特許第6442304号(P6442304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442304
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20181210BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20181210BHJP
   H01M 8/247 20160101ALI20181210BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20181210BHJP
【FI】
   H01M8/0202
   H01M8/2465
   H01M8/247
   !H01M8/10 101
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-18100(P2015-18100)
(22)【出願日】2015年2月2日
(65)【公開番号】特開2016-143545(P2016-143545A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】西山 忠志
(72)【発明者】
【氏名】奈良 由介
(72)【発明者】
【氏名】高木 孝介
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−096358(JP,A)
【文献】 特開2013−179032(JP,A)
【文献】 特開2009−070674(JP,A)
【文献】 特開2007−294243(JP,A)
【文献】 特開2007−184200(JP,A)
【文献】 特開2009−021216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0202
H01M 8/24
H01M 8/247
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質をアノード電極及びカソード電極で挟んだ電解質・電極構造体が1組のセパレータ間に介在される単位セルを備え、複数個の前記単位セルが積層される燃料電池スタックであって、
前記セパレータには、前記単位セルの積層方向に直交する方向の荷重を受ける樹脂製の荷重受け部が設けられる一方、
前記単位セルの積層方向に延在して複数個の該単位セルを支持するとともに、前記荷重受け部に係合する係合部を有する連結部材を備え、
前記荷重受け部は、前記セパレータの外周縁部から外方に突出する凸状部を有し、
前記係合部は、前記凸状部が挿入される凹状部を有し、
前記凸状部の側面と前記凹状部を形成する側面との間隔は、該凸状部の根本部側の間隔が前記凸状部の先端側の間隔よりも小さな寸法に設定されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、前記凸状部の前記側面は、該凸状部の根本部側から前記先端側に向かって内方に傾斜するテーパ形状を有する、又は、前記凹状部を形成する前記側面は、該凸状部の根本部側から前記先端側に向かって外方に傾斜するテーパ形状を有する、ことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池スタックにおいて、外部荷重による前記荷重受け部の変位時において、前記係合部と前記荷重受け部との接点は、該荷重受け部の前記外周縁部から先端部までの距離の中央よりも、該外周縁部側に近接することを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項4】
電解質をアノード電極及びカソード電極で挟んだ電解質・電極構造体が1組のセパレータ間に介在される単位セルを備え、複数個の前記単位セルが積層される燃料電池スタックであって、
前記セパレータには、前記単位セルの積層方向に直交する方向の荷重を受ける樹脂製の荷重受け部が設けられる一方、
前記単位セルの積層方向に延在して複数個の該単位セルを支持するとともに、前記荷重受け部に係合する係合部を有する連結部材を備え、
前記荷重受け部は、前記セパレータの外周縁部から内方に陥没する凹状部を有し、
前記係合部は、前記凹状部に挿入される凸状部を有し、
前記凹状部を形成する側面と前記凸状部の側面との間隔は、該凹状部の深さ方向内方側の間隔が前記凹状部の深さ方向外方側の間隔よりも小さな寸法に設定されることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項5】
