特許第6442352号(P6442352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442352
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】モノマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/26 20060101AFI20181210BHJP
   C07C 43/23 20060101ALI20181210BHJP
   C08G 63/199 20060101ALI20181210BHJP
   C08G 64/06 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   C07C41/26
   C07C43/23 D
   C08G63/199
   C08G64/06
【請求項の数】15
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-83379(P2015-83379)
(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-204265(P2016-204265A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(74)【代理人】
【識別番号】100109287
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 泰三
(72)【発明者】
【氏名】松井 学
(72)【発明者】
【氏名】布目 和徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英希
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−077266(JP,A)
【文献】 特許第5704736(JP,B2)
【文献】 特許第6210555(JP,B2)
【文献】 特開平10−259151(JP,A)
【文献】 特開2007−002208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08G CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるモノマー残基を含むポリマーを、金属水酸化物水溶液により分解し、下記式(I)で表されるモノマーを製造する方法であって、
【化1】
(式(I)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。Xは分岐していても良い炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基または炭素数6〜10のアリーレン基である。nおよびmはそれぞれ独立に1〜5の整数である。)
(1)エーテル溶媒と炭化水素溶媒の混合溶媒、または、ケトン溶媒と炭化水素溶媒の混合溶媒を含む有機溶媒、ポリマーおよび金属水酸化物水溶液を混合してポリマーを分解し、モノマーを含有する分解液を得る工程(分解工程)、
(2)分解液からモノマーの粗生成物を回収する工程(回収工程)並びに
(3)モノマーの粗生成物を精製する工程(精製工程)、
を含む前記モノマーの製造方法。
【請求項2】
ポリマーが、ポリカーボネート、ポリエステルまたはポリエステルカーボネートである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
モノマーが、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンである請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
金属水酸化物が、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
有機溶媒が、混合溶媒を50重量%以上含む請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
有機溶媒が、トルエンとシクロヘキサノンからなる混合溶媒である請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
分解工程における分解温度が、25〜90℃である請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
分解工程における金属水酸化物水溶液の濃度が、15〜48重量%である請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
回収工程は、分解液を冷却し析出したモノマーの粗生成物を回収する工程を含む請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
回収工程は、分解液を水相と有機溶媒相とを分離した後、有機溶媒層からモノマーの粗生成物を回収する工程である請求項1記載の製造方法。
【請求項11】
回収工程は、分離した有機溶媒層を水洗する工程を含む請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
精製工程は、モノマーの粗生成物を、エーテル溶媒、ケトン溶媒、炭化水素溶媒およびアルコール溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む再結晶溶媒に溶解した後、モノマーを析出させる再結晶工程を含む請求項1記載の製造方法。
【請求項13】
再結晶溶媒が、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、2−プロパノールおよび2−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶媒である請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
再結晶工程の前に、有機溶媒層を水洗する工程を含む請求項12記載の製造方法。
【請求項15】
モノマーが、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンであり、モノマー中の9−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−9−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの含有量が0.2%以下である請求項1記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーを金属水酸化物水溶液により分解し、モノマーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート、ポリエステルまたはポリエステルカーボネートは、優れた機械的性質、電気的性質、耐熱性、耐寒性、透明性、耐加水分解性等を有しており、光学レンズや光ディスク、液晶パネル、ヘッドランンプパネル等の用途に利用されている材料であり、その需要は年々増加している。これらのポリマーの需要の増加に伴い、廃棄されるポリマー製品の多くは焼却若しくは地中に埋める等の方法で処理される。これは、ポリマーの需要の増加から石油資源の枯渇を加速させるだけでなく、地球環境の悪化を促進する。そこで、廃棄されたプラスチックを再利用(リサイクル)することが重要になってきた。
プラスチックをリサイクルする方法は、(1)プラスチックを熱エネルギーとして回収するサーマルリサイクル、(2)プラスチックを製品にある割合で混合し、加工して製品とするマテリアルリサイクル、(3)プラスチックを化学的に分解してプラスチックの原材料にまで戻して、プラスチック製造に再使用するケミカルリサイクルがある。しかし、サーマルリサイクルは、プラスチックを焼却して熱を取りだすので、二酸化炭素と水が生成し、本質的には地球環境を破壊し、資源を減少させていることになる。マテリアルリサイクルは、資源の消費に関しては、一番環境の負荷が少なく、環境的に望ましいが、混合できる製品が限定され、製品に混入できる割合が少なく、リサイクルできる量が限られる。ケミカルリサイクルは、プラスチックを原材料まで分解するので、そのまま製造に利用することが可能であり、産業上有用なリサイクル方法である。
【0003】
ポリカーボネートをケミカルリサイクルする方法として、ポリカーボネートを過剰のアルカリ水溶液で分解させる方法は昔から知られている。例えば特許文献1には、有機溶剤を使用しないで、ポリカーボネートと1〜30%のアルカリ水溶液を耐圧容器に入れ、100℃以上、好ましくは150℃以上で加水分解後、酸性にした後メタノールに溶解し、活性炭処理して着色成分を除去後、再沈殿して白色ビスフェノールを得ている。
特許文献2には、ポリカーボネートスクラップをバルクまたは溶液でケン化し、未ケン化の成分を分離し、ケン化混合物をホスゲン化し、まったく精製工程および処理工程なしでポリカーボネート重合工程に用いる方法が示されている。
特許文献3には、アルカリ触媒存在下、ポリカーボネートをフェノールで分解し、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジアリールを回収する方法が示されている。
また、特許文献4には、トルエン、キシレン、ベンゼンまたはジオキサン溶剤中で、少量のアルカリを触媒として、エステル交換反応を行い、炭酸ジアルキルと芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法が示されている。
