特許第6442287号(P6442287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6442287触媒組成物及び1,3−ブタジエンを得るための、ブテン類又はブタン類とブテン類との混合物の脱水素化方法
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  • 特許6442287-触媒組成物及び1,3−ブタジエンを得るための、ブテン類又はブタン類とブテン類との混合物の脱水素化方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442287
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】触媒組成物及び1,3−ブタジエンを得るための、ブテン類又はブタン類とブテン類との混合物の脱水素化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/62 20060101AFI20181210BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20181210BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20181210BHJP
   B01J 23/96 20060101ALI20181210BHJP
   B01J 38/12 20060101ALI20181210BHJP
   C07C 5/333 20060101ALI20181210BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20181210BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20181210BHJP
【FI】
   B01J23/62 Z
   B01J35/08 Z
   B01J35/10 301G
   B01J23/96 Z
   B01J38/12 B
   C07C5/333
   C07C11/167
   !C07B61/00 300
【請求項の数】23
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-549607(P2014-549607)
(86)(22)【出願日】2012年12月24日
(65)【公表番号】特表2015-507534(P2015-507534A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】IB2012057690
(87)【国際公開番号】WO2013098761
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年11月20日
(31)【優先権主張番号】MI2011A002403
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512115977
【氏名又は名称】ヴェルサリス ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】イエッツィ ロドウフォ
(72)【発明者】
【氏名】マンジニ ジューリオ
(72)【発明者】
【氏名】ポッレセル パオロ
(72)【発明者】
【氏名】デル セッピア アレッサンドロ
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0236985(US,A1)
【文献】 特開昭55−100323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C07B 31/00−63/04
C07C 1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水素化法用の触媒組成物であって、微小球状アルミナ及び活性成分を含有し、該活性成分が、ガリウム及び/又は酸化ガリウム、スズ及び/又は酸化スズ、該触媒組成物の全質量に対して1ppm〜50ppmなる範囲の量の白金及び/又は酸化白金、及びアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物で構成される混合物を含むことを特徴とする、前記触媒組成物。
【請求項2】
前記酸化ガリウムが、Ga2O3、Ga2O及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記アルミナが、シリカで変性されている、請求項1記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記酸化スズが、SnO、SnO2及びこれらの混合物から選択される、請求項1又は2記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記酸化白金が、PtO、PtO2及びこれらの混合物から選択される、請求項1又は2記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記アルカリ金属酸化物が、K2Oである、請求項1又は2記載の触媒組成物。
【請求項7】