請求項4記載の燃料電池スタックにおいて、前記凹状部を形成する前記側面は、該凹状部の深さ方向内方側から前記深さ方向外方側に向かって外方に傾斜するテーパ形状を有する、又は、前記凸状部の前記側面は、該凹状部の深さ方向内方側から前記深さ方向外方側に向かって内方に傾斜するテーパ形状を有する、ことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項6】
請求項4又は5記載の燃料電池スタックにおいて、外部荷重による前記荷重受け部の変位時において、前記係合部と前記荷重受け部との接点は、該荷重受け部の前記外周縁部から前記凹状部の底面までの距離の中央よりも、前記底面側に近接することを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記単位セルは、長方形状を有し、前記荷重受け部は、該長方形状の各辺に設けられるとともに、
長辺又は短辺の一方の辺側に設けられる前記荷重受け部が変位した際、他方の辺側の前記外周縁部と前記連結部材とが面接触することを特徴とする燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質をアノード電極及びカソード電極で挟んだ電解質・電極構造体が1組のセパレータ間に介在される単位セルを備え、複数個の前記単位セルが積層される燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池は、固体高分子電解質膜の一方にアノード電極が、前記固体高分子電解質膜の他方にカソード電極が、それぞれ設けられた電解質膜・電極構造体(MEA)を備えている。電解質膜・電極構造体は、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持されることにより、燃料電池が構成されている。この燃料電池は、所定の数だけ積層することにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池電気自動車に搭載されている。
【0003】
燃料電池スタックには、通常、積層方向一端部に位置する単位セルから積層方向他端部に位置する単位セルまでの間、締め付け荷重を付与して前記単位セルが脱落することを防止するために、締結部材が設けられている。
【0004】
特に、車載用燃料電池スタックには、外部から衝撃荷重が加わる場合がある。その際、単位セルの積層方向には、締結部材によって締め付け荷重が付与されているため、積層方向に対しては、前記単位セルの移動が発生し難い。一方、積層方向に直交する方向(高さ方向及び水平方向)では、単位セルに締め付け荷重が付与されていないため、前記単位セルに移動が生じ易い。
【0005】
そこで、このような移動を抑制するために、セパレータの外周縁部に荷重受け部を設け、該荷重受け部で衝撃荷重を吸収することが考えられる。例えば、本出願人は、特許文献1において、燃料電池スタックをケーシングに収容するとともに、所定のセパレータに設けた荷重受け部を、前記ケーシングの内壁に当接するように突出させた構成を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−27761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の荷重受け部は、樹脂材で形成されている。このため、荷重受け部がケーシングの内壁に当接する際に、場合によっては、前記荷重受け部が損傷するおそれがある。
【0008】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単な構成で、荷重受け部が破損することを可及的に抑制することが可能な燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質をアノード電極及びカソード電極で挟んだ電解質・電極構造体が1組のセパレータ間に介在される単位セルを備え、複数個の前記単位セルが積層される燃料電池スタックに関するものである。
【0010】
セパレータには、単位セルの積層方向に直交する方向の荷重を受ける樹脂製の荷重受け部が設けられている。一方、単位セルの積層方向に延在して複数個の該単位セルを支持するとともに、荷重受け部に係合する係合部を有する連結部材を備えている。
【0011】
荷重受け部は、セパレータの外周縁部から外方に突出する凸状部を有し、係合部は、前記凸状部が挿入される凹状部を有している。そして、凸状部の側面と凹状部を形成する側面との間隔は、該凸状部の根本部側の間隔が前記凸状部の先端側の間隔よりも小さな寸法に設定されている。
【0012】
また、凸状部の側面は、該凸状部の根本部側から先端側に向かって内方に傾斜するテーパ形状を有する、又は、凹状部を形成する側面は、該凸状部の根本部側から前記先端側に向かって外方に傾斜するテーパ形状を有することが好ましい。
【0013】