特許文献5には、ポリカーボネートを塩化アルキル、エーテル類または芳香族炭化水素系溶媒等の溶媒と3級アミンの存在下、低級アルコールとエステル交換させて芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジアルキルを得る方法が提案されている。
【0004】
さらに、特許文献6には、ポリカーボネートをハロゲン化炭化水素溶媒に溶解後、金属水酸化物水溶液により分解し芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩水溶液を得る方法とその芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩水溶液から固体の芳香族ヒドロキシ化合物を得る方法が示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は薄いアルカリ性水溶液を用いているので反応が高温になり、さらに後処理において非常に多くの水を使い、黄色の着色成分をメタノールと水の混合溶媒から再沈殿するので、廃液処理が非常に煩雑である。
【0005】
特許文献2に記載の方法は精製工程なしで重合反応に使用するので、プラスチックにほぼ必須成分として用いられる添加剤、着色剤などがポリカーボネート製造工程に混入することになり、製品品質に影響を及ぼす。
特許文献3〜5に記載の方法は、分解生成物と溶媒の分離回収工程が煩雑になるだけでなく、必要としない副生成物が発生する。
特許文献6に記載の方法は、塩基性条件下での芳香族ヒドロキシ化合物の酸化を防ぐために酸化防止剤の添加が必要であり、また、高純度固体として取り出す為には、酸を加えて芳香族ヒドロキシ化合物を析出させる必要がある。
また特許文献1〜6に記載の方法は、何れもビスフェノールAを原料とするポリカーボネートであり、フェノール性の水酸基を有する点で、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下、BPEFと略すことがある)のような、−CHCHOHで表されるアルキレン鎖に結合した水酸基を有するモノマーを原料とするポリマーについての知見はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭40−016536号公報
【特許文献2】特開昭54−048869号公報
【特許文献3】特開平06−056985号公報
【特許文献4】特開平10−259151号公報
【特許文献5】特開2002−212335号公報
【特許文献6】特開2005−126358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、下記式(I)で表されるモノマーを原料とするポリマーから、短時間で、着色成分をほとんど含有せず良好な色相を有するモノマーを製造する方法を提供することにある。
【0008】
【化1】
【0009】
(式(I)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。Xは分岐していても良い炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基または炭素数6〜10のアリーレン基である。nおよびmはそれぞれ独立に1〜5の整数である。)
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、BPEFのような下記式(I)で表されるモノマーを原料とするポリマーからモノマーを回収する方法について検討した。その結果、下記式(I)で表されるモノマーは、−CHCHOHのようなアルキレン鎖に結合した水酸基を有するので、水層ではなく、有機層に含まれ回収されることを見出した。
【0011】
また下記式(I)で表されるモノマー残基を含むポリマーは、分解の際にそのエ−テル結合が切断され易く、不純物として、下記式(Ia)で表される片末端がフェノール性の水酸基である不純物や、下記式(Ib)で表される両末端がフェノール性の水酸基である不純物が生成することを見出し、これらが着色の原因であることを見出した。これらの不純物は、構造が近似しているので、分離が困難であると予想されたが、式(Ia)または(Ib)で表されるモノマーは有機層を水で洗浄すると、容易に分離できることを見出した。その結果、着色成分の少ないモノマーが得られることを見出した。
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
(式(I)、式(Ia)および式(Ib)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。Xは分岐していても良い炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基または炭素数6〜10のアリーレン基である。nおよびmはそれぞれ独立に1〜5の整数である。)
【0016】
また該モノマーを原料とするポリマーの品質は、市販のモノマーを用いて製造したポリマーの品質と遜色ないことも見出した。
【0017】
すなわち、本発明によれば、以下に示すポリマーからモノマーを得る方法が提供される。
1. 下記式(1)で表されるモノマー残基を含むポリマーを、金属水酸化物水溶液により分解し、下記式(I)で表されるモノマーを製造する方法であって、
【0018】
【化5】
【0019】
(式(I)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。Xは分岐していても良い炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基または炭素数6〜10のアリーレン基である。nおよびmはそれぞれ独立に1〜5の整数である。)
【0020】
(1)エーテル溶媒と炭化水素溶媒の混合溶媒またはケトン溶媒と炭化水素溶媒の混合溶媒を含む有機溶媒、ポリマーおよび金属水酸化物水溶液を混合してポリマーを分解し、モノマーを含有する分解液を得る工程(分解工程)、
(2)分解液からモノマーの粗生成物を回収する工程(回収工程)並びに
(3)モノマーの粗生成物を精製する工程(精製工程)、
を含む前記モノマーの製造方法。
2. ポリマーが、ポリカーボネート、ポリエステルまたはポリエステルカーボネートである前項1記載の製造方法。
3. モノマーが、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンである前項1記載の製造方法。
4. 金属水酸化物が、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである前項1記載の製造方法。
5. 有機溶媒が、混合溶媒を50重量%以上含む前項1記載の製造方法。
6. 有機溶媒が、トルエンとシクロヘキサノンからなる混合溶媒である前項1記載の製造方法。
7. 分解工程における分解温度が、25〜90℃である前項1記載の製造方法。
8. 分解工程における金属水酸化物水溶液の濃度が、15〜48重量%である前項1記載の製造方法。
9. 回収工程は、分解液を冷却し析出したモノマーの粗生成物を回収する工程を含む前項1記載の製造方法。
10. 回収工程は、分解液を水相と有機溶媒相とを分離した後、有機溶媒層からモノマーの粗生成物を回収する工程である前項1記載の製造方法。
11. 回収工程は、分離した有機溶媒層を水洗する工程を含む前項10記載の製造方法。
12. 精製工程は、モノマーの粗生成物を、エーテル溶媒、ケトン溶媒、炭化水素溶媒およびアルコール溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む再結晶溶媒に溶解した後、モノマーを析出させる再結晶工程を含む前項1記載の製造方法。
13. 再結晶溶媒が、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、2−プロパノールおよび2−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶媒である前項12記載の製造方法。
14. 再結晶工程の前に、有機溶媒層を水洗する工程を含む前項12記載の製造方法。
15. モノマーが、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンであり、モノマー中の9−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−9−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの含有量が0.2%以下である前項1記載の製造方法。

【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、下記式(I)で表されるモノマーを原料とするポリマーから、短時間で、着色成分をほとんど含有せず良好な色相を有するモノマーを製造することができる。本発明によれば、ポリマー原材料として用いることが可能な色相の良好なモノマーを高純度で製造することが出来る。
【0022】
【化6】
【0023】
(式(I)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。Xは分岐していても良い炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基または炭素数6〜10のアリーレン基である。nおよびmはそれぞれ独立に1〜5の整数である。)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のポリマーからモノマーを製造する方法について順次具体的に説明する。
