
【0060】
本発明のさらなる局面は、2型糖尿病患者において血漿グルカゴンレベルを減少させるための方法であり、該方法は、desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2又は/及びその薬学的に許容しうる塩を、メトホルミンと組み合わせて、それを必要とする対象者に投与することを含む。特に、本明細書に記載される組み合わせが投与され得る。本発明の方法において、対象者は本明細書において定義される対象者であり得る。
【0061】
本発明のさらに別の局面は、本明細書に記載されるような、医療適用の処置のための医薬の製造のための、本絵明細書に記載される組み合わせの使用に言及する。例えば、本発明の組み合わせは、2型糖尿病患者の処置のための医薬の製造のため、又は2型糖尿病に関連する状態の処置のため、例えば血糖管理の改善、空腹時血漿グルコース濃度の減少、グルコース変動幅の改善、食後血漿グルコース濃度の減少、HbA1c値の改善、又は/及び耐糖能の改善のために使用され得る。本発明の組み合わせはまた、2型糖尿病患者の血漿グルカゴンレベルの減少のための医薬の製造にも使用され得る。医薬は、本明細書に記載されるように製剤化され得る。例えば、医薬は、AVE0010又は/及びその薬学的に許容しうる塩の非経口製剤、並びにメトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩の経口製剤を含み得る。医薬は、本明細書に記載されるようなスルホニル尿素の製剤をさらに含み得る。特に、スルホニル尿素の製剤は、経口製剤である。
【0062】
本発明は、以下の実施例及び図面によりさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】処置による、−1日目及び28日目の平均(±SEM)補正食後血漿グルコースプロフィール
図2】実施例1における研究設計。
図3】食事負荷試験 − −1日目及び28日目における血漿インスリン値(μIU/ml)。
図4】食事負荷試験− −1日目及び28日目における食事前からの血漿インスリンデータ(μIU/ml)変化。
図5】食事負荷試験 − −1日目及び28日目におけるグルカゴン(pg/mL)値。
図6】−1日目及び28日目における血漿グルコース値(mg/dL)。
図7】実施例2における研究設計。
図8】いずれかの理由に起因する処置の中止までの時間のカプラン−マイヤープロット − 無作為化集団。
図9】来診ごとのベースラインから及び24週目におけるHbA1cの平均変化(%)のプロット − mITT集団。LOCF=繰り越しした最後の観察。注:この分析は、救出薬(rescue medication)の導入後、かつ/又は処置の中止に加えて3日の後に得られた測定値を除外した。
図10】空腹時血漿グルコース(mmol/L)の来診ごとのベースラインから及び24週目における平均変化のプロット − mITT集団。LOCF=繰り越しした最後の観察。注:この分析は、救出薬の導入後、かつ/又は処置の中止に加えて1日の後に得られた測定値を除外した。
図11】来診ごとのベースラインから及び24週目における体重(kg)の平均変化のプロット − mITT集団。LOCF=繰り越しした最後の観察。注:この分析は、救出薬の導入後、かつ/又は処置の中止に加えて3日の後に得られた測定値を除外した。
【発明を実施するための形態】
【0064】
実施例1
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
実施例2
要約
この実施例は、リキシセナチド処置をプラセボと、メトホルミンにより十分に管理されない2型糖尿病(T2DM)患者においてスルホニル尿素を用いるか又は用いずに比較する、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、ツーアーム平行群、平衡設計(balanced design)の多国籍研究を記載する。この研究は、4つの国又は地域(中国、マレーシア、タイ、及び香港)の37の施設において行われた。この研究の主目的は、メトホルミンに対する付加療法としてプラセボと比較してリキシセナチドの血糖管理に対する効果を、スルホニル尿素を用いて又は用いずに、2型糖尿病(T2DM)患者において24週の期間にわたってHbA1cの減少の観点から評価することであった。
【0072】
合計で391人の患者を2つの処置群の1つに無作為に選んだ(リキシセナチド群に196人及びプラセボ群に195人)。プラセボ群の1人の無作為に選んだ患者は、個人的な理由のために研究処置に曝されなかった。合計で390人の患者が二重盲検処置に曝された。人口統計学及び患者のベースライン特徴は全体的に処置群にわたって類似したものであった。390人の患者のうち、363人(93.1%)が24週の二重盲検処置を完
了した(リキシセナチド群における179人の患者[91.3%]及びプラセボ群における184人の患者[94.8%])。2人の患者(各群で1人の患者[0.5%])は、ベースライン後有効性データの欠如のために有効性分析のための改変治療意図解析(mITT)集団から除外された。
【0073】
HbA1cの主要終点については、リキシセナチド対プラセボの有効性を、HbA1cにおけるベースラインから24週までの最小二乗(LS)平均変化の前もって指定された主要解析に基づいて実証した(リキシセナチド及びプラセボ群においてそれぞれ−0.83%及び−0.47%;LS平均差異対プラセボ=−0.36%;95%信頼区間[CI]: −0.551、−0.162;p値=0.0004)。
