(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部を隔離壁により複数の液体貯蔵室に分割されるタンクと、このタンクの外側底部に配置されてタンク前後方向に延設される主搬送管と、この主搬送管から分岐してそれぞれの液体貯蔵室の底弁に連結された複数の枝管と、前記主搬送管から分岐して前記タンクの外側左右両側に配置された左右の側方吐出し口に連結される左配管および右配管と、前記主搬送管から分岐して前記タンクの外側後方に配置された後方吐出し口に連結される後方配管と、弁ケースおよび弁体およびエアアクチュエータおよび制御手段を有するバルブシステムとを備えた、車両とともに移動するタンク装置であって、
前記弁ケースが、取入口を有する取入面と、この取入面に隣接する三つの面にそれぞれ取出口を有するとともに、前記取入面に対向する面に前記弁体の回転軸を水密に貫通させた略立方体のケースであり、
前記弁体が、前記弁ケースの内部に前記回転軸を中心に回動可能に収容され、前記取出口のいずれかを選択可能に前記取入口と連通させる流路を有し、
前記エアアクチュエータが、第一アクチュエータおよび第二アクチュエータを隣接させて有し、
第一アクチュエータが第一筐体および第一シリンダからなり、第一シリンダを第一筐体の内部を摺動可能に配置するとともに、第一シリンダの摺動運動を前記回転軸の回動運動に変換するように前記回転軸を第一筐体に接続し、
第二アクチュエータが第二筐体、第二シリンダおよび突出部材からなり、第二シリンダを第二筐体の内部を摺動可能に配置するとともに、前記突出部材を第二シリンダの端部に連結させて隣接する第一筐体の内部に突出自在に配置し、
前記制御手段が、
第二シリンダが第二筐体の第一アクチュエータ側の内壁に当接する前進位置、
第二シリンダが第二筐体の第一アクチュエータと反対側の内壁に当接する後退位置のいずれかを切替可能に選択し、
第一シリンダが第一筐体の第二アクチュエータ側の内壁または前記後退位置にある第二シリンダの前記突出部材に当接する第一停止位置、
第一シリンダが第一筐体の第二アクチュエータの反対側の内壁に当接する第二停止位置、
第一シリンダが前記前進位置にある第二シリンダの前記突出部材に当接する第三停止位置、のいずれかを切替可能に選択し、この第一シリンダの停止位置に基づき前記弁体の回動位置を制御し前記取出口のいずれかを前記取入口と連通させる構成を有していて、
前記弁ケースおよび前記弁体が前記主搬送管からの分岐部分に設置され、前記主搬送管が前記取入口に連結され、前記左配管、右配管および後方配管の一端が前記三つの取出口にそれぞれ連結され、それぞれの他端が前記側方吐出し口のうちの同じ側に設けられた側方吐出し口または前記後方吐出し口に連結され、前記分岐部分から前記側方吐出し口または前記後方吐出し口に向かってそれぞれ下方に傾斜した状態で延設されることを特徴とするタンク装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の
タンク装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0019】
図1〜
図3に例示するように本願発明のバルブシステムを構成するバルブ2は、略立方体の弁ケース3と、この弁ケース3の内部に収容される弁体4とを備えている。このバルブ2には、隣接する状態でエアアクチュエータ5が併設されている。
【0020】
弁ケース3は、開口した取入口6を形成される取入面7を有し、この取入面7に隣接する三つの面にそれぞれ第一取出口8、第二取出口9、第三取出口10(以下、総称して取出口ということもある)が形成されている。第一取出口8と第二取出口9は弁ケース3の対向する面にそれぞれ形成されていて、この開口は同一軸線上に並んだ状態である。第三取出口10は、第一取出口8と第二取出口9とが形成される面の間の面に形成されている。
【0021】
取入面7に対向する面にはエアアクチュエータ5が設置されている。
