特許第6442355号(P6442355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442355
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】赤外線ヒーター及び赤外線処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20181210BHJP
   H05B 3/68 20060101ALI20181210BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20181210BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20181210BHJP
   B05C 9/12 20060101ALN20181210BHJP
【FI】
   H05B3/10 B
   H05B3/68
   G02B5/22
   G02B5/26
   !B05C9/12
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-88634(P2015-88634)
(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公開番号】特開2016-207505(P2016-207505A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金南 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小牧 毅史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 良夫
【審査官】 根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−349813(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/168229(WO,A1)
【文献】 特開平09−136055(JP,A)
【文献】 特開2013−148310(JP,A)
【文献】 特開昭61−198625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02− 3/18
H05B 3/40− 3/86
G02B 5/20− 5/28
B05C 7/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されると赤外線を放射し所定の反射波長領域の赤外線を吸収可能な発熱体と、
前記発熱体からの赤外線の少なくとも一部を透過する1以上の透過層と、前記反射波長領域の赤外線を前記発熱体に向けて反射する反射部と、を有し、前記発熱体と外部空間に開放された第1空間を隔てて配設されたフィルタ部と、
を備えた赤外線ヒーター。
【請求項2】
前記フィルタ部は、前記透過層として、第1透過層と、該第1透過層からみて前記発熱体とは反対側に該第1透過層と第2空間を隔てて配設された第2透過層と、を有し、
前記第1透過層は、前記反射波長領域の赤外線を透過し、
前記第2透過層は、前記反射部の少なくとも一部であり、前記反射波長領域の赤外線を反射し且つ前記発熱体からの赤外線のうち前記第1透過層を透過した赤外線の少なくとも一部を透過する、
請求項1に記載の赤外線ヒーター。
【請求項3】
前記フィルタ部は、該フィルタ部の外部から前記第2空間を区画する区画部材を有し、
前記反射部は、前記区画部材の少なくとも一部であり前記反射波長領域の赤外線を反射する透過層側反射部材を有する、
請求項2に記載の赤外線ヒーター。
【請求項4】
請求項2又は3のいずれか1項に記載の赤外線ヒーターであって、
前記第2空間は、冷媒を流通可能な冷媒流路である、
を備えた赤外線ヒーター。
【請求項5】
前記1以上の透過層のうち前記発熱体に最も近い最接近透過層は、該発熱体側の表面が前記第1空間に露出しており、
前記発熱体と前記最接近透過層との距離を距離D[cm]とし、前記発熱体を前記最接近透過層に対して垂直方向に該最接近透過層に投影した領域を投影領域とし、該投影領域全体を囲む矩形又は円形の最小の領域の面積を発熱体面積S[cm2]とし(ただし、0cm2<S≦400cm2)、代表寸法L[cm]=2×√(S/π)としたときに、
0.06≦D/L≦0.23である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の赤外線ヒーター。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の赤外線ヒーターであって、
前記発熱体からみて前記透過層とは反対側に配設され、前記反射波長領域の赤外線を反射する発熱体側反射部材、
を備えた赤外線ヒーター。
【請求項7】
前記発熱体は、前記透過層に向けて赤外線を放射可能であり且つ前記反射波長領域の赤外線を吸収可能な平面を有する面状発熱体である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の赤外線ヒーター。
【請求項8】
対象物に赤外線を放射して赤外線処理を行う赤外線処理装置であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の赤外線ヒーターと、
前記第1空間と直接には連通しておらず且つ前記発熱体から放射され前記フィルタ部を透過した後の赤外線により前記赤外線処理を行う空間である処理空間、を形成する炉体と、
を備えた赤外線処理装置。
【請求項9】
前記発熱体及び前記第1空間が前記炉体の外に位置している、
請求項8に記載の赤外線処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線ヒーター及び赤外線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線(波長域0.7〜1000μm)を放射する赤外線ヒーター及びこれを備えた装置としては、種々の構造のものが開発されている。例えば、特許文献1には、ワークに赤外線を照射する赤外線ヒーターと、ワークと赤外線ヒーターとの間に配設された赤外線選択透過フィルタと、を備えた装置が記載されている。この装置では、赤外線選択透過フィルタが、ワークに付されたシール剤に吸収が良好に行われる波長部分を選択透過させ、他の波長部分を反射する。これにより、赤外線選択透過フィルタ自身が加熱されることがなく、自身の加熱による雰囲気温度の上昇に起因するワークの劣化が生じないとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−136055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の装置では、フィルタで反射された赤外線のエネルギーは、シール剤の加熱に利用されない不要なエネルギーとなっていた。そして、この反射された赤外線のエネルギーにより炉壁や炉内が高温化し、これによりフィルタの温度が上昇する場合があった。フィルタの温度が上昇すると、例えばフィルタの耐熱性の観点から赤外線ヒーターの出力や連続使用に制限が生じる場合があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、使用時の発熱体とフィルタ部との温度差を大きくすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の赤外線ヒーターは、
