【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、請求項1に記載のボール、特にフットボールにより、少なくとも部分的に解決される。請求項1では、ボールはブラダを備え、このブラダは、主重量成分(majority weight component)の第1の材料クラスの材料を有する。ボールは、少なくとも1つの中間層をさらに備え、少なくとも1つの中間層は、ブラダの外側に配置され、また、少なくとも1つの中間層は、主重量成分の第1の材料クラスの材料を有する。ボールは、少なくとも1つの外側層をさらに備え、少なくとも1つの外側層は、少なくとも1つの中間層の外側に配置され、また、少なくとも1つの外側層は、主重量成分の第1の材料クラスの材料を有する。
【0011】
それぞれの主重量成分−さらには、それぞれの重量全体−が同じ材料クラスの材料で作製されているいくつかの層をボールに提供することにより、材料をボールから容易に回収することができ、それにより、個々の構成要素を分離および/または分類するための努力が著しく減少される。例えば、ボールは、単一のリサイクルステップにおいて処理され得る。したがって、本発明によるボールは、いくつかの層を含むボール全体が単一の材料クラスの材料で作製されている場合は特に、使用されたボールのリサイクルを大幅に単純化することができる。ボールの異なる層に対して同じ材料クラスの材料を使用して、専門的なものも含めてあらゆる要求に適合する優れた品質のボールを提供することは、そのようなボールを製造するために必要とされる様々な特性(例えば、形状復元性、弾性、防湿性(moisture repellence)、飛行挙動、反発性、外観、等)を提供するために異なる(物理的および化学的)形態(例えば、ヤーン、フォイル、フォーム、粒子、等)の同じ材料クラスの材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレン)を使用することができるという知識によって、可能とされる。具体的には、ボールの全ての構成要素に熱可塑性材料(例えば、熱可塑性ウレタン(TPU))を使用することにより、使用後に容易かつ効率的にリサイクルでき、したがってエネルギー消費および温室効果ガス排出の減少に貢献する、運動選手のための高品質のボールを製造することが可能になる。
【0012】
ボールが3つ未満の層を備え、使用される全ての層が、主重量成分の同じ材料クラスの材料を有することも、可能である。例えば、これは、ブラダを有さないボールであり得る。ボールが、ブラダおよびカバーで作製されるか、または構造化されたブラダおよびカバーを備えることも、可能である。
【0013】
ブラダ、少なくとも1つの中間層、および少なくとも1つの外側層に同じ材料クラスの材料を使用することにより、例えばエネルギーまたは熱を(例えば、溶接により)加えることによって容易に接合され得る親和性のある材料を使用することが可能である。1つの実施形態では、2つの表面が融合するようにそれらを加熱するために、赤外線放射熱が使用され得る。この方法では、接着剤を使用する必要がなく、それにより、環境への影響が軽減される。さらに、例えば分子の化学結合により、層と層との間に(例えば、本発明によるボールの他の構成要素と同じ材料クラスに由来する接着剤によって)化学結合が作り出され得る。
【0014】
ボールの2つの構成要素が、接着剤なしで、例えばエネルギーを加えることによって接合され得ることも、考えられる。この方法では、さらなるボールを製造するために同一のベース材料を回収し再使用することができるので、多くのボールの世代に対して少なくとも部分的に閉じた材料サイクルが確保され得る。リサイクル材料で作製されるボールの各新しい世代に対して、普通なら分離または廃棄する場合に発生するであろうエネルギーまたは温室効果ガス排出が削減され得る。従来のボールと比較すると、既存の構成要素が再使用され得るので、さらにエネルギーが節約される。リサイクルおよび新しいボールを新たに製造するために必要とされるエネルギーを考慮した場合でさえ、この方法で製造されるボールによる環境への影響は、新たに製造された様々な構成要素で作製される従来のボールの場合よりも相当に低い。
