(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442337
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20181210BHJP
B60C 13/02 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
B60C13/00 C
B60C13/02
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-55750(P2015-55750)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-175458(P2016-175458A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 聡太郎
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−205394(JP,A)
【文献】
特開平11−291722(JP,A)
【文献】
特開2000−280716(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0174928(US,A1)
【文献】
特開2011−235686(JP,A)
【文献】
特開平09−002028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤであって
該タイヤのサイドウオール部の表面に形成され、前記タイヤの周方向へ伸びる外周縁及び内周縁を有する装飾帯を備え、
前記装飾帯は、前記タイヤの周方向へ互いに間隔をおいて配置され前記装飾帯の内外両周縁の一方からその他方へ伸長する複数のリッジと、前記タイヤの周方向へ互いに間隔をおいて配置され前記装飾帯の内外両周縁の一方から他方へ伸長する、平坦な表面を有する複数の突条とを備え、
各突条は、第1の突条部と、該第1の突条部に対して前記タイヤの周方向における一方及び他方のうちの前記一方の側にあって前記第1の突条部に連なりかつ前記第1の突条部と同方向へ伸長する第2の突条部とからなり、
前記第1の突条部の伸長方向長さは前記第2の突条部の伸長方向長さより大きい、タイヤ。
【請求項2】
前記第1の突条部は、その伸長方向に直角な方向における長さ寸法である幅寸法が、前記第2の突条部の幅寸法より大きい、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
複数の突条の第1の突条部に対する第2の突条部の連なり位置は、前記装飾帯の外周縁から内周縁に向けて次第に近づく、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1の突条部の長さは、前記タイヤの周方向における一方の側に向けて漸減する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
各第1の突条部は前記装飾帯の外周縁の側及び内周縁の側にそれぞれ位置する両端を有し、
前記外周縁の側に位置する複数の第1の突条部の端は、前記周方向における一方の側に向けて伸びかつ前記内周縁に次第に近づく仮想曲線上にある、請求項4に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤのようなタイヤに関し、より詳細にはそのサイドウオール部の表面に形成された装飾帯を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの重量軽減、転がり抵抗の低減等のために、タイヤのサイドウオール部の肉厚を薄くすることが行われている。しかし、タイヤのサイドウオール部の薄肉化の結果、当該タイヤを構成するベルト、カーカスプライ等の一部が前記サイドウオール部を通して該サイドウオール部の表面に凹凸となって現れることがある。
【0003】
