(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1の構成を示す機能ブロック図である。
ナビゲーション装置1は、地図を表示するとともに、現在地点又はユーザ選択地点から目的地に至る経路を探索し、当該経路を地図に示しながら案内する機能を少なくとも備える装置であり、同図に示すように、記憶部10と、取得部11と、処理部12と、表示部13と、を備えている。このナビゲーション装置1は、例えばカーナビゲーション装置などの車載機器、またはポータブルナビゲーション装置などの携帯型装置として構成されている。
記憶部10は、地図データ20と、参照テーブル16と、開通化フラグファイル17とを記憶するものであり、これらを記憶するためのハードディスクドライブやメモリ装置等の任意の記憶装置を備えている。
【0009】
図2は地図データ20の説明図である。
地図データ20は、
図2に示すように、少なくとも道路に関する情報(以下、「道路情報21」と称する)を含む地図に関する情報を含んだデータであり、この道路情報21は、少なくともリンク情報22と、開通情報23とを含んでいる。リンク情報22は、道路の分岐点(例えば、交差点など)を示すノード同士を接続するリンクの情報であり、この地図データ20では、メッシュに含まれるリンクにIDを付した情報として登録されている。メッシュは、地表面を多数の正方形などに分割したものを指し、メッシュを標準化したものは、いわゆる標準地域メッシュと呼ばれている。
【0010】
開通情報23は、地図データ20における道路の開通/未開通を区別する情報である。
すなわち、この地図データ20には、その作成時点において開通済みの道路と、その後の未来に開通予定となっている未開通(建設中、又は建設予定)の道路の各々の道路情報21が含まれている。これら全ての道路の道路情報21には上記開通情報23が付されており、この開通情報23に基づいて未開通の道路が区別される。
この地図データ20では道路を構成するリンクごとに道路情報21が対応付けられている。リンクが未開通の道路である場合、道路情報21には値「0」が格納され、リンクが開通済みの道路である場合、道路情報21には値「1」が格納される。なお、
図2の図示例では、道路情報21の値の意味の把握を容易にするために便宜的に、道路情報21の値「0」に「未来」の文字を付し、値「1」に「通常」の文字を付して図示している。
【0011】
図3は参照テーブル16の説明図である。
一般に、データ化された地図では、全ての道路に路線単位で道路番号25が付されており、路線の道路番号25と、路線を構成するリンクとの対応が参照テーブル16に規定されている。具体的には、参照テーブル16には、
図3に示すように、道路番号25ごとに上述したリンク情報22が対応付けて記録されている。ナビゲーション装置1は、参照テーブル16を参照することで、あるリンク情報22を含む路線の道路番号25を特定できる。
【0012】
図4は開通化フラグファイル17の説明図である。
開通化フラグファイル17は、道路の現実の開通状況を示す情報を示すものであり、この実施形態では、開通化フラグファイル17は、未開通状態から新たに開通した路線を示す情報を含でんいる。具体的には、開通化フラグファイル17には、
図4に示すように、新たに開通した路線の道路番号25と、この路線の名称を示す道路名称26とが対応付けて記録されている。この開通化フラグファイル17は、1つの路線、すなわち1個の道路番号25ごとに生成され、開通化フラグファイル17と、新たに開通した路線とが一対一で対応付けられている。すなわち、ある路線が開通するごとに、その路線の開通を示す開通化フラグファイル17が記憶部10に格納される。換言すれば、開通化フラグファイル17の存在によって、路線の開通が識別されることとなり、地図データ20の開通情報23を書き換える必要がない。
したがって、ナビゲーション装置1では、未開通の道路を開通とする処理に伴って地図データ20を変更する必要がないから、当該変更が行われている間、地図データ20が処理に利用できないといった事態を回避できる。また地図データ20への変更が不要であるから地図データ20の破損の心配もない。さらに、何らかの理由により、一旦開通した道路が未開通になった場合には、ナビゲーション装置1において、その道路の開通化フラグファイル17を削除するだけで未開通状態に戻すことができるから、メンテナンスが非常に容易となる。
【0013】