さらに、外部荷重による荷重受け部の変位時において、係合部と荷重受け部との接点は、該荷重受け部の外周縁部から先端部までの距離の中央よりも、該外周縁部側に近接することが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明では、荷重受け部は、セパレータの外周縁部から内方に陥没する凹状部を有し、係合部は、前記凹状部に挿入される凸状部を有している。そして、凹状部を形成する側面と凸状部の側面との間隔は、該凹状部の深さ方向内方側の間隔が前記凹状部の深さ方向外方側の間隔よりも小さな寸法に設定されている。
【0015】
また、凹状部を形成する側面は、該凹状部の深さ方向内方側から深さ方向外方側に向かって外方に傾斜するテーパ形状を有することが好ましい。又は、凸状部の側面は、凹状部の深さ方向内方側から深さ方向外方側に向かって内方に傾斜するテーパ形状を有することが好ましい。
【0016】
さらに、外部荷重による荷重受け部の変位時において、係合部と前記荷重受け部との接点は、該荷重受け部の外周縁部から凹状部の底面までの距離の中央よりも、前記底面側に近接することが好ましい。
【0017】
さらにまた、単位セルは、長方形状を有し、荷重受け部は、該長方形状の各辺に設けられるとともに、長辺又は短辺の一方の辺側に設けられる前記荷重受け部が変位した際、他方の辺側の外周縁部と連結部材とが面接触することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、荷重受け部を構成する凸状部の側面と、連結部材(係合部)を構成する凹状部の側面との間隔は、該凸状部の根本部側の間隔が前記凸状部の先端側の間隔よりも小さな寸法に設定されている。このため、燃料電池スタックに外部荷重(衝撃)が付与されて単位セルが変位した際に、荷重受け部は、凸状部の根本部側で連結部材に接触している。
【0019】
従って、凸状部に大きな応力(モーメント)が作用することを確実に阻止することができる。これにより、簡単な構成で、荷重受け部が破損することを可及的に抑制することが可能になる。
【0020】
また、本発明によれば、荷重受け部を構成する凹状部の側面と、連結部材(係合部)を構成する凸状部の側面との間隔は、該凹状部の深さ方向内方側の間隔が前記凹状部の深さ方向外方側の間隔よりも小さな寸法に設定されている。このため、燃料電池スタックに外部荷重(衝撃)が付与されて単位セルが変位した際に、荷重受け部は、凹状部の深さ方向内方側(底面側)で連結部材に接触している。
【0021】
従って、荷重受け部に大きな応力(モーメント)が作用することを確実に阻止することができる。これにより、簡単な構成で、荷重受け部が破損することを可及的に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタックの概略全体斜視図である。
図2】前記燃料電池スタックの、図1中、II−II線断面図である。
図3】前記燃料電池スタックを構成する単位セルの要部分解斜視図である。
図4】第1連結部材と第1荷重受け部とを示す要部拡大正面図である。
図5】第2連結部材と第2荷重受け部とを示す要部拡大正面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックの断面説明図である。
図7】第2の実施形態において、第1連結部材と第1荷重受け部とを示す要部拡大正面図である。
図8】第2の実施形態において、第2連結部材と第2荷重受け部とを示す要部拡大正面図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタックの断面説明図である。
図10】第3の実施形態において、第1連結部材と第1荷重受け部とを示す要部拡大正面図である。
図11】第3の実施形態において、第2連結部材と第2荷重受け部とを示す要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタック10は、複数の単位セル(燃料電池)12が、立位姿勢で水平方向(矢印A方向)に積層される積層体14を有する。燃料電池スタック10は、例えば、車載用燃料電池スタックを構成し、図示しない燃料電池車両(燃料電池電気自動車)に搭載される。
【0024】
積層体14の積層方向一端には、第1ターミナルプレート16a、第1絶縁プレート18a、第1エンドプレート20aが内方から外方に向かって、この順序で配設される。積層体14の積層方向他端においても同様に、第2ターミナルプレート16b、第2絶縁プレート18b及び第2エンドプレート20bが内方から外方に向かって、この順序で配設される。
【0025】
第1エンドプレート20aの中央部からは、第1ターミナルプレート16aに接続された第1出力端子22aが延在する。第2エンドプレート20bの中央部からは、第2ターミナルプレート16bに接続された第2出力端子22bが延在する。