加熱されると赤外線を放射し所定の反射波長領域の赤外線を吸収可能な発熱体と、
前記発熱体からの赤外線の少なくとも一部を透過する1以上の透過層と、前記反射波長領域の赤外線を前記発熱体に向けて反射する反射部と、を有し、前記発熱体と外部空間に開放された第1空間を隔てて配設されたフィルタ部と、
を備えたものである。
【0008】
この赤外線ヒーターでは、発熱体が加熱されると赤外線が放射され、その赤外線が1以上の透過層を含むフィルタ部を通過して例えば対象物へ放出される。このとき、反射部は、所定の反射波長領域の赤外線を反射する反射特性を有している。また、発熱体は反射波長領域の赤外線を吸収可能である。そのため、透過層は発熱体からの赤外線を透過することで、吸収する場合と比較して温度が上昇しにくくなる。一方、発熱体は自身が放射した赤外線の一部を吸収して自身の加熱に用いることができるため、温度が上昇しやすくなる。これらにより、使用時の発熱体とフィルタ部(特に発熱体に最も近い透過層)との温度差を大きくすることができる。なお、発熱体とフィルタ部との温度差が大きくなることで、例えば透過層の温度を耐熱温度以下に保ちつつ発熱体を高温にすることができ、対象物に放射される赤外線のエネルギーを大きくすることができる。また、発熱体の温度が同じでも本発明の赤外線ヒーターではフィルタ部をより低温に保つことができる。また、透過層の温度を耐熱温度以下に保ちつつ発熱体と透過層との距離を小さくすることができ、結果として発熱体と対象物との距離を小さくすることもできる。ここで、前記外部空間は、真空であってもよいし、真空以外の雰囲気であってもよい。
【0009】
本発明の赤外線ヒーターにおいて、前記フィルタ部は、前記透過層として、第1透過層と、該第1透過層からみて前記発熱体とは反対側に該第1透過層と第2空間を隔てて配設された第2透過層と、を有し、前記第1透過層は、前記反射波長領域の赤外線を透過し、前記第2透過層は、前記反射部の少なくとも一部であり、前記反射波長領域の赤外線を反射し且つ前記発熱体からの赤外線のうち前記第1透過層を透過した赤外線の少なくとも一部を透過してもよい。この場合において、前記第2空間は、前記処理空間と直接には連通していなくてもよい。
【0010】
第2透過層を備える態様の本発明の赤外線ヒーターにおいて、前記フィルタ部は、該フィルタ部の外部から前記第2空間を区画する区画部材を有し、前記反射部は、前記区画部材の少なくとも一部であり前記反射波長領域の赤外線を反射する透過層側反射部材を有していてもよい。こうすれば、第2空間に到達した反射波長領域の赤外線を、透過層側反射部材と第2透過層との両方で反射できるため、発熱体の温度をより上昇させやすい。また、透過層側反射部材は区画部材の少なくとも一部であるため、区画部材とは別に透過層側反射部材を設ける場合と比べて赤外線ヒーターの部品点数の増加を抑制できる。
【0011】
第2透過層を備える態様の本発明の赤外線ヒーターにおいて、前記第2空間は、冷媒を流通可能な冷媒流路であってもよい。こうすれば、冷媒によりフィルタ部の温度上昇を抑制して、使用時の発熱体とフィルタ部との温度差をより大きくすることができる。
【0012】
本発明の赤外線ヒーターにおいて、前記1以上の透過層のうち前記発熱体に最も近い最接近透過層は、該発熱体側の表面が前記第1空間に露出しており、前記発熱体と前記最接近透過層との距離を距離D[cm]とし、前記発熱体を前記最接近透過層に対して垂直方向に該最接近透過層に投影した領域を投影領域とし、該投影領域全体を囲む矩形又は円形の最小の領域の面積を発熱体面積S[cm2]とし(ただし、0cm2<S≦400cm2)、代表寸法L[cm]=2×√(S/π)としたときに、0.06≦D/L≦0.23であってもよい。ここで、比D/Lが小さいほど、発熱体から最接近透過層への伝熱は、第1空間内の雰囲気を介した熱伝導に依存し不可避となる。結果、第1空間での熱滞留が大きくなり、最接近透過層の温度が上昇しやすくなる。ここで、比D/Lを0.06以上とすることで、伝導熱流束の過大化を防止し、使用時の発熱体とフィルタ部との間の伝熱量を小さくして、フィルタ部(特に最接近透過層)の温度上昇を十分抑制することができる。また、比D/Lの上昇に伴い、今度は第1空間内の伝熱が対流に依存するようになり、比D/Lが過度に大きくなると、第1空間での対流損失が大きくなり、発熱体の温度が低下しやすくなる。この場合は、比D/Lを0.23以下とすることで、対流熱伝達係数の上昇を防止し、対流損失による発熱体の温度低下を十分抑制することができる。以上により、0.06≦D/L≦0.23とすることで、使用時の発熱体の温度低下を抑制しつつ、発熱体とフィルタ部(特に最接近透過層)との温度差をより大きくすることができる。結果的に、発熱体からの赤外線エネルギーは、より多くがフィルタ部の透過分に回り、対象物に放射され、効率よく対象物の赤外線処理(例えば加熱など)を行うことができる。ここで、「投影領域全体を囲む矩形又は円形の最小の領域の面積」とは、投影領域全体を囲む最小の矩形の領域と最小の円形の領域とを描いたときに、面積が小さい方の領域の面積を意味する。また、「矩形」には正方形や長方形に限らず、平行四辺形やそれ以外の四角形も含む。「円形」には、真円に限らず楕円も含む。また、0.06≦D/L≦0.23を満たした場合の上述した効果がより確実に得られるため、前記投影領域の面積/発熱体面積S≧0.5であることが好ましい。なお、0.06≦D/L≦0.23とする態様の本発明の赤外線ヒーターにおいて、「第1空間が外部空間に開放されている」状態とは、上述した効果(第1空間での熱滞留を抑制してフィルタ部の温度上昇を抑制する効果)が得られる程度以上に、第1空間と外部空間とが雰囲気の出入り自由に連通している状態を意味する。また、前記外部空間は真空以外の雰囲気であればよい。前記外部空間は大気雰囲気であってもよい。すなわち、前記第1空間は大気開放されていてもよい。
【0013】
本発明の赤外線ヒーターは、前記発熱体からみて前記透過層とは反対側に配設され、前記反射波長領域の赤外線を反射する発熱体側反射部材を備えていてもよい。こうすれば、発熱体からみて透過層とは反対側に向かう赤外線を発熱体側反射部材が透過層側に反射することで、発熱体側反射部材が反射した赤外線で発熱体を加熱することができる。そのため、使用時の発熱体とフィルタ部との温度差をより大きくすることができる。なお、発熱体側反射部材は反射波長領域以外の赤外線も反射してもよい。
【0014】
本発明の赤外線ヒーターにおいて、前記発熱体は、前記透過層に向けて赤外線を放射可能であり且つ前記反射波長領域の赤外線を吸収可能な平面を有する面状発熱体であってもよい。こうすれば、例えば発熱体が線状発熱体である場合と比較して反射部で反射された赤外線を吸収しやすくなり、発熱体の温度が上昇しやすくなる。したがって、使用時の発熱体とフィルタ部との温度差をより大きくすることができる。
【0015】
本発明の赤外線処理装置は、
対象物に赤外線を放射して赤外線処理を行う赤外線処理装置であって、
上述したいずれかの態様の本発明の赤外線ヒーターと、
前記第1空間と直接には連通しておらず且つ前記発熱体から放射され前記フィルタ部を透過した後の赤外線により前記赤外線処理を行う空間である処理空間、を形成する炉体と、
を備えたものである。
【0016】
この赤外線処理装置は、上述したいずれかの態様の赤外線ヒーターを備えている。そのため、上述した本発明の赤外線ヒーターと同様の効果、例えば使用時の発熱体とフィルタ部(特に透過層)との温度差を大きくすることができる効果が得られる。
【0017】
