特許第6442465号(P6442465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442465
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】ボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 41/00 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   A63B41/00 BZAB
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-231965(P2016-231965)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-140362(P2017-140362A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2017年3月31日
(31)【優先権主張番号】10 2015 223 885.7
(32)【優先日】2015年12月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510204998
【氏名又は名称】アディダス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ハンス‐ペーター ニュルンゲルク
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2193908(EP,A2)
【文献】 特開昭54−138737(JP,A)
【文献】 米国特許第02623747(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0184105(US,A1)
【文献】 米国特許第06206795(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールであって、
a. 第1の材料クラスの材料から成る主重量成分を有するブラダと、
b. 少なくとも1つの中間層であって、ブラダの外側に配置され、また、第1の材料クラスの材料から成る主重量成分を有する、少なくとも1つの中間層と、
c. 少なくとも1つの外側層であって、少なくとも1つの中間層の外側に配置され、また、第1の材料クラスの材料から成る主重量成分を有する、少なくとも1つの外側層と、
を備え、
少なくとも1つの中間層が複数のパネルから成り、かつ緩衝層として配置され、
少なくとも1つの中間層が、不規則に配置された粒子を含む、
ボール。
【請求項2】
第1の材料クラスが、熱可塑性ウレタン、TPU、ポリ塩化ビニル、PVC、ポリエチレン、PE、ポリアミド、PA、またはポリプロピレン、PPのうちの1つである、請求項1に記載のボール。
【請求項3】
第1の材料クラスの材料から成る主重量成分が、前記ブラダ、前記中間層、及び外側層の各々における第1の材料クラスの材料の主重量成分の50%超である、請求項1又は2に記載のボール。
【請求項4】
不規則に配置された粒子が、発泡材料を含む、請求項に記載のボール。
【請求項5】
発泡材料の粒子が、発泡熱可塑性ウレタンを含む、請求項に記載のボール。
【請求項6】
少なくとも1つの中間層が、TPUヤーンで作製される、請求項1から3のいずれか一項に記載のボール。
【請求項7】
少なくとも1つの保護層をさらに備え、少なくとも1つの保護層が、ブラダと少なくとも1つの中間層との間に配置され、また、少なくとも1つの保護層が、第1の材料クラスの材料で作製される、請求項1からのいずれか一項に記載のボール。
【請求項8】
少なくとも1つの保護層が、複数の部品から成る、請求項に記載のボール。
【請求項9】
少なくとも1つの保護層が、不織布を含む、請求項またはに記載のボール。
【請求項10】
少なくとも1つの外側層が、フォイルとして配置される、請求項1からのいずれか一項に記載のボール。
【請求項11】
ブラダが、TPU繊維による繊維強化TPU母材を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のボール。
【請求項12】
ブラダが、格子構造として配置され、格子構造が、径方向に延びる要素を含む複数の格子セルを備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のボール。
【請求項13】
前記ブラダ、前記中間層、及び外側層のための第1の材料クラスが、PVCまたはポリエチレンである、請求項1またはからのいずれか一項に記載のボール。
【請求項14】
