特許第6442472号(P6442472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6442472外科処置に備えて手術室内で複数の対象物を手配するためのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442472
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】外科処置に備えて手術室内で複数の対象物を手配するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20181210BHJP
【FI】
   A61B34/20
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-501163(P2016-501163)
(86)(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公表番号】特表2016-512073(P2016-512073A)
(43)【公表日】2016年4月25日
(86)【国際出願番号】US2014023154
(87)【国際公開番号】WO2014159350
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月10日
(31)【優先権主張番号】61/779,725
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506410062
【氏名又は名称】ストライカー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】モクテスマ・デ・ラ・バレラ,ホセ・ルイス
(72)【発明者】
【氏名】マラコウスキー,ドナルド・ダブリュー
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−137904(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0161052(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0073136(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0275957(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0060278(US,A1)
【文献】 米国特許第07302288(US,B1)
【文献】 特表2011−502672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科処置情報に従って手術室において複数の対象物(44、46、48)を配置するためのシステムであって、
ディスプレイ(28、29)及び制御ユニット(26)を有するガイダンスステーション(20)と、
前記ガイダンスステーション(20)との通信が可能であり、患者に関連付けられることになる複数の生体組織追跡デバイス(44、46)と
を備え、
前記ガイダンスステーション(20)は、
前記外科処置情報を受信し、
前記外科処置情報に基づいて、前記患者に対する複数の生体組織追跡デバイス(44、46)の各々に関する所望の配置を決定し、
前記複数の生体組織追跡デバイス(44、46)の各々に関する前記所望の配置に従って前記手術室における前記患者に対する前記複数の生体組織追跡デバイス(44、46)の各々に関する配置をガイドするものである、システム。
【請求項2】
前記ガイダンスステーション(20)は更に、
前記患者の第1の骨(F)に関する、前記複数の生体組織追跡デバイス(44、46)のうちの第1の生体組織追跡デバイス(44)の配置をガイドし、
前記患者の第2の骨(T)に関する、前記複数の生体組織追跡デバイス(44、46)のうちの第2の生体組織追跡デバイス(46)の配置をガイドし、
前記第1及び第2の骨(F、T)に関する前記第1及び第2の生体組織追跡デバイス(44、46)の所望の配置の表現を表示することと、
前記第1及び第2の生体組織追跡デバイス(44、46)と光学式センサ(40)との間の照準線の遮断を回避するために、前記第1及び第2の生体組織追跡デバイス(44、46)の配置をガイドすることと
の少なくとも一方を行うものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ガイダンスステーション(20)は更に、
前記外科処置情報に基づいて前記手術室におけるロボットマニピュレータ(56)の所望の配置を決定し、前記ロボットマニピュレータ(56)は、骨を切断するための器具(22)と、前記ガイダンスステーション(20)と通信可能な器具追跡デバイス(48)とを備えており、
前記ロボットマニピュレータ(56)の所望の配置に従い、前記患者に対する処置の前に、前記手術室における前記ロボットマニピュレータ(56)の配置をガイドし、
前記ロボットマニピュレータ(56)の所望の配置の表現を表示するものである、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記外科処置情報は更に、切断対象の骨の情報と、前記骨に取り付けられることになる所望のインプラントの情報とを含み、
前記ガイダンスステーション(20)は更に、ユーザに対する指示を前記ディスプレイ(28、29)に表示するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記ガイダンスステーション(20)は更に、
前記第1及び第2の生体組織追跡デバイス(44、46)の所望の配置を基準とした、前記第1及び第2の骨(F、T)にある前記第1及び第2の生体組織追跡デバイス(44、46)の実際の配置におけるエラーをチェックし、
前記エラーが所定の許容範囲内にあるかどうかを判定するものである、請求項2と請求項2を引用する請求項3及び4とのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ガイダンスステーション(20)は更に、
前記第1の骨(F)及び前記第2の骨(T)の画像に対して、前記第1及び第2の生体組織追跡デバイス(44、46)の位置合わせを行い、
前記第1及び第2の生体組織追跡デバイス(44、46)と前記ガイダンスステーション(20)の検知デバイス(40)との間の照準線のエラーを検出し、
照準線のエラーが検出されたときに、前記第1及び第2の生体組織追跡デバイス(44、46)を移動又は再位置決めするための指示を表示するものである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ガイダンスステーション(20)は更に、
前記ディスプレイ(28、29)に所望の手術室レイアウトを表示することを行うものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ガイダンスステーション(20)は更に、前記第1及び第2の生体組織追跡デバイス(44、46)のいずれか又は両方の実際の配置が前記所定の許容範囲内にない場合に、前記第1及び第2の生体組織追跡デバイス(44、46)のいずれか又は両方の再位置決めをガイドするものである、請求項5と請求項5を引用する請求項6及び7とのいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、外科処置(surgical procedure)に備えて手術室内で複数の対象物を手配するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2013年3月13日に出願された米国仮特許出願第61/779,725号に基づく優先権及び利益を主張するものである。この仮特許出願の全内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
外科処置を開始する前に、手術室内で多くの対象物を適切に手配する必要がある。このような対象物には、機器、患者、手術要員、器具などが含まれる。処置が始まる前における手術室内でのこれらの対象物の適切な手配は、外科処置が不必要な遅延無く進められることを確実にするのに役立つ。従来、対象物は、手術室レイアウトを含みうる、書かれたプロトコルと、実施される特定の処置に関する、書かれた指示とに基づいて手配される。
【0004】
一部の外科処置では、検知デバイス(例えば、追跡カメラ、磁界センサ等)及び追跡デバイス等のナビゲーション機器は、処置を開始する前に手配する必要がある。ナビゲーションシステムは、こうしたナビゲーション機器を使用して、ユーザが対象物の位置の特定を支援する。例えば、ナビゲーションシステムは、外科医が、患者の生体組織(anatomy)に対して手術器具を正確に配置することを支援する。ナビゲーションシステムが使用される外科には、神経外科及び整形外科が含まれる。通常、器具及び生体組織は、ディスプレイ上に示されるそれらの相対的な動きとともに追跡される。
【0005】
