特許第6442364号(P6442364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6442364電気化学反応単位および燃料電池スタック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442364
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】電気化学反応単位および燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20181210BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20181210BHJP
   H01M 8/0282 20160101ALI20181210BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20181210BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20181210BHJP
【FI】
   H01M8/0247
   H01M8/0206
   H01M8/0282
   H01M8/2465
   H01M8/12 101
   H01M8/12 102A
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-117491(P2015-117491)
(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-4760(P2017-4760A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年9月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 駿太
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
(72)【発明者】
【氏名】八木 宏明
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−022891(JP,A)
【文献】 特開2015−032559(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/037217(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/0297
H01M 8/08 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、
金属により形成され、前記第1の方向に貫通する貫通孔を取り囲む部分である貫通孔周囲部が、ロウ材を含む接合部を介して前記単セルの周縁部と接合され、前記空気極に面する空気室と前記燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、
ガラスを含み、前記セパレータの表面と前記単セルの表面との両方に接触して前記空気室と前記燃料室との間をシールするガラスシール部と、
を備える電気化学反応単位において、
前記セパレータは、
前記貫通孔周囲部を含む第1の平坦部と、
前記第1の平坦部より外周側に位置する第2の平坦部と、
前記第1の方向における位置が前記第1の平坦部および前記第2の平坦部とは異なる部分を含み、前記第1の平坦部と前記第2の平坦部とを連結し、かつ、前記第1の平坦部と前記第2の平坦部との両方に対して、前記第1の方向の一方側に突出している連結部と、
を備え
前記セパレータの前記第1の方向における厚さt(mm)は、
t≦0.2
という関係を満たし、
前記連結部の前記第1の方向における高さH(mm)と、前記セパレータの前記第1の方向における厚さt(mm)とは、
H>t
という関係を満たし、
前記連結部における前記第1の方向の前記一方側は凸部となっており、前記連結部における前記第1の方向の他方側は凹部となっている、
とを特徴とする、電気化学反応単位。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応単位において、
前記接合部の内、前記第1の方向において前記セパレータおよび前記単セルと重なる有効接合部の前記第1の方向に直交する第2の方向における長さL(mm)と、前記連結部の前記第1の方向における高さH(mm)とは、
L>3、かつ、H・L≧0.5
という関係を満たすことを特徴とする、電気化学反応単位。
【請求項3】
請求項2に記載の電気化学反応単位において、
0.1≦H≦0.6
という関係を満たすことを特徴とする、電気化学反応単位。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の電気化学反応単位において、
前記電解質層は、固体酸化物を含むことを特徴とする、電気化学反応単位。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の電気化学反応単位において、
前記第1の平坦部と前記第2の平坦部との前記第1の方向における位置は、互いに同一であることを特徴とする、電気化学反応単位。
【請求項6】
複数の燃料電池発電単位を備える燃料電池スタックにおいて、
前記複数の燃料電池発電単位の少なくとも1つは、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の電気化学反応単位であることを特徴とする、燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応単位に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物を含む電解質層を備える固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」ともいう)が知られている。SOFCの発電の最小単位である燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」ともいう)は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」ともいう)とセパレータとを備える。単セルは、電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「配列方向」ともいう)に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。セパレータには上記配列方向に貫通する貫通孔が形成されており、セパレータにおける貫通孔を取り囲む部分である貫通孔周囲部が、ロウ材を含む接合部を介して単セルの周縁部と接合されることにより、空気極に面する空気室と燃料極に面する燃料室とが区画される。