【0026】
第1エンドプレート20a及び第2エンドプレート20bは、横長の長方形状を有するとともに、各長辺間には、積層体14の外方に沿って第1連結部材24が配置される(図1及び図2参照)。第1エンドプレート20a及び第2エンドプレート20bの各短辺間には、積層体14の外方に沿って第2連結部材26が配置される。第1連結部材24及び第2連結部材26は、それぞれ第1エンドプレート20aと第2エンドプレート20bとにねじ27を介して固定される(図1参照)。
【0027】
積層体14を構成する単位セル12は、図3に示すように、電解質膜・電極構造体28と、前記電解質膜・電極構造体28を挟持する第1セパレータ30及び第2セパレータ32とを備える。
【0028】
電解質膜・電極構造体28は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)34と、前記固体高分子電解質膜34を挟持するカソード電極36及びアノード電極38とを備える。単位セル12は、固体高分子形燃料電池である。
【0029】
カソード電極36及びアノード電極38は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、固体高分子電解質膜34の両面に形成される。
【0030】
第1セパレータ30及び第2セパレータ32は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、又は、その金属表面に防食用の表面処理を施した金属板等からなる。なお、第1セパレータ30及び第2セパレータ32は、金属セパレータに代えて、例えば、カーボンセパレータを使用してもよい。
【0031】
図3に示すように、単位セル12の長辺方向(矢印B方向)の一端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス供給連通孔40aと燃料ガス排出連通孔42bとが上下に設けられる。酸化剤ガス供給連通孔40aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する一方、燃料ガス排出連通孔42bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。
【0032】
単位セル12の長辺方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔42aと、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔40bとが設けられる。
【0033】
単位セル12の短辺方向(矢印C方向)の両端縁部一方側には、すなわち、酸化剤ガス供給連通孔40a及び燃料ガス排出連通孔42b側には、矢印A方向に互いに連通して、2つの冷却媒体供給連通孔44aが上下に設けられる。各冷却媒体供給連通孔44aは、冷却媒体を供給するものであり、互いに対向する辺に設けられる。
【0034】
単位セル12の短辺方向の両端縁部他方側には、すなわち、燃料ガス供給連通孔42a及び酸化剤ガス排出連通孔40b側には、矢印A方向に互いに連通して、2つの冷却媒体排出連通孔44bが上下に設けられる。各冷却媒体排出連通孔44bは、冷却媒体を排出するものであり、互いに対向する辺に設けられる。
【0035】
第1セパレータ30の電解質膜・電極構造体28に向かう面30aには、酸化剤ガス供給連通孔40aと酸化剤ガス排出連通孔40bとを連通する酸化剤ガス流路46が形成される。酸化剤ガス流路46は、矢印B方向に延在する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)により形成される。
【0036】
第2セパレータ32の電解質膜・電極構造体28に向かう面32aには、燃料ガス供給連通孔42aと燃料ガス排出連通孔42bとを連通する燃料ガス流路48が形成される。燃料ガス流路48は、矢印B方向に延在する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)により形成される。
【0037】
第2セパレータ32の面32bと隣接する第1セパレータ30の面30bとの間には、冷却媒体供給連通孔44a、44aと冷却媒体排出連通孔44b、44bとに連通する冷却媒体流路50が形成される。冷却媒体流路50は、電解質膜・電極構造体28の電極範囲にわたって冷却媒体を流通させる。
【0038】
第1セパレータ30の面30a、30bには、この第1セパレータ30の外周端縁部を周回して第1シール部材52が一体成形される。第2セパレータ32の面32a、32bには、この第2セパレータ32の外周端縁部を周回して第2シール部材54が一体成形される。
【0039】
