(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る気管チューブ、気管チューブセット及び気管チューブの製造方法の実施形態について、
図1〜
図14を参照して説明する。各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0017】
図1は、本実施形態としての気管チューブ1を気管内に留置した状態を示す図であり、
図2は、気管チューブ1のチューブ本体2単体を示す斜視図である。
図3(a)、
図3(b)、
図4(a)及び
図4(b)はチューブ本体2の側面図である。
図5(a)はチューブ本体2の上面図であり、
図5(b)はチューブ本体2の下面図である。また、
図6は、
図3(a)のI−I断面図、
図7は
図3(a)のII−II断面図、
図8は
図5(a)のIII−III断面図である。
図9は、気管チューブ1を基端側から見た図である。
図10は、
図4(a)のIV−IV断面図である。なお、
図8では、説明の便宜上、チューブ本体2に加えてカフ3を示している。
【0018】
図1に示すように、気管チューブ1は、チューブ本体2と、このチューブ本体2の外周面上に取り付けられた収縮及び拡張可能なカフ3と、チューブ本体2の一方の端部に装着されたフランジ部材4と、を備える。
【0019】
図2〜
図5等に示すように、チューブ本体2は、チューブ本体2の内周面の中心軸線O1の延在方向(以下、単に「中心軸線方向A」と記載する。)において先端5から基端6まで貫通する中空部7を区画しており、気管チューブ1が外方から気管内に挿入されて留置されている状態では、この中空部7により気道が確保される。なお、チューブ本体2の先端5とは、チューブ本体2の遠位端であり、気管チューブ1が気管内に留置されている状態において、気管分岐部側に位置する一端である。また、基端6とは、チューブ本体2の近位端であり、気管チューブ1が気管内に留置されている状態において顎側に位置する他端である。
【0020】
より具体的に、チューブ本体2は、先端5を含む先端部8と、中心軸線方向Aにおいて先端部8の基端6側で連続し、外周面上にカフ3が取り付けられるカフ装着部9と、このカフ装着部9の基端6側で連続する湾曲部10と、この湾曲部10の基端6側で連続し、基端6を含む基端部11と、を備える。換言すれば、チューブ本体2の先端部8は、カフ装着部9及び湾曲部10を介して、基端部11と繋がっている。なお、フランジ部材4は、基端部11に装着される。
【0021】
ここで、本実施形態では、チューブ本体2を先端部8の先端5側から見た場合(
図3(b)参照)において、先端5に対して基端6がある方向、すなわち、先端5に対して湾曲部10が湾曲している方向を「上側」とし、その反対側を「下側」とする。
【0022】
また、
図2〜
図8等に示すように、チューブ本体2の外周面とチューブ本体2の中空部7を区画する内周面との間であるチューブ本体2の壁内には、中心軸線O1に沿って延在する3つの中空部が区画されている。具体的に、チューブ本体2は、壁内に形成され、基端面に区画された第1〜第3基端開口12a〜14aから中心軸線O1に沿って延在する第1〜第3ルーメン12〜14を備える。なお、壁内に区画された小径の第1〜第3ルーメン12〜14についても中空部であるが、説明の便宜上、気道を確保するための大径の中空部7と区別するため、ここでは「ルーメン」と記載する。
【0023】
第1ルーメン12は、基端面の第1基端開口12aから、カフ3及びカフ装着部9よりも基端部11側の所定の位置まで延在しており、その所定の位置に形成されたチューブ本体2の外周面まで貫通する第1吸引口部12bを通じてチューブ本体2の外方と連通している。なお、本実施形態の第1吸引口部12bは吸引口であり、カフ3及びカフ装着部9よりも基端部11側の位置として、湾曲部10に形成されている。より具体的には、本実施形態の第1吸引口部12bは、湾曲部10の先端部8側の端部、すなわち、カフ装着部9の基端部11側の近傍に形成されている。この第1ルーメン12は、気管内に留置されている状態のカフ3よりも気管上流側(顎側)に貯留する痰や唾液、血液などの異物Xを吸引して除去するためのルーメンであり、以下、「第1吸引用ルーメン」と記載する。
【0024】
第2ルーメン13は、基端面の第2基端開口13aから、カフ3及びカフ装着部9よりも先端部8側の所定の位置まで延在しており、その所定の位置に形成されたチューブ本体2の内周面まで貫通する第2吸引口部13bを通じてチューブ本体2の中空部7と連通している。なお、本実施形態の第2吸引口部13bは、カフ3及びカフ装着部9よりも先端部8側の位置として、先端部8に形成されている。より具体的に、本実施形態の第2吸引口部13bは、