第1の基材をさらに含み、第1の基材が、ブラダ、少なくとも1つの中間層、および外側層のためにリサイクルされるように構成され、これにより、別のブラダ、少なくとも1つの中間層、および/または外側層を製造するための第1の基材として使用可能である、請求項1から13のいずれか一項に記載のボール。
【請求項15】
第1の基材をさらに含み、第1の基材が、請求項1から14のいずれか一項に記載の別のボールからリサイクルされた部品を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール、特にフットボールと、ボールの製造およびリサイクルのための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ボール、特にフットボールは一般に、ブラダ、緩衝のための層、および外側層などの、いくつかの層を含む。ブラダは通常、弁を通じて膨張させることができるが、緩衝層は主に、ボールが蹴られたときまたは弾むときに衝撃力を和らげる働きをする。緩衝層はまた、ボールの反発性(rebound property)への影響を有する。外側層は、一方では下に位置する層を保護する働きをし、他方ではグラフィック要素などの意匠特徴をボールに提供する働きをする。
【0003】
上記のようなボールを得るために、それぞれの構成要素は、通常、異なる材料で作製される。次いで、前述の構成要素は、適切な方法で、例えば、縫製、接着、または溶接によって、接合される。
【0004】
米国特許第5,580,049号明細書は、内側の膨張式ブラダ、ブラダの外側のカバー、およびブラダとカバーとの間のライナを含むボール(例えば、サッカーボール)を説明している。ブラダは、通常、ゴムまたはラテックスで構成され得るが、ポリウレタンで構成される場合もある。ライナはPVCヤーンで作製され得るが、カバーはポリウレタンを含む。各構成要素は、縫合され得る。
【0005】
米国特許第8,777,787(B2)号明細書は、いくつかの層、すなわち、ブラダ、中間層、およびカバーを含む、ボールに関する。カバーのための材料は、例えば、皮革またはポリウレタンであり得るが、ポリ塩化ビニルの場合もあり得る。中間層には、ポリマーフォーム材料が使用されるべきである。ブラダは、ゴムまたはラテックス材料で構成され得る。
【0006】
さらに、同じくボールについて説明している米国特許第7,699,726(B2)号明細書を参照する。ボールは、カバー、フォーム層、ラテックス層、織物層、およびブラダを含む。カバーのための材料として、例えば、皮革、ポリウレタン、またはポリ塩化ビニルが挙げられる。フォーム層は、ポリオレフィンフォームを含むことができ、ブラダは、ゴムまたはポリウレタンを含むことができる。次いで、それぞれの構成要素は、互いに接合される。
【0007】
しかし、ボールのそれぞれの構成要素、または対応する材料の製造は、驚くべき量のエネルギー(例えば、電気、熱、等)を必要とし、それにより、相当な温室効果ガス排出がもたらされる。そのことは別として、既知の方法でボールを製造するために、環境へのさらなる負担となる接着剤が使用される。さらに、ボールの寿命の終わり(例えば、過度の変形または材料の疲労によりボールが壊れたとき)にボールを確実に分解するために、かなりの努力が必要である。この点に関して、環境的側面の下でのそれぞれの構成要素または材料の処分を最適化するために、それらに対して特段の注意が払われるべきである。このことに対して、また、ボールを分解するために、エネルギーが必要とされる。このことも先と同様に、温室効果ガス排出をもたらす。しかしそれでもなお、他方では多くのボールが、ゴミ集積場または廃棄物焼却場に行き着く。これまで、この深刻化する問題に対してあまりにも注意が払われなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,580,049号明細書
【特許文献2】米国特許第8,777,787(B2)号明細書
【特許文献3】米国特許第7,699,726(B2)号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102015209797.8号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102015209795.1号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第102015209800.1号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102015209811.7号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、ボールのライフサイクル中の資源消費および温室効果ガス排出を制限するための手法を提供することが、本発明の根本的な目的と見なされ得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、請求項1に記載のボール、特にフットボールにより、少なくとも部分的に解決される。