(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記音声補正部は、前記音声補正として、前記ソフトミュートの影響による再生音の変化を抑える他の音声補正処理を行うことを特徴とする請求項2に記載のラジオ受信機。
前記他の音声補正処理は、前記受信レベルに応じて音声の高域レベルを下げるハイカット、及び、前記受信レベルに依存せずに音声の周波数特性を調整するオーディオフィルタを含むことを特徴とする請求項3に記載のラジオ受信機。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施形態に係るラジオ受信機1の構成を示すブロック図である。
このラジオ受信機1は、車両に搭載される車載用ラジオ受信機であり、ラジオ放送局から放送されたDRM(Digital Radio Mondiale)方式のラジオ放送等を受信可能なDRMラジオに構成されている。
DRM方式は、AM(振幅変調)のラジオ放送(いわゆるAM放送)に適用され、特にSW(短波、2.3MHz〜27MHz)を中心としたデジタルラジオに適用される方式であり、LW(長波)/MW(中波)/SWのバンド対応になっている。DRMラジオでは、デジタルの放送周波数の放送(デジタルラジオ放送)と、アナログの放送周波数の放送(アナログラジオ放送)でサイマル放送がされている。
【0017】
一般に、デジタルラジオ放送を受信している場合には、安定した音質で音声(ラジオ音声)を出力することができる。一方、アナログラジオ放送、特にSWの放送は、大気中の電離層の変化で電波が反射し易く、電離層の影響を受けやすい。このため、フェージングの影響で電波の強弱が生じると、ラジオ受信機の再生音量が大きくなったり、小さくなったりして音声の違和感やユーザーの不快感を招いてしまう。特に夜間のアナログラジオ放送は、遠方から放送波が到来し易くなり、フェージングが発生し易くなる。
【0018】
DRMラジオ放送は、デジタルラジオ放送のサービスエリアから外れたり受信状態がなった場合に対応できるよう、DRM放送の信号に、アナログラジオ放送の代替周波数等のデータが含まれており、そのデータをもとに、系列局のアナログラジオ放送の周波数へ切り替えることができる。その切り替えによってアナログラジオ放送のときに、フェージングの影響で音声が周期的に変動すると、デジタルラジオ放送とアナログラジオ放送の音声品質差が目立ってしまい、音声の違和感を招き易い。また、デジタルラジオ放送を受信している場合に、走行中の橋桁をくぐる際等に電界が急激に変動して受信できなくなり、音声がでない場合が生じる。
本実施形態のラジオ受信機1は、フェージングの影響による音声の違和感を抑えることが可能な構成に形成されている。
【0019】
図1に示すように、ラジオ受信機1は、デジタルラジオ放送、及びアナログラジオ放送のラジオ放送を受信可能なラジオチューナ部11と、各種の信号処理を行う信号処理部12と、デジタルラジオ放送のデコード処理を行うデジタルラジオデコーダ部13と、アナログラジオ放送、及びデジタルラジオ放送の音声信号を入力して外部のスピーカ14を駆動するオーディオパワーアンプ部15と、各部を制御するマイクロコンピュータ16と、各種データを保持するフラッシュメモリ17と、各種情報を表示するディスプレイ18とを備えている。
ラジオチューナ部11は、アンテナ21が受信した電波から受信局のRF(Radio Frequensy)信号を得、このRF信号と不図示の局部発振器の信号とを混合して中間周波信号であるIF(Intermediate Frequency)信号(
図1中、「IF」)に変換する。
【0020】
信号処理部12において、A/Dコンバータ22は、ラジオチューナ部11が出力する受信信号(IF信号)をアナログデジタル変換し、アナログラジオ放送の受信信号については信号処理部12内のアナログラジオ信号処理部23に出力し、デジタルラジオ放送の受信信号についてはデジタルラジオデコーダ部13に出力する。
デジタルラジオデコーダ部13は、入力したデジタルラジオ放送の受信信号(
図1中、「デジタルIF」)にデコード処理を行って音声信号(以下、デジタル放送音声信号)を得、このデジタル放送音声信号(