ナビゲーションシステムは、光信号、音波、磁界、RF信号等を用いて、対象物の位置及び向きの少なくとも一方を追跡することができる。追跡デバイスは、追跡される対象物に取り付けられる。検知デバイスを含むローカライザは、追跡デバイスと協働して、追跡デバイスの位置を決定し、最終的には、対象物の位置及び向きの少なくとも一方を決定する。ナビゲーションシステムは、追跡デバイスを通して対象物の移動を監視する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くのナビゲーションシステムは、追跡デバイスと検知デバイスとの間の、遮られていない照準線(line-of-sight)に依存している。照準線が遮断されると、追跡デバイスから送信された信号を検知デバイスが受信できない。結果として、エラーが発生する場合がある。通常、この状況では、ナビゲーションが中断され、照準線が回復するか又はシステムがリセットされるまでエラーメッセージがユーザに送られる。これは、外科処置に対して遅延をもたらす可能性がある。磁界の検知に依存するような他のタイプのナビゲーションシステムでは、追跡デバイス及び検知デバイスの少なくとも一方の配置に関してエラーが発生する可能性がある。例えば、磁界内の金属は、追跡される対象物の位置及び向きの少なくとも一方を決定する際に不正確さをもたらす可能性がある。
【0007】
結果的に、本分野において、考えられるエラーを減らせるようにするために、追跡デバイス及び検知デバイスの少なくとも一方の手配を支援するシステム及び方法が求められている。本分野において、実施される特定の処置に基づき手術室内で他の対象物を手配するために、そのようなシステム及び方法を使用することも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、外科処置に備えて手術室における複数の対象物を手配するためのシステムが提供される。本システムは、ディスプレイ及び制御ユニットを有するガイダンスステーションを備えている。複数の対象物のうちの第1の対象物に、ガイダンスステーションとの通信が可能な追跡要素が関連付けられていることにより、第1の対象物を追跡することができる。ガイダンスステーションの制御ユニットは、処置情報に基づいて複数の対象物に関する所望の配置を決定する。その後、制御ユニットは、所望の配置に従って複数の対象物の配置をガイドする。
【0009】
他の実施形態によれば、ディスプレイを有するガイダンスステーションを使用して手術室における複数の対象物を手配する方法が提供される。本方法は、ガイダンスステーションに外科処置情報を提供するステップを含む。本方法は更に、処置情報に基づいて複数の対象物に関する所望の配置を決定するステップを含む。複数の対象物のうちの少なくとも1つの対象物は、ガイダンスステーションとの通信が可能な追跡要素を有している。所望の配置に従って、複数の対象物の配置がガイドされる。
【0010】
これらの実施形態の1つの利点は、効率的な方法で、また、実施される特定の処置に基づいて、手術室における対象物の手配を容易なものとすることにより、その特定の処置のための所望の位置に対象物を配置できるということである。
【0011】
添付図面とともに以下の詳細な説明を参照することにより本発明がより良く理解されるにつれて、本発明の利点も容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ロボットマニュピレータとともに使用されるガイダンスステーションの斜視図である。
図2】ガイダンスステーションと追跡デバイスとポインタと機械加工ステーションとの説明図である。
図3.4.5】図3は、術前プランを作成し、該術前プランをシステムにロードするために実行されるステップのフロー図である。図4は、ガイダンスステーションによって行われるステップのフロー図である。図5は、手術室内で対象物を手配することを支援するためにガイダンスステーションによって行われるステップのフロー図である。
図5A.5B】図5Aは、カメラユニットの配置に関する指示を提供するORセットアップソフトウェアモジュールからのスクリーンショットの説明図である。図5Bは、カメラユニットの配置に関する指示を提供するORセットアップソフトウェアモジュールからの別のスクリーンショットの説明図である。
図5C.5D】図5Cは、患者の配置に関する指示を提供するORセットアップソフトウェアモジュールからのスクリーンショットの説明図である。図5Dは、トラッカの配置に関する指示を提供するORセットアップソフトウェアモジュールからのスクリーンショットの説明図である。
図5E】トラッカの配置に関する指示を提供するORセットアップソフトウェアモジュールからの別のスクリーンショットの説明図である。
図6】右きき用の手術室レイアウトの一例の平面図である。
図7】左きき用の手術室レイアウトの一例の平面図である。
図8.9】図8は、患者に対してトラッカを配置する際に行われるステップのフロー図である。図9は、機械加工ステーションを配置する際に行われるステップのフロー図である。
図9A】機械加工ステーションの配置に関する指示を提供するORセットアップソフトウェアモジュールからのスクリーンショットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
手術室内で複数の対象物を手配するためのシステム及び方法が開示される。図1及び図2に示しているように、一実施形態では、システムは、ガイダンスステーション20と、種々の対象物に関連付けられる追跡要素とを有している。追跡要素は、ガイダンスステーション20と通信し、対象物を追跡することができる。処置情報は、ガイダンスステーション20に提供される。処置情報は、術前の手術プランから得ることができ、及び/又は、術中に提供することができる。処置情報(例えば、処置される生体組織の特定、処置のタイプ、例えば、人工股関節置換手術(hip replacement surgery)あるいは全体的又は部分的な人工膝関節置換手術(total or partial knee replacement surgery)、インプラントのタイプ・サイズ、患者情報、外科医の好み等)に基づいて、ガイダンスステーション20は、対象物の所望の配置を決定するステップと、その所望の配置に従って対象物を配置するよう外科要員をガイドするステップとを行う。このシステム及び方法の1つの利点は、手術室内でのセットアップ時間を減少させ、外科処置の効率を向上させることである。
【0014】
図1には、医療施設内の手術室におけるガイダンスステーション20を示している。ガイダンスステーション20は、手術室における様々な対象物の動きを追跡するようにセットアップされる。そのような対象物には、例えば、外科用器具22と、大腿骨Fと、脛骨Tとが含まれる。ガイダンスステーション20は、外科医に対するこれらの対象物の相対的な位置及び向きを表示するために、そして場合によっては、所定の経路又は生体組織の境界を基準として外科用器具22の動きを制御又は制限するために、これらの対象物を追跡する。ガイダンスステーション20はまた、以下で更に説明するように、外科処置を開始する前及び手術中の少なくとも一方において、手術室内でこれらの対象物及び他の対象物を手配することを支援する。
【0015】
ガイダンスステーション20は、ナビゲーションコンピュータ26又は他のタイプの制御ユニットを収容したコンピュータカートアセンブリ24を備えている。ナビゲーションインタフェースは、ナビゲーションコンピュータ26と通信できるようになっている。このナビゲーションインタフェースは、滅菌野(sterile field)の外部に位置する第1のディスプレイ28と、滅菌野の内部に位置する第2のディスプレイ29とを備えている。ディスプレイ28、29は、コンピュータカートアセンブリ24に調整可能に取り付けられている。キーボード及びマウス等の、第1及び第2の入力デバイス30、32は、情報をナビゲーションコンピュータ26に入力するために用いることもできるし、ナビゲーションコンピュータ26の幾つかの態様を別の方法で選択・制御するために用いることができる。タッチスクリーン(不図示)又は音声起動を有する他の入力デバイスも考えられる。
【0016】
ローカライザ34は、ナビゲーションコンピュータ26と通信する。図示した実施形態では、ローカライザ34は、光学式ローカライザであり、カメラユニット36(センシングデバイスとも呼ぶ)を備えている。カメラユニット36は、1つ又は複数の光学式センサ40を収容する外部ケーシング38を有している。幾つかの実施形態では、少なくとも2つの光学式センサ40、好ましくは3つ以上の光学式センサが用いられる。これらの光学式センサ40は、3つの別々の電荷結合素子(charge-coupled device, CCD)とすることができる。1つの実施形態では、3つの1次元CCDが用いられる。他の実施形態では、別々のカメラユニットを手術室内で手配することもできることが理解されるべきである。ここで、各カメラユニットは、別々の1つのCCD又は2つ以上のCCDを有している。CCDは、赤外線(infrared, IR)信号を検出する。
【0017】
