(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記NTDが、VGKYRGARAL(配列番号4)、VGKYHGARAL(配列番号6)およびVGKRGAGARAL(配列番号7)から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
前記リコンビナーゼが、Gin、Hin、Tn3、Sin、Beta、Pin.Min、DinおよびCinならびにGinの突然変異タンパク質、Hinの突然変異タンパク質、Sinの突然変異タンパク質、Betaの突然変異タンパク質、Pinの突然変異タンパク質、Minの突然変異タンパク質、Dinの突然変異タンパク質、Cinの突然変異タンパク質、Tn3の突然変異タンパク質からなる群から選択される、請求項9記載のポリペプチド。
【発明の概要】
【0010】
本明細書には、標的化キメラポリペプチド(その組成物を含む)、発現ベクター、ならびにトランスジェニック細胞、組織、植物および動物の作製のためのその使用方法が開示される。本発明の組成物、ベクターおよび方法は遺伝子治療技術においても有用である。
【0011】
1つの態様においては、本発明はキメラポリペプチドを提供する。該ポリペプチドは、a)リコンビナーゼ、ヌクレアーゼもしくは転写因子またはそれらの断片;およびb)転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質を含む。種々の実施形態においては、TALEタンパク質は末端が切断されて(トランケート化されて(truncated))おり、C末端またはN末端切断(トランケーション)を含む。幾つかの実施形態においては、TALEタンパク質はAcrXa7、TallcおよびPthXolである。幾つかの実施形態においては、TALEタンパク質は、配列番号2に記載されているアミノ酸配列の全部または一部を含む。幾つかの実施形態においては、TALEタンパク質は配列番号2のアミノ酸残基27と268との間、92と134との間、120と129との間、74と147との間または87と120との間でトランケート化されている。幾つかの実施形態においては、TALEタンパク質は配列番号2の28、74、87、92、95、120、124、128、129、147および150においてトランケート化されている。
【0012】
別の態様では、本発明は、所望のヌクレオチドに特異的に結合する転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質結合ドメインの製造方法を提供する。該方法は、a)可変性二残基(RVD)内の又はRVDの1〜2アミノ酸残基N末端側もしくはC末端側のアミノ酸残基を突然変異させることにより、TALEタンパク質結合ドメインのアミノ酸配列をランダム化することと、b)所望のヌクレオチドに特異的に結合する、(a)のランダム化TALEタンパク質結合ドメインを選択することとを含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、キサンタモヌス(Xanthamonus)由来転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質を含む単離されたポリペプチドを提供し、該TALEタンパク質は、QはYである、QはSである、QはRである、WはRである、WはGである、Wは欠失している、SはRである、SはHである、SはAである、SはNである、およびSはTであることから選択される1以上の突然変異または欠失を有する配列番号3(VGKQWSGARAL)に記載されているアミノ酸配列を含むN末端ドメイン(NTD)を有する。
【0014】
別の態様では、本発明は、ラルストニア(Ralstonia)由来転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質を含む単離されたポリペプチドを提供し、該TALEタンパク質は、R
1はKである、QはYである、QはSである、QはRである、R
2はWである、R
2はGである、R
2は欠失している、SはRである、SはHである、SはAである、SはNである、およびSはTであることから選択される1以上の突然変異または欠失を有する配列番号8(IVDIAR
1QR
2SGDLA)に記載されているアミノ酸配列を含むN末端ドメイン(NTD)を有する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質N末端ドメイン(NTD)の製造方法を提供する。該方法は、a)NTD内の1以上のアミノ酸残基を突然変異または欠失させることにより、NTDのアミノ酸配列をランダム化することと(ここで、該アミノ酸配列は配列番号14(VGKXXXGAR)または配列番号15(VDIAXXXXGDLA)である)、b)所望のヌクレオチドに特異的に結合する又は活性の増強を示す、(a)のランダム化TALEタンパク質NTDを選択することとを含む。
【0016】
また、セリンリコンビナーゼと1以上のジンクフィンガー結合ドメインとを含むキメラタンパク質、ZFRの製造方法、その組成物、発現ベクター、ならびにトランスジェニック細胞、組織、植物および動物の作製のためのその使用方法を本明細書に開示する。本発明の組成物、ベクターおよび方法は遺伝子治療技術においても有用である。
【0017】
ある態様において本発明は、対応する野生型リコンビナーゼよりも大きな触媒特異性を有する複数のジンクフィンガーリコンビナーゼ(ZFR)タンパク質の製造方法を提供する。該方法は、Gin Ile120、Thr123、Leu127、Ile136およびGly137またはそれらの組合せと同等の位置においてリコンビナーゼ触媒ドメイン上でランダム突然変異誘発を行い、各アミノ酸に関して2および3位において該DNAを突然変異させ、該リコンビナーゼ触媒ドメインを複数のジンクフィンガー結合ドメインと融合させてZFRを形成させ、対応野生型リコンビナーゼより大きな触媒特異性を有するZFRを富化させることを含む。幾つかの実施形態においては、ZFRは、GC、GT、CA、TTおよびACから選択されるDNA標的に対する触媒活性の増強を示す。1つの実施形態においては、該リコンビナーゼ触媒ドメインはIle136および/またはGly137において突然変異誘発される。
【0018】
種々の態様において、本明細書に記載されているキメラポリペプチドは、以下のものから誘導されるか又は本明細書に開示されているとおりにランダムに突然変異誘発されるリコンビナーゼ触媒ドメインを含む:a)Tn3(EcoTn3としても公知);Hin(StyHinとしても公知);Gin(MuGinとしても公知);Sin;Beta;Pin;Min;Din;Cin;EcoTn21;SfaTn917;BmeTn5083;Bme53;Cpe;SauSK1;SauSK41;SauTn552;Ran;Aac;Lla;pMER05;Mlo92;Mlo90;Rrh;Pje;Req;PpsTn5501;Pae;Xan;ISXc5;Spy;RhizY4cG;SarpNL1;SsolSC1904a;SsolSC1904b;SsoISC1913;Aam606;MjaM0014;Pab;HpylS607;MtulS
Y349;MtuRv2792c;MtuRv2979c;MtuRv3828c;MtuRv0921;MceRv0921;TnpX;TndX;WwK;ラクトコッカスファージTP901−1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφ370.1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφFC1セリンリコンビナーゼ;リステリア(Listeria)ファージA118セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC3C8.24セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC2E1.37セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD78.04cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC8F4.15cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD12A.23セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCH10.38cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCC88.14セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージφC31セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージR4セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージφ105セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージSPBc2セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)プロファージSKINセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrAセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrBセリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)ファージBxb1セリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)プロファージφRVlセリンリコンビナーゼ;YBCK
ECOLI;Y4bA;Bja;Spn;Cac 1956;およびCac 1954;またはb)a)の突然変異タンパク質。
【0019】
更に別の態様では、本発明は、本明細書に記載されているキメラポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供する。
【0020】
更に別の態様では、本発明は、本明細書に記載されているキメラポリペプチドをコードする核酸分子を含む発現カセットを提供する。
【0021】
更に別の態様では、本発明は、本明細書に記載されている発現カセットを含むベクターを提供する。
【0022】
更に別の態様では、本発明は、本明細書に記載されているベクターを含有する単離された宿主細胞を提供する。
【0023】
更に別の態様では、本発明はDNA配列内への部位特異的組込みのための方法を提供する。該方法は、部位特異的組込みを触媒する本発明のキメラポリペプチドと該DNA配列を接触させることを含む。
【0024】
更に別の態様では、本発明は遺伝子治療方法を提供する。該方法は、本明細書に記載されているキメラポリペプチドをコードする核酸分子を含む組成物を対象に投与することを含み、ここで、該核酸分子の発現に際して、該対象のゲノム内に存在する遺伝子が特異的に除去または不活性化される。
【0025】
更に別の態様では、本発明は医薬組成物を提供する。該組成物は、本明細書に記載されているキメラポリペプチドと医薬上許容される担体とを含む。もう1つの態様においては、該組成物は、本明細書に記載されているキメラポリペプチドコードする核酸分子と医薬上許容される担体とを含む。
【0026】
更に別の態様では、本発明は、本発明のキメラポリペプチドにより触媒される組換えにより産生されるトランスジェニック生物を提供する。
【0027】
更に別の態様では、本発明は遺伝子治療方法を提供する。該方法は、本明細書に記載されている部位特異的組込みの方法に産生されたDNA配列を有する核酸分子を含む細胞を対象に投与することを含む。
【0028】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されているキメラタンパク質をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0029】
別の態様では、本発明は部位特異的組換えのための方法を提供する。該方法は、a)本明細書に記載されているキメラタンパク質と特異的に相互作用するための少なくとも2つの結合部位を含むDNA配列を提供することと、b)該DNA配列を該キメラタンパク質と反応させることとを含み、ここで、該キメラタンパク質と特異的に相互作用する2つの部位の間で該DNA配列の鎖の両方が切断される部位特異的組換え事象を該キメラタンパク質が触媒する。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明はTALEリコンビナーゼ(TALER)の最初の開示を提供する。漸増トランケート化TALEドメインのライブラリーを使用して、細菌および哺乳類細胞においてDNAを組換えるために使用されうる最適化TALER構造を特定した。任意の特製TALE反復アレイが、本明細書に記載されているTALER構造内に挿入可能であり、ひいてはバイオテクノロジーおよび医学における用途のための操作リコンビナーゼの標的化能を劇的に拡大する。
【0031】
転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質は、実質的に全てのDNA配列に結合するように設計されうる。TALE DNA結合ドメインの設計のための一般的指針は、TALEにより結合されるDNA配列の最も5’側の塩基(N
0塩基)がチミンであるべきだと提示している。該N
0要件は、この位置に各DNA塩基を含有するTALE転写因子(TALE−TF)、TALEリコンビナーゼ(TALE−R)およびTALEヌクレアーゼ(TALEN)の活性の分析により定量された。5’Tの非存在下では、5’Tを含有する標的配列と比較して、TALE−TF活性においては>1000倍までの、TALE−R活性においては100倍までの、そしてTALEN活性においては10倍までのTALE活性の低下が観察された。全ての可能なN
0塩基を認識するTALE構造体を開発するために、TALE−R活性選択と組合された構造誘導ライブラリー設計を用いて、任意のN0塩基を含有する新規TALE N末端ドメインを得た。G選択的ドメインおよび広範反応性ドメインを単離し、特徴づけした。TALE−R形態において選択された操作されたTALEドメインはモジュラー性を示し、TALE−TFおよびTALEN構造において活性であった。得られたN末端ドメインは、TALE結合性タンパク質およびデザイナー(designer)酵素としての任意のDNA配列の、有効かつ制約の無い、TALEに基づく標的化をもたらす。
【0032】
また、配列要件制限に対処するために、セリンリコンビナーゼ触媒特異性を再操作するための、知識に基づくアプローチが記載された。特異性決定DNA結合残基の飽和突然変異誘発に基づくこの戦略を、特異性における>10,000倍の変化を示すリコンビナーゼ変異体を作製するために用いた。重要なことに、このアプローチは、リコンビナーゼ二量体境界の外部に位置するアミノ酸残基に専ら焦点を合わせている(
図35)。その結果、再操作触媒ドメインが会合してZFRヘテロ二量体を形成すること、およびこれらの設計されたZFRペアが、予め決定されたDNA配列を並外れた特異性で組換えること確認された。総合すると、これらの結果は、この方法により開発される特殊化触媒ドメインの拡張カタログが、特別仕様(カスタム)の特異性を有するZFRを作製するために用いられうると仮定することに本発明者らを導いた。ここでは、推定4×10
8個のユニーク20bpコア配列を認識しうるGinリコンビナーゼ触媒ドメインの多様なコレクションを開発するために、基質特異性分析と定向進化との組合せを用いる。これらの再操作触媒ドメインから構築されたZFRは、使用者により定められた配列を高い特異性で組換え、ヒト細胞における標的化内因性遺伝子座内にDNAを組込むことが示されている。これらの結果は、ゲノム操作および遺伝子治療を含む多種多様な用途のためのZFR技術の可能性を示している。
【0033】
本組成物および方法を記載する前に、本発明は、記載されている個々の組成物、方法および実験条件に限定されず、そのような装置、方法および条件は変動しうる、と理解されるべきである。また、本明細書中で用いる用語は、個々の実施形態を説明することを目的としたものであるに過ぎず、限定的なものではないと理解されるべきである。なぜなら、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみにおいて限定されるからである。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる単数形は、文脈に明らかに矛盾しない限り、複数対象物を含む。したがって、例えば、「組成物」または「方法」が示すものは、本開示などを読めば当業者に明らかとなる本明細書に記載されているタイプの、1以上の組成物および方法ならびに/または工程を含む。
【0035】
特に示されていない限り、本明細書中で用いられている全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法および物質が本発明の実施および試験において使用されうるが、好ましい方法および物質を以下に説明する。
【0036】
「リコンビナーゼ」は、該リコンビナーゼにより認識される特異的DNA配列の間で部位特異的組換えを引き起こす酵素のファミリーである(Esposito,D.およびScocca,J.J.,Nucleic Acids Research 25,3605−3614(1997);Nunes−Duby,S.E.ら,Nucleic Acids Research 26,391−406(1998);Stark,W.M.ら,Trends in Genetics 8,432−439(1992))。
【0037】
本明細書中で用いる「キメラTALEリコンビナーゼ」なる語は、限定的なものではないが、配列特異的結合活性を有する、天然に存在するTALEタンパク質に由来するTALEドメインまたは合成由来のTALEタンパク質もしくはドメインを有するリコンビナーゼを含む。
【0038】
本明細書中で用いる「キメラジンクフィンガーリコンビナーゼ」なる語は、限定的なものではないが、配列特異的結合活性を有する、天然に存在するジンクフィンガーDNA結合タンパク質に由来するジンクフィンガー結合ドメインまたは合成由来のジンクフィンガー結合タンパク質もしくはドメインを有するリコンビナーゼを含む。
【0039】
本明細書中で用いる「ジンクフィンガー」、「ジンクフィンガーヌクレオチド結合ドメイン」なる語または類似の用語は、天然に存在するジンクフィンガーおよび人工的に製造されたジンクフィンガーの両方を意味する。そのようなジンクフィンガーは、C2H2、C4、H4、H3C、C3X、H3X、C2X2およびH2X2(ここで、Xは亜鉛結合アミノ酸である)(これらに限定されるものではない)のような種々のフレームワーク構造を有しうる。ジンクフィンガー構造の説明において通常用いられるとおり、これらのフレームワーク構造においては、「C」はシステイン残基を表し、「H」はヒスチジン残基を表す。フレームワークC2H2を有するジンクフィンガーには、例えば以下のものに記載されているジンクフィンガーが含まれるが、それらに限定されるものではない:Barbasら,国際公開番号WO2008/006028、Barbas,米国特許第7,101,972号、Barbasら,米国特許第7,067,617号、Barbasら,米国特許第6,790,941号、Barbas,米国特許第6,610,512号、Barbasら,米国特許第6,242,568号、Barbasら,米国特許第6,140,466号、Barbas,米国特許第6,140,081号、Barbas,米国特許出願公開第20060223757号、Barbasら,米国特許出願公開第20060211846号、Barbasら,米国特許出願公開第20060078880号、Barbas,米国特許出願公開第20050148075号、Barbasら,米国特許出願公開第20050084885号、Barbasら,米国特許出願公開第20040224385号、Barbasら,米国特許出願公開第20030059767号、Barbasら,米国特許出願公開第20020165356号(これらの全てを参照により本明細書に組み入れることとする。他のジンクフィンガーは以下のものに記載されている:Rebarら,米国特許第7,067,317号;Liuら,米国特許第7,030,215号;Rebarら,米国特許第7,026,462号;Caseら,米国特許第7,013,219号;Cox IIIら,米国特許第6,979,539号;Caseら,米国特許第6,933,113号;Cox IIIら,米国特許第6,824,978号;Eisenbergら,米国特許第6,794,136号;Eisenbergら,米国特許第6,785,613号;Caseら,米国特許第6,777,185号;Chooら,米国特許第6,706,470号;Cox IMら,米国特許第6,607,882号;Caseら,米国特許第6,599,692号;Cox IIら,米国特許第6,534,261号;Caseら,米国特許第6,503,717号;Eisenbergら,米国特許第6,453,242号;Rebarら,米国特許出願公開第2006/0246588号;Rebarら,米国特許出願公開第2006/0246567号;Caseら,米国特許出願公開第2006/0166263号;Cox HIら,米国特許出願公開第2006/0078878号;Rebarら,米国特許出願公開第2005/0257062号;Cox IIIら,米国特許出願公開第2005/0215502号;Cox MIら,米国特許出願公開第2005/0130304号;Caseら,米国特許出願公開第2004/0203064;Caseら,米国特許出願公開第2003/0166141号;Caseら,米国特許出願公開第2003/0134318号;Eisenbergら,米国特許出願公開第2003/0105593号;Cox IMら,米国特許出願公開第2003/0087817号;Rebarら,米国特許出願公開第2003/0021776号;およびCaseら,米国特許出願公開第2002/0081614号(これらの全てを参照により本明細書に組み入れることとする)。例えば、これらの特許および特許公開に記載されている1つの代替手段は、いわゆる「D−エイブル(able)部位」、およびそのような部位に結合するジンクフィンガーモジュールまたはジンクフィンガーDNA結合ドメインの使用を含む。「D−エイブル」部位は、適切に設計されたジンクフィンガーモジュールまたはジンクフィンガーDNA結合ドメインが標的鎖の3個の塩基ではなく4個の塩基に結合することを可能にする標的部位の領域である。そのようなジンクフィンガーモジュールまたはジンクフィンガーDNA結合ドメインは二本鎖DNA標的セグメントの一方の鎖(標的鎖)上の3個の塩基のトリプレットおよび他方の相補鎖上の第4の塩基に結合する。4塩基標的セグメントへの単一ジンクフィンガーの結合は標的鎖の配列およびジンクフィンガーのアミノ酸配列の両方に制約を課す。
【0040】
本明細書中で用いる、本明細書中に現れる種々のアミノ酸配列に存在するアミノ酸は、それらの良く知られた3文字または1文字略語に従い特定される。種々のDNAセグメントに存在するヌクレオチドは、当技術分野で通常用いられる標準的な1文字表示で示される。
【0041】