本発明の赤外線処理装置において、前記発熱体及び前記第1空間が前記炉体の外に位置していてもよい。こうすれば、第1空間が炉体の外に位置することで透過層(特に発熱体に最も近い透過層)の温度上昇がより抑制されるため、使用時の発熱体とフィルタ部との温度差をより大きくすることができる。なお、前記赤外線ヒーターが前記第2透過層を有する態様である場合、前記第2空間も前記炉体の外に位置していてもよい。こうすれば、フィルタ部の温度上昇がさらに抑制されるため、使用時の発熱体とフィルタ部との温度差をさらに大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】赤外線処理装置100の縦断面図。
図2】赤外線ヒーター10の拡大断面図。
図3】発熱部20の下面図。
図4】投影領域と発熱体面積Sとの関係の説明図。
図5】実験例1〜10における比D/Lと発熱体40及び第1透過層51の温度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、複数の赤外線ヒーター10を備えた赤外線処理装置100の縦断面図である。図2は、赤外線ヒーター10の拡大断面図である。図3は、発熱部20の下面図である。図4は、投影領域と発熱体面積Sとの関係の説明図である。なお、本実施形態において、上下方向,左右方向及び前後方向は、図1〜4に示した通りとする。
【0020】
赤外線処理装置100は、半導体素子90上に形成された対象物(塗膜92)に赤外線を放射して赤外線処理(ここでは塗膜92の乾燥)を行う乾燥炉として構成されており、処理空間81を形成する炉体80と、ベルトコンベア85と、複数の赤外線ヒーター10と、を備えている。炉体80は、略直方体に形成された断熱構造体であり、内部に処理空間81を形成している。炉体80の天井部分には、複数の赤外線ヒーター10(図1では6個)が取り付けられており、この赤外線ヒーター10からの赤外線が処理空間81内に放射される。ベルトコンベア85は、炉体80の左右端を貫通し処理空間81を貫通するベルトを備えており、左から右に向かって半導体素子90を搬送する。半導体素子90上に形成された塗膜92は、例えばシリコーンとトルエンとを含む塗膜であり、乾燥後に半導体素子90の保護膜となるものである。
【0021】
図1図2に示すように、赤外線ヒーター10は、発熱部20と、発熱部20の下方に取り付けられたフィルタ部50と、を備えている。発熱部20は、赤外線ヒーター10の上側を覆うケース22と、加熱されると赤外線を放射する発熱体40と、ケース22内で発熱体40を支持する支持板30と、上下方向で発熱体40及び支持板30とケース22との間に配設された発熱体側反射部材23と、を備えている。
【0022】
ケース22は、発熱体40等を収納する部材であり、下方に向けて開口した略直方体の箱状の部材である。ケース22は、内部に配置された発熱体側反射部材23,支持板30を固定する図示しない固定具を備えている。また、ケース22は、赤外線ヒーター10を図示しない他の部材に取り付けて固定するための図示しない取付具を備えている。
【0023】
発熱体側反射部材23は、発熱体40からみて第1透過層51とは反対側(発熱体40の上側)に配置された板状部材である。発熱体側反射部材23は、発熱体40から放射される赤外線を反射する部材として構成されており、本実施形態では金属(例えばSUSやアルミニウム)で形成されている。
【0024】
支持板30は、発熱体40が巻き付けられることで発熱体40を支持する平板状の部材であり、例えばマイカやアルミナセラミックスなどの絶縁体からなる。支持板30は、図3に示すように、前側に複数(本実施形態では6箇所)形成された前側凸部31と、後側に複数(本実施形態では5箇所)形成された後側凸部32と、を備えている。前側凸部31及び後側凸部32は、下面視で台形状をしており、左右方向に平行な面を有する頂上部分と、頂上部分の左右両側に配設され左右方向から傾斜した(例えば45°)斜面と、を有している。複数の前側凸部31及び複数の後側凸部32は、それぞれ左右方向に定ピッチで配設されており、これにより支持板30の前側及び後側は凹凸状になっている。また、前側凸部31と後側凸部32とは、互いに左右方向に1/2ピッチずれて配設されている。なお、支持板30には孔が形成されており(図3では2箇所)、発熱体40からの赤外線はこの孔を通過して上方の発熱体側反射部材23に到達可能である。
【0025】
発熱体40は、リボン状の発熱体であり、いわゆる面状発熱体として構成されている。発熱体40は、例えばNi−Cr合金などの金属からなる。発熱体40は、第1透過層51側の表面(下面)における反射波長領域(後述)の赤外線の少なくとも一部を吸収可能であり、吸収率が70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。本実施形態では、発熱体40は、波長2μm〜8μmにおける赤外線の吸収率が70%以上とした。本実施形態では、発熱体40は、セラミックス溶射膜で表面がコーティングされており、これにより赤外線の放射率及び吸収率が高められている。セラミックス溶射膜の材質としては、例えばアルミナ,クロミアなどが挙げられる。また、発熱体40は、第1透過層51側の表面(発熱体40の下面)における赤外線の放射率よりも第1透過層51とは反対側の表面(発熱体40の上面)における赤外線の放射率が低いことが好ましい。本実施形態では、発熱体40の下面のみがセラミックス溶射膜でコーティングされており、発熱体40の下面よりも上面の方が赤外線の放射率が低くなっている。発熱体40の上面の赤外線の放射率は、30%以下であることが好ましい。なお、図2図3に示したような支持板30,発熱体40の形状は公知であり、例えば特開2006−261095号公報に記載されている。
【0026】
図3に示すように、発熱体40は、左後方の折り返し端部41から右後方の折り返し端部41までに亘って、支持板30の下面側を前後方向に複数回(本実施形態では12回)通過するように、支持板30に巻き付けられている。より具体的には、発熱体40は、左後方の折り返し端部41から支持板30の下面側で前側凸部31に向かって引き回され、前側凸部31の左側の斜面に沿って折り返されて前側凸部31の上面側を通過している(図3右上の拡大部分参照)。そして、前側凸部31の上面側を通過した発熱体40は、前側凸部31の右側の斜面に沿って折り返されて支持板30の下面側で後側凸部32に向かって引き回され、後側凸部32の斜面に沿って折り返され後側凸部32の上面側を通過して、支持板30の下面側で前側凸部31に向かって引き回される。このようにして、発熱体40は支持板30の下面側を前後方向に通過しながら前側凸部31と後側凸部32とに交互に巻き付けられ、右後方の折り返し端部41まで引き回されている。なお、詳細な図示は省略するが、発熱体40は、折り返し端部41,41の部分で支持板30の上面側に折り返されてさらに引き回されており、発熱体40の両端がケース22に取り付けられた図示しない一対の入力端子にそれぞれ接続されている。この一対の入力端子を介して、発熱体40に外部から電力を供給可能である。発熱体40の下面は、第1透過層51の上面と対向しており、いずれの面も水平方向(前後左右方向)と略平行になるように配設されている。
【0027】