【0074】
Cochran−Mantel Haenszel(CMH)法を使用したHbA1c応答者(すなわち、24週目に6.5以下又は7%未満のHbA1cを有する患者)の解析もまた、リキシセナチド群とプラセボ群との間で統計的に有意な処置差異を示した(HbA1cについて6.5%以下、リキシセナチド群において32.4%に対してプラセボ群において18.1%、p値=0.001;HbA1cについて7%未満、リキシセナチド群において53%に対してプラセボ群において38.8%、p値=0.003)。
【0075】
標準化食事後の食後2時間後血漿グルコース(PPG)について、リキシセナチド群は、4.28mmol/LのLS平均差異でプラセボ群に勝る統計的に有意な改善を示した(p値<0.0001)。グルコース変動幅の分析は同様の結果を示した。プラセボと比較した空腹時血漿グルコース(FPG)における群間差異もまた、0.48mmol/LのLS平均差異でリキシセナチド群について統計的に有意であった(p値=0.0109)。体重については、1.5kgまでの同様の減少が両方の処置群において観察され、統計的に有意な差異は観察されなかった(LS平均差異リキシセナチド対プラセボ=0.27kg;p値=0.2960)。救出治療(rescue therapy)を必要とする患者のパーセンテージはリキシセナチド群において3.6%及びプラセボ群において6.7%であった。
【0076】
試験治療下で発現した有害事象(TEAE)の発生数は、プラセボ処置群と比較してリキシセナチド処置群において高かった(それぞれ64.3%及び47.4%)。死亡に至る処置上のSAEを有する患者はいなかった。深刻なTEAEを有する患者の数は両方の処置群において同様であった(それぞれリキシセナチド群及びプラセボ群において3[1.5%]及び4[2.1%])。プラセボ群(3人の患者[1.5%])よりもリキシセナチド群においてより多くの患者(11人の患者[5.6%])が、TEAEに起因して、主に胃腸障害の器官別大分類(SOC)からの有害事象(AE)に起因して処置を中止した。リキシセナチド群において最も一般的に報告されたTEAEは悪心であり、これはグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)受容体アゴニストの公知の安全性プロフィールと一致する。より高いパーセンテージの患者が、プラセボ処置群と比較してリキシセナチド群において悪心を有していた(それぞれ32人の患者[16.3%]及び5人の患者[2.6%])。これらの事象は、この研究の初めにより頻繁に発生した。リキシセナチド処置群において二番目に多く頻繁に報告されたTEAEは低血糖であった(18[9.2%] リキシセナチド対9[4.6%]プラセボ)。合計で16人の患者[4.1%]がプロトコルにおいて定義される症候性低血糖事象を有していた:リキシセナチド群の11人の患者(5.6%)及びプラセボ群の5人の患者(2.6%)。血中グルコース60mg/dL未満の症候性低血糖の発生率は、2つの処置群において正確に同じであった(各群において3人の患者[1.5%])。症候性低血糖事象はいずれも深刻又は重症な強度ではなかった。プラセボ群と比較してリキシセナチド群においてより高いパーセンテージの患者がめまい感及び嘔吐を有していた(めまい感については、それぞれ17人の患者[8.7%]及び8人の患者[4.1%];嘔吐については、それぞれ15人の患者[7.7%]及び2人の患者[1.0%])。合計3人の患者(リキシセナチドでの2人の患者[1.0%]及びプラセボでの1人の患者[0.5%])が、アレルギー反応評価委員会(ARAC)によりアレルギー反応と判定されたTEAEを有しており、これらのうち、リキシセナチド群の2人の患者からの2つの事象(アナフィラキシーショック及び注射部位反応)が、治験薬(IP)と関連している可能性があるとみなされた。膵炎又はカルシトニンの増加が疑われる患者はいずれの処置群でも報告されなかった。
【0077】
要約すれば、研究の結果は、ベースラインから24週までのHbA1cの変化、2時間後PPG、及びFPGの減少、並びに24週目におけるHbA1c応答者率により裏付けられるように血糖管理の観点から、プラセボと比較してリキシセナチドでの処置の優れた有効性を実証した。リキシセナチドは、24週の処置期間の間十分な耐容性であった。深刻なTEAEの発生数は、リキシセナチド群及びプラセボ群において同様であった。プラセボと比較してリキシセナチドで処置された患者のより高いパーセンテージの患者が症候性低血糖を経験した。しかし、60mg/dL未満の血中グルコースの症候性低血糖の発生率は、2つの処置群において正確に同じであった。悪心、めまい感及び嘔吐は、プラセボよりもリキシセナチドでより頻繁に報告された。予期しない特定の安全性の懸念は試験の間に観察されなかった。全体的に、リキシセナチドは十分に耐容性であり、そしてスルホニル尿素を用いるか又は用いずにメトホルミンで十分に管理されないT2DM患者においてプラセボ治療と比較した場合に有効性であった。
【0078】
1 目的
1.1 主目的
本研究の主目的は、メトホルミンに対する付加療法として、スルホニル尿素を用いるか又は用いずに、T2DM患者において24週の期間にわたるHbA1減少の観点から、プラセボと比較してリキシセナチドの血糖管理に対する効果を評価することであった。
