(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442466
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】セラミックマトリクス複合材(CMC)シートの成形システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/12 20060101AFI20181210BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20181210BHJP
B23K 26/402 20140101ALI20181210BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20181210BHJP
B23K 26/18 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
B28B11/12
B23K26/38 Z
B23K26/402
B23K26/073
B23K26/18
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-236360(P2016-236360)
(22)【出願日】2016年12月6日
(65)【公開番号】特開2017-124604(P2017-124604A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年2月16日
(31)【優先権主張番号】14/974,047
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ホンチャン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ロバート・ハヤシ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・キン−フェイ・リー
(72)【発明者】
【氏名】ニティン・ガーグ
(72)【発明者】
【氏名】ノーラン・リーアンダー・クーシノー
(72)【発明者】
【氏名】デリック・ウェイン・ノッツ
【審査官】
永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−248593(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0121265(US,A1)
【文献】
特開2008−155283(JP,A)
【文献】
特開2006−136913(JP,A)
【文献】
特開平6−170822(JP,A)
【文献】
特開平8−174244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B11/00−11/24
B23K26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面(110)及び第2の面(212)を有するセラミックマトリクス複合材(CMC)シート(102)を所定の形状に成形するための方法(400)であって、
CMCシート(102)の所定の形状に関連づけられた切断パターンと一致する複数のスロットを有するプレート(302)を用意するステップと、
前記プレート(302)の上に前記CMCシート(102)を載置するステップと、
前記CMCシート(102)の前記所定の形状及びタイプを表す入力信号を受信するステップ(402)と、
前記受信した入力信号に基づいて、レーザビーム(122)を選択するステップ(404)と、
前記選択されたレーザビーム(122)をCMCシート(102)上に投射して、前記CMCシート(102)を前記所定の形状に成形するステップ(406)と、
前記プレート(302)の下に難燃性構造体を設けるステップと
を含む方法(400)。
【請求項2】
選択されたレーザビーム(122)が、1μs未満の幅及び/又は200nm〜11000nmの範囲の波長を有する複数の短いレーザパルスを含む、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項3】
前記プレート(302)は、アルミニウムプレートである、請求項1又は請求項2に記載の方法(400)。
【請求項4】
識別されたビームプロファイルが、トップハット型ビームプロファイルを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
さらに、選択されたレーザビーム(122)をCMCシート(102)上に投射する前に、CMCシート(102)の第1の面(110)及び第2の面(212)にポリマーフィルム(208)を適用するステップを含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法(400)。
