特許第6442414号(P6442414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442414
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】窓ガラス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20181210BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20181210BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20181210BHJP
   H01Q 21/30 20060101ALI20181210BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
   H01Q1/32 A
   H01Q1/22 C
   H01Q1/40
   H01Q21/30
   B60J1/00 H
   B60J1/00 B
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-548764(P2015-548764)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公表番号】特表2016-509389(P2016-509389A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】GB2013053383
(87)【国際公開番号】WO2014096848
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年10月5日
(31)【優先権主張番号】1223253.4
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ バランスキー
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−110216(JP,A)
【文献】 特開2011−176090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
H01L 31/10
H01Q 1/22
H01Q 1/32
H01Q 1/40
H01Q 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に平面状の窓ガラス(10)であって、
窓ガラス材料層(11)と、
前記窓ガラス材料層(11)に接合されるプラスチック材料層(12)と、
前記プラスチック材料層(12)内に埋め込まれる少なくとも第1および第2のアンテナ(13、16)と、
前記第1および第2のアンテナ(13、16)に接続される少なくとも第1および第2の導体(14、15)と、を備え、
前記第1および第2の導体(14、15)は、互いに直流的に絶縁され、前記第1の導体(14)が前記第2の導体(15)に隣接しかつ実質的に平行に走るように構成されており、そのために交流結合が前記導体の間に生じ、
前記第1および第2の導体(14、15)は、前記窓ガラス(10)の平面に垂直な線に沿って見る際に一方の導体が他方の導体により、少なくとも部分的に覆い隠されるように、前記プラスチック材料層(12)の厚さ内に異なる深さで埋め込まれることを特徴とする、実質的に平面状の窓ガラス(10)。
【請求項2】
前記第1および第2の導体(14、15)間の平均距離が1ミリメートル未満である、請求項1に記載の窓ガラス。
【請求項3】
前記第1および第2の導体(14、15)が前記プラスチック材料層(12)の厚さの方向で互いに完全に重なり合う、請求項1または2のうちの1項に記載の窓ガラス。
【請求項4】
接触子(17)が、前記第1および第2の導体(14、15)から直流的に絶縁された前記窓ガラス材料層(11)の表面上にあり、前記接触子(17)が少なくとも1つの導体(14、15)に重なり合い、そのために交流結合が前記接触子と前記導体との間に生じる、請求項1〜3のうちの1項に記載の窓ガラス。
【請求項5】
接触子(17)は前記第1の導体(14)への導電接続を有し、前記第2の導体(15)から直流的に絶縁されており、そのため前記第1および第2の導体(14、15)が前記接触子(17)を介した外部回路への単一接続を共有することにより、前記第1および第2の導体(14、15)から前記外部回路への信号伝送を可能にする、請求項1〜4のうちの1項に記載の窓ガラス。