図7に示すように、先端部8の内周面において先端5の位置まで続く切り欠き状の吸引口である。この第2ルーメン13は、気管内に留置されているカフ3よりも気管下流側(気管分岐部側)で、先端部8近傍に貯留する痰等の異物Xを吸引して除去するためのルーメンであり、以下、「第2吸引用ルーメン」と記載する。
【0025】
第3ルーメン14は、基端面の第3基端開口14aから、カフ3及びカフ装着部9の位置まで延在しており、その位置に形成されたチューブ本体2の外周面まで貫通する流路14bを通じて外方と連通している。従って、例えばシリンジ等を用いて、第3ルーメン14の第3基端開口14aから流路14bを通じて、カフ装着部9の外周面とカフ3の内面とで区画される環状空間Y内へ空気等の流体を供給することにより、カフ3を、この供給された流体により径方向B(
図8参照)に拡張させることができる。また、拡張した状態のカフ3に対しては、上述の環状空間Yから、第3ルーメン14の流路14b及び第3基端開口14aを通じて流体を吸引すれば、カフ3を径方向Bに収縮させることができる。このように、第3ルーメン14は、カフ3を収縮及び拡張させるために用いられるルーメンであり、以下、「カフ用ルーメン」と記載する。
【0026】
チューブ本体2の構成材料としては、例えば、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂を用いることができる。その中でも、成形が容易であるという点で、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
カフ3は、
図1及び
図8に示すようにチューブ本体2のカフ装着部9の外周面上に取り付けられており、上述したチューブ本体2のカフ用ルーメン14を通じて、カフ装着部9の外周面とカフ3の内面とで区画される環状空間Yに供給される流体の圧力により、拡張させることができる。従って、気管チューブ1を外方から気管内へと挿入し、所定の位置で気管チューブ1を留置しようとする際に、チューブ本体2のカフ用ルーメン14を通じて環状空間Yへと流体を供給し、カフ3をチューブ本体2の径方向B(
図8参照)に拡張させる。これにより、拡張したカフ3の外面が気管内壁と密着し、カフ3の外面と気管内壁との摩擦力等によって、カフ3が気管内周面に挟持されると共に、カフ3がチューブ本体2周囲で気管内を閉塞する。そのため、気管内でのカフ3の位置が固定され、気管チューブ1を上述した所定の位置で留置させることができる。
【0028】
また、気管チューブ1を気管内から外方へ抜去する際や、気管チューブ1の留置する位置を再調整する際などは、カフ用ルーメン14を用いて環状空間Yの流体を吸引し、カフ3を収縮させる。これにより、気管チューブ1のチューブ本体2を気管内で気管に沿って移動させることができる。
【0029】
このようなカフ3は、中心軸線方向Aにおける基端6側の端縁部15及び先端5側の端縁部16それぞれが、チューブ本体2の周方向C(
図2、
図6等参照)の全域において、カフ装着部9の外周面上に溶着や超音波接着等により接着されている。これにより、カフ3の内面とカフ装着部9の外周面とにより上述した環状空間Yが区画されている。より具体的に、
図8に示すように、基端6側の端縁部15は、環状空間Yの内側に折り曲げられており、端縁部15のうちカフ3の外面から延在する面が、環状空間Y内で、カフ装着部9の外周面に接着されている。また、先端5側の端縁部16は、環状空間Yの外側に折り曲げられており、端縁部16のうちカフ3の内面から延在する面が、環状空間Y外で、カフ装着部9の外周面に接着されている。
【0030】
なお、カフ3の構成材料としては、例えば、軟質ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン、またはこれらのうち任意の材料を混合した、可撓性を有する材料を用いることができる。
【0031】
フランジ部材4は、
図1に示すようにチューブ本体2の基端部11(
図2等参照)に装着されており、チューブ本体2を体外から気管内に挿入して気管チューブ1を留置した際に、皮膚に当接することで、先端部8を気管内の適切な位置に固定する。
図1及び
図9に示すように、フランジ部材4は、チューブ本体2の基端部11が内挿され、チューブ本体2と嵌合することでチューブ本体2に対して装着される円筒状の筒部17と、この筒部17の外壁から径方向外側に向かって突出し、気管チューブ1を留置した状態で皮膚に当接する板状のフランジ部18と、を備える。なお、