【請求項6】
前記プレート(302)の下に排気チャンバ又は真空チャンバが配置されたワークテーブル部(300)を有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
CMCシート(102)の実質的な熱変形なしで、CMCシート(102)を所定の形状に成形する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の方法(400)。
【請求項8】
セラミックマトリクス複合材(CMC)シート(102)を所定の形状に成形するためのシステムであって、
レーザ装置(106)と、
CMCシート(102)を載置するためのワークテーブル部(300)と
を含み、
前記ワークテーブル部(300)は、ベースプレート(304)と、該ベースプレート(304)の上面に配置されたプレート(302)とを備え、
前記プレート(302)は、前記CMCシート(102)の所定の形状に関連づけられた切断パターンと一致する複数のスロットを有し、
前記レーザ装置(106)は、
前記CMCシート(102)の前記所定の形状及びタイプを表す入力信号を受信するように構成されたユーザインターフェース(112)と、
前記ユーザインターフェース(112)に接続され、前記受信した入力信号に基づいて、レーザビーム(122)を選択するように構成されたプロセッサ(114)と、
前記プロセッサ(114)に接続され、前記選択されたレーザビーム(122)を前記CMCシート(102)上に投射するように構成されたビーム生成部であって、前記CMCシート(102)を前記所定の形状に成形する、ビーム生成部(118)と、
前記プレート(302)の下に位置づけられた難燃性構造体と
を備える、システム。
【請求項9】
さらに、プロセッサ(114)に接続され、複数のビームプロファイルを記憶するように構成されたメモリ(116)を備えていて、プロセッサ(114)が、受信した入力信号に基づいて、複数のビームプロファイルから1つのビームプロファイルを選択するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プレート(302)がアルミニウムプレートである、請求項8乃又は9に記載のシステム。
【請求項11】
さらに、ビーム生成部(118)に接続され、生成されたレーザビーム(122)をCMCシート(102)の上で1つ以上の方向に案内するように構成されたガスノズル(120)を備える、請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
プロセッサ(114)は、200nm〜700nmの範囲の波長及び/又は1μs未満のパルス持続時間を有するレーザビーム(122)を選択するように構成されている、請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記ワークテーブル部(300)は、前記プレート(302)の下に設けられた排気チャンバ又は真空チャンバを有する、請求項8乃至12のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、概して、セラミックマトリクス複合材(CMC)シートに関し、より詳しくは、CMCシートを所定の形状に成形するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMC材料は、その優れた耐亀裂性又は破壊靭性によって、例えば航空機の翼、ファンケーシング及び航空機の胴体、自動車産業、海運産業等の複合構造体を製造するために、シート形状で用いられる。一般に、CMCシートは、繊維プライ材料製である。一実施例では、CMCシートは、複合構造体の強度を最大限にするために、様々な角度で複合構造体の面の上を覆うテープとして用いられる。構造体の強度及び品質を改善するために、CMC材料を所定の形状で構造体上に配置することが望ましい。一般的には、テープを構造体の面の上に予め定義されたパターンで繰り返し巻き、構造体上にレイアップが形成されるまでテープの層を蓄積する。
【0003】
従来のシステムでは、機械的工具を用いて、複合構造体を製造するために望ましい1つ以上の所定の形状に、CMCシートを切断する。一実施例では、CMCシートを切断する機械的工具としてダイヤモンド砥石を用いる。より詳しくは、ダイヤモンド砥石をCMCシート上に物理的に置き、ダイヤモンド砥石に機械的な力を加えてCMCシートを切断する。しかし、CMCシート上のこの機械的な力によって、繊維の摩耗及び/又は繊維の変形が生じる場合があり、延いては、CMCシートから切断される所定の形状のサイズ及び/又は形状に、望ましくないばらつきが生じる可能性がある。状況によっては、CMCシートのサイズ及び/又は形状におけるこのばらつきは、CMCシート/CMCシートの所定の形状を有する構造体を採用しているシステムの設計公差要件を満たさない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0315999号明細書
