特許第6442418号(P6442418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6442418エタノールの流れからエチレンオキシドを生産するための熱統合された方法
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  • 特許6442418-エタノールの流れからエチレンオキシドを生産するための熱統合された方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442418
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】エタノールの流れからエチレンオキシドを生産するための熱統合された方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 301/10 20060101AFI20181210BHJP
   C07D 303/04 20060101ALI20181210BHJP
   C07C 1/24 20060101ALN20181210BHJP
   C07C 11/04 20060101ALN20181210BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20181210BHJP
【FI】
   C07D301/10
   C07D303/04
   !C07C1/24
   !C07C11/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】12
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-556551(P2015-556551)
(86)(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公表番号】特表2016-511242(P2016-511242A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】FR2014050227
(87)【国際公開番号】WO2014125192
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2017年2月1日
(31)【優先権主張番号】1351163
(32)【優先日】2013年2月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】クパール ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】プランヌヴォ トマ
【審査官】 谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/011208(WO,A1)
【文献】 特開2012−214399(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/134415(WO,A2)
【文献】 特開昭58−038220(JP,A)
【文献】 米国特許第03119837(US,A)
【文献】 特表2008−534501(JP,A)
【文献】 特表2016−516001(JP,A)
【文献】 特表2015−535528(JP,A)
【文献】 BRUSCINO, M.,Scientific Design's Ethanol to Monoethylene Glycol Technology,HYDROCARBON WORLD,2010年,Vol.5, No.2,p.12,14-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 301/10
B01J 39/02
B01J 39/04
B01J 39/10
B01J 39/14
B01J 39/20
B01J 41/04
B01J 41/12
B01J 49/00
C07D 303/04
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール供給原料をエチレンに脱水し、次いで、エチレンをエチレンオキシドに酸化する方法であって、
a) 前記エタノール供給原料を、場合によっては70〜130℃の範囲内の温度に、工程e)から得られた流出物との熱交換によって予熱するための任意工程;
b) 場合によっては、70〜130℃の範囲内の温度で操作して、シリカ−アルミナ、酸性白土、ゼオライト、硫酸化ジルコニア、酸性イオン交換樹脂よりなる群から選ばれた酸性固体によりエタノール供給原料を前処理して、前処理されたエタノール供給原料を生じさせるための任意工程;
c) 前記任意に前処理されたエタノール供給原料と、工程h)に従って再循環させられたエタノールを含む希釈水の流れの少なくとも一部とを含む気化供給原料を、交換器において、工程e)の最後の反応器から得られた流出物との熱交換によって気化させて、気化した供給原料を生じさせるための工程であって、前記気化供給原料は、0.1〜1.4MPaの範囲内の圧力で気化工程に導入され、前記圧力は、脱水工程e)から得られた凝縮させられた流出物と蒸発させられた前記気化供給原料との間の熱交換器中の温度差が2℃以上であるように選択される、工程;
d) 前記気化した供給原料を圧縮機において圧縮しかつ過熱の状態として、圧縮されかつ脱水セクションe)に供給するための温度にある供給原料を生じさせるための工程;
e) 前記圧縮された供給原料と、工程h)から得られたエタノールを含む希釈水の気化した流れとを含む混合物を、少なくとも1種の脱水触媒を含有し、かつ、脱水反応が行われる少なくとも1基の断熱反応器において、350〜550℃の範囲内の入口温度および0.3〜1.8MPaの範囲内の入口圧力で操作して脱水するための工程であって、前記混合物の水対エタノールの重量比は、1〜4の範囲内である、工程;
f) 工程e)の最後の断熱反応器から得られた流出物を、1.6MPa未満の圧力でエチレンを含む流出物と水を含む流出物とに分離するための工程;
g) 工程f)から得られた水を含む流出物の少なくとも一部を精製し、かつ、処理された水の少なくとも1つの流れとエタノールを含む希釈水の流れとに分離するための工程;
h) 気化交換器において、酸化工程j)から得られたクエンチ流との熱交換を用いて部分的にまたは全体的に交換器内気化させることによって、工程g)から得られたエタノールを含む希釈水の流れの少なくとも一部を再循環させかつ気化させる工程であって、前記クエンチ流は、冷却され、次いで、酸化工程j)の1基または複数基の反応器に再循環させられ、少なくとも部分的に気化した含エタノール希釈水の前記流れは、工程e)の上流に再循環させられ、工程g)から得られたエタノールを含む希釈水の前記流れの気化しなかった部分は、気化工程c)の入口に再循環させられる、工程;
i) 工程f)から得られたエチレンを含む流出物を圧縮するための工程;
j) 工程i)から得られたエチレンを含む流出物中に含まれるエチレンをエチレンオキシドに酸化するための工程であって、この酸化工程は、少なくとも1基の管状酸化反応器を含み、該管状酸化反応器は、工程h)から得られた前記クエンチ流の気化によって冷却され、このようにして再加熱された前記クエンチ流は、工程h)に再循環させられる、工程;
を含む、方法。
【請求項2】
工程h)から得られたエタノールを含む希釈水の流れは、工程e)への入口に注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程h)から得られたエタノールを含む希釈水の流れは、圧縮および過熱の工程d)における単一相気/気交換器への入口に注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮された供給原料は、単一相タイプのガス交換器において、工程e)の最後の断熱反応器から得られた流出物との熱交換によって加熱される、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記工程i)から得られた圧縮された流れは、精製を経る、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
工程g)から得られたエタノールを含む希釈水の流れの一部は、希釈水の前記流れの最低50%が前記気化交換器からの出口において気化させられ、工程e)の入口へ再循環されるようにされる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
圧縮された供給原料の圧力は、0.3〜1.8MPaの範囲内である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