【0025】
<モノマーの製造方法>
本発明の製造法は、分解工程、回収工程並びに精製工程を含む。
【0026】
<(1)分解工程>
分解工程は、エーテル溶媒と炭化水素溶媒の混合溶媒またはケトン溶媒炭化水素溶媒の混合溶媒を含む有機溶媒、ポリマーおよび金属水酸化物水溶液を混合してポリマーを分解し、モノマーを含有する分解液を得る工程である。
(ポリマー)
ポリマーは、下記式(I)で表されるモノマー残基を含むポリマーである。すなわち、式(I)で表されるモノマーを原料の一つとして得られたポリマーである。ポリマーとして、ポリカーボネート、ポリエステルまたはポリエステルカーボネートが挙げられる。
【0027】
【化7】
【0028】
式(I)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のシクロアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である。
【0029】
炭素数1〜10のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。炭素数6〜10のシクロアルキル基として、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。炭素数6〜10のアリール基として、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0030】
Xは、分岐していても良い炭素数2〜6のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基または炭素数6〜10のアリーレン基である。
分岐していても良い炭素数2〜6のアルキレン基として、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。炭素数6〜10のシクロアルキレン基として、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基などが挙げられる。炭素数6〜10のアリーレン基としてフェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。
nおよびmはそれぞれ独立に1〜5の整数である。nおよびmは、それぞれ独立に1〜2の整数が好ましい。
【0031】
本発明に使用される式(I)で表されるモノマーは、具体的には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(6−ヒドロキシ−3−オキサペンチルオキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(9−ヒドロキシ−3,6−ジオキサオクチルオキシ)フェニル)フルオレン、等が例示される。これらの中で、特に9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが好ましい。
【0032】
本発明に用いられるポリマーは、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)を原料の1つとして得られたポリカーボネート、ポリエステルおよびポリエステルカーボネートが好ましい。
ポリマー中の、式(I)で表されるモノマー残基の含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上である。
【0033】
(有機溶剤)
分解工程に用いられる有機溶媒は、エーテル溶媒と炭化水素溶媒の混合溶媒またはケトン溶媒炭化水素溶媒の混合溶媒を含む有機溶媒である。有機溶媒は、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノンおよびシクロヘキサノンからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶媒が好適である。
分解工程に用いる有機溶媒は、混合溶媒で用いることが好ましい。トルエンとシクロヘキサノンやトルエンと2−ブタノンの混合溶媒が好適であり、トルエンとシクロヘキサノンが、特に好適である。シクロヘキサノンを溶媒に用いると分解工程において、ポリマーが釜内壁もしくはポリマー同士で付着して塊になることなくポリマーの分解を円滑に進行させることができる。
【0034】
混合溶媒を50重量%以上含む有機溶媒が好適である。芳香族炭化水素溶媒を少なくとも50重量%以上含む有機溶媒が更に好適である。例えばトルエン:シクロヘキサノンの混合溶媒の場合には、50〜90:50〜10が好ましく、75〜85:25〜15がさらに好ましい。シクロヘキサノンの割合が50重量%より大きくなると、溶解したBPEFが析出しにくくなり収率が低下する。10重量%より小さくなるとポリマーの付着防止効果が得られ難くなる。
有機溶媒の使用量は、ポリマー100重量部に対し100〜600重量部の範囲が好ましく、130〜300重量部がさらに好ましく、150〜170重量部が特に好ましい。溶媒量が100重量部より少ないと、初期の混合が不十分で、さらに充分膨潤または溶解せず、分解反応終了までの時間が長くなることがある。また600重量部より多いと、反応系内のカーボネート結合およびエステル結合の濃度が低くなり、分解反応速度が低下するため、分解反応時間が長くなり、また溶媒の回収コストが高くなる。

【0035】
分解工程において、ポリマーが相互に付着し塊が生成するのを防ぐために相間移動触媒を適宜添加して用いることができる。相間移動触媒は4級アンモニウム塩が好ましく用いられ、例えばテトラエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。なかでも、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドが好ましい。これらは単独または2種以上を混合して使用できる。これらの相間移動触媒の使用量は、ポリマー100重量部に対して、10〜30重量部が好ましい。使用量が10重量部より少ないと塊生成防止効果が得られず、30重量部より多いとコストが高くなり、経済的に好ましくない。
【0036】
ポリマーを分解するために用いられる金属水酸化物水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが特に好ましい。金属水酸化物の使用量は、ポリマーのカーボネート結合およびエステル結合1モルに対し4.1〜12.4モルが好ましい。使用量が4.1モルより少ないと分解反応が非常に遅く12.4モルより多いとコストが高くなり、かつ、BPEFを単離、回収する際に排出される金属水酸化物水溶液の量も多くなり、経済的に好ましくない。
分解反応において、ポリマーをあらかじめエーテル溶媒、ケトン溶媒および炭化水素溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む有機溶媒に溶解しておいてもよいし、全てを溶解させずに分解反応を行なう反応器に投入してもよい。
【0037】
本発明において、金属水酸化物は水溶液の状態で使用する。金属水酸化物の濃度は、好ましくは、10〜48重量%であり、より好ましく、20〜40重量%であり、さらに好ましくは、23〜38重量%である。
金属水酸化物の濃度が、10重量%より低いと分解速度が遅くなり反応完結までに非常に長い時間がかかるため処理効率が著しく劣る。また、金属水酸化物の濃度が、48重量%を超えると金属水酸化物が析出しスラリーになりやすく、スラリーになった場合、反応が遅くなる。
【0038】
また例えば下記式(I−1)で表されるBPEFの場合、BPEFのエーテル結合が開裂して、着色の原因物質と推定される、下記式(Ia−1)で表される9−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−9−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンや、下記式(Ib−1)で表される9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのフェノール末端をもつ化合物が生成しやすくなり、品質に悪影響を及ぼす。特に下記式(Ia−1)で表される9−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−9−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンは精製工程で取り除きにくい為、回収したBPEF中に残り易い。
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
本発明において、分解反応を行う温度は25〜90℃が好ましく、30〜50℃がより好ましい。25℃未満の場合は分解反応時間が長くなり、処理効率が著しく劣る。また、90℃を越えると、分解処理中に式(Ia−1)で表される9−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−9−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンや、式(Ib−1)で表される9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの着色成分が生成しやすくなり、品質の良い式(I−1)で表されるBPEFが得られなくなる。
【0043】
