(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442494
(24)【登録日】2018年11月30日
    
      
        (45)【発行日】2018年12月19日
      
    (54)【発明の名称】削岩機の構成要素の潤滑に関わる装置及び方法並びに削岩機
(51)【国際特許分類】
   B25D  17/26        20060101AFI20181210BHJP        
【FI】
   B25D17/26
【請求項の数】8
【全頁数】9
      (21)【出願番号】特願2016-521247(P2016-521247)
(86)(22)【出願日】2014年6月24日
    
      (65)【公表番号】特表2016-523185(P2016-523185A)
(43)【公表日】2016年8月8日
    
      (86)【国際出願番号】SE2014000088
    
      (87)【国際公開番号】WO2014209197
(87)【国際公開日】20141231
    【審査請求日】2017年6月16日
      (31)【優先権主張番号】1350767-8
(32)【優先日】2013年6月25日
(33)【優先権主張国】SE
    
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】398056193
【氏名又は名称】エピロック  ロック  ドリルス  アクチボラグ
          (74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野  孝雄
          (74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田  智
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】ジヨンソン,ペアー
              
            
        
      
    
      【審査官】
        稲葉  大紀
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開昭58−211870(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許第04243110(US,A)      
        
        【文献】
          特開昭50−039601(JP,A)      
        
        【文献】
          特開昭60−112986(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2006−068899(JP,A)      
        
        【文献】
          特表2013−518198(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D17/00−17/32
E21B  1/00−49/10
E21C25/00−51/00
DWPI(Derwent  Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  液圧式打撃装置と、
  軸アダプタ(10)を回転駆動するための回転機構(4)と、
  軸アダプタ(10)のための案内装置(6)と
  を包囲する機械ハウジング(2、3、11)を備えた液圧式削岩機(1)用の装置であって、
  かかる装置が機械ハウジング内に配置され、
  前記削岩機(1)が、
  −潤滑を目的とした削岩機内の要素に潤滑剤を供給するための少なくとも1つの供給流路と、
  −使用済みの潤滑剤のための少なくとも1つの出口流路(5、7)と
  を備えている
  液圧式削岩機用の装置において、
  −前記少なくとも1つの出口流路(5、7)が、使用済の潤滑剤中に存在する粒子状の不純物を分離するために機械ハウジングの領域に設けられる分離室(8)に接続され、
  かつ、
  −前記分離室(8)が、その中で処理された潤滑剤を排出するための排出導管(9)に接続され、
  前記排出導管(9)が筒部分から生じて分離室(8)内に向かって突出し、前記分離室(8)内部に自由端(9’)を設けている
  ことを特徴とする装置。
【請求項2】
  前記分離室(8)が、前記分離室(8)における前記排出導管(9)の接続部を取り囲む領域に少なくとも1つの回収ポケット(13)を備えていること
  を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
  使用済みの潤滑剤の流れの方向(R)に見て、前記分離室(8)の断面積が前記排出導管(9)の断面積の3〜20倍、好ましくは7〜15倍である
  ことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
  前記出口流路(5)が前記回転機構(4)から生ずる
  ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
  前記分離室(8)を前記機械ハウジング(2、3、11)の内部に配置する
  ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
  分離セクション(14)に沿って前記機械ハウジングを切り離す時に開放可能にするために、前記分離室(8)を、前記機械ハウジング内の分離セクション(14)に接続するように構成されている
  ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
  請求項1〜6の何れか一項に記載の装置を備える削岩機。
【請求項8】
  機械ハウジング(2、3、11)内に配置される
    液圧式打撃装置、
    軸アダプタ(10)を回転駆動するための回転機構(4)及び
    軸アダプタのための案内装置(6)
  を備えている液圧式削岩機(1)における潤滑剤を処理するための方法であって、
  −少なくとも1つの供給通路を通して潤滑をするように削岩機内の構成要素に潤滑剤を加圧空気で動かすこと、及び
  −使用済みの潤滑剤を少なくとも1つの出口通路(5、7)を経て排出すること
  を含む方法において、
  該方法が、
  −使用済みの潤滑剤に存在する粒子状の不純物を分離するために、使用済みの潤滑剤を、機械ハウジングの領域に配置される分離室(8)へ送ること、
  −分離室(8)で処理された使用済みの潤滑剤を、排出導管(9)を介して排出すること
  を含み、
  前記粒子状の不純物が、分離室(8)における前記排出導管(9)の接続部を取り巻く領域における少なくとも1つの回収ポケット(13)に回収される
  ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、液圧式打撃装置と、軸アダプタを回転駆動するための回転機構と、軸アダプタのための案内装置とを包囲する機械ハウジングを備えた液圧式削岩機に関わる装置に関するものであり、装置は機械ハウジング内に配置され、削岩機は、潤滑を目的とした削岩機内の要素に潤滑剤を供給するための少なくとも1つの供給流路と、使用済みの潤滑剤のための少なくとも1つの出口流路とを包含する。本発明はまた、削岩機及び方法にも関わる。
 