工程e)の最後の断熱反応器から得られた流出物は、270〜450℃の範囲内の温度、および0.2〜1.6MPaの範囲内の圧力にある、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
脱水工程e)は、1基または2基の反応器において行われる、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
工程e)において用いられる前記脱水触媒は、無定形酸触媒またはゼオライト性酸触媒である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記エタノール供給原料は、35〜99.9重量%の範囲内の重量百分率のエタノールを含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前処理のための任意工程b)は、実行され、さらにアニオン交換樹脂を用いる前処理によって補足される、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールをエチレンオキシドに変換する方法であって、エタノールの脱水のための熱統合された工程と、生じたエチレンの酸化のための熱統合された工程とを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エタノールのエチレンへの脱水反応は、19世紀末以来、詳細に知られている。非特許文献1は、エタノールの脱水を含むアルコール脱水の研究に関する基本出版物であるとして考えられている。この反応は、高い吸熱性であり、平衡化させられ、かつ、高温でエタノールに変位されることが知られている。断熱反応器中の高純度エタノールの全転化に相当する温度降下は、380℃である。より低い温度で、エタノールは、ジエチルエーテル(diethyl ether:DEE)に転化させられる。この反応「中間体」は、転化が部分的であるエチレン脱水反応においてまたは多反応器方法における2基の反応器の間に存在する場合がある。DEEは、より高い温度でエチレンに転化させられてよい。頻繁に用いられる参照触媒は、単機能酸触媒である;ガンマアルミナは最もよく挙げられる触媒である。ゼオライトもこの適用のために用いられ、特に、1980年代以来ZSM−5がある(例えば、非特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献1には、エタノールをエチレンに脱水する方法であって、反応に必要な熱が、供給原料と混合された伝熱流体を供給原料と共に反応器に導入することによって供給される、方法、が記載されている。伝熱流体は、外部源からの水蒸気または方法中に生じた外部流、または脱水反応器からの流出物、すなわち、生じたエチレンの一部の再循環物のいずれかである。供給原料と前記伝熱流体の混合物を導入することは、触媒床の温度を所望の転化に適合するレベルに維持するために必要な熱が提供され得ることを意味する。伝熱流体が脱水反応器からの流出物である場合、前記流出物を再循環させるための圧縮機が必要である。しかしながら、反応によって生じたエチレンを再循環させることは、不利益を構成する。エチレンの導入が、脱水反応の平衡を改変するからである。さらに、エチレンは、二次的オリゴマー化反応、水素転移反応およびしばしばのオレフィン不均化反応に参加する;これらは、それらの試薬に対して0超の次数(order)を有する反応である。反応の出発直後からエチレンの濃度を高めることは、副生成物の形成を掛け算的に増加させる。エチレンの喪失は、それ故により高く、これにより、選択性が降下するという結果がもたらされる。
【0004】
特許文献2には、エタノールをエチレンに脱水する方法であって、方法に対して外部の水蒸気が用いられないことによる低減した機器の量および低減した操作コストに起因して設備投資を低減させるように特許文献1と比べて改善された、方法が記載されている。当該方法において、脱水反応器からの流出物の少なくとも一部(生じたエチレンと水蒸気との混合物)およびエタノールの脱水によって生じかつ反応器中で凝縮した水から得られた過熱した状態にある水蒸気が伝熱流体として用いられ、エタノールとの混合物として脱水反応器に入る。前記特許出願は、熱交換を最大にする目的をもってエタノール供給原料と流出物との間で適用されるべき圧力条件について黙っている。
【0005】
特許文献3にも、エタノールをエチレンに脱水する方法が記載されており、当該方法では、伝熱流体として作用するエタノールおよび水蒸気が400〜520℃の範囲内の温度および20〜40atmの範囲内の高圧で第1の反応器に導入され、脱水反応によって生じた流出物が、18atm以上の圧力で最後の反応器から抜き出され、前記反応生成物、すなわち、エチレンは、冷却の後に中間の圧縮工程なしで最終の深冷蒸留工程を経ることができる。前記方法はまた、前記脱水反応生成物と第1の反応器に導入された供給原料との間の熱交換によって特徴付けられ、前記反応生成物は、第1の反応器に入る供給原料を気化させるために用いられる。未転化エタノールと、方法の反応の間に形成された水の少なくとも一部と、ガスの最終の洗浄のために加えられた水とは、エタノールの完全な転化を保証するために再循環させられる。
【0006】
特許文献4には、エタノールのエチレンへの脱水方法であって、エタノールと水との混合物を気化させる工程と、断熱反応器中でこの混合物を反応させる工程とを含む、方法が開示されている。当該出願は、方法のエネルギー消費を低減させることを目指して熱の回収を最大にするという問題を扱わない。
【0007】
特許文献5には、銀をベースとする触媒が存在する中でエチレンを酸化する方法が記載されている。それは、エチレンのエチレンオキシドへの転化のための反応の選択性についてのメタンのプラスの効果をベースとし、精製された酸素が存在する中での酸化のための操作条件を与える。与えられる主要な操作条件は、以下の通りである:温度:(好ましくは)200〜300℃の範囲内および圧力:(好ましくは)15〜500絶対psiの範囲内。
【0008】
特許文献6には、特許文献5において記載された方法において用いられてよい酸化触媒が記載されている。当該特許には、触媒の主要な特徴並びにそれが用いられ得る操作条件の範囲(温度)が記載されている。記載された触媒は、銀をベースとし、操作条件は、特許文献5において記載された操作条件と適合する。
【0009】
非特許文献3には、エタノール生物資源からエチレングリコールを生産する方法であって、エタノールをエチレンに脱水するためのプロセスと、これにより生じたエチレンを酸化するためのプロセスと、エチレンオキシドをグリコールに転化させるためのプロセスとを含む、方法が記載されている。記載された方法は、水を脱水セクションに再循環させることを考慮しておらず、また、酸化セクションと脱水セクションとの間の熱統合も考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4232179号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/134415号
【特許文献3】米国特許第4396789号明細書
【特許文献4】国際公開第2011/002699号
【特許文献5】米国特許第3119837号明細書
【特許文献6】欧州特許第0496470号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】H. Knoezinger、R. Koehne著、「The Dehydration of Alcohols over Alumina. I:The reaction scheme」、Journal of Catalysis、1966年、第5巻、p.264−270
【非特許文献2】S. N. Chaudhuriら著、「Reactions of ethanol over ZSM-5」、Journal of Molecular Catalysis、1990年、第62巻、p.289−295
【非特許文献3】Mike Bruscino著、「Scientific Design's Ethanol to Monoethylene Glycol Technology」、Hydrocarbon World、2010年、第5巻、第2号、p.15−17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一つの目的は、エチレンオキシドを生産するための方法であって、エタノールをエチレンに脱水するための工程と、生じたエチレンの接触酸化のための工程とを含み、これらの2工程は、エネルギー消費および水の消費を低減させるために互いに統合され、前記低減は、熱統合の特定の配置および適切な操作条件、特に、酸化反応によって発生した熱の排出のマッチングおよび脱水工程への入口において必要な希釈のレベルの使用によってもたらされる、方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要および利点)