カメラユニット36は、調整可能なアームに取り付けられている。そして、後述するトラッカの視野(field of view)に理想的には障害物のない状態で光学式センサ40が位置決めされるようになっている。調整可能なアームは、少なくとも自由度1で、幾つかの実施形態では、2以上の自由度でカメラユニット36の調整を可能にするものである。
【0018】
カメラユニット36はカメラコントローラ42を備えている。このカメラコントローラ42は、光学式センサ40と通信して光学式センサ40から信号を受信する。カメラコントローラ42は、有線接続又は無線接続(不図示)のいずれかを通じてナビゲーションコンピュータ26と通信する。1つのそのような接続は、高速通信及びアイソクロナス型(isochronous)リアルタイムデータ転送のためのシリアルバスインタフェース規格であるIEEE1394インタフェースとすることができる。接続は、企業独自のプロトコルを用いることもできる。他の実施形態では、光学式センサ40は、ナビゲーションコンピュータ26と直接通信する。
【0019】
位置及び向きの信号及びデータの少なくとも一方は、対象物を追跡するためにナビゲーションコンピュータ26に送られる。ディスプレイ28、29、及びカメラユニット36は、2010年5月25日に発行された、Malackowskiらに対する「Surgery System」という名称の米国特許第7,725,162号に記載されたものと同様のものとすることができる。この米国特許の内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。
【0020】
ナビゲーションコンピュータ26は、パーソナルコンピュータ又はラップトップコンピュータとすることができる。ナビゲーションコンピュータ26は、ディスプレイ28、29と、中央処理ユニット(central processing unit, CPU)及び他のプロセッサの少なくとも一方と、メモリ(不図示)と、記憶装置(不図示)とを有している。ナビゲーションコンピュータ26には、以下で説明するようなソフトウェアがロードされる。このソフトウェアは、カメラユニット36から受信した信号・データを、追跡対象物の位置及び向きを表すデータに変換するものである。
【0021】
ガイダンスステーション20は、本明細書においてトラッカとも呼ばれる複数の追跡デバイス44、46、48と通信する。図示の実施形態では、1つのトラッカ44は、患者の大腿骨Fに強固に取り付けられ、別のトラッカ46は、患者の脛骨Tに強固に取り付けられている。トラッカ44、46は、骨部分に強固に取り付けられている。トラッカ44、46は、米国特許第7,725,162号に示されている方法により大腿骨F及び脛骨Tに取り付けることができる。この米国特許の内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。トラッカ44、46はまた、「Tracking Devices and Navigation Systems and Methods for Use Thereof」という名称の2013年1月16日に出願された米国仮特許出願第61/753,219号に示されているトラッカと同様に取り付けることができる。この仮特許出願の内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。別の実施形態では、トラッカが、膝蓋骨(不図示)に取り付けられて、当該膝蓋骨の位置及び向きが追跡される。更なる実施形態では、トラッカ44、46は、生体組織の他の組織タイプ又は組織部分に取り付けることができる。
【0022】
器具トラッカ48は、外科用器具22に強固に取り付けられている。器具トラッカ48は、製造時に外科用器具22に組み込むこともできるし、外科処置の準備の際に外科用器具22に別個に取り付けることもできる。器具トラッカ48によって追跡される外科用器具22の作業端は、回転バー(rotating bur)、電気アブレーションデバイス(electrical ablation device)などとすることができる。
【0023】
トラッカ44、46、48は、内部バッテリを用いたバッテリ駆動式とすることもできるし、カメラユニット36のように好ましくは外部から電力を受けるナビゲーションコンピュータ26を通して電力を受けるリード線を有するものとすることもできる。
【0024】
図示した実施形態では、外科用器具22は、機械加工ステーション56のエンドエフェクタである。このような装置は、「Surgical Manipulator Capable of Controlling a Surgical Instrument in either a Semi-Autonomous Mode or a Manual, Boundary Constrained Mode」という名称の米国仮特許出願第61/679,258号に示されている。この米国仮特許出願の開示内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。機械加工ステーション56のモバイルカート57に別個のトラッカ(不図示)を取り付けて、カート57の移動を追跡することができる。あるいは、ガイダンスステーション20は、位置エンコーダ等のジョイント部位置センサ(joint position sensor)(不図示)により、カート57の位置を決定することができる。これは、器具トラッカ48の位置及び向きに基づくものであるとともに、機械加工ステーション56に対する器具トラッカ48の接続が強固であることによる。
【0025】
ローカライザ34の光学式センサ40は、トラッカ44、46、48から光信号を受信する。図示した実施形態では、トラッカ44、46、48は、能動型トラッカである。この実施形態では、各トラッカ44、46、48は、光信号を光学式センサ40に送る少なくとも3つの能動型追跡要素又はマーカを有している。能動型マーカは、例えば、赤外線等の光を伝える発光ダイオードすなわちLED50とすることができる。光学式センサ40は、好ましくは100Hz以上、より好ましくは300Hz以上、最も好ましくは500Hz以上のサンプリングレートを有する。幾つかの実施形態では、光学式センサ40は、8000Hzのサンプリングレートを有する。このサンプリングレートは、光学式センサ40が、順次点灯されたLED50から光信号を受信するレートである。幾つかの実施形態では、LED50からの光信号は、トラッカ44、46、48によって異なったレートで点灯される。
【0026】
図2に示しているように、各LED50は、関連付けられたトラッカ44、46、48のハウジング(不図示)内に位置するトラッカコントローラ62に接続されている。このトラッカコントローラは、ナビゲーションコンピュータ26との間でデータを送受信する。1つの実施形態では、トラッカコントローラ62は、ナビゲーションコンピュータ26との有線接続を通じてほぼ数メガバイト/秒程度でデータを送信する。他の実施形態では、無線接続を用いることができる。これらの実施形態では、ナビゲーションコンピュータ26は、トラッカコントローラ62からデータを受信する送受信機(不図示)を有する。
【0027】
他の実施形態では、トラッカ44、46、48は、カメラユニット36から出された光を反射する反射器等の受動型マーカ(不図示)を有するものとすることができる。そして、反射光は、光学式センサ40により受け取られる。能動型追跡要素及び受動型追跡要素は、当該技術分野においてよく知られている。
【0028】
ナビゲーションコンピュータ26は、ナビゲーションプロセッサ52を有している。カメラユニット36は、トラッカ44、46、48内のLED50から光学信号を受け、ローカライザ34を基準としたトラッカ44、46、48内のLED50の位置に関する信号をプロセッサ52に出力する。受信した光学信号に基づいて、ナビゲーションプロセッサ52は、ローカライザ34を基準としたトラッカ44、46、48の相対的な位置及び向きを示すデータを生成する。幾つかの実施形態では、トラッカ44、46、48は、「Tracking Devices and Navigation System and Methods for Use Thereof」という名称の2013年1月16日に出願された米国仮特許出願第61/753,219号に示されているトラッカ等のように、ジャイロスコープセンサ60及び加速度計70を更に有している。この米国仮特許出願の内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。
【0029】
ナビゲーションプロセッサ52は、ナビゲーションコンピュータ26の動作を制御する1つ又は複数のプロセッサを含むことができるということが理解されるべきである。プロセッサは、任意のタイプのマイクロプロセッサシステム又はマルチプロセッサシステムとすることができる。プロセッサという用語は、本発明の範囲を単一のプロセッサに限定することを意図したものではない。
【0030】
