(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態にかかるターボチャージャについて、
図1〜
図5を参照して説明する。
図1に示すターボチャージャ10は、車両に搭載されるエンジンに設けられる。このターボチャージャ10では、タービンシャフト11がベアリング13によってベアリングハウジング12に回転自在に支持されている。タービンシャフト11の軸線L1に沿う方向(以下「軸方向」という)についてベアリングハウジング12の一方側(
図1の右側)には、タービンハウジング14が隣接して配置され、他方側(
図1の左側)には、複数の部材からなるコンプレッサハウジング(図示省略)が隣接して配置されている。タービンハウジング14およびコンプレッサハウジングは、ベアリングハウジング12に対しそれぞれ締結されている。そして、これらのベアリングハウジング12、タービンハウジング14およびコンプレッサハウジングによって、ターボチャージャ10のハウジングが構成されている。
【0010】
タービンハウジング14の中心部には、軸方向に延びる円筒状のタービン室15が形成されており、このタービン室15にタービンシャフト11の上記一方側の端部に固定されたタービンホイール18が収容される。また、タービンシャフト11の上記他方側の端部には、コンプレッサハウジング内で回転するコンプレッサホイール(図示省略)が固定されている。
【0011】
タービンハウジング14内において、タービン室15の周りには、渦巻き状のスクロール通路16が形成されている。さらに、タービンハウジング14内には、タービン室15とスクロール通路16とを連通させる連通路17が形成されている。この連通路17は、軸方向においてベアリングハウジング12の内壁面12Aとタービンハウジング14の内壁面14Aとに挟まれている。なお、ベアリングハウジング12において連通路17に面する内壁面12Aと、タービンハウジング14において連通路17に面する内壁面14Aとは、それぞれ軸線L1に対し直交した状態またはそれに近い状態となっている。
【0012】
このような基本構成を有するターボチャージャ10では、エンジンから排出されスクロール通路16に沿って流れた排気Eが、連通路17を通じてタービンホイール18に供給されることで、タービンホイール18が回転する。この回転は、タービンシャフト11を介してコンプレッサホイールに伝達される。その結果、エンジンでは、ピストンの移動に伴って燃焼室内に発生する負圧によって吸入される空気が、ターボチャージャ10のコンプレッサホイールの回転によって強制的に燃焼室に送り込まれる(過給される)。このようにして、燃焼室への空気の充填効率が高められる。
【0013】
ターボチャージャ10の連通路17には、可変ノズルユニット30が組み込まれている。可変ノズルユニット30は、連通路17の排気流通面積を変更することで、タービンホイール18に供給される排気Eの流速を可変とし、これによって、ターボチャージャ10(タービンホイール18)の回転数を調整し、燃焼室に強制的に送り込まれる空気の量を調整するための機構である。
【0014】
可変ノズルユニット30の概略構成について説明する。
図1に示すように、可変ノズルユニット30は、連通路17にそれぞれ配置されたノズルプレート31、ユニゾンリング35およびシュラウドプレート41を有する。これらノズルプレート31、ユニゾンリング35およびシュラウドプレート41は、いずれも軸線L1を中心とする円環状をなす。ノズルプレート31とシュラウドプレート41とは軸方向に間隔を空けて設けられており、ベアリングハウジング12側に設けられたノズルプレート31が本発明の「第1環状部材」に相当し、タービンハウジング14側に設けられたシュラウドプレート41が本発明の「第2環状部材」に相当する。
【0015】
図2(A)は可変ノズルユニット30の一部を
図1の左方から見た側面図であり、
図2(B)は可変ノズルユニット30の一部を
図1の右方から見た側面図である。ノズルプレート31において、軸線L1を中心とする円上には、複数の軸32が周方向に略等間隔に配置されている。各軸32は、軸線L1に略平行に延びており、ノズルプレート31に対し回動可能に挿通されている。
図1に示すように、各軸32のうちノズルプレート31とシュラウドプレート41との間の部分(排気Eがスクロール通路16からタービン室15へと流れる際の流通路部分)には、ノズルベーン33が固定されている。また、各軸32のうちノズルプレート31からベアリングハウジング12側に突出している端部には、ノズルベーン33を駆動するアーム34の基端部が固定されている。また、ノズルプレート31には、ベアリングハウジング12側に突出する凸部31Aが形成されている。凸部31Aについては後に詳述する。