ガリウム及び/又は酸化ガリウムの量が、前記触媒組成物の全質量に対して、0.05質量%〜34質量%なる範囲にある、請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物の量が、前記触媒組成物の全質量に対して、0.1質量%〜5質量%なる範囲にある、請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
ガリウム及び/又は酸化ガリウムの量が、前記触媒組成物の全質量に対して、0.2質量%〜3.8質量%なる範囲にある、請求項7記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物の量が、前記触媒組成物の全質量に対して、0.1質量%〜3質量%なる範囲にある、請求項8記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記Sn及び/又は酸化スズの量が、前記触媒組成物の全質量に対して、0.001質量%〜1質量%なる範囲にある、請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記Sn及び/又は酸化スズの量が、前記触媒組成物の全質量に対して、0.05質量%〜0.4質量%なる範囲にある、請求項11記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記微小球状アルミナの表面積が、150m2/g以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項14】
前記シリカの量が、0.05質量%〜5質量%である、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項15】
前記シリカの量が、0.03質量%〜3質量%である、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項16】
単独のブテン類、又はその混合物、あるいはブテン類とブタン類との混合物から選択される試薬から出発する、1,3-ブタジエンを得るための脱水素化方法であって、
以下の工程、
・該薬を脱水素化区画に供給する前に、該試薬を不活性製品で希釈する工程;
・微小球状アルミナ及び活性成分を含有し、該活性成分が、ガリウム及び/又は酸化ガリウム、スズ及び/又は酸化スズ、該触媒組成物の全質量に対して1ppm〜500ppmなる範囲の量の白金及び/又は酸化白金、及びアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の酸化物で構成される混合物を含む触媒組成物の存在下で、該脱水素化区画において該薬を脱水素化して、1,3-ブタジエンを含有するガス状流出物を生成する工程;
・消耗した触媒組成物の少なくとも一部を再生装置に送る工程;
・空気、酸素の欠乏した又は酸素に富む空気から選択されるオキシダントを含有する流れを供給することにより、該再生装置内で、該消耗した触媒組成物を、少なくとも部分的に再生する工程;そして
・該再生された触媒組成物を、該脱水素化区画に戻す工程、
を含むことを特徴とする該脱水素化法。
【請求項17】
前記再生装置に送られなかった、前記触媒組成物の残りの部分を、前記脱水素化区画に直接再循環する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記脱水素化の温度が、450℃〜700℃なる範囲にある、請求項16又は17記載の方法。
【請求項19】
前記不活性製品/薬の容積比が、0〜20なる範囲にある、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記脱水素化の圧力が、約20.3〜約203kPa(0.2〜2atm)なる範囲にある、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記不活性製品が、窒素、メタンと混合された窒素、メタン、水素の存在下におけるメタンから選択される、請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記脱水素化区画が、少なくとも一つの「ファストライザー」反応器を含む、請求項16〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記反応器における前記ガス相の滞留時間が、好ましくは0.2秒〜5秒なる範囲にある、請求項22記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒組成物 及び該触媒組成物を使用する、各ブテン類単独、又はその混合物、又はブタンとブテンとの混合物から出発して、1,3-ブタジエンを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最新の技術において、上記生成物1,3-ブタジエンは、主として、これをC4生成物を含有する流れから選択的に抽出するスチームクラッキング法により、あるいはC4オレフィン類 及びC4パラフィン類の脱水素化により与えられる。この脱水素化に関連して、現在利用されている技術は、CB&Iルーマステクノロジー(Lummus technology)の「カタジエン(Catadiene)」法、及びペトロ-テックス(Petro-Tex (現在はテキサスペトロケミカルズ(Texas Petrochemicals))によって開発された「オキソ-Dプロセス(OXO-D Process)」である。これらの方法両者は、Perp Report Nexant Chem Systems Butadiene/Butylenes 09/10-5において記載されている。