本発明において、分解反応を行う時間は3〜12時間が好ましく、4〜6時間がより好ましい。3時間未満の場合、分解反応が完結せず、収率が低下する。また、12時間を越えると、分解処理中に着色成分が生成しやすくなる。
本発明におけるポリマーの分解方法は、界面反応であり、エーテル溶媒、ケトン溶媒および炭化水素溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む有機溶媒に溶解、または膨潤しているポリマーが金属水酸化物水溶液と攪拌され、界面で接触して分解させる。この反応は不可逆であり、ポリカーボネートではカーボネート結合、ポリエステルではポリエステル結合、そしてポリエステルカーボネートではカーボネート結合とエステル結合が切れ、BPEF等の芳香族ジオールやエチレングリコール等の脂肪族ジオールとジヒドロキシ化合物金属塩、ジカルボン酸金属塩、炭酸金属塩などに分解する。
【0044】
<(2)回収工程>
回収工程は、分解液から式(I)で表されるモノマーの粗生成物を回収する工程である。
式(I)で表されるモノマーとテレフタル酸から誘導されるポリエステルカーボネートの場合には、先ず、分解反応後の分解液に水を加えジカルボン酸(テレフタル酸)金属塩、炭酸金属塩を溶解させる。加える水の量は、完全に固体が溶解する量以上を投入するが、多く投入しすぎると、排出する廃液が多くなりコスト増となるので、完全に金属塩が溶解する量の最小量が好ましい。具体的には、加える水の量は、ジカルボン酸金属塩に対して、好ましくは、1800〜3000重量%であり、より好ましくは、2200〜2700重量%である。
ここで水層と有機溶媒層とを含む分解液を冷却して固体の式(I)で表されるモノマーの粗生成物を析出させることができる。固体として得られた式(I)で表されるモノマーの粗生成物のろ過の方法は、ろ過器、遠心分離機、遠心沈降装置等を挙げることができる。遠心分離機がろ過後の含液率が25重量%以下となり、好ましい。
【0045】
また、分解液に水を加えた後に溶解しない式(I)で表されるモノマーがある場合、40〜90℃に加熱し完全に溶解させて、反応器内において有機溶媒相と金属塩の水溶液相との2つの相に分離させることができる。この2相をデカンター等の液液分離器で分離するが、液液分離器において分離が不十分であると、金属塩が除去できず、製品の品質に影響を及ぼすので、水相を有機溶媒に接触させ、可能な限り除去することが好ましい。この方法は、洗浄塔による接触、撹拌機、液液分離器による分離、遠心分離機など、公知の方法が使用できる。
有機溶媒相中には式(I)で表されるモノマー以外の不純物、例えば、ポリマー由来のジカルボン酸塩、炭酸塩、金属触媒等が含まれている。これらの不純物は、純水と接触、水相の導電率が、50μS/cm以下になるまで、洗浄を数回繰り返すことにより、除去が可能である。
得られた有機溶媒相を冷却することで固体の式(I)で表されるモノマーを析出させることができる。式(I)で表されるモノマーを析出させる好適な方法は、有機溶媒の存在下、40〜90℃に加熱することにより式(I)で表されるモノマーを溶解させ、その後30℃以下まで冷却し、式(I)で表されるモノマーを析出させる方法である。該方法によれば、有機溶媒相に溶解しきらない式(I)で表されるモノマーがスラリーとして得られ、このスラリーをろ過することにより、式(I)で表されるモノマーを得ることができる。
【0046】
有機溶剤の量は、加熱時に式(I)で表されるモノマーが完全に溶解する量以上を使用するが、多すぎると冷却時に溶解したまま析出しない式(I)で表されるモノマーの割合が増え、ろ過工程でろ液としてロスするので、完全に式(I)で表されるモノマーが溶解する量の最小量が好ましい。具体的には、加える有機溶媒の量は、式(I)で表されるモノマーに対して、好ましくは、410重量%以下である。
固体として得られた式(I)で表されるモノマーのろ過の方法は、ろ過器、遠心分離機、遠心沈降装置等を挙げることができる。遠心分離機がろ過後の含液率が低く、好ましい。
【0047】
<(3)精製工程>
精製工程は、式(I)で表されるモノマーの粗生成物を精製する工程である。
先ず、固体の式(I)で表されるモノマーの粗生成物を攪拌槽に移し、エーテル溶媒、ケトン溶媒、炭化水素溶媒およびアルコール溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種を投入し、攪拌しながら加熱し、式(I)で表されるモノマーを完全に溶解させる。具体的には、加える有機溶剤の量は、式(I)で表されるモノマーに対して好ましくは、250〜1000重量%であり、より好ましくは、260〜350重量%である。
次いで有機相に純水を仕込み、撹拌洗浄を行うことが好ましい。具体的には、加える純水の量は、式(I)で表されるモノマーに対して好ましくは、20重量部〜100重量部であり、より好ましくは、40重量部〜60重量部である。
【0048】
上記の有機相中には式(I)で表されるモノマー以外のポリマーの重合触媒や分解工程で使用した金属水酸化物由来の金属分の無機不純物や式(Ia)で表されるモノマー、式(Ib)で表されるモノマーが含まれている。これらの不純物は、純水と接触、洗浄することにより、除去が可能である。撹拌を止め、静置することで、攪拌槽内において有機相と金属塩の水溶液相との2つの相に分離する。この2相をデカンター等の液液分離器で分離するが、液液分離器において分離が不十分であると、金属塩が除去できず、製品に影響を及ぼすので、水相を有機溶媒に接触させ、水相の導電率が、20μS/cm以下になるまで、除去することが好ましい。特にナトリウム分が残ると、重合して得られる樹脂の色相が悪くなる。ナトリウムは、100ppm以下、好ましくは、30ppm以下、特に好ましくは、10ppm以下である。この方法は、洗浄塔による接触、撹拌機、液液分離器による分離、遠心分離機など、公知の方法が使用できる。
【0049】
該有機相を冷却することにより固体の式(I)で表されるモノマーを析出させることができる。式(I)で表されるモノマーを析出させる好適な方法は、有機溶媒の存在下、40〜90℃に加熱することにより式(I)で表されるモノマーを溶解させ、その後30℃以下まで冷却し、式(I)で表されるモノマーを析出させる方法である。該方法によれば、有機相に溶解しきらない式(I)で表されるモノマーがスラリーとして得られ、このスラリーをろ過することにより、式(I)で表されるモノマーの精製結晶を得ることができる。
得られた式(I)で表されるモノマーの精製結晶は、更に精製処理してもよい。
【0050】
再精製に用いる有機溶媒として、エーテル溶媒、ケトン溶媒、炭化水素溶媒およびアルコール溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む有機溶媒が挙げられる。好ましくは、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶媒である。より好ましくは、メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−ブタノール等が挙げられ、さらに好ましくは、メタノールである。
より極性の高い溶媒を用いると、式(Ia)で表されるモノマー、式(Ib)で表されるモノマーのような着色の原因となる不純物が除去しやすく、トルエン、キシレンのような炭化水素溶媒を用いる場合には、高極性溶媒と混合して用いるのが好ましい。
有機相の不純物の吸着を目的として、吸着剤を用いてもよい。吸着剤は、活性炭、活性白土および酸性白土が挙げられ、特に活性炭が好ましい。吸着剤の使用量は、式(I)で表されるモノマー100重量部に対して、0.5〜5.0重量部が好ましい。使用量が0.5重量部より少ないと不純物除去効果が得られず、5.0重量部より多いとコストが高くなり、経済的に好ましくない。
【0051】
具体的な再精製方法は、固体の式(I)で表されるモノマーの精製結晶を攪拌槽に移し、アルコール系有機溶媒を投入し、攪拌しながら加熱し、式(I)で表されるモノマー完全に溶解させる。そこに吸着剤を仕込み、撹拌を行う。有機溶媒相中には式(I)で表されるモノマー以外の不純物(ビスフェノールフルオレン、モノフェノールフルオレン、その他)、着色成分が含まれている。これらの不純物は、吸着剤処理を行うことにより、除去が可能である。吸着剤をろ過により除去した後、得られた有機相を30℃以下まで冷却することで固体の式(I)で表されるモノマーを析出させることができる。有機相に溶解しきらない式(I)で表されるモノマーがスラリーとして得られ、このスラリーをろ過することにより、式(I)で表されるモノマーを得ることができる。アルコール系有機溶剤の量は、加熱時に式(I)で表されるモノマーが完全に溶解する量以上を使用するが、多すぎると冷却時に溶解したまま析出しない式(I)で表されるモノマーの割合が増え、ろ過工程でろ液としてロスするので、完全に式(I)で表されるモノマーが溶解する量の最小量が好ましい。
具体的には、加えるアルコール系有機溶剤の量は、式(I)で表されるモノマーに対して好ましくは、400〜4000重量%である。
【0052】
本発明は、ポリマーを分解してモノマーを得る方法であるが、色相の良好なモノマーを回収するためには、(1)分解工程、(2)回収工程、(3)精製工程の一連の工程が必要である。
分解工程においては、特定の有機溶媒(エーテル溶媒、ケトン溶媒および炭化水素溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種)と金属水酸化物(アルカリ)を用い、アルカリ濃度を特定の範囲は、10〜48重量%、分解温度は、25〜95℃で分解時間は、3〜12時間で行うのが好ましく、その条件では、着色原因となる不純物の副生を抑えることが可能である。