タイヤのサイドウオール部の表面に現れる前記凹凸は、当該タイヤの外観を損ねる一因となる。このため、従来、前記サイドウオール部の表面に、タイヤの周方向へ伸びる装飾帯を形成することが行われている。前記装飾帯はタイヤの周方向に間隔をおいて設けられた複数のリッジや、互いに間隔をおいて設けられた複数の矩形状の要素を有し、これらが前記凹凸を目立ちにくくする作用をなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−233854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、このような従来の装飾帯の機能に鑑み、タイヤのサイドウオール部の表面に現れる凹凸をより一層目立ちにくくする装飾帯を有するタイヤを提供することにある。また、本発明の他の目的は、タイヤのサイドウオール部の外観をより向上し得る装飾帯を有するタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤは、そのサイドウオール部の表面に形成され、前記タイヤの周方向へ伸びる外周縁及び内周縁を有する装飾帯を備える。前記装飾帯は、前記タイヤの周方向へ互いに間隔をおいて配置され前記装飾帯の内外両周縁の一方からその他方へ伸長する複数のリッジと、前記タイヤの周方向へ互いに間隔をおいて配置され前記装飾帯の内外両周縁の一方から他方へ伸長する、平坦な表面を有する複数の突条とを備え、各突条は、第1の突条部と、該第1の突条部に対して前記タイヤの周方向における一方及び他方のうちの前記一方の側にあって前記第1の突条部に連なりかつ前記第1の突条部と同方向へ伸びる第2の突条部とからなり、前記第1の突条部の伸長方向長さは前記第2の突条部の伸長方向長さより大きい。ここにおいて「平坦な表面」とは、人間の目で見て実質的に凹凸が存しない平らな平面又は曲面からなる表面をいう。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タイヤのサイドウオール部をその周方向に伸びる装飾帯における複数のリッジと複数の突条とが、前記サイドウオール部の表面に生じることがある凹凸を視覚的に目立たないようにする作用をなす。本発明にあっては、線状を呈する前記リッジの表面の面積は比較的小さく、他方、平坦な表面を有する前記突条の表面の面積は比較的大きい。このため、前記タイヤのサイドウオールの表面に当たって反射する光に関して、前記突条からの反射光量は多くまた前記リッジからの反射光量は少ない。このことから、視認上、前記突条と前記リッジとの間に明暗の差(コントラスト)が生じる。その結果、高明度の複数の突条が、低明度の複数のリッジを背景とする注目物として視認され、これが前記タイヤのサイドウオール部の表面に生じている凹凸をより目立たないようにし、また、前記サイドウオール部の表面の外観の向上に寄与する。
【0008】
また、各突条が第1の突条部及び第2の突条部からなり、第1及び第2の両突条部が同方向に伸長しかつ互いに連なり、また、前記第1の突条部に対する前記第2の突条部の連なり位置が前記タイヤの周方向における一方及び他方のうちの前記一方の側にあり、さらに前記第1の突条部の伸長方向長さが前記第2の突条部の伸長方向長さより大きいことから、第1及び第2の両突条部の表面が全体に凸状を呈し、これが前記突条を立体的に見せ、また、前記コントラストの発現と併せて、前記突条の注目度をより高め、前記タイヤのサイドウオール部の表面に生じている凹凸分をより一層目立たないようにする。また、このことが、前記装飾帯に対する視認性を高め、前記サイドウオール部の表面の外観の向上にさらに寄与する。
【0009】
前記第1の突条部は、その伸長方向に直角な方向における長さ寸法である幅寸法に関して、前記第2の突条部より
大きいものとすることができる。また、複数の突条の第1の突条部に対する第2の突条部の連なり位置は、前記装飾帯の外周縁から内周縁に向けて次第に近づくものとすることができる。前記第1の突条部の伸長方向長さは、前記タイヤの周方向における一方の側に向けて次第に減少するものとすることができる。さらに、各第1の突条部は前記装飾帯の外周縁の側及び内周縁の側にそれぞれ位置する両端を有し、前記外周縁の側に位置する複数の第1の突条部の端は、前記周方向における一方の側に向けて伸びかつ前記内周縁に次第に近づく仮想曲線上にあるものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、空気入りタイヤのようなタイヤの一部が全体に符号10で示されている。タイヤ10は、路面に直接に接することとなる部分であるトレッド部12と、タイヤ10の肩の部分であるショルダー部14と、タイヤ10のサイズ、メーカー名等が表示される部分であるサイドウオール部16と、タイヤ10をリム(図示せず)に固定する役目を担う部分であるビード部(図示せず)とを備える。符号18は、タイヤ10に取り付けられたホイールを示す。
【0012】