図1中、「SD」)を、信号処理部12内のオーディオ信号処理部24に出力する。
図1に示すように、デジタルラジオデコーダ部13は、受信品質を示すビットエラーレート(BER)を検出するBER検出部13Aを備え、検出結果をマイクロコンピュータ16が監視することができる。
【0021】
アナログラジオ信号処理部23は、入力したアナログラジオ放送の受信信号に復調処理を行ってアナログラジオ放送の音声信号を得、この音声信号に音質改善の音声処理を施して、音声信号(以下、アナログ放送音声信号)(
図1中、「SA」)をオーディオ信号処理部24に出力する。
この音質改善の音声処理には、後段に説明するように、受信レベルの変動に伴う音量変化を抑えるソフトミュート処理、音声の高域レベルを下げるハイカット処理、及び、音声の周波数特性を調整するオーディオフィルタ処理等の音声補正処理が含まれる。
また、アナログラジオ信号処理部23は、アナログラジオ放送の受信レベル(受信電界強度)を示すSメータ信号を、入力したアナログラジオ放送の受信信号(IF信号)から検出するSメータ検出部23Aを備えており、検出結果をマイクロコンピュータ16が監視することができる。
【0022】
オーディオ信号処理部24は、デジタルラジオデコーダ部13が出力するデジタル放送音声信号SD、及び、アナログラジオ信号処理部23が出力するアナログ放送音声信号SAを入力し、これら音声信号SD、SAに所定の音声処理を行った後、D/Aコンバータ25に出力する。D/Aコンバータ25は、入力した音声信号SD、SAをデジタルアナログ変換してオーディオパワーアンプ部15に出力する。これによって、オーディオパワーアンプ部15によりデジタル放送音声信号SDに対応する音声、又はアナログ放送音声信号SAに対応する音声がスピーカ14から出力される。
【0023】
図2はアナログラジオ信号処理部23の機能構成を示すブロック図である。なお、
図2中、破線で示すラインは、マイクロコンピュータ16との間の通信ラインを示している。
アナログラジオ信号処理部23は、DSP(Digital Signal Pocessor)で構成され、Sメータを調整するSメータ調整部31と、Sメータ出力部32と、ソフトミュートのパラメータ(後述するソフトミュート設定1、2、3等)を設定するソフトミュート設定部33と、信号レベルを減衰させるアッテネータ34と、ハイカット処理のパラメータ(後述するハイカット設定1、2、3等)を設定するハイカット設定部35と、オーディオフィルタのパラメータ(後述するオーディオフィルタ設定1、2、3等)を設定するオーディオフィルタ設定部36と、音声信号の周波数特性を調整するオーディオフィルタ部37として機能するように構成されている。
【0024】
Sメータ調整部31は、受信する放送局の受信電界強度を示すSメータを事前に合わせ込んでおく補正を行い、その設定はマイクロコンピュータ16によって行うことができる。Sメータ出力部32は、Sメータ調整部31が出力するSメータ信号を外部出力することで、マイクロコンピュータ16がSメータ信号を取得することができる。このSメータ調整部31、及びSメータ出力部32が、
図1のSメータ検出部23Aを構成している。
ソフトミュート設定部33は、マイクロコンピュータ16からの指示に基づき、Sメータに応じて音量を変化させるソフトミュートのパラメータを設定する。アッテネータ34は、ソフトミュート設定部33の設定に従ってソフトミュートの処理を行う。
【0025】
ハイカット設定部35は、マイクロコンピュータ16からの指示に基づき、Sメータに応じて高域の周波数特性を変化させるハイカットのパラメータを設定する。オーディオフィルタ設定部36は、Sメータに応じて音声の周波数特性を変化させるべくSメータ出力を基準としてオーディオフィルタのパラメータを設定する。オーディオフィルタ部37は、ハイカット設定部35、及びオーディオフィルタ設定部36の設定に従ってハイカット、及びオーディオフィルタの処理を行う。
【0026】