ここで、フィルタ部50が備える1以上の透過層のうち発熱体40に最も近い最接近透過層である第1透過層51と発熱体40との距離を距離D[cm]とし(図2参照)、発熱体40を第1透過層51に対して垂直方向に第1透過層51に投影した領域を投影領域とし、投影領域全体を囲む矩形又は円形の最小の領域の面積を発熱体面積S[cm2]とし(ただし、0cm2<S≦400cm2)、代表寸法L[cm]=2×√(S/π)としたときに、比D/Lの値が0.06≦D/L≦0.23であることが好ましい。比D/Lは値0.08以上としてもよいし、値0.20以下としてもよい。本実施形態では、第1透過層51は平板状の部材であり、発熱体40と第1透過層51とは平行に配設されている。そのため、投影領域は、発熱体40を下方向(発熱体40の下面及び第1透過層51の上面に垂直な方向)から見たときの発熱体40の下面の領域(図3に示した発熱体40の形状の領域)に等しい。そして、この投影領域を囲む矩形の最小の領域は、図4に示す長方形の発熱体領域Eとなる。そして、この長方形の発熱体領域Eの左右方向の長さX(=発熱体40の左端から右端までの長さ)と前後方向の長さY(=発熱体40の前後方向の長さ)との積が、発熱体面積Sとなる。このように、発熱体面積Sは、前後に引き回された発熱体40の左右の隙間など、発熱体40が存在しない部分も含めた面積として定義される。また、代表寸法Lは、発熱体面積Sと同じ面積の円の直径に等しい。なお、本実施形態では発熱体40の投影領域を囲む最小の発熱体領域Eは矩形としたが、例えば発熱体40が円形状に近い場合など投影領域を円形の領域で囲んだ方が発熱体面積Sが小さくなる場合には、投影領域を囲む円形の最小の領域を発熱体領域Eとし、この発熱体領域Eの面積を発熱体面積Sとする。すなわち、発熱体領域E(投影領域全体を囲む矩形又は円形の最小の領域)は、投影領域全体を囲む矩形の最小の領域と投影領域全体を囲む円形の最小の領域とのうち小さい方の領域とする。また、0.06≦D/L≦0.23を満たすことによる効果がより確実に得られるため、投影領域の面積/発熱体面積S≧0.5であることが好ましい。すなわち、図4における発熱体領域Eのうち発熱体40(投影領域)が存在する領域が50%以上であることが好ましい。また、1cm2<S≦400cm2であってもよい。また、特にこれに限定しないが、距離Dは8mm〜30mmとしてもよい。
【0028】
なお、発熱部20とフィルタ部50とは、図示しない接続部材により接続されて、互いの位置関係が固定されている。これにより、発熱体40とフィルタ部50(第1透過層51)とは第1空間47を介して離間している。また、図2に示すようにケース22は第1固定板71と上下に離間しており、第1空間47はケース22と第1固定板71との上下の隙間を介して外部空間(炉体80の外部の空間)に開放されている。発熱体40と第1透過層51は、第1空間47に露出している。なお、本実施形態では、外部空間は大気雰囲気とした。
【0029】
フィルタ部50は、発熱体40からの赤外線の少なくとも一部を透過する透過層として、第1透過層51と、第1透過層51からみて発熱体40とは反対側(下側)に第1透過層51と第2空間63を隔てて配設された第2透過層52と、を備えている。また、フィルタ部50は、反射波長領域の赤外線を発熱体40に向けて反射する反射部55を備えている。反射部55は、第1透過層51及び第2透過層52を固定しフィルタ部50の外部から第2空間63を区画する区画部材58を備えている。また、第2透過層52は、反射部55の一部を構成している。
【0030】
第1透過層51は、下面視で四角形状をした板状の部材である。この第1透過層51は、発熱体40からの赤外線のうち、塗膜92に放射したい波長及び反射波長領域を含む所定の波長領域の赤外線を透過する。本実施形態では、第1透過層51は干渉フィルタ(光学フィルタ)として構成され、図2に示すように基板51aと、基板51aの上面を覆う上側コート層51bと、基板51aの下面を覆う下側コート層51cと、を備えているものとした。上側コート層51bは、バンドパス層として機能する層であり、第1透過層51の上方から入射された光のうち所定の波長領域の赤外線を下方に透過させる。下側コート層51cは、反射防止膜として機能する層であり、基板51aの下面で赤外線が上方に反射するのを抑制する。基板51aの材質としては、シリコンが挙げられる。上側コート層51bの材質としては、セレン化亜鉛,ゲルマニウム,硫化亜鉛などが挙げられる。下側コート層51cの材質としては、ゲルマニウム,一酸化ケイ素,硫化亜鉛などが挙げられる。なお、上側コート層51b及び下側コート層51cの少なくとも一方が、複数種類の材料を積層した多層構造であってもよい。
【0031】
本実施形態では、第1透過層51は、反射波長領域を含む少なくとも波長2μm〜8μmの波長領域の赤外線を透過するものとした。なお、反射波長領域は3.5μm〜4.5μmとした。第1透過層51が赤外線を透過する波長領域は、近赤外線の波長領域(例えば、波長が0.7μm〜3.5μmの領域)のほとんどを含んでいる。例えば、上側コート層51bとして硫化亜鉛とゲルマニウムとを交互に複数層積層したものを用い、下側コート層51cとして硫化亜鉛とゲルマニウムとを交互に複数層積層したものを用い、基板51a,上側コート層51bb,下側コート層51cの厚さを適宜調整することで、そのようなフィルタ特性が得られる。第1透過層51が透過する赤外線の波長領域は、1μm〜10μmとしてもよい。第1透過層51が透過する赤外線の波長領域における透過率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。第1透過層51は、赤外線(例えば、波長域0.7〜1000μm)の吸収率が低いことが好ましい。例えば、第1透過層51の赤外線の吸収率は30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。第1透過層51は、反射波長領域の赤外線の透過率が70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。第1透過層51は、赤外線の反射率が30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。また、第1透過層51は、反射波長領域の赤外線の反射率が30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0032】
第2透過層52は、下面視で四角形状をした板状の部材である。第2透過層52は、第1透過層51と第2空間63を隔てて上下に離間して配設されている。第2透過層52の上面は第1透過層51の下面と対向しており、第2透過層52は第1透過層51と略平行に配設されている。この第2透過層52は、赤外線の透過率のピークである第1透過ピークと、第1透過ピークよりも長波長である第2透過ピークと、第1透過ピークの波長と第2透過ピークの波長との間の所定の反射波長領域の赤外線を反射する反射特性と、を有している。本実施形態では、第2透過層52は第1透過層51と同様に干渉フィルタ(光学フィルタ)として構成され、図2に示すように基板52aと、基板52aの上面を覆う上側コート層52bと、基板52aの下面を覆う下側コート層52cと、を備えているものとした。上側コート層52bは、バンドパス層として機能する層であり、第2透過層52の上方から入射された光のうち第1,第2透過ピークの波長及びその周辺の波長領域の赤外線を下方に透過させる。また、上側コート層52bは、反射波長領域の赤外線については上方に反射する。下側コート層52cは、反射防止膜として機能する層であり、基板52aの下面で赤外線(特に、反射波長領域以外の赤外線)が上方に反射するのを抑制する。基板52a,上側コート層52b,下側コート層52cの材質としては、上述した第1透過層51の基板51a,上側コート層51b,下側コート層51cと同様の材質を用いることができる。なお、上側コート層52b及び下側コート層52cの少なくとも一方が、複数種類の材料を積層した多層構造であってもよい。