本発明は、エタノールからエチレンオキシドを生産する方法を記載する。この方法は、2つの相異なる方法:エタノールの接触脱水および生じたエチレンの酸化の統合からなる。
【0014】
エタノール供給原料を脱水してエチレンを形成する方法は、好ましくは、前記供給原料に含まれる有機性または塩基性の窒素の量を低減させかつエタノールの一部をDEEに転化させる前処理のための工程と、前処理されたエタノール供給原料を、エタノールを含有する希釈水の流れの少なくとも一部と混合し、これを、交換器において、最後の断熱反応器から得られた流出物との熱交換によって気化させる工程とを含む。接触酸化方法は、少なくとも1基の多管式反応器を採用し、この反応器は、反応器のシェルにおける伝熱流体(前記流体は、好ましくは水を含む)の気化によって冷却される。
【発明の効果】
【0015】
前記発明は、水の消費を低減させ、かつ、エタノールのエチレンオキシドへの転化に必要なエネルギー消費を低減させるという、従来技術の方法を超える利点を有する。
【0016】
生じたエチレンオキシドは、多くの生成物、例えば、グリコール、ポリオール、エトキシラート、グリコールエーテルまたはエタノールアミンの合成における反応中間体である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の説明)
本発明は、エタノール供給原料をエチレンに脱水し、次いで、エチレンをエチレンオキシドに酸化する方法であって、
a) 工程e)から得られた流出物との熱交換によって前記エタノール供給原料を70〜130℃の範囲内の温度に予熱するための場合による工程;
b) 70〜130℃の範囲内の温度で操作して、酸性固体によりエタノール供給原料を前処理して、前処理されたエタノール供給原料を生じさせるための場合による工程;
c) 前記前処理されたエタノール供給原料と、工程h)により再循環させられたエタノールを含む希釈水の流れの少なくとも一部とを含む気化供給原料を、交換器において、工程e)の最後の反応器から得られた流出物との熱交換によって気化させて、気化した供給原料を生じさせるための工程であって、前記気化供給原料は、0.1〜1.4MPaの範囲内の圧力で前記気化工程に導入される、工程;
d) 圧縮機において前記気化した供給原料を圧縮し、かつ過熱した状態として、圧縮されかつ脱水セクションe)に供給するための温度にある供給原料を生じさせるための工程;
e) 前記圧縮された供給原料と、工程h)から得られたエタノールを含む希釈水の気化した流れとを含む混合物を、少なくとも1基の断熱反応器において脱水するための工程であって、前記混合物の水対エタノールの重量比は、1〜4の範囲内にあり、該断熱反応器は、少なくとも1種の脱水触媒を含有し、該反応器において、脱水反応が行われ、350〜550℃の範囲内の入口温度および0.3〜1.8MPaの範囲内の入口圧力で操作する、工程;
f) 工程e)の最後の断熱反応器から得られた流出物を、1.6MPa未満の圧力でエチレンを含む流出物と水を含む流出物とに分離するための工程;
g) 工程f)から得られた含水流出物の少なくとも一部を精製し、かつ、処理された水の少なくとも1つの流れとエタノールを含む希釈水の流れとに分離するための工程;
h) 工程g)から得られたエタノールを含む希釈水の流れの少なくとも一部を、気化交換器において、酸化工程j)から得られたクエンチ流との熱交換を用いる部分的または全体的な交換器内気化によって再循環させかつ気化させるための工程であって、前記クエンチ流は、冷却され、次いで、酸化工程j)の1基以上の反応器に再循環させられ、少なくとも部分的に気化した含エタノール希釈水の前記流れは、工程e)の上流に再循環させられ、工程g)から得られた処理された水の流れの気化しなかった部分は、気化工程c)への入口に再循環させられる、工程;
i) 工程f)から得られたエチレンを含む流出物を圧縮し、好ましくは、精製する工程;
j) 工程i)から得られたエチレンを含む流出物中に含まれるエチレンをエチレンオキシドに酸化する工程であって、この酸化工程は、少なくとも1基の管式酸化反応器を含み、該酸化反応器は、前記クエンチ流の気化によって冷却され、該クエンチ流は、好ましくは工程h)から得られた水を含み、こうして再加熱された前記クエンチ流は、工程h)に再循環させられる、工程
を含む、方法に関する。
【0018】
(供給原料)
本発明によると、本方法において処理される供給原料は、エタノール供給原料である。
【0019】
前記エタノール供給原料は、有利には、濃縮エタノール供給原料である。用語「濃縮エタノール供給原料」は、35重量%以上の重量百分率のエタノールを含むエタノール供給原料を意味する。好ましくは、前記濃縮エタノール供給原料は、35〜99.9重量%の範囲内の重量百分率のエタノールを含む。
【0020】
35重量%未満のエタノールを含むエタノール供給原料は、当業者に知られている任意の手段、例えば、蒸留、吸収または浸透気化を用いて濃縮されてよい。
【0021】
水に加えて、前記エタノール供給原料はまた、有利には、10重量%未満、好ましくは5重量%未満の量のエタノール以外のアルコール、例えば、メタノール、ブタノールおよび/またはイソペンタノール、1重量%未満の量のアルコール以外の含酸素化合物、例えば、エーテル、酸、ケトン、アルデヒドおよび/またはエステルおよび0.5重量%未満の量の窒素および硫黄の有機物または無機物を含み、重量百分率は、前記供給原料の全重量に対して表される。
【0022】
本発明の方法において処理されるエタノール供給原料は、場合によっては、化石燃料、例えば、石炭、天然ガスまたは炭素質廃棄物からのアルコールの合成方法によって得られる。
【0023】
前記供給原料は、有利には、非化石資源に由来してもよい。好ましくは、本発明の方法において処理されるエタノール供給原料は、「バイオエタノール」としてしばしば知られているバイオマスから得られた再生可能資源材料から生じたエタノール供給原料である。バイオエタノールは、生物学的経路、好ましくは、例えば、サトウキビ(サッカロース、グルコース、フルクトースおよびスクロース)、ビート等の糖含有植物、またはデンプン質植物(デンプン)の栽培またはリグノセルロース性バイオマスまたは加水分解性セルロース(主としてグルコースおよびキシロース、ガラクトース)から得られた糖の発酵によって生じた供給原料であり、これらは、可変量の水を含有している。
【0024】
従来の発酵処理方法のより完全な説明のために、出版物である「Les Biocarburants, Etat des lieux, perspectives et enjeux du developpement [Biofuels-state of play, perspectives and challenges for development(バイオ燃料−開発のための活動の状態、展望および挑戦)],Daniel Ballerini, Editions Technip」に参照がなされてよい。
【0025】
前記供給原料は、有利には、合成ガスから得られてもよい。
【0026】
前記供給原料は、有利には、対応する酸またはエステルの水素化によって得られてもよい。この場合、酢酸または酢酸エステルは、有利には、水素を用いてエタノールに水素化される。酢酸は、有利には、メタノールのカルボニル化または炭水化物の発酵によって得られてよい。
【0027】
好ましくは、本発明の方法において処理されるエタノール供給原料は、バイオマスから得られた再生可能資源から生じたエタノール供給原料である。
【0028】
(予熱工程a))
エタノール供給原料は、場合によっては、熱交換器において脱水工程e)から得られた流出物との熱交換によって予熱して予熱されたエタノール供給原料を生じさせるための工程a)を経る。前処理工程b)が行われる場合、工程a)の終わりにおける温度は、70〜130℃の範囲内、好ましくは110〜130℃の範囲内にある。エタノール供給原料の圧力は、予熱工程a)の終わりにおいて液状を維持するように、0.1〜3MPaの範囲内の値に調節される。
【0029】
(前処理工程b))
エタノール供給原料は、場合によっては予熱され、このものは、場合によっては、前処理して前処理されたエタノール供給原料を生じさせるための工程b)を経る。前記前処理工程は、下流に置かれた脱水触媒の失活を制限するように前記予熱された供給原料中に存在する含窒素化合物を除去するために用いられ得る。
【0030】
前記前処理工程b)は、酸性固体、好ましくは酸性樹脂により、70〜130℃の範囲内、好ましくは110〜130℃の範囲内の温度で行われる。
【0031】
