特許第6442339号(P6442339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442339
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】熱処理装置および熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   H01L21/30 567
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-63949(P2015-63949)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183815(P2016-183815A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】門間 徹
(72)【発明者】
【氏名】福本 靖博
(72)【発明者】
【氏名】西 幸治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂宏
(72)【発明者】
【氏名】城 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−335209(JP,A)
【文献】 特開2005−33178(JP,A)
【文献】 特開平8−273993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/26−21/268
H01L 21/322−21/326
H01L 21/42−21/428
H01L 21/477−21/479
H01L 21/67−21/683
G03F 7/38−7/40
H05B 1/00−3/30
F25B 19/00−30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に熱処理を行う熱処理装置であって、
基板が載置されるプレートと、
前記プレートを冷却または加熱するように配置される熱処理部と、
前記熱処理部の温度を調整する温度調整部と、
前記プレートの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された温度に基づいて、前記プレートの温度を設定された値に維持するために前記温度調整部に与えられるべき制御値を制御演算値として算出する制御値算出部と、
前記制御値算出部により算出された制御演算値を前記温度調整部に与える第1の制御と、前記制御値算出部により算出された制御演算値よりも高い制御設定値を前記温度調整部に与える第2の制御とを行う制御切替部とを備え、
前記制御切替部は、前記制御値算出部により算出された制御演算値が第1のしきい値以上に上昇した場合には、前記第1の制御を第2の制御に切り替え、前記制御値算出部により算出された制御演算値が第2のしきい値未満に低下した場合には、前記第2の制御を前記第1の制御に切り替える、熱処理装置。
【請求項2】
前記制御設定値は、予め定められた前記第1および前記第2のしきい値よりも高くかつ前記温度調整部に対する最大の制御値以下である、請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記第1のしきい値と前記第2のしきい値とは互いに等しい、請求項1または2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記制御値は、前記プレートの温度を設定された値に維持するために前記熱処理部に供給されるべき電力と前記温度調整部が出力可能な最大電力との比率である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記熱処理部はペルチェ素子を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項6】
基板に熱処理を行う熱処理方法であって、
基板が載置されるプレートを熱処理部により冷却または加熱するステップと、
前記熱処理部の温度を温度調整部により調整するステップと、
前記プレートの温度を検出するステップと、
検出された温度に基づいて、前記プレートの温度を設定された値に維持するために前記温度調整部に与えられるべき制御値を制御演算値として算出するステップと、
算出された制御演算値を前記温度調整部に与える第1の制御と、算出された制御演算値よりも高い制御設定値を前記温度調整部に与える第2の制御とを行うステップとを含み、
前記第1の制御と前記第2の制御とを行うステップは、算出された制御演算値が第1のしきい値以上に上昇した場合には、第1の制御を第2の制御に切り替え、算出された制御演算値が第2のしきい値未満に低下した場合には、前記第2の制御を前記第1の制御に切り替えることを含む、熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を熱処理する熱処理装置および熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板またはフォトマスク用基板等の各種基板に熱処理を行うために、熱処理装置が用いられている。
【0003】