上記「カタジエン」技術は、固定断熱式ベッド上で、かつ真空下で稼働される。その触媒はしばしば再生する必要がある(そのサイクルは1時間未満持続する)ので、生産の連続性を維持するには、より多くの反応器が必要とされる。使用される該触媒は、酸化クロムとアルミナとを主成分とする押出物である。
【0003】
上記カタジエン技術に関連した決定的に重要な局面を、以下に記載する。結果として上記触媒上に残される残留六価クロムは有毒であり、結果としてかなりの環境上の影響を持つ。この反応は、同一の反応器内で起こり、そこで該触媒は、空気によって再生され、かくして、脱水素化、ストリッピング、再生、ストリッピング操作同士の間で複数の流れを遮断するための、大きな電動式バルブのプログラムシーケンスにおける故障があった場合に、空気と炭化水素との混合による潜在的な危険性をもたらす条件を生み出す。
上記触媒床に導入される前に、上記供給原料を予備加熱するオーブンは、ガス状汚染物質、特にNOxの源となる。再生 及びストリッピング用の反応器が、上記反応用に加えて必要とされるので、反応容積は高く、多大な投下資本を要する。
上記「OXO-D」技術は固定床反応器を用いて操作され、該反応器では、ブテン類の酸化的脱水素化が行われ、該ブテン類は該反応器に供給され、蒸気 及び空気と混合される。この方法は、該触媒の再生を行うことなしに稼働される。本質的に2つの、該「OXO-D」技術に係る重要な局面がある。
【0004】
酸素の存在は、酸素から1,3-ブタジエンを精製するための、厳密な区画に使用を強い、酸素は1,3-ブタジエンの重合にとって重要である。有用な生成物に対する選択性は、酸素の存在により悪影響を受け、該酸素は燃焼生成物の生成を有利にし、結果として、1,3-ブタジエンの価格とブテンの価格との間に大きな差がある場合には、組織的な活動(campaigns)を通して該OXO-D法を稼働することが必要となる。
様々な特許 及び特許出願が知られており、これらは、本出願人が以下において列挙するような、ガリウム、スズ、白金 及びアルカリ(alkaline)金属又はアルカリ土類(alkaline earth)金属を主成分とする触媒組成物を記載している:
US 2010168493は、以下のような事項を開示している:
・炭化水素、好ましくは軽質パラフィン類、例えばブタン類 及びイソブタン類、又はペンタン類 及びイソペンタン類から出発する脱水素化反応用の、貴金属を主成分とする多金属触媒;
・スチームクラッキング法又は接触分解法で得られた画分から、不飽和化合物を抽出した後に回収された軽質パラフィン(C4-C5)の脱水素化法における、上記触媒の使用。
【0005】
US 2010168493に記載されている上記多-金属触媒は、Mg酸化物、Ti酸化物、Zr酸化物、アルミナ、シリカ 及びこれらの混合物(シリコ-アルミネート)から選択される支持体上に担持された、Pt、Pd、Rh、Irから選択される貴金属M、Sn、Ge、Pbから選択される少なくとも1種の促進剤X1、場合により、Ga、Ir 及びTlから選択される少なくとも1種の促進剤X2、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含み、ここで原子比:X1/Mは、0.3〜8なる範囲にあり、比:Hir/Mは0.4よりも大きく、かつバイメタル指数(bimetallic index) BMIは、108よりも大きい。該貴金属の量は0.01質量%〜10質量%なる範囲にある。
US 2005033101は以下に列挙する事項を開示している:
・貴金属;アルカリ又はアルカリ土類金属;Sn、Ge、Pb、In、Ga、Tl又はこれらの混合物から選択される化合物を含む触媒組成物、
・0.5g/cm3を超える見掛けの嵩密度との組合せで、120m2/gよりも低い表面積を持つ担体上に担持された、貴金属(Pt);金属 及び酸化物両者として存在するアルカリ金属又はアルカリ土類金属;金属 及び酸化物両者としてのSn、Ge、Pb、In、Ga、Tl 及びこれらの混合物から選択される第三の成分を含む触媒組成物、
・パラフィン 及びC2-C30オレフィン、特にブタン類等の炭化水素から出発して、流動床又は移動床で接触的脱水素化を行い、蒸気相中に水素に富んだ流れを発生する工程、分別計画に従って更なる分別処理に付される、炭化水素に富む液体流を生成する分離工程を含む方法。
【0006】
US 2005033101によれば、上記触媒の担体はアルミナであり、また該担体にとって、これが0.5g/cm3を超える見掛けの嵩密度との組合せで、120m2/gよりも低い表面積を持つことが必須である。また、上記第三の成分に対する上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属のモル比が16を超えるものであることも必須である。最後に、Ptの量は、最終的な組成物に対して、0.01質量%〜5質量%なる範囲にある。該アルカリ金属は、金属 及び酸化物両者として存在し、その量は該最終的な組成物に対して、0.9質量%〜1.1質量%なる範囲にある。該第三の成分は、該最終的な組成物に対して、0.01質量%〜10質量%なる範囲にある。Snは金属 及び酸化物両者として存在する。
EP 1492620は、以下の事項を開示している:
・貴金属(Pt)又はその混合物から選択される第一の成分、最終的な組成物の全質量に対して0.9質量%〜1.1質量%なる範囲の、アルカリ又はアルカリ土類金属から選択される第二の成分、Sn、Ge、Pb、In、Ga、Tl 及びこれらの混合物から選択される第三の成分を含み、0.5g/cm3よりも大きな見掛けの嵩密度との組合せで、50〜120m2/gなる範囲の表面積を持つアルミナ上に担持されている触媒組成物、またここで該第一の成分対該第三の成分のモル比は、1.5〜1.7なる範囲にあり、
・Pt;該組成物の全質量に対して、0.9質量%〜1.1質量%なる範囲の量のK;Sn、Ge、Pb、In、Ga、Tl 及びこれらの混合物から選択される第三の成分を含み、0.6g/cm3よりも大きな見掛けの嵩密度との組合せで、50〜120m2/gなる範囲の表面積を持つアルミナ(θ-アルミナ)上に担持されている触媒組成物、ここで該Pt対該第三の成分のモル比は、1.5〜1.7なる範囲にあり、
・炭化水素、好ましくはパラフィン又はC2-C30オレフィンを、上記触媒と接触させて、蒸気相中に水素に富む流れを発生させる、流動床又は移動床で脱水素化する工程と、分別計画に従って更なる分別処理に付される、液体炭化水素に富む流れを生成する分離工程とを含む方法。この反応における未反応の炭化水素は、上記脱水素化工程に再循環することができる。
【0007】
EP 1492620によれば、上記触媒の担体はアルミナであり、また該アルミナが0.5g/cm3よりも大きな見掛けの嵩密度との組合せで、50〜120m2/gなる範囲の表面積を持つことが必須である。上記貴金属の量は上記最終的な組成物に対して0.01質量%〜5質量%なる範囲にある(0.01質量%は、質量基準での100ppmに等価である)。上記アルカリ金属は、金属 及び酸化物両者として存在し、その量は、該最終的な組成物に対して0.9質量%〜1.1質量%なる範囲にある。上記第三の成分は、該最終的な組成物に対して0.01質量%〜10質量%なる範囲にある。上記Snは金属 及び酸化物両者として存在する。
KR 0142305は、パラフィンを脱水素化するための触媒組成物を記載しており、該触媒組成物は、γ-アルミナ上に担持された、0.1質量%〜1.5%質量%のPt、0.05質量%〜1質量%のスズ、0.05質量%〜1質量%のGa 及び0.5質量%〜5質量%のアルカリ金属を含む。
US 4914075は、以下のような事項を開示している:
・貴金属から選択される第一の成分(Pt)、金属 及び酸化物両者として存在する、アルカリ金属又はアルカリ土類金属から選択される第二の成分、金属 及び酸化物両者としてのSn、Ge、Pb、In、Ga、Tl 及びこれらの混合物から選択される第三の成分を含み、0.5g/cm3を超える見掛けの嵩密度との組合せで、120m2/gよりも低い表面積を持つアルミナ上に担持された触媒組成物;
・炭化水素、例えばパラフィン 及びC2-C30オレフィン、特にブタン類から出発して、蒸気相中に水素に富む流れを発生させる、流動床又は移動床で接触的に脱水素化する工程と、分別計画に従って更なる分別処理に付される、液体炭化水素に富む流れを発生させる、該水素に富む流れを分離する工程とを含む方法。
【0008】
US 4914075によれば、上記触媒の担体はアルミナであり、また該アルミナが、0.5g/cm3を超える見掛けの嵩密度との組合せで、120m2/gよりも低い表面積を持つことが必須である。上記貴金属の量は、最終的な組成物に対して0.01質量%〜5質量%なる範囲にある。上記アルカリ金属は、金属 及び酸化物両者として存在し、またその量は、該最終的な組成物に対して、0.01質量%〜10質量%なる範囲で変動する。上記第三の成分は、該最終的な組成物に対して、0.01質量%〜10質量%なる範囲にある。上記Snは、金属 及び酸化物両者として存在する。
US 7235706は、以下のような事項を開示している:
・シリカにより変性されたアルミナ上に担持された、0.1〜33.6質量%なる範囲の量のガリウム又はガリウム化合物(Ga2O3)、1〜99ppmなる範囲の量の白金、0質量%〜5質量%なる範囲の量の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物を含む触媒系、ここで該シリカは、0.08質量%〜3質量%なる範囲の量で存在する;
・脱水素化工程 及び該触媒の再生工程を含む、C2-C5パラフィン類をC2-C5オレフィン類に転化するための方法。
【0009】
WO 2010107591は、以下のような事項を開示している:
・Sn、Ga、Ge、Pb、In、Tl 及びその化合物、中でも特に酸化物(これらは相互に代わり得る)から選択される第一の成分、貴金属から選択される第二の成分、0〜2質量%なる範囲の、同様に酸化物形状でもあるアルカリ金属又はアルカリ土類金属、アルミナ又はシリカで変性されたアルミナを主成分とする担体を含む触媒組成物、
・0.25〜5質量%なる範囲の、Sn、Ga、Ge、Pb、In、Tl 及びその化合物、中でも特に酸化物(好ましくはGa)から選択される第一の成分、5ppm〜0.05質量%なる範囲の、貴金属から選択される第二の成分、0〜2質量%なる範囲の、同様に酸化物形状でもあるアルカリ金属又はアルカリ土類金属、アルミナ又はシリカで変性されたアルミナを主成分とする担体を含む触媒組成物;
・該触媒の再生工程を含む、ブタンのブチレンへの接触的脱水素化方法、ここで反応器はファスト-ライザーであり得る。
US 6281160は、以下のような事項を開示している:
・少なくとも1種の担体、元素周期律表第VIII属から選択される少なくとも1種の金属(Pt)、Ge、Sn、Pb、Re、Ga、In 及びTlから選択される少なくとも1種の元素M、 及び更にアルカリ金属又はアルカリ土類金属から選択される一種の金属を含む触媒組成物であって、その担体は酸化物、中でも特にアルミナ、シリカ単独、又はこれらの混合物であり、
・特許請求された触媒を使用する、ブタンから出発して、対応するオレフィンとする、脱水素化方法。
【0010】
上記貴金属の量は0.1質量%〜10質量%なる範囲にある。上記元素Mの量は、0.01質量%〜10質量%なる範囲にあり、また上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の量は、0.1質量%〜3質量%なる範囲にある。
US 6187985は、以下のような事項を開示している:
・少なくとも1種の担体、元素周期律表第VIII属元素から選択される少なくとも1種の金属(Pt)、Ge、Sn、Pb、Re、Ga、In 及びTlから選択される少なくとも1種の元素M、 及び更にアルカリ金属又はアルカリ土類金属から選択される一種の金属を含む触媒組成物であって、その担体は、酸化物、中でも特にアルミナ、シリカ単独、又はこれらの混合物であり、
・C5パラフィン類の脱水素化方法における上記触媒の使用、ここで該パラフィン類は、スチームクラッキング又は接触分解により生じる該C5画分から不飽和化合物を抽出した後に回収される。
上記貴金属の量は0.1質量%〜10質量%なる範囲にあり、上記元素Mの量は、0.01質量%〜10質量%なる範囲にあり、また最後に上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の量は0.1質量%〜3質量%なる範囲にある。
【発明の概要】
【0011】
さらなる重要な局面は、塩素化化合物又はクロロ-ガスで処理すべきかなりの量の白金を含む脱水素化触媒に関連し、あるいは再生工程において又はこの後で、該触媒の活性を回復するために、該白金の再分散を有利にすることである。塩素化化合物による上記処理は還元処理を伴い、該還元処理において該触媒は水素と接触して、該脱水素化反応に先立って該白金をその金属状態に還元する。該塩素化化合物の使用は、該装置の腐食にとって重大であることに加えて、酸性ガスの大気中への導入へと導く。本出願人は、今や極めて活性の高い触媒組成物を見出した。該触媒組成物は、短い接触時間での操作を可能とし、好ましくはシリカで変性された微小球状(microspheroidal)アルミナ、及び活性成分を含み、該活性成分は、ガリウム及び/又は酸化ガリウム、スズ 及び/又は酸化スズ、該触媒組成物の全質量に対して1ppm〜500ppmなる範囲の量の白金及び/又は酸化白金、及びアルカリ金属 及び/又はアルカリ土類金属の酸化物で構成される混合物を含む。
この革新的な着想は、著しく活性で無毒の触媒組成物に基づくものであり、好ましくは上記ファスト-ライザー又は流動床型等の反応器において使用される該触媒組成物は、同様に上記脱水素化反応の吸熱特性を補償し、しかも従来の工業的科学技術の上記危機的な側面を克服するために、該方法において熱ベクトル(thermal vector)機能を発揮する。
上記触媒の連続的な再生は、同一の生産性を示すと共に反応の体積を減じ、しかも同時に空気-炭化水素混合物と関連する安全性の問題をも回避する。というのは、該触媒系の再生は、特別な再生専用の作動装置内で行われるからである。
本発明の更なる目的及び利点は、純粋に例示的かつ非限定的な目的で与えられる以下の説明 及び同封された図面からより一層明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一態様に係る方法の概要を示すものである。図1において、参照番号(1)は、該方法に対する供給系であり、(2)は不活性製品であり、(3)は高温触媒であり、(4)は該触媒用のキャリアガスであり、(5)はストリッピング用の窒素ガスであり、(6)は空気であり、(7)は燃料ガスであり、(8)は燃焼流出ガスであり、(9)は部分的に消耗した該触媒の反応区画への再循環を示し、(10)は該部分的に消耗した触媒であり、(11)は該反応器の流出物であり、(12)はストリッピング用の窒素ガスであり、(R-1)は上記「ファストライザー」脱水素化区画であり、(R-2)は該触媒を再生するための再生装置であり、(S-1)は該触媒の分離区画であり、(S-2)は該再生装置のストリッピング区画であり、(S-3)は該ファストライザーのストリッピング区画であり、V-1 及びV-2は2つのバルブである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的の一つは、極めて高活性の触媒組成物に係り、該触媒組成物は、低減された寸法を持つ単一の脱水素化区画において、短い接触時間で稼働し得る。
上記触媒組成物は、微小球状アルミナ担体 及び活性成分を含み、該活性成分は、ガリウム 及び/又は酸化ガリウム、スズ 及び/又は酸化スズ、該触媒組成物の全質量に対して1ppm〜500ppmなる範囲の量の白金 及び/又は酸化白金、 及びアルカリ金属 及び/又はアルカリ土類金属の酸化物で構成される混合物を含む。該アルミナ担体は、好ましくはシリカで変性されている。