図9では、説明の便宜上、チューブ本体2の第1吸引用ルーメン12、第2吸引用ルーメン13及びカフ用ルーメン14の位置を二点鎖線により示している。
【0032】
図9に示すように、筒部17には、フランジ部18よりも基端側の位置に、上述した第1吸引用ルーメン12、第2吸引用ルーメン13及びカフ用ルーメン14それぞれと連通する連通孔17a、17b及び17cが区画されており、筒部17内にチューブ本体2の基端部11が嵌合することにより装着されている状態において、第1吸引用ルーメン12、第2吸引用ルーメン13及びカフ用ルーメン14は、対応する連通孔17a、17b、17cを介して、気管チューブ1の外方と連通しており、この連通孔17a〜17cそれぞれに医療用チューブが接続されている。
【0033】
具体的に、第1吸引用ルーメン12は、筒部17に形成された対応する連通孔17aを通じて、気管チューブ1の基端側で気管チューブ1の外方と連通している。従って、体外に露出している筒部17の連通孔17aに一端が嵌合した吸引用チューブ19の他端にシリンジまたは吸引ポンプ等を接続して吸引を行えば、体外から第1吸引用ルーメン12を通じて痰等の異物Xを吸引することができる。また、第2吸引用ルーメン13についても、第1吸引用ルーメン12と同様であり、吸引用チューブ20、筒部17に形成された対応する連通孔17b及び第2吸引用ルーメン13を通じて異物Xを吸引することができる。
【0034】
更に、カフ用ルーメン14は、筒部17に形成された対応する連通孔17cを通じて、気管チューブ1の基端側で気管チューブ1の外方と連通している。従って、体外に露出している筒部17の連通孔17cに一端が嵌合したカフ用チューブ21の他端にシリンジ等を接続すれば、体外にあるシリンジ等の操作により、カフ3の環状空間Yへの流体の供給や吸引を行うことができ、それによりカフ3の拡張及び収縮を操作することができる。
【0035】
なお、フランジ部材4の筒部17は、チューブ本体2の基端部11と同心円状に装着されており、チューブ本体2の周方向Cにおける第1吸引用ルーメン12の位置、第2吸引用ルーメン13の位置、及びカフ用ルーメン14の位置は、筒部17の対応する連通孔17a、17b、及び17cの周方向Cの位置の近傍とされている。そのため、各連通孔17a、17b、17cを短くすることができ、筒部17の連通孔17a、17b、及び17cの構成が複雑化することが抑制される。また、
図9に示すように、吸引用チューブ19及び20、並びにカフ用チューブ21は、
図9の平面視において、各連通孔17a、17b、17cからフランジ部18の突設されている方向に延在するように接続され、先端部8側には延在していない。このように接続することにより、気管チューブ1が気管内に留置された状態において、吸引用チューブ19及び20、並びにカフ用チューブ21が、患者の顎にぶつかることが抑制され、気管チューブ1が留置される患者の不快感を軽減することができる。
【0036】
フランジ部材4の構成材料としては、例えば、チューブ本体2と同様の材料で形成することができる。
【0037】
以下、本実施形態におけるチューブ本体2の詳細を更に説明する。
【0038】
[チューブ本体2の先端部8]
図6に示すように、チューブ本体2は、外周面の中心軸線O2と、中空部7を区画する内周面の中心軸線O1とが異なっている。具体的に、
図6に示すような、内周面の中心軸線O1と直交する断面(本実施形態では、チューブ本体2の先端面を含む一断面を除く)において、内周面の中心軸線O1は、外周面の中心軸線O2よりも上側に位置しており、
図6に示すように、同断面では外周面と内周面とは同心円ではない。より具体的に、
図6に示すように、チューブ本体2の外周面は、内周面の中心軸線O1と直交する断面において、湾曲部10の外側湾曲面側(
図6における下側)に位置する下面部22と、湾曲部10の内側湾曲面側(
図6における上側)に位置する上面部23と、チューブ本体2の周方向Cにおいて下面部22と上面部23とを繋ぐ側面部24と、で構成されており、チューブ本体2の厚みTは、同断面(本実施形態では、後述するテーパー形状部25のうち上面部23側の部分を含まない同断面)において、上面部23側よりも下面部22側が厚い。更に本実施形態では、同断面において、チューブ本体2の厚みTが、上面部23から下面部22に向かって周方向Cに進むにつれて漸増するように構成されている(
図6参照)。なお、「チューブ本体2の厚みT」とは、中心軸線O1と外周面上の一点とを結ぶ線分上でのチューブ本体2の肉厚を意味する。
【0039】