特許文献1に記載された基板冷却装置は、温度設定器および冷却プレートを有する。冷却プレートは、伝熱プレートおよびペルチェ素子を含む。伝熱プレートには、冷却処理前の高温の基板が搬入される。温度設定器には、基板冷却目標温度および伝熱プレートの初期温度が設定される。伝熱プレートの初期温度は、基板冷却目標温度以下である。
【0004】
基板が伝熱プレートに搬入されるまでは、伝熱プレートは設定された初期温度に制御される。高温の基板が伝熱プレートに搬入された場合、ペルチェ素子による最大能力で伝熱プレートおよび基板の冷却が行われる。ペルチェ素子による最大能力での冷却とは、基板用の温度センサおよび伝熱プレート用の温度センサの出力に応じて冷却する程度を増減調節せずにペルチェ素子をその最大能力で駆動して冷却することをいう。
【0005】
基板の温度が設定された基板冷却目標温度に達すると、基板が伝熱プレートによる熱の影響を受けない位置まで冷却プレートから離間される。これにより、当該基板に対する冷却処理が終了する。その後、次の基板の冷却処理に備えて、伝熱プレートの温度が設定された初期温度に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−115058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の基板冷却装置によれば、高温の基板を基板冷却目標温度まで高速で冷却することができる。しかしながら、冷却処理の後、ペルチェ素子により最大能力で冷却された伝熱プレートの温度を初期温度に戻す制御を逐一行う必要がある。そのため、制御が複雑化するとともに、基板冷却装置の処理効率が低下する。
【0008】
本発明の目的は、簡単な制御により基板の熱処理を正確にかつ高効率で行うことが可能な熱処理装置および熱処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)第1の発明に係る熱処理装置は、基板に熱処理を行う熱処理装置であって、基板が載置されるプレートと、プレートを冷却または加熱するように配置される熱処理部と、熱処理部の温度を調整する温度調整部と、プレートの温度を検出する温度検出部と、温度検出部により検出された温度に基づいて、プレートの温度を設定された値に維持するために温度調整部に与えられるべき制御値を制御演算値として算出する制御値算出部と、制御値算出部により算出された制御演算値を温度調整部に与える第1の制御と、制御値算出部により算出された制御演算値よりも高い制御設定値を温度調整部に与える第2の制御とを行う制御切替部とを備え、制御切替部は、制御値算出部により算出された制御演算値が第1のしきい値以上に上昇した場合には、第1の制御を第2の制御に切り替え、制御値算出部により算出された制御演算値が第2のしきい値未満に低下した場合には、第2の制御を第1の制御に切り替える。
【0010】
この熱処理装置においては、基板が載置されるプレートが熱処理部により冷却または加熱される。熱処理部の温度が温度調整部により調整される。プレートの温度が検出される。検出された温度に基づいて、プレートの温度を設定された値に維持するために温度調整部に与えられるべき制御値が制御演算値として算出される。
【0011】
制御演算値が第2のしきい値未満である場合には、プレートの温度を設定された値に維持するために算出された制御演算値が温度調整部に与えられる(第1の制御)。これにより、プレートの温度が設定された値に維持される。一方、制御演算値が第1のしきい値以上に上昇した場合には、制御演算値よりも高い制御設定値が温度調整部に与えられる(第2の制御)。これにより、プレートの温度が短時間で設定された値に戻される。制御演算値が第2のしきい値未満まで低下すると、第1の制御が行われる。第1の制御においては、プレートの温度変化は緩やかであるため、大きなオーバーシュートおよびアンダーシュートは発生しない。
【0012】
この構成によれば、第1の制御および第2の制御の切り替えにより、制御の即応性および安定性を向上させることができる。その結果、簡単な制御により基板の熱処理を正確にかつ高効率で行うことができる。
【0013】
(2)制御設定値は、予め定められた第1および第2のしきい値よりも高くかつ温度調整部に対する最大の制御値以下であってもよい。
【0014】
この構成によれば、制御演算値が第1のしきい値以上に上昇した場合には、高い制御設定値が温度調整部に与えられる。これにより、プレートの温度をより短時間で設定された値に戻すことができる。その結果、制御の安定性を維持しつつ即応性をより向上させることができる。
【0015】
(3)第1のしきい値と第2のしきい値とは互いに等しくてもよい。
【0016】
この場合、第1の制御を第2の制御に切り替えるときの制御演算値と第2の制御を第1の制御に切り替えるときの制御演算値とが等しいので、温度調整部の制御をより単純にすることができる。
【0017】
(4)制御値は、プレートの温度を設定された値に維持するために熱処理部に供給されるべき電力と温度調整部が出力可能な最大電力との比率であってもよい。
【0018】
この場合、第1および第2のしきい値を相対値として設定することができる。そのため、第1および第2のしきい値を容易に設定することができる。
【0019】
(5)熱処理部はペルチェ素子を含んでもよい。この場合、温度調整部は熱処理部への電力を調整することにより、熱処理部の温度を高い応答性でかつ容易に調整することができる。
【0020】