ペプチドまたはタンパク質においては、アミノ酸の適当な保存的置換が当業者に公知であり、一般に、生じる分子の生物活性を改変することなく施されうる。一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は生物活性を実質的に改変しないと当業者は認識している(例えば、Watsonら,Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,Benjamin/Cummings,p.224を参照されたい)。特に、そのような保存的変異体は修飾アミノ酸配列を有していて、該変化はタンパク質(保存的変異体)の構造および/または活性、例えば抗体活性、酵素活性または受容体活性を実質的に改変しない。これらは、アミノ酸配列の保存的修飾変異、すなわち、タンパク質の活性に決定的に重要ではない残基のアミノ酸置換、付加または欠失、あるいは、決定的に重要なアミノ酸の置換でさえも構造および/または活性を実質的に改変しないような、類似特性(例えば、酸性、塩基性、正または負電荷、極性または無極性など)を有する残基によるアミノ酸の置換を含む。機能的に類似したアミノ酸を示す保存的置換の表が当技術分野でよく知られている。例えば、保存的置換を選択するための1つの典型的な指針は以下のものを含む(元の残基に続いて典型的な置換が示されている):Ala/GlyまたはSer;Arg/Lys;Asn/GlnまたはHis;Asp/Glu;Cys/Ser;Gln/Asn;Gly/Asp;Gly/AlaまたはPro;His/AsnまたはGln;Ile/LeuまたはVal;Leu/IleまたはVal;Lys/ArgまたはGlnまたはGlu;Met/LeuまたはTyrまたはIle;Phe/MetまたはLeuまたはTyr;Ser/Thr;Thr/Ser;Trp/Tyr;Tyr/TrpまたはPhe;Val/IleまたはLeu。代替的な典型的指針は、互いに保存的置換であるアミノ酸をそれぞれが含む以下の6つのグループを用いる:(1)アラニン(AまたはAla)、セリン(SまたはSer)、トレオニン(TまたはThr);(2)アスパラギン酸(DまたはAsp)、グルタミン酸(EまたはGlu);(3)アスパラギン(NまたはAsn)、グルタミン(QまたはGln);(4)アルギニン(RまたはArg)、リシン(KまたはLys);(5)イソロイシン(IまたはIle)、ロイシン(LまたはLeu)、メチオニン(MまたはMet)、バリン(VまたはVal);および(6)フェニルアラニン(FまたはPhe)、チロシン(YまたはTyr)、トリプトファン(WまたはTrp);(例えば、Creighton(1984)Proteins,W.H.Freeman and Company;SchulzおよびSchimer(1979)Principles of Protein Structure,Springer−Verlagも参照されたい)。前記置換は唯一の可能な保存的置換ではないと当業者は理解するであろう。例えば、幾つかの目的には、全ての荷電アミノ酸を、それらが正であるか負であるかにかかわらず、互いに保存的置換とみなしうる。また、コード化配列内の単一アミノ酸または小さな比率のアミノ酸を改変し、付加し、または欠失させる個々の置換、欠失または付加も、運ばれるタンパク質の三次元構造および機能がそのような変異により保存されている場合には、「保存的修飾変異」とみなされうる。
【0042】
本明細書中で用いる「発現ベクター」なる語は、本発明で提供される発現カセットまたは本発明における融合タンパク質をコードする核酸のような異種DNAの挿入または組込みにより操作されているプラスミド、ウイルス、ファジミドまたは当技術分野で公知の他のビヒクルを意味する。そのような発現ベクターは、典型的に、細胞における挿入核酸の効率的転写のためのプロモーター配列を含有する。該発現ベクターは、典型的に、複製起点、プロモーター、および形質転換細胞の表現型選択を可能にする特異的遺伝子を含有する。
【0043】
本明細書中で用いる「宿主細胞」なる語は、ベクターが増幅され、そのDNAが発現される細胞を意味する。この語はまた、対象宿主細胞の任意の後代を含む。全ての後代は親細胞と同一でなくてもよいと理解される。なぜなら、複製中に突然変異が生じうるからである。「宿主細胞」なる語が用いられる場合には、そのような後代が含まれる。外来DNAが宿主内で連続的に維持される場合の安定導入の方法は当技術分野で公知である。
【0044】
本明細書中で用いる遺伝子治療は、そのような治療が求められる障害または状態を有する哺乳動物、特にヒトの或る細胞、標的細胞への異種DNAの導入を含む。異種DNAが発現され、それによりコードされる治療用産物が産生されるように、該DNAは、選択された標的細胞内に導入される。あるいは、該異種DNAは、何らかの方法で、治療用産物をコードするDNAの発現を引き起こし、あるいはそれは、何らかの方法で、治療用産物の発現を直接的または間接的に引き起こすペプチドまたはRNAのような産物をコードしうる。遺伝子治療は、それが行われた哺乳動物または細胞により産生される遺伝子産物を補足する又は欠損遺伝子を置換する遺伝子産物をコードする核酸を運搬するためにも用いられうる。導入核酸は、哺乳動物宿主において通常は産生されない又は治療的に有効な量もしくは治療的に有効な時点で産生されない治療用化合物、例えば、その増殖因子インヒビター、または腫瘍壊死因子もしくはそのインヒビター、例えば、それに対する受容体をコードしうる。該治療用産物をコードする異種DNAは、該産物またはその発現を増強または改変するために、罹患宿主の細胞内への導入の前に修飾されうる。遺伝子治療はまた、遺伝子発現のインヒビターまたはリプレッサーまたは他のモジュレーターの運搬を含みうる。
【0045】
本明細書中で用いる異種DNAは、それが発現される細胞によりインビボで通常は産生されないRNAおよびタンパク質をコードする、あるいは転写、翻訳または他の調節可能な生化学的過程に影響を及ぼすことにより内因性DNAの発現を改変するメディエーターを媒介またはコードするDNAである。異種DNAは外来DNAとも称されうる。発現される細胞にとって異種または外来性であるものとして当業者が認識し又はみなす任意のDNAが本発明においては異種DNAに含まれる。異種DNAの例には、薬物耐性を付与するタンパク質のような追跡可能なマーカータンパク質をコードするDNA、抗癌物質、酵素およびホルモンのような治療的に有効な基質をコードするDNA、ならびに抗体のような他のタイプのタンパク質をコードするDNAが含まれるが、これらに限定されるものではない。異種DNAによりコードされる抗体は、該異種DNAが導入された細胞の表面上で分泌または発現されうる。
【0046】
したがって、本発明においては、異種DNAまたは外来DNAには、ゲノム内で見出される対応DNA分子としての正確な配向および位置では存在しないDNA分子が含まれる。それは別の生物または種からの(すなわち、外因性)DNA分子をも意味しうる。
【0047】
本明細書中で用いる治療的に有効な産物は、宿主内へに核酸が導入されると、遺伝的または後天的疾患の症状、徴候を改善もしくは排除する又は該疾患を治癒させる産物が発現される、異種核酸、典型的にはDNAによりコードされる産物である。典型的には、所望の遺伝子産物をコードするDNAをプラスミドベクター内にクローニングし、通常の方法、例えばリン酸カルシウム媒介性DNA取り込み((1981)Somat.Cell.Mol.Genet.7:603−616を参照されたい)またはプロデューサー細胞、例えばパッケージング細胞内へのマイクロインジェクションにより導入する。プロデューサー細胞内での増幅の後、異種DNAを含有するベクターを、選択された標的細胞内に導入する。
【0048】
本明細書中で用いる発現ベクターまたは運搬ベクターは、適当な宿主細胞内での発現のために外来または異種DNAが挿入されうる任意のプラスミドまたはウイルスを意味する。すなわち、該DNAによりコードされるタンパク質またはポリペプチドは宿主細胞の系において合成される。1以上のタンパク質をコードするDNAセグメント(遺伝子)の発現を導くベクターは本明細書においては「発現ベクター」と称される。逆転写酵素を使用して産生されるmRNAからのcDNA(相補的DNA)のクローニングを可能にするベクターも含まれる。
【0049】
本明細書中で用いる遺伝子は、RNAまたはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸分子を意味する。遺伝子はRNAまたはDNAでありうる。遺伝子はコード領域の前および後の領域(リーダーおよびトレーラー)ならびに個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)を含みうる。
【0050】
本明細書中で用いる、核酸分子またはポリペプチドまたは他の生体分子に関する「単離(された)」なる語は、該ポリペプチドまたは核酸が得られた遺伝的環境から該核酸またはポリペプチドが分離されていることを意味する。それは、該生体分子が天然状態から改変されていることをも意味しうる。該用語が本明細書において用いられている場合、例えば、生きた動物において天然で存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離」されていないが、その天然状態の共存物質から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離」されている。したがって、組換え宿主細胞内で産生および/または含有されるポリペプチドまたはポリヌクレオチドは単離されているとみなされる。また、組換え宿主細胞または天然源から部分的または実質的に精製されているポリペプチドまたはポリヌクレオチドは「単離されたポリペプチド」または「単離されたポリヌクレオチド」であると意図される。例えば、化合物の組換え産生形態は、Smithら(1988)Gene 67:3140に記載されている1工程法により実質的に精製されうる。単離(された)および精製(された)なる語は互換的に用いられることがある。
【0051】
したがって、「単離(された)」は、天然に存在するゲノムにおいて、関心のある核酸をコードする遺伝子に直に隣接している遺伝子のコード配列を該核酸が含有しないことを意味する。単離されたDNAは一本鎖または二本鎖であることが可能であり、ゲノムDNA、cDNA、組換えハイブリッドDNAまたは合成DNAでありうる。それは天然DNA配列と同一であることが可能であり、あるいは1以上のヌクレオチドの欠失、付加または置換によりそのような配列とは異なっていることが可能である。
【0052】
生体細胞または宿主から得られた調製物に関して用いられる「単離(された)」または「精製(された)」は、関心のあるDNAまたはタンパク質の粗抽出物を含む、示されているDNAまたはタンパク質を含有する任意の細胞抽出物を意味する。例えば、タンパク質の場合、精製された調製物は、個々の技術または一連の調製用もしくは生化学的技術に従い得られることが可能であり、関心のあるDNAまたはタンパク質はこれらの調製物において種々の純度で存在しうる。タンパク質の場合には特に、該方法には、例えば、硫酸アンモニウム分画、ゲル濾過、イオン交換変化クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、密度勾配遠心分離、エレクトロフォーカシング(等電点電気泳動)、クロマトフォーカシングおよび電気泳動が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
「実質的に純粋な」または「単離された」DNAまたはタンパク質の調製物は、そのようなDNAまたはタンパク質に天然で通常付随している天然に存在する物質を含有しない調製物を意味すると理解されるべきである。「実質的に純粋な」は、少なくとも95%の関心のあるDNAまたはタンパク質を含有する「高度に」精製された調製物を意味すると理解されるべきである。
【0054】
関心のあるDNAまたはタンパク質を含有する細胞抽出物は、関心のあるDNAを含有する又は該タンパク質を発現する細胞から得られた均一調製物または細胞非含有調製物を意味すると理解されるべきである。「細胞抽出物」なる語は、培地、特に、該細胞が取り出された使用済み培地を含むと意図される。
【0055】
本明細書中で用いる、遺伝子のプロモーター領域は、構造遺伝子の5’側に典型的に位置する調節要素を含み、介在ヌクレオチド配列により隔てられた複数の調節要素が存在しうる。遺伝子を活性化させるためには、転写因子として公知のタンパク質を該遺伝子のプロモーター領域に付着させる。この合体状態は、第2の遺伝的セグメントをDNAからRNAへと酵素が転写することを可能にすることにより、「スイッチの入った状態(オン・スイッチ)」に似たものとなる。ほとんどの場合、生じたRNA分子は特定のタンパク質の合成のための鋳型として働き、時には、RNA自体が最終産物である。プロモーター領域は通常の細胞プロモーターまたは例えば腫瘍プロモーターでありうる。腫瘍プロモーターは一般にウイルス由来プロモーターである。ジンクフィンガー結合性ポリペプチドが標的化されうるウイルスプロモーターには、レトロウイルス長末端反復配列(LTR)、およびレンチウイルスプロモーター、例えば、ヒトT細胞リンホトリピックウイルス(HTLV)1および2ならびにヒト免疫不全ウイルス(HIV)1または2からのプロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本明細書中で用いる「トランケート化」または類似用語は、ZFP、TALEまたはセリンリコンビナーゼのような天然タンパク質の不完全なアミノ酸配列を含有するポリペプチド誘導体を意味する。
【0057】
本明細書中で用いるポリペプチド「変異体」または「誘導体」は、所望の活性、例えば、リガンドもしくは核酸分子に結合する又は転写をモジュレーションする能力を尚も保有する、ポリペプチドの突然変異誘発形態であるポリペプチドまたは組換えにより産生されたポリペプチドを意味する。
【0058】
組成物、担体、希釈物および試薬に関して本明細書中で用いる「医薬上許容される」、「生理的に許容される」なる語およびそれらの文法的派生語は互換的に用いられ、該組成物の投与を禁止するほどの悪心、眩暈、胃の不調などのような望ましくない生理的作用をもたらすことなくヒトに又はヒトの表面上に該物質が投与可能であることを表す。
【0059】
本明細書中で用いる「ベクター」なる語は、それが機能的に連結されている別の核酸を、異なる遺伝的環境間で輸送しうる核酸分子を意味する。好ましいベクターとしては、それが機能的に連結されているDNAセグメントに存在する構造遺伝子産物の自律的な複製および発現が可能なベクターが挙げられる。したがって、ベクターは、好ましくは、既に記載されているレプリコンおよび選択マーカーを含有する。ベクターには、発現ベクターが含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0060】
DNA断片を含む核酸分子に関して用いる「機能的に連結(されている)」なる語は、機能的に連結されている部分が意図されたとおりに機能するように、配列またはセグメントが、好ましくは通常のホスホジエステル結合により、一本鎖または二本鎖形態の1本のDNA鎖内に共有結合されていることを意味する。ここで提供される転写単位またはカセットが機能的に連結されるベクターの選択は、当技術分野でよく知られているとおり、望まれる機能特性、例えば、ベクター複製およびタンパク質発現、ならびに形質転換される宿主細胞に直接左右され、これらは、組換えDNA分子を構築する技術分野に固有の制約である。
【0061】
本明細書中で用いる、治療用組成物の投与はいずれかの手段により行われることが可能であり、経口、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、注入技術、腹腔内投与および非経口投与(これらに限定されるものではない)を含む。
【0062】
細胞を形質転換する方法は当技術分野でよく知られている。「形質転換」は、外来DNAの取り込みにより生じる、細胞における遺伝可能な改変を意味する。適当な方法には、ウイルス感染、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクションなどが含まれる。方法の選択は、一般に、形質転換される細胞の型、および形質転換が生じる状況(すなわち、インビトロ、エクスビボまたはインビボ)に左右される。これらの方法の一般的考察はAusubelら,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons,1995に見出されうる。
【0063】
「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」なる語は互換的に用いられ、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはそれらの類似体の任意長のヌクレオチドの重合形態を意味する。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を有することが可能であり、公知または未知の任意の機能を行いうる。ポリヌクレオチドの非限定的な例には、遺伝子、遺伝子断片、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意配列の単離DNA、任意配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマーが含まれる。
【0064】
「発現カセット」は、関心のある遺伝子/コード配列の発現を導きうる任意の核酸構築物を含む。そのようなカセットは、発現カセットを標的細胞内に導入するために、「ベクター」、「ベクター構築物」、「発現ベクター」または「遺伝子導入ベクター」へと構築されうる。したがって、該用語はクローニングおよび発現ビヒクルならびにウイルスベクターを含む。
【0065】
核酸およびアミノ酸の「配列同一性」を決定するための技術も当技術分野において公知である。典型的には、そのような技術は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定し、および/またはそれによりコードされるアミノ酸配列を決定し、これらの配列を第2のヌクレオチドもしくはアミノ酸配列と比較することを含む。一般に、「同一性」は、それぞれ、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の厳密なヌクレオチドとヌクレオチドとの又はアミノ酸とアミノ酸との一致を意味する。2以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)が、それらの「同一性(%)」を決定することにより比較されうる。2つの配列の同一性(%)は、核酸配列の場合でもアミノ酸配列の場合でも、2つの整列配列の間の厳密なマッチの数を、短いほうの配列の長さで割り算し、100を掛けたものである。核酸配列のおおよそのアライメントはSmithおよびWaterman,Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局所相同性アルゴリズムにより得られる。このアルゴリズムは、Dayhoff(Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff編,5suppl.3:353−358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USA)により開発されGribskov(Nucl.Acids Res.14(6):6745−6763(1986))により標準化されたスコアリングマトリックスを使用することにより、アミノ酸配列に適用されうる。配列の同一性(%)を決定するためのこのアルゴリズムの典型的な実行は「BestFit」ユーティリティアプリケーションにおいてGenetics Computer Group(Madison,Wis.)によりもたらされる。この方法のためのデフォルトパラメータはWisconsin Sequence Analysis Package Program Manual,Version 8(1995)(Genetics Computer Group,Madison,Wis.から入手可能)に記載されている。本発明の場合の同一性(%)を確定するための好ましい方法は、University of Edinburghが著作権を有しJohn F.CollinsおよびShane S.Sturrokにより開発されIntelliGenetics,Inc.(Mountain View,Calif)により頒布されたプログラムのMPSRCEパッケージを使用することである。このパッケージの一式から、スミス−ウォーターマン(Smith−Waterman)アルゴリズムが使用可能であり、ここで、スコアリング表に関するデフォルトパラメータ(例えば、12のギャップオープンペナルティ、1のギャップ伸長ペナルティおよび6のギャップ)が使用される。得られたデータから、「マッチ(Match)」値が「配列同一性」を表す。配列間の同一性または類似性を計算するための他の適当なプログラムは当技術分野で一般に公知であり、例えば、もう1つのアライメントプログラムとして、デフォルトパラメータで使用されるBLASTが挙げられる。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメータを用いて使用されうる:遺伝暗号=標準;フィルター=無し;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;記述=50配列;ソート=HIGH SCORE;データベース=非冗長,GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+Swissタンパク質+Spupdate+PIR。
【0066】
あるいは、相同領域間で安定二本鎖を形成する条件下のポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション、ならびにそれに続く、一本鎖特異的ヌクレアーゼでの消化および消化断片のサイズ決定により、相同性が決定されうる。2つのDNAまたは2つのポリペプチド配列が互いに「実質的に相同」であるのは、それらの配列が、前記方法を用いて決定された場合に、該分子の一定の長さにわたって少なくとも約80%〜85%、好ましくは少なくとも約85%〜90%、より好ましくは少なくとも約90%〜95%、最も好ましくは少なくとも約95%〜98%の配列同一性を示す場合である。本明細書中で用いる実質的に相同はまた、特定されたDNAまたはポリペプチド配列に対して完全な同一性を示す配列に関するものである。実質的に相同なDNA配列は、例えば、その個々の系に関して定められるストリンジェントな条件下、サザンハイブリダイゼーション実験において特定されうる。適当なハイブリダイゼーション条件の決定は当技術分野の技量の範囲内である。例えば、Sambrookら,前掲;DNA Cloning,前掲;Nucleic Acid Hybridization,前掲を参照されたい。
【0067】
したがって、本発明は、同等の生物活性を保有するポリペプチドをコードし実質的に相同である、本発明のキメラポリペプチドをコードする核酸およびアミノ酸配列を提供する。
【0068】
2つの核酸断片は、本明細書に記載されているとおりに「選択的にハイブリダイズする」とみなされる。2つの核酸分子の間の配列同一性の度合はそのような分子間のハイブリダイゼーション事象の効率および強度に影響を及ぼす。部分的に同一な核酸配列は、完全同一配列が標的分子にハイブリダイズすることを少なくとも部分的に抑制するであろう。完全同一配列のハイブリダイゼーションの抑制は、当技術分野でよく知られているハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザンブロット、ノーザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど;Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい)を用いて評価されうる。そのようなアッセイは、種々の度合の選択性を用いて、例えば、低いストリンジェンシーから高いストリンジェンシーへと変化する条件を用いて行われうる。低いストリンジェンシーの条件を用いる場合、非特異的結合の非存在は、配列同一性の部分的な度合さえも欠く第2プローブ(例えば、標的分子に対して約30%未満の配列同一性を有するプローブ)を使用して評価されることが可能であり、この場合、非特異的結合事象の非存在下では、第2プローブは標的にハイブリダイズしない。
【0069】
ハイブリダイゼーションに基づく検出系を用いる場合、標的核酸配列に相補的な核酸プローブを選択し、ついで、適当な条件の選択により、該プローブおよび該標的配列が互いに「選択的にハイブリダイズ」または結合してハイブリッド分子を形成する。「中等度にストリンジェント」な条件下で標的配列に選択的にハイブリダイズしうる核酸分子は、典型的に、選択された核酸プローブの配列に対して少なくとも約70%の配列同一性を有する少なくとも約10〜14ヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする条件下でハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、典型的に、選択された核酸プローブの配列に対して約90〜95%以上の配列同一性を有する少なくとも約10〜14ヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする。プローブおよび標的が特定の度合の配列同一性を有する場合のプローブ/標的ハイブリダイゼーションに有用なハイブリダイゼーション条件は、当技術分野で公知のとおりに決定されうる(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,B.D.HamesおよびS.J.Higgins編,(1985)Oxford;Washington,D.C.;IRL Pressを参照されたい)。