マイクロコンピュータ16は、CPU、ROM、RAM及び周辺回路を有し、ラジオ受信機1を中枢的に制御する制御部として機能する。フラッシュメモリ17には、マイクロコンピュータ16が使用する制御プログラムや音声補正用の後述するパラメータ等のデータが格納されている。またマイクロコンピュータ16は、フラッシュメモリ17に格納される制御プログラムを実行することにより、公知のラジオ受信機が行う選局処理等を行うことができる。
さらに、この制御プログラムには、フェージングを検出するための制御プログラム、及びフェージングの影響による音声の違和感を抑える音声補正を行うための制御プログラムが含まれている。続いて、このラジオ受信機1の動作を説明する。
【0027】
図3はラジオ受信機1の動作を示すフローチャートである。
ステップS1において、マイクロコンピュータ16は、DRMラジオ放送(デジタルラジオ放送)を受信中か否かを判定し、受信中であればステップS2の処理に移行し、受信中でなければ、例えば、アナログラジオ放送を受信中で受信周波数を変更する場合はステップS3の処理に移行する。
ステップS2において、マイクロコンピュータ16は、デジタルラジオ放送の受信状態をチェックする。具体的には、マイクロコンピュータ16は、BER検出部13A(
図1)によって検出されるビットエラーレート(BER)に基づいて受信状態を判定し、BERが、受信状態が良い閾値範囲の場合は受信を継続してステップS21の処理へ移行する。一方、BERが、受信状態が悪い閾値範囲の場合には、ステップS3の処理に移行し、受信していたデジタルラジオ放送の系列局が放送するアナログラジオ放送を受信するための以下の処理を開始する。
【0028】
ステップS3において、マイクロコンピュータ16は、アナログラジオ受信の共通設定を行う。例えば、パルスタイプのノイズ対策に有効なノイズブランカー等の設定を行い、上述したアナログラジオ信号処理部23、又は不図示のノイズブランカー回路等を利用してノイズブランカー等を行う。
次に、マイクロコンピュータ16は、受信可能局のチェック(ステップS4)、第1のフェージングチェック(ステップS5)、時間帯チェック(ステップS6)、及び第2のフェージングチェック(ステップS7)を行う。
【0029】
ステップS4において、マイクロコンピュータ16は、受信局毎にSメータ信号が受信可能レベルの閾値範囲か否かを判定することにより、受信可能局か否かを判別する。また、ステップS5において、マイクロコンピュータ16は、LW/MW/SWのいずれのバンドがフェージングチェック対象か否かをチェックする。このフェージング対象か否かのチェック処理は、マイクロコンピュータ16を用いて予め設定された設定データに基づき行われる。例えば、フェージングの影響が相対的に大きいSWだけをフェージングチェック対象に設定しておくことで、LW/NWを受信するためのソフトウェア処理の時間を短縮することが可能である。
【0030】
ステップS6において、マイクロコンピュータ16は、フェージングチェック対象の時間帯か否かをチェックする。このチェック処理についても、ステップS5と同様に、マイクロコンピュータ16を用いて予め設定された設定データに基づき行われる。例えば、特にフェージングが発生しやすい夜間だけをフェージングチェック対象に設定しておくことができる。
ステップS7では、マイクロコンピュータ16がSメータに基づいてフェージングの検出処理(フェージング検出処理)を行う。
【0031】
ステップS7のフェージング検出処理について説明する。
図4はフェージング時のSメータの時間変化例を示した図である。
マイクロコンピュータ16は、Sメータの最小レベル(Sメータ最小レベル)、Sメータの最大レベル(Sメータ最大レベル)、及びSメータの変動周期(Sメータ周期)を取得し、これら情報に基づいてフェージングの有無を判定する。より具体的には、フェージングの判定を行うための閾値として、Sメータ最小レベルの閾値L1、Sメータ最大レベルの閾値L2、Sメータ周期の閾値L3、Sメータの変動回数n1の閾値L4、及び上記閾値L1〜L4を満足する平均回数n2の閾値L5が予め設定される。マイクロコンピュータ16は、Sメータのレベルが閾値L1〜L2の間にある場合に、最大レベルになる回数でSメータ周期を求め、そのSメータ周期が閾値L3で定めたフェージング判定範囲内である場合に、Sメータが振幅する回数(変動回数n1)が閾値L4で設定した一定回数を超えると、フェージング有りと判定する。