請求項1では、ボールはブラダを備え、このブラダは、主重量成分(majority weight component)の第1の材料クラスの材料を有する。ボールは、少なくとも1つの中間層をさらに備え、少なくとも1つの中間層は、ブラダの外側に配置され、また、少なくとも1つの中間層は、主重量成分の第1の材料クラスの材料を有する。ボールは、少なくとも1つの外側層をさらに備え、少なくとも1つの外側層は、少なくとも1つの中間層の外側に配置され、また、少なくとも1つの外側層は、主重量成分の第1の材料クラスの材料を有する。
【0011】
それぞれの主重量成分−さらには、それぞれの重量全体−が同じ材料クラスの材料で作製されているいくつかの層をボールに提供することにより、材料をボールから容易に回収することができ、それにより、個々の構成要素を分離および/または分類するための努力が著しく減少される。例えば、ボールは、単一のリサイクルステップにおいて処理され得る。したがって、本発明によるボールは、いくつかの層を含むボール全体が単一の材料クラスの材料で作製されている場合は特に、使用されたボールのリサイクルを大幅に単純化することができる。ボールの異なる層に対して同じ材料クラスの材料を使用して、専門的なものも含めてあらゆる要求に適合する優れた品質のボールを提供することは、そのようなボールを製造するために必要とされる様々な特性(例えば、形状復元性、弾性、防湿性(moisture repellence)、飛行挙動、反発性、外観、等)を提供するために異なる(物理的および化学的)形態(例えば、ヤーン、フォイル、フォーム、粒子、等)の同じ材料クラスの材料(例えば、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレン)を使用することができるという知識によって、可能とされる。具体的には、ボールの全ての構成要素に熱可塑性材料(例えば、熱可塑性ウレタン(TPU))を使用することにより、使用後に容易かつ効率的にリサイクルでき、したがってエネルギー消費および温室効果ガス排出の減少に貢献する、運動選手のための高品質のボールを製造することが可能になる。
【0012】
ボールが3つ未満の層を備え、使用される全ての層が、主重量成分の同じ材料クラスの材料を有することも、可能である。例えば、これは、ブラダを有さないボールであり得る。ボールが、ブラダおよびカバーで作製されるか、または構造化されたブラダおよびカバーを備えることも、可能である。
【0013】
ブラダ、少なくとも1つの中間層、および少なくとも1つの外側層に同じ材料クラスの材料を使用することにより、例えばエネルギーまたは熱を(例えば、溶接により)加えることによって容易に接合され得る親和性のある材料を使用することが可能である。1つの実施形態では、2つの表面が融合するようにそれらを加熱するために、赤外線放射熱が使用され得る。この方法では、接着剤を使用する必要がなく、それにより、環境への影響が軽減される。さらに、例えば分子の化学結合により、層と層との間に(例えば、本発明によるボールの他の構成要素と同じ材料クラスに由来する接着剤によって)化学結合が作り出され得る。
【0014】
ボールの2つの構成要素が、接着剤なしで、例えばエネルギーを加えることによって接合され得ることも、考えられる。この方法では、さらなるボールを製造するために同一のベース材料を回収し再使用することができるので、多くのボールの世代に対して少なくとも部分的に閉じた材料サイクルが確保され得る。リサイクル材料で作製されるボールの各新しい世代に対して、普通なら分離または廃棄する場合に発生するであろうエネルギーまたは温室効果ガス排出が削減され得る。従来のボールと比較すると、既存の構成要素が再使用され得るので、さらにエネルギーが節約される。リサイクルおよび新しいボールを新たに製造するために必要とされるエネルギーを考慮した場合でさえ、この方法で製造されるボールによる環境への影響は、新たに製造された様々な構成要素で作製される従来のボールの場合よりも相当に低い。
【0015】
少なくとも部分的に閉じた材料サイクルは、再使用されるベース材料を新規に製造された同じ材料クラスの材料と混合することも可能であることを意味する。この過程において、再使用材料(「リサイクレート(recyclate)」とも呼ばれる)は、新規に製造され使用された材料に加えられてもよい。例えば、新規に製造される材料の比率は、一貫した材料特性を確保するために、10%から50%、または15%から20%の範囲内であり得る。
【0016】
少なくとも1つの中間層が、緩衝層として配置され得る。少なくとも1つの緩衝層が設けられる場合、空気膨張式であってもよい下に位置するブラダは、衝撃および他の潜在的に有害な影響からより良く保護され得る。この方法では、ボールの寿命および安定性が著しく向上され得る。