LED50の位置と、患者の生体組織及び外科用器具22に関する前もってロードされたデータとに基づいて、ナビゲーションプロセッサ52は、作業端が適用される組織(例えば、大腿骨F及び脛骨T)を基準とした、外科用器具22の位置及び向きを決定する。前もってロードされるデータは、外科処置の前に撮影されたMRI画像、CTスキャン等を含む術前画像に関するデータを含む。前もってロードされるデータはまた、外科用器具22の作業端と器具トラッカ48上のLED50との間の幾何学的関係を含む。位置合わせ(registration)及び座標系変換のためのよく知られているナビゲーション手法を使用して、患者の生体組織及び外科用器具22の作業端が、ローカライザ34の座標基準フレーム(coordinate reference frame)に対して位置合わせがなされるようにすることができる。これにより、LED50を使用して、作業端及び生体組織をともに追跡することができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、ナビゲーションプロセッサ52は、位置及び向きの少なくとも一方のデータをマニピュレータコントローラ54に送る。そして、マニピュレータコントローラ54は、「Surgical Manipulator Capable of Controlling a Surgical Instrument in either a Semi-Autonomous Mode or a Manual, Boundary Constrained Mode」という名称の米国仮特許出願第61/679,258号に記載されているように、このデータを使用して機械加工ステーション56を制御することができる。この米国仮特許出願の開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0032】
ナビゲーションプロセッサ52は、手術部位に対する外科用器具作業端の相対的な位置を示す画像信号も生成する。これらの画像信号は、ディスプレイ28、29に適用される。ディスプレイ28、29は、これらの信号に基づいて画像を生成する。これらの画像により、外科医及び外科要員は、手術部位に対する外科用器具作業端の相対的な位置を視認することができる。ディスプレイ28、29は、上述したように、コマンドのエントリを可能にするタッチスクリーン又は他の入力・出力デバイスを含むことができる。
【0033】
図2に示しているように、ローカライゼーションエンジン100は、ガイダンスステーション20の一部とみなすことのできるソフトウェアモジュールである。ローカライゼーションエンジン100のコンポーネントは、ナビゲーションプロセッサ52上で動作する。本発明の幾つかの形態では、ローカライゼーションエンジン100は、マニピュレータコントローラ54上で動作することができる。
【0034】
ローカライゼーションエンジン100は、カメラコントローラ42からの光学ベースの信号と、幾つかの実施形態におけるトラッカコントローラ62からの非光学ベースの信号とを入力として受け取る。これらの信号に基づいて、ローカライゼーションエンジン100は、ローカライザ座標系においてトラッカ44、46、48の姿勢を決定する。ローカライゼーションエンジン100は、トラッカ44、46、48の姿勢を表す信号を座標変換器102に送る。座標変換器102は、ナビゲーションプロセッサ52上で動作するナビゲーションシステム用ソフトウェアモジュールである。座標変換器102は、患者の術前画像と患者トラッカ44、46との間の関係を定めたデータを参照する。座標変換器102は、器具トラッカ48を基準とした外科用器具の作業端の姿勢を示すデータも記憶する。
【0035】
次に、座標変換器102は、器具作業端が適用される組織(例えば、骨)を基準とした外科用器具22の作業端の位置及び向きを示すデータを生成する。これらのデータを示す画像信号は、ディスプレイ28、29に送られ、外科医及び外科要員がこの情報を見ることが可能となる。このデータの中断を回避するため、トラッカ44、46、48とセンサ40との間の照準線(line-of-sight)が維持される。照準線が遮断されると、エラーが発生することがある。
【0036】
ガイダンスステーション20は、外科処置の際に手術室で使用されるトラッカ44、46、48等の対象物の手術前及び手術中の少なくとも一方における配置を支援するように構成されている。ガイダンスステーション20は、対象物の手配に関する指示を提供して、処置の効率を促進し、外科処置時におけるナビゲーションについて考えられる妨害を減少させる。ガイダンスステーション20からの指示に従って手配され得る他の対象物は、限定はされないが、患者、機械加工ステーション56、外科要員、カメラユニット36、他の器具、機器、又はステーション、及びその他同様のものを含むことができる。ガイダンスステーション20から提供される指示は、実施される処置のタイプ、処置を実施する外科医の好み(preference)、インプラントのタイプ・サイズ、患者情報、及び他の要素等の処置情報に基づくものとすることができる。
【0037】
図3に示している実施形態では、ガイダンスステーション20からの指示は、術前プラン(pre-operative plan)に基づいて提供される。術前プランは、ステップ101において作成される。術前プランは、各患者について外科医によって定められ、実施される処置のタイプ、処置対象の生体組織、(必要に応じて)埋め込まれるインプラントのタイプ、サイズ、及び/又は形状、外科医の好み、及び他の情報を詳細に記述したものである。
【0038】
術前プランの作成は幾つかのステップを含む。第1に、患者が診断され、患者のための適切な処置を決定する。次に、外科医が処置を定める。図示の実施形態では、処置は、人工膝関節置換術(total knee replacement)である。外科医の処方は、MRI、CTスキャン等を使用し、患者の骨、すなわち大腿骨及び脛骨の撮像を含む。骨の撮像が終了すると、画像が用いられて、人工膝関節置換術の適切な策定内容を準備又は選択する。この策定は、外科処置の直前に手術室(operating room, OR)で実施される患者の運動学的な調査(kinematic study)に基づくものとすることもできる。
【0039】
策定は、インプラントのタイプ、インプラントのサイズ/形状、及び、インプラントが固定される骨の上の位置を含む(策定は、インプラントを受けるために除去される組織を特定することを含む)。この情報は、テキストファイル、画像ファイル、又は同様なもの等のコンピュータ可読フォーマットの電子形態で記憶することができる。策定は、外科医又は第三者によって準備又は選択され得る。膝関節インプラントの策定がなされると、外科医は、その策定内容を検討し、許容可能なものである場合、その策定を承認し、外科処置がスケジュールされる。外科処置がスケジュールされると、手術室が、外科処置のために準備され、これは、術前プランに基づいて対象物を手配することを含む。
【0040】
他の実施形態では、対象物は、外科処置のときに、すなわち手術前ではないときに決定される処置情報に基づいて手配される。
【0041】
ステップ103において、術前プランは、ガイダンスステーション20に記憶される。術前プランは、ナビゲーションコンピュータ26に対する有線又は無線接続を使用して、フラッシュメモリデバイス又は同様なものによってナビゲーションコンピュータ26に記憶することができる。ある場合には、外科医又は外科医の指名者は、病院又は外科処置センタのセキュアローカルエリアネットワーク(イーサネット(登録商標))、セキュアUSBフラッシュドライブ、又はセキュア無線(WiFi)接続を介して、ガイダンスステーション20に暗号化済みの術前プラン(策定情報を含む)を送る。幾つかの実施形態では、術前プランは、ガイダンスステーション20を使用して作成される。
【0042】
図4を参照すると、処置情報(例えば、術前プランに基づく情報)がナビゲーションコンピュータ26に記憶されると、ORセットアップモジュール109(図2参照)が使用されて、手術室における対象物のセットアップが開始され得る。ORセットアップモジュール109は、ナビゲーションコンピュータ26上で実行されるソフトウェアモジュールである。外科要員は、ガイダンスステーション20のユーザインタフェース及びディスプレイ28、29を使用して、ORセットアップモジュール109を動作させ得る。ORセットアップモジュール109を使用するとき、外科要員は、まず、処置情報(例えば、術前プラン)をORセットアップモジュール109にロードする。ロードされると、ある種の情報が、ORセットアップモジュール109にとって利用可能となる。
【0043】
ステップ104において、ORセットアップモジュール109は、処置情報に基づいて、対象物の所定の手配(prescribed arrangement)を決定する。対象物の所定の手配は、ORセットアップモジュール109にロードされたある種の情報を探し、その情報を、ルックアップテーブルにある複数の所定手配のうちの1つと照合することによって決定することができる。ルックアップテーブルは、ナビゲーションコンピュータ26上に記憶されている。例えば、ロードされた情報は、処置のタイプを「全膝関節−左」(“TOTAL KNEE−LEFT”)として特定することができる。ORセットアップモジュール109は、ルックアップテーブル内で「全膝関節−左」に関する特定の手配を見いだすことにより、このタイプの処置に基づいて、対象物の所定の手配を選択するようにプログラムされている。
【0044】