また、ナビゲーション装置1が地図データ20を道路の開通の都度に変更する構成の場合、万が一の破損に備えて、地図データ20を二重化することが考えられるが、そのような処理を必要としない。また、地図データ20の二重化のために記憶部10の大容量化を必要としない。
【0014】
前掲
図1に戻り、取得部11は、ナビゲーション装置1の外部から開通化フラグファイル17を取得し、記憶部10に格納する。詳述すると、開通化フラグファイル17は、道路の開通を管理する地図センター40(
図6)等の配信サーバからインターネット回線等の任意の電気通信回線を通じて配信され、或いは、光ディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録して、ナビゲーション装置1にコピーされる。取得部11は、電気通信回線に接続する通信装置、或いは記録媒体を読み取る読取装置を備え、通信装置、或いは読取装置によって開通化フラグファイル17を取得し、記憶部10に格納する。また取得部11は、開通化フラグファイル17を記憶部10に格納する際には、そのファイルを一意に識別可能なファイル名27(
図4参照)を付すことで、格納済みの開通化フラグファイル17が、いわゆる上書き更新されてしまうことを防止している。
また、現実に開通した道路ごとに開通化フラグファイル17が個別に記憶部10に格納されるから、地図データ20において開通化した道路と開通化フラグファイル17が一対一で対応付けられる。これにより、地図データ20において開通とした道路を取り消して未開通に戻す場合、その道路に対応する開通化フラグファイル17を削除することで、他の道路の開通化に影響を与えずに独立して未開通に戻すことができる。
【0015】
またナビゲーション装置1は、道路の開通を取り消して道路を未開通すとする場合、開通化フラグファイル17を削除するだけで良いため、地図センター40等の外部から情報を受信する必要はない。また例えばナビゲーション装置1は、開通化フラグファイル17がユーザの操作に基づいて削除可能に構成されてもよい。
【0016】
処理部12は、各種の処理を実行するものであり、ナビゲーション処理部30と、地図データアクセス制御部31とを備えている。処理部12は、プログラムを記憶する半導体メモリ等の記憶デバイスと、このプログラムを実行する例えばCPUやMPU等の演算デバイスとを備えて構成されている。処理部12が備える上記ナビゲーション処理部30と、地図データアクセス制御部31の機能は、記憶デバイスに記憶されたプログラムを演算デバイスが実行することで実現されている。このプログラムの変更、または追加によって、処理部12の機能が任意に変更や追加可能になっている。
ナビゲーション処理部30は、地図データ20に基づくナビゲーションに関する処理を実行するものであり、この処理には、例えば経路探索処理、経路誘導処理、地図描画処理、及びマップマッチング処理等が含まれている。経路探索処理は設定地点から目的地までの経路を地図データ20のリンク情報22に基づいて探索する処理であり、経路誘導処理は現在地点を基準として目的地への進行方向や距離等を地図上に提示して目的地に誘導する処理である。地図描画処理は地図データ20に基づいて地図(道路や施設など)を表示する処理である。マップマッチング処理は地図データ20に基づいて、GPS等の図示せぬ測位デバイスで測位した現在地点の緯度・経度情報の誤差を補正する処理である。
【0017】
地図データアクセス制御部31は、ナビゲーション処理部30による処理において参照された未開通の道路が既に開通済みであるかを判断する。
詳述すると、ナビゲーション処理部30が実行する各種処理のうち、例えば経路探索処理や経路誘導処理などの処理では、未開通の道路を含む経路が使用されないように、未開通の道路を除外する必要がある(以下、未開通の道路を除外すべき処理を「未開通道路忌避処理」と称する)。
そこでナビゲーション処理部30は、未開通道路忌避処理実行中に参照した道路情報21が未開通のリンク情報22を含む場合、このリンク情報22の道路の開通を地図データアクセス制御部31に問い合わせ、その結果を受け取るようになっている。そして、道路が開通済みでなかった場合、ナビゲーション処理部30は、問い合わせたリンク情報22の道路情報21を除き、開通済み道路のみを用いて処理を進めることとなる。
【0018】