前記前処理工程b)は、不純物(塩基性および/または有機性のもの)、およびカチオン種を除去して、不純物のレベルが脱水触媒に適合した前処理されたエタノール供給原料を得るために用いられ得る。
【0032】
本発明の操作条件下での酸性固体による前処理は、前記供給原料中に存在するエタノールの3〜20重量%、好ましくは8〜12重量%がDEEに転化させられ得ることを意味し、重量百分率は、前処理工程b)への入口における前記供給原料中に存在するエタノールの全重量に対して決定される。
【0033】
酸性固体は、当業者に知られている酸性固体の全てを含む:シリカ−アルミナ、酸性白土、ゼオライト、硫酸化ジルコニア、酸性イオン交換樹脂等。必須の事実は、酸性固体は、可及的に多くの塩基性およびカチオン性の種を捕捉するための高い交換容量、およびエタノールのDEEへの部分的変換を行うための十分に高い酸強度を有するということである。
【0034】
容易に商業的に利用できる酸性固体は、酸性にするように酸により処理された粘土(例えばモンモリロナイト)および結晶格子中のシリカ対アルミナのモル比2.5〜100を有するゼオライトである。
【0035】
酸性樹脂は、芳香族性および/またはハロ脂肪族性の鎖からなる有機担体上にグラフトされたスルホン基を含む。好ましくは、酸性固体は、少なくとも0.1mmolH当量/gの交換容量を有する。
【0036】
酸性樹脂は、芳香族ビニル基の重合または共重合と、その次の、スルホン化によって調製され、前記芳香族ビニル基は、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルエチルベンゼン、メチルスチレン、ビニルクロロベンゼンおよびビニルキシレンから選択され、前記樹脂の架橋度は、20〜35%の範囲内、好ましくは25〜35%の範囲内、好ましくは30%に等しく、KOH溶液による中和の間の電位差測定によって測定される酸強度は、0.2〜10mmolH当量/g、好ましくは0.2〜2.5mmolH当量/gである。
【0037】
前記酸性イオン交換樹脂は、芳香族基当たり1〜2個の末端スルホン基を含有する。それは、0.15〜1.5mmの範囲内のサイズである。用語「樹脂サイズ」は、樹脂の粒子を取り囲む最も小さい球体の径を意味する。樹脂サイズのクラスは、適切なふるいにより当業者に知られている技術を用いてふるい分けすることによって測定される。
【0038】
好ましい樹脂は、モノビニル芳香族化合物およびポリビニル芳香族化合物の共重合体によって構成される樹脂であり、非常に好ましくは、ジビニルベンゼンとポリスチレンとの共重合体の架橋度は、20〜45%の範囲内、好ましくは30〜40%の範囲内であり、より好ましくは35%に等しく、前記樹脂の活性部位の数を示し、KOH溶液による中和の間の電位差測定法によって測定される酸強度は、1〜10mmolH当量/gの範囲内、好ましくは3.5〜6mmolH当量/gの範囲内である。例として、樹脂は、Axensによって販売されるTA801樹脂である。
【0039】
酸性固体は、塩基性およびカチオン性の種の吸着によって交換容量がほぼ完全に飽和する都度に現場内(in situ)でまたは現場外(ex situ)で再生されてよい。粘土またはゼオライト等の無機酸性固体の場合、再生は、不活性流または酸素を含有する流れが存在する中で塩基性の種を脱着させるように高温で単純に加熱することからなってよい。カチオンは、イオン交換によって除去されてよい。酸性樹脂は、イオン交換によって、典型的には液相中の酸による処理によって再生されてよい。酸性固体は、飽和するまで用いられて、新しい固体と置き換えられてもよい。
【0040】
酸性固体は、単独でまたは他のタイプの酸性固体との混合物として用いられてよい。異なる酸性固体の混合物または酸性固体の配列が、塩基性およびカチオン性の種の吸着容量およびエタノールをDEEに部分的に変換するための容量を最適にするために用いられてよい。
【0041】
上記の前処理は、有利には、アニオン交換樹脂を用いる前処理によって補足されてよい。この樹脂は、例えば、ナトリウム、またはトリメチルアンモニウムにより満たされた樹脂であって、mg(OH/リットル)で測定される交換容量によって特徴付けられる樹脂であってよい。この樹脂は、例えば、Amberlite(登録商標)IRN78樹脂であってよい。この補足樹脂は、触媒の寿命を延ばすために、スルファートイオンSO2−を保持するために用いられ得る。
【0042】
(気化工程c))
前記前処理されたエタノール供給原料と、再循環および気化の工程h)にしたがって再循環させられたエタノールを含む希釈水の流れの少なくとも一部とを含む混合物は、「気化供給原料」として知られている。
【0043】
本発明によると、脱水方法は、前記気化供給原料を気化させて気化した供給原料を生じさせるための工程c)を含む。前記気化は、熱交換器における、脱水工程e)から得られた流出物との熱交換によって行われる。
【0044】
好ましくは、前記気化供給原料は、脱水工程e)から得られた流出物の圧力より低い圧力で前記気化工程c)に導入される。
【0045】
気化工程c)の上流の前記気化供給原料の圧力は、有利には、脱水工程e)から得られた凝縮させられた流出物と蒸発させられた前記気化供給原料との間の熱交換器中の温度差が2℃以上、好ましくは3℃以上であるように選択される。
【0046】
熱交換器中のこの温度差は、熱平衡へのアプローチとして知られている。
【0047】
気化工程c)の上流の前記圧力の調節は、本発明の不可欠な基準である。この圧力は、可及的に高くなるように選択され、その結果、脱水工程e)からの流出物の凝縮温度と前記気化供給原料の気化温度との間の差は、2℃以上、好ましくは3℃以上であり、前記気化供給原料と脱水工程e)から得られた前記流出物との間の熱交換が最大になる。
【0048】
前処理工程b)が行われる好ましい配置において、所与の圧力における気化供給原料の気化温度は、前処理工程b)を含まない連結によって得られた供給原料の気化温度と比べて低下させられる。脱水工程e)からの流出物の所与の凝縮温度および固定された熱平衡へのアプローチのために、気化工程c)の上流の圧力は、前処理工程b)を含まない連結において存在したでろう値より高い値に調節されてよい。
【0049】
気化工程c)の上流の前記圧力を、可能な最も高い値に、先行段落において決定された制限の範囲内で調節することは、本発明の方法の圧縮工程d)の間の圧縮に必要なエネルギーが最小にされ得ることを意味する。
【0050】
前記気化供給原料は、0.1〜1.4MPaの範囲内、好ましくは0.2〜0.6MPaの範囲内の圧力で前記気化工程c)に導入される。
【0051】
脱水工程e)の最終反応器を出る流出物の圧力より低い、0.1〜1.4MPaの範囲内、好ましくは0.2〜0.6MPaの範囲内のこの特定の圧力で前記気化供給原料を気化工程c)に導入することは、最後の断熱反応器から得られた流出物の凝縮温度より低い、前記気化供給原料のための気化温度が開発され得ることを意味する。それ故に、最後の断熱反応器から得られた流出物の水相の潜熱の主要部分は、回収され、外熱を加えることなく前記気化供給原料を気化させる。前記気化供給原料の気化のエンタルピーの全体は、それ故に、前記流出物のエンタルピーと交換される。
【0052】
(圧縮および過熱の工程d))
本発明によると、前記気化した供給原料は、圧縮工程d)において圧縮を経て、圧縮された供給原料が生じる。前記圧縮工程d)は、有利には、当業者に知られているあらゆるタイプの圧縮機において行われる。特に、圧縮工程d)は、有利には、ギア一体型遠心式圧縮機タイプの圧縮機においてまたは中間冷却のないラジアルホイールを有する1個以上の送風機を直列に含む圧縮機において、または、潤滑を有するまたは有しない容積型圧縮機において行われる。
【0053】
工程b)が行われる配置において、前記工程b)は、驚くべきことに、工程c)の上流でより高い圧力で行われ得る;工程d)における圧縮度は、前記工程d)からの出口において所与の圧力を得るように低減させられ、これにより、前記工程d)のエネルギー消費が低減させられる。
【0054】
圧縮工程d)は、方法から得られかつ外部の伝熱流体を含まない流れを用いて、前記方法に統合された熱ポンプを生じさせるために用いられ得る。
【0055】
工程c)および工程d)の特定の操作条件の組み合わせは、前記気化供給原料の気化を保証するための方法への外部の伝熱流体の付与が、最後の断熱反応器から得られた流出物の水相の潜熱の大部分を回収して気化供給原料を気化させることによって回避され得ることを意味する。それ故に、方法から得られた流れのみが用いられる。
【0056】
圧縮工程d)から得られた前記圧縮された供給原料の圧力は、有利には、0.3〜1.8MPaの範囲内、好ましくは0.5〜1.3MPaの範囲内である。前記供給原料の出口における圧力は、最後の反応器から得られた流出物の凝縮温度が工程c)に入る供給原料の気化温度より高くあるために十分に高く、これは、工程c)が実行可能であるために必要な条件である。