所定の手配は、図6及び図7に示すような俯瞰レイアウト(overhead layout)を含む。これらの俯瞰レイアウトは、画像ファイル又は他のファイルタイプとしてナビゲーションコンピュータ26に記憶することができる。あるいは、俯瞰レイアウトは、術前プランの一部とすることができ、及び/又は、処置情報とともにORセットアップモジュール109にロードすることができる。各レイアウトは、異なった処置タイプに関連するものとすることができる。各レイアウトはまた、異なった外科医の好みに関連するものとすることができる。例えば、図6に示すレイアウトは、右利きの外科医のためのものである一方で、図7に示すレイアウトは、左利きの外科医のためのものである。
【0045】
所定の手配が決定されると、ガイダンスステーション20は、ステップ105において、対象物を相応に手配する指示を提供する。こうした指示は、図5に示す順序で行うことができる。これらの指示の別の順序も考えられる。
【0046】
ステップ108において、ガイダンスステーション20は、ORセットアップモジュールによって決定された俯瞰レイアウトを表示する。俯瞰レイアウトはディスプレイ28、29上に示される。俯瞰レイアウトは、ガイダンスステーション20、患者及び手術テーブル、機械加工ステーション56、外科医、看護師、及び他の対象物を含む対象物の大まかな配置に関する指示を外科要員に提供するものである。以下で更に述べるように、トラッカ44、46及び機械加工ステーション56のより精密な位置決めも、ガイダンスステーション20によりナビゲーション的にガイドされる。
【0047】
俯瞰レイアウトが示されるため、外科要員は、ガイダンスステーション20を、俯瞰レイアウト上で示された位置に移動させることができる。所定の位置になると、本方法は、ステップ110に進み、カメラユニット36の配置を指示する。ステップ110への移行には、入力デバイスによってディスプレイ28、29上で「承認(OK)」又は「終了(DONE)」を選択して、ガイダンスステーション20が所定の位置にあることをORセットアップモジュール109に示すこと等の、外科要員からの入力を必要とする場合がある。
【0048】
カメラユニット36は、少なくとも自由度1で、場合によっては、自由度2以上で調整可能である。ガイダンスステーション20は、ORセットアップモジュール109を通して、カメラユニット36をどのように位置決めするかに関して外科要員に指示する。この指示は、床に対して所定の高さ又は所定の角度となるようカメラユニット36を調整するための、ディスプレイ28、29上に書かれた指示を含むことができる。図5Aを参照すると、カメラユニット36の配置のための指示は、カメラユニット36についての例示的なセットアップを示す視覚的なガイダンスを含むことができる。カメラユニット36が適切に配置されると、ステップ112への移行は、入力デバイスによってディスプレイ28、29上で「承認(OK)」又は「終了(DONE)」を選択して、カメラユニット36が所定の位置にあることをORセットアップモジュール109に示すこと等の、外科要員からの入力を必要とする場合がある。
【0049】
幾つかの実施形態では、カメラユニット36を動かするためのアームのジョイント部は、位置エンコーダを有するものとすることができる。位置エンコーダは、ナビゲーションコンピュータ26によって読み取られ、カートアセンブリ24と床と調整アームとカメラユニット36との間の既知の幾何学的関係に基づき、床を基準としたカメラユニット36の動きを動的に追跡するために使用することができる。この場合、図5Bを参照すると、ディスプレイ28、29上の視覚的なガイダンスは、カメラユニット36の所望の位置の表現(representation)に対する、カメラユニット36の現在の位置の表現(隠れ線で示す)を提示することを含む。現在の位置の表現は、ユーザがカメラユニット36の位置を調整するときに、所望の位置の表現に向かうか又は離れるようにディスプレイ28、29上で動的に移動する。ORセットアップモジュール109は、図5Bに示している矢印等の所望の位置に達するための、必要となる移動方向を示す画像をディスプレイ28、29に送ることができる。カメラユニット36の現在の位置が、所望の位置の予め定められた許容範囲内になると、ORセットアップモジュール109は、所望の位置に達したことを示し、ステップ112に進む。
【0050】
ステップ112において、患者は、手術室の手術テーブルに運ばれる。患者は、人工膝関節置換術の場合、麻酔下で運ばれるか、又は麻酔が手術室内で施される。外科スタッフはまた、対象の脚を脚ホルダ内に留め、患者及び機器を覆う(drape)ことができる。1つのこうした脚ホルダは、米国特許出願公開第2013/0019883号として公開されている、「Multi-position Limb Holder」という名称の米国特許出願第13/554,010号に示されている。その開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0051】
患者の配置に関する指示は、ガイダンスステーション20を基準とした手術テーブルの位置決めに関する、ディスプレイ28、29に示された指示を含むことができる。こうした指示は、コンピュータカートアセンブリ24と手術テーブルとの間に所望の距離を設けること、又は、手術テーブルの特定の側部をカメラユニット36に対して位置合わせすることを含むことができる。患者の配置についての指示は、カメラユニット36を基準にした患者についての例示的なセットアップを示す視覚的なガイダンスを含むことができる。
【0052】
幾つかの実施形態では、ビデオカメラ(不図示)がカメラユニット36に取り付けられている。ビデオカメラは、カメラユニット36の視野がビデオカメラの視野に関連したものとなるように向きが決められる。換言すれば、ある対象物(例えばLED50)が、ビデオカメラから流れるビデオ画像において見えている場合に、該対象物がカメラユニット36の視野内にもあるものとなるように、2つの視野を整合させることができるかあるいは関係付けることができる。ビデオカメラからのビデオ画像は、図5のステップのうちの任意のステップにおいてディスプレイ28、29に送ることができる。
【0053】
ステップ112において、ディスプレイ28、29は、ビデオカメラからのビデオ画像を有するウィンドウ113を表示し、また、ディスプレイ28、29上で提供される指示は、ウィンドウ113に患者を配置するよう外科要員に伝えるために書かれた指示を含むことができる。これは図5Cに示している。ウィンドウ113はまた、手術テーブルのある特定のエッジ又は側部がどこに位置付けられるべきかを、ビデオ画像上に(十字線、エッジ線等の)幾何学的かつ視覚的な助けとなるものを重ね、付随する書かれた指示を提供することによって示すことができる。患者がウィンドウ内に位置付けられ、手術テーブルが適切に位置合わせされると、患者は、術前プラン及び/又は他の処置情報に基づいて位置決めされる。患者の位置が適切なものとなると、ステップ114の移行は、入力デバイスによってディスプレイ28、29上で「承認(OK)」又は「終了(DONE)」を選択して、患者が所定の位置にあることをORセットアップモジュール109に示すこと等の、外科要員からの入力を必要とする場合がある。
【0054】
ステップ114においてトラッカの配置が行われる。トラッカ44、46を配置するための、ガイダンスステーション20から提供される指示の1つの例示的な実施形態を図8に示している。まず、ステップ120において、大腿骨F及び脛骨Tの表現が、所望のトラッカ配置及び関連する指示とともにディスプレイ28、29上に示される。この例を図5Dに示している。一般的な骨表現が使用され、例えば膝関節からの距離、又は膝関節に関連するある種の生体組織上のランドマークからの距離(例えば、膝蓋骨、脛骨結節(tibial tubercle)等からの距離)に基づいて一般的に適切な配置を示す。ディスプレイ28、29上に示されている指示は、生体組織上のランドマークからトラッカ44、46のそれぞれまでの距離を示す場合がある(ランドマークから、骨に取り付けられた各トラッカ44、46のベースまでの距離を示すことができる)。また、トラッカ44、46(又は、トラッカ44、46のベース)の間の所望の距離は、ディスプレイ28、29上で、数字として及び視覚的に示すことができる。幾つかの実施形態では、ディスプレイ28、29上の指示は、トラッカ44、46を配置する前の脚ホルダへの脚の配置に関して示された指示及び脚ホルダを所定の位置に留めることに関する指示を含む。1つのこうした脚ホルダは、米国特許出願公開第2013/0019883号として公開されている、「Multi-position Limb Holder」という名称の米国特許出願第13/554,010号に示されている。その開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0055】