【0079】
1.2 副次的目的
本研究の副次的目的は以下であった:
・ 以下に対する24週にわたるリキシセナチドの効果を評価すること:
− HbA1c 7%未満又はHbA1c 6.5%以下に達する患者のパーセンテージ、
− FPG、
− 標準化食事試験の間の2時間後PPG及びグルコース変動幅(全ての無作為に選ばれた患者の約50%)、
− 体重、
・ リキシセナチドの安全性及び耐容性を評価すること
・ リキシセナチドの薬物動態(PK)を評価すること及び抗リキシセナチド抗体の開発
【0080】
2 治験設計
この研究は、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、ツーアーム平行群、平衡設計(1:1の比)の、各アームにおいて190人の患者で計画された多国籍研究であった。この研究は、活性処置及びプラセボ処置に関して二重盲検であった。治験薬体積(すなわち、用量設定及び維持期の間の活性薬物又は適合するプラセボの用量)は知らされていた。
【0081】
これらの患者を、スクリーニング時にHbA1c(8%未満、8%以上)及びスルホニル尿素の使用(有、無)により層別化した。各スルホニル尿素層(スルホニル尿素を用いる、スルホニル尿素を用いない)の患者数は均衡するように計画された。
【0082】
この研究は、3つの期間を含んでいた: 1) 3週までのスクリーニング期間、これは2週までの初期スクリーニング期及び1週の単純盲検プラセボ導入(run−in)期を含んでいた; 2) 24週の二重盲検、プラセボ対照処置期間; 3) 永続的IP中止後の全ての患者についての3日の安全性経過観察期間(研究処置を早期中止した患者を除く)。
【0083】
一段階用量増加投与計画を治験において使用した。二重盲検期間の間、注射あたりの開始用量は、朝食前1時間以内(すなわち0〜60分まで)に1日1回(QD)投与される10μgリキシセナチド又は適合された体積のプラセボであった。注射あたりの用量を2週間後に20μgまで増加させたが、ただし、安全性及び耐容性により、全ての患者について研究全体を通して5回前の来診(2週)から、20μg/注射の標的処置レベル又は体積適合プラセボまでの用量増加は妨げられなかった。
【0084】
バックグラウンド治療については、メトホルミン用量を少なくとも1.0g/日かつ1.5g/日より多くないベーライン用量で研究全体を通して安定に維持した。メトホルミンに加えてスルホニル尿素を与えられた患者において、スルホニル尿素の用量を、8%未満のスクリーニング時HbA1cを有する患者において低血糖の危険性を減少させるために25%〜50%だけ無作為に減少させた;スクリーニング時に8%以上のHbA1cを有する患者において、スルホニル尿素の用量を少なくとも最大有効容量(すなわち、現地の表示に従って推奨される最大量の半分)のそのベースライン用量で安定に維持した。
【0085】
研究処置を早期に中止した患者は、研究完了の予定された日付まで研究を継続した。彼らを、プロトコルにおいて特定される研究手順に従って経過観察した(処置後3日の安全性経過観察、食事試験、及びPK評価を除く)。
【0086】
患者あたりの研究期間は27週±10日であった(2週のスクリーニング+1週の導入+24週の二重盲検処置+3日の経過観察まで)。詳細については、図7を参照のこと。
【0087】
3 主要終点及び鍵となる副次的終点
3.1 主要終点
主要有効性変数は、ベースラインから24週までのHbA1cの絶対変化であり、これは:24週目のHbA1c値 − ベースラインでのHbA1c値として定義された。
【0088】
患者が永続的に処置を中止したか、又は24週の二重盲検処置期間の間に救出治療を受けたか、又は24週目のHbA1c値を有していなかった場合、24週二重盲検の実際の処置に基づく(on−treatment)期間の間の最後のベースライン後HbA1c測定値を24週目のHbA1c値として使用したか、又は救出の場合は救出前の最後の値を使用した(最終観察繰越[LOCF]手順)。
【0089】
3.2 副次的終点
3.2.1 有効性終点
副次的有効性変数については、主要有効性変数と同じ、欠けている評価/早期中止を扱うための手順を適用した。
【0090】
連続変数
・ ベースラインから24週目までのFPGの変化(mmol/L)
・ ベースラインから24週までの標準化食事後の2時間後PPG(mmol/L)の変化
・ ベースラインから24週までの標準化食事負荷試験後のグルコース変動幅(2時間後PPG − 研究薬物投与前の食事試験の30分前の血漿グルコース)(mmol/L)の変化
・ ベースラインから24週までの体重(kg)の変化
分類別変数
・ 24週目に7%未満のHbA1cを有する患者のパーセンテージ
・ 24週目に6.5%以下のHbA1cを有する患者のパーセンテージ
・ 24週の二重盲検処置期間の間に救出治療を必要とする患者のパーセンテージ
・ ベースラインから24週目までに5%以上減量(kg)した患者のパーセンテージ。
【0091】
3.2.2 安全性終点
安全性解析は、報告されたTEAE、並びに症候性低血糖及び重症の症候性低血糖、注射部位における局所的耐容性、アレルギー事象(ARACにより判定されるとおり)、膵炎の疑い、カルシトニンの増加、バイタルサイン、12誘導(lead)心電図(ECG)及び安全性臨床検査を含む他の安全性情報に基づくものであった。
【0092】