チューブ本体2の下面部22側の厚みTを、上面部23側の厚みTよりも厚くすることにより、下面部22側の壁内に形成される第1及び第2吸引用ルーメン12及び13の断面積を比較的大きくすることが可能となり、第1及び第2吸引用ルーメン12及び13での異物Xの詰まりを抑制することができると共に、吸引に必要な吸引圧力を低減でき、吸引効率を向上させることができる。
【0040】
ここで、
図2〜
図8等に示すように、チューブ本体2の先端部8の外周面には、外径が先端5に向かって漸減し、先端5まで延在するテーパー形状部25が形成されている。このテーパー形状部25により、チューブ本体2を体外から気管内に挿入する際の、挿入抵抗を軽減することができる。特に、上述したように周方向Cの位置により厚みT(
図6参照)が異なるチューブ本体2の先端部8の外周面にテーパー形状部25を設けることにより、チューブ本体2を体外から気管内に挿入する際に厚みTが厚い部分で生じ得る挿入抵抗の増大を、抑制することができる。なお、チューブ本体2を体外から気管内に挿入する際は、例えば、喉元の皮膚及び気管を切開して挿入口を形成し、後述するオブチュレータ50等を用いて挿入口を拡大させながら、チューブ本体2を挿入していく。オブチュレータ50は、カフ3を拡張させてチューブ本体2を気管内の所定位置に留置した後にチューブ本体2の基端6側から抜去される。また、オブチュレータ50は、チューブ本体2を気管内の所定位置に留置し、カフ3を拡張させる前にチューブ本体2の基端6側から抜去してもよい。
【0041】
更に本実施形態では、
図8に示すように、チューブ本体2の内周面の中心軸線O1に対するテーパー形状部25の角度θ1は、周方向Cの位置によらず略同一である。これにより、チューブ本体2を体外から気管内に挿入する際の、周方向Cの位置によって中心軸線O1に対する角度が異なることにより生じ得る周方向Cにおける挿入抵抗差を、低減することができる。
【0042】
また更に、本実施形態のテーパー形状部25は、下面部22での中心軸線方向Aにおける長さが上面部23での中心軸線方向Aにおける長さよりも長い斜円錐台形状を有する。具体的には、上述したようにチューブ本体2の内周面の中心軸線O1に対するテーパー形状部25の角度θ1は、周方向Cの位置によらず略同一である(
図8参照)と共に、
図3(a)に示すように、中心軸線方向Aにおけるテーパー形状部25の外周面の基端を周方向Cに結ぶことで形成される楕円(
図3(a)において「M」で示す実線により形成される楕円)を含む断面と、テーパー形状部25の外周面の先端(チューブ本体2の外周面の先端と同じ)を周方向Cに結ぶことで形成される円(
図3(a)において「N」で示す実線により形成される円)を含む断面とは平行していない。つまり、
図8に示すように、下面部22及び上面部23での中心軸線O1に対するテーパー形状部25の角度θ1は同一であるが、下面部22及び上面部23での中心軸線方向Aにおけるテーパー形状部25の長さは異なっている。
【0043】
そして、下面部22での中心軸線方向Aの長さを、上面部23での中心軸線方向Aの長さよりも長い構成とすることにより、テーパー形状部25以外の部分では下面部22側のチューブ本体2の厚みT(
図6参照)が上面部23側のチューブ本体2の厚みTよりも厚いにもかかわらず、チューブ本体2の先端面では、下面部22側の厚みTと上面部23側の厚みTとの間の肉厚差(厚みTの差)が小さい構成又は両者の厚みTが略等しい構成とすることが可能となる。すなわち、チューブ本体2の先端面において、周方向Cの位置による肉厚差を低減することができるため、周方向Cでの剛性差に起因するチューブ本体2の不均一な変形や、この不均一な変形に基づく挿入抵抗の増大を抑制することができる。
【0044】
特に、本実施形態のチューブ本体2のように、先端面でのチューブ本体2の厚みTを周方向Cの位置によらず均一にし、チューブ本体2の先端面において、内周面の中心軸線O1と外周面の中心軸線O2とが略一致する同心円状の構成とすることが好ましい(
図8参照)。このような構成とする場合には、先端面での挿入抵抗を小さくするために、先端面での厚みTが薄くなるように均一化することが特に好ましい。なお、本実施径形態のチューブ本体2の先端面の厚みTは、周方向Cの位置によらず0.6mmとしている。
【0045】
[チューブ本体2の第1及び第2吸引用ルーメン12及び13]
次に、第1吸引用ルーメン12(第1ルーメン12)と、第2吸引用ルーメン13(第2ルーメン13)との位置関係について詳細に説明する。
【0046】
図2〜
図8に示すように、第1吸引用ルーメン12は、チューブ本体2の壁内に、チューブ本体2の内周面の中心軸線O1に沿って延在しており、この第1吸引用ルーメン12は、カフ3及びカフ装着部9よりも基端部11側の位置で、第1吸引用ルーメン12の内壁に形成された内壁開口26からチューブ本体2の外周面に形成された外壁開口27まで貫通する第1吸引口部12bとしての吸引口を通じて外方と連通している。