【0003】
上記構成の発電単位では、単セルとセパレータとを接合する接合部を介して、空気室と燃料室との間のガスリーク(クロスリーク)が発生するおそれがある。このクロスリークを抑制するために、セパレータの表面と単セルの表面との両方に接触して空気室と燃料室との間をシールするガラスシール部が設けられた構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−49321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成では、熱サイクルやヒートショック等によってセパレータが上記配列方向に直交する方向(以下、「面方向」ともいう)に変形すると、脆性部材であるガラスシール部に過大な応力が発生し、ガラスシール部にクラック(割れ)が発生することがある。
【0006】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」ともいう)の最小単位である電解セル単位にも共通の課題である。なお、本明細書では、発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応単位にも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記第1の方向に貫通する貫通孔を取り囲む部分である貫通孔周囲部が、ロウ材を含む接合部を介して前記単セルの周縁部と接合され、前記空気極に面する空気室と前記燃料極に面する燃料室とを区画するセパレータと、ガラスを含み、前記セパレータの表面と前記単セルの表面との両方に接触して前記空気室と前記燃料室との間をシールするガラスシール部と、を備える電気化学反応単位において、前記セパレータは、前記貫通孔周囲部を含み、前記第1の方向に直交する第2の方向に略平行な第1の平坦部と、前記第2の方向に略平行な第2の平坦部と、前記第1の方向における位置が前記第1の平坦部および前記第2の平坦部とは異なる部分を含み、前記第1の平坦部と前記第2の平坦部とを連結する連結部と、を備えることを特徴とする。本電気化学反応単位によれば、セパレータの連結部が第2の方向に容易に伸び縮みするバネのように機能し、セパレータが連結部の位置で第2の方向に変形しやすいため、熱サイクルやヒートショック等によってセパレータを第2の方向に変形させる荷重がかかると、セパレータが主として連結部の位置で第2の方向に変形し、その結果、上記荷重によってガラスシール部に発生する応力が緩和され、ガラスシール部にクラックが発生することを抑制することができる。
【0010】
(2)上記電気化学反応単位において、前記接合部の内、前記第1の方向において前記セパレータおよび前記単セルと重なる有効接合部の前記第2の方向における長さL(mm)と、前記連結部の前記第1の方向における高さH(mm)とは、L>3、かつ、H・L≧0.5という関係を満たすことを特徴とする構成としてもよい。本電気化学反応単位によれば、有効接合部の長さLをある程度大きくすることにより、有効接合部の単位長さあたりの応力を小さくすることができ、ガラスシール部の応力をより効果的に緩和して、ガラスシール部にクラックが発生することをより効果的に抑制することができ、また、有効接合部の長さLと連結部の高さHとの積H・Lをある程度大きくすることにより、連結部の高さHを、有効接合部の長さLに応じて必要とされる応力緩和機能を発揮するのに十分な値とすることができる。
【0011】
(3)上記電気化学反応単位において、0.1≦H≦0.6という関係を満たすことを特徴とする構成としてもよい。本電気化学反応単位によれば、連結部の高さHを上限値以下とすることにより連結部とガス流路との干渉を最小限にしつつ、連結部の高さHを下限値以上とすることにより連結部によるガラスシール部の応力緩和効果を確保することができる。
【0012】
(4)上記電気化学反応単位において、前記セパレータの前記第1の方向における厚さt(mm)は、t≦0.2という関係を満たすことを特徴とする構成としてもよい。本電気化学反応単位によれば、セパレータの厚さtを上限値以下とすることにより連結部のバネ性を確保して連結部によるガラスシール部の応力緩和効果を確保することができる。
【0013】
(5)上記電気化学反応単位において、前記連結部の前記第1の方向における高さH(mm)と、前記セパレータの前記第1の方向における厚さt(mm)とは、H>tという関係を満たすことを特徴とする構成としてもよい。本電気化学反応単位によれば、連結部の高さHをセパレータの厚さtより大きくすることにより、連結部によるガラスシール部の応力緩和効果を確保することができる。
【0014】
(6)上記電気化学反応単位において、前記電解質層は、固体酸化物を含むことを特徴とする構成としてもよい。本電気化学反応単位によれば、セパレータが連結部を備えることによって、ガラスシール部にクラックが発生することを抑制することができることに加えて、脆性部材である電解質層にクラックが発生することも抑制することができる。
【0015】
(7)上記電気化学反応単位において、前記第1の平坦部と前記第2の平坦部との前記第1の方向における位置は、互いに略同一であることを特徴とする構成としてもよい。本電気化学反応単位によれば、電気化学反応単位の第1の方向における高さを抑制しつつ、ガラスシール部にクラックが発生することを抑制することができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単位(燃料電池発電単位または電解セル単位)、複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。