【請求項6】
接触子(17)と直流的に接続した可撓性導体(17a)が前記窓ガラス材料層(11)の縁の周りに折り曲げられる、請求項1〜5のうちの1項に記載の窓ガラス。
【請求項7】
前記第2の導体(15)が前記第1の導体(14)よりも細い、請求項1〜6のうちの1項に記載の窓ガラス。
【請求項8】
前記細い第2の導体(15)が、前記窓ガラスの視覚領域内に配置される細い第2のアンテナ(16)に接続される、請求項7に記載の窓ガラス。
【請求項9】
少なくとも1つの導体(14、15)が遮蔽帯(25)により視覚から少なくとも部分的に隠される、請求項1〜8のうちの1項に記載の窓ガラス。
【請求項10】
第3の導体(19)が前記第1の導体(14)の一部分(14a)に隣接して構成されており、第1および第2の導体(14、15)が前記第3の導体(19)から直流的に絶縁され、前記第3の導体が前記一部分(14a)に実質的に平行であることにより、交流結合が前記第3の導体と前記一部分との間に生じる、請求項1〜9のうちの1項に記載の窓ガラス。
【請求項11】
前記第2の導体(15)および前記第1の導体(14)が帯域通過フィルタとして働く伝送線を形成し、周波数fを中心とする帯域幅内の前記第2の導体(15)中の信号が交流結合により前記第1の導体(14)に伝送されるように、前記第2の導体(15)の長さが、共振周波数fに対応する前記窓ガラス内の有効波長有効ラムダの4分の1の奇数倍にほぼ等しくなるように選択される、請求項1〜10のうちの1項に記載の窓ガラス。
【請求項12】
少なくとも1つの導体(14、15)が絶縁配線であり、絶縁材を含む前記配線の直径が0.21ミリメートル未満、より好ましくは0.16ミリメートル未満、最も好ましくは0.09ミリメートル未満である、請求項1〜11のうちの1項に記載の窓ガラス。
【請求項13】
窓ガラス(10)を製造する方法であって、
窓ガラス材料層(11)を与えるステップと、
前記窓ガラス材料層(11)に接合されるプラスチック材料層(12)を与えるステップと、
前記プラスチック材料層(12)内に埋め込まれる少なくとも第1および第2のアンテナ(13、16)を与えるステップと、
前記第1および第2のアンテナ(13、16)に接続される少なくとも第1および第2の導体(14、15)を与えるステップと、を含み、
前記第1および第2の導体(14、15)が、互いに直流的に絶縁され、前記第1の導体(14)の少なくとも一部分が前記第2の導体(15)の一部分に隣接しかつ実質的に平行に走るように構成されることにより、交流結合が前記導体の一部分の間に生じ、
前記第1および第2の導体(14、15)を、前記窓ガラス(10)の平面に垂直な線に沿って見る際に一方の導体が他方の導体により、少なくとも部分的に覆い隠されるように、前記プラスチック材料層(12)内に異なる深さで埋め込むステップを特徴とする、窓ガラス(10)を製造する方法。
【請求項14】
前記第1および第2の導体(14、15)を、前記プラスチック材料層(12)の厚さの方向で互いに完全に重なり合うように構成することをさらに特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
4ミリメートル以下の先端幅を有する超音波ハンダ付け器具を用いて前記第1および第2の導体(14、15)を埋め込むステップを特徴とする、請求項13または14のうちの1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナがその内部に埋め込まれている、プラスチック材料層を有する窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
窓ガラス内のアンテナの数は、例えば車両内のより多くの通信システムに対する需要のために増加している。車両内のそのような通信システムとして、ラジオ(AM、FM)、デジタル音声放送(DAB)、テレビ(TV)、地上デジタル動画放送(DVB−t)、電話(GSM)、ナビゲーション(GPS)、WLAN、鍵を必要としない遠隔入力(RKE)、車対車通信および車対施設通信(car2X)、ならびに運転指令装置が挙げられる。これら全ての通信システムは、個別の最適化されたアンテナを有することが望ましく、それらは通常窓ガラスから離れて配置される自動車内の電子デバイスに接続される必要がある。そのようなアンテナおよび接続を提供するための数多くの提案が当該技術分野に於いて行われている。
【0003】