(6)第2の発明に係る熱処理方法は、基板に熱処理を行う熱処理方法であって、基板が載置されるプレートを熱処理部により冷却または加熱するステップと、熱処理部の温度を温度調整部により調整するステップと、プレートの温度を検出するステップと、検出された温度に基づいて、プレートの温度を設定された値に維持するために温度調整部に与えられるべき制御値を制御演算値として算出するステップと、算出された制御演算値を温度調整部に与える第1の制御と、算出された制御演算値よりも高い制御設定値を温度調整部に与える第2の制御とを行うステップとを含み、第1の制御と第2の制御とを行うステップは、算出された制御演算値が第1のしきい値以上に上昇した場合には、第1の制御を第2の制御に切り替え、算出された制御演算値が第2のしきい値未満に低下した場合には、第2の制御を第1の制御に切り替えることを含む。
【0021】
この熱処理方法によれば、基板が載置されるプレートが熱処理部により冷却または加熱される。熱処理部の温度が温度調整部により調整される。プレートの温度が検出される。検出された温度に基づいて、プレートの温度を設定された値に維持するために温度調整部に与えられるべき制御値が制御演算値として算出される。
【0022】
制御演算値が第2のしきい値未満である場合には、プレートの温度を設定された値に維持するために算出された制御演算値が温度調整部に与えられる(第1の制御)。これにより、プレートの温度が設定された値に維持される。一方、制御演算値が第1のしきい値以上に上昇した場合には、制御演算値よりも高い制御設定値が温度調整部に与えられる(第2の制御)。これにより、プレートの温度が短時間で設定された値に戻される。制御演算値が第2のしきい値未満まで低下すると、第1の制御が行われる。第1の制御においては、プレートの温度変化は緩やかであるため、大きなオーバーシュートおよびアンダーシュートは発生しない。
【0023】
この方法によれば、第1の制御および第2の制御の切り替えにより、制御の即応性および安定性を向上させることができる。その結果、簡単な制御により基板の熱処理を正確にかつ高効率で行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡単な制御により基板の熱処理を正確にかつ高効率で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す模式的側面図である。
図2図1の熱処理装置の模式的平面図である。
図3】比較例1における上部プレートの温度制御を示すグラフである。
図4】比較例2における上部プレートの温度制御を示すグラフである。
図5】本発明の実施の形態における上部プレートの温度制御処理を示すフローチャートである。
図6】実施例における上部プレートの温度制御を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1)熱処理装置の構成
以下、本発明の実施の形態に係る熱処理装置および熱処理方法について図面を用いて説明する。なお、以下の説明において、基板とは、半導体基板、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板またはフォトマスク用基板等をいう。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態に係る熱処理装置の構成を示す模式的側面図である。図2は、図1の熱処理装置100の模式的平面図である。図1に示すように、熱処理装置100は、制御装置10、プレート部20、温度調整部30、昇降装置40および温度検出部50を含む。
【0028】
制御装置10は、記憶部11、昇降制御部12、温度算出部13、演算処理部14および出力制御部15を含む。昇降制御部12、温度算出部13、演算処理部14および出力制御部15は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)により実現される。
【0029】
プレート部20は、上部プレート21、下部プレート22および熱処理部23を含む。上部プレート21は、例えば円板形状を有する伝熱プレートである。上部プレート21には、熱処理が行われる基板Wが載置される。上部プレート21には、厚み方向に貫通する複数(本例では3個)の開口部21hが形成される。
【0030】
下部プレート22は、例えば円板形状を有する放熱プレートである。下部プレート22には、厚み方向に貫通しかつ上部プレート21の複数の開口部21hにそれぞれ対応する複数の開口部22hが形成される。下部プレート22は、その中心が上部プレート21の中心と略一致する状態で上部プレート21の下方に配置される。この場合、上部プレート21の複数の開口部21hと下部プレート22の複数の開口部22hとはそれぞれ上下方向に重なる。
【0031】
本実施の形態においては、熱処理部23は複数(図2の例では9個)の温調素子23aを含む。熱処理部23は、上部プレート21と下部プレート22との間に配置される。この状態で、上部プレート21と下部プレート22とが図示しないネジ等の固定部材により固定される。これにより、熱処理部23は上部プレート21および下部プレート22により狭持される。
【0032】