これによって、受信レベルの短時間の変動をフェージングと検出する場合を回避でき、フェージングを精度良く検出することができる。
【0032】
更に本実施形態では、ある程度継続するフェージングか否かを判定するために、マイクロコンピュータ16が、上記閾値L1〜L4を満足する回数の所定時間毎の平均回数n2を求め、この平均回数n2が閾値L5を超えた場合に、フェージング有りと判定する。これによって、安定してフェージングが続いている場合に、フェージング有りと判定し、フェージングの判定精度をより高めることができる。このようにして、マイクロコンピュータ16は、フェージングを検出するフェージング検出部としても機能することができる。
なお、平均回数n2の算出、及び平均回数n2と閾値L5との比較を省略しても良く、また、他のフェージング判定方法を適用しても良い。
【0033】
また、ステップS7では、フェージング量の大小の判定も行う。この判定については後段に説明する。
ステップS7でフェージング無しと判定すると、マイクロコンピュータ16は、ステップS8の処理に移行し、「通常受信用のパラメータ設定PA」を設定してアナログラジオ受信を行う。このパラメータ設定PAについては、弱電界(Sメータが小さい)ほどノイズが大きくなるので、それに応じてソフトミュート機能により音量を下げ、ハイカット機能で高域の音量を下げる設定を行う。
【0034】
一方、ステップS7でフェージング有りと判定すると、マイクロコンピュータ16は、「3種類のフェージング用のパラメータ設定PB1、PB2、PB3」をAuto(自動)で選択するか、Manial(手動)で選択するか否かを判定する。この判定は、マイクロコンピュータ16を用いて予め設定された設定データに基づき行われる。
続くステップS10において、マイクロコンピュータ16は、Auto(自動)の場合、フェージング量の大小に応じてパラメータ設定PB1、PB2、及びPB3のいずれかを選択し、Manual(手動)の場合、パラメータ設定PB1、PB2、PB3の中から予め指定されたパラメータ設定を選択する。そして、選択したいずれかのパラメータ設定PB1、PB2、PB3を設定し、アナログラジオ受信を行う(ステップS11〜S13)。
【0035】
また、本実施形態では、DRMラジオ放送(デジタルラジオ放送)を受信中で、受信状態が良い閾値範囲の場合でも、第1のフェージングチェック(ステップS21)、時間帯チェック(ステップS22)、及び第2のフェージングチェック(ステップS23)を行う。
このようにデジタルラジオ放送受信中にもフェージングチェックを行うことにより、デジタルラジオ放送受信中に走行中の橋桁くぐり等で受信電界強度が急激に変動して受信できず音声が出力されなくなる事態を事前に検出でき、音声が途切れたままとならないよう後述するステップS23の対応を早めに実行することが可能になる。なお、これらステップS21〜S23の処理は上記ステップS5〜S7と同様である。
【0036】
ステップS23において、フェージングが有り、フェージング量が大と判定した場合、マイクロコンピュータ16は、音声の途切れを抑制する対応処理を行う(ステップS24)。
この対応処理としては、例えば、以下の第1処理、第2処理があり、いずれの処理を行うかは、マイクロコンピュータ16を用いて予め設定された設定データに基づき決定される。
第1処理は、予め保持された情報に基づいて系列局のDRM局に自動的に切り替えて別のDRMラジオ放送(デジタルラジオ放送)を受信する処理である。また、第2処理は、アナログラジオ放送の受信に切り替えることをユーザーに促す報知処理である。この報知処理は、スピーカ14から報知情報を出力する処理や、ディスプレイ18への報知情報の表示を行うようにすれば良い。なお、上記第1処理、第2処理には、フェージングの影響による音声の途切れを抑制可能な各種の処理を適用可能である。
【0037】
一方、ステップS23において、フェージング無し、或いは、フェージング量が小と判定した場合、マイクロコンピュータ16は、デジタルラジオ放送の受信を継続する(ステップS25)。以上がラジオ受信機1の動作である。