第1シール部材52及び第2シール部材54としては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール部材が用いられる。
【0040】
単位セル12では、第1セパレータ30及び第2セパレータ32の外周縁部56aにおいて、長辺側(図3中、上端部及び下端部)の中央に、それぞれ内部に切り欠いて切り欠き部58a、58bが形成される。切り欠き部58a、58bの略中央部位には、第1荷重受け部60a、60bが第1セパレータ30及び第2セパレータ32に一体又は別個に設けられる。
【0041】
図2及び図3に示すように、第1荷重受け部60a、60bは、例えば、樹脂材で形成される。第1荷重受け部60a、60bは、第1セパレータ30及び第2セパレータ32に一体構成される基台部62a、62bと、前記基台部62a、62bから外方に突出する凸状部64a、64bとを一体に有する。基台部62a、62bは、外周縁部56aと同一平面に配置される。
【0042】
凸状部64aは、矩形状(正方形又は長方形)を有し、図4に示すように、両方の側面65、65は、互いに平行に且つ基台部62aに直交して外方に延在する。凸状部64bは、上記の凸状部64aと同様に構成される。
【0043】
なお、第1荷重受け部60a、60bは、第1セパレータ30及び第2セパレータ32と一体の金属板からなり、表面に絶縁処理を施してもよい。また、第1荷重受け部60a、60bは、第1セパレータ30及び第2セパレータ32の長辺側の各対角の対称位置に設けてもよい。
【0044】
第1荷重受け部60a、60bは、積層方向に配列されるとともに、複数の前記第1荷重受け部60a同士及び複数の前記第1荷重受け部60b同士は、後述するように、各第1連結部材24の凹状部76a、76bに一体に係合(挿入)する。
【0045】
第1セパレータ30及び第2セパレータ32の外周縁部56aにおいて、短辺側(図3中、右端部及び左端部)には、それぞれ高さ位置を異にして(又は同一にして)、第2荷重受け部66a、66bが一体又は別個に設けられる。第2荷重受け部66a、66bは、例えば、樹脂材で形成され、第1セパレータ30及び第2セパレータ32に一体構成される。
【0046】
第2荷重受け部66a、66bは、外周縁部56aから内方に陥没する凹状部68a、68bを有するとともに、位置決め孔部70a、70bを設ける。各位置決めピン72a、72bが、各位置決め孔部70a、70b内に隙間を設けて挿入される。
【0047】
図2に示すように、第2荷重受け部66a、66bは、例えば、第1荷重受け部60a、60bと同様に樹脂材で形成される。各第2荷重受け部66a同士及び各第2荷重受け部66b同士は、積層方向に配列されており、後述するように、各第2連結部材26の凸状部82a、82bが一体に係合(挿入)する。
【0048】
第1連結部材24は、押し出し成形された板状部材により構成される。第1連結部材24は、断面屈曲形状を有し、単位セル12の各第1荷重受け部60a、60bの凸状部64a、64bが係合する係合部74a、74bが積層方向に延在して設けられる。係合部74a、74bは、凸状部64a、64bが挿入される凹状部76a、76bを有する。
【0049】
図4に示すように、凸状部64aの側面65と凹状部76aを形成する側面78aとの間隔S1は、該凸状部64aの根本部64ab側の間隔S1が前記凸状部64aの先端部64as側の間隔S1よりも小さな寸法に設定される。側面78aの開放側端部には、第1荷重受け部60aに点接触するR形状部が形成される一方、凸状部64aの根本部64ab側にも、R形状部が形成される。
【0050】
第1の実施形態では、凹状部76aを形成する側面78aは、凸状部64aの根本部64ab側から先端部64as側に向かって外方に傾斜するテーパ形状を有する。なお、凹状部76b側は、凹状部76a側と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0051】
外部荷重による第1荷重受け部60aの変位時において、係合部74aと前記第1荷重受け部60aとの接点P1は、該第1荷重受け部60aの根本部64ab(外周縁部56a)から先端部64asまでの距離h1の中央h1oよりも、該根本部64ab側に近接する。より好ましくは、接点P1は、第1荷重受け部60aの破損防止用管理寸法t1の範囲内に位置する。
【0052】
図2に示すように、第2連結部材26は、押し出し成形された板状部材により構成される。第2連結部材26は、断面屈曲形状を有し、単位セル12の各第2荷重受け部66a、66bの凹状部68a、68bに係合する係合部80a、80bが積層方向に延在して設けられる。係合部80a、80bは、凹状部68a、68bに挿入される凸状部82a、82bを有する。
【0053】