図3に例示するようにエアアクチュエータ5から延びる回転軸11は、弁ケース3のこの面を貫通し、弁ケース3内に回動可能な状態で配置される弁体4に連結されている。この回転軸11が貫通した面は、弁ケース3内の流体が外部に漏れださないように水密に構成されている。
【0022】
弁体4には略L字型の流路が形成されていて、この流路の一方が取入口6に連通し、他方が三つの取出口8、9、10のいずれかと選択的に連通する。弁体4はエアアクチュエータ5に連結される回転軸11の回転により、回動することができる。例えば弁体4の他端が第一取出口8に連通した状態から、弁体4を90°回動させると第三取出口10と連通し、さらに90°回動させると第二取出口9と連通する状態となる。
図3では弁体4が取入口6と第三取出口10とを連通した状態を示している。
【0023】
バルブ2の構成は上記に限らず、回転軸11の周方向に三つの取出口8、9、10が並んで配置されていればよい。例えば第三取出口10が形成される面に対して第一取出口8および第二取出口9が形成される面がそれぞれ120°の角度をなすように弁ケース3を構成することもできる。このとき、弁体4を60°回動させることにより、連通している取出口をこれに隣接する取出口に変更することができる。
【0024】
取入口6、取出口8、9、10が形成される弁ケース3の面の内側と弁体4との間には、それぞれ環状のシール部材12が配置されている。また回転軸11が貫通している面の内側と弁体4との間にもシール部材12が配置されている。このシール部材12は、テフロン(登録商標)素材を加工して形成したパッキン等で構成することができる。
【0025】
シール部材12により弁ケース3と弁体4とのすき間を閉止できるので、バルブ2を通過する流体がこのすき間から漏洩することを抑制できる。またシール部材12を摩擦抵抗が比較的小さい材料で形成しているので、弁ケース3内で弁体4が回動する際の摩擦抵抗を小さくできる。これにより、小型で低出力のエアアクチュエータ5であっても弁体4を回転させることができるので、エアアクチュエータ5を小型化するには有利である。
【0026】
取入口6等が形成されていない弁ケース3の面(
図3における上面)の内側と弁体4との間にもシール部材12を配置することができる。即ち弁ケース3を形成する六つの面の全ての内側にシール部材12を配置する。この構成によれば、弁体4を六方向から略均等に支持し易くなるので、弁体4が内部を流れる流体に押されて弁ケース3内で移動することを抑制できる。即ち弁ケース3内における弁体4の中心位置を維持し易くなるので、弁体4の移動により弁ケース3とのすき間が拡大しバルブ2を通過する流体が漏洩することを防止するには有利となる。
【0027】
ここで、弁ケース3内に配置されるそれぞれのシール部材12は、同一の材料で同一の形状に形成されることが望ましい。この構成によれば、弁ケース3の六つの面で均一に弁体4を保持することができるので、弁体4の中心位置を維持するにはさらに有利となる。
【0028】
エアアクチュエータ5は、第一アクチュエータ13と、これに隣接する状態で配置される第二アクチュエータ14とを備えている。
図4に例示するように、第一アクチュエータ13は、略直方体形状で内部に空洞を有する第一筐体15と、この第一筐体15の内部を摺動可能に配置される第一シリンダ16とを備えている。
【0029】
第一筐体15には、第一シリンダ16の両端側に気体をそれぞれ供給するエアラインLの一端がそれぞれ接続されていて、エアラインLの他端は制御手段17を介してエア供給源18に接続されている。制御手段17により第一シリンダ16の左右いずれか一方側に
気体を供給して圧力を上昇させることにより、第一シリンダ16をその軸方向に沿って摺動させることができる。
【0030】