【発明の概要】
【0005】
本明細書の態様に従って、第1の面及び第2の面を有するセラミックマトリクス複合材(CMC)シートを成形するための方法が提供される。方法は、CMCシートの所定の形状及びタイプを表す、入力信号を受信することを含む。さらに、方法は、受信した入力信号に基づいて、レーザビームを選択することを含む。また、方法は、選択されたレーザビームをCMCシート上に投射して、CMCシートを所定の形状に成形することを含む。
【0006】
本明細書のさらなる態様に従って、セラミックマトリクス複合材(CMC)シートを成形するためのレーザ装置が提供される。レーザ装置は、CMCシートの所定の形状及びタイプを表す入力信号を受信するように構成された、ユーザインターフェースを含む。さらに、レーザ装置は、ユーザインターフェースに接続され、かつ受信した入力信号に基づいてレーザビームを選択するように構成された、プロセッサを含む。また、レーザ装置は、プロセッサに接続され、かつ選択されたレーザビームをCMCシート上に投射して、CMCシートを所定の形状に成形するように構成された、ビーム生成部を含む。
【0007】
本明細書の別の態様に従って、セラミックマトリクス複合材(CMC)シートを所定の形状に成形するためのシステムが提供される。システムは、第1の面及び第2の面を有するCMCシートを支持するように構成されたベースプレートを含み、ベースプレートは、CMCシートの第2の面に接続されている。さらに、システムは、CMCシートの所定の形状及びタイプを表す入力信号を受信するように構成されたユーザインターフェースを含んでいる、レーザ装置を含む。また、レーザ装置は、ユーザインターフェースに接続され、かつ受信した入力信号に基づいてレーザビームを選択するように構成された、プロセッサを含む。さらに、レーザ装置は、プロセッサに接続され、かつ選択されたレーザビームをCMCシートの第1の面に投射するように構成されて、CMCシートを所定の形状に成形する、ビーム生成部を含む。
【0008】
本発明のこれらの、並びに他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むとよりよく理解されよう。添付の図面では、図面の全体にわたって、類似する符号は類似する部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書の態様による、セラミックマトリクス複合材(CMC)シートを成形するための、レーザベースのシステムの概略図である。
【
図2】本明細書の一実施形態による、
図1のレーザベースのシステムに用いられる、ワークテーブル部の概略図である。
【
図3】本明細書の別の実施形態による、
図1のレーザベースのシステムに用いられる、ワークテーブル部の概略図である。
【
図4】本明細書の態様による、CMCシートを成形するための、例示的な方法を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に詳細に説明するように、セラミックマトリクス複合材(CMC)材料製のシートを成形するための、例示的なシステム及び方法の様々な実施形態が提供される。CMC材料は、セラミックマトリクス内に配置されている、セラミック繊維を含む。CMC材料は、「セラミック繊維強化セラミック」(CFRC)又は「繊維強化セラミック」(FRC)と呼ばれることもある。特に、CMCシートは、CMCシートの摩耗又は変形が最小限又は皆無で、所定の形状に成形される。
【0011】
ここで図面に移り、
図1を参照すると、本明細書の態様による、セラミックマトリクス複合材(CMC)シート102を成形するためのレーザベースのシステム100の概略図が示されている。レーザベースのシステム100は、CMCシート102の上に1つ以上のレーザビーム122を投射して、CMCシート102を所定の形状に成形又は切断するように構成されている。なお、所定の形状は、ユーザが所望する任意の形状であってもよい。一実施例では、CMCシート102は、炭化ケイ素材料、又は複数の繊維を有する炭素繊維材料であってもよい。なお、「CMCシート」及び「CMCプライ材料」という用語は、本出願の全体にわたって区別なく用いられ得る。一実施形態では、CMCシート102は、1つ以上の複合構造体を製造するために用いられる、プリプレグのプライテープとして用いられてもよい。一実施例では、CMCシート102は、約0.005インチ〜約0.010インチの範囲の厚さを有してもよい。
【0012】
目下企図される構成では、レーザベースのシステム100は、ワークテーブル部104及びレーザ装置106を含む。動作時に、CMCシート102は、レーザ装置106がCMCシート102を所定の形状に成形するように、ワークテーブル部104上に配置される。