上述したビデオカメラは、従来のマシンビジョン技術を使用して患者の脚を特定する能力を有するガイダンスステーション20のマシンビジョンシステムに統合することができる。図5Eに示すように、脚が特定され、ディスプレイ28、29上でウィンドウ113内に示されると、ガイダンスステーション20は、ディスプレイ28、29上でトラッカ44、46の所望の位置をオーバレイ(矢印によって示される)しつつ、外科医及び/又は外科要員がトラッカ44、46(図5Eに示していない実際のトラッカ)を配置することを示す、ビデオカメラからのビデオ画像を、同時にかつ連続して示す。
【0056】
ステップ122において、外科要員はトラッカ44、46を位置決めする。これは、骨ピンを配置し、骨ピンにトラッカ44、46を取り付けることを含むこともできる。あるいは、これは、関節にアクセスするために手動器具を使用して膝関節を切開すること、及び、引用することにより本明細書の一部をなすものとする「Tracking Devices and Navigation Systems and Methods for Use Thereof」という名称の2013年1月16日に出願された米国仮特許出願第61/753,219号に示すように骨プレートを取り付け、骨プレートにトラッカ44、46の追跡要素を結合させることを含むこともできる。所定の位置になると、カメラユニット36が起動(activate)され、トラッカ44、46のLED50から位置に関連する信号を受信し始める。
【0057】
ステップ124において、ナビゲーションコンピュータ26は、トラッカ44上のLED50とトラッカ46上のLED50との間の距離を測定する。これは、トラッカ44、46が、骨、例えば大腿骨及び脛骨上でどの程度離れて位置しているかについての基本的な情報を提供するものである。一実施形態では、最も近づいて位置する2つのLED50間の最短距離と、最も離れて位置する2つのLED50間の最長距離とが測定される。ステップ126では、これらの測定距離が所定の距離範囲と比較される。最短測定距離及び最長測定距離がともにその範囲内にある場合、本方法は、ステップ128に進む。その範囲にない場合、本方法はステップ120に戻り、トラッカ44、46は、ステップ120の指示に従って再び位置決めされる。本方法がステップ120に戻る場合、指示には、トラッカ44、46が、近過ぎているか、遠過ぎているかに関する詳細を更に含めることができ、トラッカ44、46をどこに位置決めするかに関する更なるガイダンスが外科要員に与えられる。トラッカ44、46の再度の位置決めは、骨からのベース(又は骨ピン)の取外しを必要とすることなく、1以上の調整自由度に関するトラッカ44、46の調整のみが必要となる場合がある。極端な場合、トラッカ44、46は、骨から完全に取り外して、再び取り付ける必要がある。
【0058】
トラッカ44、46が所定の距離範囲内に位置決めされると、トラッカ44、46は、生体組織に対して位置合わせ(register)される。骨表面及び基準となるランドマークの位置合わせは、ポインタPを使用して行うものとして当技術分野でよく知られており、ここでは詳細に説明しない。位置合わせにより、手術前のMRI又はCT画像がトラッカ44、46上のLED50の位置に関連付けられる。結果として、LED50の動きを追跡することにより、大腿骨F及び脛骨Tの動きを追跡することができる。
【0059】
大腿骨F及び脛骨Tの位置及び向きがLED50に対して位置合わせされると、ナビゲーションコンピュータ26は、屈曲(flexion)から伸展(extension)までの動きの範囲により、また、外科処置中における大腿骨及び脛骨の予想される全ての位置において、大腿骨F及び脛骨Tの動きをシミュレートすることができる。例えば、処置によっては、膝が、最大屈曲状態でまた最大伸展状態で配置されることが必要となる場合がある。ナビゲーションプロセッサ52は、脚の最大屈曲位置及び最大伸展位置に位置付けられることになるLED50の位置をシミュレートし、センサ40の視野が同様にナビゲーションコンピュータ26に知られているため、これらの位置の全てにおいて、LED50がセンサ40の各センサの視野内にあることになるかどうかを判定することができる。換言すれば、ナビゲーションコンピュータ26は、処置中における大腿骨F及び脛骨Tの動きをシミュレートし、LED50のうちのどのLEDがセンサ40のいずれかのセンサの視野から遮断されることになるかどうかを検出することができる。
【0060】
あるいは、シミュレーションを実行するのとは対照的に、ディスプレイ28、29上の指示により、ガイダンスステーション20がトラッカ44、46上のLED50を追跡している間に、脚ホルダ内で最大伸展及び最大屈曲を通して脚を実際に移動させるよう外科要員に要求することができる。その後、脚のいずれかの位置において、LED50のうちのいずれかのLEDが、信号をセンサ40に送信することを遮断されるかどうかを判定することによって遮断が特定される。
【0061】
遮断が、シミュレーションで予測されるか又は脚を移動するときに実際に検出されると、本方法はステップ134に進む。ステップ134において、患者の実際の骨の表現が、現在のトラッカ配置及び所望のトラッカ配置とともにディスプレイ28、29上に(図5Eと同様であるが、ここでは、ナビゲーション位置情報を使用して)示される。トラッカ44、46を移動又は再位置決めするための指示も、ディスプレイ28、29上に表示される。ある場合には、再位置決めすることは、骨からのトラッカ44、46の完全な除去を必要とすることなく、トラッカ44、46の調整機構を使用してトラッカ44、46のうちの1つのトラッカのヘッドを摺動させること、傾斜させること、又は回転させることのみを必要とする場合がある。例えば、「Tracking Devices and Navigation Systems and Methods for Use Thereof」という名称の2013年1月16日に出願された米国仮特許出願第61/753,219号に示されるトラッカの調整機構を参照されたい。この米国仮特許出願の内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。別の場合には、トラッカ44、46の一方又は両方を骨から取り外す必要がある。
【0062】
再位置決めされると、ステップ124の当初のエラーチェックが再び行われる。エラーが許容可能である場合、トラッカ44、46は、生体組織に対して再び位置合わせがされ、残りのステップが、既に述べたように続く。ステップ132において、遮断が予測又は検出されない場合、本方法はステップ116に進む。ステップ116への移行は、シミュレーション又は移動がステップ132において実施された後に自動的に行うこともできるし、あるいは、ステップ116への移行は、入力デバイスによってディスプレイ28、29上で「承認(OK)」又は「終了(DONE)」を選択して、患者が所定の位置にあることをORセットアップモジュール109に示すこと等の、外科要員からの入力を必要とすることも可能である。
【0063】
ステップ114の前に、「Tracking Devices and Navigation Systems and Methods for Use Thereof」という名称の2013年1月16日に出願された米国仮特許出願第61/753,219号において示されている方法に従って、トラッカ44、46をセットアップすることができる。この米国仮特許出願の内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。この米国仮特許出願によれば、ステップ114における位置決めの際に、トラッカ44、46が再位置決めを必要としないような可能性を高めることができる。
【0064】
また、外科医は、策定内容を再び検討し、その策定内容が患者に合うことを確認し、最終的な承認を与えるか又はインプラントのサイズ、位置、及び/又は向きを修正する能力を有する。
【0065】
ステップ116において、機械加工ステーション56の配置のための指示が提供される。これらの指示がどのように提供されるかについての一例を、図9のステップ136〜142に示している。カメラユニット36と、患者と、トラッカ44、46とが適切に位置決めされると、ガイダンスステーション20は、機械加工ステーション56を、機械加工される骨を基準にして所定の位置に入るようガイドすることを支援することができる。ステップ136では、機械加工ステーション56の所望の配置が、ディスプレイ28、29上に示される。機械加工ステーション56のカート57は、ガイダンスステーション20(図1参照)と通信可能な、統合されたディスプレイ59を有している。機械加工ステーションのディスプレイ59は、機械加工ステーション56の所望の配置を更に示すものである。この所望の配置は、図6及び7に示しているような、所望の位置におけるカート57の俯瞰的で視覚的な説明図とすることができる。
【0066】
カート57の位置及び向きは、器具トラッカ48を使用してガイダンスステーション20によって追跡される。より具体的には、エンドエフェクタに対する器具トラッカ48の接続が強固であるため、また、機械加工ステーション56のアーム・カプラ構造に対するエンドエフェクタの接続が強固であるため、ガイダンスステーション20は、以下の2つを用いて、器具トラッカ48の位置及び向きに基づきカート57の位置及び向きを決定することができる。