【0070】
ハイブリダイゼーションのためのストリンジェンシー条件に関しては、例えば、以下の要因を変動させることにより、個々のストリンジェンシーを確立するために多数の同等の条件が用いられうることが当技術分野でよく知られている:プローブおよび標的配列の長さおよび性質、種々の配列の塩基組成、塩および他のハイブリダイゼーション溶液成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中のブロッキング剤(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストランおよびポリエチレングリコール)の存在または非存在、ハイブリダイゼーション反応温度および時間パラメータ、ならびに種々の洗浄条件。ハイブリダイゼーション条件の個々の組合せの選択は、当技術分野における標準的な方法に従い選択される(例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい)。
【0071】
第1ポリヌクレオチドが第2ポリヌクレオチド「から誘導された(に由来する)」と言えるのは、それが、第2ポリヌクレオチド、そのcDNA、その相補体の領域と同じ又は実質的に同じ塩基対配列を有する場合、あるいはそれが前記の配列同一性を示す場合である。
【0072】
第1ポリペプチドが第2ポリペプチド「から誘導された(に由来する)」と言えるのは、それが、(i)第2ポリヌクレオチドから誘導された(に由来する)第1ポリヌクレオチドによりコードされている、あるいは(ii)前記のとおりの第2ポリペプチドに対する配列同一性を示す場合である。
【0073】
部位特異的リコンビナーゼはゲノム操作のための強力な手段である。セリンリコンビナーゼのレゾルバーゼ/インベルターゼファミリーの超活性化変異体はアクセサリーファクターの非存在下で機能し、したがって、天然DNA結合ドメインを操作ジンクフィンガータンパク質(ZFP)で置換することにより、関心のある配列に再標的化されうる。
【0074】
本明細書に記載されているジンクフィンガーリコンビナーゼは、カスタム設計ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびレゾルバーゼ/インベルターゼファミリーのセリンリコンビナーゼに由来する活性化触媒ドメインから構成されるキメラ酵素である。操作された触媒ドメインから構築されたZFRは、使用者により定められたDNA標的を、高い特異性で効率的に組換え、設計されたZFRはDNAをヒト細胞内の標的化内因性遺伝子座内に組込む。
【0075】
1つの態様においては、本発明は、対応野生型リコンビナーゼより大きな触媒特異性を有する複数のジンクフィンガーリコンビナーゼ(ZFR)タンパク質の製造方法を提供する。該方法は、野生型Gin触媒ドメインに関するGin Ile120、Thr123、Leu127、Ile136およびGly137またはそれらの組合せと同等な位置においてリコンビナーゼ触媒ドメイン上でランダム突然変異誘発を行い、各アミノ酸に関して2および3位において該DNAを突然変異させ、該リコンビナーゼ触媒ドメインを複数のジンクフィンガー結合ドメインと融合させてZFRを形成させ、対応野生型リコンビナーゼより大きな触媒特異性を有するZFRを富化させることを含む。幾つかの実施形態においては、ZFRは、GC、GT、CA、TTおよびACから選択されるDNA標的に対する触媒活性の増強を示す。1つの実施形態においては、該リコンビナーゼ触媒ドメインはIle136および/またはGly137において突然変異誘発される。
【0076】
本明細書中で用いる野生型Gin触媒ドメインは、以下のとおりに配列番号56として記載されているアミノ酸配列を有するポリペプチドの全部または一部を含むGin触媒ドメインを意味する。
【化1】
【0077】
種々の実施形態においては、本発明のキメラポリペプチドはGin触媒ドメイン(例えば、本発明の方法により製造されるもの)を含む。個々のGin触媒ドメインには、表1に記載されているものが含まれる。
【表1】
【0078】
種々の実施形態においては、本発明の方法により製造されるZFRには、複数のジンクフィンガー結合ドメインに機能的に連結されたGin触媒ドメインが含まれる。本発明により製造される典型的なZFRには、表2に記載されているものが含まれる。
【表2】
【0079】
実施例は、Gin触媒ドメインを有するZFRの製造を例示しているが、該方法は多数の他のリコンビナーゼの触媒ドメインに適用されうる。そのようなリコンビナーゼは以下のものを含む:a)Tn3(EcoTn3としても公知);Hin(StyHinとしても公知);MuGin;Sin;Beta;Pin;Min;Din;Cin;EcoTn21;SfaTn917;BmeTn5083;Bme53;Cpe;SauSK1;SauSK41;SauTn552;Ran;Aac;Lla;pMER05;Mlo92;Mlo90;Rrh;Pje;Req;PpsTn5501;Pae;Xan;ISXc5;Spy;RhizY4cG;SarpNL1;SsolSC1904a;SsolSC1904b;SsoISC1913;Aam606;MjaM0014;Pab;HpylS607;MtulS
Y349;MtuRv2792c;MtuRv2979c;MtuRv3828c;MtuRv0921;MceRv0921;TnpX;TndX;WwK;ラクトコッカスファージTP901−1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφ370.1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφFC1セリンリコンビナーゼ;リステリア(Listeria)ファージA118セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC3C8.24セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC2E1.37セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD78.04cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC8F4.15cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD12A.23セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCH10.38cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCC88.14セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージφC31セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージR4セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージφ105セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージSPBc2セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)プロファージSKINセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrAセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrBセリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)ファージBxb1セリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)プロファージφRVlセリンリコンビナーゼ;YBCK
ECOLI;Y4bA;Bja;Spn;Cac 1956;およびCac 1954;またはb)a)の突然変異タンパク質。
【0080】
個々のドメインに対する不完全なモジュール性、全DNAトリプレットに対する高アフィニティ結合性の欠如および構築の困難さが、専門化されていない研究室におけるZFPの広範な採用を妨げている。キサントモナス(Xanthomonas)からの転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質における新規タイプのDNA結合ドメインの発見がZFPの代替手段をもたらす。キメラTALEリコンビナーゼ(TALER)、すなわち、DNAインベルターゼGinからの超活性化触媒ドメインと最適化TALE構造との操作融合体が本明細書に記載されている。細菌細胞においてジンクフィンガーリコンビナーゼに匹敵する効率および特異性でDNAを修飾するTALER融合体を特定するために、漸増トランケート化TALE変異体のライブラリーを特定した。実施例にも示されているとおり、TALERは哺乳類細胞においてDNAを組換える。本明細書に記載されているTALER構造体は特別仕様(カスタム)TALEドメインの挿入のためのプラットフォームとなり、したがって、操作リコンビナーゼの標的化能ならびにバイオテクノロジーおよび医学におけるそれらの潜在的用途を有意に拡大する。
【0081】
転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質は、実質的に全てのDNA配列に結合するように設計されうる。TALE DNA結合ドメインの設計のための一般的指針は、TALEにより結合されるDNA配列の最も5’側の塩基(N
0塩基)がチミンであるべきだと提示している。本発明者らは、この位置に各DNA塩基を含有するTALE転写因子(TALE−TF)、TALEリコンビナーゼ(TALE−R)およびTALEヌクレアーゼ(TALEN)の活性の分析により、該N
0要件を定量した。5’Tの非存在下では、5’Tを含有する標的配列と比較して、TALE−TF活性においては>1000倍までの、TALE−R活性においては100倍までの、そしてTALEN活性においては10倍までのTALE活性の低下が観察された。全ての可能なN
0塩基を認識するTALE構造体を開発するために、TALE−R活性選択と組合された構造誘導ライブラリー設計を用いて、任意のN0塩基を含有する新規TALE N末端ドメインを得た。G選択的ドメインおよび広範反応性ドメインを単離し、特徴づけした。TALE−R形態において選択された操作されたTALEドメインはモジュラー性を示し、TALE−TFおよびTALEN構造において活性であった。得られたN末端ドメインは、TALE結合性タンパク質およびデザイナー(designer)酵素としての任意のDNA配列の、有効かつ制約の無い、TALEに基づく標的化をもたらす。
【0082】
1つの態様においては、本発明は、所望のヌクレオチドに特異的に結合する転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質結合ドメインの製造方法を提供する。実施例に示されているとおり、該方法は、a)可変性二残基(RVD)内の又はRVDの1〜2アミノ酸残基N末端側もしくはC末端側のアミノ酸残基を突然変異させることにより、TALEタンパク質結合ドメインのアミノ酸配列をランダム化し、b)所望のヌクレオチドに特異的に結合する、(a)のランダム化TALEタンパク質結合ドメインを選択することを含む。
【0083】
配列特異的ヌクレアーゼ、リコンビナーゼおよび転写因子を本発明において提供する。該配列特異的ポリペプチドは特別仕様(カスタム)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。したがって、もう1つの態様においては、本発明はキメラポリペプチドを提供する。該ポリペプチドは、a)リコンビナーゼ、転写因子またはヌクレアーゼ、およびb)転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質を含む。
【0084】
TALEは植物病原性細菌のタンパク質であり、該病原体により植物細胞内に注入され、該植物細胞において、それは核に移行し、転写因子として機能して特異的植物遺伝子のスイッチを入れる。TALEの一次アミノ酸配列は、それが結合するヌクレオチド配列を決定する。したがって、TALEの標的部位は予測可能であり、本明細書に記載されているとおり、特定のヌクレオチド配列への結合を目的としてTALEは操作され、製造されうる。
【0085】
TALEコード化核酸配列に融合するのは、ヌクレアーゼ、転写因子もしくはリコンビナーゼまたはそれらの一部をコードする配列である。本発明において使用されうる多数のそのようなタンパク質が当技術分野で公知である。
【0086】
種々の実施形態において、該キメラポリペプチドはリコンビナーゼの触媒ドメインを含む。前記のとおり、多数のリコンビナーゼの触媒ドメインが使用されうる。そのようなリコンビナーゼには以下のものが含まれる:a)Tn3(EcoTn3としても公知);Hin(StyHinとしても公知);Gin(MuGinとしても公知);Sin;Beta;Pin;Min;Din;Cin;EcoTn21;SfaTn917;BmeTn5083;Bme53;Cpe;SauSK1;SauSK41;SauTn552;Ran;Aac;Lla;pMER05;Mlo92;Mlo90;Rrh;Pje;Req;PpsTn5501;Pae;Xan;ISXc5;Spy;RhizY4cG;SarpNL1;SsolSC1904a;SsolSC1904b;SsoISC1913;Aam606;MjaM0014;Pab;HpylS607;MtulS
Y349;MtuRv2792c;MtuRv2979c;MtuRv3828c;MtuRv0921;MceRv0921;TnpX;TndX;WwK;ラクトコッカスファージTP901−1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφ370.1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφFC1セリンリコンビナーゼ;リステリア(Listeria)ファージA118セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC3C8.24セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC2E1.37セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD78.04cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC8F4.15cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD12A.23セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCH10.38cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCC88.14セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージφC31セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージR4セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージφ105セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージSPBc2セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)プロファージSKINセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrAセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrBセリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)ファージBxb1セリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)プロファージφRVlセリンリコンビナーゼ;YBCK
ECOLI;Y4bA;Bja;Spn;Cac 1956;およびCac 1954;またはb)a)の突然変異タンパク質。好ましい実施形態においては、高活性Gin触媒ドメインが使用される。そのようなドメインは、本明細書に記載されているとおり、本発明の方法を用いて作製されうる。
【0087】
本明細書に記載されているとおり、TALEは、それがDNAと相互作用する特異性を決定する幾つかの不完全反復を含みうる。各反復は、該反復の残基12および13における個々の二アミノ酸配列に応じて、単一塩基に結合する。したがって、TALE内の該反復を操作することにより、特定のDNA部位が標的化されうる。そのような操作されたTALEは、例えば、特定のDNA配列に標的化される転写因子として使用されうる。
【0088】
実施例に例示されているとおり、本発明のキメラタンパク質は、表3に記載されている変異体およびその一部(例えば、RVDおよびNTD)により例示される。
【表3】
【0089】
種々の実施形態においては、キメラタンパク質は、C末端またはN末端トランケーション(トランケート化)を有するTALEタンパク質を含む。例えば、該TALEタンパク質は配列番号2の全部または一部を含みうる。幾つかの実施形態においては、該TALEタンパク質は配列番号2のアミノ酸残基27と268との間、92と134との間、120と129との間、74と147との間または87と120との間、例えば、アミノ酸残基28、74、87、92、95、120、124、128、129、147および150においてトランケート化されている。
【0090】
もう1つの実施形態においては、本発明は、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質を含む単離されたポリペプチドを提供し、該TALEタンパク質は、QはYである、QはSである、QはRである、WはRである、WはGである、Wは欠失している、SはRである、SはHである、SはAである、SはNである、およびSはTであることから選択される1以上の突然変異または欠失を有する配列番号3(VGKQWSGARAL)に記載されているアミノ酸配列を含むN末端ドメイン(NTD)を有する。
【0091】
幾つかの実施形態においては、NTDは、VGKYRGARAL(配列番号4)、VGKSRSGARAL(配列番号5)、VGKYHGARAL(配列番号6)およびVGKRGAGARAL(配列番号7)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0092】
もう1つの実施形態においては、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質を含む単離されたポリペプチドを提供し、該TALEタンパク質は、R
1はKである、QはYである、QはSである、QはRである、R
2はWである、R
2はGである、R
2は欠失している、SはRである、SはHである、SはAである、SはNである、およびSはTであることから選択される1以上の突然変異または欠失を有する配列番号8(IVDIAR
1QR
2SGDLA)に記載されているアミノ酸配列を含むN末端ドメイン(NTD)を有する。
【0093】
幾つかの実施形態においては、NTDは、IVDIARQWSGDLA(配列番号9)、IVDIARYRGDLA(配列番号10)、IVDIARSRSGDLA(配列番号11)、IVDIARYHGDLA(配列番号12)およびIVDIARRGAGDLA(配列番号13)から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0094】
もう1つの実施形態においては、TALEタンパク質は、以下のとおりに記載されるアミノ酸配列を有する修飾されたN
0ドメインを含む:LTPDQLVKIA
KRGGTAMEAVHASRNALTGAPLN(配列番号102)。種々の実施形態においては、TALEタンパク質は突然変異体を含み、ここで、配列番号102のKRGG(配列番号103)は、LDYE(配列番号104)、INLV(配列番号105)、YSKK(配列番号106)、NMAH(配列番号107)、SPTN(配列番号108)、SNTR(配列番号109)、LTTT(配列番号110)、VADL(配列番号111)、MVLS(配列番号112)、YNGR(配列番号113)、RIPR(配列番号114)、YSKI(配列番号115)、LTQY(配列番号116)、YLSK(配列番号117)、LRPN(配列番号118)、LFTN(配列番号119)、LLTN(配列番号120)、EEDK(配列番号121)、VTAM(配列番号122)、CPSR(配列番号123)、LTRV(配列番号124)、KGDL(配列番号125)、QKAL(配列番号126)、LYLL(配列番号127)、WISV(配列番号128)、GDQV(配列番号129)およびCPSR(配列番号130)から選択される。
【0095】
もう1つの実施形態においては、TALEタンパク質は、以下のとおりに記載されるアミノ酸配列を有する修飾されたN
−1ドメインを含む:MRSPKKKRKVQVDLRTLGYSQQQQEKIKPKVRSTVAQHHEALVGHGFTHAHIVALSQHPAALGTVAVTYQHIITALPEATHEDIVGVG
XXXXXARALEALLTDAGELRGPPLQLDTGQLVKIAKRGGVTAMEAVHASRNALTGAP(配列番号131)。種々の実施形態においては、配列番号131のXXXXXはKRPAG(配列番号132)またはKRPSG(配列番号133)である。また、該タンパク質は、活性の増強を示すE40G突然変異(配列番号131に関するもの)を含みうる。
【0096】
もう1つの実施形態においては、TALEタンパク質は、以下に記載されているアミノ酸配列を有する反復ドメインを含む:LTPDVVAI
SNNGGKQALETVQRLLPVLCQDGH(配列番号134)。種々の実施形態においては、TALEタンパク質は、配列番号134のSNNG(配列番号135)がRGGG(配列番号136)、RGGR(配列番号137)、RGVR(配列番号138)、KGGG(配列番号139)、SGGG(配列番号140)、GGRG(配列番号141)、LGGS(配列番号142)、MDNI(配列番号143)、RVMA(配列番号144)、LASV(配列番号145)、VGTG(配列番号146)およびQGGG(配列番号147)から選択される突然変異体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【
図1】
図1はTALER融合配向および活性に関する一連のグラフ表示および図示である。A)TALER活性を評価するために使用される分割βラクタマーゼ系を例示する図。B)各TALERおよびその対応標的部位(1=配列番号288;2=配列番号289;3=配列番号290)の融合配向を示す図。C)各設計TALER融合体の、その意図されるDNA標的に対する活性。組換えをバックグラウンド(ベクターのみの対照)に対して標準化した。D)コグネイト(同族)(Avr−20G)および非コグネイト(Avr−20T、Avr−20GG、PthXol−20G)DNA標的に対するGin−Avr活性。エラーバーは標準偏差(s.d.)(n=3)を示す。
【
図2】
図2は、選択されたTALERトランケーションの組換えプロファイルに関する一連のグラフ表示および図示である。A)20−メンバーTALERトランケーションライブラリーの設計を例示する図。B)漸増長(14、20、26、32および44bp)のコア配列を含有するDNA標的に対する選択されたTALER変異体の活性。C)漸増長のコア部位および非コグネイトコア配列を含有する基質の多様なパネルに対するGin−AvrXa7Δ120活性。エラーバーはs.d.(n=3)を示す。
【
図3】
図3は、漸増トランケーションライブラリーから選択されたTALER変異体に関する一連のグラフ表示である。A)選択されたTALERトランケーション変異体の度数。3ラウンドの選択の後、漸増トランケート化Gin−AvrXa7変異体を単離し、DNA配列決定を行ってトランケーション長を決定した。B)Avr−32G DNA標的に対する漸増トランケート化TALER変異体(Δ92〜Δ134の長さ)の活性。参考のために、最短(Δ145)および最長(Δ74)トランケーション変異体ならびにΔ87を含めた。C)コグネイトおよび非コグネイトDNA標的の多様なパネルに対するGin−AvrΔ74、Gin−AvrΔ128およびGin−AvrΔ145の活性。エラーバーはs.d.(n=3)を示す。