【0047】
また、第2吸引用ルーメン13は、チューブ本体2の壁内に、チューブ本体2の内周面の中心軸線O1に沿って、カフ3よりも基端部11側の基端部11からカフ3よりも先端部8側の先端部8まで延在している。なお、第2吸引用ルーメン13は、上述したように、チューブ本体2の内周面まで貫通する第2吸引口部13bとしての吸引口を通じてチューブ本体2の内方の中空部7と連通している。
【0048】
ここで、
図6に示す断面は、第1吸引用ルーメン12、第2吸引用ルーメン13及びカフ用ルーメン14を含み中心軸線O1と直交する断面である。そして、
図6に破線で示す「P1」は、チューブ本体2の先端部8及び基端部11の位置での中心軸線O1を含む第1仮想平面P1を示しており、本実施形態の第1仮想平面P1は、チューブ本体2の中心軸線O1を全て含む平面である。また、
図6に破線で示す「P2」は、
図6の断面上での中心軸線O1を通り、第1仮想平面P1と直交する第2仮想平面P2を示している。そして、第1仮想平面P1と、チューブ本体2の外周面のうち湾曲部10(
図2等参照)の外側湾曲面側に位置する下面部22とが交わる交線を第1交線L1(
図8参照)とした場合に、
図6に示す点K1は、第1交線L1上の点を示している。また、第1仮想平面P1と、チューブ本体2の外周面のうち湾曲部10の内側湾曲面側に位置する上面部23とが交わる交線を第2交線L2(
図8参照)とした場合に、
図6に示す点K2は、第2交線L2上の点を示している。更に、
図6に二点鎖線で示す直線L3は、この断面視において、第1吸引用ルーメン12を区画する内壁のうち、第1吸引用ルーメン12の最大径を構成する2点を通る仮想線を示し、
図6に二点鎖線で示す直線L4は、この断面視において、第2吸引用ルーメン13を区画する内壁のうち、第2吸引用ルーメン13の最大径を構成する2点を通る仮想線を示している。なお、説明の便宜上、以下、直線L3を「第1直線L3」と記載し、直線L4を「第2直線L4」と記載する。
【0049】
図6に示すように、第2吸引用ルーメン13は、第1直線L3が交わらない位置に形成されていると共に、第1吸引用ルーメン12は、第2直線L4が交わらない位置に形成されている。このような構成とすることにより、第1吸引用ルーメン12と第2吸引用ルーメン13との周方向Cにおける距離を所定距離以上とすることができ、気管チューブ1のチューブ本体2を製造する際に、第1吸引用ルーメン12及び第2吸引用ルーメン13とを分離した別々のルーメンとして形作ることが容易となる。また、
図10に示すように、チューブ本体2の外周面に外壁開口27を形成する際に、形成する開口部が第2吸引用ルーメン13まで連通するのを防ぐことができる。
【0050】
また、
図6に示すように、第2吸引用ルーメン13は、チューブ本体2の下面部22側であって、第1仮想平面P1と交わる位置に設けられている。チューブ本体2の下面部22は、気管チューブ1が気管内に留置された状態において背中側となる面であり、横になって寝ている患者にとっては鉛直方向下側の面となる。つまり、第2吸引用ルーメン13を、下面部22側に配置することにより、寝ている患者の気管内で鉛直方向下方の内面(背中側の面)上に貯留し易い痰等の異物X(
図1参照)を、第2吸引用ルーメン13を通じて容易に吸引することが可能となる。
【0051】
更に、
図6の示すように、第1直線L3と第2直線L4とがなす角度θ2は90度より大きい。このような構成とすることにより、第1吸引用ルーメン12と第2吸引用ルーメン13との周方向Cにおける距離を所定距離未満とすることができる。上述したように、寝ている患者の気管内では、気管内の背中側の面上に痰等の異物Xが貯留し易い。従って、第1吸引用ルーメン12についても、第2吸引用ルーメン13と同様、チューブ本体2の下面部22側にあることが好ましい。そのため、第1吸引用ルーメン12及び第2吸引用ルーメン13を、
図6の断面視において第1直線L3と第2直線L4とのなす角度θ2が90度より大きくなるように配置することにより、第1吸引用ルーメン12の周方向Cの位置を、第1仮想平面P1と下面部22側で交わる位置に配置された第2吸引用ルーメン13と近い位置にすることができる。
【0052】
換言すれば、第1吸引用ルーメン12は、
図6の断面視において、中心軸線O1を中心として第1交線L1上の点K1から中心角が90度未満の位置に形成されていると共に、第1仮想平面P1及び第2仮想平面P2と交わらない位置に形成されている。つまり、