なお、ナビゲーション処理部30が参照したリンク情報22が未開通を示すか否かは、上述の通り、このリンク情報22に予め対応付けて記録された開通情報23の値が「0」(未来)か「1」(通常)かによって判断される。また以下では、リンク情報22の道路が開通済みか否かの問い合わせを「開通状況確認要求」と称する。ナビゲーション装置1は、この開通状況確認要求を、未開通道路忌避処理の中に限らず、他の処理においても適宜に行って良い事は勿論である。
【0019】
地図データアクセス制御部31は、リンク情報22の開通状況確認要求に応じて、このリンク情報22の道路が開通済みか否かを判断し、結果をナビゲーション処理部30に返信する。この開通済みか否かの判断は、参照テーブル16、及び開通化フラグファイル17に基づいて行われる。具体的には、地図データアクセス制御部31は、参照テーブル16に基づいて、開通状況確認要求されたリンク情報22に対応する道路の道路番号25を特定し、この道路番号25を含む開通化フラグファイル17が記憶部10に存在するか否かを判断する。開通化フラグファイル17は、上述の通り、道路が現実に開通したときに地図センター40からの配信情報に基づいて記憶部10に保存されるものである。したがって、問い合わせに係る道路番号25の開通化フラグファイル17が存在する場合、その道路番号25の道路は開通済みであるから、ナビゲーション処理部30にはリンク情報22が「開通済み」である旨が返信される。一方、開通化フラグファイル17が存在しない場合は、リンク情報22が「未開通」である旨がナビゲーション処理部30に返信されることとなる。
【0020】
表示部13は、ナビゲーション処理部30の処理結果に基づき、ナビゲーションに要する地図、その他メニュー等を表示するものであり、フラットパネルディスプレイ装置等の任意の表示装置を備えている。なお、表示部13は、ナビゲーション装置1が一体に備えている必要はなく、別体、或いはナビゲーション装置1の本体に着脱自在に設けられた表示装置であっても良い。また、ナビゲーション装置1が表示部13に表示すべき表示データを他の装置に有線、又は無線で送信し、他の装置が備える表示装置に表示させることで、この表示装置を表示部13として用いても良い。
【0021】
なお、ナビゲーション装置1は、
図1に示した各部の他にも、現在位置を測定するGPSやジャイロセンサ等の測位デバイス、ユーザの操作を入力する操作子やタッチパネル等の操作用デバイス、その他の一般なナビゲーション装置が備える各種のデバイスを備えている。
【0022】
図5は未開通道路忌避処理における処理部12の動作を示すフローチャートである。
未開通道路忌避処理の実行中においては、上述の通り、未開通の道路を除き開通済みの道路のみを使用して処理をするために、処理部12のナビゲーション処理部30は、次の処理を実行する。すなわち
図5に示すように、ナビゲーション処理部30は、道路情報21のリンク情報22を参照するごとに(ステップS1)、リンク情報22の道路が未開通であるか否かを開通情報23に基づき判断する(ステップS2)。未開通でない場合には(ステップS2:No)、ナビゲーション処理部30は、このリンク情報22を使用して処理を進める(ステップS3)。一方、未開通であった場合には(ステップS2:YES)、ナビゲーション処理部30は、このリンク情報22の開通状況確認要求を地図データアクセス制御部31に送信する(ステップS4)。
【0023】
地図データアクセス制御部31は、リンク情報22の開通状況確認要求を受けると、このリンク情報22が参照テーブル16に記録されているか否かを判断するために、このリンク情報22を検索キーとして参照テーブル16を検索する(ステップS5)。該当するリンク情報22が見つかった場合(ステップS6:YES)、地図データアクセス制御部31は、リンク情報22に対応する道路の道路番号25を取得する(ステップS7)。そして、地図データアクセス制御部31は、この道路番号25を含む開通化フラグファイル17を記憶部10から検索する(ステップS8)。
【0024】
開通化フラグファイル17が見つかった場合(ステップS9:YES)、その道路番号25の道路は開通済みであるから、地図データアクセス制御部31はナビゲーション処理部30に「開通済み」の旨を返信する(ステップS10)。ナビゲーション処理部30は、「開通済み」の返信を受けると、そのリンク情報22を使用して、そのまま処理を進める(ステップS11)。
一方、開通化フラグファイル17が存在しない場合(ステップS9:NO)、その道路番号25の道路は未開通のままであるから、地図データアクセス制御部31はナビゲーション処理部30に「未開通」の旨を返信する(ステップS12)。ナビゲーション処理部30は、「未開通」の返信を受けると、そのリンク情報22を使用しないようにして処理を進める(ステップS13)。