また、精製工程においては、粗生成物の特定の溶媒(エーテル溶媒、ケトン溶媒、炭化水素溶媒およびアルコール溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種)を用い、再結晶することで、着色原因となる不純物を除去することができ、目的の純度、溶融ハーゼン色数のモノマーを得ることができる。
【0053】
本発明の方法で回収された式(I)で表されるモノマーは、ポリマーの製造工程に再使用することができる。再使用する方法としては、溶融重合法でそのまま使用することができる。
本発明の方法で回収した式(I)で表されるモノマーは、式(Ia)で表されるモノマーの含有量が、0.2%以下であることが好ましく、0.15%以下であることがより好ましい。かかるモノマーを使用して得られる樹脂は、色相に優れ好ましい。
また、回収した式(I)で表されるモノマーと市販の式(I)で表されるモノマーとを一緒にポリマーの製造に使用しても構わない。回収した式(I)で表されるモノマーと市販の式(I)で表されるモノマーを混合する方法は、固体同士、固体と液体、液体同士を混合する方法のどの方法であってもよい。
【0054】
<ポリカーボネート>
回収した式(I)で表されるモノマーを用いてポリカーボネートを製造することができる。ポリカーボネートは、下記式(II)で表される単位を含むことが好ましい。
【0055】
【化11】
【0056】
ポリカーボネートは、BPEFを少なくとも含有するジヒドロキシ成分を炭酸エステル成分と塩基性化合物触媒の存在下反応させた樹脂である。
【0057】
ヒドロキシ成分は、BPEF以外の他の共重合成分を含んでも良い。他の共重合成として、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、α,ω−ビス[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール等の芳香族ジオールが挙げられる。また、エチレングリコール等の脂肪族ジオール、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール、イソソルビド、イソマンニド等の脂環式ジオールが挙げられる。これらは、一種を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの中でも特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA:BPA)が挙げられる。
【0058】
炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。これらの芳香族炭酸ジエステルは単独で用いても、二種以上併用してもよい。
ポリカーボネートは、式(II)で表される単位の含有量が、好ましくは、全ジヒドロキシ成分の30モル%以上、より好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは50〜90モル%である。式(II)で表される単位の含有量を前記範囲とすることで、光学特性、成形性、および機械特性に優れたポリカーボネートとなる。
ポリカーボネートの分子量は、好ましくは7,000〜100,000、より好ましくは8,000〜30,000、さらに好ましくは、8,000〜14,000である。分子量は溶液粘度法で測定する。
ポリカーボネートは、通常のポリカーボネートの製造方法により製造することができる。例えばジオールとホスゲンとの反応、またはジオールとビスアリールカーボネートとのエステル交換反応が好ましく採用される。
【0059】
ジオールとホスゲンとの反応では、非水系で酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えばピリジン、ジメチルアミノピリジン、第三級アミン等が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間が好ましい。
エステル交換反応では、不活性ガス存在下にジオールとビスアリールカーボネートを混合し、アルカリ金属化合物触媒もしくはアルカリ土類金属化合物もしくはその双方からなる混合触媒の存在下にて、減圧下、通常120〜350℃、好ましくは150〜300℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したアルコール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。しかしながら、重合温度が、350℃超ではフェニルビニルエーテルやアセトアルデヒドが副生し易くなり、120℃未満では、反応が進行せず好ましくない。
重合触媒としてはアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を主成分として用い、必要に応じて含窒素塩基性化合物を従成分として用いても良い。
【0060】
触媒として使用するアルカリ金属化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0061】
助触媒として使用する含窒素塩基性化合物としてはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
これらの触媒は単独で用いても、二種以上併用してもよく、これらの重合触媒の使用量はジオール成分の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で用いられる。しかしながら触媒量が上記以上では、フェニルビニルエーテルやアセトアルデヒドが副生しやすくなり、色相が悪化し好ましくない。また、色相改善のために酸化防止剤や熱安定剤等を加えてもよい。
【0062】
ポリカーボネートは、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物については、一般的に、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの失活を行う物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
触媒失活後、樹脂中の低沸点化合物を133〜13.3Paの圧力、200〜320℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。
【0063】
<ポリエステル>
回収した式(I)で表されるモノマーを用いてポリエステルを製造することができる。ポリエステルは、好ましくは下記式(III)で表される単位を含む。
【0064】
【化12】
【0065】
式中Yは、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アルキレン基等のジカルボン酸成分由来の単位である。ポリエステルは、BPEFを少なくとも含むジオール成分と、ジカルボン酸および/またはこれらの反応性誘導体を含むジカルボン酸成分とを反応させた樹脂である。
ジオール成分およびジカルボン酸成分は、それぞれ単一の成分であってもよく、またはそれぞれ2種以上の化合物を含んでいてもよい。
【0066】
BPEFとともに使用可能な他のジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、デカンジオール等の直鎖状または分岐鎖状のC2−12のアルキレングリコールやトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール、イソソルビド、イソマンニド等の脂環式ジオール等が挙げられる。またジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の(ポリ)オキシアルキレングリコールが挙げられる。これらのジオールは、一種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0067】
BPEFと組み合わせて用いるジオールの好ましい例は、直鎖状または分岐鎖状C2−10のアルキレングリコールであり、より好ましくは直鎖状または分岐鎖状C2−6のアルキレングリコール、さらに好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)等の直鎖状または分岐鎖状C2−4アルキレングリコールである。特に好ましい作用をするジオール成分としては、エチレングリコールが挙げられる。
BPEF以外のエチレングリコール等のジオールは、重合反応性を高めるとともに樹脂に柔軟性を付与させるための共重合成分として有用である。なお、共重合成分の導入により、屈折率、耐熱性、吸水性が低下する場合があるため、それらの点では、一般的には共重合比率は小さいほうがよい。
【0068】
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のアルカンジカルボン酸が挙げられる。またマレイン酸、フマル酸等のアルケンジカルボン酸が挙げられる。またシクロヘキサンジカルボン酸等のシクロアルカンジカルボン酸が挙げられる。またデカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等のジまたはトリシクロアルカンジカルボン酸が挙げられる。またテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等)ビフェニルジカルボン酸(2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のアレーンジカルボン酸が挙げられる。