図6の断面において、第1吸引用ルーメン12は、第2仮想平面P2よりも下面部22側であって、第1仮想平面P1及び第2仮想平面P2と交わらない位置に形成されている。
【0053】
なお、
図6の断面視において、中心軸線O1を中心として、第1直線L3上の第1吸引用ルーメン12の中点Rは、前記第1交線L1上の点K1から中心角が30〜80度の範囲とすることが好ましく、40〜70度の範囲とすることがより好ましく、55〜65度の範囲とすることが特に好ましい。また、
図6の断面視において、第2直線L4上の第2吸引用ルーメン13の中点Sは、第1仮想平面P1と交わる位置にあることが好ましいことから、
図6の断面視において、中心軸線O1を中心として、第1直線L3上の第1吸引用ルーメン12の中点Rは、第2直線L4上の第2吸引用ルーメン13の中点Sからも中心角が30〜80度の範囲にあることが好ましく、40〜70度の範囲とすることがより好ましく、55〜65度の範囲とすることが特に好ましい。但し、第2吸引用ルーメン13は、下面部22側に位置していればよく、
図6に示すように、第2吸引用ルーメン13の中点Sが、第1仮想平面P1上に位置しない構成であってもよい。
【0054】
また、
図6に示すような、第1吸引用ルーメン12及び第2吸引用ルーメン13を含み中心軸線O1に直交する断面において、第1吸引用ルーメン12及び第2吸引用ルーメン13は略楕円形状を有している。従って、本実施形態での第1直線L3は、第1吸引用ルーメン12の長軸及びその延長線であり、本実施形態での第2直線L4は、第2吸引用ルーメン13の長軸及びその延長線である。
【0055】
なお、
図6に示すような、第1吸引用ルーメン12、第2吸引用ルーメン13及びカフ用ルーメン14を含み中心軸線O1と直交する断面において、カフ用ルーメン14についても、チューブ本体2の外周面の上面部23側で、第1仮想平面P1と交わる位置に形成されている。すなわち、
図6に示す断面視で、第2吸引用ルーメン13とカフ用ルーメン14とは、中心軸線O1を挟んで略対向する位置に形成されている。
【0056】
[第1吸引用ルーメン12の第1吸引口部12b]
次に、第1吸引用ルーメン12の第1吸引口部12bとしての吸引口の詳細について説明する。
図2、
図4(a)、5(b)に示すように、第1吸引口部12bは、カフ3よりも基端部11側の位置で、第1吸引用ルーメン12の内壁に形成された内壁開口26からチューブ本体2の外周面に形成された外壁開口27まで貫通する吸引口である。
【0057】
図10は、中心軸線O1と直交し内壁開口26を含む断面を示す。
図10に示すように、内壁開口26は、上述した
図6での第1吸引用ルーメン12と同様、
図10に示す断面上の中心軸線O1を通り、第1仮想平面P1と直交する第2仮想平面P2よりも、チューブ本体2の外周面のうち湾曲部10(
図2等参照)の外側湾曲面側に位置する下面部22側であって、第1仮想平面P1及び第2仮想平面P2と交わらない位置に形成されている。従って、気管内の背中側の内面に貯留し易い痰等の異物Xを、内壁開口26及び第1吸引用ルーメン12を通じて容易に吸引することができる。
【0058】
更に、
図10に示す断面において、内壁開口26の周方向における中点Wの位置は、上述した
図6における第1直線L3上の第1吸引用ルーメン12の中点Rと同じであり、
図10に示す断面上での中心軸線O1を中心として、第1交線L1上の点K1から中心角が30〜80度の範囲とすることが好ましく、40〜70度の範囲とすることがより好ましく、55〜65度の範囲とすることが特に好ましい。
【0059】
また、第1吸引口部12bとしての吸引口を、チューブ本体2の外周面の外方から正面に見た場合には、
図4(a)に示すように、内壁開口26は略四角形状であり、外壁開口27は略楕円形状である。より具体的に、内壁開口26は、略長方形状であり、外壁開口27は、長軸方向が中心軸線方向Aと平行せずに、略直交する略楕円形状である。このような内壁開口26及び外壁開口27の形状は、第1吸引口部12bとしての吸引口をチューブ本体2の外壁に形成された溝とすることにより形成している。具体的に、吸引口を形成する溝は、中心軸線O1と平行しない方向にチューブ本体2の周方向Cに沿わず直線状に延在している。そして、
図2に示すように、吸引口を形成する溝は、溝内面の横断面が一様な円弧形状である。そして、溝の縁が略楕円形状の外壁開口27を区画し、溝の内側の横断面が一様な円弧形状の曲面の一部が略四角形状の内壁開口26を区画している。なお、吸引口を形成する溝は、別の言い方をすれば、チューブ本体2の外周面に、円筒部材の外周面を押しつけて模ったような円筒外周面の受け形状をしている。