【0025】
また、上記ステップS5の参照テーブル16の検索において、該当するリンク情報22が見つからなかった場合(ステップS6:NO)、開通/未開通がナビゲーション装置1では管理されていないことを示す。したがって、この場合には、地図データアクセス制御部31は、開通が不確かなリンク情報22の利用を禁止すべく、「未開通」の旨をナビゲーション処理部30に送信するようになっている。
【0026】
図6はナビゲーション装置1の動作説明図である。
ナビゲーション装置1の製造出荷時、或いは使用開始時には、ナビゲーションに供する地図データ20が記憶部10に格納される。この地図データ20には、上述の通り、現実に開通済みの道路に加え、地図データ20の収録時点において開通前である未開通の道路が含まれている。上述の通り、地図データ20の全てのリンク情報22に、開通/未開通を示す開通情報23を付すことで、全ての道路の開通/未開通が予め区別されている。経路案内等の未開通道路忌避処理では、未開通の道路は使用されないことから、例えばこの処理において地図データ20に基づく地
図50を表示部13に表示する際には、
図6(A)に示すように、開通済みの道路(図中、実線)のみが表示され、未開通の道路(図中、仮想線)は表示されない。
【0027】
未開通の道路が現実に開通すると、
図6(B)に示すように、この道路の開通を示す上記開通化フラグファイル17が例えば地図センター40等の外部の配信サーバから配信され、取得部11を通じて記憶部10に格納される。
この結果、未開通道路忌避処理においては、地図データ20の道路の開通情報23が未開通を示していたとしても、開通化フラグファイル17が記憶部10に格納されることで、前掲
図5に示す処理では「開通済み」と判断される。これにより、
図6(C)に示すように、表示部13の地図表示では、地図データ20の開通情報23では未開通となっている道路(
図6(A)中、仮想線)が表示され、経路案内等に使用される。
【0028】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、本実施形態によれば、未開通の道路が開通したことを示す開通化フラグファイル17が地図データ20とは別に記憶部10に記憶され、地図データ20に含まれている未開通の道路の開通は、当該未開通の道路に対応する開通化フラグファイル17が記憶されているか否かに基づいて判断される。
これにより、未開通の道路の開通に伴って地図データ20を変更する必要がないから、当該変更が行われている間、地図データ20が利用できないといった事態を回避でき、開通して使用可能になった道路を正確にユーザへ知らせることができる。また地図データ20への変更が不要であるから地図データ20の破損の心配もない。
【0029】
また本実施形態によれば、開通化フラグファイル17は、開通した道路ごとに個別に記憶部10に記憶される構成とした。
これにより、万が一、開通した道路としての取り扱いを取り消す場合には、その道路に対応した開通化フラグファイル17を削除するだけで、他の道路の開通化に影響を与えずに個別に取り消すことができる。また地図データ20を変更することも無いので、メンテナンスが非常に容易となる。
【0030】
また本実施形態によれば、地図データ20には、各道路の開通、及び未開通を区別する開通情報23が含まれているので、処理部12は、開通情報23に基づいて道路の開通、及び未開通を簡単に区別できる。また、処理部12は、未開通の道路の開通化フラグファイル17が記憶されている場合、開通済みの道路として扱ってナビゲーションに係る処理を実行するため、地図データ20に変更を加えずとも未開通の道路の開通化を反映した正確なナビゲーションが可能になる。
【0031】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一実施の態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0032】
例えば、上述した実施形態において、
図7に示すように、地図データ20が地図表示用データ20Aと、探索用データ20Bとを分けて記憶部10に記憶される構成としても良い。地図表示用データ20Aは、地図を表示するために必要な情報を含むデータであり、探索用データ20Bは経路探索処理に必要な情報を含むデータである。この場合、参照テーブル16は、地図表示用データ20Aに対応した地図表示用参照テーブル16Aと、探索用データ20Bに対応した探索用参照テーブル16Bとを備える。