【0069】
さらにヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物が挙げられる。またジメチルエステル、ジエチルエステル等の低級(C1−4)アルキルエステルが挙げられる。またジカルボン酸に対応する酸ハライド等のエステル形成可能な誘導体等が挙げられる。
これらのジカルボン酸は、一種を単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもシクロヘキサンジカルボン酸、およびテレフタル酸が安価で工業的に入手しやすいため好ましい。
【0070】
ポリエステルは、式(III)で表される単位の含有量が、全単位に対して60モル%以上、好ましくは60〜100モル%、より好ましくは60〜90モル%である。式(II)で表される単位の割合を前記範囲とすることで、屈折率等の光学特性の優れたポリエステルとなる。強度の点ではBPEFの含有率は高いほど弾性率が高く好ましいが、一方、高すぎると引っ張り伸びが低下するため、式(III)で表される単位の含有量は90モル%以下であるのが好ましい。よって式(III)で表される単位の含有量は、90〜60モル%であることがより好ましい。
ポリエステルは、BPEF由来の繰り返し単位の含有量が、全単位に対して30モル%以上、好ましくは30〜50モル%、より好ましくは30〜45モル%である。BPEF由来の繰り返し単位の割合を前記範囲とすることで、光学特性の優れたポリエステルとなる。強度の点ではBPEFの含有率は高いほど弾性率が高く好ましいが、ポリエステルはジオール成分とジカルボン酸成分および/またはこれらの反応性誘導体を含むジカルボン酸成分の組成比が、50:50でなければ、十分な分子量にならない為、下記式で表されるBPEF由来の構成単位の含有量は、30〜50モル%であることがより好ましい。
【0071】
【化13】
【0072】
ポリエステルの分子量は、好ましくは7,000〜100,000、より好ましくは8,000〜30,000、さらに好ましくは、8,000〜14,000である。分子量は溶液粘度法で測定する。
ポリエステルは、ジカルボン酸成分(ジカルボン酸および/またはエステル形成性ジカルボン酸誘導体)と、BPEFを含むジオール成分とを、エステル交換法、直接重合法等の溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等の種々の方法に従って反応させて得ることができる。中でも、反応溶媒を用いない溶融重合法が好ましい。
【0073】
溶融重合法の一つであるエステル交換法は、触媒存在下、ジカルボン酸エステルとジオール化合物とを反応させ、生成するアルコールを留去しながらエステル交換を行うことによりポリエステルを得る方法であり、一般にポリエステルの合成に用いられている。
エステル交換反応の触媒としては、少なくとも一種類以上の金属化合物を使用することが望ましい。好ましい金属化合物中に含まれる金属元素としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、チタン、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、スズ、コバルト等が挙げられる。これらの中でも、カルシウムおよびマンガン化合物は反応性が高く、得られる樹脂の色調が良好なことから好ましい。エステル交換触媒の使用量は、ジオール化合物1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で用いられる。
【0074】
また、直接重合法は、ジカルボン酸とジオール化合物との脱水反応を行い、エステル化合物を形成したのち、減圧下にて過剰のジオール化合物を留去しながらエステル交換反応を行うことによりポリエステルを得る方法である。直接重合法はエステル交換法のようにアルコールの留出がなく、原料に安価なジカルボン酸を用いることができることが利点である。
これら溶融重合法を実施する際の重合反応の触媒としては、少なくとも一種類以上の金属化合物を使用することが望ましい。好ましい金属元素としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、チタンおよびゲルマニウム化合物は反応性が高く、得られる樹脂の透明性および色調に優れていることから、光学用樹脂においては特に好ましい。重合触媒の使用量は、生成するポリエステルに対して、10−9〜10−3モルの比率で用いられる。
【0075】
また、本発明のポリエステルを製造する際、重合反応を円滑に進行するため、エステル交換反応が終了した後に、エステル交換触媒と等モル以上のリン化合物を使用することが望ましい。リン化合物の例としては、リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、トリメチルホスフェートが特に好ましい。リン化合物の使用量は、生成するポリエステルに対して、10−9〜10−3モルの比率で用いられる。
【0076】
エステル交換反応は、必要に応じて用いられる共重合成分を、加熱装置、攪拌機および留出管を備えた反応槽に仕込み、反応触媒を加えて常圧不活性ガス雰囲気下で攪拌しつつ昇温し、反応により生じたメタノール等の副生物を留去しつつ反応を進行させることによって行う。反応温度は150℃〜270℃、好ましくは160℃〜260℃であり、反応時間は、通常、3〜7時間である。
重合反応は、例えば、上記のエステル交換反応終了後の生成物を用いて、加熱装置、攪拌機、留出管および減圧付加装置を備えた反応槽により実施される。なお、これらの条件が満たされるならば、上記エステル交換反応において使用した同一の反応槽により、引き続き重合反応を実施することもできる。
【0077】
重合反応は、例えば、上記のエステル交換反応終了後の生成物を入れた反応槽内に、触媒を添加した後、反応槽内を徐々に昇温且つ減圧しながら行う。槽内の圧力は、常圧雰囲気下から最終的には0.4kPa以下、好ましくは0.2kPa以下まで減圧する。槽内の温度は、220〜230℃から昇温、最終的には250〜350℃、好ましくは260〜320℃まで昇温、所定のトルクに到達した後、槽底部から反応生成物を押し出して回収する。通常の場合、反応生成物を水中にストランド状に押し出し、冷却した上でカッティングし、ペレット状のポリエステルを得ることができる。しかしながら、重合反応の温度が320℃以上では副生が生成し易くなる。
重合反応終了後、樹脂中の低沸点化合物を133〜13.3Paの圧力、200〜320℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。
【0078】
<ポリエステルカーボネート>
回収した式(I)で表されるモノマーを用いてポリエステルカーボネートを製造することができる。ポリエステルカーボネートは、下記式(II)および(III)で表される単位を含むことが好ましい。式(III)中Yは、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アルキレン基等のジカルボン酸成分由来の単位である。
【0079】
【化14】
【0080】
ポリエステルカーボネートは、BPEFを少なくとも含むジオール成分と、ジカルボン酸および炭酸エステル成分と、塩基性化合物触媒、エステル交換触媒またはその双方からなる混合触媒とを含有する樹脂であることが好ましい。ジヒドロキシ成分およびジカルボン酸成分および炭酸ジエステル成分は、それぞれ単一成分であっても良く、それぞれ2種類以上の化合物を含んでも良い。
【0081】
BPEFとともに使用可能なジオール成分は、エチレングリコール等の脂肪族ジオール等が挙げられる。またトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール等の脂環式ジオール等が挙げられる。また、1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、α,ω−ビス[2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル]ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビスフェノールA等の芳香族ジオール等が挙げられる。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0082】
ジカルボン酸化合物として、テレフタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、tert−ブチルイソフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸等の多環式芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸が挙げられる。また、1,4−シクロジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、テレフタル酸が好ましい。また、これらの誘導体としては酸クロライドやエステル類が用いられる。
【0083】
本発明のポリエステルカーボネートの製造に用いるカーボネート前駆物質としては例えばホスゲン、ジフェニルカーボネート、上記二価フェノール類のビスクロロホーメート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