この実施形態では、第一シリンダ16の周面に軸方向に沿って延びるラック19が形成されている。第一アクチュエータ13に設置される回転軸11には、このラック19に対応するピニオンギア20が設置されている。第一シリンダ16の軸方向に沿った摺動にともない、このラック19がピニオンギア20を回転させる。即ち第一シリンダ16の摺動により、回転軸11に連結される弁体4を回動させる。第一シリンダ16は、第一筐体15の一対の内壁のいずれかに当接することで停止する。この一対の内壁は、第一シリンダ16の軸方向に対向する状態で配置されている。第一シリンダ16を停止させる構成はこれに限らず、例えば第一筐体15内に突起等を形成し、この突起に第一シリンダ16を当てて停止させる構成にすることもできる。
【0031】
第二アクチュエータ14は、略直方体形状で内部に空洞を有する第二筐体21と、この第二筐体21の内部を摺動可能に配置される第二シリンダ22と、第二シリンダ22の端部に連結される突出部材23とを備えている。第二筐体21には、第二シリンダ22の両端側に気体を供給するエアラインLの一端がそれぞれ接続されていて、エアラインLの他端は制御手段17を介してエア供給源18に接続されている。制御手段17により第二シリンダ22の左右いずれか一方側に気体を供給して圧力を上昇させることにより、第二シリンダ22をその軸方向に沿って摺動させることができる。
【0032】
この実施形態では、第二シリンダ22が第一シリンダ16の軸方向に沿って摺動する構成にしている。即ち第二シリンダ22と第一シリンダ16の中心軸が一致する状態としている。第一シリンダ16に近い側の第二シリンダ22の端部には突出部材23が設置されていて、この突出部材23は第二シリンダ22の軸方向に延びる棒状体で構成されている。
【0033】
この突出部材23は、第二筐体21および第一筐体15の壁面を貫通して第一筐体15の内部に前進可能に配置されていて、第二シリンダ22の軸方向に沿った摺動にともない、この突出部材23が第一筐体15の内部に突出する前進位置と、第二筐体21内に収納されるまたは突出部材23の先端が第一筐体15の壁面の近くまで戻る後退位置とに移動する。第二シリンダ22は、第二筐体21の一対の内壁にいずれかに当接することで停止する。この一対の内壁は、第二シリンダ22の軸方向に対向する状態で配置されている。第二シリンダ22を停止させる構成はこれに限らず、例えば第二筐体21内に突起等を形成し、この突起に第二シリンダ22を当てて停止させる構成にすることもできる。
【0034】
次に
バルブシステム1の制御について説明する。
図5に例示するように、エア供給源18に接続されている制御手段17は、第一スイッチ24、第二スイッチ25、第三スイッチ26と、第一アクチュエータ13に送る気体の方向を切り替える第一切替弁27と、第二アクチュエータ14に送る気体の方向を切り替える第二切替弁28とをエアラインLでそれぞれ接続して構成されている。
図5、
図6、
図8では、気体が流れているエアラインLを実線で示し、気体が流れていないエアラインLを破線で示している。各スイッチおよび切替弁は例えばソレノイドバルブで構成することができる。
【0035】
第一スイッチ24をオンとすると、エア供給源18から供給された気体が、チェック弁29を介して第一切替弁27にパイロットエアーとして供給される。また気体は、第一スイッチ24とチェック弁29との間で分岐したエアラインLからチェック弁30を介して第二切替弁28にパイロットエアーとして供給される。第一切替弁27および第二切替弁28は、パイロットエアーの供給により切り替えが行われ、この切り替えにより第一アクチュエータ13および第二アクチュエータ14に供給される気体の流れる方向が変わる。
【0036】
他方で第一スイッチ24からチェック弁31を介して第二切替弁28に供給された気体は、第二シリンダ22の第一シリンダ16に近い方(
図5右方)に供給される。この気体の圧力により第二シリンダ22は、第一シリンダ16から離れる方向(
図5左方)に移動して第二筐体21の左方の内壁に当接して停止する。このときの第二シリンダ22の位置を後退位置という。第二シリンダ22が左方に移動する途中では、第二シリンダ22の左方の気体が第二筐体21の内部から押し出されて第二切替弁28を介して大気に放出される。
【0037】