【0033】
本実施形態では、第2透過層52の第1透過ピークの波長が2μm〜3μmであり、第2透過ピークの波長が5μm〜8.5μmであり、反射波長領域が上述したように3.5μm〜4.5μmであるものとした。例えば、上側コート層52bとして硫化亜鉛とゲルマニウムとを交互に複数層積層したものを用い、下側コート層52cとして硫化亜鉛とゲルマニウムとを交互に複数層積層したものを用い、基板52a,上側コート層52b,下側コート層52cの厚さを適宜調整することで、そのようなフィルタ特性が得られる。第1透過ピーク及び第2透過ピークの赤外線の透過率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。反射波長領域における赤外線の反射率は、70%以上が好ましく、80%以上,90%以上がより好ましい。また、第2透過層52は、反射波長領域内の少なくとも一部における赤外線の透過率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。反射波長領域全体に亘って赤外線の透過率が10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
また、特にこれに限定するものではないが、第2透過層52は、波長2μm〜3μmの波長領域の赤外線の透過率が40%以上であってもよい。第2透過層52は、波長5μm〜8.5μmの波長領域の赤外線の透過率が80%以上であってもよい。第2透過層52は、波長8.5μm〜9.5μmの波長領域の赤外線の透過率が70%以上であってもよい。第2透過層52は、波長9.5μm〜13μmの波長領域の赤外線の透過率が60%以上であってもよい。
【0035】
区画部材58は、図2に示すように、冷却ケース60と、第1固定板71と、第2固定板72と、を備えている。第1固定板71,第2固定板72は、それぞれ第1透過層51,第2透過層52を載置して固定する矩形の枠状部材である。第2固定板72は、炉体80の上部に取り付けられている。冷却ケース60は、第1透過層51と第2透過層52との間に配設されている。冷却ケース60は、上下に開口した略直方体の箱状の部材である。冷却ケース60の上下の開口は、第1透過層51,第1固定板71,第2透過層52,及び第2固定板72で塞がれている。そのため、第2空間63は、冷却ケース60の前後左右の壁部と、第1透過層51及び第2透過層52とで囲まれた空間として形成されている。また、冷却ケース60は、左右に冷媒出入口61を有している。左側の冷媒出入口61は、外部空間に配置された冷媒供給源95(冷却手段)と配管で接続されている。冷媒供給源95は、左側の冷媒出入口61を介して第2空間63に冷媒を流通させる。第2空間63を通過した冷媒は、右側の冷媒出入口61を通過して外部へ流れるようになっている。冷媒供給源95が供給する冷媒は、例えば空気や不活性ガスなどの気体であり、第1透過層51,第2透過層52,区画部材58に接触して熱を奪うことによりフィルタ部50を冷却する。なお、第2空間63は、本実施形態では、右側の冷媒出入口61を介して外部空間と直接に連通している。ただし、右側の冷媒出入口61に配管などが接続されて第2空間63が外部空間と直接には連通していなくてもよい。
【0036】
この区画部材58は、本実施形態では、発熱体40から放射される赤外線を反射する部材として構成されており、本実施形態では金属(例えばSUSやアルミニウム)で形成されている。区画部材58は本発明の透過層側反射部材に相当する。なお、冷却ケース60の内周面すなわち第2空間63に露出した赤外線の反射面は、発熱体40の下面や第2透過層52の上面に略垂直とした。ただし、冷却ケース60の形状はこれに限られない。例えば、冷却ケース60の内周面が垂直方向から傾斜(例えば、下方ほど第2空間63が狭くなる方向に傾斜)していてもよい。
【0037】
なお、炉体80の上面(天井部分)には、赤外線ヒーター10と同じ数の複数の開口が形成されており、複数の赤外線ヒーター10はこの開口を塞ぐように炉体80の上部に取り付けられている。そのため、第2透過層52の下面は、処理空間81に露出している。処理空間81と第1空間47とは、フィルタ部50で仕切られており、直接には連通していない。ただし、処理空間81,第1空間47はいずれも赤外線処理装置100の外部空間には連通しているため、外部空間を介してこれらは互いに連通している。同様に、処理空間81と第2空間63とは、第2透過層52及び第2固定板72で仕切られており、直接には連通していない。ただし、処理空間81,第2空間63はいずれも赤外線処理装置100の外部空間には連通しているため、外部空間を介してこれらは互いに連通している。同様に、第1空間47と第2空間63とは、外部空間を介して連通しているが、直接には連通していない。また、赤外線ヒーター10は、炉体80の天井よりも上方に飛び出すように配置されている。そのため、発熱体40,第1空間47,フィルタ部50は炉体80の外に位置している。
【0038】
こうして構成された赤外線処理装置100の使用例を以下に説明する。まず、図示しない電源を赤外線ヒーター10の入力端子に接続し、発熱体40の温度が予め設定された温度(ここでは700℃とする)になるように発熱体40に電力を供給する。通電された発熱体40は加熱により赤外線を放射する。また、ベルトコンベア85により、予め塗膜92を上面に形成した半導体素子90を搬送する。これにより、半導体素子90は炉体80の左側から炉体80内に搬入され、処理空間81を通過して炉体80の右側から搬出される。そして、塗膜92は、処理空間81を通過する間に赤外線ヒーター10からの赤外線によって乾燥(トルエンが蒸発)し、保護膜となる。
【0039】
ここで、発熱体40が加熱されると、主に発熱体40の下面からの赤外線が、下方のフィルタ部50(第1透過層51)に向かって放出される。この赤外線は、第1透過層51の上面にほぼ垂直に入射される。そして、この発熱体40からの赤外線のうち反射波長領域内の赤外線は、第1透過層51を透過した後、反射部55で反射されて上方に向かい、発熱体40に吸収される(図1の実線矢印参照)。より具体的には、第1透過層51を透過して第2空間63内に到達した反射波長領域の赤外線が、区画部材58のうち第2空間63に露出する部分(区画部材58の内周面)や第2透過層52で反射されて上方に向かい、発熱体40に吸収される。これにより、フィルタ部50(主に反射部55)で反射された赤外線は発熱体40の加熱に用いられる。そのため、発熱体40を700℃に加熱するために外部から投入するエネルギー(電力)が少なくてすむ。換言すると、発熱体40の温度が上昇しやすくなる。一方、第1透過層51は反射波長領域の赤外線を透過し、反射部55(第2透過層52及び区画部材58)は反射波長領域の赤外線を反射するため、これらが例えば反射波長領域の赤外線を吸収してしまう場合と比較して、フィルタ部50の温度上昇が抑制される。また、第1空間47が外部空間に開放されていることで、第1空間47での熱滞留が抑制されて第1透過層51の温度上昇が抑制される。このように、赤外線ヒーター10は、発熱体40の温度が上昇しやすく、且つフィルタ部50の温度が上昇しにくくなっている。これらにより、使用時の発熱体40とフィルタ部50(特に第1透過層51)との温度差が大きくなりやすい。
【0040】