【0038】
続いて、ステップS7、S23で行われる「フェージング量の大小の判定」について説明する。
図5はフェージング量の大小の判定の説明に供する図である。
本実施形態では、フェージング有りの場合、再生音の違和感を基準にしてフェージング量の大小を特定すべく、Sメータのレベル変化と、Sメータ周期との組み合わせに基づいてフェージング量の大小を判定している。
【0039】
この場合、マイクロコンピュータ16は、Sメータのレベル変化が相対的に小さく、Sメータ周期が相対的に長い場合に、再生音声の違和感が最も小さくなるので、この条件のときにフェージング量が小と判定する。また、マイクロコンピュータ16は、Sメータのレベル変化が相対的に大きく、Sメータ周期が相対的に短い場合に、再生音声の違和感が最も大きくなるので、この条件のときにフェージング量が大と判定する。また、Sメータのレベル変化が小さく、Sメータ周期が短い場合、若しくは、Sメータのレベル変化が大きく、Sメータ周期が長い場合にフェージング量が中と判定する。
【0040】
図6はフェージング用のパラメータ設定PB1、PB2、PB3を模式的に示す図である。各パラメータ設定PB1、PB2、PB3は、ソフトミュート設定、ハイカット設定、及びオーディオフィルタ設定を含んでいる。
フェージングに最も有効なのはソフトミュートである。ソフトミュートを使用することにより、フェージングの影響による音量変化を抑制することができる。
またノイズ感の補正にハイカット、及びオーディオフィルタが用いられる。例えば、弱電界で音声出力を下げる方向にソフトミュート設定を弱めると、ノイズがきつく聞こえるため、ハイカットを効かせ、且つ、オーディオフィルタで高域を下げることにより、ノイズ感を低減して音質変化を抑え、聞き易い音質に補正することが可能である。これにより、フェージング時のソフトミュートの影響による音質変化をハイカット、及びオーディオフィルタによって抑えることができる。
【0041】
同図に示すように、フェージング量が小(
図6中、フェージング小)の時に使用されるパラメータ設定PB1は、ソフトミュート設定1、ハイカット設定1、及びオーディオフィルタ設定1を含んでいる。また、フェージング量が中(
図6中、フェージング中)の時に使用されるパラメータ設定PB2は、ソフトミュート設定2、ハイカット設定2、及びオーディオフィルタ設定2を含んでいる。また、フェージング量が大(
図6中、フェージング大)の時に使用されるパラメータ設定PB3は、ソフトミュート設定3、ハイカット設定3、及びオーディオフィルタ設定3を含んでいる。
【0042】
以下、ソフトミュート、ハイカット、オーディオフィルタの設定を説明する。
図7はソフトミュートの設定を示す図であり、
図7(A)は補正カーブ、
図7(B)は補正カーブの設定値を示している。
ソフトミュートは、Sメータのレベルが下がったら音声出力を落として音量を小さく機能として用いられ、通常受信用のパラメータ設定PA、フェージング用のパラメータ設定PB1、PB2、PB3で使用されるソフトミュート設定1、2、3がある。
図7(A)に示すように、通常受信用のパラメータ設定PAでは、中電界(値20)よりも大きい場合は音量変化がなく、中電界以下で電界が変動すると音量変化が大きくなる。このパラメータ設定PAに対し、ソフトミュート設定1は音量変化を抑える補正カーブに設定され、ソフトミュート設定2はソフトミュート設定1よりも音量変化を抑える補正カーブに設定され、ソフトミュート設定3はソフトミュート設定2よりも音量変化を抑える補正カーブに設定される。
【0043】
図7(B)に示すように、これら補正カーブは、動作開始位置A、動作終了位置B、及び減衰量Cによって設定することができる。なお、
図7(A)には、パラメータ設定PAの動作開始位置A、動作終了位置B、及び減衰量Cを示している。
つまり、パラメータ設定PAからソフトミュート設定1、2、3に変わるに従って、音量変化をより抑える。
このため、例えば、Sメータが値10〜値20の範囲で変動した場合、パラメータ設定PAでは、符号faで示す大きい音量変化が生じるのに対し、ソフトミュート設定3では、符号fbで示す小さい音量変化で済み、Sメータの変動の影響による音量変化を小さくすることができる。