主要な心血管事象もまた収集し、そして心血管判定委員会(Cardiovascular Adjudication Committee)(CAC)により判定された。この研究及び他のリキシセナチド第3相研究からのCACにより判定されかつ確認された事象を解析のためにプールし、そしてリキシセナチドの全体的な心血管評価についての統計的解析計画に基づく別の報告にまとめる。
【0093】
4 サンプルサイズ計算前提
サンプルサイズ計算を、ベースラインから24週までのHbA1cの絶対変化の主要有効性変数に基づいて行った。
【0094】
合計380人の患者(アームあたり190人)は、リキシセナチド処置群とプラセボ群との間のベースラインから24週までのHbA1cの絶対変化における0.5%の差異を検出するための96%の検出力をもたらすと期待され、5%有意性レベルで両側検定を用いて1.3%の共通SDと仮定した。サンプルサイズ計算は、2サンプルt検定に基づき、nQuery(R) Advisor6.01を使用して行った。
【0095】
5 統計方法
5.1 解析集団
mITT集団は、研究プロトコル及び手順の順守に関わらず、少なくとも1用量の二重盲検化IPを投与され、かつベースライン評価並びに有効性変数の少なくとも1回のベースライン後評価の両方を受けている、全ての無作為化患者からなるものであった。
【0096】
安全性集団は、少なくとも1用量の二重盲検IPを服用した全ての無作為化患者として定義された。
【0097】
5.2 主要有効性解析
主要有効性変数(ベースラインから24週までのHbA1cの変化)を、固定効果として処置群(リキシセナチド及びプラセボ)、HbA1cでスクリーニングした無作為化層(8.0%未満、8.0%以上)、スルホニル尿素の使用でスクリーニングした無作為化層(有、無)、及び国を用いて、そして共変数としてベースラインHbA1c値を使用する共分散分析(ANCOVA)モデルを使用して解析した。リキシセナチドとプラセボとの間の差異、及び両側95% CI、さらにはp値をANCOVAのフレームワーク内で見積もった。
【0098】
主要有効性変数の主要解析を、mITT集団、及び有効性変数について二重盲検の実際の処置に基づく(on−treatment)期間の間に得られた測定値に基づいて行った。食事負荷試験からのものを除く有効性変数についての二重盲検の実際の処置に基づく処置期間を、二重盲検IPの最初の投薬から、二重盲検IP注射の最後の投薬の後3日まで(中央検査室によるFPGを除く、これは1日までであった)、又は救出治療の導入までのいずれか早い方の期間として定義された。LOCF手順を、この最後の利用可能なベースライン後の実際の処置に基づくHbA1c測定(救出治療の事象における新しい薬物の開始前)を24週におけるHbA1c値とみなすことにより使用した。
【0099】
5.3 副次的有効性解析
PPG及びグルコース変動幅を含む食事負荷試験からの有効性変数についての二重盲検の実際の処置に基づく期間を、二重盲検IPの最初の投薬から、二重盲検IP注射の最後の投薬の日まで、又は救出処置の導入までのいずれか早い方までの期間として定義した。
【0100】
主要変数がα=0.05で統計的に有意であれば、試験手順を、以下の優先順位により以下の副次的有効性変数を試験するために行った。これらの試験を、終点がα=0.05で統計的に有意でないと分かるとすぐに中止した。
【0101】
1. ベースラインから24週までの標準化食事後の2時間後PPG(mmol/L)の変化、
2. ベースラインから24週までのFPG(mmol/L)の変化、
3. ベースラインから24週までの体重(kg)の変化、
4. 24週の二重盲検処置期間の間に救出治療を必要とする患者のパーセンテージ。
【0102】
3.2.1の項に記載されるような24週目の全ての連続的副次的有効性変性を、主要有効性終点の主要解析について上で記載されるように同様のアプローチ及びANCOVAモデルを使用して解析した。リキシセナチドとプラセボとの間の処置平均差異の調節された推定値及び両側95% CIが提供される。
【0103】
24週における以下の分類別副次的有効性変数を、無作為化層に層化されたCMH法を使用して解析した(スクリーニング時HbA1c[8.0%未満、8%以上]及びスクリーニング時のスルホニル尿素の使用[有、無]):
・ 24週目に7.0%未満のHbA1cを有する患者のパーセンテージ、
・ 24週目に6.5%以下のHbA1cを有する患者のパーセンテージ、
・ 24週の二重盲検処置期間の間に救出治療を必要とする患者のパーセンテージ。
【0104】
24週目に5%以上の体重減少を有する患者の数及びパーセンテージを処置群により示した。
【0105】
5.4 安全性解析
安全性解析は、主に実際の処置に基づく期間に基づくものであった。実際の処置に基づく期間は、二重盲検IPの最初の投薬から、救出状態にかかわらずIP投与の最後の投薬の3日後までの期間として定義される。3日の間隔は、リキシセナチドの半減期に基づいて選択された(半減期の約5倍)。
【0106】
安全性の結果の要約(記述的統計又は頻度の表)を処置群ごとに示した。
【0107】
6 結果
6.1 研究患者
6.1.1 患者説明責任
この研究は4つの国又は地域(中国、マレーシア、タイ、及び香港)の37の施設において行われた。合計で655人の患者をスクリーニングし、そして391人を2つの処置群のうちの1つに無作為に選んだ。スクリーニング不適格症(screening failure)の主な理由は、スクリーニング来診時のHbA1c値が規定されたプロトコル範囲から外れていたためであった(147人の患者[22.4%])。
