(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442322
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】基準電圧回路および電子機器
(51)【国際特許分類】
G05F 3/26 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
G05F3/26
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-37332(P2015-37332)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2016-161987(P2016-161987A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前谷 文彦
(72)【発明者】
【氏名】小池 智幸
【審査官】
赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−283258(JP,A)
【文献】
特開2007−266715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/12−1/44
G05F 1/45−7/00
H01L 27/04
H03K 19/00
H03K 19/01−19/082
H03K 19/094−19/096
H03F 1/00−3/45
H03F 3/50−3/52
H03F 3/62−3/64
H03F 3/68−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電源線と第二電源線の間に接続される基準電圧回路であって、
前記基準電圧回路は、
一端が前記第一電源線に接続された第一のスイッチ素子と、
ゲートとソースを接続し、ドレインが前記第一のスイッチ素子の他端と接続された第一のN型デプレッションMOSトランジスタと、
ゲートが前記基準電圧回路の出力端子と接続し、ドレインが前記第一のN型デプレッションMOSトランジスタのソースと接続し、ソースが前記第二電源線に接続された第一のN型エンハンスメントMOSトランジスタと、
前記第一のN型デプレッションMOSトランジスタのゲートと前記第一のN型エンハンスメントMOSトランジスタのゲートの間に接続された第二のスイッチ素子と、
一端が前記第一電源線に接続された第三のスイッチ素子と、
ゲートが前記第一のN型デプレッションMOSトランジスタのゲートと接続し、ドレインが前記第三のスイッチ素子の他端と接続された第二のN型デプレッションMOSトランジスタと、
前記第二のN型デプレッションMOSトランジスタのソースと前記第二電源線の間に接続された抵抗回路と、
前記第二のN型デプレッションMOSトランジスタのソースと前記第一のN型エンハンスメントMOSトランジスタのゲートの間に接続された第四のスイッチ素子と、
を備えたことを特徴とする基準電圧回路。
【請求項2】
前記基準電圧回路は、第一の動作状態として、
前記第一のスイッチ素子をショートとし、前記第二のスイッチ素子をオープンとし、前記第三のスイッチ素子をショートとし、前記第四のスイッチ素子をショートとするように動作する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項3】
前記基準電圧回路は、第二の動作状態として、
前記第一のスイッチ素子をショートとし、前記第二のスイッチ素子をショートとし、前記第三のスイッチ素子をオープンとし、前記第四のスイッチ素子をオープンとするように動作する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項4】
前記基準電圧回路は、第三の動作状態として、
前記第一のスイッチ素子をオープンとし、前記第三のスイッチ素子をオープンとするように動作する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧回路。
【請求項5】
前記第一のN型デプレッションMOSトランジスタと前記第一のN型エンハンスメントMOSトランジスタは異極ゲートで構成される
ことを特徴とした請求項1から4のいずれかに記載の基準電圧回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の基準電圧回路を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の基準電圧を出力する半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源電圧変動や温度変動に対し、安定した出力電圧が得られる基準電圧回路として、従来は、例えば、
図3に示す回路が使用されている(特許文献1参照)。
従来の基準電圧回路503は、N型デプレッションMOSトランジスタ51と、N型デプレッションMOSトランジスタ56と、N型エンハンスメントMOSトランジスタ52と、抵抗群58を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−266715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、基準電圧回路の消費電流を抑えたい動作モードと基準電圧に精度や安定性が必要な動作モードなどが混在する電子機器において、基準電圧回路の消費電流を低減できないという課題があった。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するために考案されたものであり、通常動作モードと低消費電流動作モードなどに応じて回路構成に切替えることができる基準電圧回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の課題を解決するために、本発明の基準電圧回路は以下のような構成とした。