ドイツ第4415675C1号は、積層ガラスの中間層として用いられるプラスチック材料層と、そのプラスチック材料層内に埋め込まれる互いに電気的に絶縁された2つのアンテナ線とを備えた窓ガラスを開示する。各々のアンテナは、窓ガラス材料層の縁の周りに折り曲げられた導体への直流接続を備えているので、導電接続が、導体を介して窓ガラス内のアンテナと外部回路との間で行われる。
【0004】
米国第2010/0231466A1号は、積層ガラスの中間層として用いられるプラスチック材料層とプラスチック材料層内に埋め込まれた少なくとも1つのアンテナとを備え、複数のアンテナ要素を備えた窓ガラスを開示する。交点を形成する複数のアンテナ要素は、シート状の導体から型打ちされた交点形のアンテナ要素と入れ換えられる。全てのアンテナ要素は、2つのアンテナ線がプラスチック材料層の厚さ内で重なり合うことにより結果として積層工程後にプラスチック材料層と2つの窓ガラス材料層との間に隙間が生じ得るという問題を取り除くような均一な厚さを有する。
【0005】
米国第5099250号は、互いに直流的に絶縁され、互いに隣接してかつ平行に走るように配置されている第1および第2の導体を備え、そのために交流結合がそれらの間に生じる、窓ガラスを開示する。第1の導体は外部回路に接続され、第2の導体はアンテナに接続されており、そのためにアンテナにより受信される信号は、第1および第2の導体を介して外部回路に伝送される。第1および第2の導体は、窓ガラスの平面内に、隣接する縁の間のゼロではない距離で並置される。
【0006】
窓ガラス内に複数のアンテナと窓ガラス領域をあまり取らない密集配置の外部回路接続手段とを有しかつ積層後に隙間が生じる危険の低い窓ガラス、およびそのような窓ガラスを製造する方法を見出すことが望ましい。本発明はこれらの問題に取り組むことを目指す。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様からの本発明によれば、窓ガラスは、本明細書に添付される請求項1で説明される特徴を備えるように与えられる。実質的に平面状の窓ガラスは、限定された領域に於いて平面状であり、したがって水平方向および垂直方向に曲げられた窓ガラスを含み、それにより複数の実質的に平面状の部分を備えている。
【0008】
本発明の有利な実施形態では、第1の導体と第2の導体との間の平均距離は1ミリメートル以下である。より好ましくは、第1の導体と第2の導体との間の平均距離は0.40ミリメートル以下、より好ましくは0.20ミリメートル以下、最も好ましくは0.06ミリメートル以下である。
【0009】
第1の導体と第2の導体との間の平均距離は、その長さの一部分にわたる距離の算術平均である。距離は、第1および第2の導体の隣接する縁の間の最短距離である。
【0010】
本発明の有利な実施形態では、第1および第2の導体は、プラスチック材料層の厚さの方向で互いに完全に重なり合う。
【0011】
第1および第2の導体は同じ形を少なくとも1回有してもよい。好ましくは、第1および第2の導体は同じ形を少なくとも2回有する。好ましくは、その形は蛇行である。代わりに、その形は螺旋である。
【0012】
本発明の有利な実施形態では、接触子は、窓ガラス材料層の表面上にあり、第1および第2の導体から直流的に絶縁されており、接触子は、少なくとも1つの導体と重なり合い、そのために交流結合がそれらの間に生じる。第1の導体は、導電材料シートから作製されてもよい。
【0013】
本発明の有利な実施形態では、接触子は第1の導体への導電接続を有し、第2の導体から直流的に絶縁されており、そのために第1および第2の導体は接触子を介した外部回路への単一の接続を共有するので、第1および第2の導体から外部回路への信号伝送を可能にする。
【0014】
本発明の有利な実施形態では、接触子と直流的に接続した可撓性導体が、窓ガラス材料層の縁の周りに折り曲げられる。
【0015】
本発明の有利な実施形態では、第2の導体は第1の導体よりも細い。細い導体に接続される細いアンテナは、あまり目に見えないので、窓ガラスの視覚領域内に視界を覆い隠すことなく配置され得る。
【0016】
本発明の有利な実施形態では、細い導体はタングステン、ナノワイヤまたはカーボンナノチューブで作製される。太い導体は銅で作製される。
【0017】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つの導体が、遮蔽帯により視界から少なくとも部分的に隠される。遮蔽帯は第1の導体を少なくとも部分的に隠してもよい。遮蔽帯は2つの導体を少なくとも部分的に隠してもよい。
【0018】