ポリエステルカーボネートは、式(II)および(III)で表される単位の合計が、全単位中30モル%以上、好ましくは40〜100モル%、より好ましくは50〜90モル%の割合で含まれる。式(II)および(III)で表される単位の合計を前記範囲とすることで、屈折率等の光学特性の優れたポリエステルカーボネートとなる。
上記より式(II)および(III)で表される単位の合計の含有量が、該樹脂中に含まれる全単位に対して、50〜90モル%であることがより好ましい。
【0084】
ポリエステルカーボネート中の式(II)で表される単位の割合は、式(II)および(III)で表される単位の合計量に対して、好ましくは50〜95モル%、より好ましくは60〜90モル%、さらに好ましくは70〜90モル%である。
ポリエステルカーボネートは、下記式で表されるBPEF由来の繰り返し単位の含有量が、全単位に対して30モル%以上、好ましくは40〜100モル%、より好ましくは50〜90モル%である。光学特性の点では、BPEFの含有率は高いほど屈折率が高く好ましいが、一方、高すぎると引っ張り伸びが低下するため、BPEFの含有量は90モル%以下であるのが好ましい。
【0085】
【化15】
【0086】
ポリエステルカーボネートの分子量は、好ましくは7,000〜100,000、より好ましくは8,000〜30,000、さらに好ましくは、8,000〜14,000である。分子量は溶液粘度法で測定する。
【0087】
ポリエステルカーボネートを製造する方法としては、通常のポリエステルカーボネートの製造に用いる方法が任意に採用される。例えばジオールとジカルボン酸またはジカルボン酸クロライドとホスゲンとの反応、またはジオールとジカルボン酸とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応が好ましく採用される。
ジオール、ジカルボン酸またはその酸クロライドとホスゲンとの反応では、非水系で酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えばピリジン、ジメチルアミノピリジン、第三級アミン等が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間が好ましい。
【0088】
エステル交換反応では、不活性ガス存在下にジオールとジカルボン酸またはそのジエステルとビスアリールカーボネートを混合し、減圧下通常120〜350℃、好ましくは150〜300℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には1mmHg以下にして生成したアルコール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。しかしながら、重合温度が、350℃以上ではフェニルビニルエーテルやアセトアルデヒドが副生し易くなり、好ましくない。
また、エステル交換反応では反応促進のために重合触媒を用いることができる。このような重合触媒としてはアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物または重金属化合物を主成分として用い、必要に応じて含窒素塩基性化合物を従成分として用いても良い。
【0089】
アルカリ金属化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0090】
含窒素塩基性化合物としてはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
その他のエステル交換触媒としては亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、オスミウム、アルミニウムの塩が挙げられ、例えば、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、チタンテトラブトキシド(IV)等が用いられる。
これらの触媒は単独で用いても、二種以上併用してもよく、これらの重合触媒の使用量はジオールとジカルボン酸の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で用いられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。また、エステル交換反応ではヒドロキシ末端基を減少するために重縮合反応の後期または終了後に電子吸引性の置換基を持ったジアリールカーボネートを加えてもよい。更に、色相改善のために酸化防止剤や熱安定剤等を加えてもよい。
【0091】
本実施形態のポリエステルカーボネートは、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物については、一般的に、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジ−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜
リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0092】
触媒失活後、樹脂中の低沸点化合物を133〜13.3Paの圧力、200〜320℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。
本発明の製造方法で得られるポリマーには、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤(脂肪酸エステル等)、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、増白剤、紫外線吸収剤、耐候剤、抗菌剤、顔料、染料、充填剤、強化剤、他樹脂やゴム等の重合体、難燃剤等の改質改良剤を適宜添加して用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に断り書きのない場合、部は重量部を表す。なお、評価は次に示す方法で行った。
【0094】
(1)BPEFの純度、不純物量:
Kromasil 100−5−C18 4.6×150mmのカラムにて溶離液メタノール/水の混合液を用いて、カラム温度40℃、検出器254nmで
60%メタノール水/メタノール(100/0)→(グラジエント)→60%メタノール水/メタノール(20分後 12/88)→60%メタノール水/メタノール(30分後 13/87)のグラジエントプログラムにてHPLC分析した。測定は、モノマー10mgをメタノール10mlに溶解させた後、孔径0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、測定を行った。不純物は、検出されるLCピーク面積を含有率とした。
(2)BPEFの色相(溶融ハーゼン色数)
内径25mmの試験管に15gの精製結晶を量り取り、大気下ブロックヒーターで30分間、270℃で加熱溶解した後、JISK0071−1に従い、和光純薬製色度標準液(1000)を希釈して調製した標準比色液と肉眼で比色し、ハーゼン色数を得た。
(3)ペレットb値
ポリマーペレット(ペレット形状は長さ4mm且つ直径1〜3mm程度)をガラスセルに入れ、日本電色色差計SE−2000を用いてペレット色相を測定した。
【0095】
[実施例1]
(分解工程)
攪拌機、温度計および冷却管を付けたガラス製反応器に水酸化ナトリウム221部、イオン交換水410部および9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシフェニル)フルオレンから誘導されるカーボネートユニット(BPEF誘導体)(I)とテレフタル酸ジメチルから誘導されるエステルユニット(DMT誘導体)(II)(モル比で(I):(II)=82:18)のポリエステルカーボネート(PEC)が主成分のポリマー450部を仕込み、そこへトルエン576部、シクロヘキサノン144部を加え、40℃まで昇温し、4時間撹拌した。
【0096】
(回収工程)
得られたスラリー状の分解液にイオン交換水1238部を追加し固体を溶解させ、下層の水層を分離した。残った有機層を洗浄水の導電率20μS/cm以下になるまで、イオン交換水で、65℃以上で水洗を行った。得られた溶液を撹拌しながら20℃以下まで冷却して結晶を析出させた。析出した結晶をろ過により取り出しBPEFの粗生成物である白色の湿結晶478部(純度98.8%)を得た。
【0097】
(精製工程)
得られた粗生成物478部、トルエン1080部および2−ブタノン120部を攪拌機、温度計および冷却管を付けたガラス製反応器に仕込み、撹拌しながら75℃まで加熱し固体を完溶させた。その溶液を、洗浄水の導電率が10μS/cm以下になるまで、イオン交換水で、65℃以上で水洗を行った。有機層を75℃でアドバンテック製No.5Cの濾紙を用いて不溶分を除去した後、得られた溶液を撹拌しながら20℃まで冷却して結晶を析出させた。析出した結晶をろ過により取り出した後に減圧乾燥することにより、BPEFの精製結晶である白色結晶325部(収率78.4%、純度99.5%、溶融ハーゼン色数50)を得た。
また、式(Ia)で表される9−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−9−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(表1中 片末端フェノール)の含有率は、0.12%であった。
【0098】
[実施例2]
分解工程において、分解反応用イオン交換水の仕込量を664部、トルエンの仕込み量を360部、シクロヘキサノンの仕込み量を90部、反応温度を50℃、反応時間を11時間とし、また回収工程において、溶解用イオン交換水の仕込み量を984部にした以外は実施例1と全く同様の操作を行い、白色結晶322部(収率77.7%、純度99.5%、溶融ハーゼン色数60)を得た。