第二切替弁28とチェック弁31との間で分岐したエアラインLにより第一切替弁27にも気体が供給される。第一切替弁27に供給された気体は、第一シリンダ16の第二シリンダ22から遠い方(
図5右方)に供給される。この気体の圧力により第一シリンダ16が第二シリンダ22側(
図5左方)に移動して第一筐体15の左方の内壁に当接して停止する。このときの第一シリンダ16の停止位置を第一停止位置という。第一シリンダ16が左方に移動する途中では、第一シリンダ16の左方の気体が第一筐体15の内部から押し出されて第一切替弁27を介して大気に放出される。
【0038】
図4に例示するように第二シリンダ22が後退位置にあり、第一シリンダ16が第一停止位置にあるとき、弁体4の他端は第一取出口8と連通する状態となる。
【0039】
図4に例示する実施形態よりも突出部材23を長く構成し、第二シリンダ22が後退位置にある場合に突出部材23の先端が第一筐体15内に突出する構成にすることもできる。このとき第一シリンダ16は、第一筐体15の左方の内壁の代わりに突出部材23に当接して停止し、この停止位置が第一停止位置となる。
【0040】
図6に例示するように第二スイッチ25をオンとすると、エア供給源18から供給された気体が、第一切替弁27にパイロットエアーとして供給される。また気体は、第二スイッチ25と第一切替弁27との間で分岐したエアラインLからチェック弁30を介して第二切替弁28にパイロットエアーとして供給される。
【0041】
他方で第二スイッチ25からチェック弁32とチェック弁31とを介して第二切替弁28に供給された気体は、第二シリンダ22の右方に供給される。これにより第二シリンダ22は後退位置にある場合はその位置を維持し、ない場合は後退位置に移動する。
【0042】
第二切替弁28とチェック弁31との間で分岐したエアラインLにより第一切替弁27にも気体が供給される。第一切替弁27に供給された気体は、第一シリンダ16の左方に供給される。これにより第一シリンダ16は右方に移動して第一筐体15の右方の内壁に当接して停止する。このとき第一シリンダ16の停止位置を第二停止位置という。第一シリンダ16が右方に移動する途中では、第一シリンダ16の右方の気体が第一筐体15の内部から押し出されて第一切替弁27を介して大気に放出される。
【0043】
図7に例示するように第二シリンダ22が後退位置にあり、第一シリンダ16が第二停止位置にあるとき、弁体4の他端は第二取出口9と連通する状態となる。この実施形態では、第一シリンダ16が第一停止位置から第二停止位置に移動すると、この移動に伴い回転軸11が回転し、弁体4は180°回動する。
【0044】
第一シリンダ16を第二停止位置で停止させるときは、第二シリンダ22はいずれの位置にあってもよいので、第二シリンダ22の位置を制御しない構成にすることもできる。
【0045】
図8に例示するように第三スイッチ26をオンとすると、エア供給源18から供給され
た気体が、チェック弁29を介して第一切替弁27にパイロットエアーとして供給される。また気体は、第三スイッチ26とチェック弁29との間で分岐したエアラインLから第二切替弁28にパイロットエアーとして供給される。
【0046】
他方でチェック弁29および第二切替弁28と、第三スイッチ26との間で分岐したエアラインLから、チェック弁32とチェック弁31とを介して第二切替弁28に供給された気体は、第二シリンダ22の左側に供給される。これにより第二シリンダ22は第一アクチュエータ13側に移動して第二筐体21の右方の内壁に当接して停止する。このときの第二シリンダ22の位置を前進位置という。第二シリンダ22が前進位置にあるとき、第二シリンダ22に設置されている突出部材23の先端は第一筐体15の内部に突出した状態となる。第二シリンダ22が右方に移動する途中では、第二シリンダ22の右方の気体が第二筐体21の内部から押し出されて第二切替弁28を介して大気に放出される。
【0047】