このように、地図表示処理、及び経路探索処理ごとに地図データ20が地図表示用データ20Aと、探索用データ20Bとに分けられている場合でも、同じ道路(路線)の開通状況については1つの開通化フラグファイル17が記憶部10に格納される。そして、この開通化フラグファイル17が地図表示用参照テーブル16A、及び探索用参照テーブル16Bのそれぞれと紐付けられることで、地図表示用データ20Aと、探索用データ20Bのいずれのデータを使用する場合でも、道路の開通状況(未開通/開通)が適切に反映される。
なお、参照テーブル16が地図表示用参照テーブル16Aと、探索用参照テーブル16Bとを備える構成に限らず、地図表示用データ20A、及び探索用データ20Bに共通の参照テーブル16を構成しても良い。
【0033】
例えば、上述した実施形態において、地図センター40が、ナビゲーション装置1に対して、開通化フラグファイル17を送信する代わりに、現実に開通した道路の道路番号を含む情報を送信するようにし、ナビゲーション装置1の処理部12が、その情報に基づいて開通化フラグファイル17を生成し、記憶部10に記憶させるようにしても良い。ナビゲーション装置1は、現実に開通した道路の道路番号を含む情報が記録された光ディスク等の記録媒体からその情報を取得し、開通化フラグファイル17を生成し、それを記憶するようにしても良い。
【0034】
また例えば、上述した実施形態において、開通した道路のリンク情報22ごとに開通化フラグファイル17を設け、地図データ20に含まれる未開通のリンク情報22が開通しているか否かの判断を、当該リンク情報22の開通化フラグファイル17が記憶されているか否かに基づいて判断する構成としても良い。この構成によれば、参照テーブル16を用いることなく、リンク情報22が示す道路が開通しているか否かを判断できる。
【0035】
また例えば、上述した実施形態において、参照テーブル16には、開通化した道路のリンク情報22のみを記録し、地図データ20に含まれる未開通のリンク情報22が開通しているか否かの判断を、当該参照テーブル16にリンク情報22が記録されているか否かに基づいて判断する構成としても良い。この構成によれば、外部より取得した開通化フラグファイル17を全て記憶しておく必要がなく、また参照テーブル16の参照だけで開通化を判断できる。
【0036】
また例えば、上述した実施形態において、廃線や工事等の理由によって不通化された道路を示す不通化フラグファイルを道路の開通状況を示す情報として記憶部10に記憶し、地図データ20の各道路に対し、この不通化フラグファイルが記憶部10に記憶されているか否かに基づいて不通化を判断する構成としても良い。この不通化フラグファイルには、開通化フラグファイル17と同様に、不通化した路線の道路番号25、或いは当該路線のリンク情報22を少なくとも含むデータを用いることができる。
この構成によれば、地図データ20を変更せずとも、現実に不通になった道路を簡単に処理に反映させることができる。また、不通になった道路が現実に再開通したときには、ナビゲーション装置1においては、地図データ20に変更を加えずとも、この不通化フラグファイルを削除するだけで良いから、道路の不通化/再開通の反映が非常に容易となる。
【0037】
また例えば、上述した実施形態において、道路の開通が予定されている時期(例えば、日付及び時刻)に関する情報を含むようにしても良い。この場合、ナビゲーション装置1は、例えばGPS信号を受信する回路等を有するGPS受信部を備え、GPS受信部により受信したGPS信号に基づいて処理部12が現在の日付や時刻を算出し、この現在時刻と、取得部11により取得された開通化フラグファイル17の上記開通が予定されている時期に関する情報とに基づいて、道路が現実に開通されているかを判断する。
【0038】
また例えば、上述した実施形態では、1つの路線の開通状況が変化する度に開通化フラグファイル17が生成され、ナビゲーション装置1に配信される構成としたが、これに限らない。
すなわち、定期的、或いは不定期的に、複数の路線の開通状況の変化を示すデータ(以下、「開通状況ファイル」という)が生成され、ナビゲーション装置1に配信される構成としてもよい。
図8は本変形例に係る配信システム100の構成を示す図である。
この配信システム100は、開通状況ファイル117と地図更新データ120Aを、定期的にナビゲーション装置1に配信するシステムであり、