【0057】
圧縮工程d)から得られた前記圧縮された供給原料は、場合によっては、単一相タイプのガス交換器において、工程e)の最後の断熱反応器から得られた流出物との熱交換によって加熱される。前記単一相タイプのガス交換器において、前記圧縮された供給原料は、過熱した状態とされ、工程e)の最後の断熱反応器から得られた、ガス状の状態にある流出物は、凝縮させられることなく「過熱を脱した」状態にある。
【0058】
前記圧縮された供給原料は、有利には、250〜420℃の範囲内、好ましくは280〜410℃の範囲内の出口温度に過熱した状態とされる。工程e)の最後の断熱反応器の前記単一相タイプのガス交換器からの出口において、得られた、ガス状の状態にある流出物は、有利には、180〜260℃の範囲内の温度にある。
【0059】
それ故に、単一相のガスおよび気/液蒸発器タイプの種々の交換器を用いることおよび前記気化供給原料の最後の反応器を出る流出物の圧力より低い圧力での気化は、脱水工程e)の最後の反応器から得られた流出物中に存在する水蒸気の最低60%の凝縮が行われ得ることを意味する。
【0060】
単一相タイプのガス交換器は、その技術が当業者に知られている交換器であり、これは、大きな交換面を提供しながら圧力降下を最小にするために用いられ得る。この低圧の気/気交換は、交換器の壁を通じた低い熱流束密度(低い伝達係数)を誘導し、これは、大きな交換面を有することを必要とする。加えて、圧力の喪失は、工程d)の圧縮機上の負担を制限するために最小にされなければならない。例として、この交換器は、Alpha Lavalによって提供されるPackinoxタイプのシェル中の加圧式プレート交換器であってよい。
【0061】
(脱水工程e))
本発明によると、前記圧縮された供給原料(場合によっては加熱されている)は、再循環させおよび気化させるための工程h)から得られたエタノールを含む希釈水の気化した流れと混合される。混合物は、有利には、炉に導入され、少なくとも1基の断熱反応器において、脱水反応温度に適合する入口温度にされる。それは、次いで、少なくとも1つの固定床の脱水触媒を含する少なくとも1基の断熱反応器において脱水工程e)を経、この断熱反応器において脱水反応が行われる。
【0062】
エタノール供給原料によって構成される流れと工程g)から得られたエタノールを含む希釈水の流れとの脱水工程e)への入口における混合物は、混合の終わりにおいて、希釈比として知られている水対エタノールの重量比が1〜4の範囲内であるように生じさせられる。希釈は、1基または複数基の反応器中のエタノールの分圧を低下させることおよび方法をエチレンについてより選択的にすることを目的とする。この重量比は、工程g)の終わりにおいて処理された水の流量を改変することおよび/またはエタノール供給原料の流量を改変することによって調節される。
【0063】
脱水工程e)は、有利には、1または2基の反応器において行われる。
【0064】
1基の断熱反応器において工程e)が行われる場合、場合によっては加熱されている、前記圧縮された供給原料は、有利には、350〜550℃の範囲内、好ましくは400〜500℃の範囲内の入口温度および0.3〜1.8MPaの範囲内、好ましくは0.4〜0.8MPaの範囲内の入口圧力で前記反応器に導入される。
【0065】
工程e)の前記断熱反応器から得られた流出物は、有利には、270〜450℃の範囲内、好ましくは340〜430℃の範囲内の温度にあり、出口圧力は、0.2〜1.6MPaの範囲内、好ましくは0.3〜0.8MPaの範囲内である。
【0066】
2基の断熱反応器において工程e)が行われる場合、同じく場合によっては加熱されている、前記圧縮された供給原料は、有利には、350〜550℃の範囲内、好ましくは370〜500℃の範囲内の入口温度および0.3〜1.8MPaの範囲内、好ましくは0.4〜1.1MPa範囲内の入口圧力で第1の反応器に導入される。
【0067】
第1の断熱反応器から得られた流出物は、有利には、270〜450℃の範囲内、好ましくは290〜390℃の範囲内の温度および0.3〜1.7MPaの範囲内、好ましくは0.3〜1.0MPaの範囲内の圧力で前記第1の反応器を出る。
【0068】
前記流出物は、有利には、炉に導入されて、第2の断熱反応器への前記流出物の入口温度が、350〜550℃の範囲内、好ましくは400〜500℃の範囲内であるようにされる。前記第2の反応器への前記流出物の入口圧力は、有利には、0.3〜1.7MPaの範囲内、好ましくは0.3〜0.9MPaの範囲内である。
【0069】
第2の断熱反応器から得られた流出物は、有利には、270〜450℃の範囲内、好ましくは340〜430℃の範囲内である温度で前記第2の断熱反応器を出る。第2の断熱反応器から得られた前記流出物の出口圧力は、有利には、0.2〜1.6MPaの範囲内、好ましくは0.3〜0.8MPaの範囲内である。
【0070】
1基または複数基の反応器の入口温度は、有利には、脱水触媒の失活を防止するために徐々に上昇させられてもよい。
【0071】
本発明の方法の工程e)の少なくとも1基の断熱反応器において行われる脱水反応は、有利には、0.1〜20h−1の範囲内、好ましくは0.5〜15h−1の範囲内の重量毎時空間速度で操作する。重量毎時空間速度は、触媒の重量に対する高純度エタノール供給原料の質量流量の比として定義される。
【0072】
工程e)において用いられる脱水触媒は、当業者に知られている触媒である。前記触媒は、好ましくは、無定形酸触媒であるかまたはゼオライト性酸触媒である。
【0073】
工程e)において用いられる脱水触媒がゼオライト触媒である場合、前記触媒は、少なくとも、8、10または12個の酸素原子を含有する細孔開口部(8MR、10MRまたは12MR)を有するゼオライトから選択される少なくとも1種のゼオライトを含む。実際に、「員環(member ring)」、すなわちMRとして知られている、ゼオライトのチャネルの環部を形成する酸素原子の数によってゼオライトの細孔サイズを定義することが知られている。好ましくは、前記ゼオライト脱水触媒は、構造型MFI、FAU、MOR、FER、SAPO、TON、CHA、EUOおよびBEAから選択される構造型を有する少なくとも1種のゼオライトを含む。好ましくは、前記ゼオライト脱水触媒は、構造型MFIを有するゼオライト、より好ましくはZSM−5ゼオライトを含む。
【0074】
本発明の方法の工程e)において用いられる脱水触媒で採用されるゼオライトは、有利には、当業者に知られている任意の脱アルミニウムまたは脱シリカの方法を用いる脱アルミニウムまたは脱シリカによって改変されてよい。
【0075】
本発明の方法の工程e)において用いられる脱水触媒で採用されるゼオライトまたは最終触媒は、有利には、その全体的な酸性を薄めかつその水熱抵抗性を改善するような性質の試薬によって改変されてよい。好ましくは、前記ゼオライトまたは前記触媒は、有利には、リンを含み、好ましくは、HPOの形で加えられ、その後、塩基性前駆体、例えばカルシウム(Ca)による過剰な酸の中和の後に水蒸気処理が行われる。好ましくは、前記ゼオライトのリン含有率は、全触媒重量に対して1〜4.5重量%の範囲内、好ましくは1.5〜3.1重量%の範囲内である。
【0076】
好ましくは、本発明の方法の工程e)において用いられる脱水触媒は、特許出願WO/2009/098262、WO/2009/098267、WO/2009/098268、またはWO/2009/098269に記載された触媒である。
【0077】
工程e)において用いられる脱水触媒が無定形酸触媒である場合、前記触媒は、アルミナ、鉱酸の沈着により活性化したアルミナ、およびシリカ−アルミナから選択される少なくとも1種の多孔性耐火性酸化物を含む。
【0078】
本発明の方法の工程e)において用いられる前記の無定形のまたはゼオライト性の脱水触媒は、有利には、バインダとしても知られている少なくとも1種の酸化物タイプのマトリクスを含んでもよい。用語「本発明のマトリクス」は、無定形のまたは結晶性のマトリクスまたは無定形の部分と結晶性の部分とを含むマトリクスを意味する。前記マトリクスは、有利には、粘土(例えば、天然粘土、例えば、カオリンまたはベントナイト)、マグネシア、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミン酸塩、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウムおよび木炭によって形成される群の要素から選択され、これらは、単独でまたは混合物として用いられる。好ましくは、前記マトリクスは、アルミナ、シリカおよび粘土によって形成される群からの要素から選択される。
【0079】