ここでタイヤ10のサイドウオール部16に着目すると、サイドウオール部16には該サイドウオール部と一体をなしかつその表面16Aの一部を規定する装飾帯20が設けられている。装飾帯20はサイドウオール部16の表面16A上をタイヤ10の周方向に伸びている。より詳細には、装飾帯20は、タイヤ10の回転軸線(図示せず)の周りの仮想円に沿って伸びている。図示の装飾帯20は、タイヤ10の径をより大きく見せる意図等から、タイヤ10の横断面で見てタイヤ10の幅が最大となる個所(タイヤ幅最大個所)よりもタイヤ10の径方向外方の側に配置されている。
【0013】
装飾帯20は、タイヤ10を構成するベルト、カーカスプライ等(図示せず)の一部がサイドウオール部16を通して該サイドウオール部の表面16Aに現れることがある凹凸(図示せず)を、視覚上、認識されにくくする作用をなす。必要に応じて、装飾帯20に加えて他の装飾帯22を設けることができる。他の装飾帯22は、タイヤ10の径方向に関して、装飾帯20の内方の側に位置する。これによれば、前記凹凸に対する視覚上の認識をより困難なものとすることができる。装飾帯20は複数のリッジ24と複数の突条26とを有し、また、他の装飾帯22は従来から用いられているジグザグに伸びる複数のリッジ28を有する。
【0014】
図示の装飾帯20は円環の一部からなり、タイヤ10の周方向へそれぞれ伸びる円弧状の外周縁30及び円弧状の内周縁32を有する。これに対し、他の装飾帯22は円環からなり、同心円状の内外両周縁を有する。装飾帯20は、他の装飾帯22と同様に、円環からなるものとすることができる。装飾帯20の内外両周縁30、32間には、サイドウオール部16の表面16Aを開放頂面とする浅溝が形成されている。他の装飾帯22の内外両周面間にも同様に浅溝が形成されている。
【0015】
装飾帯20を構成する複数のリッジ24は、前記浅溝の底面上に、内外両周縁30、32の伸長方向であるタイヤ10の周方向へ互いに間隔をおいて配置されている。図示の複数のリッジ24は、それぞれ、内外両周縁30、32の一方から他方まで直線的に伸び、内外両周縁20、32の両接線に対して非直角の角度で交差している。前記角度の大きさは任意に設定することができる。リッジ24はこれが直線的に伸びる図示の例に代えて、例えば、他の装飾帯22におけるリッジ28のように、ジグザグに伸びるもの、あるいは曲線状に伸びるものとすることができる。リッジ24は矩形又は三角形の横断面形状を有し、前記浅溝の底面とその開放頂面との間の間隔である深さ寸法より小さい高さ寸法を有する。装飾帯20における前記浅溝の幅寸法(内外両周縁30、32間の距離)及び深さ寸法、並びに、リッジ24の高さ寸法、幅寸法、及びリッジ24相互の間隔は、それぞれ、例えば20mm(装飾帯幅)及び0.4mm(装飾帯深さ)、並びに、0.3mm(リッジ高さ)、0.2mm(リッジ最高部の平滑面幅)及び1.0mm(リッジ相互間隔)とすることができる。
【0016】
また、装飾帯20の複数の突条26は前記浅溝の底面上に、内外両周縁30、32の伸長方向である前記周方向へ互いに間隔をおいて、好ましくは比較的狭い間隔(例えば1.5mm)をおいて配置されている。これらの凸条26は、それぞれ、内外両周縁30、32の一方から他方へ直線的にまた内外両周縁30、32の両接線に対して非直角の角度をなすように伸びている。前記角度の大きさは任意に設定することができる。図示の例におけるように、突条26は、好ましくは、リッジ24に対してこれと山形をなすように交差している。突条26と交差するリッジ24は、交差箇所において突条26に連なっている。
【0017】
突条26は平坦な表面を有し、また、前記浅溝の深さ寸法と同一の大きさの高さ寸法を有する。また、突条26の表面はリッジ24の表面より大きい面積を有する。したがって、サイドウオール部16の表面16Aに当たる光は、リッジ24及び突条26において相対的に少量及び多量の光を反射する。このため、リッジ24と突条26との間に反射光量の多少による明度の差(コントラスト)が生じる。その結果、高明度の複数の突条26は、低明度の複数のリッジ24を背景として、視覚を刺激する注目物をなす。これにより、サイドウオール部16の表面16Aに現れている前記凹凸がより目立たないようにされ、これに伴い、サイドウオール部16の表面16Aの外観の向上が図られる。
【0018】