【0015】
少なくとも部分的に閉じた材料サイクルは、再使用されるベース材料を新規に製造された同じ材料クラスの材料と混合することも可能であることを意味する。この過程において、再使用材料(「リサイクレート(recyclate)」とも呼ばれる)は、新規に製造され使用された材料に加えられてもよい。例えば、新規に製造される材料の比率は、一貫した材料特性を確保するために、10%から50%、または15%から20%の範囲内であり得る。
【0016】
少なくとも1つの中間層が、緩衝層として配置され得る。少なくとも1つの緩衝層が設けられる場合、空気膨張式であってもよい下に位置するブラダは、衝撃および他の潜在的に有害な影響からより良く保護され得る。この方法では、ボールの寿命および安定性が著しく向上され得る。
【0017】
さらに、少なくとも1つの中間層は、パネルで作製され得る。そのようなパネルを製造するための例示的な方法が、独国特許出願公開第102015209797.8号明細書で開示されている。中間層をパネルとして提供することにより、この方法では適切な手段によっていくつかの部品が接合されるので、簡易な製造が可能になる。したがって、下に位置する層の周りに個々の層を製造する必要はない。そのようにして実現された簡易な製造により、より多くのエネルギーを節約することができる。
【0018】
ボールに使用される材料クラスは、熱可塑性ウレタン、TPU、ポリ塩化ビニル、PVC、ポリエチレン、PE、ポリアミド、PA、またはポリプロピレン、PPのうちの1つであり得る。包括的試験によれば、ボールの様々な構成要素(すなわち、ブラダ、少なくとも1つの中間層、および少なくとも1つの外側層)を製造するのに、述べられた材料または材料クラスが特に適していることが示された。この点に関して、熱可塑性ウレタンが有利であると照明されたが、熱可塑性ウレタンは、どのように処理されるかに応じて、最適に補完し合う多数の有利な特性を有する。
【0019】
さらに、主重量成分の第1の材料クラスの材料は、ボールのそれぞれの構成要素における第1の材料クラスの材料の重量成分の70%超、または80%超、または90%超、または95%超であることが規定されている。他の例では、ブラダ、少なくとも1つの中間層、および/または少なくとも1つの外側層は、基本的に同じ材料クラスの材料で構成される。ここで、「基本的に」という用語は、この技術分野において一般的な公差の範囲内で作用することが可能であることを意味する。
【0020】
少なくとも1つの中間層は、例えばいわゆるブースト技術(boost technology)に従って不規則に配置された粒子を含み得る。さらに、不規則に配置される粒子が発泡材料を含むことも考えられる。具体的には、発泡材料の粒子は、発泡熱可塑性ウレタン(eTPU、expanded thermoplastic urethane)を含み得る。一例として、独国特許出願公開第102015209795.1号明細書を参照する。述べられた粒子で緩衝層などの少なくとも1つの中間層が作製される技術が、特に有利な特性を有する。例えば、それらの性質により、不規則に配置される粒子が、特に良好なクッション性を持つボールをもたらし、それにより、下に位置するブラダへの悪影響がある程度緩和され得る。さらに、ベース材料のこの配置の特有の特性により、特に良好な反発性を得ることができる。
【0021】
さらに、少なくとも1つの中間層は、TPUヤーンで作製されてもよい。ヤーンを使用することにより、簡易な方法でボールのための中間層を製造することが可能になる。ヤーンは、下に位置する層に所望の形態で巻き付けられて、適切な方法によりその層に接合され得る。
【0022】
さらに、ボールは、少なくとも1つの保護層を備えることができ、少なくとも1つの保護層は、ブラダと少なくとも1つの中間層との間に配置される。少なくとも1つの保護層は、第1の材料クラスの材料で作製される。例えば、少なくとも1つの保護層は、熱可塑性のベース材料で作製され得る。特別に設けられた保護層により、ボールの構成要素は、衝撃力、熱、または湿気などの様々な外的影響から特に効果的に保護され得る。