凸状部82aは、図5に示すように、両方の側面84、84が先端側に向かって外方に傾斜するテーパ面を構成する。凸状部82aを形成する側面84と凹状部68aの側面86との間隔S2は、該凹状部68aの深さ方向内方側の間隔S2が前記凹状部68aの深さ方向外方側の間隔S2よりも小さな寸法に設定される。凹状部68aの深さ方向内方及び凸状部82aの根本部には、R形状部が形成される。
【0054】
第1の実施形態では、凸状部82aを形成する側面84は、凹状部68aの深さ方向内方側から深さ方向外方側に向かって内方に傾斜するテーパ形状を有する。なお、凸状部82b側は、凸状部82a側と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0055】
外部荷重による第2荷重受け部66aの変位時において、係合部80aと前記第2荷重受け部66aとの接点P2は、該第2荷重受け部66aの外周縁部56aから凹状部68aの底面68aeまでの距離h2の中央h2oよりも、前記底面68ae側に近接する。より好ましくは、接点P2は、第2荷重受け部66aの破損防止用管理寸法t2の範囲内に位置する。
【0056】
図2に示すように、長辺側の第1荷重受け部60a、60bが変位した際、一方の短辺側の外周縁部56aと第2連結部材26とが面接触する。同様に、短辺側の第2荷重受け部66a、66bが変位した際、一方の長辺側の外周縁部56aと第1連結部材24とが面接触する。
【0057】
図1に示すように、第1エンドプレート20aには、全ての流体連通孔が形成される。全ての流体連通孔とは、酸化剤ガス供給連通孔40a、燃料ガス供給連通孔42a、酸化剤ガス排出連通孔40b、燃料ガス排出連通孔42b、冷却媒体供給連通孔44a及び冷却媒体排出連通孔44bである。これらには、図示しないマニホールド部材が連結される。なお、第1エンドプレート20aと第2エンドプレート20bとには、所望の流体連通孔を振り分けて形成してもよい。
【0058】
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
【0059】
先ず、図1に示すように、第1エンドプレート20aの酸化剤ガス供給連通孔40aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス供給連通孔42aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、一対の冷却媒体供給連通孔44aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0060】
このため、図3に示すように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔40aから第1セパレータ30の酸化剤ガス流路46に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路46に沿って矢印B方向に移動し、電解質膜・電極構造体28のカソード電極36に供給される。
【0061】
一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔42aから第2セパレータ32の燃料ガス流路48に供給される。燃料ガスは、燃料ガス流路48に沿って矢印B方向に、酸化剤ガスの流れ方向とは対向するように移動し、電解質膜・電極構造体28のアノード電極38に供給される。
【0062】
従って、電解質膜・電極構造体28では、カソード電極36に供給される酸化剤ガスと、アノード電極38に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0063】
次いで、電解質膜・電極構造体28のカソード電極36に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔40bに沿って矢印A方向に排出される。一方、電解質膜・電極構造体28のアノード電極38に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔42bに沿って矢印A方向に排出される。
【0064】
また、一対の冷却媒体供給連通孔44aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ30及び第2セパレータ32間の冷却媒体流路50に導入される。冷却媒体は、一旦矢印C方向内方に沿って流動した後、矢印B方向に移動して電解質膜・電極構造体28を冷却する。この冷却媒体は、矢印C方向外方に移動した後、一対の冷却媒体排出連通孔44bに沿って矢印A方向に排出される。
【0065】