【0016】
ユニゾンリング35の内周面には、複数の凹部36が形成されている。これらの凹部36には、アーム34の先端部が係合している。ユニゾンリング35は、リンク37(
図1参照)等を介してターボチャージャ10の外部から回転される。すなわち、リンク37の回動軸37Aにはアーム39が固定されており、そのアーム39の先端部は、ユニゾンリング35の内周面に形成された凹部40に係合している。
【0017】
そして、ユニゾンリング35が、ターボチャージャ10の外部から、リンク37、回動軸37A、アーム39等を介して軸線L1の周りで回動させられると、ユニゾンリング35の複数の凹部36に係合している各アーム34が軸32を中心として各々同期した状態で回動(開閉)される。各軸32の回動によってノズルベーン33の開度が変化することで、連通路17の排気流通面積が変更される。そして、隣り合うノズルベーン33間を通じてタービンホイール18に供給される排気Eの流速が調整される。
【0018】
例えば、
図2(A)において、リンク37等により回動軸37Aを支点としてアーム39を反時計回り方向へ回動させると、これに伴ってユニゾンリング35は
図2(A)および
図2(B)においてそれぞれ矢印に示す方向へ回動する。ユニゾンリング35の上記回動によって、各軸32が、
図2(A)では反時計回り方向へ回動し、
図2(B)では時計回り方向へ回動する。各軸32の上記回動に伴い、ノズルベーン33が閉じ側に回動し、タービンホイール18に供給される排気Eの流速が高くなる。逆に、ノズルベーン33が開き側に回動すると、タービンホイール18に供給される排気Eの流速が低くなる。
【0019】
図3および
図4は、可変ノズルユニット30を拡大した部分断面図である。なお、
図4は、
図1および
図3とは異なる断面における構造を示したものとなっている。
図3に示すように、シュラウドプレート41において、軸線L1を中心とする円上には、軸方向に貫通する貫通孔42が複数形成されている。各貫通孔42には、軸32のうちノズルプレート31からシュラウドプレート41側へ突出した先端部が回動可能に挿通されている。
【0020】
図4に示すように、シュラウドプレート41は、軸線L1を中心とする円上に略等間隔に配置された複数のピン43によってノズルプレート31に連結されている。ノズルプレート31とシュラウドプレート41との間に位置する各ピン43の部分には、円管状のスペーサ44が被せられている。これらのスペーサ44によって、ノズルプレート31とシュラウドプレート41との間にノズルベーン33の厚み程度の間隔が確保されている。
【0021】
このように、可変ノズルユニット30は、ノズルプレート31、シュラウドプレート41、複数のノズルベーン33、複数のアーム34等が、一体的に構成されたユニット構造となっている。そして、ユニット化された可変ノズルユニット30が、付勢部材としての皿ばね50により付勢されることで連通路17内に組み付けられている。
【0022】
図5は、皿ばね50の斜視図である。皿ばね50は、金属板等の弾性体によって軸線L1を中心とした円環状に構成されており、外周側に設けられた環状部51と、内周側に設けられた複数の突起部52とを有する。複数の突起部52は、周方向に略等間隔に設けられており、環状部51から径方向の内側に向かって突出している。互いに隣接する2つの突起部52の間の空間53には前述のアーム34が配置されており、アーム34が回動(移動)する際に、アーム34と皿ばね50が干渉しないようにされている。
【0023】
突起部52は、環状部51の内周縁から径方向の内側且つ軸方向のタービンハウジング14側に向かって斜めに突出する傾斜部52Aと、傾斜部52Aの先端から径方向の内側に向かって突出する先端部52Bとからなる。環状部51と突起部52の先端部52Bとは、軸線L1に直交する面に略平行となっている。
【0024】
図4に示すように、皿ばね50は、環状部51が連通路17に面するベアリングハウジング12の内壁面12Aに当接するように、且つ、突起部52の先端部52Bがノズルプレート31に当接するように配置される。ここで、ノズルプレート31には、各アーム34と干渉しない周方向位置において、軸方向のベアリングハウジング12側に突出する凸部31Aが周方向に複数設けられている。そして、各突起部52の先端部52Bは、凸部31Aの先端面に当接している。このように配置された皿ばね50の突起部52は、