【0017】
さらに、少なくとも1つの中間層は、パネルで作製され得る。そのようなパネルを製造するための例示的な方法が、独国特許出願公開第102015209797.8号明細書で開示されている。中間層をパネルとして提供することにより、この方法では適切な手段によっていくつかの部品が接合されるので、簡易な製造が可能になる。したがって、下に位置する層の周りに個々の層を製造する必要はない。そのようにして実現された簡易な製造により、より多くのエネルギーを節約することができる。
【0018】
ボールに使用される材料クラスは、熱可塑性ウレタン、TPU、ポリ塩化ビニル、PVC、ポリエチレン、PE、ポリアミド、PA、またはポリプロピレン、PPのうちの1つであり得る。包括的試験によれば、ボールの様々な構成要素(すなわち、ブラダ、少なくとも1つの中間層、および少なくとも1つの外側層)を製造するのに、述べられた材料または材料クラスが特に適していることが示された。この点に関して、熱可塑性ウレタンが有利であると照明されたが、熱可塑性ウレタンは、どのように処理されるかに応じて、最適に補完し合う多数の有利な特性を有する。
【0019】
さらに、主重量成分の第1の材料クラスの材料は、ボールのそれぞれの構成要素における第1の材料クラスの材料の重量成分の70%超、または80%超、または90%超、または95%超であることが規定されている。他の例では、ブラダ、少なくとも1つの中間層、および/または少なくとも1つの外側層は、基本的に同じ材料クラスの材料で構成される。ここで、「基本的に」という用語は、この技術分野において一般的な公差の範囲内で作用することが可能であることを意味する。
【0020】
少なくとも1つの中間層は、例えばいわゆるブースト技術(boost technology)に従って不規則に配置された粒子を含み得る。さらに、不規則に配置される粒子が発泡材料を含むことも考えられる。具体的には、発泡材料の粒子は、発泡熱可塑性ウレタン(eTPU、expanded thermoplastic urethane)を含み得る。一例として、独国特許出願公開第102015209795.1号明細書を参照する。述べられた粒子で緩衝層などの少なくとも1つの中間層が作製される技術が、特に有利な特性を有する。例えば、それらの性質により、不規則に配置される粒子が、特に良好なクッション性を持つボールをもたらし、それにより、下に位置するブラダへの悪影響がある程度緩和され得る。さらに、ベース材料のこの配置の特有の特性により、特に良好な反発性を得ることができる。
【0021】
さらに、少なくとも1つの中間層は、TPUヤーンで作製されてもよい。ヤーンを使用することにより、簡易な方法でボールのための中間層を製造することが可能になる。ヤーンは、下に位置する層に所望の形態で巻き付けられて、適切な方法によりその層に接合され得る。
【0022】
さらに、ボールは、少なくとも1つの保護層を備えることができ、少なくとも1つの保護層は、ブラダと少なくとも1つの中間層との間に配置される。少なくとも1つの保護層は、第1の材料クラスの材料で作製される。例えば、少なくとも1つの保護層は、熱可塑性のベース材料で作製され得る。特別に設けられた保護層により、ボールの構成要素は、衝撃力、熱、または湿気などの様々な外的影響から特に効果的に保護され得る。
【0023】
少なくとも1つの保護層は、複数の部品として設けられてもよい。例えば、個々の部品は、多角形、具体的には菱形の要素であってもよい。この方法では、少数の個別的な構成要素からボールを組み立てることが可能であり、それらの構成要素は、好ましくはリサイクルされるボールに由来し得る。
【0024】
少なくとも1つの保護層が不織布を含むことも可能である。不織材料により、ボールのブラダの保護がさらに向上され得る。したがって、ボールの全寿命が延長され、それにより環境への影響が軽減され得る。
【0025】
1つの実施形態では、少なくとも1つの外側層は、フォイルとして配置され得る。したがって、外側層は、少なくとも1つの中間層およびブラダなどの下に位置する全ての層のための保護を提供する。とりわけ、フォイルは、下に位置する層を湿気から保護することができるが、フォイルはまた、摩耗または他のタイプの損耗および裂傷に対する保護を提供するように構成(例えば、強化)され得る。別法として、またはさらに、外側層は、例えば、適切な着色顔料が加えられることにより、または意匠要素が印刷されることにより、意匠機能を果たすこともできる。いかなる場合でも、外側層(または、フォイル)のための材料は、簡易かつ環境に優しい再使用が保証されるように、他の層と同じ材料クラスに由来する。
【0026】