本発明の方法の工程e)において用いられる前記脱水触媒は、有利には、種々の形状および寸法を有する粒子の形態に形付けされる。それは、有利には、円柱状または多葉状の押出物の形態(例えば二葉状、三葉状、多葉状)であって、直状または捻じれ状の形態で用いられるが、場合によっては、粉砕粉、タブレット、リング、ビーズ、ホイールまたは球体の形態で製造されかつ採用されてよい。好ましくは、前記触媒は、押出物の形態にある。
【0080】
本発明の方法の工程e)において用いられる前記脱水触媒は、有利には、少なくとも1基の反応器における固定床または移動床中に配備される。
【0081】
本発明の方法の工程e)において、用いられる触媒および操作条件は、エチレンの生産を最大にするように選択される。本発明の方法の工程e)において含まれる全体的な脱水反応は以下の通りである:
2COH → 2CH=CH + 2H
CHCHOCHCH → 2CH=CH + H
工程e)におけるエタノール供給原料の転化率は、90%超、好ましくは95%超、より好ましくは99%超である。
【0082】
90%未満の転化率は、方法の全体収率を降下させるという効果を有する。これは、エチレンに転化しなかった大量のDEEが下流の分離工程において失われるからである。
【0083】
エタノール供給原料の転化率は、百分率として、以下の式によって定義される:
[1−(出口における毎時のエタノールの質量/入口における毎時のエタノールの質量)]×100
入口および出口における毎時のエタノールの質量は、従来方法で、例えば、クロマトグラフィーによって測定される。
【0084】
脱水反応が行われる工程e)は、有利には、1基または2基の反応器において行われる。好ましい反応器は、上昇流様式または下降流様式で機能するラジアルフロー型反応器である。本発明の方法の工程e)の間、供給原料の変換に伴って、コーキングおよび/または阻害化合物の吸着によって脱水触媒が失活する。それ故に、脱水触媒は、再生工程を定期的に経る必要がある。好ましくは、反応器は、スイング反応器としても知られる交互再生態様の反応器において用いられ、反応段階と前記脱水触媒の再生のための段階とが交互に行われる。この再生処理の目的は、前記脱水触媒の表面および内部に含有される有機付着物を窒素および硫黄を含有する種と一緒に焼き払うことにある。本発明において行われる前処理工程b)は、塩基性および有機性の不純物の量、並びに、触媒のサイクルタイムを変えるであろうカチオン性の種の量を低減させるために用いられ得る。これらの種を除去することは、それ故に、触媒再生の回数が制限され得ることを意味する。
【0085】
前記工程e)において用いられる脱水触媒の再生は、有利には、空気の流れ中または空気/窒素混合物中のコークスおよび阻害化合物の酸化によって行われ、例えば、水を伴うまたは伴わない燃焼用空気の再流通を採用して、酸素が希釈されかつ再生の発熱性が制御される。この場合、反応器への入口における酸素含有率は、有利には、空気を加えることによって調節され得る。再生は、大気圧と反応圧力との間の範囲内の圧力で行われる。
【0086】
再生温度は、有利には、400℃と600℃との間であるように選択される;それは、有利には、再生の間に変動してよい。再生の終わりは、もはや酸素消費がない−コークスの燃焼が完了したことを示す時に検出される。
【0087】
工程e)の最後の断熱反応器から得られた流出物は、場合によっては、単一相タイプのガス交換器に送られ、このガス交換器中で、それは、工程d)から得られた圧縮された供給原料との熱交換によって凝縮させられることなく「過熱を脱した」状態とされ、圧縮された供給原料自体は、過熱した状態とされる。
【0088】
前記「過熱を脱した」状態の流出物は、次いで、有利には、第2の気/液タイプの交換器に送られ、この交換器において、それは、熱交換によって部分的に凝縮させられ、気化供給原料を気化させる。
【0089】
前記流出物は、次いで、エタノール供給原料を予熱するための工程a)の間にエタノール供給原料との熱交換によってさらに冷却される。
【0090】
(分離工程f))
本発明によると、工程e)の再度の断熱反応器から得られた流出物は、1.6MPa未満、好ましくは0.8MPa未満の圧力でエチレンを含む流出物と、水を含む流出物とに分離するための工程f)を経る。
【0091】
工程e)の最後の断熱反応器から得られた前記流出物の分離のための工程f)は、有利には、当業者に知られている任意の方法、例えば、気/液分離帯域、好ましくは気/液分離塔を用いて行われてよい。
【0092】
1.6MPa未満の圧力でエチレンを含む流出物は、次いで、有利には、圧縮を経る。前記圧縮は、前記流出物の圧力を有利には2〜4MPaの範囲内である圧力に高めることを可能にし、これは、その精製のために必要である。
【0093】
(精製工程g))
本発明によると、分離工程f)から得られた含水流出物は、精製工程g)を経る。精製工程g)は、当業者に知られている任意の精製方法を用いて行われてよい。例として、精製工程g)は、有利には、イオン交換樹脂を用いて、水酸化ナトリウムまたはアミン等の化学薬剤を加えてpHを調節することによって、および重亜硫酸塩から選択される重合阻害剤および生成物を安定にするための界面活性剤等の化学薬剤を加えることによって行われてよい。
【0094】
処理された水の少なくとも1つの流れと、エタノールを含む希釈水の少なくとも1つの流れとが次いで分離される。このエタノールは、工程e)において転化させられなかったエタノールに相当する。分離は、エタノール不含有処理水(10重量%未満のエタノール、好ましくは1%未満)の流れを得るために用いられてよく、これは、エタノールの喪失を制限し、当業者に知られている任意の分離方法を用いて行われてよい。例として、分離は、有利には、蒸留によって、モレキュラーシーブス、水蒸気または熱のストリッピングを用いてまたは例えばグリコラート化された溶媒を用いる溶媒吸収によって行われてよい。
【0095】
軽質ガスおよびエタノール、好ましくはアセトアルデヒドおよびメタノールを含有する流れが、有利には、分離されかつ工程f)に再循環させられてもよい。
【0096】
(再循環および気化の工程h))
本発明によると、精製工程g)から得られた、エタノールを含む希釈水の流れは、再循環および気化のための工程h)を経る。
【0097】
工程g)から得られたエタノールを含む希釈水の流れの少なくとも一部は、気化交換器において、酸化工程j)から得られたクエンチ流との熱交換を用いた気化を経る。用語「少なくとも一部」は、最低50%、好ましくは80%が、気化交換器からの出口において気化するように注意深く選択される量を意味する。工程j)から得られたクエンチ流は、部分的に、好ましくは完全に、前記熱交換の間に凝縮させられ、次いで、酸化工程j)に再循環させられる。
【0098】
エタノールを含む希釈水の再循環および気化のための工程h)の圧力は、工程e)の上流でエタノールを含む希釈水の気化した流れの圧縮なしで注入を可能にするように調節される。エタノールを含む希釈水の流れが、工程j)から得られたクエンチ流との熱交換によって部分的に気化せられる場合、非気化部分が分離され、減圧され、工程c)への入口に再循環させられる。
【0099】
好ましい配備では、工程h)から得られた、エタノールを含む希釈水の流れは、工程e)への入口に注入される。
【0100】
別の好ましい配備では、工程h)から得られた、エタノールを含む希釈水の流れは、圧縮および過熱のための工程d)における単一相の気/気交換器への入口に注入される。
【0101】
熱交換後の非気化部分を含む、精製工程g)から得られた、エタノールを含む希釈水の流れの非気化部分、並びに熱交換を経なかった部分は、有利には、再循環させられ、気化工程c)への入口において前処理されたエタノール供給原料と混合される。
【0102】
工程g)から得られた、エタノールを含む希釈水の流れの一部を気化させることおよびこの気化した部分を工程e)の上流に再循環させることによって、工程c)への入口におけるエタノールの希釈は最小にされる。この方法で希釈を最小にすることは、エタノールを含む希釈水の流れの全てが工程c)の入口に再循環させられる状況と比較して工程c)における混合物の気化の温度およびエンタルピーを低減させるという効果を有し、これは、前記混合物の蒸発が促進され、工程c)におけるエネルギー要件が最小にされることを意味する。
【0103】
再循環水の流れは、熱反応希釈剤として作用する。
【0104】
エチレン酸化工程j)および脱水工程e)のための操作条件の注意深い調節は、工程h)を行うことによって、全体的な水の消費を低減させながら、工程d)における圧縮に必要なエネルーが、方法の熱統合を最大にすることによって工程g)から得られたエタノールを含む希釈水の流れの全体を気相で圧縮することを回避することにより制限され得ることを意味する。
【0105】
(圧縮工程i))