図2図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
図3図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図6】セパレータ120の詳細構成を示す説明図である。
図7】性能評価結果を表形式で示す説明図である。
図8】性能評価結果をグラフで示す説明図である。
図9】レーザー形状測定装置LSを利用した連結部高さHの測定方法を示す説明図である。
図10】測定結果の補正処理の方法を示す説明図である。
図11】測定結果の補正処理の方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
【0019】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0020】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0021】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0022】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102から排出された未反応の酸化剤ガスOGである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0023】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102から排出された未反応の燃料ガスFGや燃料ガスFGの発電後のガスを含む燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0024】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0025】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0026】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0027】
図4および図5に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0028】
インターコネクタ150は、矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
【0029】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。なお、本実施形態では、単セル110の外周の1辺の長さは、100mmから250mm程度である。
【0030】
電解質層112は、矩形の平板形状部材であり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0031】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えばフェライト系金属により形成されている。セパレータ120における孔121を取り囲む部分である貫通孔周囲部122(図6参照)は、単セル110を構成する電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、貫通孔周囲部122に配置されたロウ材(例えばAgロウ)を含む接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画される。セパレータ120が接合された単セル110をセパレータ付き単セルともいう。セパレータ120に形成された孔121は、特許請求の範囲における貫通孔に相当する。なお、セパレータ120がアルミ含有金属により形成されていると、セパレータ120の空気極114側に酸化被膜が形成され、セパレータ120が単セル110の性能を低下させる不純物の発生源になることが防止されるため、好ましい。
【0032】
接合部124に対して空気室166側には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、セパレータ120の貫通孔周囲部122の表面と、単セル110(本実施形態では単セル110を構成する電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、空気室166と燃料室176との間のガスリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0033】
なお、本実施形態では、接合部124が、セパレータ120と単セル110とが対向する領域から空気室166側にはみ出すように形成されており、ガラスシール部125は、接合部124における上記はみ出した箇所に接するように形成されている。すなわち、接合部124の一部は、ガラスシール部125により覆われている。また、本実施形態では、ガラスシール部125が、セパレータ120における単セル110に対向する側とは反対側(上側)の表面を覆っており、ガラスシール部125と接合部124とがセパレータ120を挟んで配列方向に互いに対向している。
【0034】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0035】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0036】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触し、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触する。そのため、燃料極側集電体144は、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
【0037】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触することにより、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されていてもよい。