(1)機械加工ステーション56のジョイント部に設けられた位置エンコーダによって測定されるジョイント部角度データと、「Surgical Manipulator Capable of Controlling a Surgical Instrument in either a Semi-Autonomous Mode or a Manual, Boundary Constrained Mode」という名称の米国仮特許出願第61/679,258号に記載されている、運動学的モジュールによって計算されるジョイント部角度データとのいずれか又は両方。この米国仮特許出願の開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
(2)「Surgical Manipulator Capable of Controlling a Surgical Instrument in either a Semi-Autonomous Mode or a Manual, Boundary Constrained Mode」という名称の米国仮特許出願第61/679,258号に記載されている、機械加工ステーション56のアーム・カプラ構造に関するデータ(例えば、仮想的なモデルデータ)。この米国仮特許出願の開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
あるいは、別個のトラッカ(不図示)を、カート57の仮想モデルに取り付け、その仮想モデルに対して較正し、カート57の位置及び向きを追跡する。
【0067】
いずれの場合も、ディスプレイ28、29、59は、幾つかの実施形態では、カート57の所望の俯瞰的位置だけでなく、カート57の現在の位置も示す。ディスプレイ28、29、59上に示されるカート57の表現の一例を、図9Aに示している。図9Aにおいて、1つの視覚的な表現は、所望の位置に示されているカート57(2次元の長方形で示している)の画像である。別の視覚的な表現は、現在の位置に示されているカート57(2次元の長方形で示している)の画像である。現在の位置におけるカート57の表示は、カート57が移動するにつれてディスプレイ28、29、59上を移動する。ガイダンスステーション20から提供される更なる指示には、矢印等の幾何学的画像を含めることができ、それらの幾何学的画像は、所望の位置に達するためにカート57を移動させる方向に関して外科要員をガイドする。
【0068】
ステップ138において、外科要員は、ディスプレイ28、29、59を注視し、実際のカート位置のディスプレイ28、29、59上での視覚的表現が所望の位置の視覚的表現に向かって移動するようにカート57を移動させることによって、機械加工ステーション56を所望の位置に配置する。ステップ140において、ORセットアップモジュール109は、カート57が所望の位置に達するまで、実際の位置と所望の位置との間のエラーをチェックする。カート57の実際の位置の視覚的表現がカート57の所望の位置の視覚的表現と位置合わせされる、すなわち、長方形が位置合わせされることによって示されるような、機械加工ステーション56の実際の位置が、所望の位置の所定の許容範囲内になると、ORセットアップモジュール109は、機械加工ステーション56が所望の位置にあることを示し、ステップ118に進む。ディスプレイ28、29、59上の目で見える画像は、カート57が所望の位置に達すると、点滅するか又は何らかの他の視覚的効果を提供することができる。
【0069】
ステップ118において、ガイダンスステーション20は、患者、機械加工ステーション56、ガイダンスステーション20等を基準にして適切な位置にいるよう外科要員に指示する。これは、図6及び7に示すような俯瞰レイアウトを再表示することによって行うことができる。外科要員が所定の位置におり、準備ができると、処置を開始することができる。図4のステップ106を参照されたい。
【0070】
幾つかの実施形態では、機械加工ステーション56は、患者の骨又は軟部組織等の生体組織から物質を切除するためのロボット外科切断システムである。切断システムが、ガイダンスステーション20によって適切な位置にあると判定されると、切断システムは、股関節インプラント、及び、片側、両側又は全体的な膝関節インプラント(unicompartmental, bicompartmental, or total knee implants)を含む膝関節インプラント等の、外科インプラントによって置換されるものを切除する。これらのタイプのインプラントのうちの幾つかは、「Prosthetic Implant and Method of Implantation」という名称の米国特許出願第13/530,927号に示されている。この米国特許出願の開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。ガイダンスステーション20は、トライアルインプラントの使用を含む、これらのインプラントを骨の上に位置付けし、そのインプラントを所定の位置に留めるための適切な処置に関して外科医に指示する。
【0071】
他のシステムでは、器具22は、ハンドヘルドハウジングを基準とした自由度3で移動可能であるとともに切断ジグ、ガイドアーム、又は他の制約メカニズムの援助なしで外科医の手によって手動で位置決めされる切断ツールを有する。そのようなシステムは、「Surgical Instrument Including Housing, a Cutting Accessory that Extends from the Housing and Actuators that Establish the Position of the Cutting Accessory Relative to the Housing」という名称の米国特許出願第13/600,888号に示されている。この米国特許出願の開示内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。
【0072】
これらの実施形態では、システムは、切断ツールを有するハンドヘルド外科用切断器具を備えている。「Surgical Instrument Including Housing, a Cutting Accessory that Extends from the Housing and Actuators that Establish the Position of the Cutting Accessory Relative to the Housing」という名称の米国特許出願第13/600,888号に示されているように、制御システムは、切断ツールの動きを、内部のアクチュエータ・モータを用いて少なくとも自由度3で制御する。上記米国特許出願の開示内容は、引用することによって本明細書の一部をなすものとする。ガイダンスステーション20は、制御システムと通信する。1つのトラッカ(トラッカ48等)は、器具に取り付けられ、他のトラッカ(トラッカ44、46等)は、患者の生体組織に取り付けられる。
【0073】
この実施形態では、ガイダンスステーション20は、ハンドヘルド外科用切断器具の制御システムと通信する。ガイダンスステーション20は、位置データ及び/又は向きデータを制御システムに伝える。これらの位置データ及び/又は向きデータは、生体組織を基準とした器具22の位置及び/又は向きを示すものである。この通信は、切断が所定の境界(所定の境界という用語は、所定の軌道、体積、線、他の形状又は幾何学的形態等を含むものとして理解される)内で行われるように、生体組織の切断を制御する閉ループ制御を提供する。
【0074】
代替的な実施形態では、トラッカ44、46、48は、ナビゲーションのために使用される他の照準線追跡デバイス又は非照準線追跡デバイスとすることができる。トラッカ44、46、48は、音波、磁界、RF信号等を使用して、位置及び/又は向きを決定することができる。これらの実施形態の幾つかの実施形態では、ステップ110は、このような別のタイプのナビゲーションシステムに関する検知デバイス、送信機、発電機(generator)等の配置に関する。同様に、ステップ130及び132は、このような別のタイプのナビゲーションシステムからの信号に関する遮断又は他の干渉についてチェックすることに関する。実質的には、外科要員は、使用されるナビゲーションのタイプとは無関係に、遮断又は干渉が最小になるか又は許容範囲内になるように患者の生体組織に関してナビゲーションシステムのトラッカを配置するよう指示される。
【0075】
幾つかの実施形態では、対象物は、手術室内で固定される手術室テーブル、すなわち、手術室テーブルの所定の部分の調整を除いて容易には移動できない手術室テーブルに関して手配することができる。幾つかの実施形態では、対象物の所望の配置に従って手配されることになる対象物の一部又は全ては、手術室の外に位置付けられ、最初に、手術室内に移動する必要がある場合がある。他の実施形態では、対象物の所望の配置に従って手配されることになる対象物の一部又は全てを、まだ対象物の所望の配置にはないものの、手術室の内部にあるものとして先に位置付けることができる。
【0076】