【0099】
[実施例3]
分解工程において、分解反応用イオン交換水の仕込量を664部、反応温度を50℃、反応時間を11時間、溶解用イオン交換水の仕込み量を984部にした以外は実施例2と全く同様の操作を行い、白色結晶322部(収率75.9%、純度99.6%、溶融ハーゼン色数60)を得た。
【0100】
[実施例4]
精製工程において、2−ブタノンの代わりにシクロヘキサノンを使用した以外は実施例3と全く同様の操作を行い、白色結晶303部(収率73.1%、純度99.4%、溶融ハーゼン色数70)を得た。
【0101】
[実施例5]
(精製工程)
実施例1と全く同様の操作で得られた粗生成物478部と、メタノール4050部を攪拌機、温度計および冷却管を付けたガラス製反応器に仕込み、撹拌しながら65℃まで加熱し固体を完溶させた。その溶液を60℃でアドバンテック製No.5Cの濾紙を用いて不溶分を除去した後、得られた溶液を撹拌しながら20℃まで冷却して結晶を析出させた。析出した結晶をろ過により取り出した後に減圧乾燥することにより、BPEFの精製結晶である白色結晶234部(収率56.6%、純度99.5%、溶融ハーゼン色数60)を得た。
【0102】
[実施例6]
分解工程において、シクロヘキサノンの代わりに2−ブタノンを使用した以外は実施例2と同じ操作を行い、白色結晶320部(収率77.2%、純度99.5%、溶融ハーゼン色数70)を得た。
【0103】
[実施例7]
分解工程において、トルエンの仕込み量を2579部にし、シクロヘキサノンを使用しない以外は実施例2と全く同様の操作を行い、白色結晶256部(収率61.9%、純度99.2%、溶融ハーゼン色数70)を得た。
【0104】
[実施例8]
分解工程において、分解反応用イオン交換水の仕込み量を239部、回収工程において、溶解用イオン交換水の仕込み量を1409部にした以外は実施例1の同様の操作を行い、白色結晶289部(収率69.9%、純度99.3%、溶融ハーゼン色数70)を得た。
【0105】
[実施例9]
分解工程において、水酸化ナトリウム221重量部を水酸化カリウム365重量部に、分解反応用イオン交換水の仕込み量を664部、反応時間を6時間、また回収工程において、溶解用イオン交換水の仕込み量を450部にした以外は全く実施例1と同様の操作を行い、白色結晶325部(収率78.4%、純度99.5%、溶融ハーゼン色数50)を得た。
【0106】
[実施例10]
(精製工程)
実施例1と全く同様の操作で得られた再結晶の白色結晶325部とメタノール1350部および2−ブタノン150部を攪拌機、温度計および冷却管を付けたガラス製反応器に仕込み、撹拌しながら65℃まで昇温して固体を完溶させた。その溶液に60℃で活性炭処理を行い、活性炭ろ過後に撹拌しながら20℃以下まで冷却して結晶を析出させた。析出した結晶をろ過により取り出した後に減圧乾燥することで、BPEFの再精製結晶である白色結晶229部(収率55.3%、純度99.6%、溶融ハーゼン色数25)を得た。
【0107】
[実施例11]
分解工程において、BPEFから誘導されるカーボネートユニット(BPEF誘導体)(I)とテレフタル酸ジメチルから誘導されるエステルユニット成分(DMT誘導体)(II)((I):(II)=82:18)のポリエステルカーボネートが主成分のポリマーの代わりに、BPEFから誘導されるカーボネートユニット(BPEF誘導体)(I)と下記式(IV)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるカーボネートユニット(BPA誘導体)((I):(III)=80:20)のポリカーボネートを用いた以外は実施例3と全く同様の操作を行い、BPEFの精製結晶である白色結晶273部(収率75.0%、純度99.5%、溶融ハーゼン色数70)を得た。
【0108】
【化16】
【0109】
[比較例1]
分解工程において、トルエン、シクロヘキサノンの代わりにジクロロメタン1400部を用い、反応時間を40時間にした以外は実施例2と全く同様の操作を行い、白色結晶289部(収率69.8%、純度98.8%、溶融ハーゼン色数80)を得た。
【0110】
[比較例2]
実施例2の分解工程および回収工程と全く同様の操作を行い得られた粗結晶を、減圧乾燥することにより白色結晶349部(収率84.3%、純度98.3%、溶融ハーゼン色数80)を得た。
【0111】
[実施例12](ポリカーボネート)
表1における実施例1の再結晶品のBPEF140.32重量部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)18.27重量部、ジフェニルカーボネート(以下‘’DPC‘’と省略することがある)87.80重量部、炭酸水素ナトリウム5.0×10−4重量部を撹拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、窒素雰囲気101KPaの下、215℃に加熱し、20分間撹拌した。完全溶解後、15分かけて20KPaに調製し、215℃、20KPaの条件下で20分保持し、エステル交換反応を行った。さらに、37.5℃/hrの速度で240℃まで昇温、240℃、16KPaで10分保持した。その後、10分かけて1.3KPaに調製し、240℃、1.3KPaで10分保持した。さらに40分かけて130Pa以下とし、240℃、130Pa以下の条件下で1時間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出した。該ペレットのb値は、3.2であった。
【0112】
[実施例13](ポリエステルカーボネート)
表1における実施例1の再結晶品のBPEF140.32重量部、DMT15.54重量部、DPC54.84重量部、チタンテトラブトキシド13.6×10−3重量部を撹拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気の下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20KPaに調製し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて130Pa以下まで減圧し、250℃、130Pa以下の条件下で1時間撹拌下重合反応を行った。その後、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出した。該ペレットのb値は、4.5であつた。
【0113】
[参考例](ポリエステルカーボネート)
BPEF(本州化学工業製、市販品、純度99.5%、溶融ハーゼン色数40))140.00重量部、DMT15.54重量部、DPC54.84重量部、チタンテトラブトキシド13.6×10−3重量部を撹拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気の下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20KPaに調製し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて130Pa以下まで減圧し、250℃、130Pa以下の条件下で1時間撹拌下重合反応を行った。その後、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出した。該ペレットのb値は、4.3であった。
【0114】
[比較例3](ポリエステルカーボネート)
表1における比較例1の再結晶品のBPEF140.00重量部、DMT15.54重量部、DPC54.84重量部、チタンテトラブトキシド13.6×10−3重量部を撹拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素雰囲気の下、180℃に加熱し、20分間撹拌した。その後、20分かけて減圧度を20KPaに調製し、60℃/hrの速度で250℃まで昇温、エステル交換反応を行った。その後、250℃に保持したまま、120分かけて130Pa以下まで減圧し、250℃、130Pa以下の条件下で1時間撹拌下重合反応を行った。その後、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出した。該ペレットのb値は、14.5で黄褐色に着色した。
実施例12および13の樹脂は、樹脂中にBPEFの不純物が少なく、重合後の色相が極めて良く、市販品のBPEFを使用した参考例と同等のb値をもつ樹脂が得られている。これに対して、比較例3は、樹脂中に9−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−9−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの不純物が多く重合後の色相に劣る。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の製造方法によれば、ポリマー原材料として用いることが可能な色相の良好なモノマーを得ることができる。また、該モノマーを用いて得られたポリマーの品質は、市販のモノマーを用いて製造したポリマーの品質と遜色ない。よって、該ポリマーは、カメラレンズ、プロジェクターレンズ、ピックアップレンズ等の各種光学レンズや光ディスク、光学フィルム、プラセル基板、光カード液晶パネル、ヘッドランプレンズ、OPCバインダー等の光学部材として有用である。