【0038】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0039】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0040】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0041】
A−3.セパレータ120の詳細構成:
図6は、セパレータ120の詳細構成を示す説明図である。図6には、図4のPx部の構成が拡大して示されている。図6に示すように、セパレータ120は、貫通孔周囲部122を含むと共に配列方向(上下方向)に直交する方向(面方向)に略平行な第1の平坦部126と、第1の平坦部126より外周側に位置すると共に面方向に略平行な第2の平坦部127とを備える。第1の平坦部126と第2の平坦部127との配列方向における位置は、互いに略同一である。
【0042】
セパレータ120は、さらに、第1の平坦部126の端部と第2の平坦部127の端部とを連結する連結部128を備える。本実施形態では、連結部128は、第1の平坦部126および第2の平坦部127の位置から燃料室176側(下側)に突出するように湾曲した形状を有している。すなわち、連結部128における燃料室176側(下側)は凸部となり、連結部128における空気室166側(上側)は凹部となる。このように、連結部128は、配列方向における位置が第1の平坦部126および第2の平坦部127とは異なる部分を含む。なお、連結部128は、配列方向視で、孔121を取り囲むように形成されている。また、セパレータ120における連結部128は、例えば、プレス加工により形成される。
【0043】
連結部128は、上述した構成であるため、面方向に容易に伸び縮みするバネのように機能する。そのため、本実施形態のセパレータ120は、連結部128を備えない構成と比較して、連結部128の位置で面方向に変形しやすい。そのため、発電による熱サイクルや製造時の溶接工程等によるヒートショック等によってセパレータ120を面方向に変形させる荷重がかかると、セパレータ120が主として連結部128の位置で面方向に変形し、その結果、上記荷重によってガラスシール部125や接合部124、単セル110の電解質層112に発生する応力が緩和される。ガラスシール部125や電解質層112は、ガラスやセラミックといった脆性部材で形成されているため、上記応力が過大になるとクラックが発生するおそれがあるが、本実施形態ではセパレータ120の連結部128の存在によりガラスシール部125や電解質層112に発生する応力が緩和されるため、ガラスシール部125や電解質層112にクラックが発生することを抑制することができる。
【0044】
A−4.性能評価:
上述したセパレータ120の連結部128によるクラック発生抑制効果について、以下の通り、性能評価を行った。図7および図8は、性能評価結果を示す説明図である。性能評価では、セパレータ120と単セル110とが接合部124を介して接合され、ガラスシール部125が設けられたセパレータ付き単セルに対して、面方向の引張荷重を与えた場合にガラスシール部125と電解質層112との少なくとも一方にクラックが発生するか否かを判定した。なお、性能評価では、セパレータ120の配列方向における厚さ(板厚)tを0.1(mm)とし、面方向の引張荷重を400kgfとし、接合部124ではすべりが発生しないように拘束条件を付与した。
【0045】
図7に示すように、性能評価には、連結部高さH(mm)と有効接合部長さL(mm)との組み合わせが互いに異なる15種類のセパレータ付き単セルを用いた。ここで、連結部高さHは、連結部128の配列方向における高さであり、より詳細には、セパレータ120の空気室166側の表面において、連結部128における最も上に位置する部分から最も下に位置する部分までの距離(深さ)である(図6参照)。また、有効接合部長さLは、接合部124の内、配列方向においてセパレータ120および単セル110と重なる部分(有効接合部)の面方向における長さである。なお、15種類のセパレータ付き単セル(例1−15)の内、例7,8については実験により判定を行い、その他の例についてはシミュレーションにより判定を行った。実験の際には、目視または浸透探傷検査(レッドチェック)によってクラック発生有無を判定し、シミュレーションの際には、ガラスシール部125の面内応力σに基づきクラック発生有無を判定した。
【0046】
図7には、セパレータ付き単セルの各例について、有効接合部長さLと、連結部高さHと、有効接合部長さLと連結部高さHとの積(指標値H・L)と、クラック有無判定結果との関係が示されている。図7では、クラックが発生しないと判定された例を〇で示し、クラックが発生すると判定された例を×で示している。また、図8には、セパレータ付き単セルの各例について、指標値H・Lと、ガラスシール部125の面内応力σとの関係が示されている。図8では、各プロットに、図7に示す各例の番号が付記されており、クラックが発生しないと判定された例を塗りつぶされたプロット〇で示し、クラックが発生すると判定された例を白抜きのプロットで示している。
【0047】
セパレータ付き単セルの例1,6,11は、連結部高さHが0(mm)、すなわち、セパレータ120に連結部128が設けられていないものである。これらの例は、いずれも、クラックが発生すると判定された。これは、セパレータ120に連結部128が設けられていないため、セパレータ120を面方向に変形させる荷重がかかると、ガラスシール部125や電解質層112に過大な応力が発生するためであると考えられる。
【0048】
一方、セパレータ付き単セルの例2−5は、有効接合部長さLが5(mm)であり、連結部高さHが0.1(mm)以上、0.6(mm)以下の範囲のものである。これらの例は、いずれも、クラックが発生しないと判定された。これは、セパレータ120に連結部128が設けられているため、セパレータ120を面方向に変形させる荷重がかかると、セパレータ120が主として連結部128の位置で面方向に変形し、ガラスシール部125や電解質層112に過大な応力が発生することが抑制されるためであると考えられる。