ブラダはまた、TPU繊維による繊維強化TPU母材を含み得ることに留意されたい。そのような材料を製造することの一例として、独国特許出願公開第102015209800.1号明細書を参照する。繊維強化母材として用意することにより、向上された安定性がもたらされ、したがってブラダの寿命が延長され得る。ここでは、ベース材料は他の層のための材料と同じであるので、この場合も同様に、ボールのこの構成要素の特に環境に適合する再使用が可能とされる。本発明では、「ブラダ」という用語はまた、前述の独国特許出願公開第102015209800.1号明細書で説明されるように、ガス詰め(例えば、弁を介する)により空気で満たされる必要のない3次元構造を含む。
【0027】
ボールはまた、格子構造として配置されるブラダを備えることができ、このブラダは、径方向に延びる要素(以下、放射状に延在する要素ともいう)を含む複数の格子セルを備える。このブラダを用意する態様はまた、特に寿命および再使用可能性に関して、ブラダの性質を向上させ得る。例えば、独国特許出願公開第102015209811.7号明細書で開示されているような構造が使用されてもよい。
【0028】
TPUの代替品として、ボールの構成要素のための第1のベース材料は、PVCまたはポリエチレンであってもよい。例えば、エーテル系TPUおよびエステル系TPUの両方を使用することが可能である。さらに、ポリプロピレン(PP)またはポリアミド(PA)も、材料として考慮される。TPUと同様に、これらの材料は、ボールの様々な層またはブラダを、それらが容易に再使用され得るように、製造することを可能にする。
【0029】
第1のベース材料は、別のブラダ、少なくとも1つの中間層、および/または外側層を製造するための第1のベース材料として使用可能であるように、ブラダ、少なくとも1つの中間層、および外側層のための統合リサイクル過程でリサイクルされるように構成されると、さらに有利である。本発明の重要な一態様は、別のボールを製造するためにボールの少なくとも一部を再使用(リサイクル)することに関する。例えば、それらの構成要素を新規に製造すること−これは、多量のエネルギー消費、資源消費、および温室効果ガス排出を伴う−を回避することが可能である。さらに、ボールを分解する必要はない。ボール全体が、ベース材料を回収するために、1つの統合リサイクル過程において処理され得る。リサイクル材料は、別のボールのためのベース材料になり得るが、異なるスポーツ用品(例えば、シューズまたはすね当て)のためのベース材料にもなり得る。基本的に、リサイクル材料は、任意の他のスポーツ用品を製造するためのベース材料にもなり得る。したがって、ボールが、本明細書で説明されるように以前に製造された別のボールからリサイクルされた部品を含み得る。
【0030】
本発明はまた、本明細書で説明される態様のうちの1つによるボールを製造するための方法に関する。具体的には、製造するための方法は、別のボールをリサイクルすることを含み得る。
【0031】
さらに、本発明はまた、本明細書で説明されるようなボールをリサイクルするための方法に関する。
【0032】
本発明の別の態様によれば、ボールが、本明細書で説明されるように、消費者に提供され得る。ボールが消費者によって使用された後、例えばボールのライフサイクルの後、製造業者はボールを引き取り得る。例えば、商店内、公園内、会場内、競技場内、またはスポーツイベントもしくは他の大きなイベント中に適切な返却ステーションが設けられてもよく、かつ/または、消費者は、ボールを製造業者に送り返す可能性を有する。次いで、製造業者は、ボールからベース材料を回収して、新たなボールを製造するためにそのベース材料の少なくとも一部を使用することができ、その新たなボールは、リサイクルされたベース材料を含む。上記ですでに説明したように、任意の(ボール以外の)スポーツ用品、例えばシューズ、すね当て、等の製造にリサイクル材料を使用することも可能である。様々な例によれば、使用したボールまたは物品をリサイクルのために製造業者に返却する動機を消費者に与えるために、新規のボールに割引券または割引率が提供され得る。消費者に定期的な(例えば、月々のまたは年々の)レンタル料が請求され、消費者が古いボールを返却したときに新しいボールを受け取る、レンタルモデルを開発することも考えられる。新しいボールが提供される頻度は、ボールのタイプおよび/または使用者(例えば、個人的な使用者またはスポーツクラブ)の使い方に依存し得る。この方法では、必要とされる交換頻度は、スポーツクラブの場合よりも個人的な競技者の場合の方が少なくなり得る。別の選択肢は、新規のボールのモデルが発売され次第消費者が交換品を受け取る、予約申し込みモデルである。
【0033】