【
図4】
図4は合成TALERの活性に関する一連のグラフ表示である。A)DNA標的Avr−32GまたはPth−32Gに対する合成Gin−Avr15Δ128、Gin−Avr15Δ120およびGin−Pht15Δ120変異体の活性。B)Avr−32GおよびAvr−32Tに対するGin−AvrΔ120に基づく15〜20個の反復の長さのDBDを有する合成TALERの活性。エラーバーはs.d.(n=3)を示す。
【
図5】
図5は哺乳類細胞におけるTALER活性に関する一連のグラフ表示である。(A,B)(A)レポータープラスミド(Avr−32G、Avr−44GおよびC4−20G)の存在下のTALERまたはZFR発現ベクター(Gin−AvrΔ120およびGinC4)または(B)レポータープラスミド(Avr−G−ZF)を伴うTALERおよびZFR発現ベクターの組合せ体(Gin−AvrΔ120+GinC4)でコトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるルシフェラーゼ発現の低減倍数。エラーバーはs.d.(n=3)を示す。
【
図6】
図6は、AvrXa7(配列番号1:DNA配列;配列番号2:アミノ酸配列)のN末端設計トランケーションのためのプライマーの位置の図示である。星印はΔ120融合点の位置を示す。
【
図7】
図7はAvrXa7標的配列(配列番号16〜18)に関する天然野生型および合成RDVドメインの比較の図示である。
【
図8】
図8はAvrXa7タンパク質(配列番号19)のTALEおよびTALERアミノ酸配列の図示である。
【
図9】
図9は構築物AvrXa7 DNA配列(配列番号20)の図示である。
【
図10】
図10は構築物Gin−AvrΔ74アミノ酸配列(配列番号21)の図示である。
【
図11】
図11は構築物Gin−AvrΔ87アミノ酸配列(配列番号22)の図示である。
【
図12】
図12は構築物Gin−AvrΔ120アミノ酸配列(配列番号23)の図示である。
【
図13】
図13は構築物Gin−AvrΔ120
*アミノ酸配列(配列番号24)の図示である。
【
図14】
図14は構築物Gin−AvrΔ147アミノ酸配列(配列番号25)の図示である。
【
図15】
図15は構築物GinAvr15Δ128−合成タンパク質アミノ酸配列(配列番号26)の図示である。
【
図16】
図16は構築物Gin−Avr15Δ128−合成タンパク質DNA配列(配列番号27)の図示である。
【
図17】
図17は構築物GinAvr15Δ128−合成タンパク質アミノ酸配列(配列番号28)の図示である。
【
図18】
図18はTALE N末端ドメインの特異性に関する一連の図示およびグラフ表示である。A)対応標的DNAに結合したTALE(配列番号29)の例示。B)構造分析はN−1ヘアピン(N−0 − 配列番号30;N−1 − 配列番号31;およびRVD − 配列番号32)のW232による5’Tの接触を示唆している。このヘアピンはRVDヘアピンと有意な配列相同性を共有している。C〜F)C)AvrXa7 TALE−R、D)AvrXa7 TALE−TF、E)AvrXa7 MBPTALEおよびF)TALENを標的化するCCR5の場合のNT−T(wt)NTDの分析(5’Tとの比較において、
*=p<0.05,
**=p<0.01,
***=p<0.001)。
【
図19】
図19はリコンビナーゼ変異体に関する一連のグラフ表示および図示である。A〜C)A)5’G、B)5’AおよびC)5’Cを有する基質に対するリコンビナーゼ選択変異体の活性。
図18Dは、最適化TALE NTD(配列番号33〜36のアライメントであり、N−1ヘアピンにおける配列相違を例示する。E)MBP−TALE AvrXa7の場合の最適化NTD活性の包括的比較(野生型および5’A/G/Cとの比較において、
*=p<0.05,
**=p<0.01,
***=p<0.001)。
【
図20】
図20は、TALE−TFの場合の、選択されたNTDの分析の一連の図示およびグラフ表示である。A)転写活性化実験に使用されるルシフェラーゼレポータープラスミド上の5xAvrプロモーター領域(配列番号37)の例示。B)NT−T、NT−G、
【化2】
【0098】
および
【化3】
【0099】
ドメインを有するTALE TFによる、示されている5’残基を有する基質の相対ルシフェラーゼ活性化(NT−Tおよびそれぞれの5’A/G/C/Tとの比較において、
*=p<0.05,
**=p<0.01,
***=p<0.001)。
【
図21】
図21は、種々の5’塩基を有する野生型および進化NTDを有するTALENペアの設計および活性の一連の図示およびグラフ表示である。A)H32突然変異の誘導のための、標的部位(配列番号40〜47)を強調するために拡大されたCCR5遺伝子(配列番号38〜39)。B)野生型(NT−T)TALEN、非T5’残基に関して最適化されたドメインを有するTALENおよびdHax3 NTDの遺伝子編集効率。C)5’T特異性を有するTALENに対する、最適化NTDを有するTALENペアの増強倍数。各TALENペア基質に対する各NTDの活性が示されている。
【
図22】
図22は、NおよびC末端ドメイン(配列番号48〜53)のアライメントを示す図示である。
【
図23】
図23は、TALE−リコンビナーゼ選択法を例示する図示である。Not1/Stu1制限酵素および相補的連結を用いて、NTDのライブラリーをAvr15 TALE−R内にクローニングした。活性TALE−Rは、抗生物質(カルベネシリン)で選択され増幅されうる、より頻繁な組換え事象を引き起こす。得られたプラスミドは、消化されたNot1/Xba1であり、更なる選択および増幅のためにTALE−Rバックボーンベクター内に連結された。
【
図24】
図24は、ライブラリー選択体(ライブラリーXXXSGAR(配列番号39)およびライブラリーKXXGAR(配列番号291))から見出された変異体集団の概要の図示である。
【
図25】
図25は、NT−G(配列番号54)と、ラルストニア(Ralstonia)TALEドメインであるNTD−Brg11(配列番号55)とのアライメントを示す図示である。アライメントは、Brg11が5’G塩基に対する特異性を示しうることを示している。
【
図26】
図26は、ELISAによりアッセイされた場合の、5’A/G/C/T Avr15ヘアピンオリゴヌクレオチドを標的化するMBP−TALEタンパク質の相対結合アフィニティの一連のグラフ表示である。タンパク質濃度は〜75nMであった。プレートを120分間現像した。
【
図27】
図27は、TALEN編集後のPCR増幅CCR5の細胞アッセイの一連の図示およびグラフ表示であり、%インデルおよびインデル集団が右側に示されている。
【
図28】
図28は、
図27からの選択されたTALEN実験のアライメントインデル配列決定を示す図示である(上から下へ配列番号292〜332)。
【
図29】
図29は、5’残基においてのみ異なる同一5xAvrXa7プロモーターをそれぞれが標的化する2つの別々のゴールディ(Goldy)TALE−転写因子構造の活性の比較のグラフ表示である。
【
図30】
図30は、DNAに結合したジンクフィンガーリコンビナーゼ二量体の構造に関する一連の図示である。A)各ジンクフィンガーリコンビナーゼ(ZFR)単量体(青色またはオレンジ色)は、特別設計されたジンクフィンガーDNA結合ドメインに連結された活性化セリンリコンビナーゼ触媒ドメインからなる。γδレゾルバーゼおよびAartジンクフィンガータンパク質の結晶構造(PDB ID:それぞれ1GDTおよび2I13)からモデルを作製した。B)DNA(配列番号333〜334)に結合したZFR二量体の図。ZFR標的部位は、ZFR触媒ドメインにより認識される中央の20bpのコア配列に隣接する2つの逆転ジンクフィンガー結合部位(ZFBS)からなる。ジンクフィンガータンパク質(ZFP)は、「左」または「右」半分の部位(それぞれ青色およびオレンジ色の箱)を認識するように設計されうる。略語は以下のとおりである:NはA、T、CまたはGを示し、RはGまたはAを示し、YはCまたはTを示す。
【
図31】
図31はGinリコンビナーゼ触媒ドメインの特異性の一連のグラフ表示および図示である。A〜D)(A,配列番号335)それぞれの可能な二塩基の組合せをジヌクレオチドコアに、(B,配列番号336)それぞれの可能な二塩基の組合せを3および2位に、(C,配列番号337)それぞれの可能な一塩基置換を6、5および4位に、そして(D,配列番号338)それぞれの可能な一塩基置換を10、9、8および7位に含有するDNA標的上で組換えを測定した。置換塩基は各パネルの上に枠内に示されている。組換えを分割遺伝子再構築により評価し、クロラムフェニコール耐性形質転換体に対するカルベニシリン耐性形質転換体の比として測定した(「材料および方法」)。エラーバーは標準偏差(n=3)を示す。(E)(左)ジヌクレオチドコア、(中)6、5および4位、ならびに(右)10、9、8および7位におけるDNAとγδレゾルバーゼ二量体との相互作用(PDB ID:1GDT)。相互作用性残基は紫色の棒として示されている。塩基は以下のとおりに着色されている:A,黄色;T,青色;C,褐色;およびG,桃色。
【
図32】
図32はGinリコンビナーゼ触媒特異性の再操作の一連のグラフ表示および図示である。A)Gin触媒ドメインにより認識されるカノニカル(canonical)20bpコア。3および2位が枠内に示されている(配列番号339)。B)(上)DNAと複合体形成したγδレゾルバーゼの構造(PDB ID:1GDT)。突然変異誘発のために選択されたアーム領域残基が紫色の棒として示されている。(下)γδレゾルバーゼ(配列番号341)およびGinリコンビナーゼ(配列番号342)触媒ドメインの配列アライメント。保存残基が陰影付きのオレンジ色で示されている。黒色矢印は、突然変異誘発のために選択されたアーム領域位置を示す。C)分割遺伝子再構成選択系の図示。活性ZFR変異体の発現はβラクタマーゼリーディングフレームの回復およびアンピシリンに対する宿主細胞耐性を招く。実線はZFR標的部位の位置および同一性を示す。3および2位が下線で示されている(配列番号340)。D)3および2位にGC、GT、CA、TTおよびAC塩基の組合せを含有するコア部位を組換えるGin突然変異体の選択。星印は、インキュベーション時間が16時間から6時間へと短縮された選択工程を示す(「材料および方法」、実施例5)。E)3および2位におけるそれぞれの可能な二塩基の組合せに関する、選択された触媒ドメイン(β、γ、δ、εおよびζ、αにより示されている野生型Gin)の組換え特異性。意図されるDNA標的が下線で示されている。組換えは分割遺伝子再構築により決定され、3回重複して行われた。
【
図33】
図33は、哺乳類細胞における使用者により定められた配列を組換えるZFRの能力を例示する一連のグラフ表示および図示である。A)哺乳類細胞におけるZFR活性を評価するために使用されたルシフェラーゼレポーター系の図示。ZFR標的部位は、ルシフェラーゼ発現を駆動するSV40プロモーターに隣接している。実線は、潜在的ZFR標的部位を特定するために使用された44bpのコンセンサス標的配列を示す。下線付きの塩基はジンクフィンガー標的ならびに3および2位(配列番号343)を示す。B)示されているZFRペアおよびそれらのコグネイトレポータープラスミドでコトランスフェクトされたHEK293T細胞におけるルシフェラーゼ発現の低減倍数。低減倍数を空ベクターおよびレポータープラスミドでのトランスフェクションに対して標準化した。各ZFR標的部位(配列番号344〜362:上から下)の配列同一性および染色体位置、ならびに各ZFRペアの触媒ドメイン組成が示されている。下線付きの塩基は3および2位を示す。3つの独立した実験から標準誤差を計算した。ZFRのアミノ酸配列が表2に示されている。C)ZFRペアの特異性。各非コグネイトレポータープラスミドに関するGinC4およびZFRペア1〜9に関するルシフェラーゼの発現の低減倍数を測定した。対応コグネイトレポータープラスミドを含有する各ZFRペアの低減倍数に対して組換えを標準化した。アッセイを3回重複して行った。
【
図34】
図34は、ヒトゲノム内への組込みを標的化するZFRの能力を例示する一連のグラフ表示および図示である。A)ドナープラスミド(上)ならびにZFR1(配列番号363)、2(配列番号364)および3(配列番号365)により標的化されるゲノム遺伝子座の図示。白色の箱は隣接エキソンを示す。矢印は転写方向を示す。各ZFR標的の配列および位置が示されている。下線付きの塩基はジンクフィンガー標的ならびに3および2位を示す。B)ZFR媒介性組込みの効率。ドナープラスミドのみでトランスフェクトされた細胞からのデータに対してデータを標準化した。エラーバーは標準偏差(n=3)を示す。C)ZFR媒介性組込みのPCR分析。PCRプライマーの組合せは、(中)フォワード配向または(下)リバース配向の組込みプラスミドまたは(上)未修飾遺伝子座を増幅した。D)ZFR1(配列番号366)および3(配列番号367)に関するPCR増幅組込みドナーの代表的クロマトグラム。矢印は配列決定プライマー配向を示す。陰影付きの箱はゲノム標的配列を示す。
【
図35】
図35は、二量体境界の外に位置するリコンビナーゼDNA結合性残基の図示である。標的DNAと複合体形成したγδレゾルバーゼ。触媒ドメイン二量体はシアンブルー色に着色されている。DNAは灰色に着色されている。アーム領域残基は赤色の棒として示されている。二量体境界の残基は紫色の棒として示されている(PDB ID:1GDT)。
【
図36】
図36は、選択されたリコンビナーゼの配列分析の図示である。各標的化アーム位置におけるアミノ酸置換の百分率を示す円グラフ。第4ラウンドの選択の後、20個を超えるクローンが各ライブラリーから配列決定された。TTを組換えるクローンの配列分析は別の箇所に記載されている(1)。
【
図37】
図37は、単離された触媒ドメインのコア特異性を示す表である。4ラウンドの選択の後、3および2位に置換を有するコア配列を選択された触媒ドメインが組換える能力を評価した。帰属されたDNA標的が下線で示されている。リコンビナーゼ突然変異が示されている。星印は、更なる分析のために選択された触媒ドメインを示す。3および2位の野生型塩基の組合せはCCである。組換えは分割遺伝子再構築(2)により決定され、3回重複して行われた。TT置換を組換える触媒ドメインは別の箇所に記載されている(1)。
【
図38】
図38は、選択された触媒ドメインの位置特異性の一連のグラフ表示である。α、β、γ、δおよびζ触媒ドメインならびに対称置換標的部位の間の組換えアッセイ。(A(配列番号368))6、5および4位における4,000個を超えるランダム強力塩基(S:GまたはC)置換ならびに(B(配列番号369))10、9、8および7位における10
6個(可能な4.29×10
9個のうち)を超えるユニーク塩基組合せ(N:A、T、CまたはG)を含有するライブラリーDNA標的上で組換えを測定した。分割遺伝子再構築(2)(n=3)により組換えを測定した。
【
図39】
図39はZFRホモ二量体活性の一連のグラフ表示である。2.5ngの対応pGL3ZFRレポータープラスミドを伴う150ngのZFR−Rまたは150ngのZFR−LでHEK293T細胞をコトランスフェクトした。2.5ngのpGL3 ZFRレポータープラスミドを伴う150ngのZFR−Rおよび150ngのZFR−Lでのコトランスフェクションに対して組換えを標準化した。
【
図40】
図40は、ZFR修飾細胞のクローン分析を示す一連の図示である。PCRプライマーの組合せはフォワードまたはリバース配向の組込みプラスミドまたは未修飾ゲノム標的を増幅した。
【0100】
以下の実施例は、本発明の利点および特徴を更に例示するために記載されており、本発明の範囲を限定するものではない。それらは、用いられうるものの典型例であるが、それらの代わりに、当業者に公知の他の手順、方法または技術が用いられうる。
【0101】
実施例1
キメラTALEリコンビナーゼ
実験の概要
この研究はTALEリコンビナーゼ(TALER)の最初の例を示す。漸増トランケート化TALEドメインのライブラリーを使用して、細菌および哺乳類細胞においてDNAを組換えるために使用されうる最適化TALER構造を特定した。任意の特製TALE反復アレイが、本明細書に記載されているTALER構造内に挿入可能であり、したがって、バイオテクノロジーおよび医学における用途のための操作リコンビナーゼの標的化能を劇的に拡大する。
【0102】
以下の材料および方法をこの実施例において使用した。
【0103】
試薬
全ての酵素は、特に示されていない限り、New England BioLabsから購入した。プライマー配列を表4に示す。
【表4】
【0104】
プラスミド構築
Ginコード配列の5’側または3’側のいずれかにBamHI制限部位を導入するために、それぞれプライマー5’Gin
N−termおよび3’Gin
N−termまたは5’Gin
C−termおよび3’Gin
C−termでGin触媒ドメインをPCR増幅した。PCR産物をpBluescriptII(Fermentas)のSacIおよびXbaI制限部位内に連結して、pB−Bam−GinおよびpB−Gin−Bamを得た。C末端およびN末端TALER融合体を作製するために、AvrXa7遺伝子(Iowa State UniversityのB.Yang博士から快く提供していただいたもの)をBamHIでpWAvrXa7から遊離させ、pB−Bam−GinおよびpB−Gin−Bam(41)のBamHI部位内に連結して、それぞれpB−Avr−Bam−GinおよびpB−Gin−Bam−Avrを確立させた。各TALERの正しい構築を配列分析により実証した(
図6〜16)。
【0105】
AvrXa7のN末端トランケート化体を作製するために、5’Avr−n−(1−10)および3’ Avr+28または3’Avr+95プライマーと共にExpand High Fidelity PCR System(Roche)を以下のプログラムで使用して、AvrXa7をPCR増幅させた:94℃で3分間の1サイクル、94℃で1分間、52℃で1分間、68℃で6分間の16サイクル、および68℃で1時間の最終サイクル。Gin触媒ドメインを、5’Gin
C−termおよび3’GinNTalPCRFusで、標準的なPCR条件下でPCR増幅させ、前記PCR条件を用いる重複PCRによりトランケート化AvrXa7変異体に融合させた。精製されたGin−Avr PCR産物を等モル比で混合し、SacIおよびXbaIで消化した。
【0106】
デザイナーTALEを作製するために、TALENキット(Addgene)を、以下の修飾を加えて使用した。Δ120、Δ128または+28におけるトランケーションを含むようにpTAL1を修飾した。これを達成するために、AvrXa7Δ120およびAvrXa7Δ128断片を5’Avr n4またはAvr n128および3’TalR Xba+28でPCR増幅させ、pTAL1のBamHI制限部位内に連結して、pTALΔ120およびpTALΔ128を得た。プラスミドpTALΔ120およびpTALΔ128はGolden GateクローニングのためのEsp3I制限部位を保有していた。pTALΔ120およびpTALΔ128内にクローニングされたTALEアレイをpB−Gin−Bam内への連結のためにBamHIおよびXbaIで消化した。
【0107】
哺乳類TALER発現ベクターを作製するために、Gin触媒ドメインを5’Nhe−SD−Gin Fおよび3’GinGS RでpB−Gin−AvrからPCR増幅させ、pcDNA 3.1(Invitrogen)のNheIおよびBamHI制限部位内に連結した。Avr15をpTALΔ120またはpTALΔ128からBamH1およびXba1で消化し、pcDNA−Gin−Bam内に連結して、pcDNA−Gin−Avr発現ベクターを得た。
【0108】
既に記載されているとおりにpBLA基質プラスミドを構築した。
【0109】
pGL3レポータープラスミドを作製するために、SV40プロモーターを組換え部位含有プライマー5’pGL3 SV40 BglIIおよび3’pGL3 SV40 HindIIIでpGL3−プロモーター(Promega)からPCR増幅させ、pGL3−プロモーターのBglIIおよびHindIII制限部位内に連結した。
【0110】
細菌組換えアッセイ
既に記載されているとおりに細菌組換えアッセイを行った。
【0111】
漸増トランケーションライブラリー
既に記載されている修飾されたプロトコールを用いて、漸増(incremental)トランケーションライブラリーを作製した。簡潔に説明すると、Ginコード配列をエキソヌクレアーゼ消化から保護するために、SmaI制限部位を含有するスタファー(stuffer)断片をBamHI内に挿入してpB−Gin−SmaI−Bam−Avrを得た。このプラスミドをNheIで線状化し、エキソヌクレアーゼIIIで37℃で2.5分間インキュベートし、ついで75℃で25分間にわたって熱不活性化を行った。ついでpB−Gin−Bam−Avrを、200μM dNTPおよび5μM [α]−S−dNTPの存在下、クレノウフラグメント(3’から5’エキソ)と共に37℃で30分間インキュベートし、ついで80℃で25分間にわたって熱不活性化を行った。トランケーションライブラリーを作製するために、pB−Gin−Bam−AvrをエキソヌクレアーゼIIIと共に37℃で2.5分間インキュベートし、ついで熱不活性化およびそれに続くリョクトウヌクレアーゼでの平滑末端化を30℃で1時間行った。SmaIでの消化の後、リコンビナーゼコード配列の平滑3’末端をTALE断片の平滑末端化ライブラリーに連結した。形質転換および精製後、該プラスミドをSacIおよびXbaIで消化してGin−ΔAvrを遊離させた。
【0112】
哺乳類レポーターアッセイ
HEK293T細胞を96ウェルプレート上に4×10
4細胞/ウェルの密度で播き、加湿5% CO2雰囲気中で37℃で増殖させた。播いた後24時間の時点で、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000(Invitrogen)を該製造業者の説明に従い使用して、レニラ(Renilla)ルシフェラーゼの発現のために、細胞を150ngのpcDNA TALER発現ベクター、2.5ngのpGL3レポータープラスミドおよび1ngのpRL−CMVでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を受動細胞溶解(Passive Lysis)バッファー(Promega)で細胞溶解し、二重ルシフェラーゼレポーターアッセイ系(Dual−Luciferase Reporter Assay System)(Promega)を該製造業者の説明に従い使用して、ルシフェラーゼ発現を決定した。ベリタス・マイクロプレート・ルミノメータ(Veritas Microplate Luminometer)(Turner Biosystems)を使用して発光を測定した。
【0113】
結果
TALER構造
リコンビナーゼ活性の評価および定向進化のための定量系は記載されている。この系(
図1A)においては、組換え部位に隣接するGFPuv導入遺伝子を、TEM−1 β−ラクタマーゼをコードする遺伝子内に挿入する。この改変はβ−ラクタマーゼ発現を破壊し、このプラスミド(pBLA)を含有する大腸菌(Escherichia coli)細胞をアンピシリンに対して感受性にする。しかし、該基質含有プラスミドの活性リコンビナーゼの発現は標的部位間の組換えおよびβ−ラクタマーゼリーディングフレームの回復を招く。この修飾はアンピシリンに対する宿主細胞耐性を確立し、該基質含有プラスミドからの活性リコンビナーゼ変異体の単離を可能にする。プラスミド精製および再形質転換の後でアンピシリン耐性形質転換体の数を測定することにより、リコンビナーゼ活性を直接評価することも可能である。キメラリコンビナーゼの活性は触媒ドメインおよびDBDの両方に依存的であるため、この分割遺伝子再構築選択系は、個々のDBDの有効性を評価するためにも用いられうる。したがって、該系を、最適TALER構造を決定するために適合化した。
【0114】