この場合、第1の実施形態では、図4に示すように、第1荷重受け部60aを構成する凸状部64aの側面65と、第1連結部材24を構成する凹状部76aの側面78aとの間隔S1が設定されている。この間隔S1では、凸状部64aの根本部64ab側の寸法が、前記凸状部64aの先端部64as側の寸法よりも小さな寸法に設定されている。
【0066】
このため、燃料電池スタック10に外部荷重(衝撃)が付与されて(図2中、荷重Fa又は荷重Fb)、単位セル12が矢印B方向に変位した際に、第1荷重受け部60aは、凸状部64aの根本部64ab側で第1連結部材24に接触している(図4中、接点P1参照)。
【0067】
従って、凸状部64aには、大きな応力(モーメント)が作用することを確実に阻止することができる。これにより、簡単な構成で、第1荷重受け部60aが破損することを可及的に抑制することが可能になるという効果が得られる。
【0068】
さらに、係合部74aと第1荷重受け部60aとの接点P1は、該第1荷重受け部60aの根本部64abから先端部64asまでの距離h1の中央h1oよりも、該根本部64ab側に近接している。このため、第1荷重受け部60aの破損をより確実に防止することができる。なお、第1荷重受け部60bは、上記の第1荷重受け部60aと同様の効果が得られる。
【0069】
また、第1の実施形態では、図5に示すように、第2荷重受け部66aを構成する凹状部68aの側面86と、第2連結部材26を構成する凸状部82aの側面84との間隔S2が設定されている。この間隔S2では、凹状部68aの深さ方向内方側(底面68ae側)の寸法が、前記凹状部68aの深さ方向外方側の寸法よりも小さな寸法に設定されている。
【0070】
このため、燃料電池スタック10に外部荷重(衝撃)が付与されて(図2中、荷重Fc又は荷重Fd)、単位セル12が矢印C方向に変位した際に、第2荷重受け部66aは、凹状部68aの深さ方向内方側(底面68ae側)で第2連結部材26に接触している(図5中、接点P2参照)。
【0071】
従って、第2荷重受け部66aには、大きな応力(モーメント)が作用することを確実に阻止することができる。これにより、簡単な構成で、第2荷重受け部66aが破損することを可及的に抑制することが可能になるという効果が得られる。
【0072】
さらに、係合部80aと第2荷重受け部66aとの接点P2は、外周縁部56aから凹状部68aの底面68aeまでの距離h2の中央h2oよりも、前記底面68ae側に近接している。このため、第2荷重受け部66aの破損をより確実に防止することができる。なお、第2荷重受け部66bは、上記の第2荷重受け部66aと同様の効果が得られる。
【0073】
さらにまた、図2に示すように、長辺側の第1荷重受け部60a、60bが変位した際、一方の短辺側の外周縁部56aと第2連結部材26とが面接触する。同様に、短辺側の第2荷重受け部66a、66bが変位した際、一方の長辺側の外周縁部56aと第1連結部材24とが面接触する。従って、面接触により荷重の一部を保持することができ、第1荷重受け部60a、60b及び第2荷重受け部66a、66bに係る荷重を良好に低減させることが可能になる。
【0074】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタック90の断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0075】
燃料電池スタック90は、各単位セル12の長辺側に、積層方向に沿って第1連結部材92が配置されるとともに、前記単位セル12の短辺側に、前記積層方向に沿って第2連結部材94が配置される。単位セル12の長辺側には、第1連結部材92、92に係合する第1荷重受け部96a、96bが設けられ、前記単位セル12の短辺側には、第2連結部材94、94に係合する第2荷重受け部98a、98bが設けられる。
【0076】
第1荷重受け部96a、96bは、例えば、樹脂材で形成され、基台部62a、62bから外方に突出する凸状部100a、100bを有する。図7に示すように、凸状部100aの両方の側面102は、該凸状部100aの根本部100ab側から先端部100as側に向かって内方に傾斜するテーパ形状を有する。第1連結部材92は、凹状部103aを有するとともに、前記凹状部103aを形成する一対の側面104aは、係合部74aに互いに平行に設けられる。
【0077】
外部荷重による第1荷重受け部96aの変位時において、係合部74aと前記第1荷重受け部96aとの接点P1は、該第1荷重受け部96aの根本部100abから先端部100asまでの距離h1の中央h1oよりも、該根本部100ab側に近接する。より好ましくは、接点P1は、第1荷重受け部96aの破損防止用管理寸法t1の範囲内に位置する。なお、第1荷重受け部96bは、上記の第1荷重受け部96aと同様に構成される。
【0078】