基準電圧回路を構成する各トランジスタの間やトランジスタと電源端子の間に、基準電圧回路の回路構成を切替えるスイッチ素子を備えた基準電圧回路。
【発明の効果】
【0007】
本発明の基準電圧回路によれば、基準電圧回路の消費電流を抑えたい動作モードと基準電圧に精度や安定性が必要な動作モードなどが混在する電子機器において、各モードに最適な基準電圧回路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の基準電圧回路を示す回路図である。
【
図2】本実施形態の低消費電流モードの基準電圧回路を示す回路図である。
【
図3】従来の基準電圧回路の構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態の基準電圧回路を示す回路図である。
本実施形態の基準電圧回路は、第一電源線101、第二電源線100、基準電圧出力端子10、基準電圧出力端子11、N型デプレッションMOSトランジスタ1、N型デプレッションMOSトランジスタ3、N型エンハンスメントMOSトランジスタ2、抵抗4、抵抗5、スイッチ素子6、スイッチ素子7、スイッチ素子8、スイッチ素子9を備えている。
【0010】
第一電源線101は、スイッチ素子6の第一端子とスイッチ素子7の第一端子に接続される。N型デプレッションMOSトランジスタ1のドレインはスイッチ素子6の第二端子に接続され、ゲートとソースとバックゲートとスイッチ素子8の第一端子が接続される。N型エンハンスメントMOSトランジスタ2のドレインはスイッチ素子8の第一端子に接続され、ゲートはスイッチ素子8の第二端子とスイッチ素子9の第二端子と基準電圧出力端子10に接続され、ソースとバックゲートは第二電源線100に接続される。N型デプレッションMOSトランジスタ3のドレインはスイッチ素子7の第二端子に接続され、ゲートはスイッチ素子8の第一端子に接続され、ソースとバックゲートはスイッチ素子9の第一端子と抵抗4の第一端子に接続される。抵抗4の第二端子は基準電圧出力端子11と抵抗5の第一端子に接続される。抵抗5の第二端子は第二電源線100に接続される。
【0011】
本実施形態の基準電圧回路の動作について説明する。抵抗4と抵抗5は、それらの比によって分圧された電圧を出力する抵抗回路を構成する。
図1は、通常動作モードの基準電圧回路を示す回路である。
通常動作モードでは、スイッチ素子6をショート、スイッチ素子7をショート、スイッチ素子8をオープン、スイッチ素子9をショートする。通常動作モードでは、基準電圧に精度や安定性が要求され、消費電流が低いことは要求されない。
【0012】
ここで、基準電圧出力端子10の基準電圧VREF1は、N型デプレッションMOSトランジスタ1の閾値電圧をVTH1、K値をK1、とし、N型エンハンスメントMOSトランジスタ2の閾値電圧をVTH2、K値をK2とすると、N型デプレッションMOSトランジスタ1に流れる電流と同じ電流がN型エンハンスメントMOSトランジスタ2に流れるので、下記の式1で表される。
【0013】
VREF1=√(K1/K2)×|VTH1|+VTH2 (1)
また、基準電圧出力端子11は、基準電圧VREF1が抵抗4と抵抗5によって分圧された電圧が出力される。基準電圧出力端子11は、抵抗4と抵抗5の比率を変化させることもできるので、基準電圧VREF1の値と第二電源線100との間の電圧であれば、任意に設定することが可能である。
【0014】
また、K1とK2が同じになるようにN型デプレッションMOSトランジスタ1とN型エンハンスメントMOSトランジスタ2のサイズを調整することで、温度特性が良くなりより高精度な基準電圧回路が実現できる。
【0015】
図2は、低消費電流モードの基準電圧回路を示す回路図である。
低消費電流モードでは、スイッチ素子6をショート、スイッチ素子7をオープン、スイッチ素子8をショート、スイッチ素子9をオープンする。スイッチ素子をこのように制御すると、単純なED型の基準電圧回路を構成することができる。低消費電流モードでは、基準電圧回路は消費電流が低いことが要求される。
【0016】
基準電圧出力端子10に出力される電圧は、N型デプレッションMOSトランジスタ1に流れる電流と同じ電流がN型エンハンスメントMOSトランジスタ2に流れるので、第1の実施例に記載した値と同じ出力電圧となる。
【0017】
基準電圧出力端子11は、スイッチ素子7がオープンとなっているので第二電源線100と同じ電位となる。また、スイッチ素子7がオープンとなっているので、N型デプレッションMOSトランジスタ2と抵抗4と抵抗5に流れる電流を遮断できるので、
図1の基準電圧回路よりも消費電流を低減させることが可能となる。
【0018】
基準電圧出力端子11の接続先の回路を使用しなくてもよい状態で、基準電圧回路の消費電流を低減させたい場合に使用することで、基準電圧回路全体の消費電流を低減させることが可能となる。
なお、図示はしないが、各スイッチ素子のオープンとショートの組合せによって、以下に述べるようなモードを実現することが出来る。
【0019】
例えば、スイッチ素子6をオープンとし、スイッチ素子7をオープンとした場合、基準電圧回路は、全体の消費電流を遮断する、スリープモードやパワーダウンモードとすることが出来る。
【0020】
上述したように基準電圧回路を構成することで、各スイッチ素子を切替えることによって、基準電圧に精度や安定性が要求される通常動作モードや低い消費電流が要求される低消費電流モードなどの基準電圧回路を構成することが可能となる。
【0021】
なお、本発明の実施形態は、N型デプレッションMOSトランジスタ1とN型エンハンスメントMOSトランジスタ2のゲートを異極ゲートとすることで温度特性がさらに良くなり、高精度な基準電圧回路を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1、3、51、56 デプレッションMOSトランジスタ
2 エンハンスメントMOSトランジスタ
4、5、58 抵抗
6、7、8、9 スイッチ素子