本発明の有利な実施形態では、第3の導体は第1の導体の一部分に隣接するように構成されており、第1および第2の導体は第3の導体から直流的に絶縁され、第3の導体は第1の導体の一部分に実質的に平行であるので、交流結合がそれらの導体の間に生じる。
【0019】
本発明の有利な実施形態では、第2の導体および第1の導体が、帯域通過フィルタとして働く伝送線を形成し、fを中心とする帯域幅内の第2の導体中の信号が交流結合により第1の導体に伝送されるように、第2の導体の長さは、共振周波数fに対応する窓ガラス内の有効波長有効ラムダの4分の1の奇数倍にほぼ等しく選択される。帯域幅は、その内部に於いて信号受信が要求用途に十分である、周波数範囲として定義される。
【0020】
第1および第2の導体は、絶縁材のない配線であってもよい。絶縁材のない導体の幅は、好ましくは0.15ミリメートル未満、より好ましくは0.1ミリメートル未満、最も好ましくは0.07ミリメートル未満である。
【0021】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つの導体は導電材料シートから作製される細長片である。導電材料の細長片の幅は、好ましくは2センチメートル以下、より好ましくは1.5センチメートル未満、最も好ましくは1センチメートル未満である。
【0022】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つの導体は絶縁配線である。絶縁材を含む配線の直径は、好ましくは0.21ミリメートル未満、より好ましくは0.16ミリメートル未満、最も好ましくは0.13ミリメートル未満である。好ましくは、絶縁材の厚さは、0.03ミリメートル未満である。
【0023】
第2の態様からの本発明によれば、アンテナ窓ガラスを製造する方法は、本明細書に添付される請求項13に説明されるステップを含む。
【0024】
好ましくは、第1の導体と第2の導体との間の平均距離は1ミリメートル未満である。
【0025】
好ましくは、第1および第2の導体は、プラスチック材料層の厚さの方向で互いに重なり合うように構成される。
【0026】
第1および第2の導体は、超音波ハンダ付け器具を用いてプラスチック材料層内に埋め込まれ得る。超音波ハンダ付け器具は4ミリメートル以下の先端幅を有し得る。好ましくは、先端幅は3ミリメートル以下である。最も好ましくは、先端幅は2ミリメートル〜1ミリメートルの範囲内である。
【0027】
本発明によれば、単一の接触子により、積層後に隙間が生じる危険の低い密集配置で複数のアンテナを外部回路に接続することができる。第1の導体と第2の導体との間の交流結合のために1つの接触子しか必要とされないので、部品数が削減される。第1および第2の導体を異なる深さで埋め込むために、導体により占有される窓ガラスの領域が削減されるので、導体はあまり目立たない。導体により占有される領域は、導体が遮蔽帯の下に隠され得るほど小さいものであり得る。さらに、第2の導体および第2のアンテナの幅はさらに細くされてもよく、その結果、第2のアンテナは、窓ガラスの視覚領域内に配置され得るほど目立たない。無響室内での検査は、互いに少なくとも部分的に覆い隠す隣接する平行な相互結合性の導体を異なる深さで備えた窓ガラス内の少なくとも2つのアンテナの性能が、自動車窓ガラスに適用される規格に許容され得ることを実証した。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明はここで、付属の図面を参照しつつ限定されない例を用いて記載されることになる。
図1】本発明による窓ガラスを示す。
図2a】本発明による窓ガラスを図1の線A−Aでの断面で示す。
図2b】第1の導体が導電材料シートである、図2aのような窓ガラスと導体の深さD1、D2とを示す。
図2c】導体が完全に重なり合う窓ガラスを断面で示す。
図3】接触子を含む本発明による窓ガラスを示す。
図4a】窓ガラスを図3の線A−Aでの断面で示す。
図4b】導体が完全に重なり合う窓ガラスを断面で示す。
図4c】接触子がDC接触するものである窓ガラスを断面で示す。
図5】2つのアンテナを含む本発明による窓ガラスを示す。
図6a】窓ガラスを図5の線A−Aでの断面で示す。
図6b】導体が完全に重なり合う窓ガラスを断面で示す。
図6c】接触子がDC接触するものである窓ガラスを断面で示す。
図7】2つのアンテナに対して3つの導体を含む窓ガラスを示す。
図8】3つのアンテナに対して3つの導体を含む窓ガラスを示す。
図9】2つの導体に対して蛇行形を含む、図7のような窓ガラスを示す。