本例においては、各温調素子23aは、冷却面および加熱面を有するペルチェ素子である。各温調素子23aは、冷却面が上部プレート21に接触しかつ加熱面が下部プレート22に接触するように配置される。この場合、プレート部20は、上部プレート21により基板Wを冷却処理するクーリングプレートとして機能する。各温調素子23aの加熱面から発生する熱は、基板Wの冷却処理に影響しないように下部プレート22により放出される。
【0033】
各温調素子23aは温度調整部30に接続される。図1および図2においては、1つの温調素子23aと温度調整部30との接続のみが図示され、他の複数の温調素子23aと温度調整部30との接続の図示は省略されている。温度調整部30は、例えば電力供給部であり、制御装置10の出力制御部15による制御に基づいて温調素子23aに電力を出力として供給する。それにより、上部プレート21の温度が低下し、上部プレート21に載置された基板Wが所定の温度に冷却される。
【0034】
図1に示すように、昇降装置40は、複数の開口部21h,22hにそれぞれ対応する複数の昇降ピン41およびピン駆動部42を含む。複数の昇降ピン41は、下部プレート22の下方から複数の開口部22hおよび上部プレート21の複数の開口部21hにそれぞれ挿入される。
【0035】
ピン駆動部42は、例えばアクチュエータであり、本例ではエアシリンダである。ピン駆動部42は、制御装置10の昇降制御部12による制御に基づいて、複数の昇降ピン41を上昇位置と下降位置との間で移動させる。ここで、上昇位置は、複数の昇降ピン41の先端が複数の開口部21h,22hを通して上部プレート21の上面よりも上方に突出する位置である。下降位置は、複数の昇降ピン41の先端が上部プレート21の上面よりも下方にある位置である。
【0036】
温度検出部50は、測定対象の温度に応じて変化する特性値を有する温度検出素子である。温度検出素子は、熱電対であってもよいし、測温抵抗体であってもよいし、他の素子であってもよい。温度検出部50は、上部プレート21の略中央部に埋設される。なお、温度検出部50が熱電対である場合には、特性値は電位差(熱起電力)であり、温度検出部50が測温抵抗体である場合には、特性値は電気抵抗である。温度検出部50は、上部プレート21の温度に応じた特性値に基づいて検出値を制御装置10の温度算出部13に与える。
【0037】
制御装置10の記憶部11には、上部プレート21の設定温度および後述する温度制御に関する種々の情報が記憶される。また、記憶部11には、昇降ピン41の昇降のタイミングを示す情報が記憶される。
【0038】
昇降制御部12は、記憶部11に記憶されたタイミングを示す情報に基づいて、プレート部20への基板Wの搬入時またはプレート部20からの基板Wの搬出時に複数の昇降ピン41が上昇位置に移動するようにピン駆動部42を制御する。この場合、複数の昇降ピン41により基板Wが上部プレート21の上方に移動される。この状態で、複数の昇降ピン41と図示しない基板搬送装置との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0039】
また、昇降制御部12は、記憶部11に記憶されたタイミングを示す情報に基づいて、基板Wの熱処理時に複数の昇降ピン41が下降位置に移動するようにピン駆動部42を制御する。これにより、基板Wが上部プレート21に載置される。
【0040】
温度算出部13は、温度検出部50から与えられる検出値に基づいて、上部プレート21の温度を算出する。演算処理部14は、温度算出部13により算出された温度に基づいて、上部プレート21を設定温度に維持するために温度調整部30が熱処理部23に供給すべき出力(電力)を算出する。本例においては、設定温度は23℃である。出力制御部15は、記憶部11に記憶された出力制御に関する情報および演算処理部14により算出された結果に基づいて、温度調整部30が熱処理部23に供給する出力を制御する。
【0041】
(2)上部プレートの温度制御
本例においては、まず、上部プレート21の温度が設定温度(本例では23℃)に制御される。次に、図示しない加熱処理装置により高温に加熱された基板Wが上部プレート21に載置される。そのため、上部プレート21の温度が設定温度から急激に上昇する。このような場合でも、上部プレート21の温度が設定温度に戻るように温度調整部30の制御が行われる。この制御においては、温度調整部30から熱処理部23への出力率が調整される。ここで、出力率は、上部プレート21を設定温度に維持するために熱処理部23に供給すべき出力と温度調整部30の供給可能な最大出力との比である。
【0042】
上記の制御において、即応性および安定性が向上されること、すなわち可能な限り短時間でかつ行き過ぎ量(オーバーシュートおよびアンダーシュート)が小さくなるように上部プレート21の温度が設定温度に戻されることが望まれる。通常、このような制御を行う場合には、フィードバック制御が用いられる。
【0043】
図3および図4は、比較例1,2における上部プレート21の温度制御をそれぞれ示すグラフである。図3および図4の横軸は経過時間を示し、縦軸は上部プレート21の温度および温度調整部30の出力率を示す。また、図3および図4においては、上部プレート21の温度変化を実線で示し、温度調整部30の出力率を点線で示す。比較例1,2においては、フィードバック制御としてPID(比例微分積分)制御が行われる。比較例2におけるPID制御のゲインは、比較例1におけるPID制御のゲインよりも大きい。
【0044】