【0108】
表1は、各解析集団に含まれる患者の数を提供する。1人の無作為化された患者(プラセボ群)は、患者が研究から離脱したために研究処置に曝されなかった。他の390人の無作為化された患者は研究処置に曝された。2人の患者(各群において1人の患者[0.5%])を、ベースライン後有効性データが無いために有効性解析のためのmITT集団から除外した。
【0109】
【表8】
【0110】
6.1.2 研究素質(disposition)
表2は、各処置群についての患者素質の要約を提供する。実際に行われた処置に基づく期間の間に、27人の患者は早期に研究処置を中止した。処置を中止した患者のパーセンテージは、プラセボ群よりもリキシセナチド群において高かった(それぞれ8.7%及び5.1%)。処置の中止の主な理由は「有害事象」であり(14人の患者)、プラセボ群よりもリキシセナチド群において患者が多く(それぞれ11人の患者[5.6%]及び3人の患者[1.5%])、主に胃腸障害SOCからのAEに起因するものであった(表20)。処置期間にいずれかの理由による処置中止の開始までの時間(time−to−onset)を図8に示し、これは研究の初期においてより頻繁に中止が発生したことを示す。181日目に、リキシセナチド群における2人の患者がおり、2人の患者のうちの1人は処置を中止し、そしてこれは治験担当医師による研究処置中止として記録された。
【0111】
【表9】
【0112】
6.1.3 人口統計学及びベースライン特徴
人口統計学及び患者のベースライン特徴は、安全性集団について2つの処置群の間で全体的に同様であった(表3)。全体的に、研究集団の年齢中央値は56歳であり、スクリーニングHbA1c中央値は7.90%であり、そしてボディマス指数(BMI)中央値は26.30kg/m2であった。
【0113】
【表10】
【0114】
【表11】
【0115】
糖尿病歴を含む疾患特徴は概して2つの処置群の間で類似したものであった(表4)。全体体に、T2DMの期間の平均(SD)は6.64(4.72)年であり、そしてT2DM開始の平均(SD)年齢は48.1(9.8)歳であった。同じ場所からの2人の患者(各処置群において1人)は、スクリーニング来診の少なくとも8ヶ月前に組み換えヒトGLP−1(rhGLP−1)に対する臨床試験に参加していたために以前にGLP−1受容体アゴニストを投与されていたことを報告した。
【0116】
【表12】
【0117】
【表13】
【0118】
【表14】
【0119】
バックグラウンド処置の使用(メトホルミン及び/又はスルホニル尿素)は、一般的には安全性集団について2つの処置群の間で同様であった(表5及び表6)。
【0120】
【表15】
【0121】
全体的に、患者の約半分(174人の患者[44.6%])がスクリーニング来診時にメトホルミンに加えてスルホニル尿素を投与されていた(表6)。症例報告形式(CRF)で記録された「スクリーニング時のスルホニル尿素の使用」のパーセンテージは、表3におけるインタラクティブ・ボイス・レスポンス・システム/インタラクティブ・ウェブ・ベース・システム(Interactive Web Based System)(IVRS/IWRS)において記録された「スクリーニング時のスルホニル尿素の使用の無作為化層」とは異なるものである。しかし、2つの処置群は概して均衡が取れている。
【0122】
【表16】
【0123】
【表17】
【0124】
ベースライン有効性変数は、安全性集団について2つの処置群間で概して同程度であった(表7)。2つの群における研究集団は、HbA1c、2時間後PPG、FPG及び体重を含むベースライン血糖パラメーターに関してよく一致していた。
【0125】
【表18】
【0126】
6.1.4 投薬量及び期間
平均処置曝露は、2つの処置群間で同様であった(リキシセナチド群及びプラセボ群についてそれぞれ159.4日[22.8週]及び165.5日[23.6週])(表8)。390人の患者のうち、325人の患者(83.3%)はプロトコルにより許容される168+/−5日の研究処置を受けた(リキシセナチド群及びプラセボ群においてそれぞれ164人の患者[83.7%]及び161人の患者[83.0%])。1人のプラセボ患者は、CRFページの「処置の終点」に最後の投薬の日付を記録しなかったため、曝露期間は統計解析計画(SAP)データ取り扱い規約に従って欠測と設定された。
【0127】
【表19】
【0128】
2つの処置群における90%より多くの患者が二重盲検処置期間の終わりに20μgの標的合計日用量であった(表9)。
【0129】
【表20】
【0130】
6.2 有効性
6.2.1 主要有効性終点
主解析
予め指定された主要解析は、リキシセナチドでの処置がプラセボ群と比較して、ベースラインから24週までにHbA1cの統計的に有意な減少を生じることを実証した(表10)。HbA1cのLS平均変化はリキシセナチド群について0.83%、そしてプラセボ群については−0.47%であった;LS平均差異対プラセボは、−0.36%、95% CI:−0.551%、−0.162%;p値=0.0004であった。中国における患者は同じ傾向を示した(表28)。
【0131】
【表21】
【0132】