上記白金 及び/又は酸化白金が、適度の少ない量、好ましくは質量基準で1ppm〜99ppmなる範囲の量、より一層好ましくは質量基準で1ppm〜50ppmなる範囲の量で該触媒組成物中に存在することが本発明にとって重要である。事実、該触媒組成物における過度に多い量の白金は、恐らくは再生された該触媒を、焼結の問題を軽減するために、塩素を主成分とする分散剤による更なる処理に掛ける必要性をもたらす。この目的のために、本出願人は、極少量のPt 及び/又はPt酸化物を使用し、結果として再生後に、該触媒組成物は、再分散のため 及び還元のための更なる処理を施すことなしに、即座に再使用することができる。該再分散工程が不要であることは、大気への酸の放出を回避する。
【0014】
上記酸化ガリウムは、好ましくはGa2O3、Ga2O 及びこれらの混合物から選択される。上記酸化スズは、好ましくはSnO、SnO2 及びこれらの混合物から選択される。上記酸化白金は、好ましくはPtO、PtO2 及びこれらの混合物から選択される。アルカリ金属の酸化物は、好ましくはK2Oである。
好ましい触媒組成物は、シリカにより変性された微小球状のアルミナ上に担持された、酸化ガリウム、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、スズ 及び250ppm未満の所定量の白金を含む。
さらなる好ましい触媒組成物は、シリカにより変性された微小球状のアルミナ上に担持された、Ga2O3、K2O、SnO 及び白金の混合物を含む。
本発明の目的とする上記触媒組成物は、好ましくはシリカにより変性された微小球状のアルミナ担体を含む。というのは、該反応を、流動床反応器又はファストライザー反応器内で起こさせることが特に適しているからである。該活性部分を、該シリカにより変性されたアルミナの微小球上に堆積させ、また適度の少ない量の白金で変性することができる。
上記ガリウム 及び/又は酸化ガリウムの量は、好ましくは本発明の触媒組成物の全質量に対して0.1質量%〜34質量%なる範囲、より好ましくは0.2質量%〜3.8質量%なる範囲にある。
【0015】
上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物の量は、好ましくは本発明の触媒組成物の全質量に対して0.05質量%〜5質量%なる範囲、より好ましくは0.2質量%〜3.8質量%なる範囲にある。
上記スズ 及び/又は酸化スズの量は、好ましくは本発明の触媒組成物の全質量に対して0.001質量%〜1質量%なる範囲、より好ましくは0.05質量%〜0.4質量%なる範囲にある。
上記白金の量は、好ましくは本発明の触媒組成物の全質量に対して、質量基準で1ppm〜500ppmなる範囲、より好ましくは質量基準で1ppm〜99ppmなる範囲、より一層好ましくは1〜50ppmなる範囲にある。
上記担体中に存在するシリカの量は、本発明の触媒組成物の全質量に対して、0.05質量%〜5質量%なる範囲、より好ましくは0.03質量%〜3質量%なる範囲にあり、その残部はアルミナである。上記微小球状アルミナの表面積は、150m2/g以下であることが好ましい。
Ga2O3の濃度は、より好ましくは本発明の触媒組成物の全質量に対して0.1質量%〜34質量%なる範囲、より好ましくは0.2質量%〜3.8質量%なる範囲にある。K2Oの量は、好ましくは本発明の触媒組成物の全質量に対して0.05質量%〜5質量%なる範囲、より好ましくは0.1質量%〜3質量%なる範囲にある。SnOの量は、好ましくは本発明の触媒組成物の全質量に対して0.001質量%〜1質量%なる範囲、より好ましくは0.05質量%〜0.4質量%なる範囲にある。白金の量は、好ましくは本発明の触媒組成物の全質量に対して、質量基準で1ppm〜500ppmなる範囲、より好ましくは質量基準で1ppm〜99ppmなる範囲、より一層好ましくは1〜50ppmなる範囲にある。
【0016】
本発明の目的とする上記触媒組成物は、固定床 及び移動床反応器を用いて作用させるのに適している。
本発明の目的とする上記触媒組成物は、変性アルミナの微小球上に活性成分(active Principles)のプリカーサを分散させることから本質的になる方法によって得られる。この分散処理は、該担体を該活性成分のプリカーサを含む溶液で含浸した後、乾燥し、焼成処理することにより、あるいはイオン吸収、引続き液体の分離 及び活性化により、あるいは該プリカーサの揮発性の種の表面吸着 及び得られる固体の可能な焼成処理からなる。これら列挙された事項の中で、好ましい手順は以下の通りである:該担体の、処理すべきその量に相当する孔(含浸すべき担体の量(g)を乗じた該担体の比気孔率(specific porosity)[cc/g]で与えられるものと等しい体積の溶液による含浸。この含浸処置は、初期湿潤(incipient wetness)法として知られている。あるいは、該担体の、該孔に相当する体積に対して過剰な体積の溶液への含浸。該含浸において、該活性成分のプリカーサは溶解され、次いで蒸発処理され、更に焼成処理される。該活性成分のプリカーサは、単一の工程において、シリカで変性された該担体上に同時に、あるいは数工程で分散させることが可能である:
【0017】
・上記第一の工程において、上記担体、好ましくはシリカで変性された担体は、ガリウム 及びカリウムのプリカーサを含有する溶液で含浸され、次いで乾燥並びに焼成処理され;あるいは上記担体、好ましくはシリカで変性された担体は、ガリウム、カリウム 及びスズのプリカーサを含有する溶液で含浸され、次いで乾燥並びに焼成処理される;