比較例1においては、図3に示すように、初期時点で基板Wが上部プレート21に載置される。それにより、実線で示すように、上部プレート21の温度が設定温度から上昇する。この場合、点線で示すように、上部プレート21の温度変化を抑制するために出力率が上昇する。これにより、実線で示すように、上部プレート21の温度は低下し、設定温度近傍で収束する。また、点線で示すように、出力率は、上部プレート21の温度変化に応じて低下し、一定値に収束する。
【0045】
比較例2においては、図4に示すように、初期時点で基板Wが上部プレート21に載置される。それにより、実線で示すように、上部プレート21の温度が設定温度から上昇する。この場合、点線で示すように、上部プレート21の温度変化を抑制するために出力率が上昇する。本例では、出力率は一時的に100%に達する。これにより、実線で示すように、上部プレート21の温度は比較的短い時間で低下し、オーバーシュートおよびアンダーシュートによる振動を繰り返しながら設定温度近傍で収束する。また、点線で示すように、出力率は、上部プレート21の温度変化に応じて低下し、振動を繰り返しながら一定値に収束する。
【0046】
比較例1では、上部プレート21の温度のオーバーシュートはほとんど発生しない反面、基板Wが上部プレート21に載置されてから上部プレート21の温度が設定温度に戻るまでに比較的長い時間(本例では13.4秒)を要する。一方、比較例2では、基板Wが上部プレート21に載置されてから比較的短い時間(本例では11.5秒)で上部プレート21の温度が設定温度に戻る反面、上部プレート21の温度の大きなオーバーシュートおよびアンダーシュートが発生する。
【0047】
このように、比較例1,2の比較から、通常のフィードバック制御では即応性と安定性とはトレードオフの関係にあり、ゲインの調整のみでは即応性および安定性の向上を両立させることは困難である。そこで、本実施の形態においては、制御装置10は即応性および安定性の向上を両立させるために以下の制御を行う。
【0048】
図5は、本発明の実施の形態における上部プレート21の温度制御処理を示すフローチャートである。実施例においては、予め設定された温度調整部30の出力率のしきい値が記憶部11に記憶されている。しきい値は、上部プレート21の設定温度、基板Wのサイズおよび温度調整部30の最大出力等に基づいて決定される。本例では、しきい値は70%である。以下、図1図2および図5を参照しながら制御装置10による温度制御処理を説明する。
【0049】
まず、温度算出部13は、上部プレート21の温度を算出する(ステップS1)。次に、演算処理部14は、フィードバック制御を用いて上部プレート21の温度を設定値に維持するための出力率を算出する(ステップS2)。続いて、出力制御部15は、算出された出力率がしきい値未満であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0050】
ステップS3において、算出された出力率がしきい値未満である場合には、出力制御部15は、算出された出力率で熱処理部23に出力を供給する(ステップS4)。この場合、上部プレート21の温度を設定値に維持するフィードバック制御が行われる。その後、制御装置10はステップS1の処理に戻る。
【0051】
一方、ステップS3において、算出された出力率がしきい値以上である場合には、出力制御部15は、100%の出力率で熱処理部23に出力を供給する(ステップS5)。この場合、熱処理部23に温度調整部30の最大出力を供給するフィードフォワード制御が行われる。その後、制御装置10はステップS1の処理に戻る。
【0052】
ステップS4,S5の処理の後、ステップS1〜S5の処理が繰り返される。この制御によれば、算出された出力率がしきい値未満である場合にはフィードバック制御が行われ、出力率がしきい値以上である場合にはフィードフォワード制御が行われる。
【0053】
図6は、実施例における上部プレート21の温度制御を示すグラフである。図6の横軸は経過時間を示し、縦軸は上部プレート21の温度および温度調整部30の出力率を示す。また、図6においては、上部プレート21の温度変化を実線で示し、算出された出力率を点線で示し、実際の制御で用いられる出力率(以下、実際の出力率と呼ぶ。)を一点鎖線で示す。
【0054】
図6に示すように、初期時点で基板Wが上部プレート21に載置される。それにより、実線で示すように、上部プレート21の温度が設定温度から上昇する。そこで、上部プレート21の温度変化を抑制するためにフィードバック制御が行われる。この場合、点線で示すように、算出された温度調整部30の出力率が上昇する。同様に、一点鎖線で示すように、実際の出力率も上昇する。なお、実施例におけるフィードバック制御はPID制御であり、実施例におけるPID制御のゲインは比較例1におけるPID制御のゲインと等しい。
【0055】
ここで、算出された出力率がしきい値(本例では70%)以上になると、温度制御がフィードバック制御からフィードフォワード制御に切り換えられ、実際の出力率は100%となる。この場合、通常のフィードバック制御よりも高い出力で上部プレート21の冷却処理が行われる。これにより、実線で示すように、上部プレート21の温度は急激に低下する。
【0056】