図9に示されるように、両方の処置群におけるHbA1cは、8週目で既に減少しており、そして処置期間全体の間に減少し続けた。
【0133】
副次的解析
CMH法を使用したHbA1c応答者の解析はまた、リキシセナチド群とプラセボ群との間で統計的に有意な処置差異を示した(表11)。24週目に、プラセボ群における患者の38.8%と比較して、リキシセナチド群における患者の半分より多く(53.0%)が、HbA1c7%未満を達成した(p値=0.0030)。
【0134】
【表22】
【0135】
6.2.2 副次的有効性終点
2時間後PPG評価の結果は、プラセボ群と比較してリキシセナチド群においてベースラインから24週までに統計的に有意な改善を示した(LS平均差異対プラセボ=−4.28mmol/L;p値<0.0001)(表12)。グルコース変動幅の解析は同様の結果を示した(表17)。
【0136】
【表23】
【0137】
FPGについては、ベーラインから24週までに統計的に有意な改善が、プラセボ群と比較してリキシセナチド群において観察された(LS平均差異 対 プラセボ=0.48mmol/L;p値=0.0109)(表13、図10)。
【0138】
【表24】
【0139】
24週目でのベースラインからのLS平均体重減少は、リキシセナチド患者について1.50kg、そしてプラセボ患者について1.24kgであった(表14、図11)。2つの処置群の間で統計的に有意な差異は観察されなかった(LS平均差異 対 プラセボ=−0.27kg;p値=0.296)。リキシセナチド群におけるわずかに多い数の患者が、プラセボ患者と比較してベースラインから24週までの5%又はそれ以上の体重減少を有していた(それぞれ19.7%及び14.7%)(表15)。
【0140】
【表25】
【0141】
【表26】
【0142】
24週目に救出治療を必要とする患者の数は、プラセボ群における13人の患者[6.7%]と比較してリキシセナチド群において7人の患者[3.6%]であった(表16)。
【0143】
【表27】
【0144】
リキシセナチド処置は、プラセボ処置と比較してベースラインから24週までに食後血漿グルコース変動幅を実質的に減少させた(LS平均差異 対 プラセボ=3.99mmol/L、95% CI=−4.969、−3.010)。
【0145】
【表28】
【0146】
要約すると、この研究の結果は、スルホニル尿素を用いるか又は用いずに、メトホルミンにより十分管理されないT2DM患者におけるHbA1cの変化、HbA1c応答者、2時間後PPG、及びFPG減少により明らかなように、血糖管理に関して24週目にプラセボと比較してリキシセナチドを用いた処置の優れた有効性を実証した。
【0147】
6.3 安全性
表18は、TEAEを有していた患者の概要を示す。表19及び表20は、深刻なTEAE、並びに主要SOC、高位グループ用語(HLGT)、高位用語(HLT)及び基本語(Preferred Term)(PT)による処置中止に至るTEAEを要約する
【0148】
表18に示されるように、TEAEの発生率は、プラセボ群と比較してリキシセナチド群において高かった(それぞれ64.3%及び47.4%)。7人の患者が深刻なTEAEを有し、リキシセナチド及びプラセボ群において同様の発生率であった(それぞれ3人の患者[1.5%]及び4人の患者[2.1%])。死亡に至る深刻なTEAEを有する患者はいなかった。処置の中止に至るTEAEを有する患者のパーセンテージは、プラセボ群と比較してリキシセナチド群において高く(それぞれ11人の患者[5.6%]及び3人の[1.5%])、これは胃腸障害SOCにおける不均衡に主に関連付けられた(それぞれリキシセナチド群における8人の患者[4.1%]、及びプラセボ群における0人の患者)(表20)。
【0149】
別表の表26は、2つの処置群における少なくとも1%の患者において発生した実際の処置に基づく期間の間のTEAEの発生率を示す。悪心が、プラセボ群(5人の患者[2.6%])と比較してリキシセナチド群(32人の患者[16.3%])において最も一般的に報告されたTEAEであった。リキシセナチド−処置患者において二番目に頻繁に報告されたTEAEは低血糖であり(18人の患者[9.2%])、続いてめまい感(17人の患者[8.7%])及び嘔吐(15人の患者[7.7%])であった。プラセボ群における対応する患者数(%)は、低血糖について9人の患者(4.6%)、めまい感について8人の患者(4.1%)、そして嘔吐について2人の患者(1.0%)であった。
【0150】
実際の処置に基づく期間の間、いずれの処置群でも膵炎を疑われた患者も、リパーゼ又ははアミラーゼの少なくとも1つの値が3正常範囲の上限(ULN)以上と報告された患者もいなかった。
【0151】
【表29】
【0152】
リキシセナチド群における3人の患者は、実際の処置に基づく期間の間に少なくとも1つの深刻な有害事象(SAE)を経験し(表19)、これらのうち、1人の患者はリキシセナチドの最初の注射後に3つの事象(アナフィラキシーショック、急性心筋梗塞、及びラクナ梗塞)を報告され、そして処置を永久的に中止した;1人の患者は脳梗塞を経験し(処置の80日目)、これにより処置の中止に至った;1人の患者は入院を伴う腹痛を経験し(処置の13日目)、これは処置の中止には至らなかった。4人の患者における合計4つのSAEが実際の処置に基づく期間の間にプラセボ群において報告された(それぞれ高血圧、肝機能異常、前立腺炎、及び良性前立腺増殖症)。4つの事象はいずれもIPと関連がなく、永久的な研究処置の中止には至らなかった。