【0060】
このように、第1吸引口部12bとしての吸引口を、中心軸線O1と平行しない方向にチューブ本体2の周方向Cに沿わず直線状に延在する溝で構成することにより、吸引中に気管内面が内壁開口26を塞ぐように密着することを抑制することができる。
【0061】
また、
図11は、第1吸引口部12bとしての吸引口の変形例を示すものである。
図4(a)に示す第1吸引口部12bとしての吸引口は、中心軸線O1と略直交する方向に延在する溝により構成されたものであるが、
図11に示す第1吸引口部12bとしての吸引口は、中心軸線O1と平行せず、更に直交しない方向に延在する溝により構成されたものである。このような溝により第1吸引口部12bとしての吸引口を構成することにより、内壁開口26を、チューブ本体2の外周面の外方から正面に見た場合に、略平行四辺形状とすることができ、表面張力等の影響により、痰や唾液等を吸引し易い形状とすることができる。
【0062】
更に、
図11では、第1吸引口部12bとしての吸引口を構成する溝の内面には、複数の凸部40が設けられ、凹凸形状が形成されている。溝の内面にこのような凹凸形状を形成することにより、吸引中に気管内面が内壁開口26を塞ぐように密着することを一層抑制することができる。
【0063】
また更に、
図11において、第1吸引口部12bとしての吸引口は、中心軸線方向Aにおいて湾曲部10の位置に形成されている。そして、第1吸引口部12bとしての吸引口を湾曲部10に形成する際には、中心軸線O1と平行せず、更に直交しない方向に延在する溝により構成することが有益である。つまり、第1吸引口部12bとしての吸引口を、中心軸線O1と平行せず、更に直交しない方向に延在する溝により構成し、その溝を湾曲部10の位置に形成すれば、内壁開口26が上下方向に長い対角線を有する略平行四辺形状とすることができる。そのため、湾曲部10の位置に、中心軸線O1と直交する方向に延在する溝を形成する場合と比較して、内壁開口26の下端位置を下面部22側にすることができるため、チューブ本体2を気管内に留置した際に、気管内の背中側の内面上に貯留する痰や唾液等を吸引し易くすることができる。
【0064】
なお、上述したように、第1吸引口部12bとしての吸引口は、気管チューブ1のカフ3の基端6側近傍に貯留する痰や唾液等の異物X(
図1参照)を吸引することができるように、中心軸線方向Aにおいて、カフ3及びカフ装着部9の基端6側近傍の位置にあることが特に好ましい。
【0065】
[気管チューブ1の製造方法]
次に、本実施形態の気管チューブ1の製造方法について説明する。
図12は、気管チューブ1の製造方法のうちチューブ本体2の製造方法の手順を示すフローチャート図である。
図12に示すように、気管チューブ1のチューブ本体2の製造方法は、先端5から基端6まで貫通する中空部7を区画すると共に壁内に2つのルーメンとしての第1吸引用ルーメン12及び第2吸引用ルーメン13を有するチューブ材を押し出し成型するステップS1と、この押し出し成型されたチューブ材の外周面にカフ3を接着するステップS2と、チューブ材の先端部に、テーパー形状に形成された内面を有する金型を押しあて、チューブ材の先端部における外周面に、外径が先端に向かって漸減し、先端まで延在するテーパー形状部25を形成するステップS3と、チューブ材の先端開口から例えばフェザー刃等の刃物を挿入し、外周面のテーパー形状部25が形成された位置での内周面のうち、第2吸引用ルーメン13の先端部がある位置に溝を形成するステップS4と、チューブ材のカフ装着部から基端側近傍の位置に、先端が円形の刃物等により第1吸引口部12bを形成するステップS5と、を含むものである。
【0066】
上述したテーパー形状部25を形成するステップS3では、金型の内面と、チューブ材の外周面との間に、カフ3のチューブ材の先端5側の端縁部16を挟み込み、カフ3の一部を溶融させる。これにより、カフ3の端縁部16が溶融して、カフ3の端縁部16とカフ装着部9の外周面との接着力を更に強くすることができる。
【0067】
また、第2吸引用ルーメン13の先端部を区画する内周面に溝を形成するステップS4で形成された溝により、上述した第2吸引用ルーメン13の第2吸引口部13b(
図7参照)が形成される。上述した製造方法では、刃物を用いて内壁の一部を切り取ることにより溝を形成しているが、内壁の一部を切り欠いて溝を形成可能な切り欠き部材であればよく、上述の刃物に限られるものではない。更に、上述した製造方法では、第1吸引口部12bを形成するステップS5についても、先端が円形の刃物や、例えば彫刻刀の丸刀のような先端がU字形状の刃物を用いて