また、発熱体40からの赤外線のうち反射波長領域以外の波長領域の赤外線は、フィルタ部50(第1透過層51及び第2透過層52)を通過して(図1の破線矢印参照)、処理空間81内に放射される。そして、処理空間81内に放射される赤外線は、フィルタ部50(特に第2透過層52)の上述したフィルタ特性により、2つの放射ピークを有し、反射波長領域(3.5μm〜4.5μm)の赤外線をほとんど含まない。ここで、トルエンは、例えば波長3.3μm,波長6.7μmなどに赤外線の吸収ピークを有する。そのため、この2つの吸収ピーク付近の波長の放射ピークを有する赤外線を赤外線ヒーター10が処理空間81内に放射することで、塗膜92から効率よくトルエンを蒸発させることができる。そして、トルエンが蒸発することで、半導体素子90の表面にシリコーンからなる保護膜を形成することができる。このように、本実施形態の赤外線ヒーター10では、赤外線処理(塗膜92の乾燥)を効率よく行うための波長領域の赤外線についてはフィルタ部50を透過して塗膜92に放射することができる。一方、反射波長領域の赤外線は、トルエンの吸収ピークから外れており蒸発にあまり寄与しない不要な波長領域の赤外線である。そのため、赤外線ヒーター10は、反射波長領域の赤外線を処理空間81内に放射せず上記のように反射部55が反射することで、発熱体40の加熱に用いるようにしている。なお、第1透過層51及び第2透過層52のフィルタ特性が同じであっても、発熱体40の温度が異なることで処理空間81内に放射される赤外線は放射ピークなどの波長特性が変化する。そのため、発熱体40の温度を変えることで処理空間81内に放射される赤外線の2つの放射ピークの波長はある程度調整することができる。使用時の発熱体40の温度は、例えば対象物の吸収ピークの波長と処理空間81内に放射される赤外線の放射ピークとがなるべく近くなるように、対象物に応じて適宜定めることができる。
【0041】
以上説明した本実施形態の赤外線処理装置100によれば、透過層(第1透過層51及び第2透過層52)が発熱体40からの赤外線を透過し、反射部55が反射波長領域の赤外線を反射する反射特性を有しており、発熱体40が反射波長領域の赤外線を吸収可能である。そのため、第1透過層51は発熱体40からの赤外線を透過し、第2透過層52は発熱体40からの赤外線を一部透過及び一部反射することで、吸収する場合と比較して温度が上昇しにくくなる。一方、発熱体40は自身が放射した赤外線の一部を吸収して自身の加熱に用いることができるため、温度が上昇しやすくなる。これらにより、使用時の発熱体40とフィルタ部50(特に発熱体40に最も近く温度上昇しやすい透過層である第1透過層51)との温度差を大きくすることができる。なお、発熱体40とフィルタ部51との温度差が大きくなることで、例えば第1透過層51の温度を耐熱温度以下に保ちつつ発熱体40を高温にすることができ、対象物(塗膜92)に放射される赤外線のエネルギーを大きくすることができる。また、発熱体40の温度が同じでも本発明の赤外線処理装置100ではフィルタ部50をより低温に保つことができる。また、第1透過層51の温度を耐熱温度以下に保ちつつ距離Dを小さくすることができ、結果として発熱体40と塗膜92との距離を小さくすることもできる。なお、本実施形態では、外部空間が大気雰囲気であるため、第1空間47が大気開放されている。このように、外部空間が真空以外の雰囲気である場合、第1空間47が外部空間に開放されていることで、第1空間47での熱滞留が抑制されて第1透過層51の温度上昇がより抑制される効果が得られる。
【0042】
また、フィルタ部50は、発熱体からの赤外線の少なくとも一部を透過する透過層として、第1透過層51と、第1透過層51からみて発熱体40とは反対側に第1透過層51と第2空間63を隔てて配設された第2透過層52と、を有している。また、第1透過層51は、反射波長領域の赤外線を透過する。そして、第2透過層52は、反射部55の一部であり、反射波長領域の赤外線を反射し且つ発熱体40からの赤外線のうち第1透過層51を透過した赤外線の少なくとも一部を透過する。そのため、第2透過層52によって反射波長領域の赤外線を発熱体40に反射することができる。なお、上述したように、第1透過層51は反射波長領域を含む波長領域の赤外線を透過する。一方、第2透過層52は反射波長領域の赤外線を反射しつつ他の波長領域の赤外線を透過する。ここで、一般に、幅広い波長領域に亘って赤外線を透過する(幅広い波長領域に亘って赤外線の透過率が高い)干渉フィルタほど、赤外線の吸収率を低くしやすい傾向にある。例えば、第1透過層51のように反射波長領域も含む波長2μm〜8μmの波長領域全体に亘って赤外線を透過する干渉フィルタは、第2透過層52のように波長2μm〜8μmの波長領域の一部(反射波長領域)の赤外線を反射する(反射波長領域の透過率が低い)干渉フィルタと比べて、赤外線の吸収率を低くしやすい。そのため、例えば第1透過層51が第2透過層52と同様に反射波長領域の赤外線を反射する反射特性を有すると、赤外線の吸収率が高くなることで第1透過層51の温度が上昇しやすくなる場合がある。本実施形態では、フィルタ部50が複数の透過層を備える場合に、発熱体40に最も近い第1透過層51については反射特性を有さない(幅広い波長領域の赤外線を透過する)干渉フィルタとすることで、発熱体40に最も近く温度上昇しやすい透過層である第1透過層51の温度上昇をより抑制している。そして、第2透過層52が反射波長領域の赤外線を反射することで発熱体40の温度を上昇しやすくしつつ、第2透過層52は第1透過層51と比べて発熱体40から離れた位置にあるため、第2透過層52自身の温度は上昇しにくくしている。
【0043】
さらに、フィルタ部50は、フィルタ部50の外部から第2空間63を区画する区画部材58を有し、反射部55は、反射波長領域の赤外線を反射する透過層側反射部材(区画部材58)を有している。そのため、第2空間63に到達した反射波長領域の赤外線を、透過層側反射部材と第2透過層52との両方で反射できるため、発熱体40の温度をより上昇させやすい。特に、本実施形態では、第2空間63に露出する部材は第1透過層51を除いて全て反射部55である。そのため、第2空間63内の反射波長領域の赤外線は第1透過層51側(上方)以外には逃げにくく、発熱体40側により向かいやすい。また、透過層側反射部材は区画部材58であるため、区画部材58とは別に透過層側反射部材を設ける場合と比べて赤外線処理装置100の部品点数の増加を抑制できる。
【0044】
さらにまた、赤外線ヒーター10において、第2空間63は、冷媒を流通可能な冷媒流路となっている。そのため、冷媒によりフィルタ部50の温度上昇を抑制して、使用時の発熱体40とフィルタ部50との温度差をより大きくすることができる。また、フィルタ部50を低温に保つことで、炉体80や処理空間81の温度上昇を抑制することもできる。
【0045】
そしてまた、赤外線ヒーター10において、フィルタ部50が備える1以上の透過層のうち発熱体40に最も近い最接近透過層(第1透過層51)は、発熱体40側の表面(上面)が第1空間47に露出している。そして、赤外線ヒーター10は、0.06≦D/L≦0.23を満たしている。ここで、比D/Lが小さいほど、発熱体40から最接近透過層(第1透過層51)への伝熱は、第1空間47内の雰囲気を介した熱伝導に依存し不可避となる。結果、第1空間47での熱滞留が大きくなり、最接近透過層(第1透過層51)の温度が上昇しやすくなる。ここで、比D/Lを0.06以上とすることで、伝導熱流束の過大化を防止し、使用時の発熱体40とフィルタ部50との間の伝熱量を小さくして、フィルタ部50(特に第1透過層51)の温度上昇を十分抑制することができる。また、比D/Lの上昇に伴い、今度は第1空間47内の伝熱が対流に依存するようになり、比D/Lが過度に大きくなると、第1空間47での対流損失が大きくなり、発熱体40の温度が低下しやすくなる。この場合は、比D/Lを0.23以下とすることで、対流熱伝達係数の上昇を防止し、対流損失による発熱体40の温度低下を十分抑制することができる。以上により、0.06≦D/L≦0.23とすることで、使用時の発熱体40の温度低下を抑制しつつ、発熱体40とフィルタ部50(特に第1透過層51)との温度差をより大きくすることができる。結果的に、発熱体40からの赤外線エネルギーは、より多くがフィルタ部50の透過分に回り、対象物(塗膜92)に放射され、効率よく塗膜92の赤外線処理を行うことができる。