図3に示すように、軸方向においてアーム34と一部重複することになる。このため、皿ばね50を配置するために必要な軸方向のスペースを削減することができ、ターボチャージャ10の小型化を図ることができる。なお、本実施形態においてノズルプレート31には、アーム39が配置されるアーム34間には凸部31Aが形成されていない。
【0025】
皿ばね50は、環状部51および突起部52の先端部52Bにおいて荷重が加えられることにより、軸方向の寸法が小さくなる方向に弾性変形し、可変ノズルユニット30を軸方向においてタービンハウジング14側へ付勢している。この皿ばね50の付勢力は、スペーサ44およびピン43を介してノズルプレート31に伝達され、ノズルプレート31がタービンハウジング14の内壁面14Aに押圧されることで、可変ノズルユニット30を強固に組み付けることができる。また、ボルト等による固定と比べて変形に対する拘束が少なく、可変ノズルユニット30の熱変形を抑えることができる。
【0026】
(効果)
本実施形態のターボチャージャ10によれば、連通路17に設けられた可変ノズルユニット30を付勢する付勢部材50が、連通路17に面するベアリングハウジング12の内壁面12Aと可変ノズルユニット30との間に設けられている。このため、付勢部材50をタービンハウジング14に形成されるスクロール通路16から遠ざけることができ、スクロール通路16を流れる排気の熱が付勢部材50に伝わることを抑制可能となっている。また、本実施形態によれば、上述のように排気熱が付勢部材50へ伝わることを抑制できるので、従来技術で設けられていたような遮熱壁を省略することができ、ターボチャージャ10の小型化に好適である。
【0027】
また、本実施形態では、付勢部材50が皿ばねであるので、小さな取付スペースで大きな荷重を受けることができるので、ターボチャージャ10のさらなる小型化が可能である。
【0028】
また、本実施形態では、皿ばね50の一部が、軸方向においてアーム34と重複するように配置されているので、皿ばね50の取付スペースをさらに小さくすることができる。
【0029】
また、本実施形態では、皿ばね50は、ベアリングハウジング12の内壁面12Aに当接する環状部51を有するとともに、環状部51から軸方向のタービンハウジング14側且つ径方向の内側または外側に向かって突出し、ノズルプレート31(第1環状部材)に当接する突起部52を周方向に複数有しており、互いに隣接する2つの突起部52の間の空間53を、アーム34が移動可能に構成されている。このため、上述のように皿ばね50の一部がアーム34と軸方向において重複し、且つ、アーム34が皿ばね50と干渉しない構成を容易に実現することができる。また、突起部52の幅や突出長さ等を変更することで、バネ定数の調整が可能となり、可変ノズルユニット30を適切な付勢力で押圧することができる。
【0030】
また、本実施形態では、突起部52が環状部51から径方向の内側に向かって突出している。このため、突起部52が環状部51から径方向の外側に向かって突出させる構成と比較して、皿ばね50(環状部51)の径を大きくすることができ、大きな付勢力を発生させることが可能となる。
【0031】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記実施形態の要素を適宜組み合わせまたは種々の変更を加えることが可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態では、付勢部材として皿ばね50を用いたが、コイルばね等の付勢部材を代わりに用いてもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、皿ばね50の一部が、軸方向においてアーム34と重複するようにしたが、皿ばね50をアーム34に重複させず、アーム34よりもベアリングハウジング12側に配置してもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、皿ばね50の外周縁部を環状部51とし、内周縁部を複数の突起部52とする櫛形形状とした。しかしながら、アーム34との干渉が避けられる形状となっていれば、皿ばね50を櫛形形状とすることは必須ではなく、通常の円錐状の皿ばねを用いてもよい。また、櫛形形状にする場合、上記実施形態とは逆に、皿ばね50の内周縁部に環状部を設け、外周縁部に複数の突起部を設けるようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、周方向に隣り合う2つのアーム34の間のうち、アーム39が配置される箇所以外に凸部31Aを形成するものとした。しかしながら、凸部31Aの数を減らしてもよい。この場合、アーム34との干渉が避けられるならば、各凸部31Aの間隔が等間隔とされることが望ましい。