【0044】
図8はハイカットの設定を示す図であり、
図8(A)は補正カーブ、
図8(B)は補正カーブの設定値を示している。
ハイカットは、Sメータのレベルが下がったら高域をカットしてノイズを小さくする機能として用いられ、通常受信用のパラメータ設定PA、フェージング用のパラメータ設定PB1、PB2、PB3で使用されるハイカット設定1、2、3がある。
ハイカットは、高域の周波数毎(1kHz、4kHz等)に補正カーブが設定され、高域ほど減衰するように補正カーブが設定される。
図8(A)には代表特性として4kHzの補正カーブを示している。4kHzの補正カーブは、1kHzの補正カーブよりも音声出力レベルを低くする補正カーブとされ、通常受信用のパラメータ設定PAからハイカット設定1、2、3に変わるに従って、高域の音声出力レベルをより抑える。
【0045】
図8(B)に示すように、ハイカットの補正カーブは、カットオフ周波数毎の動作開始位置A、及び動作終了位置Bにより設定することができる。なお、
図8(A)には、パラメータ設定PAの動作開始位置A、及び動作終了位置Bを示している。
本実施形態では、パラメータ設定PAからハイカット設定1、2、3に変わるに従って、動作開始位置A、及び動作終了位置Bを強電界側にシフトすることで、高域の音声出力レベルをより抑えた補正特性を得ている。
これにより、パラメータ設定PAからソフトミュート設定1、2、3に変わるに従って音量変化が抑えられることによって目立つノイズをより抑えることができ、ノイズ感を抑えた音質に補正することができる。
【0046】
図9はオーディオフィルタの設定を示す図であり、
図9(A)は補正カーブ、
図9(B)は補正カーブの設定値を示している。
オーディオフィルタは、Sメータに依存せずに音声の周波数特性を変化させて音質を変化させる固定フィルタとして用いられ、通常受信用のパラメータ設定PA、フェージング用のパラメータ設定PB1、PB2、PB3で使用されるオーディオフィルタ設定1、2、3がある。
オーディオフィルタは、
図9(A)に示すように、高域を減衰させる周波数特性に補正する補正カーブが設定され、通常受信用のパラメータ設定PAかオーディオフィルタ設定1、2、3に変わるに従って、高域の音声出力レベルをより抑える。
【0047】
図9(B)に示すように、オーディオフィルタの補正カーブは、カットオフ周波数fにより設定することができる。なお、
図9(A)には、パラメータ設定PAのカットオフ周波数fを示している。
本実施形態では、パラメータ設定PAからオーディオフィルタ設定1、2、3に変わるに従ってカットオフ周波数fを下げることにより、Sメータに依存せずに高域の音声出力をより抑えた補正特性を得ている。
これにより、パラメータ設定PAからソフトミュート設定1、2、3に変わるに従って音量変化が抑えられることによって目立つノイズを抑え、ノイズ感を抑えた音質に補正することができる。
【0048】
なお、ソフトミュートとハイカットについては、時定数の設定も含まれ、この時定数の設定により、アタックタイム(受信電界強度が下がった時をトリガーに、設定したカーブが完了するまでの時間)や、リカバリータイム(受信電界強度が上がった時をトリガーに、設定したカーブが完了するまでの時間)を調整できる。時間設定が短いほど、ノイズ軽減に有効であるが、音量変化や音質の変化が急激に変わり違和感が生じるおそれがある。時定数についても、通常受信時と、フェージング時とで別々に設定することが可能である。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態によれば、音声を含む放送電波であるアナログラジオ信号を受信し、受信信号から音声信号を得るラジオ受信機1において、マイクロコンピュータ16が放送電波の受信レベルを示すSメータの変動に基づいてフェージングを検出するフェージング検出部として機能し、アナログラジオ信号処理部23が、フェージングを検出した場合に、音声信号に対し、フェージングの影響で生じる再生音の変化を抑える音声補正を行う音声補正部として機能するので、フェージングの影響による音声の違和感を抑えることができる。