その後、一点鎖線で示すように、実際の出力率は、上部プレート21の温度変化に応じて低下する。算出された出力率がしきい値未満になると、温度制御がフィードフォワード制御からフィードバック制御に切り換えられ、実際の出力率と算出された出力率とが一致する。この場合、通常のフィードバック制御により、実線で示すように、上部プレート21の温度は、設定温度近傍で収束する。また、一点鎖線で示すように、実際の出力率および算出された出力率は、上部プレート21の温度変化に応じて一定値に収束する。
【0057】
実施例では、上部プレート21の温度のオーバーシュートおよびアンダーシュートはほとんど発生せず、基板Wが上部プレート21にされてから比較的短時間(本例では11.5秒)で上部プレート21の温度が設定温度に戻る。このように、上記の制御によれば、通常のフィードバック制御と比較して、即応性および安定性が向上する。
【0058】
(3)効果
本実施の形態に係る熱処理装置100においては、出力率がしきい値未満である場合には、上部プレート21の温度を設定温度に維持するために算出された出力率を温度調整部30に与えるフィードバック制御が行われる。これにより、上部プレート21の温度が設定温度に維持される。
【0059】
一方、出力率がしきい値以上に上昇した場合には、100%の出力率を温度調整部30に与えるフィードフォワード制御が行われる。これにより、上部プレート21の温度が短時間で設定温度に戻される。出力率がしきい値未満まで低下すると、フィードバック制御が行われる。フィードバック制御においては、上部プレート21の温度変化は緩やかであるため、大きなオーバーシュートおよびアンダーシュートは発生しない。
【0060】
この構成によれば、フィードバック制御およびフィードフォワード制御の切り替えにより、制御の即応性および安定性を向上させることができる。その結果、簡単な制御により基板Wの熱処理を正確にかつ高効率で行うことができる。
【0061】
(4)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、プレート部20は基板Wを冷却処理するクーリングプレートであるが、本発明はこれに限定されない。プレート部20は基板Wを加熱処理するホットプレートであってもよい。この場合、熱処理部23の各温調素子23aは、加熱面が上部プレート21に接触しかつ冷却面が下部プレート22に接触するように配置される。あるいは、温調素子23aはペルチェ素子ではなくヒータであってもよい。
【0062】
あるいは、温調素子23aは、純水等の熱媒体を循環させる配管であってもよい。この場合、温度調整部30は配管に熱媒体を供給する熱媒体供給部である。
【0063】
(b)上記実施の形態において、算出された出力率がしきい値以上である場合には、温度調整部30の最大出力が熱処理部23に供給されることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。算出された出力率がしきい値以上である場合には、当該しきい値よりも十分に大きな出力が熱処理部23に供給されてもよい。この場合、上部プレート21の温度制御に関する情報として、算出された出力率がしきい値以上であるときに熱処理部23に供給する出力が記憶部11に予め記憶されている。
【0064】
(c)上記実施の形態において、フィードバック制御がフィードフォワード制御に切り換わる際のしきい値とフィードフォワード制御がフィードバック制御に切り換わる際のしきい値とが等しいことが好ましいが、本発明はこれに限定されない。フィードバック制御がフィードフォワード制御に切り換わる際のしきい値とフィードフォワード制御がフィードバック制御に切り換わる際のしきい値とが異なってもよい。この場合、上部プレート21の温度制御に関する情報として、2つのしきい値が記憶部11に予め記憶されている。
【0065】
(d)上記実施の形態において、温度調整部30に与えられるべき制御値として、相対値である出力率が算出されることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。温度調整部30に与えられるべき制御値として、絶対値である出力量が算出されてもよい。
【0066】
(5)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0067】
上記実施の形態では、基板Wが基板の例であり、熱処理装置100が熱処理装置の例であり、上部プレート21がプレートの例であり、熱処理部23が熱処理部の例であり、温度調整部30が温度調整部の例である。温度検出部50が温度検出部の例であり、演算処理部14が制御値算出部の例であり、出力制御部15が制御切替部の例であり、温調素子23aがペルチェ素子の例である。
【0068】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、種々の基板の熱処理に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 制御装置
11 記憶部
12 昇降制御部
13 温度算出部
14 演算処理部
15 出力制御部
20 プレート部
21 上部プレート
21h,22h 開口部
22 下部プレート
23 熱処理部
23a 温調素子
30 温度調整部
40 昇降装置
41 昇降ピン
42 ピン駆動部
50 温度検出部
100 熱処理装置
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6