【0153】
アナフィラキシーショック、急性心筋梗塞、ラクナ梗塞(156029017):
高血圧、脂質異常症の病歴を有し、そしてアレルギーの病歴はない66歳の男性T2DM患者は、最初のIPの投薬の10分後に、皮膚の痒み、体全体の発疹及び紅潮の開始を伴う、アレルギー型の症状を経験した。10分後に、彼の血圧は60/40mmHgに低下し(グルコース値10.2mmol/L)、そして患者が無意識になったときにアレルギーショックが起こり、そして彼の呼吸は遅くかつ浅くなった。この患者は入院し、そしてデキサメタゾン、プロメタジン及びドパミンで処置された。彼は約1時間後にアレルギーショックから回復し、そして約6時間後にアレルギー反応から回復した。同日に試験されたECG及び心筋酵素に基づいて、彼は虚血症状の無い急性心筋梗塞と診断された。彼の状態はクロピドグレル、アスピリン、低分子量ヘパリン、メトプロロール、及びクレアチンリン酸を用いた矯正処置を受けた後安定していた。研究処置をアナフィラキシーショック及び急性心筋梗塞のために中止した。永久IP中止の6日後に、脳磁気共鳴画像法(MRI)スキャンはラクナ梗塞を示した(CACにより脳卒中ではないと判定された)。2週後、この患者は回復して退院した。ラクナ梗塞後の残留効果はなかった。症例はSanofi(Pharmacovigilance)により非盲検にされ、そしてこの患者はリキシセナチドを投与された。治験担当医師はアナフィラキシーショック及び心筋梗塞の事象を治験薬に関連するものと評価し、そしてラクナ梗塞はIPに関連しないと評価した。
【0154】
脳梗塞(156015018):
高血圧及び脂質異常症の病歴を有する63歳男性T2DM患者は無作為にリキシセナチド処置群に選ばれ、そして試験処置の進行中(80日目)に軽度の脳梗塞を経験した。研究処置を中止した。4日後、彼は右側脱力のために入院した。脳MRIスキャンにより、急性橋梗塞、多発性脳梗塞、左側頭領域における異常なシグナル、白質病変及びアテローム性動脈硬化が明らかになった。10日後、彼は矯正処置(詳細不明)後に安定した状態で退院した。しかし、この患者は9日後に身体右側の虚脱のため再入院した。二度目の脳MRIにより、橋梗塞、多発性脳梗塞、軽い(light)脳萎縮、白質病変及びアテローム性動脈硬化であると考えられる左前前頭葉からの異常なシグナルが明らかになった。12日後に、この患者は本質的に回復したと評価され、そして抗血小板及び高血圧の治療を用いた矯正治療を受けた後に退院した。この事象は、CACにより非致死的虚血性脳卒中と最終的に判定された。治験担当医師は、この脳梗塞は治験薬と関連しないと評価した。
【0155】
腹部痛(156008020):
乳癌、子宮筋腫、高血圧、脂質異常症、狭心症、肥満、高尿酸血症の関連する治療歴、並びにペニシリン及び食物のアレルギーの病歴を有する65歳女性T2DM患者は、リキシセナチド処置群に無作為に選ばれた。彼女はIPの最初の投薬の7日後に中程度の腹部膨張痛を生じた。彼女は、腹痛のさらなる評価及び診断のために5日後に入院した。研究処置を継続した。およそ11日後、患者は回復し、そして矯正処置なしに退院した。さらなる情報は入手可能でない。入院時診断はなお腹痛のままであった。治験担当医は腹痛の事象を治験薬に関連すると評価した。
【0156】
高血圧(156007024):
肥満、高血圧、脂質異常症、心筋虚血、及び胆石症の病歴を有する63歳女性T2DM患者はプラセボ処置群に無作為に選ばれた。彼女は研究処置において(106日目)血圧が200/100mmHgまで上昇し中程度の高血圧を経験した。研究処置を継続した。彼女は入院してフェロジピン、ロサルタン、メトプロロール、及びシンバスタチンを用いた矯正処置を受けた。彼女の血圧は3日以内に正常化し、そして8日後に退院した。治験担当医はこの事象を治験薬に関係しないと評価した。
【0157】
肝機能異常(156030011):
脂肪肝及び脂質異常症の病歴を有する55歳男性T2DM患者はプラセボ処置群に無作為に選ばれた。彼は研究処置進行中(86日目)に重症の医学的に重篤な肝機能障害を発症した。9回目の来診時の肝機能試験(LFT)により、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGPT) 571U/L(正常:6〜41U/L)、グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT) 218U/L(正常:9〜34U/L)、及びガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT) 291U/L(正常: 11 52U/L)が明らかとなった。患者は悪心も嘔吐もなく嗜眠状態を感じただけであった。彼はアルコールを時々しか飲まず、そして彼の脂肪肝は十分管理されていた。患者は歯周炎の処置のためにメトロニダゾール及び伝統的な漢方薬を投与されており、これらは肝機能障害の時に使用されていた。研究処置を一時的に1週間停止し、そして患者はグリチルリチン酸ジアンモニウムを用いた矯正処置を受けた。患者のスクリーニングLFTは正常であった。無作為化来診時に、SGPTは94U/Lに上昇し、SGOTは41U/L、そしてGGTは298U/Lであった。21日後に、患者のLFTはほぼ正常であった。研究処置を6日後に再開した。治験担当医はこの事象を治験薬に関係しないと評価した。