【0046】
そしてまた、赤外線ヒーター10は、発熱体40からみて第1透過層51とは反対側に配設され反射波長領域の赤外線を反射する発熱体側反射部材23を備えている。そのため、発熱体40からみて第1透過層51とは反対側(上方)に向かう赤外線を発熱体側反射部材23が第1透過層51側(下方)に反射することで、発熱体側反射部材23が反射した赤外線で発熱体40を加熱することができる。そのため、使用時の発熱体40とフィルタ部50との温度差をより大きくすることができる。
【0047】
そしてまた、発熱体40は、第1透過層51に向けて赤外線を放射可能であり且つ反射波長領域の赤外線を吸収可能な平面を有する面状発熱体である。そのため、例えば発熱体40が線状発熱体である場合と比較して反射部55で反射された赤外線を吸収しやすくなり、発熱体40の温度が上昇しやすくなる。したがって、使用時の発熱体40とフィルタ部50との温度差をより大きくすることができる。
【0048】
そしてまた、赤外線処理装置100は、赤外線ヒーター10と、第1空間47と直接には連通しておらず且つ発熱体40から放射されフィルタ部50を透過した後の赤外線により赤外線処理を行う空間である処理空間81、を形成する炉体80と、を備えている。
【0049】
そしてまた、発熱体40及び第1空間47が炉体80の外に位置している。これにより、第1空間47が炉体80の外に位置することで第1透過層51の温度上昇がより抑制されるため、使用時の発熱体40とフィルタ部50との温度差をより大きくすることができる。また、第2空間63も炉体80の外に位置しているため、フィルタ部50の温度上昇がさらに抑制される。これにより、使用時の発熱体40とフィルタ部50との温度差をさらに大きくすることができる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、赤外線処理装置100は冷媒供給源95を備えるものとしたが、これに限られない。この場合、第2空間63は、密閉空間としてもよいし、冷媒出入口61を介して外部空間と連通していてもよい。また、第2空間63の雰囲気は、真空であってもよいし、真空以外の雰囲気であってもよい。
【0052】
上述した実施形態では、区画部材58全体が赤外線を反射する部材であり、区画部材58全体が本発明の透過層側反射部材に相当したが、これに限られない。赤外線を反射可能な部材である透過層側反射部材は、区画部材58の少なくとも一部であればよい。例えば、区画部材58のうち冷却ケース60のみが反射波長領域の赤外線を反射可能であってもよい。また、透過層側反射部材は、少なくとも反射波長領域の赤外線を反射すればよい。なお、区画部材58が赤外線を反射しない部材であってもよい。すなわち、反射部55は透過層側反射部材を備えなくてもよい。こうしても、上述した実施形態では赤外線ヒーター10の反射部55が第2透過層52を有するため、反射波長領域の赤外線を反射して発熱体40の温度を上昇させることはできる。また、フィルタ部50は区画部材58を有さなくてもよい。例えば、フィルタ部50が第1固定板71と第2固定板72を備えるが冷却ケース60を備えなくてもよい。その代わりに、第1固定板71と第2固定板72との間に両者を離間しつつ支持する部材を配設してもよい。区画部材58がない場合、第2空間63は外部空間に直接に連通していてもよいし、外部空間に開放されていてもよい。
【0053】
上述した実施形態では、第2透過層52は発熱体40と略平行に配設され、発熱体40からの赤外線を発熱体40に向けて直接的に反射しやすくなっているが、これに限られない。反射部55全体として、発熱体40に赤外線を反射できればよい。例えば、第2透過層52で反射した赤外線が区画部材58で反射されることで反射波長領域の赤外線が発熱体40に反射されてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、第1透過層51は反射波長領域の赤外線を透過するが、発熱体40からの赤外線の少なくとも一部を透過すればよく、反射波長領域の赤外線を反射してもよい。例えば、第1透過層51が第2透過層52と同じフィルタ特性であってもよい。ただし、上述したように、第1透過層51の赤外線の吸収率を低くして温度上昇をより抑制しやすいため、第1透過層51が赤外線の反射特性を有さない(幅広い波長領域に亘って赤外線を透過する)ことが好ましい。
【0055】
上述した実施形態では、フィルタ部50は第1透過層51及び第2透過層52を備えたが、これに限らず、フィルタ部50は1以上の透過層を有していればよい。例えば、第1透過層51が反射波長領域の赤外線を反射する反射特性を有している場合、第2透過層52がなくてもよい。この場合、第1透過層51は反射部55の少なくとも一部を兼ねることになる。また、透過層側反射部材(例えば区画部材58)が発熱体40に向けて反射波長領域の赤外線を反射可能である場合は、第1透過層51が反射特性を有さなくとも、第2透過層52を省略可能である。
【0056】
上述した実施形態では、フィルタ部50は第1透過層51及び第2透過層52を備えたが、これに限られない。例えば、フィルタ部50が発熱体40からの赤外線の少なくとも一部を透過可能な透過層をさらに有していてもよい。例えば、フィルタ部50は、第1透過層51よりも発熱体40側に近い透過層をさらに備えていてもよい。この場合、第1透過層51ではなく発熱体40に最も近い透過層が最接近透過層となる。
【0057】
上述した実施形態では、第1透過層51の上面が第1空間47に露出しているが、これに限られない。フィルタ部50が発熱体40と第1空間47を隔てて配設されていればよい。例えば、フィルタ部50が第1透過層51とは別に最接近透過層を有する場合には、最接近透過層の上面が第1空間47に露出していてもよい。
【0058】
上述した実施形態では、透過層側反射部材(区画部材58)は金属で形成されていたが、第1透過層51を透過した反射波長領域の赤外線を反射できれば金属に限られない。例えば、区画部材58の内周面が赤外線を反射する反射コートで覆われていてもよい。この場合、透過層側反射部材全体が赤外線を反射可能な材質である必要はない。発熱体側反射部材23についても同様に、少なくとも反射波長領域の赤外線を反射できればよい。例えば、発熱体側反射部材23の下面が反射コートで覆われていてもよい。
【0059】
上述した実施形態では第1透過層51は基板51aの表面に上側コート層51b及び下側コート層51cを形成したものとしたが、これに限られない。第1透過層51が上述したフィルタ特性を少なくとも有していれば、上側コート層51bと下側コート層51cとの少なくとも一方を省略したりしてもよい。第2透過層52についても同様である。なお、第1透過層51のフィルタ特性は、発熱体40からの赤外線の少なくとも一部を透過するものであればよい。第2透過層52のフィルタ特性は、反射波長領域の赤外線を反射し且つ発熱体40からの赤外線のうち第1透過層51を透過した赤外線の少なくとも一部を透過するものであればよい。