重要なことに、DNAインベルターゼGinおよび関連セリンリコンビナーゼの触媒ドメインは、予め定められた触媒特異性を有するため、TALER融合タンパク質は、TALENに関して記載されている設計を用いては構築され得ない。γδレゾルバーゼおよび設計酵素の構造および機能研究は、C末端E−ヘリックスがセリンリコンビナーゼDNA認識を媒介することを示している。ZFRにおいては、このヘリックスはC末端からN末端(5’から3’)へとDNAに結合する。したがって、TALEはDNAに5’から3’への方向で結合するため、組換えは、TALE結合部位が20bpのコアの反対鎖上に位置する場合にのみ生じうると予想された(
図1B)。
【0115】
AvrXa7を使用してTALERを作製することを選択した。なぜなら、このTALEタンパク質は、TALEヌクレアーゼおよび転写因子を作製するために既に使用されているからである。好都合なことに、BamHI制限部位は、AvrXa7を含む多数のTALEに隣接しており、複数のグループが、合成TALE融合体を作製するために、この制限部位を用いている。注目すべきことに、このBamHI断片はTALEのN末端を無傷なまま残すが、天然エフェクタードメインをC末端から除去する。この方法を採用し、BamH1制限消化によりGin−AvrXa7融合体を作製した。
【0116】
2つの隣接する26bpのAvrXa7結合部位、およびGin触媒ドメインにより認識される中央の20bpのコア配列から構成される組換え部位を含有するpBLA選択ベクター内に、Gin−AvrXa7をクローニングした。予想どおり、AvrXa7結合部位が該20bpコアの隣に位置していた場合には、該Gin−AvrXa7融合体はDNAを組換えることが不可能であった(
図1C)。しかし、AvrXa7結合部位が該20bpコアの反対鎖上に位置していた場合には、組換えは明白であった(
図1C)。このことは、組換え部位配向がTALE N末端への触媒ドメイン融合に決定的に重要な因子であることを示している。N末端融合が組換えに必要であることを更に確認するために、触媒ドメイン活性を抑制すると予想される非カノニカル(canonical)融合配向を含むC末端AvrXa7−Gin変異体を構築した(
図1Bおよび表5)。予想どおり、このC末端AvrXa7融合体は細菌細胞においてごく僅かの活性を示すことが確認された(
図1C)。
【表5】
【0117】
設計されたトランケーション
前記のGin−AvrXa7融合体は組換えを触媒したが、この変異体の活性は、操作されたZFRのものより相当低かった。更に、特異性分析は、Gin−AvrXa7融合体が、非コグネイト(非同族)DBD部位および非天然20bpコア配列を含有する認識部位を忠実に識別できないことを示した。このことは、組換えがGin媒介性ではない可能性があることを示している(
図1D)。最近の報告は、該融合タンパク質のTALE部分がトランケート化されている場合、TALEN活性が増強されうることを示している。したがって、TALER活性を改善することを試みるために、一連のNおよびC末端AvrXa7トランケート化体を作製した(
図2A)。
【0118】
10個のN末端トランケート化体を、AvrXa7 Thr27(Δ27)で始まりAvrXa7 Gly268(Δ268)で終わるように、ほぼ等しい間隔で合体させた。TALENのN末端トランケート化変異体として報告されているAvrXa7 Δ150も作製した。2個のC末端AvrXa7トランケート化体を28位(+28)および95位(+95)において作製した。+28および+95は共に、TALENにおける安定融合点として報告されている。各TALEトランケート化変異体をGin触媒ドメインに融合させ、この20メンバーTALERライブラリーを、Avr−20G認識部位を含有するpBLA選択ベクター内にクローニングした。細菌細胞における1ラウンドの選択の後(「材料および方法」)、個々のアンピシリン耐性クローンを配列決定したところ、全ての選択されたTALERは2つのN末端トランケート化(Δ87およびΔ120)の1つを含有することが判明した。また、それぞれの選択されたクローンはC末端の+28に存在した。融合点付近に自発的な12アミノ酸の欠失を含有する単一のΔ120クローン(Δ120
*)以外は、これらのクローンの活性は非常に低かった(
図2B)。このアッセイにおいては、Ginに基づくZFRは、通常、20〜40%の組換えを示すが、選択されたTALER融合体において観察された最高活性は〜7%の組換えであった(Gin−AvrXa7Δ120
*)。TALE DBDはZFドメイン(要求される隣接ペプチド配列を含まない)より3倍大きいため、本発明者らは、これらのTALER構築物に使用される20bpのスペーサーが組換えのための最適長ではない可能性があると推論した。
【0119】
コア配列の長さ
次に、14(Avr−14G)、26(Avr−26G)および32bp(Avr−32G)のコア部位を含有するDNA標的が、選択されたTALERにより組換えられうるかどうかを評価することにより、コア配列の長さが組換えに及ぼす効果を調べた。リコンビナーゼ媒介性再構築後にβ−ラクタマーゼ遺伝子のリーディングフレームを維持するために、コアの半分の部位を±3bpにより修飾した(表1)。前記の20メンバーTALERライブラリーを各標的部位変異体に対する1ラウンドの選択に付した。最短標的(Avr−14G)を組換えうるTALER変異体の特定は可能でなかったが(データ非表示)、Avr−26GおよびAvr−32Gを組換える2個のGin−ΔAvrXa7変異体が(N末端TALEトランケート化体Δ87およびΔ120ならびにC末端トランケート化体+28に基づいて)特定された。特に、クローン分析は、選択されたTALER(Gin−AvrXa7Δ87およびGin−AvrXa7Δ120)が、最長コア(例えば、26および32bp)を含有するDNAを、より短いコア(例えば、14および20bp)の場合より少なくとも100倍高い効率で組換えることを示した(
図2B)。更に、Gin−AvrXa7Δ120は、コグネイト(同族)コア配列(Avr−26GおよびAvr−32g)を含有する標的を、非コグネイトコア(Avr−20T、Avr−20GG、Avr−32TおよびAvr−32GG)より>100倍高い効率で組換えたことが判明した(
図2C)。興味深いことに、Gin−AvrXa7Δ120融合体は44bpコア(Avr−44G)に対してはそれほど活性ではなかったが(組換えはAvr−32Gより〜3倍低かった)(
図2C)、このことは、26〜44bpのコア長が大腸菌(E.coli)におけるGin−AvrXa7Δ120による組換えに最適であるらしいことを示している。
【0120】
漸増トランケーションライブラリー
Gin−AvrXa7Δ120はGin−AvrXa7と比較して組換えの増強を示したが、Gin−AvrXa7Δ120は最適なTALE融合構造体ではない可能性があると疑われた。なぜなら、(i)Gin触媒ドメインを含有するZFRはGin−AvrXa7Δ120より>2倍高い効率でDNAを組換えた、および(ii)Gin−AvrXa7Δ120はTALEトランケーション変異体の包括的ライブラリーから特定されなかったからである。したがって、より良好な融合構造体を特定するために、漸増トランケート化TALE DBDのライブラリーの作製に基づいて、スクリーニングを工夫した。
【0121】
これを達成するために、トランケート化C末端断片(AvrXa7)(「材料および方法」)のライブラリーへの未修飾N−末端ドメイン(Gin)の融合体を可能にするために既に記載されているとおりにプロトコールを適合させた。AvrXa7 N末端(Met1)と最初のAvrXa7反復(Leu298)との間の領域にわたるN末端AvrXa7トランケーションをエキソヌクレアーゼ消化により作製し、Gin触媒ドメインの未修飾コピーに融合させた(タンパク質変異体の理論数:〜300)。これまでの結果は、+28が最適なC末端トランケーションであることを示していたため、本発明者らはこの構造体をトランケーションライブラリー内に組込んだ。TALERを、Avr−32G標的部位を含有するpBLA選択ベクター内にクローニングし、大腸菌(E.coli)内に形質転換した(>1×10
5個の形質転換体)。配列分析は、関心のある領域にわたるトランケーションの等しい分布を証明した(データ非表示)。
【0122】
3ラウンドの選択の後、個々のアンピシリン耐性クローンを配列決定し、幾つかのユニークトランケーション変異体を特定した(
図3A)。最適なN末端TALER融合点が87および120位付近に位置するらしいことを示唆した、20メンバーTALEトランケーションライブラリーを使用して行った選択に合致して、全ての選択されたGin−AvrXa7変異体は74位(Δ74)と147位(Δ147)との間にトランケーションを含有することが判明した。特に、73個中26個(35.6%,p<.001)のクローンは124位(Δ124)と129位(Δ129)との間にトランケーションを含有していた。この集団からは、128位(Δ128)におけるトランケーションが最も代表的なもののうちの1つであった。
【0123】
選択されたAvrXa7ドメインがTALER活性を増強したかどうかを系統的に判定するために、本発明者らは、大腸菌(E.coli)においてAvr−32G標的部位を含有するDNA基質に対する単離されたGin−AvrXa7変異体の性能を評価した。本発明者らの分析を、AvrXa7の92位(Δ92)と134位(Δ134)との間のN末端欠失を含有するクローンに集中させた。Δ92融合体は非常に活性であったが、配列分析に合致して、Δ120とΔ129との間にN末端トランケーションを含有するTALERは、比較的より長い又はより短いトランケーションに基づく変異体より効率的にDNAを組込むことが判明した(
図3B)。3個のクローンを更に特徴づけした。すなわち、Δ74およびΔ145は可能な融合点の境界に相当するものであったため、それらを選択し、Δ128は、該選択において見出された最も有力なクローンであったため、それをアッセイした。14〜44bpのスペーサー長を有する5個の標的を3個の陰性対照(Avr32T、Avr32GGおよびPthXol−32G)と共にアッセイした。Gin−Avr32GΔ74およびGin−Avr32GΔ145は、20bpより長いスペーサーに対して、限られた活性を示し、一方、Gin−Avr32GΔ128は、ZFR GinC4に匹敵する効率で、DNAを組換えると判定された(
図3C)。更に、特異性分析は、Gin−Avr32GΔ74、Gin−Avr32GΔ128およびGin−Avr32GΔ145は、コグネイトコアを含有する基質を、非コグネイトコアのもの(Avr−32T、Avr−32GGおよびPthXol−32G)より>100倍高い効率で組換えうることを示した(
図3C)。総合すると、これらの結果は、Δ120とΔ129との間のN末端欠失を含有するTALEタンパク質がリコンビナーゼへの融合のための最適なトランケーションに相当することを示唆している。
【0124】
合成TALE反復アレイの組込み
前記研究は、天然に存在するAvrXa7 TALEタンパク質の天然DBDを使用した。設計されたTALE反復アレイが、選択されたGin−ΔAvrXa7フレームワーク内に組込まれうるかどうかを決定するために、AvrXa7結合部位を標的化するように設計された一連の合成TALEタンパク質(15〜20反復長)を作製した(
図7)。公に入手可能なTALENプラスミドセット(Addgene)を使用して、TALEタンパク質を構築した。該クローニングプラスミドを、+28 C末端トランケーションおよびΔ120またはΔ128 N末端トランケーションを含むように修飾した。設計されたTALEをGin触媒ドメイン(Gin−Avr15Δ120およびGin−Avr15Δ128)に融合させ、Avr−32GまたはAvr−32T標的部位を含有するpBLA選択ベクター内にクローニングした。
【0125】
大腸菌(E.coli)における活性分析は、Gin−Avr15Δ120およびGin−Avr15Δ128の両方が、活性触媒ドメインに融合された場合に、DNAを組換えるために使用されうること、ならびに合成反復の組込みが活性の増強をもたらすことを示した(
図4A)。重要なことに、各TALERは厳密な選択性を示し、コグネイトコアを含有する標的部位を、非コグネイトコアの場合より>1,000倍高い効率で組換えた(
図4B)。驚くべきことに、Δ120トランケーションに基づくTALERは、Δ128構造に基づくTALEと同等に有効にDNAを組換えることも判明した(
図4A)。このことは、設計されたTALEが、天然AvrXa7 DBDを含有するものほどはN末端トランケーションに対して感受性でない可能性があることを示している。
【0126】
本明細書に記載されているTALER構造体が、任意のDNA配列を標的化するように再プログラム化されうることを更に実証するために、天然に存在するTALEタンパク質PthXo1により認識される配列を標的化するように設計された合成酵素(Gin−Pth15Δ120)を作製した。Gin−Pth15Δ120はそのコグネイト基質に対して非常に活性であること、ならびにGin−Pth15Δ120およびGinAvr15Δ120の両方が、それらのコグネイト結合部位を有する標的に対する組換えにおける>600倍の増加を示すことが判明した(
図4A)。15〜20反復長のDBDを含有する一連の設計されたTALERの活性も評価したところ、各融合体が同様に高い効率および特異性で組換えを触媒することが判明した(
図4B)。
【0127】
哺乳類細胞におけるTALER活性
TALERが哺乳類細胞においてDNAを修飾しうるかどうかも判定した。これを達成するために、本発明者らは、細胞培養におけるリコンビナーゼ活性の迅速な評価を可能にするエピソームレポーターアッセイを用いた。このアッセイにおいて、ヒト胎児腎(HEK)293T細胞を、組換え部位に隣接したSV40プロモーターの制御下でルシフェラーゼ遺伝子を含有するレポータープラスミド(pGL3)およびリコンビナーゼ発現ベクターでコトランスフェクトした。適当なリコンビナーゼの一過性発現は細胞におけるSV40プロモーターの切り出し及びルシフェラーゼ発現の低下を招く。したがって、リコンビナーゼ活性はルシフェラーゼ発現の低下倍数に正比例する。
【0128】
Avr−44G認識部位を含有するレポータープラスミド(pGL3−Avr−44G)でのGin−Avr15Δ120のコトランスフェクションは、pGL3−Avr−44Gのみのトランスフェクションと比較して、ルシフェラーゼ発現における〜20倍の低下を招いた(
図5A)。Gin−Avr15Δ120が大腸菌(E.coli)においてZFR GinC4に対して類似活性を示したにもかかわらず、本発明者らは、GinC4が、そのコグネイト標的プラスミドpGL3−C4−20Gでのコトランスフェクションの後、ルシフェラーゼ発現を>80倍低下させることを見出した(
図5A)。この矛盾は、pGL3におけるリコンビナーゼ標的部位間の、pBLAの場合より比較的短い介在DNA配列、または哺乳類細胞におけるTALERとZFRとの間の差動的発現によるものかもしれない。しかし、この矛盾の根本原因は依然として不明である。最後に、32bpが大腸菌(E.coli)におけるTALERのための最適コア配列長だと決定されたが、pGL3−Avr−32GとGin−Avr15Δ120のコトランスフェクションはルシフェラーゼ発現における僅か6倍の低下を招いたに過ぎなかった(
図5A)。この矛盾の根本原因も依然として不明である。
【0129】
次に、ZFR(GinC4)およびTALER(Gin−Avr15Δ120)が哺乳類細胞において適合性ヘテロ二量体を形成しうるかどうかを調べた。この可能性を評価するために、Gin触媒ドメイン(pGL3−Avr−G−ZF)により認識されるコア配列にAvrXa7結合部位およびC4ジンクフィンガー結合部位(GCG GGA GGC GTG;配列番号279)が隣接しているハイブリッド組換え部位を作製した(表2を参照されたい)。驚くべきことに、GinC4およびGin−Avr15Δ120でのpGL3−Avr−G−ZFのコトランスフェクションは、pGL3−Avr−G−ZFと比較して、ルシフェラーゼ発現における>140倍の低下を招いたが(
図5B)、pGL3−Avr−G−ZFとGinC4またはGin−Avr15Δ120のいずれかでのトランスフェクションはレポーター遺伝子発現における無視しうるほどの低下を招いたに過ぎなかった。これらの結果は、ZF−TALEヘテロ二量体の作製が、キメラリコンビナーゼの標的化能を改善するための潜在的に有効なアプローチに相当することを示している。
【0130】
考察
非常に最低限の融合構造を含有するZFPとは異なり、TALE DBDは、機能するために、DBDアレイのいずれかの側に天然タンパク質フレームワークを要する。0位におけるチミジン残基の結合をもたらし、ほとんど全ての公知TALE認識部位において見出されるいわゆる第0および第1反復はそのようなN末端フレームワークに相当する。最近の結晶構造解析は0位チミンの結合の説明を与えているが、最小TALE構造を決定するには不十分なデータが依然として存在する。実際、これまでの全ての研究は、0位の結合をもたらすのに要求されるものよりかなり多くの残基を含有するN末端トランケーションを用いている。適切なDNA結合コンホメーションを可能にする際の該タンパク質のこの部分が果たす役割または最小TALEドメインを構成しうるものは依然として明らかではない。機能的TALEキメラを作製するための初期の試みは完全長TALEタンパク質への融合に基づくものであったが、より最近の研究は、Δ150 N末端構造のコンテキストにおけるエフェクタードメイン機能を改善するユニークC末端トランケーションの特定に焦点を合わせている。これまでの報告は、AvrBs3 TALEのN末端残基2−153の欠失(Δ150)が、TALEのその天然細菌から標的植物細胞へのトランスロケーションに要求されるドメインを除去するが、転写因子の活性を損なわないことを示している。
【0131】
しかし、活性TALERの開発はユニークN末端TALE変異体の特定を要した。C末端トランケーション+28および+95を含有するN末端TALEの広範な系統的研究が最初に行われ、僅か2個のドメイン(+28を有するΔ87および+28を有するΔ120)が更なる分析のための十分に高い活性を示すことが判明した。AvXa7 N末端の漸増トランケーションに基づく二次的分析は、AvrXa7の74位(Δ74)〜145位(Δ145)を中心とするトランケーション変異体の広範なクラスターの特定をもたらした。この実験において回収されたクローンのうち、38%がΔ119〜Δ128のトランケーションを含有しており、この領域に融合体を含有するTALERに関して得られたデータの精査は高い活性を示した。特に、この領域からのN末端トランケーション(Δ128およびΔ120)に基づくTALERは、細菌および哺乳類細胞においてDNAを組換えるために使用されうると判定された。Δ119〜Δ128のトランケーション変異体のクラスター化はこの領域の本質的安定性も示しているかもしれない。
【0132】
ZFRは、典型的に、44〜50bpの長さの標的部位の組換えを触媒する。各標的部位は、リコンビナーゼ触媒ドメインにより認識される中央の20bpのコア配列、および2個の隣接ZFP結合部位を含有する。しかし、TALERの融合配向は、TALE結合部位が該中央コア配列に対して反対鎖上に存在することを要する。この特有の幾何学的配置ゆえに、本発明者らは組換えのための最小コア配列要件を調べることにした。TALE DBDの長さ(TALE反復はZFPより3〜4倍長い)および触媒ドメインとTALEドメインとの間で伸長するN末端リンカーに基づいて、本発明者らは、より長いコア配列(32または44bp)が組換えに必要であろうと推論した。実際、自発性欠失(Δ120
*)を含有するTALE変異体以外は、この研究において特定されたほとんどのN末端トランケーション変異体は32bpのコアに対して最適な特性を示した。ZFNとは異なり、DNAを効率的に切断するために有意に長いスペーサー配列を要するTALEN(例えば、TALEN:17〜20bp;ZFN:5〜6bp)に関して報告された結果に、これらの結果は合致している。これらの観察を裏付けるものとして、短いコア配列(14bp)に対するユニークN末端トランケーション変異体の選択はいずれのクローンも与えないことが判明した。
【0133】
Gin−AvrXa7Δ128は最適TALE融合体として特定されたが、公に入手可能なTALE構築キットを使用して作製された合成TALEタンパク質を使用する後続の研究は、Δ128およびΔ120に基づくTALERが大腸菌(E.coli)において類似活性を示すことを示した。これらの設計TALEは、密接に関連しており天然に存在するTal1cおよびPthXo1 TALEタンパク質に由来するキメラタンパク質に基づくものであった。TALEは高い相同性を有するが、それらは同一ではない。残基12および13以外のRVD反復における多型はTALE融合体活性に全く影響を及ぼさないことが示されているが、本発明者らの知見によれば、DBD以外のTALEフレームワークにおける相違の系統的評価は何ら報告されていない。漸増トランケーションライブラリーの分析により示されるとおり、僅かなアミノ酸変化が個々の融合体の活性に有意に影響を及ぼしうる。したがって、本発明者らがGin−AvrXa7Δ120と合成Gin−Avr15Δ120との間で観察した活性における矛盾の幾つかは、これまでに使用されたAvrXa7フレームワークおよびTALEフレームワーク構造の間の配列変異に起因すると考えられうる。
【0134】
合成TALEの構築に好都合な4つのRVD(NI:A,HD:C,NG:TおよびNN:G)は自然界で最も一般的であるが、これらの反復が最も特異的なRVDモジュールに相当するかどうかは依然として明らかでない。26反復のAvrXa7 TALEの場合、同じ配列を標的化する合成形態はRVD組成における16個の変化を有するであろう(
図7)。それらは自然界で最も一般的に見出されるため、合成用に選択されたそれらの4つのRVDは、それらのコグネイト塩基に対して、他のRVDより高いアフィニティを有しうると仮定された。これが事実であれば、該合成RVD反復を使用して作製されたTALEは、天然ドメインを使用した場合のTALEより高いDNA結合アフィニティを有しうると考えるのが合理的であろう。RVDアフィニティの件は直接的には検討されなかったが、合成反復アレイを含有するTALERは、天然AvrXa7 DBDを含有する構築物より活性であると判定された。合成DBDを含有するTALERは、有意に少数のDBDを含有するにもかかわらず、天然反復を含有する構築物より約2倍高い活性を示した。また、該合成アレイで観察された活性の増強はオフターゲット組換えにおけるいずれの増加とも相関しなかった。
【0135】
幾つかの研究は、TALEがそれらの標的配列における幾つかのミスマッチを許容しうることを示している。特定の塩基に対して正の関連性を有するRVDは自然界において非コグネイト塩基を許容することが示されているため、これらの知見は驚くことではない。しかし、TALERによりもたらされる協同的特異性は、潜在的制約を回避するために用いられうるであろう。触媒ドメインは組換えに対する特異性に寄与するため、高度に相同なゲノム配列を選択的に修飾しうるデザイナーTALERも作製されうると予想される。実際、リコンビナーゼ触媒特異性は、非天然コア部位を標的化するように有効に再プログラム化されうることが最近示されている。
【0136】
実施例2
新規第0残基特異性の選択
新規クラスの、Talに基づくDNA結合性タンパク質を設計した。TAL(転写アクチベーター様)エフェクターは、予測可能な特異性を有する新規クラスのDNA結合性タンパク質である。Talエフェクターはキサントモナス(Xanthomonas)属のグラム陰性植物病原性細菌により利用され、それは、種々のエフェクタータンパク質の混合物をIII型分泌経路(T3SS)を経由して植物細胞内にトランスロケーションし、該部位において、それらはビルレンス決定因子として作用する。TALのDNA結合特異性は縦列反復の中央ドメインにより決定される。各反復はDNA内の1つの塩基対(bp)の認識をもたらす。反復モジュールの再配置は、ある重要な制約と共に所望のDNA結合特異性を有するタンパク質の設計を可能にする。例えば、Talドメインを有するDNA配列の標的化の最も制約的な特徴は、Tal DNA部位が塩基T、そして時にはCから始まるという要件である。GまたはA塩基を有する結合部位の標的化は−1位においては可能ではない。突然変異を第−1および第0 RVD領域に標的化することにより、この制約を欠くTal DNA結合ドメインを選択するために、Tal−リコンビナーゼ活性選択を用いた。この発見の実際の成果は莫大なものである。なぜなら、現在、各DNA配列は、新規無制約アプローチを促進する新規Talドメインを使用して、TAL転写因子に標的化されて、転写をオン/アップまたはオフ/ダウンし、TALヌクレアーゼを標的化して遺伝子機能をノックアウトし、あるいは相同組換えを導き、あるいは本発明者ら自身のTALリコンビナーゼまたは他のTAL酵素を標的化しうるからである。