図10】異なる深さの導体を含む、図5のような窓ガラスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明が2を超える数のアンテナを備え得ることを留意するべきである。本発明は、ガラス上のAM、FM、DABおよびTVアンテナに関して記載されるが、これは、限定するものとしてみなされるべきではない。本発明は、電磁エネルギーが用いられかつ電磁エネルギーの伝送または受信が望まれるであろう、他の状況に適用され得る。
【0030】
本発明は、積層ガラスのような少なくとも1つのプラスチック材料層を備えた窓ガラスおよび2層窓ガラス(すなわち、1つのプラスチック層を伴う1つのガラス層)に適用され得る。そのような窓ガラスは、プラスチック窓ガラス層、焼鈍、半強化または強化ガラス、被覆窓ガラス、ワイヤ入り窓ガラスおよびそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0031】
図を通して、同じ目的を有する同一の部品は同じ番号で標識される。
【0032】
図1を参照して、本発明では、実質的に平面状の窓ガラス10は窓ガラス材料層11を備える。プラスチック材料層12は窓ガラス層11に接合される。第1および第2の導体14、15は、プラスチック材料層12内に埋め込まれ、第1および第2のアンテナ13、16に接続される。第1および第2の導体14、15は、互いに直流的に絶縁され、互いに平行である。それにより、第1および第2の導体14、15は、交流結合がそれらの導体の間に生じるように配置される。第1および第2の導体14、15は、図2a、図2bおよび図2cで見られることになるような異なる深さで埋め込まれる。
【0033】
図2aおよび図2bは、図1の線A−Aでの断面である。第1および第2の導体14、15は、プラスチック材料層12の厚さの方向に深さD1、D2で埋め込まれる。
【0034】
第1の導体14と第2の導体15との間の平均距離は、0.50ミリメートル以下、好ましくは十分に0.30ミリメートル未満である。第1の導体14の幅は、好ましくは0.01〜0.15ミリメートルの範囲内である。第2の導体15の幅は、第1の導体14の幅未満であってもよく、その逆であってもよい。その幅は、窓ガラス材料層11の長さに垂直でありかつその層の平面に平行である導体14、15の寸法を意味する。
【0035】
第1の導体14は導電材料シートから作製される細長片であってもよく、第2の導体は配線であってもよい。第1および第2の導体14、15は、絶縁材を用いずに示されている。
【0036】
導電材料13〜16のうちの少なくとも1つは配線であり得る。配線材料の例は、銅、タングステン、金、銀、アルミニウム、またはそれらの合金、ナノワイヤ、カーボンナノチューブまたはそれらの組み合わせである。配線がその長さに沿った全ての点で他の導体から直流的に絶縁される場合、少なくとも望まれない直流接触の危険がある点に、絶縁が用いられるべきである。そのような局所的な絶縁は、接着剤の役割もし得る絶縁膜を用いて達成され得る。
【0037】
導電材料13〜16のうちの少なくとも1つは、絶縁配線であり得る。絶縁材により、例えば交差点でまたは配線が平行で互いに物理的に接触する場合、導体を互いに隣接して配置するが、直流的に絶縁することができる。2つの絶縁配線の間の平均距離は、絶縁材の厚さの2倍であり得る。絶縁材の厚さは0.03ミリメートル以下であり得る。2つの絶縁配線の間の、絶縁材の厚さの2倍である最小距離は0.06ミリメートル以下であり得る。
【0038】
プラスチック材料層12は、ポリビニルブチラール(PVB)であり得るが、それに限定されない。好ましくは、導体材料13〜16は、PVB内に埋め込まれた絶縁配線である。好ましくは、PVBの厚さは0.76ミリメートル未満である。
【0039】
図2cは、図1の線A−Aでの断面であり、本発明による窓ガラスは、第2の導体15に完全に重なり合う第1の導体14を備えている。
【0040】
図3を参照して、本発明による窓ガラス、接触子17が与えられる。接触子17は、図4aおよび図4bに示される交流結合または図4cに示される直流接続のどちらかにより第1の導体14に接続され得る。可撓性導体17aは、窓ガラスの縁の周りに折り曲げられて示されている。第1の導体14は、第2の導体15に少なくとも部分的に重なり合う導電材料シートである。アンテナ16は、第2の導体15に接続される。
【0041】
第1の導体14は、その表面領域が増加するように、導電材料シートから作製されてもよい。これは、接触子17への交流結合または直流接続に有利であり得る。
【0042】