【背景技術】
【0002】
  動作中、削岩機を駆動する液圧流れと接触しない可動構成要素において、潤滑を受けることになる前記可動構成要素に加圧空気によって小さな流量の潤滑剤を供給して潤滑が行われる液圧式削岩機は従来公知である。
【0003】
  従来の削岩機では、単純に使用済みの潤滑剤を加圧空気流に追従させて直接周辺へ排出させてきた。その結果、動作中そのような削岩機の周辺にいる人々に環境負荷や環境問題を引き起こしてきたが、最近では作業環境や周囲への負荷の軽減などが求められている。使用済みの潤滑剤は、それらの要求に応じて回収し管理する必要がある。
【0004】
  これは、典型的には、使用済みの潤滑剤を回収容器に再度案内するために機械ハウジングにホースを接続することで解決策を講じてきた。
【0005】
  背景技術の一例として、特許文献である米国特許第3921731号を挙げることができる。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3921731号
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  本発明の目的は、上記種類の装置の動作の信頼性を改善した上記要求に応じた改良型の装置を提供することにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0008】
  この目的は、先に記載のように、前記少なくとも1つの出口流路が使用済の潤滑剤中に存在する粒子状の不純物を分離するために、機械ハウジングの領域に配置されている分離室に接続され、そして分離室がそこで処理された使用済み潤滑剤を排出するための排出導管に接続されていることを特徴とする装置に関して達成される。
【0009】
  不純物を分離するために機械ハウジングの領域に既存の分離室を設けることによって、排出導管内に流れる油の能力が改善され、しかも排出導管に詰まりを引き起こすかもしれない粒子の量が単純且つ効果的な方法で低減されることが達成される。さもなければ、詰まりに晒され削岩機に機能的な問題を引き起こす可能性がある。
【0010】
  削岩機を巡るその過程で、潤滑油は、金属の削り屑などの摩耗材の形状で不純物を運ぶ。コークス粒子が、削岩機の一部分から生じて、使用済み潤滑油の中に多くの頻度で存在し、高温で発熱して油を局所的に加熱することでコークス生成を引き起こし得る。残念ながら、この種の不純物は戻りホースに付着して閉塞や目詰まりなど上記問題点を引き起こす可能性のあることが証明されている。
【0011】
  注目すべきは、潤滑剤を施されようとする構成要素の領域で目詰まりが発生する可能性があるので、使用済みの潤滑油が回収場所へ至る過程で相当な流れ抵抗に出会うことが無いことは、潤滑機能のために非常に重要である。
【0012】
  本発明によれば、分離室の上流にある排出流路に不純物が目詰まりして沈着するのを最小限にするよう、上記不純物の発生源の可能な限り近くに分離室を位置決めすることが重要である。従って「機械ハウジングの領域内に配置される分離室」という特徴は、原則として、分離室の上流にある導管部分における不純物の沈着を避けるために、注油位置又は複数の注油位置の直接的な付近に分離室が配置されることを意味している。
【0013】
  使用済みの潤滑油は、分離室の下流で、不純物から分離されることによって流動性が強められ、排出導管を通って回収容器に有利に流れる。
【0014】
  典型的には、分離室内の内側に向かって突出し、しかも分離室の内部に自由端を設ける筒部分から生じる前記排出導管によって、潤滑剤が分離室の壁領域に沿って突出した筒部分の内部へと流れ込む長い流路が実現される。これにより、分離室内で不純物を分離する可能性を高めることができる。
【0015】
  好ましくは、分離室は、分離室における前記排出導管の接続部を取り巻く領域に少なくとも1つの回収ポケットを有する。このような回収ポケットは、内側に突出した筒部分を取り巻く分離室の窪んだ環状領域で構成することができる。
【0016】
  分離室の断面積は、使用済み潤滑油の一般的な流れの方向で見られるように、排出導管の断面積の3〜20倍に、さらに好ましく7〜15倍であるのが好ましい。
【0017】
  適切には、出口通路は、通常不純物の最大の発生源である回転機構から伸び、さらに好ましくは、出口通路は案内装置から伸びている。
【0018】
  好ましくは、分離室は機械ハウジング内に配置されることによって、削岩機に追加的な構成要素を設ける必要がない。より好ましくは、分離セクションに沿って機械ハウジングを切り離す際、分離室を開閉可能にするために、機械ハウジング内の分離セクションの接続部に分離室が配置される。このように、分離室は自然にアクセス可能に設けることができ、削岩機の計画的な定期点検の機会に分離室をクリーニングすることができる。
【0019】
  代わりに、例えば、既存の削岩機にあとから装備するためのオプションとして或いは機械ハウジング内部に内蔵型分離室を一体化するための空間が足りない削岩機のために、分離室を機械ハウジングの外側に配置してもよい。 
【0020】
  本発明はまた上記に記載の装置を備える削岩機にも関わり、対応する利点が得られる。
【0021】
  機械ハウジング内に配置される液圧式打撃装置、軸アダプタを回転駆動するための回転機構及び軸アダプタのための案内装置を包含する機械ハウジングを備えた液圧式削岩機で潤滑剤を処理するための本発明の方法において、かかる方法は:少なくとも1つの供給通路を経て潤滑するようにされる削岩機内の構成要素に潤滑剤を加圧空気で駆動することと、使用済みの潤滑油を少なくとも1つの出口通路を経て排出することとを含む。本発明によれば、使用済みの潤滑油は、使用済みの潤滑油に存在する粒子状の不純物を分離するために、機械ハウジングの領域に配置される分離室に運ばれ、そして分離室で処理された使用済みの潤滑油は、分離室から離れ排出導管を通って排出される。
【0022】
  粒子状の不純物は、分離室における上記排出導管の接続部を取り囲む領域にある少なくとも1つの回収ポケットで回収される。
【0023】
  典型的には、使用済みの潤滑油は回転機構から分離室に運ばれるが、好ましくは案内装置から分離室に運ばれる。
【0024】
  さらなる本発明の特徴は、以下の詳細な記述で説明する。
【0025】
  以下、添付図面を参照して、実施形態により本発明を詳細に説明する。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】液圧式削岩機を示す軸方向部分断面図である。
 