【0137】
(−1)位におけるG特異性に関しては、まず、GinAvr15Δ128−合成タンパク質の(−1)ドメイン内で、NNKコドン法を用いて、アミノ酸QWSG(配列番号209)をランダム化した。得られたライブラリーの3ラウンドのtalリコンビナーゼ活性選択の後、標的化領域内に選択された配列RSNG(配列番号210)およびSRSG(配列番号211)を有する新規tal結合ドメインを選択した。ついで、これらは、開始クローンにより認識される親(parental)Tを越えて、標的配列の0位のGに結合することが示された。該選択を繰返して、最初に選択されたQWSG(配列番号212)と重複する以下に赤色で示されているKQW領域をランダム化した。選択されたSSR、SRA、SRCおよびKRC配列を有するクローンが今や選択された。全ての選択されたTal結合ドメインを、G置換を含有する一定のオリゴに対する結合性研究においてアッセイしたところ、配列G−ATAAACCCCCTCCAA(配列番号213)に今や優先的に結合することが示された。この同じ配列を使用してTalリコンビナーゼ活性選択を行ったことに注目されたい。開始Tal結合性タンパク質GinAvr15Δ128はT−ATAAACCCCCTCCAA(配列番号214)に結合する。選択された突然変異を含有するTalヌクレアーゼの配列試験はこれらの配列のG特異性を証明しており、これは、この新規クラスのTalが初めて開発されることを可能にするものである。選択された配列は他の種に由来するTalに移植可能(portable)である。
【表6】
【0138】
また、Aを標的化するためにこの同じライブラリーを使用して選択を行った。この研究においては、配列PRG、PTRおよびPKDを選択した。全ての選択されたTal結合ドメインを、A置換を含有する一定のオリゴに対する結合性研究においてアッセイしたところ、配列A−ATAAACCCCCTCCAA(配列番号222)に今や優先的に結合することが示された。この同じ配列を使用してTalリコンビナーゼ活性選択を行ったことに注目されたい。開始Tal結合性タンパク質GinAvr15Δ128はT−ATAAACCCCCTCCAA(配列番号223)に結合する。選択された突然変異を含有するTalヌクレアーゼの配列試験はこれらの配列のA特異性を証明しており、これは、この新規クラスのTalが初めて開発されることを可能にするものである。N末端ドメインのランダム突然変異誘発または第0ドメイン内のKRGG(配列番号224)配列の標的突然変異誘発および該リコンビナーゼ系における再選択により、結合活性における後続の改良が達成されうる。
【0139】
実施例3
選択
コンテキスト(context)依存的RVD選択および新規特異性を有するRVDの選択のために、以下に太字で示されているHD配列をランダム化するライブラリーを作製した。LTPDQVVAIASHDGGKQALETVQRLLPVLCQDHG(原型RVD配列;配列番号225)。
【0140】
N、D,H、KおよびQアミノ酸に限定されたライブラリーがH残基の置換の成功をもたらすことが多いが、典型的には、該ライブラリーはこれらの2つの位置における全てのアミノ酸を可能にする。あるいは、SHDG(配列番号226)およびASHDGG(配列番号227)領域をランダム化した、より大きなライブラリーは、コンテキスト依存的特性を有するユニークRVD特異性の選択を可能にする。
【0141】
したがって、Talリコンビナーゼ活性選択は標的化RVDドメイン内の新規特異性の選択を迅速に可能にする。生じるRVDは高度にモジュール性またはそれらの配列認識においてコンテキスト依存的である可能性があり、したがってTalヌクレアーゼおよび転写因子を作製するために使用されうる。
【0142】
この技術の有用性には、手段および治療法として用いられる、転写をオン/アップまたはオフ/ダウンし、TALヌクレアーゼを標的化して遺伝子機能をノックアウトし、あるいは相同組換えを導き、あるいは本発明者ら自身のTALリコンビナーゼまたは他のTAL酵素を標的化するためのTAL転写因子に対する無制約アプローチが含まれる。
【0143】
この発見の利点および実際の成果は莫大である。なぜなら、現在、各DNA配列は本発明者らの新規Talドメインを使用して標的化可能であり、それらの特異性は迅速に最適化可能だからである。
【0144】
実施例4
チミン以外の5’塩基を含むTALE N末端ドメインの定向進化
転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質は、関心のある実質的に全てのDNA配列に結合するように設計されうる。植物非病原性遺伝子を標的化する天然TALE転写因子(TALE−TF)のDNA結合部位は5’チミジンを有する。合成TALE−TFもこの要件を有する。最近の構造データは、標的配列の5’TとN末端ドメイン(NTD)との間に相互作用が存在することを示している。最近のTALEヌクレアーゼ(TALEN)の文献の精査は標的配列の最初の塩基(N
0残基)の重要性に関する矛盾するデータを示した。また、TALEリコンビナーゼ(TALE−R)の活性に対するN
0塩基の影響に関する研究は行われていない。ここで、TALE−R、TALE−TF、マルトース結合性タンパク質との融合体(MBP−TALE)として発現されるTALE DNA結合ドメインおよびTALENの結合領域におけるN
0塩基の影響を定量する。これらのTALEプラットフォームのそれぞれは特有のN末端およびC末端構造を有するが、全ては、N
0残基がチミジンである場合に最高活性を示した。これらのプラットフォームにおける有効なTALEを構築するための規則を単純化し、いずれかの任意DNA配列における精密ゲノム工学用途を可能にするために、本発明者らは、本発明者らが最近開発したTALE−R系を使用する構造誘導活性選択を案出した。5’Gを含有するTALE結合部位に対して非常に活性であり選択的なTALE−R活性をもたらす新規NTD配列を特定した。そして、任意の5’N
0残基の一般的標的化を可能にする追加的なドメイン配列を選択した。これらのドメインはTALE−TF、MBP−TALEおよびTALEN構造内に移入され、非T 5’残基を含有する標的配列に対して野生型NTDが示す活性より大きな活性を一貫して示した。該新規NTDはゴールデン・ゲイト(golden gate)TALEN構築法に適合性であり、任意のDNA配列を認識するTALE転写因子、リコンビナーゼ、ヌクレアーゼおよびDNA結合性タンパク質の効率的構築が今や可能となり、ほとんどの天然TALEタンパク質を制限する5’ T規則を考慮することなく、DNA上の、TALEに基づくタンパク質の正確かつ無制約の配置を可能にした。
【0145】
以下の材料および方法をこの実施例において用いた。
【0146】
オリゴヌクレオチド
プライマーおよび他のオリゴヌクレオチド(以下の表4)はIntegrated DNA Technologies(San Diego,CA)から取り寄せた。
【表7】
【0147】
TALE−R NTD進化プラスミドの作製
既に報告されているTALE−R系をこの研究に適合化した。簡潔に説明すると、pBCS(クロラムフェニコールおよびカルベニシリン耐性遺伝子を含有する)をHindIII/Spe1で消化した。対をなすリコンビナーゼ部位を含有するスタファー(Avr X;ここで、XはN0塩基である)をHindIII/Xba1で消化し、該ベクター内に連結して、分割ベータ−ラクタマーゼ遺伝子を得た。ついでpBCS AvrXをBamH1/Sac1で消化し、Gin127−N−スタファー−Avr15をBamH1/Sac1で消化し、該ベクター内に連結して、Gin127−N−スタファー−Avr15−Xを得た。該スタファーをN
−1 TALEヘアピンにおける進化のためにNot1/Stu1で消化し、N
0 TALEヘアピンにおける進化のためにNot1/Sph1で消化した。
【0148】
TALE NTD進化ライブラリーの作製
プライマーptal127 Not1 fwdおよびリバースプライマーKXXG lib revまたはKXXXX lib revを使用してN
−1 TALEヘアピンにおけるN末端変異体を得、ついでNot1/Stu1で消化し、ついで、消化されたGin127−AvrX内に連結した。フォワードプライマーptal127 Not1 fwdおよびリバースプライマーKRGG Lib Revを使用して、N
0 TALEヘアピンにおける突然変異を有するライブラリーをPCR増幅した。ついでこれをNot1/Sph1で消化し、Not1/Sph1で消化されたGin127−AvrX内に連結した。
【0149】
TALE−R NTD進化アッセイ
ラウンド1の連結物をエタノール沈殿させ、エレクトロコンピテント Top10F’細胞内に形質転換し、ついでSOC内に1時間回収した。該細胞を、100mg/ml クロラムフェニコールを含有する100mlのスーパーブロス(Super Broth)(SB)培地内で一晩増殖させた。標準的な方法によりDNAを単離した。得られたプラスミドDNA(Rd 1投入物)をエレクトロコンピテントTop10F’細胞内に形質転換し、細胞を、100mg/ml カルベニシリンおよび100mg/ml クロラムフェニコールを含有する100mlのSB培地内で一晩増殖させた。標準的な方法によりプラスミドDNAを単離した。ラウンド1産物をNot1/Xba1で消化し、相補的付着末端を有するGin127−AvrXベクター内に連結した。コンセンサス配列が観察される場合には、このプロトコールを3〜4回繰返し、クローンを特徴づけした。
【0150】
N末端TALEN活性の測定
それぞれの可能な塩基を含有する4個のTALENペアを、ゴールデン・ゲイト法を用いて作製した。融合AおよびBプラスミドを第2ゴールデン・ゲイト反応によりGoldy TALEN(N Δ152/C +63)フレームワーク内に直接的に連結した。pCAGベクターをBglI/Nsi1で消化し、BglII/Nsi1で消化されたPCR増幅NTDに連結することにより、NTDを修飾した。TALENペア(それぞれ50〜75ngのTALEN/ウェル)を96ウェルプレートのウェル内のHeLa細胞内に1.5×10
4細胞/ウェルの密度でトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を37℃のインキュベーター内で24時間配置し、ついで30℃で2日間、ついで37℃で24時間配置した。公開されている方法によりゲノムDNAを単離し、DNA突然変異率をセル・サーベヤー(Cell Surveyor)アッセイおよび配列決定により定量した。細胞アッセイのために、まず、プライマーCCR5外側fwd/CCR5外側revを使用し、ついでCCR5内側fwd/CCR5内側revを使用するネステッドPCRによりゲノムDNAを増幅した。ついで断片をBamH1/EcoR1で消化し、相補的に消化されたpUC19内に連結した。
【0151】
TALE−TFおよびルシフェラーゼアッセイ
該リコンビナーゼ選択からの変異体NTDをプライマーでptal127 SFI fwdおよびN−Term Sph1でPCR増幅した。該PCR産物を増幅し、Not1/Stu1で消化し、pTAL127−SFI Avrl5(これは、pTAL127−SFI Avr15からpcDNA 3.0 VP64内へのN末端修飾TALEの転移を促進する、対になったSFI−1消化部位を含有する)内に連結した。対応するTALE結合部位を、ルシフェラーゼ遺伝子の上流のpGL3ベーシック(Basic)ベクター(Promega)内にクローニングした。各アッセイのために、リポフェクチミン(Lipofectimine)2000(Life Technology)を製造業者の仕様に従い使用して、100ngのpcDNAを5ngのpGL3ベクターおよび1ngのpRL レニラ(Renilla)ルシフェラーゼ対照ベクターで96ウェルプレートのウェル内のHEK293t細胞内にコトランスフェクトした。48時間後、細胞を洗浄し、細胞溶解し、ベリタス・マイクロプレート(Veritas Microplate)ルミノメーター(Turner Biosystems)で二重ルシフェラーゼレポーター系(Promega)でルシフェラーゼ活性を評価した。トランスフェクションを3回重複して行い、結果を平均した。
【0152】
MBP−TALEアッセイ
ビオチン化オリゴヌクレオチドへのMBP−TALE結合のアフィニティアッセイを、既に記載されている方法を用いて行った。簡潔に説明すると、AvrXa7 TALEドメインをXL1−Blue細胞内でpMAL MBP−AvrXa7プラスミドから発現させ、アミロース樹脂上で精製した。修飾残基を有する標的AvrXa7標的部位を含有するビオチン化オリゴヌクレオチドを使用して、サンドイッチ酵素結合イムノソルベントアッセイ形態においてTALE結合活性を決定した。MBP置換基を標的化する抗体をアッセイ現像のために使用した。
【0153】
結果
5’T規則の予備分析
PthXo7 DNA配列に結合しているTALEタンパク質の最近の結晶構造は、N−1ヘアピン内のW232とDNA基質の接触領域の5’末端のチミジン(N
0塩基)との間の特有の相互作用を明らかにした。この研究は、TALEコードが最初に解読された際に報告された既に確立されている5’T規則の構造的基礎を示した(
図18AおよびB)。TALENの標的配列の第1塩基の重要性に関する矛盾するデータが存在する。標的DNAにおける5’Tの要件を、まず、Gin32Gコアに隣接した全ての可能な5’残基を有する4個のAvrXa7結合部位を含有する分割ベータラクタマーゼTALEリコンビナーゼ選択ベクターを使用するTALE−Rのコンテキストにおいて評価した(
図18C)。ついでTALE−TFによるN
0残基の認識を、それぞれの可能な5’残基を含有する認識部位を有する五量体AvrXa7プロモーター領域を含有するルシフェラーゼレポーターベクターを使用して評価した(
図18D)。5’T以外の塩基では、5’Tを含有する配列と比較してTALE−Rにおいては>100倍までの、そしてTALE−TFにおいては1000倍の活性の低下を観察した(
図18CおよびD)。著しく短縮したC末端ドメイン(CTD)の存在下では特に、5’Tの偏りを除去すると報告されているこれらのキメラのC末端構造における変異にもかかわらず、これらの低下が観察された。酵素結合イムノソルベントアッセイも、非T5’残基を有する標的オリゴヌクレオチドに対するMBP−TALE DNA結合性タンパク質のアフィニティの低下を示した(
図18E)。最後に、非T5’ヌクレオチドを有する標的に対する野生型NTDを有する設計されたTALENの活性の検査は、5’Tを有するものと比較して10倍の活性低下を示した(
図18F)。結果は、5’Tが、リコンビナーゼ、転写因子、ヌクレアーゼおよび単純なDNA結合性タンパク質の場合における最大限に有効なTALEドメインのための重要な設計パラメータであることを示している。
【0154】
非T5’残基を含有させるためのTALE NTDの進化
DNA認識のための、より柔軟な系を得るために、最近開発されたTALE−R選択系を使用してTALEのNTDを進化させて5’T制約を排除しうると仮定した(
図23)。ランダム化された残基K230〜G234を有するライブラリーを作製し、それぞれの可能な5’塩基に対する活性を有するTALE−Rを数ラウンドの選択の後で単離した(
図19A〜C)。最も活性な選択されたクローンはK230およびG234の強力な保存性を示した。前者はDNAホスファートバックボーンと接触可能であり、後者はヘアピンループ形成に影響を及ぼしうる(
図24)。ライブラリーK230〜W232においては、K230Sが頻繁に観察されたが、個別にアッセイされたほぼ全ての変異体においてK230RまたはK230変異体より遥かに低い活性を示した。W232〜R232突然変異を伴うと観察された幾つかのうちの1つのクローン(NT−G)は、5’Tから5’Gへの、選択性の有意な変化を示した。該配列は、この領域における最近記載されたラルストニア(Ralstonia)TALEタンパク質のNTDのものに類似している。植物転写因子レポーター遺伝子調節の場合における該ラルストニアNTDはその基質において5’Gを好むと報告されている(タンパク質アライメントは
図25を参照されたい)。5’Gに対するNT−Gのストリンジェンシー(厳密さ)により示されるとおり、残基R232はG塩基に特異的に接触しうる。5’Gに関するNT−Gの優先性は5’Tに関する野生型ドメインの特異性と比較しうるものであった。5’Aまたは5’Cに特異的なNTD変異体は誘導不可能であったが、高い活性を維持し任意の5’残基を有する基質を受容するK265−G268 N
0ヘアピンに類似している許容性NTDであるNT−αNが得られた。この変異体は、野生型NTDと比較して増強した、DNAホスファートバックボーンとの非特異的接触をもたらして、特異的5’残基と接触することなくTALE−DNA複合体の全結合を増強すると仮定された。短縮ヘアピン構造は、5’Aまたは5’C残基に対する特異性を有する変異体の選択を可能にすると仮定された。Q231−W232におけるランダム化および残基233の欠失を有するライブラリーを、推定DNA結合ループを短縮するように設計した。リコンビナーゼ選択は、幾つかのクローンにおいて高い活性を示す高度に保存されたQ231Y突然変異を示した(
図19D)。特に、NT−βNは、野生型NTDを有するTALEと比較して、5’A、CおよびGを有する基質に対する活性の改善を示したが、5’T基質に対する活性を低減した(
図19E)。
【0155】
進化TALE NTDの用途
デザイナーTALE融合タンパク質の用途における進化NTDの移植性(portability)を評価するために、最適化NTDをTALE−TF、MBP−TAEおよびTALEN内に組込んだ。NT−G、NT−αNおよびNT−βΝドメインを含有するTALE−TFは、NT−Tドメインを含有するTALE−TFと比較して、5’T残基を有さない作用部位を含有するルシフェラーゼ標的遺伝子の転写活性化における400〜1500倍の増加を示した。NT−Gに基づくTFは、TALE−R選択系において観察されるとおり、5’G選択性を保有していた。全ての5’ヌクレオチドに対するNT−αNおよびNT−βNに基づくTFの活性は、リコンビナーゼ形態において観察された相対活性の跡を追うものであった(
図20)。MBP−TALEはまた、5’Tを有さない部位を含有する標的オリゴヌクレオチドに対して、野生型MBP−TALEより大きな相対結合アフィニティを示し(
図26)、選択されたドメインが非チミジン5’塩基の認識および非チミジン5’塩基に対する許容性を増強したという更なる証拠を与えている。
【0156】
ついで該最適化NTDのうちの4つをGody TALENフレームワーク内に移入した。これらの実験の場合、CCR5遺伝子のΔ32遺伝子座のコンテキストにおいて4つの基質を構築した(
図21A)。各基質は異なる5’残基を含有していた。実験は、遺伝子編集活性の基準物として、5’Tに対する特異性を有する野生型(NT−T)およびdHax3 NTD[dHax3は、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)から単離された一般に使用されるNTD変異体である]を有するTALENを含んでいた。該変異体NTDの活性増強寄与を決定するために、可能な限り高いRVD相同性(50〜90%)を保有するように該基質TALENペアを設計した(
図21A)。
【0157】
配列決定により、および細胞(Cell)アッセイを用いることにより、TALENの活性を分析した。選択されたドメインは、野生型ドメインを含有するTALENの活性と比較した場合、非T5’残基に対して2〜9倍の遺伝子編集活性の増強を示した(
図21および
図27)。野生型またはdHax3 NTDを有するTALENペアT1/T2に対して、活性は最高であった。TALENペア基質G1/G2は、NT−αN、NT−βNおよびNT−Gを有するTALENにより、NT−Tと比べて2.0〜3.5倍の増強を伴って最も効果的にプロセシングされた。NT−αNは、TALENペアA1/A2およびC1/C2に対して、野生型NT−Tよりそれぞれ9倍および2倍高い活性を示した。5’残基におけるミスマッチの影響は、TALENにおいては、TALE−TFおよびTALE−Rフレームワークの場合より限られたものであるが、該最適化NTDは、遺伝子編集実験において使用された場合にTALEN活性を著しく改善した。
【0158】
考察
全てではないがほとんどの過去の研究は、最適TALE DNA結合ドメインの設計における最も5’側の残基としてチミジンが要求されることを示唆している。本明細書に記載されている分析は、機能的TALE融合タンパク質の構築にはチミジンが最適であり、幾つかの場合には決定的に重要であることを示している。したがって、この要件は、TALE転写因子、ヌクレアーゼおよびリコンビナーゼキメラで有効に標的化されうる配列に対して制約を課す。この要件は理論的には、遺伝子ノックアウトを誘発するためのTALENの使用に小さな制約を課すものであるが、それらの広範なスペーサー領域許容性を考慮すると、任意の5’残基を含みうるNTDは有効なTALE構築のための規則を更に単純化し、ゲノム操作およびインタロゲーションのために厳密なTALE配置を要求する用途[例えば、TALENを使用する一定の塩基対におけるDNAの厳密な切断、TALER−リコンビナーゼによる継ぎ目の無い遺伝子挿入および交換、特異的内因性DNA配列から天然DNA結合性タンパク質を置換除去して、それらの機能的役割を調べること、経路操作のための直交性(orthogonal)転写因子の開発、転写因子配置が鍵となる天然および合成遺伝子の相乗的活性化、ならびに多数の他の用途]を著しく増大させるであろう。DNAに基づくナノテクノロジーにおける他の用途には、特異的DNA結合性タンパク質でのDNAナノ構造/折紙の装飾が含まれる。この場合、特定の部位への標的化はDNAフォールディング/構造に基づいて制限され、したがって、任意の部位に結合可能であることが決定的に重要である。DNA結合性タンパク質でのこれらの構造および装置の加工は、機能を拡張するための魅惑的なアプローチでありうるであろう。実際、全ての標的化制約が排除されれば、DNA結合性タンパク質およびその融合体の多数の用途を想像することは困難ではない。これらの潜在的用途により鼓舞されて、本発明者らは、任意の塩基で始まる部位の標的化を可能にするNTDを開発することを目標とした。
【0159】
5’−T制約を排除するためにTALEのNTDを進化させるために、最近開発されたTALE−R系を使用した。3ラウンドの選択において、5’Gに対する特異性を有するNTDを得た。5’Aまたは5’Cを認識する変異体を得るために、多数の選択を行った。G230−K234ヘアピンを逆転さえ、K230−G234/ins232ヘアピンを拡張させ、K265−G268 N
0ヘアピンの修飾を試み、ランダム突然変異誘発を評価した。本発明者らは、5’Aおよび5’C残基の両方を有する基質を許容可能なアフィニティで認識する欠失を有するNTD、NT−βNを特定したが、これらの方法はいずれも、5’Aまたは5’Cを有する標的配列に対するアフィニティを有するNTDを与えなかった。NTD NT−TおよびNT−Gにより示された強力な選択優先性ならびにNT−TにおけるW232およびNT−GにおけるR232の重要性はDNA認識配列の5’末端残基とこれらのアミノ酸の特異的相互作用によるものであるらしい。ラルストニア・ソラナセアルム(Ralstonia solanacearum)TALEのストリンジェンシーが5’Gを要すること、およびNT−Gにおける232に類似した位置にアルギニンを含有する比較しうるN−1ヘアピンであると思われるものをNT−Gとの配列アライメントが示すことが最近報告された(
図25)。NTD Brgl1およびNT−T間の高い構造的相同性ゆえに、単純なアルギニンからトリプトファンへの突然変異によりチミンに対するラルストニア(Ralstonia)TALE NTDの優先性を修飾すること、またはNT−αNもしくはNT−βNドメインをこの関連タンパク質内にグラフティングすることにより特異性を排除することが可能でありうる。アルギニン−グアニン相互作用が進化ジンクフィンガーにおいて一般的であることに注目することも興味深い。
【0160】