第二切替弁28とチェック弁31との間で分岐したエアラインLにより第一切替弁27にも気体が供給される。第一切替弁27に供給された気体は、第一シリンダ16の右側に供給される。これにより第一シリンダ16は左方に移動して第一筐体15の内部に突出した突出部材23に当接して停止する。このとき第一シリンダ16の停止位置を第三停止位置という。この第三停止位置は第一停止位置と第二停止位置との間の例えば中間地点となる。
【0048】
図9に例示するように第二シリンダ22が前進位置にあり、第一シリンダ16が第三停止位置にあるとき、弁体4の他端は第三取出口10と連通する状態となる。
【0049】
第一シリンダ16を突出部材23に当接させることにより、第一筐体15の対向する一対の内壁のいずれにも当接させずに、その間の任意の位置に停止させることができる。即ち、第一シリンダ16を、第一停止位置、第二停止位置に加えて、第三停止位置でも正確な位置に停止させることができるので、三つの取出口を有するバルブ2をエアアクチュエータ5により制御することが可能となる。
【0050】
第一シリンダ16を第三停止位置に正確に停止させることができるので、取出口に対して弁体4の他端の位置がずれ、流体が漏洩することを抑制できる。
【0051】
第二シリンダ22の摺動方向は上記に限らない。第二シリンダ22が前進位置にあるときに、突出部材23が第一筐体15内に突出し、第一シリンダ16と当接することにより第一シリンダ16の第三停止位置を決定できる構成であればよい。例えば第一シリンダ16の摺動方向に対して直交する方向に、第二シリンダ22が摺動する構成としてもよい。
【0052】
この制御手段17は、第一シリンダ16および第二シリンダ22がいずれの位置にある場合でも、第一スイッチ24、第二スイッチ25、第三スイッチ26のいずれかを操作すれば、弁体4を対応する位置に回動させることができる。即ち弁体4が基準となる初期位置を有さないので、スイッチ24、25、26の操作により、弁体4を速やかに任意の位置に回動させることができ、バルブ2の切り替えを迅速に行なうことができる。
【0053】
図8に例示するようにエア供給源18から供給される気体は、エアラインLの分岐点Pで分かれて第一切替弁27および第二切替弁28にそれぞれ供給される。この分岐点Pと第一切替弁27との間に圧力調整弁33を設置する構成にすることもできる。この圧力調整弁33により供給される気体の圧力を低下させて、第一筐体15内に供給する。
【0054】
この構成によれば、第二筐体21内に供給される気体に比べて、第一筐体15内に供給される気体の圧力を低くすることができる。例えば第一筐体15内に供給される気体の圧
力を0.4MPaとし、第二筐体21内に供給される気体の圧力を0.5MPaとする。これにより、第一シリンダ16が左方に移動して突出部材23に当接した後に、第一シリンダ16がさらに左方に押されて突出部材23を押込むおそれがなくなる。つまり、第一シリンダ16が左方に移動しようとする力よりも大きい力で、第二シリンダ22がその場に留まろうとするので、第一シリンダ16が突出部材23に当接して停止する第三停止位置がずれることを抑制するには有利となる。
【0055】
また分岐点Pと第一切替弁27との間に気体の移動速度を調整するスピードコントローラ34を設置する構成にすることもできる。このスピードコントローラ34により供給される気体の流速を低下させて、第一筐体15内に供給する。この構成によれば、第一シリンダ16が移動するよりも先に第二シリンダ22が移動を開始するので、第一シリンダ16および第二シリンダ22のスムーズな移動を実現することができる。
【0056】
例えば
図9に例示するように第三停止位置にある第一シリンダ16を、第一筐体15の左方となる第一停止位置に移動させる場合、第二シリンダ22が先に後退位置への移動を開始し、その後第一シリンダ16が第一停止位置への移動を開始する。そのため、第一シリンダ16と突出部材23とが衝突しながら移動する場合に比べて、第一シリンダ16の移動をスムーズにさせることができる。
【0057】