図1に示すように、ワークテーブル部104は、1つ以上の保持構成要素(図示せず)を備える、ベースプレート108を含む。保持構成要素は、CMCシート102をベースプレート108に固定するために用いられてもよい。CMCシート102は、ベースプレート108の第1の面110上に置かれる。一実施例では、CMCシート102は、ベースプレート108の上に張られるか、又は置かれる、薄いテープであってもよい。ベースプレート108に加えて、ワークテーブル部104は、CMCシート102の成形中に発生した粒子又は煙霧を回収するための、排気チャンバ又は真空チャンバを含んでもよい。また、真空チャンバは、CMCシート102を通過しているレーザビーム122の焦点位置を維持するために用いられる。加えて、真空チャンバは、CMCシート102の成形中に、CMCシート102がガスノズル120の下の安定した位置に確実に留まるようにしてもよい。なお、ワークテーブル部104は、
図2及び
図3を参照してより詳細に説明される、例えば難燃性構造体及び/又はアルミニウム(Al)プレート等、他の構成要素を含んでもよい。
【0013】
さらに、レーザ装置106は、ワークテーブル部104から予め定義された高さに位置づけられてもよい。レーザ装置106は、ユーザインターフェース112、プロセッサ114、メモリ116、ビーム生成部118及びガスノズル120を含んでもよい。なお、レーザ装置106は、例えばセンサ及びアクチュエータ等、他の構成要素を含んでもよく、
図1に示した構成要素に限定されるものではない。さらに、ユーザインターフェース112は、ユーザから1つ以上の入力信号を受信するために用いられてもよい。これらの入力信号は、ユーザが所望するCMCシート102の所定の形状を表してもよい。また、これらの入力信号は、CMCシート102のタイプを表してもよい。一実施例では、CMCシート102のタイプは、CMCシート102の厚さ、CMCシート102のテクスチャ、及び/又はCMCシート102の剛性を含んでもよい。一実施形態では、ユーザは、遠隔装置又は無線装置を用いて、ユーザインターフェース112に入力信号を送信してもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、プロセッサ114は、ユーザインターフェース112に電気的に接続され、ユーザインターフェース112からこれらの入力信号を受信するように構成されている。プロセッサ114は、受信した入力信号を処理又は計算し、受信した入力信号に基づいて、レーザビームを選択してもよい。一実施例では、メモリ116は、複数のビームプロファイルを記憶してもよく、各々のビームプロファイルは、ユーザが所望するCMCシートのタイプ及び/又はCMCシートの所定の形状に関連づけられてもよい。さらに、プロセッサ114は、入力信号に対応するビームプロファイルを識別してもよい。
図1の実施形態では、識別されたビームプロファイルは、トップハット型ビームプロファイルを含んでもよい。一実施例では、トップハット型ビームプロファイルは、レーザビームの焦点に均一なエネルギー分布と鋭利な縁部とを有するビームプロファイルと呼ぶことができる。一実施例では、レーザビームは、1μs未満の幅を有する複数の短いレーザパルスを含んでもよい。また、これらの短いレーザパルスは、約200nm〜約11000nmの範囲の波長を有してもよい。一実施形態では、緑色のレーザ波長はCMCシート102によって容易に吸収されるため、緑色のレーザビームを用いてCMCシート102を切断する。さらに、ビーム生成部118は、識別されたビームプロファイルに関連づけられているレーザビーム122を生成してもよい。一実施例では、識別されたビームプロファイルは、CMCシート102に鋭利な切断縁部をもたらし、CMCシート102の熱損傷を少なくする。一実施例では、鋭利な切断縁部は、レーザビーム122を用いてCMCシート102を切断した後に形成される、CMCシート102の縁部と呼ぶことができる。これらの鋭利な切断縁部は、CMCシート102の一定の倍率下においても、繊維の摩耗が無視できる程度であるか、又は繊維の摩耗がない可能性がある。
【0015】
ビーム生成部118は、プロセッサ114に電気的に接続され、生成されたレーザビームをCMCシート102上に投射するように構成されて、CMCシート102を所定の形状に切断又は成形してもよい。特に、ビーム生成部118は、レーザビームをガスノズル120に送信し、次にガスノズル120が、CMCシート102の上にレーザビームを投射してもよい。一実施例では、ビーム生成部118及びガスノズル120の間にファイバケーブルを接続して、ビーム生成部118からガスノズル120にレーザビームを送信してもよい。また、ガスノズル120をCMCシート102の上で1つ以上の方向に移動させて、CMCシート102を所定の形状に切断してもよい。一実施例では、他の支持構造体と共に、1つ以上のアクチュエータ及びセンサを用いて、ガスノズル120をCMCシート102の上で1つ以上の方向に移動してもよい。