【0023】
少なくとも1つの保護層は、複数の部品として設けられてもよい。例えば、個々の部品は、多角形、具体的には菱形の要素であってもよい。この方法では、少数の個別的な構成要素からボールを組み立てることが可能であり、それらの構成要素は、好ましくはリサイクルされるボールに由来し得る。
【0024】
少なくとも1つの保護層が不織布を含むことも可能である。不織材料により、ボールのブラダの保護がさらに向上され得る。したがって、ボールの全寿命が延長され、それにより環境への影響が軽減され得る。
【0025】
1つの実施形態では、少なくとも1つの外側層は、フォイルとして配置され得る。したがって、外側層は、少なくとも1つの中間層およびブラダなどの下に位置する全ての層のための保護を提供する。とりわけ、フォイルは、下に位置する層を湿気から保護することができるが、フォイルはまた、摩耗または他のタイプの損耗および裂傷に対する保護を提供するように構成(例えば、強化)され得る。別法として、またはさらに、外側層は、例えば、適切な着色顔料が加えられることにより、または意匠要素が印刷されることにより、意匠機能を果たすこともできる。いかなる場合でも、外側層(または、フォイル)のための材料は、簡易かつ環境に優しい再使用が保証されるように、他の層と同じ材料クラスに由来する。
【0026】
ブラダはまた、TPU繊維による繊維強化TPU母材を含み得ることに留意されたい。そのような材料を製造することの一例として、独国特許出願公開第102015209800.1号明細書を参照する。繊維強化母材として用意することにより、向上された安定性がもたらされ、したがってブラダの寿命が延長され得る。ここでは、ベース材料は他の層のための材料と同じであるので、この場合も同様に、ボールのこの構成要素の特に環境に適合する再使用が可能とされる。本発明では、「ブラダ」という用語はまた、前述の独国特許出願公開第102015209800.1号明細書で説明されるように、ガス詰め(例えば、弁を介する)により空気で満たされる必要のない3次元構造を含む。
【0027】
ボールはまた、格子構造として配置されるブラダを備えることができ、このブラダは、
径方向に延びる要素(以下、放射状に延在する要素
ともいう)を含む複数の格子セルを備える。このブラダを用意する態様はまた、特に寿命および再使用可能性に関して、ブラダの性質を向上させ得る。例えば、独国特許出願公開第102015209811.7号明細書で開示されているような構造が使用されてもよい。
【0028】
TPUの代替品として、ボールの構成要素のための第1のベース材料は、PVCまたはポリエチレンであってもよい。例えば、エーテル系TPUおよびエステル系TPUの両方を使用することが可能である。さらに、ポリプロピレン(PP)またはポリアミド(PA)も、材料として考慮される。TPUと同様に、これらの材料は、ボールの様々な層またはブラダを、それらが容易に再使用され得るように、製造することを可能にする。
【0029】
第1のベース材料は、別のブラダ、少なくとも1つの中間層、および/または外側層を製造するための第1のベース材料として使用可能であるように、ブラダ、少なくとも1つの中間層、および外側層のための統合リサイクル過程でリサイクルされるように構成されると、さらに有利である。本発明の重要な一態様は、別のボールを製造するためにボールの少なくとも一部を再使用(リサイクル)することに関する。例えば、それらの構成要素を新規に製造すること−これは、多量のエネルギー消費、資源消費、および温室効果ガス排出を伴う−を回避することが可能である。さらに、ボールを分解する必要はない。ボール全体が、ベース材料を回収するために、1つの統合リサイクル過程において処理され得る。リサイクル材料は、別のボールのためのベース材料になり得るが、異なるスポーツ用品(例えば、シューズまたはすね当て)のためのベース材料にもなり得る。基本的に、リサイクル材料は、任意の他のスポーツ用品を製造するためのベース材料にもなり得る。したがって、ボールが、本明細書で説明されるように以前に製造された別のボールからリサイクルされた部品を含み得る。
【0030】