第一シリンダ16の摺動方向に直交する方向に第二シリンダ22が移動する構成の場合は、第二シリンダ22に連結される突出部材23に第一シリンダ16が押し付けられることにより、突出部材23が第二筐体21内に後退できなくなる可能性がある。
【0058】
このような場合であっても、スピードコントローラ34を設置することにより、第一シリンダ16が移動を開始するよりも先に、第二シリンダ22を後退位置に向かって移動を開始させることができるので、第一シリンダ16と突出部材23とが噛み合って移動できなくなる事態を回避するには有利となる。
【0059】
バルブシステム1は、トラクタヘッドに牽引されるタンクトレーラやトラクタヘッドと一体に構成されたいわゆる単車に搭載され車両とともに移動するタンク装置35に設置することができる。
【0060】
図10〜
図13に例示するように本発明のタンク装置35は、タンク36と、このタンク36に連結される配管と、この配管に配置されるバルブシステム1とを備えている。タンク36は、内部を隔離壁37により複数の液体貯蔵室38に分割され、例えばガソリンや軽油、灯油等の異なる種類の液体を複数の液体貯蔵室38にそれぞれ独立して貯蔵することができる。それぞれの液体貯蔵室38の底部には開閉する底弁39が設けられている。尚、以下の図中ではタンク36の軸方向を矢印x、この軸方向に直交する水平方向を矢印y、上下方向を矢印zで示している。
【0061】
タンク36に連結される配管は、タンク36の外側の底部であってタンク36の前後方向(
図10x軸方向)に延設した主搬送管40と、この主搬送管40から分岐させて液体貯蔵室38の底弁39にそれぞれ連結する枝管41とを備えている。この主搬送管40はバルブシステム1のバルブ2に連結され、各液体貯蔵室38から荷卸しされる液体は、各枝管41から主搬送管40を通過してバルブ2に送られる。
【0062】
この実施形態ではタンク装置35の配管は、バルブ2からタンク36の外側でタンク36の左右両側(図
10y軸方向)に向かって延設する左配管42と右配管43と、バルブ2からタンク36の後方に向かって延設する後方配管44とを備えている。左配管42と右配管43とは、一端をバルブ2にそれぞれ連結され他端をタンク36の外側であってタンク36の両側側方に設けられた側方吐出し口45にそれぞれ連結されている。
図11では説明のため左配管42を省略している。
【0063】
後方配管44は、一端をバルブ2に連結され他端をタンク36の後方に設けられた後方吐出し口46に連結されている。この後方配管44は、
図11に例示するようにバルブ2から後方吐出し口46に向かって、水平面に対して下方に傾斜した状態で連結され、この傾斜角度をθ1で示している。また
図12に例示するように主搬送管40の途中にポンプ47を設置して、灯油等の液体を強制的に荷卸しする構成とすることもできる。
【0064】
バルブ2は、第三取出口10が下向きに開口し、その他が水平方向に開口する向きに配置されている。主搬送管40の一端がバルブ2の取入口6に連結され、左配管42が第一取出口8に連結され、右配管43が第三取出口10に連結され、後方配管44が第二取出口9に連結されている。即ちバルブ2を操作することにより主搬送管40と、左配管42または右配管43または後方配管44のいずれか一つの配管とが選択的に連通される構成になっている。
【0065】
制御手段17を構成する第一スイッチ24、第二スイッチ25、第三スイッチ26は、側方吐出し口45または後方吐出し口46の近傍にそれぞれ配置されている。この実施形態では
図10に例示するように、左配管42の側方吐出し口45の近傍には第一スイッチ24が配置され、右配管43の側方吐出し口45の近傍には第三スイッチ26が配置され、後方吐出し口46の近傍には第二スイッチ25が配置されている。
【0066】
図13に例示するように、左配管42と右配管43とはバルブ2から側方吐出し口45に向かって下方に傾斜した状態で連結され、その傾斜角度をθ2で示している。
【0067】