図4aを参照して、図3の線A−Aでの断面、本発明による窓ガラスは、第2の導体15に部分的に重なり合う第1の導体14を備えるように与えられる。第1の窓ガラス材料層11は、プラスチック材料層12の表面に隣接して配置される。交流結合が、接触子17と第1および第2の導体14、15のうちの少なくとも1つとの間に生じるように、接触子17は、第1および第2の導体14、15のうちの少なくとも1つに、好ましくはそれらの両方に部分的に重なり合うように第1の窓ガラス材料層11の他方の表面上に配置される。可撓性導体17aは、外部回路に接続するためのものである。
【0043】
図4bを参照して、本発明による窓ガラスは、第2の導体15に重なり合うが離間している第1の導体14を備えるように与えられる。
【0044】
図4cを参照して、本発明による窓ガラスは、第1の導体14に直流的に接続した接触子17を備えるように与えられる。可撓性導体17aは、第1の窓ガラス材料層11の縁の周りに折り込まれる。
【0045】
図5を参照して、本発明による窓ガラスは、プラスチック材料層12内に埋め込まれた第1および第2の導体14、15と、第1および第2の導体14、15に接続された第1および第2のアンテナ13、16とを備えるように与えられる。接触子17は、プラスチック材料層12に接合される窓ガラス材料層11の表面上に配置される。可撓性導体17aは接触子17に接続される。
【0046】
図6aを参照して、図5の線A−Aでの断面、本発明による窓ガラスは、第2の導体15に部分的に重なり合う第1の導体14を備えるように与えられる。第1の窓ガラス材料層11は、プラスチック材料層12の表面に隣接して配置される。第2の窓ガラス材料層11aは、プラスチック材料層12の他方の表面上に配置される。第1の窓ガラス材料層11は、第1および第2の導体14、15のうちの少なくとも1つ、好ましくは両方を少なくとも部分的に隠す遮蔽帯25を含む。遮蔽帯25は、第1の窓ガラス材料層11の表面上に、好ましくはプラスチック材料層12に接合される第1の窓ガラス材料層11の表面上にある。接触子17は、少なくとも1つの導体に部分的に重なり合うように第1の窓ガラス材料層11の他方の表面上に配置されており、そのために交流結合がそれらの間に生じる。鉛直方向に示される可撓性導体17aにより、外部回路への接続が可能になる。
【0047】
図6bを参照して、本発明による窓ガラスは、第2の導体15に重なり合う第1の導体14を備えるように与えられる。
【0048】
図6cを参照して、本発明による窓ガラスは、第1の導体14に直流的に接続した接触子17を備えるように与えられる。可撓性導体17aは、第1の窓ガラス材料層11の縁の周りに折り曲げられる。
【0049】
図6bの実施形態での可撓性導体17aの位置は、窓ガラス材料の縁と窓ガラス材料層11の縁に最も近い可撓性導体17aの縁との間に距離「E」があるようなものである。距離「E」は、窓ガラス材料層11の縁に接するための真空リングのようなプロセス設備へのアクセスを可能にするのに十分に大きくなるように構成され得る。距離「E」は、可撓性導体17aが遮蔽帯25により視覚から隠される程に十分に小さくなるように構成され得る。
【0050】
図7は、図5の窓ガラスに類似の窓ガラスを示すが、第1の導体14が追加の導体14aを備えている。第1のアンテナは示されていない。この実施形態の利点は、第1の導体14および追加の導体14aが縁領域内にあり、任意選択で遮蔽帯の下に隠されており、第1よび追加の導体14、14aの幅が、目立たないことの必要性により制限されないことである。第2のアンテナ16および第3のアンテナ20は、第1のアンテナ14よりも細いので、良好な視覚が必要とされる窓ガラスの領域に延ばされてもよい。第1の導体14の制限のない幅は、電気抵抗を低減するのに有利である。
【0051】
図8は、3つのアンテナに対する本発明による代わりの窓ガラスを示す。第3のアンテナ20は、TV信号向けのものであるのに対し、第1および第2のアンテナ13、16は、FM向けのものである。第2および第3の導体15、19は、それぞれ第1および追加の導体14、14aと結合するように配置される。第1の導体14と第2の導体15との間の平均距離は1ミリメートル以下である。追加の導体14aと第3の導体15との間の平均距離は0.20ミリメートル以下である。
【0052】
製造プロセスを加速させるために、導電材料の一部分が、第1のアンテナ13、追加のアンテナ14aおよび第1の導体14に用いられる。
【0053】