本発明によると、工程f)から得られたエチレンを含む流れは、次いで、当業者に知られている手段、例えば、遠心型圧縮機または容積型圧縮機を用いた圧縮を経、場合によっては、中間冷却を伴う多段である。凝縮物は、有利には、精製工程g)のための供給物と混合されてよい。この圧縮は、流出物が、続く任意の精製工程を行うのを可能にするのに十分な圧力にされ得ることを意味し、その操作圧力は、圧力降下を無視して、この圧縮機に直接的に依存する。好ましくは、吐出し圧力は、エチレンを酸化工程j)に直接的に注入することを可能にするのに十分に高い。この吐出し圧力は、1.1〜5.1MPaの範囲内、好ましくは1.6〜3.6MPaの範囲内である。
【0106】
圧縮された流れは、次いで、有利には、当業者に知られている手段を用いて、例えば、1回以上の蒸留、場合によっては深冷蒸留によって、および/または樹脂タイプの捕捉塊を用いて精製を経る。エチレンを含む流れの精製は、その目的地に、例えば、酸化工程i)のために選択された技術、または(エチレンオキシドの生産と同時に)エチレンを酸化することなくエチレンを生産する可能性その他に依存する。
【0107】
(酸化工程j))
本発明によると、分離工程f)から得られ、圧縮工程i)において圧縮され、かつ場合によっては精製された、エチレンを含む流れの少なくとも一部は、酸化工程j)に向けられる。この酸化工程は、エチレンを酸化してエチレンオキシドを形成することを可能にするために、当業者に知られている、一連の設備、触媒および化学生成物を含む。
【0108】
酸化触媒は、有利には、銀をベースとする。反応の選択性は、有利には、反応の温度を制御することによって、場合によってはメタン希釈を用いることによって最適にされてよい。このメタンは、格納またはメタン生産装置のいずれかに由来してよい。
【0109】
これらのパラメータの調節は、反応によって放出された熱の量が制御され得て、その結果、クエンチ流体の蒸発を介して抽出された熱および工程h)におけるこの流体の凝縮によって回収可能な熱が制御され得ることを意味する。
【0110】
本発明によると、エチレン酸化反応の温度は、100℃と500℃との間、好ましくは150〜300℃の範囲内に、クエンチ流と称される伝熱流の気化によって、1つ以上の多管式反応器のシェルにおいて制御され、反応は、この管において行われる。クエンチ流は、好ましくは、水を含み、有利には、プロセス水流、希釈水流または汚損していないかまたはわずかにのみ汚損している水を含む任意の他の流れであってよい。反応の温度は、例えば、1基または複数基の反応器のシェル側上の圧力を変動させることによって制御されてよく、これは、クエンチ流体の気化温度を変動させるという効果を有する。
【0111】
クエンチ流の気化圧力、それ故に、その気化温度は、エタノールを含む希釈水の再循環および気化のための工程h)の1基または複数基の交換器における熱の流れの密度を最大にするように選択される。熱交換の熱平衡へのアプローチは、考慮中の熱交換の2つの側の間の温度差の最小絶対値として定義される。クエンチ流の気化圧力は、工程h)の交換器における熱平衡へのアプローチが、最大、好ましくは10℃超、好ましくは30℃超であるように選択される。これは、工程h)の交換表面および気化交換器(単数または複数)のコストが最小にされ得ることを意味する。
【0112】
酸化工程j)は、エチレンオキシドを含む少なくとも1つの流出物と、部分的にまた完全に気化した少なくとも1つのクエンチ流とを生じさせ、クエンチ流は、次いで、再循環および気化のための工程h)に向けられる。
【0113】
(図面の説明)
図1は、エタノールを脱水し、次いで、生じたエチレンを酸化するための方法であって、エタノールの濃縮原料の場合に、本方法の工程h)から得られたエタノールを含む希釈水の流れを再循環させる、方法の図表示である。
【0114】
エタノール供給原料(1)は、交換器a)において、脱水工程e)からの流出物により予熱される。この脱水工程e)からの流出物は、導管(7)を介して交換器に入る。予熱されたエタノール供給原料は、次いで、導管(2)を介して前処理帯域b)に導入される。前処理されたエタノール供給原料は、次いで、導管(3)において、再循環および気化の帯域h)から得られた含エタノール非気化希釈水と混合される。この含エタノール非気化希釈水は、導管(23)を介して再循環させられたものであり、反応希釈剤として作用する。この混合物は、気化供給原料を構成するものであり、このものは、ライン(3)を介して気化工程c)に導入され、この気化工程c)において、前記混合物は、脱水工程e)から得られた流出物との熱交換を経る。脱水工程e)から得られた流出物は、導管(23)を介して交換器に入り、気化供給原料を生じさせる。脱水工程e)から得られた流出物の潜熱(凝縮のエンタルピーとしても知られている)は、外熱を加えることなく気化供給原料を気化させるために用いられる。
【0115】
気化した供給原料は、次いで、導管(4)を介して圧縮および過熱の工程d)に送られる。圧縮および過熱の工程d)において、前記気化した供給原料は、圧縮され、かつ過熱した状態とされ、脱水セクションe)から得られた流出物は、気体の状態にあり、このものは、凝縮させられることなく「過熱を脱した」状態となる。
【0116】
前記気化した、圧縮されかつ過熱の状態となった供給原料は、次いで、再循環および気化の工程h)から得られた含エタノール希釈水の気化した流れと混合され、次いで、工程e)に導入され、この工程e)において、それは、炉または脱水反応温度に適合した温度にするための当業者に知られている他の設備中を通過する。
【0117】
脱水セクションe)から得られた流出物は、次いで、工程d)、c)およびa)における上記の3連続の交換を経る。
【0118】
工程a)から得られた流出物は、導管(8)を介して分離セクションf)に送られ、分離セクションf)において、それは、エチレンを含む流出物(9)と水を含む流出物(14)とに分離される。
【0119】
エチレンを含む流出物は、ライン(9)を介して圧縮工程i)に送られる。工程i)は、前記エチレンを含む流出物を、それが精製されるのに十分な圧力、好ましくは酸化セクションj)のための供給圧力に適合する圧力にするために用いられ得る。工程i)は、軽質ガスを含む少なくとも1つの流れ(17)と、精製工程g)に再循環させられる水と未反応エタノールの流れ(18)を分離することによって含エチレン流出物を精製するためにも用いられ得る。
【0120】
工程i)から得られた、圧縮されかつ精製された含エチレン流出物(10)は、酸化セクションj)に送られ、この酸化セクションj)において、それは、エチレンオキシドへの転化を経る。工程j)は、エチレンオキシドを含む流れ(11)を形成するために用いられ得る。工程j)の反応の熱は、クエンチ流体(13)を気化させるために用いられ得、クエンチ流体(13)は、次いで、導管(12)を介して再循環および気化の工程h)に再循環させられる。
【0121】
工程f)から得られた含水流出物は、導管(14)を介して精製工程g)に送られる。未転化エタノールを含む希釈水の少なくとも1つの流れと、処理された水の少なくとも1つの流れ(19)とが分離される。軽質ガスおよび未転化エタノールを含有する流れ(21)も分離され、工程f)に再循環させられる。
【0122】
精製工程g)から得られた、未転化エタノールを含む希釈水の前記流れの全体が、再循環および気化の工程h)に送られ、再循環および気化の工程h)において、それは、2つの流れ(15)および(23)に分割される。流れ(15)は、場合によっては、ポンプでくみ上げられて、工程e)の上流の流れ(16)の注入に適合する圧力とされ、次いで、酸化工程j)から得られた気化したクエンチ流体(12)の凝縮を用いた熱交換によって部分的にまたは完全に気化させられる。凝縮させられたクエンチ流体は、導管(13)を介して酸化セクションj)に再循環させられる。工程h)からの気化した流出物(16)は、脱水工程e)の上流で前処理されたエタノール供給原料と組み入れられる。
【0123】
工程h)から得られた非気化部分(23)は、気化工程c)の上流に再循環させられる。流れ(15)の気化が完全でない場合、液体部分は、有利には、減圧されて流れ(23)と混合されてよい。
【0124】
以下の実施例は、本発明の範囲を制限することなく本発明を例証する。
【0125】
(実施例)
(実施例1:本発明に合致する)
実施例1は、本発明に合致する方法を例証する。
【0126】
考慮中のエタノール供給原料は、コムギの発酵によって、グルテンを抽出することなく、乾式製粉法を採用して生じさせられた。
【0127】
(工程a))
前記エタノール供給原料は、45664kg/hの流量、1.15MPaの圧力で交換器E1に導入され、液相を維持したまま、120℃の温度に、工程e)の断熱反応器から得られた流出物に対抗して加熱された。
【0128】
(工程b))