【0158】
前立腺炎(156015007):
高血圧及び前立腺炎の病歴を有する62歳男性T2DM患者は無作為にプラセボ処置群に選ばれた。彼は研究処置97日目に、半年間継続している軽度の腹部膨満により入院した。研究処置は継続された。矯正処置はアズトレオナム及び伝統的な漢方薬を含んでいた。患者の症状は改善し、そして彼は慢性前立腺炎と診断された11日後に退院した。治験担当医はこの事象を治験薬に関係しないものと評価した。
【0159】
良性前立腺肥大症(156008016):
高血圧及び異常脂質症の病歴を有する60歳男性T2DM患者はプラセボ処置群に無作為に選ばれた。彼は研究処置進行中に(52日目)中程度の前立腺肥大を経験した(52日目)。症状は尿意頻数、尿貯留(3日間)及び排尿困難を特徴とし、これらは1年間の間に悪化していた。研究処置を継続した。彼は入院し、そして8日後に尿道拡張及び経尿道的前立腺切除術を受けた。術後に彼は抗炎症薬を投薬された。11日後に、患者は安定した状態で退院した。治験担当医はこの事象を治験薬に関連しないと評価した。
【0160】
【表30】
【0161】
【表31】
【0162】
リキシセナチド群における処置中止に至る最も一般的なTEAEは胃腸障害であった。11人(5.6%)のリキシセナチド処置患者が、TEAEにより処置を永久的に中止し、そしてその中でも、8人(4.1%)の患者が胃腸障害のTEAEにより処置を中止したが(表20)、これらの胃腸有害事象のうちプラセボ群において処置中止に至ったものはなかった。最も頻繁に報告された処置中止に至った事象は悪心及び嘔吐であった(それぞれ3人の患者[1.5%]及び2人の患者[1.0%])。
【0163】
【表32】
【0164】
【表33】
【0165】
合計で16人の患者(4.1%)が、実際の処置に基づく期間の間に、プロトコルの定義を満たす症候性低血糖を有していた(リキシセナチド群及びプラセボ群においてそれぞれ11人[5.6%]及び5人[2.6%])(表21)。これらの事象はいずれも重症又は深刻とはみなされなかった。血中グルコース60mg/dL未満の症候性低血糖の数は2つの処置群で同じであった(各群において3人[1.5%])。さらに、2つの処置群の間で、60mg/dL未満の血中グルコースを有する数の差異は、メトホルミンに加えてスルホニル尿素を用いて処置された患者において観察されなかった(リキシセナチド群及びプラセボ群においてそれぞれ3人の患者[3.3%]及び3人の患者[3.7%])(表29)。
【0166】
【表34】
【0167】
注射部位反応事象は、治験担当医が報告した用語からコード化されたPT又はアレルギー反応判定後のARAC診断用語からコード化されたPTのいずれかで用語「注射部位(injection site)」を検索することにより同定された。実際の処置に基づく期間の間に注射部位反応を経験した患者は合計で7人(1.8%)であり(リキシセナチドで5人及びプラセボで2人)、これらはいずれも深刻でも重症でもなく、処置中止に至るものは無かった(表22)。
【0168】
【表35】
【0169】
合計で15の症例が治験担当医によりアレルギー事象の疑いがあるとして実際の処置に基づく期間の間に報告され、そして判定のためにARACに送られた。これらの症例のうち3件はARACによりアレルギー反応と判定された(リキシセナチドにおける2人の患者[1.0%]及びプラセボにおける1人の患者[0.5%])(表23)。リキシセナチド群における両方の事象はおそらくIPに関連するとARACにより判定され、それらのうち1つの事象(アナフィラキシーショック)はIPの最初の投薬後に起こり(156029017、詳細は41ページを参照のこと)、そして永久的処置中止に至り、そして1つの事象(注射部位反応)は処置の15日後に起こり(これは処置中止には至らなかった)、そして患者は処置を継続しながら回復した。
【0170】
【表36】
【0171】
血清カルシトニンの増加はTEAEとして報告されなかった(表24)。リキシセナチド群において、1人の患者は12回目の来診(処置来診の終わり)に20ng/mlより高いカルシトニン(23.6pg/mL)が見られたが、1週間以内に再検査カルシトニン値は正常に戻った(15.7pg/mL)。この症例についてAEは報告されなかった。
【0172】
【表37】
【0173】
【表38】
【0174】
結論として、リキシセナチドは24週の処置期間の間、十分に耐容性であった。研究処置の永久的な中止に至るTEAEの発生率は、プラセボ群よりもリキシセナチド群において高く、これは主に胃腸のTEAEに起因するものであった。深刻なTEAEの発生率は2つの処置群において同様であった。プラセボと比較してリキシセナチドで処置された患者のより高いパーセンテージが症候性低血糖を経験したが、60mg/dL未満の血中グルコースを伴う症候性低血糖を有する患者数は2つの処置群において正確に同じであった。悪心、めまい感及び嘔吐は、プラセボよりもリキシセナチドでより頻繁に観察された。新しい特定の安全性の懸念は試験の間に観察されなかった。
【0175】
7 別表
【表39】
【0176】
【表40】
【0177】
【表41】
【0178】
【表42】
【0179】
【表43】
【0180】
【表44】
【0181】
【表45】
【0182】
【表46】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]