図8に示すように、上記地図センター40に設けられた配信サーバ140と、車両61に搭載された上記ナビゲーション装置1とを備えている。これら配信サーバ140とナビゲーション装置1は、電気通信回線60を介して相互に通信し、この通信により、上記開通状況ファイル117、及び地図更新データ120Aが配信される。
電気通信回線60は、インターネット等の固定通信網と、携帯電話網や無線LAN等の移動体通信網とを含み、固定通信網には配信サーバ140が接続され、車両走行時には、移動体通信網を通じてナビゲーション装置1が配信サーバ140と通信する。ナビゲーション装置1と移動体通信網の間の通信には、スマートフォン等の携帯電話機を中継器として用いることもできる。
【0039】
開通状況ファイル117は、所定の開通状況配信期間(例えば1ヶ月)ごとに生成されるデータファイルである。この開通状況ファイル117には、開通状況配信期間の間に開通状況に変化があった路線の情報が記録されている。換言すれば、開通状況ファイル117は、実施形態で説明した開通化フラグファイル17が、開通状況配信期間の間に開通状況に変化があった経路の分だけ記録されたデータファイルに相当する。
この開通状況ファイル117は、ナビゲーション装置1に配信されるとき、この開通状況ファイル117のデータを識別するために付される名称(以下、「ファイル名」という)に予め決められた名称(例えば、「AAA.dat」など)が付されて配信される。ファイル名が統一されることで、ナビゲーション装置1に対する製造出荷時などの動作検証作業時には、所定のファイル名のデータに対して動作検証作業を行えばよく、ファイル名が不特定である場合に比べて動作検証作業が容易となる。
【0040】
地図更新データ120Aは、ナビゲーション装置1に格納されている地図データ20に、配信時点における現実の道路の状況を反映するためのデータであり、所定の地図更新期間(例えば1年)ごとに生成され、ナビゲーション装置1に配信される。具体的には、この地図更新データ120Aには、地図更新期間の間に変化が生じた道路についての道路情報21が含まれている。
ナビゲーション装置1が地図更新データ120Aの道路情報21に基づき地図データ20を更新することで、地図データ20が配信時点における現実の道路の状況を反映したものとなる。例えば、地図更新期間の間に開通状況が変った道路、及び、新たに建設が予定された道路の情報が地図データ20に反映される。
【0041】
開通状況ファイル117の開通状況配信期間は、地図更新データ120Aの地図更新期間よりも短い期間に設定されており、開通状況ファイル117が地図更新データ120Aの地図更新期間(例えば1年)の間に、当該地図更新データ120Aで更新された地図データ20を対象に複数回に亘って配信されている。
この配信システム100では、地図更新データ120Aと開通状況ファイル117は、地図センター40において生成され、これらを配信サーバ140が配信している。
なお、これら地図更新データ120Aと開通状況ファイル117の配信の態様は、プッシュ配信、及びプル配信のいずれでもよい。
【0042】
図9は、開通状況ファイル117の模式図である。
この図に示すように、開通状況ファイル117は、道路番号25ごとに、道路名称26、開通化状況62、及び開通予定日63が対応付けて記録されている。
道路番号25、及び道路名称26は、
図4で示した開通化フラグファイル17と同様に、道路番号25が道路の路線を示し、道路名称26が当該道路の名称を示している。
開通化状況62は、配信時点における路線の開通状況を示すものである。未開通であった路線が開通した場合には、当該路線の開通化状況62は「開通」となる。これとは逆に、開通していた路線が未開通になった場合には、当該路線の開通化状況62は「未開通」となる。また、配信時点において、新たに開通予定の路線が生じた場合、当該路線の開通化状況62は「未開通」となる。
【0043】
開通予定日63は、路線の開通の予定の日を示すものである。なお、この開通予定日63は、開通状況ファイル117の配信日よりも先の予定を示すものではなく、当該配信日にかかわらずに、単に経路の開通の予定日を示したものである。例えば、開通状況ファイル117の配信時点よりも前の日に路線の開通が予定されていた場合(実際に開通していた場合も含む)、当該経路の開通予定日63は配信日よりも前の日付となる。
【0044】