各突条26は、第1の突条部26aと、該第1の突条部に連なりかつ第1の突条部26aと同方向へ伸長する第2の突条部26bとからなる。図示の第1の突条部26aは全体に細長い矩形の表面形状を有し、また、第2の突条部26bは全体に細長い台形の表面形状を有する。第1の突条部26aの伸長方向長さは第2の突条部26bの伸長方向長さより大きい。第2の突条部26bは、第1の突条部26aに対して、装飾帯20の周方向における一方及び他方のうちの前記一方の側(図上左側)に位置し、第1及び第2の両突条部26a、26bはこれらの表面が凸形を呈する。さらに、前記凸形を呈する突条26の表面は、装飾帯20における前記浅溝の底面から見て、リッジ24の前記表面よりも高い位置にある。前記凸形の表面形状及び前記表面の高低差は突条26を立体的に見せることに寄与し、突条26に対する注目度をより一層高め、タイヤ10のサイドウオール部16の表面16Aに生じている前記凹凸をより一層目立たないようにする。さらに、このことが、装飾帯20に対する視認性をより高め、サイドウオール部16の表面16Aの外観の向上にさらに寄与する。
【0019】
第1の突条部26aは、その伸長方向に直角な方向における長さ寸法である幅寸法W1が、第2の突条部26bの幅寸法W2より大きいものとすることができる。これによれば、第1の突条部26aと第2の突条部26bとが相互に連なる部分が第1の突条部26aに比べて大きい幅寸法を有することとなるため、比較的幅寸法の小さい第2の突条部26bが第1の突条部26aと共同して段状をなす形態として容易に視認され、また、当該形態はこれを見る者に立体感を生じさせる。これらは、突条26をより一層際立たせ、タイヤ10のサイドウオール部16の表面16A上の前記凹凸をより目立たないようにすることに寄与し、また、サイドウオール部16の表面16Aの外観の向上に寄与する。
【0020】
複数の突条26の第1の突条部26aに対する第2の突条部26bの連なり位置は、タイヤ10の周方向における前記一方の側へ、装飾帯20の外周縁30から内周縁32に向けて次第に近づくこととなるように設定することができる。前記凹凸は、タイヤ10の横断面で見たときの前記タイヤ幅最大個所及びその近傍により多く現れることから、装飾帯20が前記タイヤ幅最大個所よりもタイヤ10の径方向における外方の側に配置されている図示の例にあっては、第1の突条部26aに対する第2の突条部26bの連なり位置をこのように設定するとき、第2の突条部26bが装飾帯20の内周縁32に向けて集まるような立体感を出すことができ、また、多数の前記凹凸をより目立たないようにすることができる。
【0021】
また、複数の第1の突条部26aの長さが、タイヤ10の周方向における前記一方の側(図上左側)に向けて、次第に減少するように設定することができる。図示の例では、前記周方向における他方の端の側(図上右端側)に位置する6つの第1の突条部26aの両端34,36がそれぞれ装飾帯20の内外両周縁30、32に連なっている。また、これらの6つの第1の突条部26aよりも前記周方向の一方の側(図上左側)に位置する複数の第1の突条部26aの両端の一方36のみが装飾帯20の内周縁32に連なり、前記両端の他方34と外周縁30との間隔が前記周方向の一方に向けて次第に増大し、これに伴って第1の突条部26aの長さ寸法が漸減している。これによれば、装飾帯20における剛性の大きさが、複数の第1の突条部26aが規定する平坦領域の前記周方向における一方に向けての漸減に対応して変化し、これによりサイドウオール部16にその歪みに起因して生じるサイドクラック(ひび割れ)の発生を抑制することができる。
【0022】
この例においては、さらに、装飾帯20の外周縁30の側に位置する複数の第1の突条部26aの端34が、前記周方向における一方の側(図上左側)に向けて伸びかつ内周縁32に次第に近づく仮想曲線38上にあるように設定することができる。これによれば、視覚上、複数の第1の突条部26aが内外両周縁30、32間でカーブを描くような認識を生じさせることができ、これが、前記周方向に連続して現れることがある前記凹凸を目立たないようにする。なお、仮想曲線38は、これに代えて、外周縁30から内周縁32に向けて傾斜する仮想直線とすることができる。
【0023】
第1の突条部26a及び第2の突条部26bは、図示の例においてそれぞれ矩形及び台形の平面形状を有するところ、好ましくは、これらの矩形及び台形の角が丸くされている(角丸)。また、第2の突条部26bの平面形状は、これを前記台形とすることに代えて、例えば矩形、三角形等とすることができる。
【符号の説明】
【0024】
10・・・タイヤ、16・・・サイドウオール部、20・・・装飾帯、24・・・リッジ、26・・・突条、26a・・・第1の突条部、26b・・・第2の突条部、30・・・装飾帯の外周縁、32・・・装飾帯の内周縁、34、36・・・第1の突条部の両端。