【
図2】
図1の削岩機の一部分を示す拡大軸方向断面図である。
 
【
図3】本発明による方法の一連の流れを示す概略ブロックチャートである。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0027】
  図1に示す液圧式削岩機1は機械ハウジングを備え、機械ハウジングの前部を符号番号2、中間部を3、後部を11で示している。機械ハウジングは、液圧式打撃装置(図示していない)、回転機構4及び軸アダプタ10を案内するために前方ブッシングの形状の案内装置6を備えている。フラッシュ液体スイベル12は前部の内側に設けられている。
 
【0028】
  液圧式削岩機1の動作において、潤滑剤の加圧空気ドライブ15、16、17を介して、図示していない打撃装置まで駆動流と接触しない可動構成要素を潤滑するための潤滑手段が設けられ、潤滑剤の加圧空気ドライブ15、16、17は削岩機に設けた連結手段及び潤滑すべき上記構成要素に潤滑剤を供給するための少なくとも1つの供給通路にそれ自体既知の仕方で接続されている。特に、符号番号15は加圧流体源、16は潤滑剤導管、17は潤滑剤の供給源を示している。回転機構に潤滑剤を供給する通路18及び案内装置に潤滑剤を供給する通路19は、従来の種類のものであり、
図1には一部のみ示されている。
 
【0029】
  単に例として、供給される潤滑剤の量は、典型的には、発破孔を穿孔するための中型の削岩機の場合、毎分約400リットルの空気流で毎分約2立方センチメートルであることが挙げられる。他の数値は、当然削岩機の種々の寸法及び種類に依存することができる。
 
【0030】
  続いて
図2を参照すると、潤滑作用の完了後、使用済みの潤滑剤は、回転機構4及びそれに続く仕切り部4’から第一の出口通路5を介して分離室8へ通される。前方ブッシング6の領域で潤滑に使用される潤滑剤は、第二の出口通路7を介して分離室8に案内される。
 