図9は、追加の導体14aおよび第3の導体19がそれぞれ蛇行形を有する、本発明による窓ガラスである。蛇行形は、平行な部分と接続部分とで作製される。蛇行形は、狭い縁領域内に長い導体を収容するのに有利である。遮蔽帯25は、視覚から蛇行形を隠すために狭い縁領域内に延長され得る。蛇行形の導体14aおよび19を有する本発明による窓ガラスは、AM中波帯内の1MHzでより良い性能を有し得る。
【0054】
図10は、第1の導体14および第1のアンテナ13が第2の導体15および第2のアンテナ16よりも細い、本発明による窓ガラスである。この配置は、第1の導体14がカーボンナノチューブのような高導電材料で作製される場合に有利である。
【0055】
導体の最適長の計算がここで開示されることになる。材料内の有効波長は、誘電率およびすぐ近くの誘電材料の寸法に依存する。折り曲げられた結合領域のような電気導体を含む領域では、導体の形および逆平行電流効果、つまり交流電流が、折り曲げられた導体の隣接する平行部分に於いて反対方向に流れる近接効果に依存して、追加の因子が適用される。
【0056】
例えば、周波数100MHzの信号は自由空間に於いて約3メートルの波長を有するので、自由空間に於ける4分の1波長は0.75メートルである。図9を参照して、積層窓ガラス上の追加の導体14aは0.6の縮小因子を有するので、有効ラムダの4分の1は、0.45メートルである。次に追加の導体14aは、導体14の全長が0.45メートルであるような、平行部分とそれらの平行部分の間に少なくとも1つの接続部分とを備えた蛇行形に形成される。
【0057】
図2aを参照して、第1および第2の導体14、15をプラスチック材料層12内に埋め込む3つの方法がここで開示されることになる。3つの方法は、導体14、15を一体的に近くに置き、交流結合がそれらの間に生じるのを可能にし、それにより請求項1による好ましい実施形態を与える。それらの方法は単独で用いられてもよく、組み合わせて用いられてもよい。
【0058】
第1の方法では、プラスチック材料で被覆された第1の導体14がプラスチック材料層12の表面上に置かれ、第1の導体14が加熱されるので、プラスチック膜は溶融し、第1の導体14をプラスチック材料層12に接合するための糊として働く。
【0059】
第2の方法では、プラスチック材料膜のない第1の導体14は、プラスチック材料層12の表面上に置かれる。第1の導体14は、4mm以下の先端幅を有する加熱器具を用いて加熱されるので、熱は、第1の導体14を通り抜け、第1の導体14と直接的に接触するプラスチック材料層12の領域に移され、プラスチック材料層12の中に第1の導体14を埋め込むようにその領域を溶融させる。熱移動は、第1の導体14が部分的にのみ埋め込まれ、第1の導体14の厚さの一部分がプラスチック材料層12の表面上に突き出るようなものであってもよい。熱移動は、その領域が溶融し、第1の導体14の頂部にわたり流れ、プラスチック材料層12の厚さ内に第1の導体14を沈み込ませるようなものであってもよい。
【0060】
プラスチック材料を溶融させ、2つの導体を埋め込むために熱を用いる方法では、第1の導体14は、第2の導体15を埋め込むのを試みる際に「引き下がり」、すなわち妨げられ得る。
【0061】
この問題は、第2の導体15が第1の導体14の上方の、プラスチック材料層12の表面上に置かれ、4mm以下の先端幅を有する振動器具を用いた超音波周波数の振動を受ける、第3の方法で回避される。
【0062】
したがって、第2の導体15はプラスチック材料層12内に埋め込まれる。適切な振動器具は、Sonobond Ultrasonics Inc.から入手可能な「Sureweld」として販売されるもののような、15kHz〜70kHzの範囲内の超音波周波数を使用する超音波ハンダ付け機器である。
【0063】
請求項1に記載の本発明は、複数のアンテナから外部回路への接続が、1つの接触子を介して窓ガラス上でより密集した配置で達成されるという利点を有する。導体を異なる深さで埋め込むことにより、導体は、先行技術に於いて可能であったものよりも互いに近くに配置され、平面視であまり目立たないものであり得る。例えば、3つのアンテナ、FM、DABおよびTVのような特定の通信システム向けに選択される各々のアンテナの長さは、窓ガラスの縁で目立たないように、窓ガラスの領域をあまり取らないように構成され得る。
【0064】
さらなる利点は、本発明により、プラスチック材料層内に異なる深さで埋め込まれた異なる幅の第1および第2の導体を視覚から遮蔽帯の下に隠すことができることである。本発明により、アンテナはより細く、したがってあまり目立たないので、視覚領域内でアンテナを用いることもできる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10