【0016】
さらに、投射されたレーザビームは、CMCシート102によって吸収されて、CMCシート102に切断部を作り出してもよい。また、投射されたレーザビームは、CMCシート102に鋭利な切断縁部を作り出してもよい。レーザビームを用いてCMCシート102を切断するため、CMCシート102には機械的な切断力が発生しない。また、レーザビームのユーザにとって、材料の変形、チッピング及び/又は繊維分割がないか、又は無視できる程度でCMCシート102を切断することができるため、CMCシート102の切断形状は、厳密な公差内に維持される。一実施例では、レーザビームは、+/−0.002μインチの寸法公差内で、CMCシートを決定された形状に切断するように構成される。
【0017】
一実施形態では、レーザビームを用いて、CMCシート102を非常に高速に切断してもよい。一実施例では、レーザビームは、約0.5in/s〜約5in/sの範囲の速度で、CMCシート102を切断してもよい。適切な切断速度は、切断時間を最短化し、決定された形状の鋭利な切断縁部を向上させるために望ましい。CMCシート102を所定の形状に切断又は成形する際に、CMCシート102は、ワークテーブル部104から取り除かれてもよく、1つ以上の用途に用いられてもよい。
【0018】
有利なことに、例示的なレーザベースのシステム100を採用することによって、いかなる機械的な力もなしで、CMCシート102を所定の形状に切断することができるため、CMCシート102の材料の変形、チッピング及び/又は繊維分割を避けることができる。さらに、例示的なレーザベースのシステム100は、従来の切断ツールに比べてより短い持続時間で、CMCシートを成形することができる。例として、CMCシートの成形に必要な持続時間は、従来の切断ツールよりも2倍又は3倍速い。
【0019】
図2を参照すると、本明細書の一実施形態による、ワークテーブル部200の概略図が示されている。ワークテーブル部200は、ベースプレート204及びCMCシート206の間に難燃性構造体202が位置づけられていることを除いて、
図1のワークテーブル部104と同様である。また、
図2の実施形態では、CMCシート206の第1の面210及び第2の面212にポリマーフィルム208が適用されて、CMCシート206上にレーザビーム214が投射される際に、CMCシート206の望ましくない動きを最小限にするか、又は防止する。さらに、CMCシート206上のポリマーフィルム208は、CMCシート206の成形中に、CMCシート206の汚染を防止するように構成される。特に、レーザビーム214を用いてCMCシート206を切断している間に、CMCシート206の繊維は、特に切断部の縁部で、汚染される可能性がある。一実施例では、CMCシート206のこの汚染は、CMCシート206の第2の面212で解決可能である。CMCシート206の汚染を最小限にするか、又は防止するために、CMCシート206の第1の面210及び第2の面212に、ポリマーフィルム208が適用される。一実施形態では、ポリマーフィルム208は、約0.001インチ〜約0.004インチの範囲の厚さを有する、ポリエステルフィルム又はプラスチックフィルムを含んでもよい。一実施例では、ポリエステルフィルムは、透明なマイラーフィルムである。ポリマーフィルム208は、CMCシート206を1つ以上の位置からロード及び/又はアンロードする間に、ユーザがCMCシートを保持又は移動するのに役立ってもよい。さらに、CMCシート206を成形及び/又はアンロードした後、ポリマーフィルム208をCMCシート206の第1の面210及び/又は第2の面212から除去してもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、CMCシート206の第2の面212に隣接して、難燃性構造体202を配置してもよい。難燃性構造体202を用いて、CMCシート206の第2の面212における切断損傷を最小限にしてもよい。特に、難燃性構造体202は、レーザビームによって発生する高熱に耐えることが可能なハニカム構造体である。一実施例では、難燃性構造体202は、アルミニウム(Al)ハニカム構造体及び/又はノーメックスハニカム構造体を含んでもよく、これらはレーザビームによって発生した熱を吸収することによって、CMCシート206の第2の面212における切断損傷を最小限にするために用いられる。
【0021】
図3を参照すると、本明細書の別の実施形態による、ワークテーブル部300の概略図が示されている。ワークテーブル部300は、ベースプレート304及びCMCシート306の間にアルミニウム(Al)プレート302が位置づけられていることを除いて、