本発明はまた、本明細書で説明される態様のうちの1つによるボールを製造するための方法に関する。具体的には、製造するための方法は、別のボールをリサイクルすることを含み得る。
【0031】
さらに、本発明はまた、本明細書で説明されるようなボールをリサイクルするための方法に関する。
【0032】
本発明の別の態様によれば、ボールが、本明細書で説明されるように、消費者に提供され得る。ボールが消費者によって使用された後、例えばボールのライフサイクルの後、製造業者はボールを引き取り得る。例えば、商店内、公園内、会場内、競技場内、またはスポーツイベントもしくは他の大きなイベント中に適切な返却ステーションが設けられてもよく、かつ/または、消費者は、ボールを製造業者に送り返す可能性を有する。次いで、製造業者は、ボールからベース材料を回収して、新たなボールを製造するためにそのベース材料の少なくとも一部を使用することができ、その新たなボールは、リサイクルされたベース材料を含む。上記ですでに説明したように、任意の(ボール以外の)スポーツ用品、例えばシューズ、すね当て、等の製造にリサイクル材料を使用することも可能である。様々な例によれば、使用したボールまたは物品をリサイクルのために製造業者に返却する動機を消費者に与えるために、新規のボールに割引券または割引率が提供され得る。消費者に定期的な(例えば、月々のまたは年々の)レンタル料が請求され、消費者が古いボールを返却したときに新しいボールを受け取る、レンタルモデルを開発することも考えられる。新しいボールが提供される頻度は、ボールのタイプおよび/または使用者(例えば、個人的な使用者またはスポーツクラブ)の使い方に依存し得る。この方法では、必要とされる交換頻度は、スポーツクラブの場合よりも個人的な競技者の場合の方が少なくなり得る。別の選択肢は、新規のボールのモデルが発売され次第消費者が交換品を受け取る、予約申し込みモデルである。
【0033】
本発明の別の態様によれば、消費者は、スポーツをしたいと思う場所でスポーツ用品を購入し得る。例えば、対応する自動販売機を運動場および/または公園に設置すること、および/または販売場所を設けることにより、本発明による様々なボールを供給または提供することが、有用であり得る。次いで消費者は、ボールを使用するために保証金を払うことができる。使用後、消費者は、ボールを返却して保証金を取り戻すことができる。別の方法では、消費者は、別のスポーツ用品を購入または借りることに対して割引を受けることもできる。一定期間の後にボールがもはや使用に適さなくなり次第、製造業者は、ボールをリサイクルするために必要なステップを直ちに開始して、古いボールの構成要素の少なくとも一部を基にして新しいボールを製造することができる。この手法は、もはや使用に適さないボールが、消費者の家に存在するのではなく製造業者の所に直接存在し、製造業者は、必要になり次第本明細書で説明されるようにリサイクルを引き受けることができるので、特に有利である。この方法では、不必要なエネルギー消費もしくは温室効果ガス排出をさらに回避または削減する、可能な限り効率的なリサイクル法が提供される。
【0034】
別の態様によれば、本発明によるボールに、マーカ、例えば無線自動識別(RFID)マーカまたは赤外線(IR)マーカが使用されてもよく、例えば、近赤外線(NIR)マーカが使用されてもよい。マーカは、ボールのベース材料がどのくらいの頻度で他のボールにすでに存在していたかを示すことができる。この方法では、消費者は、ベース材料が何回のライフサイクルをすでに経てきたかを直接知ることができる。さらに、マーカは、消費者の予約購入状態を示すこともできる。これは、完全に自動化されたボールの返却および交換を可能にするであろう。マーカは、ボール材料に組み込まれてその材料を複数の他の材料から識別可能にすることもできる。例えば、ボールのヤーンまたは別の構成要素にIRマーカを組み込むことが可能である。
【0035】
本明細書で説明される様々な態様は、ボール以外のスポーツ用品にも使用され得ることに留意されたい。
【0036】
本発明の可能な実施形態が、以下の図面を参照しながら以下の詳細な説明で説明される。