選択された変異体NTDはTALE−TF、MBP−TALEおよびTALEN内に成功裏に移入され、リコンビナーゼ進化系からのデータに基づいて予想される活性および特異性を概ね付与した。最適化NTDを有するTALE−TFは、非T5’残基を有するAvrXa7プロモーター部位に対するNT−Tの活性と比較して、TALE活性化を400〜1500倍増強した。TALEN内に組込まれた場合、非T選択性を有する本発明者らのNTDは、5’A、CまたはGを有する基質上のNT−Tドメインのものと比較して、活性を2〜9倍増強した。TALEN遺伝子編集の増強は、一般に、TALE−RおよびTALE−TF構築物において観察される活性の増強と相関する。TALENペアA1/A2、C1/C2およびT1/T2でのアッセイにおいて、より低い活性により証明されるとおり、NT−Gの特異性および高活性は維持され、また、NT−αNおよびNT−βNの一般に高い活性がTALEN Δ152/+63構造内に付与された。
【0161】
合成TALE RVDドメインを有する選択的(alternatively)トランケート化TALEはDNA基質内に5’Tを要しないことが最近報告された。報告されたΔ143,+47トランケーションはGoldy TALE−TFとして構築され、Δ127,+95トランケーション(これは他の研究者により最も一般的に使用されており、本発明者らの研究において用いられたトランケーションの組合せである)の場合より実質的に低い、AvrXa7基質に対する活性が観察された(
図29)。したがって、報告された結果における相違は、用いられたトランケート化構造によるものでありうるであろう。
【0162】
要約すると、設計されたTALEの結合および活性のためのDNA基質における5’チミジンの重要性がTALE−R、TALE−TF、MBP−TALEおよびTALENキメラの場合に決定された。基質DNAの最も5’側の塩基としてチミン以外の塩基を認識するTALE NTDを操作するために、標的化突然変異誘発およびTALE−R選択を適用した。ここで開発された操作TALEドメインはモジュール性を示し、TALE−TFおよびTALEN構造において高活性であった。結合部位に関する厳格な幾何学的要件を有し、N
0塩基の種類に対して高感受性である、現在のTALE−Rにより標的化されうる部位数を、これらの新規NTDは〜15倍増大させた。更に、正確な結合が鍵となりうる遺伝子調節、内因性DNA結合性タンパク質の置換および合成生物学用途を促進させる、任意のDNA配列におけるTALE DBDおよびTALE−TFの正確な配置を、それらは今や可能にする。天然NTDに基づくTALENはN
0塩基置換の種々の度合の許容性を示すが、該データは、ここで報告されている新規NTDが、天然のNTDに基づくTALENより高い効率の遺伝子編集を促進することを示している。
【0163】
実施例5
キメラジンクフィンガーリコンビナーゼ
以下の材料および方法を用いた。
【0164】
分割遺伝子再構築ベクター(pBLA)をpBluescriptII SK(−)(Stratagene)から誘導し、クロラムフェニコール耐性遺伝子および分断TEM−1 p ラクタマーゼ遺伝子をlacプロモーターの制御下で含有するように修飾した。既に記載されているとおりにZFR標的部位を導入した。簡潔に説明すると、GFPuv(Clontech)をプライマーGFP−ZFR−XbaI−FwdおよびGFP−ZFR−HindIII−RevでPCR増幅し、pBLAのSpeIおよびHindIII制限部位内にクローニングしてpBLA−ZFR基質を得た。全てのプライマー配列を表8に示す。
【表8】
【0165】
ルシフェラーゼレポータープラスミドを作製するために、SV40プロモーターをプライマーSV40−ZFR−BglIII−FwdおよびSV40−ZFR−Hindlll−RevでpGL3−Prm(Promega)からPCR増幅した。PCR産物をBglIIおよびHindIIIを消化し、pGL3−Prmの同じ制限部位内に連結してpGL3−ZFR−1、2、3...18を得た。pBPS−ZFR供与プラスミドを、ZFR−1、2および3リコンビナーゼ部位がプライマー3’CMV−PstI−ZFR−1、2または3−Revによりコードされている点以外は既に記載されているとおりに構築した。各プラスミドの正しい構築が配列分析により確認された。
【0166】
組換えアッセイ
既に記載されているとおりに、PCRによりZFRを構築した。PCR産物をSacIおよびXbaIで消化し、pBLAの同じ制限部位内に連結した。連結物をエレクトロポレーションにより大腸菌(Escherichia coli)TOP10F’(Invitrogen)内に形質転換した。SOC培地内での1時間の回収の後、細胞を、30
∧gmL
−1のクロラムフェニコールを含有する5mL SB培地と共にインキュベートし、37℃で培養した。16時間の時点で、細胞を集め、プラスミドDNAをミニプレップ(Mini−prep)(Invitrogen)により単離し、200ngのpBLAを使用して大腸菌(E.coli)TOP10F’を形質転換した。SOCにおける1時間の回収の後、30
∧gmL
−1のクロラムフェニコールまたは30
∧gmL
−1のクロラムフェニコールおよび100
∧gmL
−1のカルベニシリン(アンピシリン類似体)を含有する固体LB培地上で細胞をプレーティングした。クロラムフェニコールおよびカルベニシリンを含有するLB培地上のコロニーの数を、クロラムフェニコールを含有するLB培地上のコロニーの数で割り算したものとして、組換えを判定した。コロニー数は、GelDoc XRイメージングシステム(Imaging System)(Bio−Rad)を使用する自動計数により決定した。
【0167】
選択
既に記載されているとおりに、重複伸長PCRによりZFRライブラリーを構築した。全20種のアミノ酸をコードする縮重コドンNNK(N:A、T、CまたはGおよびK:GまたはT)で120、123、127、136および137位に突然変異を導入した。PCR産物をSacIおよびXbaIで消化し、pBLAの同じ制限部位内に連結した。連結物をエタノール沈殿させ、それを使用して大腸菌(E.coli)TOP10F’内に形質転換した。ライブラリーサイズは常法により〜5×10
7と決定された。SOC培地内での1時間の回収の後、細胞を、30
∧gmL
−1のクロラムフェニコールを含有する100mL SB培地と共に37℃でインキュベートした。16時間の時点で、30mLの細胞を集め、プラスミドDNAをミニプレップ(Mini−prep)により単離し、3
∧gのプラスミドDNAを使用して大腸菌(E.coli)TOP10F’を形質転換した。SOCにおける1時間の回収の後、30
∧gmL
−1のクロラムフェニコールおよび100
∧gmL
−1のカルベニシリンを含有する100mLのSB培地と共に37℃で細胞をインキュベートした。16時間の時点で、細胞を集め、プラスミドDNAをMaxi−prep(Invitrogen)により単離した。富化されたZFRをSacIおよびXbaI消化により単離し、更なる選択のために新たなpBLA内に連結した。4ラウンドの選択の後、個々のカルベニシリン耐性クローンに関して配列分析を行った。前記のとおりに組換えアッセイを行った。
【0168】
ZFR構築
リコンビナーゼ触媒ドメインをそれらのそれぞれのpBLA選択ベクターからプライマー5’Gin−HBS−Kozおよび3’Gin−Agel−RevでPCR増幅した。PCR産物をHindIIIおよびAgeIで消化し、pBHの同じ制限部位内に連結してSuperZiF適合性サブクローニングプラスミド:pBH−Gin−a、P、y、5、sまたはZを得た。ジンクフィンガーをSuperZifにより構築し、pBH−Gin−a、P、y、5、sまたはZのAgeIおよびSpeI制限部位内に連結して、pBH−ZFR−L/R−1、2、3.18(L:左ZFR;R:右ZFR)を得た。ZFR遺伝子をSfi消化によりpBHから遊離させ、pcDNA3.1(Invitrogen)内に連結してpcDNA−ZFR−L/R−1、2、3.18を得た。各ZFRの正しい構築が配列分析により確認された(表9)。
【表9】
【0169】
ルシフェラーゼアッセイ
ヒト胎児腎(HEK)293および293T細胞(ATCC)を、10%(vol/vol)FBSおよび1%(vol/vol)抗生物質−抗真菌剤(Anti−Anti;Gibco)を含有するDMEM内で維持した。HEK293細胞を96ウェルプレート上に4×10
4細胞/ウェルの密度で播き、加湿5% CO
2雰囲気中で37℃で樹立させた。播いた後24時間の時点で、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000(Invitrogen)を該製造業者の説明に従い使用して、150ngのpcDNA−ZFR−L 1−18、150ngのpcDNA−ZFR−R 1−18、2.5ngのpGL3−ZFR−1、2、3.または18および1ngのpRL−CMVで細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を受動細胞溶解(Passive Lysis)バッファー(Promega)で細胞溶解し、ベリタス・マイクロプレート・ルミノメータ(Veritas Microplate Luminometer)(Turner Biosystems)を使用して二重ルシフェラーゼレポーターアッセイ系(Dual−Luciferase Reporter Assay System)(Promega)でルシフェラーゼ発現を決定した。
【0170】
組込みアッセイ
HEK293細胞を6ウェルプレート上に5×10
5細胞/ウェルの密度で播き、血清含有培地内で加湿5%CO
2雰囲気中で37℃で維持した。播いた後24時間の時点で、リポフェクタミン(Lipofectamine)2000を製造業者の説明に従い使用して、1
∧gのpcDNA−ZFR−L−1、2または3および1
∧gのpcDNA−ZFR−R−1、2または3および200ngのpBPS−ZFR−1、2または3で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を6ウェルプレート上に5×10
4細胞/ウェルの密度で分割し、2
∧gmLのピューロマイシンを含有する血清含有培地内で維持した。100%のコンフルエンスに達したら細胞を集め、Quick Extract DNA抽出溶液(Extraction Solution)(Epicentre)でゲノムDNAを単離した。Expand High Fidelity Taq System(Roche)を使用し、以下のプライマーの組合せを使用してZFR標的をPCR増幅した:ZFR−標的−1、2または3−FwdおよびZFR−標的−1、2または3−Rev(未修飾標的);ZFR−標的−1、2または3−FwdおよびCMV−Mid−Prim−1(フォワード組込み);ならびにCMV−Mid−Prim−1およびZFR−標的−1、2または3−Rev(リバース組込み)。クローン分析のために、トランスフェクションの2日後に、1×10
5細胞を100mmディッシュ上に分割し、2
∧gmL
−1のピューロマイシンを含有する血清含有培地内で維持した。個々のコロニーを、無菌シリコーングリース(Millipore)を伴う10mm×10mm開放端クローニングシリンダーを使用して単離し、培地内で増殖させた。100%のコンフルエンスに達したら細胞を集め、ゲノムDNAを単離し、前記のとおりのPCRのための鋳型として使用した。コロニー計数アッセイのために、トランスフェクションの2日後、細胞を6ウェルプレート内に1×10
4細胞/ウェルの密度で分割し、2
∧gmL
−1のピューロマイシンの存在下または非存在下、血清含有培地内で維持した。16日の時点で、細胞を0.2%クリスタルバイオレット溶液で染色し、ピューロマイシン含有培地内で形成されたコロニーの数を計数し、ピューロマイシンの非存在下で形成されたコロニーの数で割り算することにより組込み効率を決定した。コロニー数は、GelDoc XRイメージングシステム(Imaging System)(Bio−Rad)を使用する自動計数により決定した。
【0171】
結果
Ginリコンビナーゼの特異性プロファイル
セリンリコンビナーゼ触媒特異性を再操作するために、このファミリーの酵素による基質認識の根底にある要因の詳細な理解を深めた。これを達成するために、対称に置換された標的部位の包括的セットをDNAインベルターゼGinの触媒ドメインの活性化突然変異体が組換える能力を評価した。Gin触媒ドメインは、2つの10bpの半分部位領域からなる偽対称性20bpコアを組換える。したがって、組換え部位のこの集合体は10、9、8、7、6、5および4位にそれぞれの可能な一塩基置換を、そして3および2位ならびにジヌクレオチドコア内にそれぞれの可能な二塩基の組合せを含有していた。リコンビナーゼ活性を抗生物質耐性に関連づける既に記載されている方法である分割遺伝子再構築により組換えが決定された。
【0172】
一般に、Ginは、(i)該ジヌクレオチドコアにおける16個の可能な二塩基の組合せのうちの12個(AA,AT,AC,AG,TA,TT,TC,TG,CA,CT,GA,GT);(ii)3および2位における16個の可能な二塩基の組合せのうちの4個(CC,CG,GGおよびTG);(iii)6、5または4位における単一のAからTへの置換;ならびに(iv)10、9、8および7位における全12個の可能な一塩基置換を許容することが判明した(
図31A〜D)。更に、Ginは、10、9、8および7位における(可能な4.29×10
9個のうちの)少なくとも10
6個のユニーク塩基の組合せを含有する標的部位ライブラリーを組換えうることが判明した(
図31D)。
【0173】
これらの知見は、ySレゾルバーゼの結晶構造からなされた観察に合致しており、これは、(i)ジヌクレオチドコアを越えてリコンビナーゼ二量体によりなされる相互作用が非対称であり、主に非特異的であること、(ii)DNA小溝およびリコンビナーゼアーム領域における進化的に保存されたGly−Argモチーフの間の相互作用が6、5および4位のアデニンまたはチミンの要件を課すこと、ならびに(iii)10、9、8または7位におけるアーム領域および小溝の間の配列特異的相互作用が存在しないことを示している(
図31E)。これらの結果は、密接に関連したHinリコンビナーゼのDNA結合特性の決定に焦点を合わせた研究とも合致している。
【0174】
Ginリコンビナーゼ触媒特異性の再操作
Ginが3および2位の保存的置換(すなわち、CC、CG、GGおよびTG)を許容するという知見に基づいて、天然酵素によっては許容されない12個の塩基の組合せのそれぞれを含有するコア配列(
図32A)を特異的に認識するようにGin触媒特異性が再操作されうるかどうかを調べた。GinによるDNA認識に関与する特異的アミノ酸残基を特定するために、対応するそれぞれのDNA標的と複合体形成した2つの関連セリンリコンビナーゼ(y6レゾルバーゼおよびSinリコンビナーゼ)の結晶構造を調べた。これらのモデルに基づいて、3および2位においてDNAに接触する5個の残基、すなわち、Leu 123、Thr 126、Arg 130、Val 139およびPhe 140(y5レゾルバーゼに基づく番号づけ)を特定した(
図32B)。Gin触媒ドメイン内の同等残基(Ile 120、Thr 123、Leu 127、Ile 136およびGly 137)において重複伸長PCRによりランダム突然変異誘発を行い、これらの触媒ドメイン変異体を「H1」ZFPの未修飾コピーに融合させることによりZFR突然変異体のライブラリーを構築した。このライブラリーの理論的サイズは3.3×10
7変異体であった。
【0175】
分割遺伝子再構築により活性ZFRに関して富化されており天然酵素によっては許容されない5つの塩基の組合せ(GC、GT、CA、ACまたはTT)の1つを含有する基質プラスミド内にZFRライブラリーをクローニングした(
図32C)。4ラウンドの選択の後、各ZFR集団の活性が、GC、GT、CAおよびTT置換を含有するDNA標的に対しては>1,000倍、そしてAC置換を含有するDNA標的に対しては>100倍増強することが判明した(
図32D)。
【0176】
個々のリコンビナーゼ変異体を各集団から配列決定し、120、123および127位に高レベルのアミノ酸多様性が存在すること、および選択されたクローンの>80%が136位にArgを、そして137位にTrpまたはPheを含有することが判明した(
図36)。これらの結果は、136および137位が非天然コア配列の認識において決定的に重要な役割を果たしていることを示唆している。それぞれの選択された酵素がその標的DNAを組換える能力を評価した。ほぼ全てのリコンビナーゼが活性(>10%の組換え)を示し、それらの意図されるコア配列への特異性における>1,000倍の移行を示すことが判明した(
図37)。親Ginの場合と同様に、幾つかのリコンビナーゼは3および2位の保存的置換を許容することが判明した(すなわち、GTおよびCTまたはACおよびAGに対する交差反応性)。このことは、複数のコア部位を標的化するために単一の再操作触媒ドメインが用いられうることを示している(
図37)。
【0177】
リコンビナーゼ特異性を更に調べるために、親酵素によっては許容されない12個の可能な二塩基の組合せのうちの9個(GC、TC、GT、CT、GA、CA、AG、ACおよびTT)を認識することが示された5つのGin変異体(以下、Gin p、y、6、eおよびZと称する)の組換えプロファイルを決定した(表1)。Gin p、6およびeはそれらの意図されるコア配列を、親酵素(以下、Gin aと称される)のものと比較しうる活性および特異性で組換え、そのGin yおよびZはそれらの意図されるコア配列を、Gin aのものを超える特異性で組換えることが可能であった(
図32E)。各リコンビナーゼは6、5および4位のアデニンまたはチミンに対する>1,000倍の優先性を示し、10、9、8および7位における塩基優先性を示さなかった(
図38)。これらの結果は、DNA結合性アームの突然変異誘発がリコンビナーゼ特異性を損なわなかったことを示している。3および2位におけるAA、ATまたはTA置換を許容しうるGin変異体を選択することは可能ではなかった。この結果に関する1つの可能性は、>4個の連続的A−Tbpを含有するDNA標的が、リコンビナーゼ結合および/または触媒を妨げる屈曲したDNAコンホメーションを示すというものである。
【0178】
使用者により定められた配列を組換えるためのZFRの操作
再操作触媒ドメインから構成されるZFRが所定配列を組換えうるかどうかを調べた。この可能性を試験するために、ランダムDNAの400,000bp当たり約1個出現すると予想される44bpのコンセンサス組換え部位を使用して、ヒトゲノム(GRCh37一次参照構築体)を潜在的ZFR標的部位に関して検索した(
図4A)。選択されたGin変異体のコア配列プロファイルから導き出されたこのZFRコンセンサス標的部位は、21個の可能な触媒ドメインの組合せにより許容されると予想される(可能な1.0955×10
12個のうちの)約7×10
8個のユニーク20bpコア組合せ、ならびに各ZFBS内の5’−CNN−3’および5’−TNN−3’トリプレットを含まないモジュール式ジンクフィンガードメインの保存的選択を含む。選択のための一次決定因子としてZFP特異性を用いて、非タンパク質コード化遺伝子座における8個のヒト染色体(第1、2、4、6、7、11、13およびX染色体)にわたる18個の可能なZFR標的部位を特定した。平均して、それぞれの20bpのコアは、天然Gin触媒ドメインにより認識されるコア配列に対して〜46%配列同一性を示した(
図33B)。各対応ZFRはモジュール式構築により構築された(「材料および方法」を参照されたい)。
【0179】
各ZFRペアがその意図されるDNA標的を組換えるかどうかを決定するために、ZFR媒介性組換えをルシフェラーゼ発現の低減と相関させる一過性レポーターアッセイを開発した(
図33Aおよび39)。これを達成するために、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を駆動するSV40プロモーターの上流および下流にZFR標的部位を導入した。ヒト胎児腎(HEK)293T細胞を各ZFRペアおよびその対応レポータープラスミドのための発現ベクターでコトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、ルシフェラーゼ発現を測定した。分析された18個のZFRペアのうち、38%(18個中7個)がルシフェラーゼ発現を>75倍低減し、22%(18個中4個)がルシフェラーゼ発現を>140倍低減した(
図33B)。比較として、天然Gin触媒ドメインにより認識されるコア配列を標的化するように設計された陽性ZFR対照であるGinC4はルシフェラーゼ発現を107倍低減した。総合すると、評価されたZFRペアの50%(19個中9個)はルシフェラーゼ発現を少なくとも20倍低減することが判明した。重要なことに、細菌細胞において有意な活性(>20%の組換え)を示した実質的に全ての触媒ドメインは、哺乳類細胞における少なくとも1つの天然に存在する配列を組換えるために成功裏に使用された。
【0180】
ZFR特異性を評価するために、独立して、それぞれの非コグネイトレポータープラスミドと共に9個の最も活性なZFRのための発現プラスミドでHEK293T細胞をコトランスフェクトした。各ZFRペアはその意図されるDNA標的に対する高い特異性を示し、評価されたZFRの77%(9個中7個)は、陽性対照GinC4の場合と実質的に同一である全体的な組換え特異性を示した(
図4C)。ルシフェラーゼ発現の低減が、意図されたZFRヘテロ二量体の成果であり、組換え適合性ZFRホモ二量体の副産物ではないことを確証するために、組換えに対する各ZFR単量体の寄与を測定した。ZFR 1「左」単量体のその対応レポータープラスミドとのコトランスフェクションはルシフェラーゼ発現における中程度の低減(組換えに対する全寄与:〜22%)を招いたが、個々のZFR単量体の大多数(18個中16個)は組換えに有意には寄与せず(<10%の組換え)、多数(18個中7個)は活性を示さなかった(
図39)。総合すると、これらの研究は、使用者により定められた配列を高い特異性で組換えるようにZFRが操作されうることを示している。
【0181】
操作されたZFRはヒトゲノム内への標的化組込みをもたらす。
【0182】
ZFRがヒト細胞における内因性遺伝子座内にDNAを組込みうるかどうかを次に評価した。これを達成するために、特異的ZFR標的部位およびピューロマイシン耐性遺伝子をSV40プロモーターの制御下で含有する対応DNA供与プラスミドならびにZFR発現ベクターでHEK293細胞をコトランスフェクトした。この分析のために、それぞれヒト染色体4、Xおよび4上の染色体非タンパク質コード化遺伝子座を標的化するように設計されたZFRペア1、2および3を使用した(
図34A)。トランスフェクションの2日後、細胞をピューロマイシン含有培地と共にインキュベートし、ピューロマイシン耐性(puro
R)コロニーの数の決定により組込み効率を測定した。(i)供与プラスミドおよび対応ZFRペアのコトランスフェクションは、供与プラスミドのみでのトランスフェクションと比較してpuro
Rコロニーにおける>12倍の増加を招くこと、ならびに(ii)両方のZFRでのコトランスフェクションは、個々のZFR単量体でのトランスフェクションと比較してpuro
Rコロニーにおける6〜9倍の増加を招くことが判明した(
図34B)。ZFRペアが組込みを正しく標的化したかどうかを評価するために、ゲノムDNAをpuro
R集団から単離し、各標的化遺伝子座をPCRにより増幅した。フォワードおよび/またはリバース配向における組込みに対応するPCR産物が、これらのZFRペアにより標的化された各遺伝子座において観察された(
図34C)。次に、ZFR媒介性組込みの全体的特異性を決定するために、ゲノムDNAをクローン細胞集団から単離し、プラスミド挿入をPCRにより評価した。この分析は8.3%(12個中1個のクローン)、14.2%(35個中5個のクローン)および9.1%(11個中1個のクローン)の、それぞれZFRペア1、2および3に関する標的化効率を示した(
図S6)。各PCR産物の配列分析はZFR媒介性組込みを証明した(
図34D)。総合すると、これらの結果は、DNAを内因性遺伝子座内に正確に組込むようにZFRが設計されうることを示している。
【0183】
最後に、ZFR−1「左」単量体はZFR−1遺伝子座内への組込みを標的化することが判明したことが注目される(
図34C)。前記のルシフェラーゼレポーター研究に合致しているこの結果(
図39)は、組換え適合性ZFRホモ二量体がオフターゲット(非特異的)組込みを媒介する能力を有することを示している。最適化ヘテロ二量体ZFR構造体の将来の開発およびオフターゲット組込みの包括的評価は、より大きな標的化効率を示すZFRの設計につながるはずである。
【0184】