【0049】
また、セパレータ付き単セルの例7−10は、有効接合部長さLが4(mm)であり、連結部高さHが0.1(mm)以上、0.6(mm)以下の範囲のものである。これらの例の内、連結部高さHが0.25、0.4、0.6(mm)のもの(例8−10)はクラックが発生しないと判定されたが、連結部高さHが0.1(mm)のもの(例7)はクラックが発生すると判定された。これは、連結部高さHが比較的低いと、連結部128が面方向に変形しにくくなり、セパレータ120を面方向に変形させる荷重がかかったときにガラスシール部125や電解質層112に発生する応力を緩和する効果が比較的低くなるためであると考えられる。
【0050】
なお、セパレータ付き単セルの例2も、例7と同じく連結部高さHは0.1(mm)であるが、クラックは発生しないと判定されている。これは、例2では、例7と比較して有効接合部長さLが長いことから、接合部124(有効接合部)の単位長さあたりの応力が比較的小さくなり、その結果、ガラスシール部125や電解質層112の応力も比較的小さくなるためであると考えられる。すなわち、有効接合部長さLが短いほど、連結部高さHを高く設定することが好ましい。具体的には、図7および図8に示す性能評価結果から、指標値H・Lが0.5以上であることが好ましい。なお、図8に示すように、指標値H・Lがある程度大きい領域では、指標値H・Lの増加に伴う面内応力σの低下量は小さくなる。また、指標値H・Lを大きくするためには、セパレータ付き単セルのサイズを大きくする必要がある。これらの観点から、指標値H・Lは3.0以下であることが好ましいと言える。
【0051】
また、セパレータ付き単セルの例12−15は、有効接合部長さLが3(mm)であり、連結部高さHが0.1(mm)以上、0.6(mm)以下の範囲のものである。これらの例は、いずれも、クラックが発生すると判定された。これは、有効接合部長さLがかなり短いと、接合部124(有効接合部)の単位長さあたりの応力がかなり大きくなるため、セパレータ120に連結部128を設けても、ガラスシール部125や電解質層112の応力をクラックが発生しない水準まで緩和することができないためであると考えられる。図7および図8に示す性能評価結果から、有効接合部長さLは3(mm)より長いことが好ましいと言える。
【0052】
以上説明した性能評価結果から、有効接合部長さLが3(mm)より長く、かつ、指標値H・Lが0.5以上であることが好ましいと言える。この条件が満たされれば、接合部124(有効接合部)の単位長さあたりの応力を小さくすることができ、ガラスシール部125や電解質層112の応力をより効果的に緩和して、ガラスシール部125や電解質層112にクラックが発生することをより効果的に抑制することができ、また、連結部128の高さHを、接合部124の有効接合部の長さ(L)に応じて必要とされる応力緩和機能を発揮するのに十分な値とすることができる。
【0053】
また、連結部高さHは、0.1(mm)以上、0.6(mm)以下であることがさらに好ましいと言える。連結部高さHを0.1(mm)以上とすることにより、連結部128によるクラック発生抑制効果を確保することができる。また、連結部高さHが0.6(mm)より高くなると、連結部128によってガスの流れが阻害され、発電性能が低下するおそれがあるため好ましくないが、連結部高さHを0.6(mm)以下とすることにより、連結部128によってガスの流れが阻害されて発電性能が低下することを抑制することができる。
【0054】
なお、セパレータ120の配列方向における厚さ(板厚)tは、0.01(mm)以上であればよく、耐酸化性の低下を抑制する観点から、好ましくは0.03(mm)以上、より好ましくは0.05(mm)以上であって、0.2(mm)以下であることが好ましい。セパレータ120の厚さtを0.03(mm)以上とすることにより、セパレータ120の耐酸化性の低下を抑制することができ、セパレータ120の厚さtを0.2(mm)以下とすることにより、連結部128のバネ性を一定程度以上確保することができ、連結部128によるクラック発生抑制効果を確保することができる。
【0055】
また、連結部高さHはセパレータ120の厚さtより大きいことが好ましい。連結部高さHをセパレータ120の厚さtより大きくすることにより、連結部128によるクラック発生抑制効果を確保することができる。
【0056】
また、第1の平坦部126と第2の平坦部127との配列方向における位置が互いに略同一であると、第1の平坦部126と第2の平坦部127との配列方向における位置が互いに異なる構成と比較して、セパレータ付き単セルの配列方向における高さを抑制することができ、ひいては発電単位102、燃料電池スタック100の配列方向における高さを抑制することができるため、好ましい。
【0057】
A−5.測定方法:
上述した有効接合部長さLの値は、例えば、断面観察や、X線顕微鏡またはコンピュータ断層撮影装置(CT)を利用した方法により測定される。また、上述した連結部高さHの値は、例えば、断面観察や、レーザー形状測定装置を利用した方法により測定される。レーザー形状測定装置を利用した連結部高さHの測定方法について、以下、説明する。
【0058】
図9から図11は、レーザー形状測定装置LSを利用した連結部高さHの測定方法を示す説明図である。図9には、レーザー形状測定装置LSによってセパレータ付き単セルの連結部高さHを測定している様子が示されており、図10および図11には、測定結果の補正処理の方法が示されている。
【0059】
図9に示すように、測定の際には、XY方向に移動可能なステージST上にワーク(セパレータ付き単セル)を載置し、セパレータ付き単セル上の任意の点を測定時ゼロ点POとし、ステージSTを移動させることによって固定位置にあるレーザー形状測定装置LSとセパレータ付き単セルとの相対位置を変化させつつ、セパレータ付き単セルとレーザー形状測定装置LSとの間の距離を測定する。図10には、このときの測定結果を示す曲線(変換前曲線RC)の一例が示されている。
【0060】