本発明の別の態様によれば、消費者は、スポーツをしたいと思う場所でスポーツ用品を購入し得る。例えば、対応する自動販売機を運動場および/または公園に設置すること、および/または販売場所を設けることにより、本発明による様々なボールを供給または提供することが、有用であり得る。次いで消費者は、ボールを使用するために保証金を払うことができる。使用後、消費者は、ボールを返却して保証金を取り戻すことができる。別の方法では、消費者は、別のスポーツ用品を購入または借りることに対して割引を受けることもできる。一定期間の後にボールがもはや使用に適さなくなり次第、製造業者は、ボールをリサイクルするために必要なステップを直ちに開始して、古いボールの構成要素の少なくとも一部を基にして新しいボールを製造することができる。この手法は、もはや使用に適さないボールが、消費者の家に存在するのではなく製造業者の所に直接存在し、製造業者は、必要になり次第本明細書で説明されるようにリサイクルを引き受けることができるので、特に有利である。この方法では、不必要なエネルギー消費もしくは温室効果ガス排出をさらに回避または削減する、可能な限り効率的なリサイクル法が提供される。
【0034】
別の態様によれば、本発明によるボールに、マーカ、例えば無線自動識別(RFID)マーカまたは赤外線(IR)マーカが使用されてもよく、例えば、近赤外線(NIR)マーカが使用されてもよい。マーカは、ボールのベース材料がどのくらいの頻度で他のボールにすでに存在していたかを示すことができる。この方法では、消費者は、ベース材料が何回のライフサイクルをすでに経てきたかを直接知ることができる。さらに、マーカは、消費者の予約購入状態を示すこともできる。これは、完全に自動化されたボールの返却および交換を可能にするであろう。マーカは、ボール材料に組み込まれてその材料を複数の他の材料から識別可能にすることもできる。例えば、ボールのヤーンまたは別の構成要素にIRマーカを組み込むことが可能である。
【0035】
本明細書で説明される様々な態様は、ボール以外のスポーツ用品にも使用され得ることに留意されたい。
【0036】
本発明の可能な実施形態が、以下の図面を参照しながら以下の詳細な説明で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態によるボールの概略的な構造を示す図である。
図2】本発明の一実施形態によるボールの層の詳細な構造を示す図である。
図3】本発明の一実施形態によるボールの層の詳細な構造を示す図である。
図4】本発明の一実施形態によるボールの層の詳細な構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明のいくつかの可能な実施形態のみが以下に詳述されることに留意されたい。しかし、特定の実施形態に関して説明された具体的詳細は、様々な態様で修正、発展、組み合わせられ得るかまたは他の方法で変更もしくは省略され得ることを、当業者は認識するであろう。さらに、以下の態様のうちの様々なものが、上記の本発明の概要に記載の態様と組み合わせられ得ることに留意されたい。
【0039】
最初に、図1は、ブラダ10の一部を示す。1つの実施形態では、ブラダ10は、TPU繊維40で強化されたTPU母材50であり得る。適切な材料を製造する方法が、独国特許出願公開第102015209800.1号明細書で説明されている。そのような内部材料で強化された繊維強化母材を基礎とするブラダ10はまた、3次元的であると見なされ得る。3次元的な複合品、具体的にはボールのためのブラダ10を製造するための対応する方法は、以下の諸ステップ、すなわち、(a.)回転可能な型を用意するステップと、(b.)型に第1の材料を充填するステップと、(c.)型に第2の材料を充填するステップと、(d.)型を動かすステップと、(e.)製造される複合品内での第2の材料の一様な分散を達成するために、先行するステップのうちの1つまたは幾つかを実行している間に少なくとも1つの方法パラメータを適合させるステップと、を含むことができ、第1および第2の材料のうちの少なくとも一方は、ポリマー材料である。この点において、述べられた2つの材料のそれぞれは、同一のベース材料(例えば、TPU、PVC、PP、PA、またはPE)を基礎とするものである。
【0040】
充填ポリマー材料が熱可塑性材料(例えば、TPU)である場合、充填材料は、加熱および/または冷却されることが好ましい。前述の材料は、加熱されると溶融し、それによりキャリア材料または母体材料を形成する。第2の材料は、例えば繊維(例えば、TPU繊維)であってもよく、回転成形の後に第1のキャリア材料に組み込まれ、あるいは第1のキャリア材料の表面の広範囲にわたって付着する。
【0041】