使用者により定められた配列を高い特異性で組換えるようにZFRが設計されうること、およびZFRがヒト細胞における所定内因性遺伝子座内にDNAを組込みうることが本明細書に示されている。基質特異性分析と定向進化とを組合せることにより、ZFR触媒ドメインにより課される実質的に全ての配列要件が排除された。45個の予め選択されたジンクフィンガーモジュールのアーカイブを使用して、4,000bpのランダム配列当たりに約1個の潜在的ZFR標的部位に対応する>1×10
22個のユニーク44bp DNA配列を認識するようにZFRが設計されうると推定される。選択による特製(カスタム化)ジンクフィンガードメインの構築は標的化を更に進展させるであろう。本明細書に記載されている再操作触媒ドメインは、最近記載されているTALエフェクターリコンビナーゼに適合するであろう。この研究は、カスタム特異性を有するZFRを作製する実施可能性を実証しており、ゲノム工学、合成生物学および遺伝子治療を含む多種多様な用途に関するZFRの潜在的有用性を例示している。
【0185】
本発明は前記実施例に関して記載されているが、修飾および変更が本発明の精神および範囲内に含まれると理解されるであろう。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲のみにより限定される。
(項目1)
a)リコンビナーゼ、転写因子またはヌクレアーゼと
b)転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質とを含むキメラポリペプチド。
(項目2)
前記TALEタンパク質がトランケート化されている、項目1記載のキメラタンパク質。
(項目3)
前記TALEタンパク質がC末端またはN末端トランケート化を含む、項目2記載のキメラタンパク質。
(項目4)
前記TALEタンパク質がC末端トランケート化を含む、項目3記載のキメラタンパク質。
(項目5)
前記TALEタンパク質が、AcrXa7、Tal1cおよびPthXolからなる群から選択される、項目1記載のキメラタンパク質。
(項目6)
前記TALEタンパク質が、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、項目1記載のキメラタンパク質。
(項目7)
前記TALEタンパク質がC末端トランケート化を含む、項目6記載のキメラタンパク質。
(項目8)
前記TALEタンパク質がアミノ酸残基27と268との間、92と134との間、120と129との間、74と147との間または87と120との間でトランケート化されている、項目7記載のキメラタンパク質。
(項目9)
前記TALEタンパク質がアミノ酸残基28、74、87、92、95、120、124、128、129、147および150においてトランケート化されている、項目8記載のキメラタンパク質。
(項目10)
前記リコンビナーゼが、
(a)Tn3(EcoTn3としても公知);Hin(StyHinとしても公知);Gin(MuGinとしても公知);Sin;Beta;Pin;Min;Din;Cin;EcoTn21;SfaTn917;BmeTn5083;Bme53;Cpe;SauSK1;SauSK41;SauTn552;Ran;Aac;Lla;pMER05;Mlo92;Mlo90;Rrh;Pje;Req;PpsTn5501;Pae;Xan;ISXc5;Spy;RhizY4cG;SarpNL1;SsolSC1904a;SsolSC1904b;SsoISC1913;Aam606;MjaM0014;Pab;HpylS607;MtulS
Y349;MtuRv2792c;MtuRv2979c;MtuRv3828c;MtuRv0921;MceRv0921;TnpX;TndX;WwK;ラクトコッカスファージTP901−1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφ370.1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφFC1セリンリコンビナーゼ;リステリア(Listeria)ファージA118セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC3C8.24セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC2E1.37セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD78.04cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC8F4.15cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD12A.23セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCH10.38cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCC88.14セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージφC31セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージR4セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージφ105セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージSPBc2セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)プロファージSKINセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrAセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrBセリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)ファージBxb1セリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)プロファージφRVlセリンリコンビナーゼ;YBCK
ECOLI;Y4bA;Bja;Spn;Cac 1956;およびCac 1954;ならびに
b)a)のリコンビナーゼの突然変異タンパク質からなる群から選択される、項目1記載のキメラタンパク質。
(項目11)
前記リコンビナーゼが、Gin、Hin、Tn3、Sin、Beta、Pin.Min、DinおよびCinならびにGinの突然変異タンパク質、Hinの突然変異タンパク質、Sinの突然変異タンパク質、Betaの突然変異タンパク質、Pinの突然変異タンパク質、Minの突然変異タンパク質、Dinの突然変異タンパク質、Cinの突然変異タンパク質、Tn3の突然変異タンパク質からなる群から選択される、項目10記載のキメラタンパク質。
(項目12)
前記リコンビナーゼがGinである、項目10記載のキメラタンパク質。
(項目13)
前記リコンビナーゼがGinであり、TALEタンパク質がAcrXa7である、項目1記載のキメラタンパク質。
(項目14)
項目1〜13のいずれか1項記載のキメラタンパク質をコードする単離された核酸分子。
(項目15)
項目14記載の核酸分子を含む発現カセット。
(項目16)
項目15記載の発現カセットを含むベクター。
(項目17)
項目14記載の核酸分子または項目16記載のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
(項目18)
部位特異的組換えのための方法であって、
(a)項目1記載のキメラタンパク質と特異的に相互作用するための少なくとも2つの結合部位を含むDNA配列を提供することと、
(b)該DNA配列を該キメラタンパク質と反応させることとを含み、該キメラタンパク質と特異的に相互作用する2つの部位の間で該DNA配列の鎖の両方が切断される部位特異的組換え事象を該キメラタンパク質が触媒する、方法。
(項目19)
前記部位特異的組換え事象が逆位である、項目18記載の方法。
(項目20)
前記部位特異的組換え事象が組込みである、項目18記載の方法。
(項目21)
前記部位特異的組換え事象が分離(resolution)である、項目18記載の方法。
(項目22)
項目1記載のキメラタンパク質をコードする核酸分子を含む組成物を対象に投与することを含む遺伝子治療方法であって、
該核酸分子の発現に際して、該対象のゲノム内に存在する遺伝子が特異的に除去または不活性化される、方法。
(項目23)
前記遺伝子の機能的置換を含む核酸分子を対象に投与することを更に含む、項目22記載の方法。
(項目24)
a)項目1記載のキメラタンパク質と、
b)医薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
(項目25)
a)項目1記載のキメラタンパク質をコードする核酸分子と、
b)医薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
(項目26)
項目1記載のキメラタンパク質により触媒される組換えの作用により生産されるトランスジェニック生物。
(項目27)
項目18〜21のいずれか1項記載の方法に産生されたDNA配列を有する核酸分子を含む細胞を対象に投与することを含む、遺伝子治療方法。
(項目28)
生物のゲノムを修飾するための方法であって、
項目18〜22のいずれか1項記載の方法を使用して該ゲノムの核酸分子上で部位特異的組換えを行うことにより該生物のゲノムを修飾することを含む、方法。
(項目29)
前記生物が原核生物、細菌、ウイルスまたは真核生物である、項目28記載の方法。
(項目30)
所望のヌクレオチドに特異的に結合する転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質結合ドメインの製造方法であって、
a)可変性二残基(RVD)内の又はRVDの1〜2アミノ酸残基N末端側もしくはC末端側のアミノ酸残基を突然変異させることにより、TALEタンパク質結合ドメインのアミノ酸配列をランダム化することと、
b)所望のヌクレオチドに特異的に結合する、(a)のランダム化TALEタンパク質結合ドメインを選択することとを含む、製造方法。
(項目31)
項目30記載の製造方法により製造された転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質結合ドメインを含む単離されたタンパク質。
(項目32)
1〜40個のTALEタンパク質結合ドメインを含む、項目31記載の単離されたタンパク質。
(項目33)
標的ヌクレオチド配列に特異的に結合する、項目32記載の単離されたタンパク質。
(項目34)
ヌクレアーゼまたはリコンビナーゼ活性を含む、項目33記載の単離されたタンパク質。
(項目35)
遺伝子発現を調節する、項目33記載の単離されたタンパク質。
(項目36)
項目31〜35のいずれか1項記載のTALEタンパク質結合ドメインを含むタンパク質をコードする単離された核酸分子。
(項目37)
項目36記載の核酸分子を含む発現カセット。
(項目38)
項目37記載の発現カセットを含むベクター。
(項目39)
項目37記載の核酸分子または項目38記載のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
(項目40)
キサンタモヌス(Xanthamonus)由来転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質を含む単離されたポリペプチドであって、
該TALEタンパク質が、QはYである、QはSである、QはRである、WはRである、WはGである、Wは欠失している、SはRである、SはHである、SはAである、SはNである、およびSはTであることから選択される1以上の突然変異または欠失を有する配列番号3(VGKQWSGARAL)に示すアミノ酸配列を含むN末端ドメイン(NTD)を有する、単離されたポリペプチド。
(項目41)
前記NTDが、VGKYRGARAL(配列番号4)、VGKSRSGARAL(配列番号5)、VGKYHGARAL(配列番号6)およびVGKRGAGARAL(配列番号7)から選択されるアミノ酸配列を含む、項目40記載のポリペプチド。
(項目42)
ラルストニア(Ralstonia)由来転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質を含む単離されたポリペプチドであって、
該TALEタンパク質が、R
1はKである、QはYである、QはSである、QはRである、R
2はWである、R
2はGである、R
2は欠失している、SはRである、SはHである、SはAである、SはNである、およびSはTであることから選択される1以上の突然変異または欠失を有する配列番号8(IVDIAR
1QR
2SGDLA)に示すアミノ酸配列を含むN末端ドメイン(NTD)を有する、単離されたポリペプチド。
(項目43)
前記NTDが、IVDIARQWSGDLA(配列番号9)、IVDIARYRGDLA(配列番号10)、IVDIARSRSGDLA(配列番号11)、IVDIARYHGDLA(配列番号12)およびIVDIARRGAGDLA(配列番号13)から選択されるアミノ酸配列を含む、項目42記載のポリペプチド。
(項目44)
リコンビナーゼドメインまたはヌクレアーゼドメインを更に含む、項目40〜43のいずれか1項記載のポリペプチド。
(項目45)
項目40〜44のいずれか1項記載のポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
(項目46)
項目45記載の核酸分子を含む発現カセット。
(項目47)
項目46記載の発現カセットを含むベクター。
(項目48)
項目45記載の核酸分子または項目47記載のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞。
(項目49)
転写アクチベーター様エフェクター(TALE)タンパク質N末端ドメイン(NTD)の製造方法であって、
a)NTD内の1以上のアミノ酸残基を突然変異または欠失させることにより、NTDのアミノ酸配列をランダム化することと、
b)所望のヌクレオチドに特異的に結合する又は活性の増強を示す、(a)のランダム化TALEタンパク質NTDを選択することを含み、
前記アミノ酸配列は配列番号14(VGKXXXGAR)または配列番号15(VDIAXXXXGDLA)である、製造方法。
(項目50)
対応野生型リコンビナーゼより大きな触媒特異性を有する複数のジンクフィンガーリコンビナーゼ(ZFR)タンパク質の製造方法であって、
a)Gin Ile120、Thr123、Leu127、Ile136およびGly137またはそれらの組合せと同等な位置においてリコンビナーゼ触媒ドメイン上でランダム突然変異誘発を行い、各アミノ酸に関して2および3位において該DNAを突然変異させることと、
b)a)のリコンビナーゼ触媒ドメインを複数のジンクフィンガー結合ドメインと融合させてZFRを形成することと、
c)対応野生型リコンビナーゼより大きな触媒特異性を有するb)のZFRを富化させることとを含む、製造方法。
(項目51)
前記ZFRが、GC、GT、CA、TTおよびACから選択されるDNA標的に対する触媒活性の増強を示す、項目50記載の製造方法。
(項目52)
前記リコンビナーゼ触媒ドメインがIle136および/またはGly137において突然変異誘発される、項目50記載の製造方法。
(項目53)
前記ZFRが第1、2、4、6、7、11、13およびX染色体における標的特異性の増強を示す、項目50記載の製造方法。
(項目54)
前記ZFRがベクター内に存在する、項目50記載の製造方法。
(項目55)
前記リコンビナーゼ触媒ドメインが、
a)Tn3(EcoTn3としても公知);Hin(StyHinとしても公知);Gin(MuGinとしても公知);Sin;Beta;Pin;Min;Din;Cin;EcoTn21;SfaTn917;BmeTn5083;Bme53;Cpe;SauSK1;SauSK41;SauTn552;Ran;Aac;Lla;pMER05;Mlo92;Mlo90;Rrh;Pje;Req;PpsTn5501;Pae;Xan;ISXc5;Spy;RhizY4cG;SarpNL1;SsolSC1904a;SsolSC1904b;SsoISC1913;Aam606;MjaM0014;Pab;HpylS607;MtulS
Y349;MtuRv2792c;MtuRv2979c;MtuRv3828c;MtuRv0921;MceRv0921;TnpX;TndX;WwK;ラクトコッカスファージTP901−1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφ370.1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφFC1セリンリコンビナーゼ;リステリア(Listeria)ファージA118セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC3C8.24セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC2E1.37セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD78.04cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC8F4.15cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD12A.23セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCH10.38cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCC88.14セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージφC31セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージR4セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージφ105セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージSPBc2セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)プロファージSKINセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrAセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrBセリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)ファージBxb1セリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)プロファージφRVlセリンリコンビナーゼ;YBCK
ECOLI;Y4bA;Bja;Spn;Cac 1956;およびCac 1954;ならびに
b)a)の突然変異タンパク質からなる群から選択されるリコンビナーゼからのものである、項目50記載の製造方法。
(項目56)
前記リコンビナーゼ触媒ドメインがGin、Hin、Sin、Beta、Pin、Min、Din、CinまたはTn3の突然変異タンパク質からのものである、項目6記載の方法。
(項目57)
項目50記載の製造方法により製造されるキメラポリペプチド。
(項目58)
前記リコンビナーゼ触媒ドメインが、
a)Tn3(EcoTn3としても公知);Hin(StyHinとしても公知);Gin(MuGinとしても公知);Sin;Beta;Pin;Min;Din;Cin;EcoTn21;SfaTn917;BmeTn5083;Bme53;Cpe;SauSK1;SauSK41;SauTn552;Ran;Aac;Lla;pMER05;Mlo92;Mlo90;Rrh;Pje;Req;PpsTn5501;Pae;Xan;ISXc5;Spy;RhizY4cG;SarpNL1;SsolSC1904a;SsolSC1904b;SsoISC1913;Aam606;MjaM0014;Pab;HpylS607;MtulS
Y349;MtuRv2792c;MtuRv2979c;MtuRv3828c;MtuRv0921;MceRv0921;TnpX;TndX;WwK;ラクトコッカスファージTP901−1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφ370.1セリンリコンビナーゼ;エス・ピロゲネス(S.pyogenes)ファージφFC1セリンリコンビナーゼ;リステリア(Listeria)ファージA118セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC3C8.24セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC2E1.37セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD78.04cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SC8F4.15cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCD12A.23セリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCH10.38cセリンリコンビナーゼ;エス・コエリコロル(S.coelicolor)染色体SCC88.14セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージφC31セリンリコンビナーゼ;ストレプトマイセス(Streptomyces)ファージR4セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージφ105セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)ファージSPBc2セリンリコンビナーゼ;バシラス(Bacillus)プロファージSKINセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrAセリンリコンビナーゼ;エス・アウレウス(S.aureus)ccrBセリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)ファージBxb1セリンリコンビナーゼ;エム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)プロファージφRVlセリンリコンビナーゼ;YBCK
ECOLI;Y4bA;Bja;Spn;Cac 1956;およびCac 1954;ならびに
b)a)の突然変異タンパク質からなる群から選択される、項目57記載のキメラポリペプチド。
(項目59)
前記リコンビナーゼ触媒ドメインがGin、Hin、Sin、Beta、Pin、Min、Din、CinまたはTn3の突然変異タンパク質からのものである、項目9記載の方法。
(項目60)
項目57記載のポリペプチドをコードする単離された核酸分子。
(項目61)
項目60記載の核酸分子を含む発現カセット。
(項目62)
項目61記載の発現カセットを含むベクター。
(項目63)
項目62記載のベクターを含有する単離された宿主細胞。
(項目64)
部位特異的組込みを触媒する項目57記載のキメラポリペプチドとDNA配列を接触させることを含む、DNA配列内への部位特異的組込みのための方法。
(項目65)
項目57記載のキメラポリペプチドをコードする核酸分子を含む組成物を対象に投与することを含む遺伝子治療方法であって、
該核酸分子の発現に際して、該対象のゲノム内に存在する遺伝子が特異的に除去または不活性化される、方法。
(項目66)
該遺伝子の機能的置換を含む核酸分子を対象に投与することを更に含む、項目65記載の方法。
(項目67)
a)項目57記載のキメラポリペプチドと、
b)医薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
(項目68)
a)項目57記載のキメラポリペプチドをコードする核酸分子と、
b)医薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
(項目69)
項目57記載のキメラポリペプチドにより触媒される組換えにより生産されるトランスジェニック生物。