幾つかの実施形態では、手術前は、処置のための、手術室内での患者の任意の切断又は切開に至る時間と考えられる。こうした切断は、膝関節置換のために膝関節に、又は、股関節置換のために股関節にアクセスするために皮膚及び組織を切断することを含むことができる。
【0077】
幾つかの実施形態では、手術室内で対象物を手配することは、対象物のホイール付きカートを所定の位置に入るよう押すか又はトラッカを患者に手作業で取り付けること等によって手作業で実施することができる。他の実施形態では、対象物を手配することは、遠隔操作で、又は、関連するステアリング制御を使用して自動型カートを移動させること等の何らかの自動制御によって、対象物の所望の配置になるよう対象物をガイドすることを含むことができる。
【0078】
これまでに幾つかの実施形態を説明した。しかし、本明細書で説明した実施形態は、網羅的又は本発明を任意の特定の形態に限定することを目的としたものではない。用されている用語は、限定的なものではなく、説明のための言葉としての性質にあることが意図されている。多くの変更及び変形が、上記教示を考慮して可能であり、本発明は、具体的に述べたもの以外のやり方で実施することができる。
なお、特願2016−501163の出願当初の特許請求の範囲は以下の通りである。
[請求項1]
ディスプレイを有するガイダンスステーションを使用して手術室における複数の対象物を手配する方法であって、
前記ガイダンスステーションに外科処置情報を提供するステップと、
前記処置情報に基づいて、前記手術室における前記複数の対象物の各々に関する所望の配置を決定するステップであって、前記複数の対象物のうちの少なくとも1つの対象物は、前記ガイダンスステーションとの通信が可能な追跡要素を有している、ステップと、
前記所望の配置に従って、前記手術室における前記複数の対象物の各々に関する互いの配置をガイドするステップと
を含む方法。
[請求項2]
前記複数の対象物の各々に関する配置をガイドするステップは、骨に関する前記追跡要素の配置をガイドするステップを含むものである、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
前記追跡要素の配置をガイドするステップは、前記追跡要素と光学式センサとの間の照準線の遮断を回避するために、前記追跡要素を有する追跡デバイスの配置をガイドするステップを含むものである、請求項2に記載の方法。
[請求項4]
前記複数の対象物の各々に関する配置をガイドするステップは、機械加工ステーションの配置をガイドするステップを含むものである、請求項2に記載の方法。
[請求項5]
前記ガイダンスステーションに前記外科処置情報を提供するステップは、切断対象の骨と前記骨に取り付けられることになる所望のインプラントとに関する情報を提供するステップを含むものである、請求項2に記載の方法。
[請求項6]
前記複数の対象物の各々に関する前記所望の配置を決定するステップは、前記複数の対象物の各々に関する所望の位置を決定するステップを含むものである、請求項2に記載の方法。
[請求項7]
前記複数の対象物の各々に関する配置をガイドするステップは、ユーザに対する指示を前記ディスプレイに表示するステップを含むものである、請求項2に記載の方法。
[請求項8]
前記複数の対象物の各々に関する前記所望の配置を決定するステップは、前記処置情報に基づいて、第1の対象物及び第2の対象物の所望の配置を決定するステップを含み、
前記第1の対象物及び前記第2の対象物の各々は、前記ガイダンスステーションとの通信が可能な追跡要素を有している、請求項1に記載の方法。
[請求項9]
前記所望の配置に従って、前記手術室における前記第1の対象物及び前記第2の対象物の配置をガイドするステップを含む請求項8に記載の方法。
[請求項10]
前記第1の対象物及び前記第2の対象物の配置をガイドするステップは更に、追跡デバイスの配置をガイドし、骨を切断するための切断ツールを有する機械加工ステーションの配置をガイドするステップである、請求項9に記載の方法。
[請求項11]
前記第1の対象物及び前記第2の対象物の配置をガイドするステップは更に、第1の骨に関する第1の追跡デバイスの配置をガイドし、第2の骨に関する第2の追跡デバイスの配置をガイドするステップである、請求項9に記載の方法。
[請求項12]
前記第1の骨及び前記第2の骨の表現を、前記第1の骨及び前記第2の骨に対する前記第1の追跡デバイス及び前記第2の追跡デバイスの所望の配置とともに表示するステップを含む請求項11に記載の方法。
[請求項13]
前記所望の配置を基準とした、前記第1の追跡デバイス及び前記第2の追跡デバイスの実際の配置におけるエラーをチェックするステップと、
前記エラーが所定の許容範囲内にあるかどうかを判定するステップと
を含む請求項12に記載の方法。
[請求項14]
前記第1の骨及び前記第2の骨の画像に対して、前記第1の追跡デバイス及び前記第2の追跡デバイスの位置合わせを行うステップを含む請求項13に記載の方法。
[請求項15]
前記第1の追跡デバイス及び前記第2の追跡デバイスと前記ガイダンスステーションの検知デバイスとの間の照準線のエラーを検出するステップを含む請求項13に記載の方法。
[請求項16]
エラーを検出するステップは、前記第1の追跡デバイス及び前記第2の追跡デバイス並びに前記検知デバイスを、前記処置における前記追跡デバイスの全ての位置についてモデル化するステップを含むものである、請求項15に記載の方法。
[請求項17]
前記ディスプレイに所望の手術室レイアウトを表示するステップを含む請求項2に記載の方法。
[請求項18]
前記ガイダンスステーションはカメラを有し、前記カメラの配置に関する指示を表示するステップを更に含む請求項2に記載の方法。
[請求項19]
患者の配置に関する指示を表示するステップを含む請求項2に記載の方法。
[請求項20]
外科処置情報に従って手術室における複数の対象物を手配するためのシステムであって、
ディスプレイ及び制御ユニットを有するガイダンスステーションと、
前記ガイダンスステーションとの通信が可能であり、前記複数の対象物のうちの第1の対象物に関連付けられている追跡要素であって、前記第1の対象物の追跡が可能である、追跡要素と
を備え、
前記ガイダンスステーションの前記制御ユニットは、前記処置情報に基づいて、前記複数の対象物の各々に関する所望の配置を決定するとともに、前記所望の配置に従って前記手術室における前記複数の対象物の各々に関する配置をガイドするものである、システム。
[請求項21]
前記制御ユニットは、骨に関する前記追跡要素の配置をガイドするものである、請求項20に記載のシステム。
[請求項22]
前記制御ユニットは、骨を切断するための切断ツールを有する機械加工ステーションの配置をガイドするものである、請求項21に記載のシステム。
[請求項23]
前記ガイダンスステーションは光学式センサを有し、
前記制御ユニットは、前記追跡要素と前記光学式センサとの間の照準線の遮断が回避されるように、前記追跡要素の配置をガイドするものである、請求項21に記載のシステム。
[請求項24]
前記複数の対象物のうちの第2の対象物を追跡することができるように、前記ガイダンスステーションとの通信が可能であって、前記第2の対象物に関連付けられている第2の追跡要素を備えた請求項23に記載のシステム。
[請求項25]
前記制御ユニットは、複数の前記追跡要素から前記光学式センサが受信した信号に基づく前記所望の配置に従って、前記手術室における前記第1の対象物及び前記第2の対象物の配置をガイドするものである、請求項24に記載のシステム。
[請求項26]
前記制御ユニットは、前記第1の対象物と、前記第2の対象物と、骨を切断するための切断ツールを有する機械加工ステーションとの配置をガイドするものである、請求項25に記載のシステム。
[請求項27]
前記制御ユニットは、第1の骨及び第2の骨に関する前記第1の対象物及び前記第2の対象物の配置をガイドするものであり、
前記第1の対象物及び前記第2の対象物は更に、第1の追跡デバイス及び第2の追跡デバイスであり、前記第1の追跡デバイス及び前記第2の追跡デバイスの各々は、複数の前記追跡要素のうちの1つを有するものである、請求項25に記載のシステム。
[請求項28]
前記制御ユニットは、前記第1の骨及び前記第2の骨の表現を、前記第1の骨及び前記第2の骨に対する前記第1の追跡デバイス及び前記第2の追跡デバイスの所望の配置とともに、前記ディスプレイに表示するものである、請求項27に記載のシステム。
[請求項29]
前記制御ユニットは、前記所望の配置を基準とした、前記第1の追跡デバイス及び前記第2の追跡デバイスの配置におけるエラーをチェックするとともに、前記エラーが所定の許容範囲内にあるかどうかを判定するものである、請求項27に記載のシステム。
[請求項30]
前記制御ユニットは、前記追跡要素と前記光学式センサとの間の照準線のエラーを検出するものである、請求項23に記載のシステム。
[請求項31]
前記制御ユニットは、照準線のエラーを検出するために、前記第1の追跡デバイスと前記第2の追跡デバイスと前記光学式センサとを、前記処置における複数の前記追跡デバイスの全ての位置についてモデル化するものである、請求項30に記載のシステム。
図1
図2
図3.4.5】
図5A.5B】
図5C.5D】
図5E
図6
図7
図8.9】
図9A