別の実施形態では、ブラダ10はまた、TPU構造によって形成され得る。対応する製造方法が、独国特許出願公開第102015209811.7号明細書で開示されている。この点において、ブラダ10が、複数のパネルを含む表面層、および、表面層の下で延在する格子構造を備える。格子構造は、放射状に延在する要素を含む、複数の格子セルを備える。少なくとも表面層に隣接して配置された格子セルは、パネルの平均直径よりも小さい直径を少なくとも有する。このようにして、ブラダ10またはボールは、膨張式のブラダ10と同様に、一様な弾性および安定性を備えることができる。したがって、そのようにして製造されるブラダ10は、従来の膨張式のブラダではなく、格子構造のものである。そのようにして製造される構造は、TPU、PVC、PP、PAまたはPEなどのベース材料で作製され得る。
【0042】
さらに、図1に示された実施形態では、第1の中間層20が配置される。中間層20は、緩衝層として配置され得る。1つの実施形態では、この緩衝層は、TPUフォームで作製され得る。別の実施形態では、この緩衝層はまた、TPUヤーンで作製され得る。
【0043】
図2を参照すると、TPU繊維で強化されたTPU母材をブラダ100が含まない一実施形態が説明されている。この実施形態では、ブラダ100の上に中間層120が配置され得る。この中間層120は、保護層として配置され得る。1つの実施形態では、保護層は、不織布で作製されてブラダ100上に積層され得る。1つの実施形態では、不織布は、菱形片(例えば、ブラダ100のためのカバーとしての2つのストリップ層)で作製され得る。本明細書で説明されるように、ボールが、さらなる層として緩衝層125(例えば、eTPU、または本明細書で述べられる他の材料のもの)および外側層130を含み得る。
【0044】
1つの実施形態では、緩衝層125および外側層130は、単一の層230に置き換えられ得る。この場合、前述の単一の層は、一体的なフォームとして配置され得る。これは、図3を参照して説明される。ここでは、ブラダ200、および緩衝層220として配置された層は、図2を参照して上記で説明されたように設けられる。しかし、図2とは異なり、緩衝層125として配置される中間層、および外側層130は、一体的なフォーム230に置き換えられている。前述の一体的なフォーム230は、1つの単一要素において緩衝特性および耐摩耗性(abrasion protection)を提供する。
【0045】
1つの実施形態では、一体的なフォーム層はまた、複合ブラダ300に組み合わせられ得る。これはまた、図4に概略的に表されている。ここでは、一体的なフォームとして上側に配置される層330が、複合ブラダ300上に直接配置されている。本明細書で使用されるような一体的なフォームは、例えば、いわゆる「MuCell法(MuCell procedure)」によって製造され得る。
【0046】
いずれの場合においても、緩衝層は、複数のパネルとして設けられ得る。そのようなパネルを製造するための可能な方法が、例えば独国特許出願公開第102015209797.8号明細書で開示されている。1つの実施形態では、パネルを製造するための方法は、少なくとも1つの第1の型部分および1つの第2の型部分を有する型内に、外側および内側を有するキャリア材料を用意するステップを含む。キャリア材料の外側上には、型内でパネルの外側層が3次元的に成形される。加えて、キャリア材料の内側上には、少なくとも第1の型部分を使用して、パネルの内側層が3次元的に成形される。この方法は、ボールのための3次元成形パネルを最小数の製造ステップで製造することを可能にする。複数の要素を別々に成形してからそれらの成形された要素を互いに付着させる必要はない。
【0047】
パネルを一体的に製造することにより、この方法は、接合剤、接着剤、等を完全に不要にすることができる。パネルの個々の層を継合するために、別個の接着剤が塗布される必要はない。パネルの個々の層に使用される材料は、相互に親和性があり、いくつかの実例によれば、熱エネルギーおよび/または力学的エネルギーだけによって継合され得る。さらに、使用される材料を化学反応によって継合することも可能である。使用される材料の親和力により、接合が可能とされる。しかし、製造されるパネルにとって好都合であるならば、接着剤、接合剤、等が代わりに使用され得る。そのようなパネルを製造するためには、例えば、TPU、PVC、またはPEが使用され得る。
【0048】
図1に示された実施形態では、外側層30がさらに設けられる。前述の外側層30は、象嵌要素または装飾要素として配置され得る。外側層30が保護層として配置される場合、下にある全ての層は、湿気または熱などの環境の影響から効率的に保護され得るが、摩耗からも効率的に保護され得る。さらに、外側層30を使用することにより、下にある層に色成分を提供しなくとも、ボールをデザインすることに対して多くの可能性が提供される。
【0049】
以下において、本発明の理解を促進するために、さらなる例を説明する。
【0050】
1. ボール、特にフットボールであって、
a. 主重量成分の第1の材料クラスの材料を有するブラダ(10)と、