・上記第二の工程において、該第一の工程を由来とする該焼成された生成物は、白金 及びスズのプリカーサを含有する溶液で含浸され、該含浸生成物は、乾燥され、かつ最終的に焼成され;あるいは該第一の工程を由来とする該焼成された生成物は、白金のプリカーサで含浸され、この含浸生成物は、乾燥され、かつ最終的に焼成される。
本発明の更なる目的は、ブテン類単独又はブテン類の混合物、又はブテン類とブタン類との混合物から出発する、1,3-ブタジエンを得るための脱水素化法に係る。
【0018】
この方法は、以下の工程を含む:
・上記反応試薬を、脱水素化区画に供給する前に、該反応試薬を不活性製品で希釈する工程;
・請求項1〜18記載の触媒組成物の存在下で、該脱水素化区画において該反応試薬を脱水素化して、1,3-ブタジエンを含有するガス状流出物を生成する工程;
・使い尽くされた該触媒組成物の少なくとも一部を再生装置に送る工程;
・空気、酸素の欠乏した又は酸素に富む空気から選択されるオキシダントを含有する流れを供給することにより、該再生装置内で、該反応後に排出される該触媒組成物を、少なくとも部分的に再生する工程;
・該再生された触媒組成物を、該脱水素化区画に戻す工程。
上記触媒組成物の上記再生装置に送られる部分は、好ましくは50%〜80%なる範囲にあり、また結果として該触媒組成物の再生されない部分は、50%〜20%なる範囲にある。該触媒組成物の該再生装置に送られない部分は、該脱水素化区画に直接再循環される。
【0019】
本発明による脱水素化用の反応デバイスは、「流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking)」(F.C.C.)において採用されているものと類似するものであり得、結果として反応体積における減少が達成される。本件明細書において記載され、かつ特許請求された触媒組成物の再生装置は、該脱水素化区画と結合されている。該再生は、好ましくは該脱水素化中に該触媒上に堆積したコークスの空気による燃焼をもたらし、かつ燃焼生成物を形成する。該脱水素化反応 及び再生は、2つの別々の装置内で行われ、結果として、潜在的に危険性のある炭化水素と空気との混合物の生成が回避される。該触媒組成物は、該反応区画と再生装置との間 及びその逆の間で、キャリアガスを使用して、常に再循環される。同一のキャリアガスを用いて、該反応区画の入口部において、供給原料を希釈することが可能である。該供給原料を希釈するための上記不活性製品は、窒素、メタン、又は1質量%に等しい最大水素含有率を持つ他の燃料ガスから選択することができる。
上記不活性製品は、上記反応試薬 及び生成物の分圧を下げて、転化率を高め、かつ寄生反応の速度を減じて、所定生成物に対する選択性を保存する機能を持つ。上記キャリアガスは、窒素又はメタン又は1質量%に等しい最大水素含有率を持つ他の燃料ガスであり得、後者は、窒素に対して、低温物理学的分離を必要とすることなしに、水素の発熱値を回復するという、利点をもたらす。
【0020】
本発明の目的であるこの方法において、上記供給原料を予備加熱し、結果としてNOxの形成 及び放出を減じるためにオーブンを使用することは目論まれていない。本件明細書において説明され、かつ特許請求されているものと同一の触媒組成物は、上記脱水素化反応の熱ベクトルを生成し、結果として該再生中に蓄積される顕熱(sensitive heat)を生成する。使い尽くされた上記触媒系の上に存在するコークスの燃焼は、上記脱水素化反応のために完全に回収され、また該吸熱性の脱水素化反応を完全に釣合わせることを可能とする、該再生デバイスに添加される燃料ガスのアリコートに組込まれる熱を発生する。天然ガス又は水素又はこれら2つの混合物から得られる燃料ガスは、該再生区画における燃料ガスとして使用することができる。
好ましくは、本発明にとって適している上記脱水素化区画は、固定床反応器、流動床反応器又は移動床反応器であり得る。更に一層好ましくは、該反応デバイスは、「ファストライザー」反応器であり、その底部には、脱水素化すべき供給原料が充填される。該脱水素化区画において、該供給原料は、該反応器の底部に入る、本件明細書に記載され、かつ特許請求されている少なくとも部分的に再生された上記触媒組成物と混合される。該供給原料は、該触媒組成物 及び供給原料が、等流(equicurrent)にて進むことから、これらが該反応器全体を通過するまで、該反応器内で脱水素化される。該触媒系は、該反応器のヘッドにおいてガス状流出物から分離され、かつ上記再生デバイスに送られる。本発明の目的とする該触媒組成物は、その全体又はその一部分を、再生のために送り出すことができる。その再生されない部分は、該反応デバイスに直接再循環される。再生後、該触媒組成物は、該反応器に再循環される。
【0021】
上記脱水素化区画において、該脱水素化区画は、450℃〜700℃なる範囲の温度にて稼働することが好ましい。該脱水素化の圧力は、20.3kPa〜203kPa(0.2〜2atm)なる範囲にあることが好ましい。不活性製品/供給原料の比(v/v)は、0〜20なる範囲、好ましくは1〜9なる範囲にある。該供給原料を希釈するための該不活性製品は、窒素、メタン、又は1質量%に等しい水素含有率を持つ他の燃料ガスから選択することができる。
上記反応器が、ファストライザーである場合、上記ガス相の滞留時間は、1分未満であり、また好ましくはこれは0.2秒〜5秒なる範囲にある。