【0060】
上述した実施形態では、第2透過層52の第1透過ピークの波長が2μm〜3μmであり、第2透過ピークの波長が5μm〜8.5μmであり、反射波長領域が3.5μm〜4.5μmであるものとしたが、これに限られない。例えば第2透過層52の基板52a,上側コート層52b,下側コート層52cの膜厚などを適宜調整して、第1透過ピークの波長、第2透過ピークの波長、反射波長領域、のうち1以上を上述した実施形態とは異ならせてもよい。第1透過ピークの波長及び第2透過ピークの波長は、赤外線処理を行う対象物に放射したい波長(対象物の赤外線の吸収ピークなど)になるべく近付くようにすることが好ましい。また、反射波長領域は、赤外線処理に不要な波長領域とすることが好ましい。
【0061】
発熱体40は、上述した実施形態に限定されない。例えば、発熱体40は下面がセラミックス溶射膜でコーティングされたものとしたが、下面及び上面がコーティングされていてもよいし、セラミックス溶射膜を備えないものとしてもよい。また、発熱体40は支持板30に巻き付けられたリボン状の面状発熱体としたが、これに限られない。例えば、発熱体40が金属板を打ち抜き加工することで形成されたジグザグの面状発熱体であってもよい。あるいは、発熱体40が線状の発熱体であってもよい。また、発熱体40は支持板30に巻き付けられて支持されるものとしたが、発熱体40を貫通するボルトなどを介して発熱体40が支持板30に取り付けられていてもよい。
【0062】
上述した実施形態では、第1透過層51は下面視で四角形状をした板状の部材としたが、これに限らず例えば円板状の部材であってもよい。第2透過層52についても同様である。
【0063】
上述した実施形態では、赤外線ヒータ10は発熱体側反射部材23を備えるものとしたが、発熱体側反射部材23を備えない代わりにケース22が赤外線を反射する材料で構成されていてもよい。また、例えば発熱体側反射部材23の下面が赤外線を反射する反射コートで覆われていてもよい。また、発熱体側反射部材23を備えず且つケース22が赤外線を反射しないなど、赤外線ヒーター10は発熱体40の上方に発熱体側反射部材を備えなくてもよい。
【0064】
上述した実施形態では、赤外線処理装置100において、赤外線ヒーター10を炉体80の上部に配設し、処理空間81に第2透過層52が露出するようにしたが、これに限られない。例えば、赤外線ヒーター10を炉体80の内側に配置してもよい。この場合も、例えば配管や仕切り部材などを用いて第1空間47が処理空間81と直接には連通せず且つ外部空間には開放されるようにすればよい。同様に、区画部材58及び第2透過層52が炉体80の内側に配置され、炉体80の上面(天井部分)の開口を第1透過層51が塞ぐようにしてもよい。すなわち、第1透過層51及び第1空間47は炉体80の外に位置し、第2空間63は炉体80の内側に位置していてもよい。
【実施例】
【0065】
以下には、赤外線ヒーター及びこれを備えた赤外線処理装置を具体的に作製した例を実施例として説明する。実験例1〜10が本発明の赤外線処理装置に相当する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実験例1〜5]
実験例1〜5では、比D/Lを表1に示すように種々変更しつつ、赤外線ヒーターを備えた赤外線処理装置を作成した。なお、赤外線ヒーターは、第2空間63が左右の冷媒出入口61を介して外部空間と直接に連通している状態とした点以外は赤外線ヒーター10と同様の構成とした。第1透過層51及び第2透過層52は、いずれも上述した実施形態の第1透過層51及び第2透過層52と同じ材質及びフィルタ特性とした。なお、第1透過層51の反射波長領域の赤外線の透過率は80%とし、反射波長領域の赤外線の反射率は15%とし、反射波長領域の赤外線の吸収率は5%とした。第1透過層51の波長2〜8μmの赤外線の透過率は80%とし、波長2〜8μmの赤外線の反射率は15%とし、波長2〜8μmの赤外線の吸収率は5%とした。第2透過層52の反射波長領域の赤外線の透過率は10%とし、反射波長領域の赤外線の反射率は80%とし、反射波長領域の赤外線の吸収率は10%とした。第2透過層52の第1透過ピークは波長2.5μmとし、第1透過ピークの赤外線の透過率は80%とし、第1透過ピークの赤外線の反射率は10%とし、第1透過ピークの赤外線の吸収率は10%とした。第2透過層52の第2透過ピークは波長5.5μmとし、第2透過ピークの赤外線の透過率は80%とし、第2透過ピークの赤外線の反射率は10%とし、第2透過ピークの赤外線の吸収率は10%とした。また、赤外線処理装置は、冷媒供給源95を備えないものとし、炉体80に赤外線ヒーターが1つだけ取り付けられている状態とした。発熱体40は、図3,4に示した形状とし、代表寸法Lを135.4mmとした。発熱体40は、Ni−Cr合金製とし、第1透過層51側の表面がアルミナのセラミックス溶射膜でコーティングされているものとした。外部空間は大気雰囲気とした。
【0067】
[実験例6〜10]
実験例6〜10では、比D/Lを表1に示すように種々変更しつつ、赤外線ヒーターを備えた赤外線処理装置を作成した。なお、実験例6〜10の赤外線ヒーターは、第1透過層51及び第2透過層52のフィルタ特性を、実験例1〜5の第2透過層52と同じとした。すなわち、第1透過層51は、反射波長領域(3.5μm〜4.5μm)の赤外線を反射するものとした。それ以外の点は、実験例1〜5と同様の構成とした。なお、実験例6〜10の各々の比D/Lの値は、実験例1〜5の各々と対応させて同じ値とした。
【0068】
[評価試験]
実験例1〜10の赤外線処理装置において、発熱体40に約300Wの電力を通電した状態で温度が安定するのを待った後、発熱体40及び第1透過層51の温度を測定した。実験例1〜10の距離D,比D/L,測定した各温度を、表1にまとめて示す。
【0069】
【表1】
【0070】
図5は、実験例1〜10における比D/Lと発熱体40及び第1透過層51の温度との関係を示すグラフである。表1及び図5からわかるように、比D/Lが0.06以上0.23以下である実験例1〜10のいずれも、使用時の発熱体40とフィルタ部50(第1透過層51)との温度差を大きくすることができていた。また、比D/Lが大きいほど、第1透過層51の温度が低下し発熱体40と第1透過層51との温度差が大きくなる傾向が見られた。比D/Lが小さいほど、発熱体40の温度が低下しにくい傾向が見られた。また、第1透過層51が反射波長領域の赤外線を透過するフィルタ特性を有する実験例1〜5では、第1透過層51が反射波長領域の赤外線を反射するフィルタ特性を有する実験例6〜10と比べて、比D/Lが同じでも第1透過層51の温度上昇をより抑制できていた。これは、実験例1〜5の第1透過層51が、実験例6〜10の第1透過層51と比べて赤外線の吸収率が低いためと考えられる。
【符号の説明】
【0071】
10 赤外線ヒーター、20 発熱部、22 ケース、23 発熱体側反射部材、30 支持板、31 前側凸部、32 後側凸部、40 発熱体、41 折り返し端部、47 第1空間、50 フィルタ部、51 第1透過層、51a 基板、51b 上側コート層、51c 下側コート層、52 第2透過層、52a 基板、52b 上側コート層、52c 下側コート層、55 反射部、58 区画部材、60 冷却ケース、61 冷媒出入口、63 第2空間、71 第1固定板、72 第2固定板、80 炉体、81 処理空間、85 ベルトコンベア、90 半導体素子、92 塗膜、95 冷媒供給源、100 赤外線処理装置、E 発熱体領域。
図1
図2
図3
図4
図5