b. 少なくとも1つの中間層(20)であって、ブラダ(10)の外側に配置され、また、主重量成分の第1の材料クラスの材料を有する、少なくとも1つの中間層(20)と、
c. 少なくとも1つの外側層(30)であって、少なくとも1つの中間層(20)の外側に配置され、また、主重量成分の第1の材料クラスの材料を有する、少なくとも1つの外側層(30)と、
を備える、ボール。
【0051】
2. 少なくとも1つの中間層(20)が緩衝層として配置される、例1に記載のボール。
【0052】
3. 少なくとも1つの中間層(20)がパネルで作製される、例1または2に記載のボール。
【0053】
4. 第1の材料クラスが、熱可塑性ウレタン、TPU、ポリ塩化ビニル、PVC、ポリエチレン、PE、ポリアミド、PA、またはポリプロピレン、PPのうちの1つである、例1から3のいずれか一項に記載のボール。
【0054】
5. 主重量成分の第1の材料クラスの材料が、ボールのそれぞれの構成要素における第1の材料クラスの材料の重量成分の50%超、好ましくは70%超、さらに好ましくは80%超、なおもさらに好ましくは90%超、特に好ましくは95%超である、例1から4のいずれか一項に記載のボール。
【0055】
6. 少なくとも1つの中間層(20)が、不規則に配置された粒子を含む、例1から5のいずれか一項に記載のボール。
【0056】
7. 不規則に配置された粒子が、発泡材料を含む、例6に記載のボール。
【0057】
8. 発泡材料の粒子が、発泡熱可塑性ウレタンを含む、例7に記載のボール。
【0058】
9. 少なくとも1つの中間層が、TPUヤーンで作製される、例1から5のいずれか一項に記載のボール。
【0059】
10. 少なくとも1つの保護層をさらに備え、少なくとも1つの保護層が、ブラダと少なくとも1つの中間層(20)との間に配置され、また、少なくとも1つの保護層が、第1の材料クラスの材料で作製される、例1から9のいずれか一項に記載のボール。
【0060】
11. 少なくとも1つの保護層が、複数の部品として設けられる、例10に記載のボール。
【0061】
12. 少なくとも1つの保護層が、不織布を含む、例7または8に記載のボール。
【0062】
13. 少なくとも1つの外側層(30)が、フォイルとして配置される、例1から12のいずれか一項に記載のボール。
【0063】
14. ブラダ(10)が、TPU繊維による繊維強化TPU母材を含む、例1から13のいずれか一項に記載のボール。
【0064】
15. ブラダ(10)が、格子構造として配置され、格子構造が、放射状に延在する要素を含む複数の格子セルを備える、例1から14のいずれか一項に記載のボール。
【0065】
16. ボールの構成要素のための第1の材料クラスが、PVCまたはポリエチレンである、例1から3または7から10のいずれか一項に記載のボール。
【0066】
17. 第1のベース材料をさらに含み、第1のベース材料が、別のブラダ(10)、少なくとも1つの中間層(20)、および/または外側層を製造するための第1のベース材料として使用可能であるように、ブラダ(10)、少なくとも1つの中間層(20)、および外側層(30)のため統合リサイクル過程においてリサイクルされるように構成される、例1から16のいずれか一項に記載のボール。
【0067】
18. 第1のベース材料をさらに含み、第1のベース材料が、例1から17のいずれか一項に記載の別のボールからリサイクルされた部品を含む、例1から17のいずれか一項に記載のボール。
【0068】
19. 例1から18のいずれか一項に記載のボールを製造するための方法。
【0069】
20. 別のボールをリサイクルすることを含む、例1から19のいずれか一項に記載のボールを製造するための方法。
【0070】
21. 例1から20のいずれか一項に記載のボールをリサイクルするための方法。
【0071】
図面に示されたまたは上記で説明された構成要素の様々な配置、ならびに図示または説明されていない構成要素およびステップが、考えられる。同様に、いくつかの特徴および部分的組み合わせが有用であり、かつ、他の特徴および部分的組み合わせに関係なく用いられ得る。本発明の実施形態は、実例として、制限する目的ではなく説明されたが、代替的な実施形態が、この特許の読者には明らかになるであろう。したがって、本発明は、上記で説明されたまたは図面に示された実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態および修正形態が、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく作成され得る。
【符号の説明】
【0072】
10 ブラダ
20 中間層
40 TPU繊維
50 TPU母材
100 ブラダ
120 中間層
125 緩衝層
130 外側層
200 ブラダ
220 緩衝層
230 単一の層
300 複合ブラダ
330 層
図1
図2
図3
図4