図2のワークテーブル部200と同様である。必要に応じて、難燃性構造体がAlプレート302の下に位置づけられてもよい。
【0022】
例示的な実施形態では、Alプレート302は、CMCシート306の所定の形状に関連づけられた切断パターンと一致する、複数のスロットを有してもよい。さらに、CMCシート306の切断パターンの上にレーザビーム314が投射される時、レーザビーム314は、Alプレート302の対応するスロットを通過し、ベースプレート304に到達する。また、Alプレート302は、優れた熱伝導体であるため、Alプレート302は、ハニカム構造の下を加熱するレーザによって発生した熱を吸収してもよい。これは、延いてはCMCシート306の汚染を最小限にする。また、Alプレート302は、CMCシート306の切断縁部に沿った熱損傷を最小限にすることができる。さらに、ベースプレートの下に配置された排気チャンバ又は真空チャンバを利用して、CMCシート306の処理又は成形中に発生する粒子又は煙霧を、ベースプレート304から除去又は放散させてもよい。
【0023】
図4を参照すると、本明細書の態様に従って、CMCシートを成形又は切断するための例示的な方法400を図示する、フローチャートが示されている。理解しやすくするため、
図1〜
図3の構成要素を参照して、方法400を説明する。方法はステップ402で開始され、CMCシート102の決定された形状及びタイプを表す入力信号が、プロセッサ114によって受信される。一実施例では、CMCシート102のタイプは、CMCシートの厚さ、CMCシートのテクスチャ、及び/又はCMCシートの剛性を含んでもよい。例として、ユーザは、CMCシート102の決定された形状及びタイプを表す入力信号を、ユーザインターフェース112を介して、プロセッサ114に送信してもよい。
【0024】
続いて、ステップ404では、受信した入力信号に基づいて、プロセッサ114によってレーザビームが選択される。この目的のために、レーザ装置106内のプロセッサ114は、受信した入力信号を処理し、受信した入力信号に基づいてレーザビームを選択してもよい。例えば、プロセッサ114は、入力信号に対応するビームプロファイルを識別してもよい。一実施形態では、識別されたビームプロファイルは、トップハット型ビームプロファイルを含んでもよい。さらに、ビーム生成部118は、識別されたビームプロファイルに対応するレーザビームを生成してもよい。一実施例では、識別されたビームプロファイルに対応して生成されたレーザビームは、CMCシート102に鋭利な切断縁部をもたらし、熱損傷を少なくする。
【0025】
加えて、ステップ406では、生成されたレーザビームが、CMCシート102上に投射されて、CMCシート102を所定の形状に切断又は成形する。この目的のために、ビーム生成部118を用いて、生成されたレーザビームをCMCシート102上に投射する。特に、ビーム生成部118は、生成されたレーザビームをガスノズル120に送信し、次にガスノズル120が、CMCシートの上にレーザビームを投射してもよい。また、ガスノズル120をCMCシートの上で1つ以上の方向に移動させて、CMCシートを所定の形状に切断してもよい。一実施例では、識別されたビームプロファイルに対応するレーザビームは、CMCシート102に鋭利な切断縁部をもたらし、熱損傷を最小限又は無視できる程度にする。
【0026】
有利なことに、様々な実施形態では、レーザビームを用いることによって、CMCシートの機械的摩耗又は熱変形がないか、又は最小限で、CMCシートを決定された形状に切断又は成形する。さらに、CMCシートを成形又は切断するのに適したレーザビームを用いることによって、CMCシート102に鋭利な切断縁部をもたらし、熱損傷を最小限又は皆無にする。また、CMCシートの成形に必要な持続時間は、従来の切断ツールよりも2倍又は3倍速い。
【0027】
本明細書では、本発明のいくつかの特徴だけを図示し説明してきたが、当業者には多くの修正及び変更が生じる可能性がある。したがって、添付の特許請求の範囲は、かかる修正及び変更のすべてを本発明の真の趣旨の範囲内に含まれるものとして包含することを意図することを理解されたい。
【符号の説明】
【0028】
100 システム
102 セラミックマトリクス複合材(CMC)シート
104 ワークテーブル部
106 レーザ装置
108 ベースプレート
110 第1の面
112 ユーザインターフェース
114 プロセッサ
116 メモリ
118 ビーム生成部
120 ガスノズル
122 レーザビーム
200 ワークテーブル部
202 難燃性構造体
204 ベースプレート
206 CMCシート
208 ポリマーフィルム
210 第1の面
212 第2の面
214 レーザビーム
300 ワークテーブル部
302 アルミニウム(Al)プレート
304 ベースプレート
306 CMCシート
314 レーザビーム
400 方法
402 ステップ
404 ステップ
406 ステップ