その後、図10に示す変換前曲線RCにおけるセパレータ120の位置に対応する部分から、2つの変曲点IPを抽出し、所定の補正計算式を当てはめることによって、図11に示す2つの変曲点IPが距離ゼロの点に変換された曲線(変換後曲線TC)を得る。変換後曲線TCにおける2つの変曲点IPに挟まれた部分から、Z方向の距離(すなわち高さ)が最も大きい点XPを抽出し、点XPにおける高さを連結部高さHとする。
【0061】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0062】
上記実施形態では、第1の平坦部126と第2の平坦部127との配列方向における位置は互いに略同一であるとしているが、第1の平坦部126と第2の平坦部127との配列方向における位置が互いに異なるとしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、連結部128は、第1の平坦部126および第2の平坦部127の位置から燃料室176側(下側)に突出するように湾曲した断面形状を有する構成であるが、連結部128は、配列方向における位置が第1の平坦部126および第2の平坦部127とは異なる部分を含む構成であれば、上記構成に限られない。例えば、連結部128が、第1の平坦部126および第2の平坦部127の位置から空気室166側(上側)に突出するように湾曲した断面形状を有する構成であってもよい。また、第1の平坦部126と第2の平坦部127とが共に面方向に略平行であるが、配列方向における位置が互いに異なり、連結部128が、第1の平坦部126と第2の平坦部127とを直線的または曲線的に連結するような構成であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、プレス加工によりセパレータ120に連結部128を形成するとしているが、他の方法(例えば切削)によって連結部128を形成するとしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、接合部124は、セパレータ120と単セル110とが対向する領域から空気室166側にはみ出すように形成されており、ガラスシール部125は、接合部124における上記はみ出した箇所に接するように、かつ、セパレータ120における単セル110に対向する側とは反対側(上側)の表面を覆うように形成されており、ガラスシール部125と接合部124とがセパレータ120を挟んで配列方向に互いに対向しているが、必ずしもそのような構成である必要は無い。例えば、ガラスシール部125が接合部124に接している必要は無い。また、ガラスシール部125がセパレータ120における単セル110に対向する側とは反対側(上側)の表面を覆っていなくてもよい。また、接合部124がセパレータ120と単セル110とが対向する領域の一部のみに形成されていてもよい。そのような構成において、ガラスシール部125が、セパレータ120と単セル110とが対向する領域内に侵入していてもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0067】
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
【0069】
また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
【0072】
本明細書において、部材(または部材のある部分、以下同様)Aを挟んで部材Bと部材Cとが互いに対向するとは、部材Aと部材Bまたは部材Cとが隣接する形態に限定されず、部材Aと部材Bまたは部材Cとの間に他の構成要素が介在する形態を含む。例えば、電解質層112と空気極114との間に他の層が設けられた構成であっても、空気極114と燃料極116とは電解質層112を挟んで互いに対向すると言える。
【0073】
また、上記実施形態(または変形例、以下同様)では、燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102について、セパレータ120が、面方向に略平行な第1の平坦部126および第2の平坦部127と、配列方向における位置が第1の平坦部126および第2の平坦部127とは異なる部分を含み、第1の平坦部126と第2の平坦部127とを連結する連結部128とを備える構成であるとしているが、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの発電単位102について、そのような構成となっていれば、当該発電単位102におけるガラスシール部125や電解質層112にクラックが発生することを抑制することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(SOEC)の最小単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2014−207120号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、セパレータ120が、面方向に略平行な第1の平坦部126および第2の平坦部127と、配列方向における位置が第1の平坦部126および第2の平坦部127とは異なる部分を含み、第1の平坦部126と第2の平坦部127とを連結する連結部128とを備える構成を採用すれば、ガラスシール部125や電解質層112にクラックが発生することを抑制することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本願発明は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104:エンドプレート 106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 122:貫通孔周囲部 124:接合部 125:ガラスシール部 126:第1の平坦部 127:第2の平坦部 128:連結部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室
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