次に、タンク装置35を搭載したタンクローリ等が、ガソリンスタンドに停止して荷卸しをする際の方法を説明する。まず、作業員によりガソリンスタンドのガソリン貯蔵タンクと例えば左配管42に対応する側方吐出し口45とがホースで連結される。連結後、作業員が左配管42に対応する側方吐出し口45近傍の第一スイッチ24を操作すると、バルブ2が動作して主搬送管40と左配管42とだけを連通させる。その後、ガソリンを搭載した液体貯蔵室38の底弁39が作業員により開放される。
【0068】
ガソリンは、特別な外力を加えなくても自重によって液体貯蔵室38から枝管41と主搬送管40を通り、バルブ2を通過して左配管42からガソリンスタンドのガソリン貯蔵タンクに荷卸しされる。このとき、右配管43と後方配管44とはバルブ2により閉止されているので、右配管43または後方配管44にガソリンが流れ込み、右配管43に対応する側方吐出し口45近傍または後方配管44に対応する後方吐出し口46の近傍にガソリンが溜まり、残液となることはない。また左配管42内にガソリンが溜まり残液になることもない。そのため、ガソリンの荷役が完了した後に例えば灯油の荷卸しをする際に、配管内にガソリンの残液がないので灯油にガソリンが混ざることを防止できる。また右配管43および後方配管44の残液を処理する作業が不要となり、作業者の荷卸し作業における負担を大幅に低減することができる。
【0069】
例えば左右配管が水平でありタンクローリの左側が高くなるように傾いているときに、左配管から荷卸しすると、左配管は上り傾斜となり、荷卸し完了後に左配管と主搬送管との分岐部分に残液が発生してしまう。
【0070】
これに対して、本発明のタンク装置35の左配管42と右配管43とは、バルブ2から側方吐出し口45に向かって下方に傾斜しているので、例えばタンクローリの左側が高くなるように傾いている場合であっても、左配管42は下り傾斜となり、荷卸し完了後に左
配管42内のバルブ2近傍に残液が発生することを防止できる。
【0071】
図13に例示する左右配管42、43の傾きの角度θ2は、水平面に対して3°以上8°以下とすることが望ましい。ガソリンスタンドの地面の傾きはおおむね2°以内となっているが、たとえ2°の傾きがあったとしても、荷卸しに使用する側の左右配管42、43を下り傾斜に維持できるからである。同様に、後方配管44の傾きの角度θ1も、水平面に対して3°以上8°以下とすることが望ましい。
【0072】
ガソリンの荷卸しが完了した後に灯油を荷卸しする際には、ガソリンスタンドの灯油貯蔵タンクと左配管42に対応する側方吐出し口45が作業員によりホースで連結される。連結後、灯油を搭載した液体貯蔵室38の底弁39が作業員により開放されると、灯油は対応する枝管41から主搬送管40を通り、バルブ2を通過して左配管42からガソリンスタンドの灯油貯蔵タンクに荷卸しされる。各液体貯蔵室38に積載された液体燃料は、上記の作業を繰り返し順次荷卸しされる。
【0073】
ガソリンスタンドにおけるガソリン等の貯蔵タンクの配置や、タンクローリ等の車両の停車位置に応じて、左右配管42、43や後方配管44のいずれかが選択され、荷卸しに利用される。
【0074】
例えば後方配管44を利用して荷卸しする場合には、作業員が後方吐出し口46近傍の第二スイッチ25を操作すると、バルブ2は主搬送管40と後方配管44とだけを連通させる。このように、バルブ2は、例えば後方吐出し口46等の作業者が作業を行っている場所のスイッチにより、対応する配管と主搬送管40とを連通するので、誤って荷役に使用しない配管と主搬送管40が連通して液体が流れ込むことを抑制するには有利である。
【0075】
ガソリン等の可燃性の高い物質が液体貯蔵室38に積載されている場合であっても、バルブ2の回動をエアアクチュエータ5により制御するので、引火等の事故を防止するには有利である。エアアクチュエータ5を使用するタンク装置35は、火花が発生してガソリン等に引火するおそれのある電動アクチュエータを使用する場合に比べて、安全性を向上することができる。
【0076】
またバルブ2の弁体4の停止位置を精密に制御することができるので、弁体4の停止位置がずれることにより、ガソリン等がバルブ2から漏洩することを抑制するには有利である。