図6に示すように、第2荷重受け部98a、98bは、例えば、樹脂材で形成され、外周縁部56aから内方に陥没する凹状部105a、105bを有する。図8に示すように、凹状部105aを形成する側面106は、該凹状部105aの深さ方向内方側(底面105ae側)から前記深さ方向外方側に向かって外方に傾斜するテーパ形状を有する。第2連結部材94は、凹状部105a、105bに挿入される凸状部108a、108bを設ける。凸状部108a、108bは、矩形状(一対の側面が互いに平行)を有する。
【0079】
図8に示すように、外部荷重による第2荷重受け部98aの変位時において、係合部80aと前記第2荷重受け部98aとの接点P2は、外周縁部56aから凹状部105aの底面105aeまでの距離h2の中央h2oよりも、前記底面105ae側に位置する。より好ましくは、接点P2は、第2荷重受け部98aの破損防止用管理寸法t2の範囲内に位置する。なお、第2荷重受け部98bは、上記の第2荷重受け部98aと同様に構成される。
【0080】
このように構成される第2の実施形態では、簡単な構成で、第1荷重受け部96a、96b及び第2荷重受け部98a、98bが破損することを可及的に抑制することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタック110の断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10及び第2の実施形態に係る燃料電池スタック90と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0082】
燃料電池スタック110は、各単位セル12の長辺側に、積層方向に沿って第1連結部材112が配置されるとともに、前記単位セル12の短辺側に、前記積層方向に沿って第2連結部材94が配置される。単位セル12の長辺側には、第1連結部材112、112に係合する第1荷重受け部60a、60bが設けられ、前記単位セル12の短辺側には、第2連結部材94、94に係合する第2荷重受け部114a、114bが設けられる。
【0083】
図10に示すように、第1連結部材112は、凸状部64aが挿入される凹状部116aを有するとともに、前記凹状部116aは、第1側面118aと第2側面118bとにより構成される。第1側面118aは、凹状部116aの開放側端部に設けられ、前記第1側面118aの内側端部には、段差を介して幅広な第2側面118bが連結される。第1側面118aは、距離h1の中央h1oよりも、根本部64ab側に、より好ましくは、接点P1は、第1荷重受け部60aの破損防止用管理寸法t1の範囲内に位置する。
【0084】
図9に示すように、第2荷重受け部114a、114bは、例えば、樹脂材で形成され、外周縁部56aから内方に陥没する凹状部120a、120bを有する。図11に示すように、凹状部120aは、第1側面122aと第2側面122bとにより構成される。
【0085】
第1側面122aは、凹状部120aの深さ方向内方側、すなわち、底面120aeから深さ方向外方側に向かって所定の範囲に設けられる。第1側面122aの端部には、段差を介して幅広な第2側面122bが連結される。第1側面122aは、距離h2の中央h2oよりも、底面120ae側に、より好ましくは、接点P2は、第2荷重受け部114aの破損防止用管理寸法t2の範囲内に位置する。なお、第2荷重受け部114bは、上記の第2荷重受け部114aと同様に構成される。
【0086】
このように構成される第3の実施形態では、簡単な構成で、第1荷重受け部60a、60b及び第2荷重受け部114a、114bが破損することを可及的に抑制することが可能になる等、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0087】
10、90、110…燃料電池スタック
12…単位セル 14…積層体
24、26、92、94、112…連結部材
28…電解質膜・電極構造体 30、32…セパレータ
34…固体高分子電解質膜 36…カソード電極
38…アノード電極 46…酸化剤ガス流路
48…燃料ガス流路 50…冷却媒体流路
56a…外周縁部
60a、60b、66a、66b、96a、96b、98a、98b、114a、114b…荷重受け部
62a、62b…基台部
64a、64b、82a、82b、100a、100b、108a、108b…凸状部
65、78a、84、86、104a、106、118a、118b、122a、122b…側面
68a、68b、76a、76b、103a、103b、105a、105b、116a、120a、120b…凹状部
74a、74b、80a、80b…係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11