上記再生は、好ましくは上記反応区画の稼働温度よりも高い温度、好ましくは700℃を超える温度にて、流動床で行われる。該再生区画における圧力は、大気圧よりも僅かに高い。該再生の際の該触媒系の滞留時間は、5〜60分、好ましくは20〜40分の範囲にある。該再生中に、上記ガス相の時間当たりの空間速度(N1/h単位で表したGHSV、触媒1L当たりの空気)は、1,000〜5,000/時、好ましくは2,000〜3,000/時なる範囲にある。
上記触媒系の再生 及び上記燃料の燃焼は、空気、酸素又は任意の他の燃料を用いて行われる。
【0022】
反応器-再生装置系、 及び特にファスト-ライザー反応器-再生装置系の利点は、以下のようにまとめることができる:
・反応体積における低減 及び結果としての投下資本における低減;
・上記反応に対して必要とされる熱は、上記再生される触媒によって直接伝達され、上記反応区画の上流には、望ましからぬ燃焼副産物を生成する可能性を持つ、上記供給原料を予備加熱するためのオーブンは存在せず;
・ガス状の汚染物質の放出を減じるために、何ら特別な処理を必要とせず;
・上記反応 及び再生は、物理的に分離された領域で行われ、また炭化水素流と酸素含有流れとの混合は全く起り得ず;
・流動床において行われた上記触媒の再生は、該床の激しい再混合のために、高温点の形成を回避し、これは該触媒処方物の熱応力を回避し;
・このプラントの稼働は、該触媒の取替えのために中断する必要がない。というのは、該単位装置が稼働されている際に、アリコートが定期的に放出され、かつ等量の新たな触媒で置換されるからである。
【実施例】
【0023】
本発明の幾つかの非限定的な例を、以下に与える。
実施例1
5μm〜300μmなる範囲の粒径を持つ、シリカで変性した微小球状擬ベーマイト(1.2質量%)を、水和アルミナ 及びルドックス(Ludox)シリカを含む溶液の噴霧乾燥により調製する。該擬ベーマイトの一部を、450℃にて1時間焼成し、引続き1,140℃にて、4時間処理する。該焼成生成物は、70m2/gなる比表面積 及び0.2cc/gなる比気孔率を持つ。3,250gの焼成生成物からなるサンプルを、初期湿潤手順によって、573gの硝酸ガリウム溶液(力価:9.3質量%のGa)、131.8gの硝酸カリウム溶液(力価:6.86質量%のK) 及び該溶液の体積を1040ccとするまでの量の水を含む水性溶液で含浸する。該含浸生成物を、120℃にて4時間乾燥し、最終的に以下のような加熱プロファイルに従って焼成する:室温〜460℃なる範囲の温度にて533分間、 及び460℃にて180分間の等温処理工程。2.15質量%のGa2O3、0.33質量%のK2O、残部のAl2O3 及びSiO2からなる該焼成生成物3,270gを、初期湿潤手順により、溶解した、230gの無水クエン酸、33.343gの四塩化スズの溶液(力価:7.52質量%のSn) 及び1.335gの固体テトラクロロ白金酸アンモニウム(力価:52質量%のPt) 及び該溶液の体積を1046ccとするまでの量の水を含む水性溶液で含浸する。該含浸生成物を、120℃にて4時間乾燥し、最終的に以下のような加熱プロファイルに従って焼成する:室温〜120℃なる範囲の温度にて120分間、引続き120℃にて120分間の等温処理工程、次いで120〜250℃なる範囲にて120分間、250〜730℃なる範囲で210分間、更に730℃にて90分間の等温処理工程。この触媒系の質量基準での組成は、以下の通りであることが明らかとなる:2.15質量%のGa2O3、0.33質量%のK2O、質量基準で212ppmのPt、質量基準で766ppmのSn、残部のAl2O3 及びSiO2
【0024】
実施例2
実施例1と同様の焼成されたベーマイトからなる3250gのサンプルを、実施例1に記載した手順を用いて、溶解された、573gの硝酸ガリウムの溶液(力価:9.3質量%のGa)、131.8gの硝酸カリウムの溶液(力価:6.86質量%のK) 及び該溶液の体積を1040ccとするまでの量の水を含む水性溶液で含浸した。該含浸生成物を、実施例1に記載の条件と同一の条件下で乾燥し、かつ焼成処理した。2.15質量%のGa2O3、0.33質量%のK2O、残部のAl2O3 及びSiO2からなる該焼成生成物3,270gを、実施例1と同一の手順によって、溶解した、230gの無水クエン酸、1.3354gのテトラクロロ白金酸アンモニウム(力価:52質量%のPt)、65.337gの四塩化スズの溶液(力価:7.52質量%のSn)を含む溶液で含浸した。該含浸生成物を、実施例1に記載の触媒系を製造するために採用したものと同一の手順に従って乾燥し、かつ焼成した。この触媒系の質量基準での化学的組成は、以下の通りである:2.15質量%のGa2O3、0.33質量%のK2O、質量基準で212ppmのPt、質量基準で1,500ppmのSn、残部のAl2O3 及びSiO2
製造された上記触媒系を、反応器 及び再生装置を備えた循環式流動床パイロットプラントで、C4パラフィン類、特にn-ブタンの共存下で、ブテン類の混合物の脱水素化のためにテストした。これら触媒の性能を以下の表2に示すが、表2において転化率(A) 及び選択率(B)は、以下の式に従って計算される:
【0025】
(A)
{[Σ(Σブタン類+Σブテン類)反応器入口−Σ(Σブタン類+Σブテン類)反応器出口]/Σ(Σブタン類+ Σブテン類)反応器入口}*100
(B)
{1,3ブタジエン反応器出口/[Σ(Σブタン類+Σブテン類)反応器入口−Σ(Σブタン類+Σブテン類)反応器出口]}*100
これら両実施例において処理された供給原料の組成を、以下の表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
図1