この開通状況ファイル117には、今回の開通化状況配信期間の間に開通状況が変化した路線の情報だけではなく、地図更新データ120Aが配信された以後に開通状況に変化があった路線の情報が累積的に記録されている。
これにより、ナビゲーション装置1においては、直近の開通状況ファイル117の配信を受信すれば、開通化状況配信期間ごとに配信される毎回の開通状況ファイル117を受信していなくとも、今回分に加え前回分までの路線の開通状況を全て取得できるようになる。また配信サーバ140は、ナビゲーション装置1が受信済みの開通状況ファイル117を管理する必要もない。
【0045】
ナビゲーション装置1は、配信サーバか140から開通状況ファイル117を受信すると、記憶部10に格納する。この格納に際し、前回配信分の開通状況ファイル117が記憶部10に存在する場合、ナビゲーション装置1は、今回の受信分の開通状況ファイル117で上書きする等して、記憶部10の開通状況ファイル117が今回の受信分のデータに置き換えられるようにする。
【0046】
そして、ナビゲーション装置1は、ナビゲーション処理の実行中には、地図データ20に記録されている経路のうち、開通状況が「未開通」の経路を除外して(すなわち、開通状況が「開通」の経路を用いて)、経路探索や経路案内(誘導)をする。
具体的には、ナビゲーション装置1は、地図データ20において参照する経路(リンク)ごとに、当該経路の開通状況の変化が開通状況ファイル117に記録されているか否かを判定する。
開通状況ファイル117に記録されている経路については、ナビゲーション装置1は、当該開通状況ファイル117の開通化状況62、開通予定日63、及び現在日付に基づいて、この経路が開通しているか否かを特定する。
一方、開通状況ファイル117に記録されていない経路については、ナビゲーション装置1は、道路情報21の開通情報23に基づいて、この経路が開通しているか否かを特定する。
【0047】
このようにして、ナビゲーション装置1は、地図データ20において参照する経路ごとに開通しているか否かを特定し、開通していない経路を除外して経路誘導を行うこととなる。
なお、この経路誘導において、ナビゲーション装置1は、地図データ20に基づく地図を表示部13表示するときに、開通していない経路(道路)を地図に含めて表示してもよい。ただし、開通していない経路は、未開通であることをユーザが識別できる識別子(文字や記号など)が付されて表示されることが好ましい。
【0048】
ここで、本変形例に係る配信システム100において、開通状況ファイル117は、
図10に示すように、既に開通している路線のみの情報を含み、配信時点において開通していない(すなわち、将来に開通が予定されている)路線の情報を含めないように構成しても良い。
この構成によれば、ナビゲーション装置1が地図データ20において参照する経路が開通状況ファイル117に含まれているか否かということを判定するだけで、当該経路の開通化状況62を参照して非開通でないことを確認することなく、当該経路が開通済みであることを特定できる。これにより、ナビゲーション処理において、経路探索に要する時間が低減される。
なお、
図10には、開通状況ファイル117が開通化状況62を含む構成を示しているが、開通状況ファイル117が配信時点において開通していない路線の情報を含まない構成である場合には、開通化状況62を含む必要はない。
【0049】
上述した実施形態では、地図データ20に含まれる道路(経路)の開通状況の変化を示す情報を、開通化フラグファイル17、又は開通状況ファイル117に含めてナビゲーション装置1に配信する構成とした。しかしながら、地図データ20の道路に限らず、例えば地図に含まれるPOI(Point of interest)の変化を示す情報(以下、「POI変化情報」という)をナビゲーション装置1に配信する構成としても良い。ナビゲーション装置1は、地図データ20に含まれるPOIを参照するとき、POI変化情報に基づいて、当該POIの情報の変化を特定することとなる。POIの変化を示す情報としては、例えば施設や店舗などの開店情報や閉店情報、バーゲンセール情報、キャンペーン情報などが挙げられる。
【0050】
また上述した実施形態では、本発明をナビゲーション装置1に適用した場合を例示したが、これに限らず、道路の情報を含む地図データ20に基づいて各種の処理を実行する情報処理にも本発明を適用できる。また、この情報処理装置と、当該情報処理装置の処理に基づく地図を表示する表示部とを備えた地図表示装置にも本発明を適用できる。