【0031】
  さらに、分離室8は、排出導管の内側に突出する筒部分9を配置する排出部を備え、この内側に突出する筒部分9を取り巻く空間13を形成するために、筒部分9の自由端9’は分離室8の内側に一部分突出しており、上記空間13は、分離室8で金属粒子及びコークス粒子等の不純物を分離保持する能力を高めるために回収ポケットを形成している。使用済みの潤滑剤の流れ方向と共に残留する加圧空気の形状で搬送ガスが流れる方向に、それぞれの出口通路5、7の各断面と排出導管の前記筒部分9の断面とを数倍超える断面積を分離室8が備えている。
 
【0032】
  このように、搬送ガス或いは加圧空気及び使用済みの潤滑剤の流速は、分離室8で低速になることで、より高い分離効率が得られる。典型的には、使用済みの潤滑剤は出口通路5、7によって分離室内に導入された後、分離室8の表面に沿って移動し、従って流速は出口通路5、7及び排出導管における流速よりも本質的に低速になる。
 
【0033】
  前記内側に突出する筒部分を排出導管9に設けることによって、排出導管それ自体に至るすべての流路に到達する使用済みの潤滑剤に残存する不純物は、さらに減少される傾向にある。
 
【0034】
  分離室8及び内側に突出する筒部分9のそれぞれを補強するものとして、突出する筒部分9の開口部に至る潤滑剤の移動パスを増加させるために、前記内側に突出する筒部分9に1つ以上の横方向のフランジを設けることができる。さらに或いは代わりに、パスの全長を伸ばす他の構成要素を分離室8自体の中に及び内側に突出する筒部分9に設けることができる。
 
【0035】
  機械ハウジングの正面部2と中間部3との間の分離セクションは、符号番号14で示されている。この分離セクション14を介して、サービスの提供、シールなどの部品交換のために、正面部2と中間部3とを切り離すことによって機械ハウジングを二分することができる。分離室8を通過するように分離セクション14を拡張することによって、例えばシール交換に関連してクリーニングを定期的に行うなど、サービスの提供及び分離室8のクリーニングは容易になる。
 
【0036】
  図3には、本発明の方法のシーケンスが例示されており、
−位置20は、シーケンスの開始を示す、
−位置21は、潤滑を目的とした削岩機の構成要素に潤滑剤を加圧空気により駆動することを示す、
−位置22は、少なくとも1つの出口通路を介して使用済みの潤滑剤を離れたところに移送することを示す、
−位置23は、使用済みの潤滑剤中に存在する粒子状の不純物を分離するため、使用済みの潤滑剤を機械ハウジングの領域に位置決めされる分離室まで案内することを示す、
−位置24は、処理された使用済み潤滑油を分離室から離して排出導管を介して案内することを示す、さらに、
−位置25は、シーケンスの終了を示す。
 
【0037】
  本発明は、添付の特許請求の範囲内で変更することができる、また機械ハウジングに分離室を内蔵する好ましい実施形態が
図1及び
図2に示されているがこれらは一例であって、例えば分離室は機械ハウジングの外側に切り離されて配置される容器であることができる。
 
【0038】
  分離室8は、円筒形、一部球形または箱型など異なる形状に構成することができる。また、効果的に機械ハウジングに統合或いは適合されるために、それ自体を提供する他の形状に構成することもできる。
 
【0039】
  多数の出口通路を分離室8に関連付けることができる。しかしその最も単純な形態によれば、第一の出口通路5はこの接続で最も大きくなる不純物を処理するために、単体で分離室8に導入される、但しその不純物は追従体及び回転機構で形成されたものである。その場合、正面ブッシング6から使用済みの潤滑油を周囲に関連付ける或いは分離室8を横切ることなく回収ユニットに関連付ける可能性を排除するものではない。
 
 
【符号の説明】
【0040】
  1    削岩機
  2    機械ハウジングの正面部
  3    機械ハウジングの中間部
  4    回転機構
  4’  区画
  5    出口通路
  6    正面ブッシング(案内装置)
  7    出口通路
  8    分離室
  9    筒部分
  9’  自由端
  10  軸アダプタ
  11  機械ハウジングの後部
  12  スイベル
  13  空間(回収ポケット)
  14  分離セクション
  15  加圧流体源
  16  注油導管
  17  潤滑剤供給源
  18  通路
  19  通路
  R    潤滑剤の流れの方向