【0050】
また、アナログラジオ信号処理部23は、上記音声補正として、Sメータの変動に伴う音量変化を抑えるソフトミュートを行うので、フェージングの影響で生じる音量変化を十分に抑えることが可能になる。また、アナログラジオ信号処理部23は、上記音声補正として、ソフトミュートの影響による再生音の変化を抑えるハイカット、及びオーディオフィルタ(他の音声補正処理)を行うので、ソフトミュートの影響によって目立つノイズを抑えることが可能である。
【0051】
しかも、Sメータに応じて音声の高域レベルを下げるハイカットと、Sメータに依存せずに音声の周波数特性を調整するオーディオフィルタとを組み合わせるので、ノイズ感を効率良く低減することができ、聞き易い音質に補正し易くなる。これらにより、フェージングの影響による音量変化、ノイズ感のいずれかも低減でき、良好な音質に補正することが可能になる。
【0052】
また、マイクロコンピュータ16は、Sメータのレベル変化と変動周期とに基づいてフェージング量の大小を判定し、フェージング量の大小に応じたフェージングの影響による再生音の変化を抑えるようにソフトミュート、ハイカット、及びオーディオフィルタの設定を変更するので、フェージング量の大小に合わせて音声の違和感を適切に抑えることが可能になる。
【0053】
また、マイクロコンピュータ16は、受信レベルを示すSメータが予め定めた最小レベル(閾値L1)、及び最大レベル(閾値L2)の範囲にある場合に、最大レベルになる回数でSメータの周期を求め、そのSメータの周期がフェージング判定範囲(閾値L3)内であり、且つ、前記周期で振幅する回数(変動回数n1)が予め定めた閾値L4を超えた場合に、フェージング有りと検出するので、Sメータのレベル変化に基づきフェージングを精度良く検出することができる。
【0054】
しかも、マイクロコンピュータ16は、変動回数n1が予め定めた閾値L4を超えた場合の平均回数n2を求め、この平均回数n2が予め定めた閾値L5を超えたか否かを判定し、アナログラジオ信号処理部23は、平均回数n2が予め定めた閾値L5を超えた場合に、フェージングの影響で生じる再生音の変化を抑える音声補正を行うので、継続したフェージングが生じている場合に、そのフェージングの影響による音声の違和感を抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態のラジオ受信機1は、サイマル放送されるデジタルラジオ放送とアナログラジオ放送を受信する受信機能を備え、デジタルラジオ放送の受信状態が悪化すると、アナログラジオ放送に切り替えるので、アナログラジオ放送に切り替える際に、フェージングの影響によりデジタルラジオ放送とアナログラジオ放送の音声品質差がより目立ってしまう、という事態を抑制可能なサイマル放送対応のラジオ受信機を提供することができる。
【0056】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一実施の態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、フェージングを検出した場合に、ソフトミュート、ハイカット、及びオーディオフィルタの処理を行う場合を説明したが、音声の違和感を抑制可能な範囲で、ソフトミュートだけ、ソフトミュート及びハイカットだけ、又は、ソフトミュート及びオーディオフィルタだけの処理を行うようにしても良い。また、ソフトミュート、ハイカット、及びオーディオフィルタの音声補正に限定しなくても良い。要は、フェージングの影響による再生音の変化を抑えることが可能な音声補正を広く適用可能である。
【0057】
また、上述した実施形態では、DRMラジオのラジオ受信機1に本発明を適用する場合を説明したが、これに限らず、DRMラジオ以外のラジオ受信機に本発明を適用することができ、例えば、AMラジオ放送を受信するラジオ受信機に本発明を適用することができる。要は、音声を含む放送電波であって、フェージングの影響が再生音の変化を招く放送電波を受信し、受信信号から音声信号を得るラジオ受信機に本発明を広く適用可能である。