【0077】
図13に例示するように、この実施形態ではバルブ2の側方に後方配管44を連結しているので、後方配管44はバルブ2の底面に連結する場合に比べて、上下方向(
図13z軸方向)においてバルブ2の高い位置に連結することができる。そのため、
図11に例示する後方配管44の傾斜角度θ1を大きくすることができるので、後方配管44の途中に液体が溜まり残液となることを抑制するには有利である。
【0078】
図13に例示する実施形態では右配管43をバルブ2の底面に連結しているが、左配管42をバルブ2の底面に連結する構成とすることもできる。
【0079】
図14〜
図16に例示するように、例えば液体貯蔵室38を前方の三つと後方の四つの2組にわけて、それぞれに主搬送管40とバルブ2と左右配管42、43と後方配管44とを設置して、配管を2系統とすることもできる。
【0080】
このとき二つのバルブ2には、それぞれ制御手段17とエア供給源18とが連結されている。一つのエア供給源18を設置して、このエア供給源18から二つの制御手段17に
それぞれ気体を供給する構成にすることもできる。スイッチ24、25、26は、二つの制御手段17ごとにそれぞれ設置されている。
【0081】
図14では左配管42を省略している。配管を2系統とすると、前方の液体貯蔵室38と後方の液体貯蔵室38からそれぞれ独立した配管で荷卸しできるので、異種の液体であっても同時に荷卸しできる。そのため、荷卸しにかかる時間を短縮して、作業者の荷卸し作業の負担をさらに軽減することができる。
【0082】
この実施形態において配管にポンプ47を設置する場合には、
図15に例示するように後方側の右配管43と前方側の主搬送管40とを、開閉弁48を介して連結することが望ましい。この開閉弁48を開放すると後方側の液体貯蔵室38の液体は、枝管41と後方側の主搬送管40と後方側の右配管43から開閉弁48を経由して、前方側の主搬送管40を通りポンプ47に移動する。そのため、前方側と後方側の両方の液体貯蔵室38に搭載された液体を一台のポンプ47で強制的に荷卸しできる。
【0083】
また
図15と
図16に例示するように、前方側のバルブ2は前方側の側面に主搬送管40を連結され底面に右配管43を連結され、後方側のバルブ2は後方側の側面に主搬送管40を連結され底面に左配管42を連結されている。これにより、タンク36の下方の空間が狭い場合であっても、配管を効率的に配置することができる。
【0084】
図17〜19に例示するように、バルブ2の取入口6が上向きに開口し、その他が水平方向に開口する向きにバルブ2を配置する構成とすることもできる。この実施形態は、2系統の配管を備えてポンプを設置しない構成である。主搬送管40の一端がバルブ2の取入口6に連結され、左配管42が第一取出口8に連結され、右配管43が第二取出口9に連結され、後方配管44が第三取出口10に連結されている。これにともない右配管43に対応する側方吐出し口45の近傍には第二スイッチ25が配置され、後方吐出し口46の近傍には第三スイッチ26が配置されている。
【0085】
バルブ2の取入口6が上向きに配置され、バルブ2に流れ込む流体の流速が相対的に大きくなるので、左右配管42、43や後方配管44の途中で液体の流速が減少し停滞して残液となる可能性を抑制できる。左配管42と右配管43の両方をバルブ2の側方に連結できるので、左右配管42、43の傾斜角度θ2を大きくするには有利である。
【0086】
この実施形態のタンク装置35は、バルブ2の上方に主搬送管40を連結するための空間が必要となるので、タンク36の下方の空間が広いタンクトレーラに採用することが望ましい。またこの実施形態のタンク装置35において、配管を1系統としてもよい。また
図14〜16の実施形態と同様にポンプ47および開閉弁48を設置する構成とすることもできる。
【0087】
本発明のタンク装置35は、液体燃料を運搬する物に限らず、その他の化学物質等の液体を運搬する際にも利用することができる。