加熱されたエタノール供給原料は、TA801樹脂により前処理され、痕跡量の含窒素化合物が除去された。この前処理の間、エタノールの一部は、DEEに転化させられた。未精製の前処理されたエタノール供給原料の特徴は、表1に与えられる。
【0129】
【表1】
【0130】
(工程c))
気化した供給原料は、前処理されたエタノール供給原料に、工程h)に従って再循環させられた85380kg/hの希釈水および未転化エタノールを混合して構成されるものであり、このものは、0.37MPaの圧力で交換器E2に導入された。気化した供給原料は、113℃で交換器E2に入り、それ故に、8重量%の程度ですでに気化させられていた。交換器E2への入口における圧力は、工程e)の最後の断熱反応器から得られた流れによる熱平衡へのアプローチが最小限の15℃であるように調節された。
【0131】
工程c)において、工程e)の最後の断熱反応器から得られた流出物の水相の潜熱の大部分は回収され、外熱を加えることなく気化供給原料を気化させた。それ故に、51.9MWが、前記気化供給原料と前記流出物との間で交換された。
【0132】
(工程d))
気化した供給原料は、次いで、ギア一体型遠心式圧縮機K1において圧縮され、前記気化した供給原料の圧力が圧縮の終わりにおいて0.695MPaに等しくなるようにされた。
【0133】
圧縮された供給原料は、次いで、単一相タイプのガス交換器E3において、工程e)の断熱反応器から得られた流出物との熱交換を用いて加熱された。前記単一相タイプのガス交換器において、前記圧縮された供給原料は、419℃の温度に過熱の状態とされ、工程e)の最後の断熱反応器から得られたガス状態の流出物は、凝縮させられることなく「過熱を脱した」状態とされ、273℃の温度を有していた。
【0134】
(工程e))
脱水工程e)は、2基の炉と、2基の断熱反応器とを直列に含んでいた。
【0135】
前記供給原料は、圧縮され、かつ、前記単一相タイプのガス交換器において加熱されており、このものは、次いで、55590kg/hの気化した希釈水と混合された。この気化した希釈水は、再循環および気化の工程h)から得られたものである。この混合物は、次いで、炉に導入されて、工程e)の第1の断熱反応器の入口温度にされ、ここで、この入口温度は、高度に吸熱性の脱水およびDEEのエチレンへの転化の反応の温度に適合したものであり、すなわち、470℃の温度にされた。DEEのエチレンへの高度に吸熱性の脱水および転化の反応の温度に適合した、工程e)の最後の断熱反応器からの出口温度は、420℃であった。
【0136】
反応器入口における希釈度(すなわち、水/エタノールの重量比)は、3であった。
【0137】
前処理工程b)において含窒素化合物を捕捉することは、工程e)の第1の断熱反応器への入口温度が、相当低下させられ得ただろうことを意味する。
【0138】
前記圧縮されかつ加熱された供給原料は、0.595MPaの入口圧力で第1の断熱反応器に導入された。工程e)からの最後の断熱反応器からの出口における流出物の圧力は、0.500MPaであった。脱水工程e)は、7h−1の重量毎時空間速度で操作された。
【0139】
断熱反応器は、固定床の脱水触媒を含有しており、前記触媒は、80重量%のZSM−5ゼオライトを含み、このZSM−5ゼオライトは、HPOにより処理され、リンP含有率は、3重量%であった。
【0140】
工程e)におけるエタノール供給原料の転化率は、95%であった。
【0141】
(工程f))
工程e)の最後の断熱反応器から得られた流出物は、次いで、上記の3回の熱交換を経て、気/液分離塔に送られた。0.36MPaの圧力でエチレンを含む流出物が、次いで、水を含む流出物と共に分離された。この分離は、気/液分離塔を用いて行われ、塔の底部において生じた水は、冷却しかつ中和剤を注入した後に塔の頭部に再循環させられた。
【0142】
(工程g))
未転化エタノールを含む希釈水の流れ(15)並びに軽質ガスを含有する流れ(21)が、次いで、不純物を含む水の従来の低圧蒸留によって分離された。処理された水の流れ(19)が分離され、方法のためのパージを構成していた;その部分的な水の流量は、工程e)の脱水反応によって形成された水に対応していた。
【0143】
(工程h))
未転化エタノールを含む希釈水の流れは、2つの流れ(23)および(15)に分けられた。流れ(15)は、リボイラに送られ、酸化セクションj)から得られた流れ(12)によって供給された熱を用いて気化させられた。35MWが、この工程において交換され、流れ(15)の100重量%を気化させるために用いられ得た。工程j)から得られた高温流は、凝縮させられ、酸化工程j)の反応器に再循環させられた。この流れは、65914kg/hの希釈された水によってもっぱら構成されていた;工程h)へのその入口圧力は、その露点温度、この場合200℃において1.5MPaであった。
【0144】
気化した流れ(16)は、工程e)の上流に再循環させられ、液体流(23)は、工程c)の上流に再循環させられた。
【0145】
(工程i))
エチレンを含む流出物は、次いで、圧縮を経て、その圧力は、2.78MPaに高められ、その後に、その最終精製が深冷蒸留により行われた。軽質ガスの流れ(17)が、この塔の頭部から分離され、水およびエタノールを含む凝縮物の流れが、工程g)に再循環させられた。
【0146】
(工程j))
工程i)から得られた精製されたエチレン流出物は、酸化セクションj)に送られた。このセクションの操作条件は以下の通りであった:
・ 通過当たりの転化率:16%;
・ 選択性:エチレンについて85モル%;
・ O/エチレン比=7;
・ 酸化反応器への供給圧力:20barg;
・ 反応器の入口温度:230℃;
・ 反応の発熱性:40℃。
【0147】
反応の発熱性、それ故に、その選択性は、方法に再循環させられたメタンによる反応媒体の大きな希釈のために制限された。メタンは、炭酸カリウムの溶液を採用する吸収塔を用いて精製された。
【0148】
反応器は、多管式反応器であり、1.5MPaの圧力で65914kg/hの飽和蒸気が発生した。この蒸気は、流れ(12)によって再循環および気化のセクションh)に送られた。
【0149】
エチレンオキシドは、水吸収塔、およびこれに続くストリッピング塔において分離された。
【0150】
追加の酸素およびメタンの混合物が、導管(22)を介して酸化セクションj)に注入された。
【0151】
精製されたエチレンオキシドは、流れ(11)中に抽出され、その後に、エチレングリコール転化セクションに送られた。
【0152】
種々の流れ(kg/h)が、表2に委ねられる。
【0153】
【表2】
【0154】
軽質化合物は、C3およびC4炭化水素化合物、並びに水素および二酸化炭素である。
【0155】
エタノールのエチレンへの変換のための方法の選択性は、99%であった。
【0156】
それは、以下のように計算された:(エチレンを含む流出物中に含有されるエチレン)/(0.61*転化したエタノールの量)。式中、転化したエタノールの量は、前処理前のエタノール供給原料中に含有されるエタノール−水のパージされた流れ中およびエチレンを含む流出物中に含有されるエタノールである。0.61gは、1gの高純度エタノールを脱水することによって得られるエチレンの最大量である。
【0157】
この実施例により、交換器E3は、酸化セクションから得られた熱エネルギー35MWを回収して、脱水セクションからの希釈水を気化させるために用いられ得ることが示される。この熱源の熱エネルギーは、実質的に、エタノールを含む希釈水の気化のための温度(この実施例では約135℃)より高く(この実施例では200℃)、したがって、交換器E3中を通過する熱流束の密度は、希釈水の気化が脱水工程e)からの流出物との交換によって行われる従来技術の方法と比較して高かった。
【0158】
さらに、酸化工程j)において生じた熱を回収するために希釈された水の閉鎖ループを用いるという事実は、クエンチ水を再循環させる前にクエンチ水のための精製セクションを必要としないという利点を有している(脱水セクションに注入される前に酸化反応器のシェルにおいて希釈水がクエンチ流体として直接的に用いられる方法と比較される)。
【0159】
工程g)から得られたエタノールを含む希釈水の流れの全体が圧縮されるわけではないという事実は、工程d)における圧縮に必要な動力が、工程g)から得られたエタノールを含む希釈水の流れがその全体で気化工程c)の上流に再循環させられる従来技術の方法と比較して40%低減させられ得ることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0160】
図1図1は、エタノールを脱水し、次いで、生じたエチレンを酸化するための方法であって、エタノールの濃縮原料の場合に、本方法の工程h)から得られたエタノールを含む希釈水の流れを再循環させる、方法の図表示である。
図1