図2や
図10等に示すような溝状の第1吸引口部12bを形成しているが、チューブ材の外壁の一部を切り欠いて溝状の第1吸引口部12bを形成可能な切り欠き部材であればよく、上述した刃物に限られるものではない。
【0068】
なお、チューブ本体2の製造方法以外の気管チューブ1の製造方法の各ステップについては、公知の種々の方法を用いて実現することができ、ここでは記載を省略する。
【0069】
[気管チューブセット100]
最後に、上述した気管チューブ1と、チューブ本体2と共に体外から気管内に挿入されるオブチュレータ50と、を備える気管チューブセット100について説明する。
【0070】
図13は、気管チューブセット100の断面図である。
図13に示すように、気管チューブセット100は、チューブ本体2を備える気管チューブ1と、先端がチューブ本体2の先端開口28から突出した状態で、気管チューブ1と共に体外から気管内へと挿入されるオブチュレータ50と、を備えている。
【0071】
オブチュレータ50の先端は、気管チューブ1のチューブ本体2の先端5よりも先に皮膚及び気管に形成された挿入口に挿入される。そして、オブチュレータ50により挿入口を拡げ、チューブ本体2を気管内に挿入し易くするものである。
【0072】
気管チューブ1には、オブチュレータ50をチューブ本体2内に挿入する際に、オブチュレータ50と係合して、チューブ本体2の内周面の中心軸線方向Aにおける、気管チューブ1に対するオブチュレータ50の挿入量を規制する係合部29が設けられている。
【0073】
具体的に、
図13に示す気管チューブ1の係合部29は、フランジ部材4の筒部17の基端面であり、オブチュレータ50をチューブ本体2の基端6(
図2等参照)側からチューブ本体2内に挿入していくと、オブチュレータ50の基端部51に設けられたフランジ部52が、気管チューブ1のフランジ部材4における筒部17の基端面と当接し、オブチュレータ50をそれ以上挿入することができなくなる。つまり、気管チューブ1に対するオブチュレータ50の挿入量は、気管チューブ1のフランジ部材4における筒部17の基端面により規制される。なお、係合部は、
図13に示すものに限られるものではなく、例えば、フランジ部材4の筒部17の内面に雌ねじ部を設け、オブチュレータ50の基端部51の外面に雄ねじ部を設け、雌ねじ部と雄ねじ部とを螺合することにより、気管チューブ1とオブチュレータ50とを係合させる構成としてもよい。
【0074】
上述したように、チューブ本体2の先端部8の外周面には、先端5(
図2等参照)に向かって外径が漸減する、先端5まで延在するテーパー形状部25が形成されている。また、オブチュレータ50の先端部53の外周面には、先端に向かって外径が漸減するテーパー形状部54が形成されている。以下、チューブ本体2のテーパー形状部25と、オブチュレータ50のテーパー形状部54とを区別するために、チューブ本体2のテーパー形状部25を「第1テーパー形状部25」と記載し、オブチュレータ50のテーパー形状部54を「第2テーパー形状部54」と記載する。
【0075】
オブチュレータ50が係合部29と係合した状態において、第2テーパー形状部54の少なくとも一部はチューブ本体2の先端開口28から外方に露出しており、中心軸線方向Aでは、チューブ本体2の第1テーパー形状部25と、オブチュレータ50の第2テーパー形状部54とが、連続して位置している。このような構成とすることにより、体外から気管内に挿入する際の、チューブ本体2の先端5での挿入抵抗を低減することができる。
【0076】
また、
図13では、中心軸線方向Aに対する第1テーパー形状部25の角度θ1は、第2テーパー形状部54の角度θ3よりも大きい。なお、中心軸線方向Aに対する第1テーパー形状部25の角度θ1は、第2テーパー形状部54の角度θ3より小さくすることも、略等しい角度にすることも可能であるが、
図13に示すように、第1テーパー形状部25の角度θ1を、第2テーパー形状部54の角度θ3よりも大きくすることで、チューブ本体2の先端5における挿入抵抗を軽減することができより好ましい。また、第1テーパー形状部25の角度θ1を、第2テーパー形状部54の角度θ3と略等しい角度にすることで、チューブ本体2の先端5とオブチュレータ50とを略一体構造とし、先端5における挿入抵抗を軽減することもできる。また、第1テーパー形状部25の角度θ1を、第2テーパー形状部54の角度θ3よりも小さくすることで、チューブ本体2の先端5とオブチュレータ50とが過度に挿入されることによる気管内壁への損傷を軽減することができる。
【0077】
更に、チューブ本体2は、先端開口28を区画する縁部30を含む先端面を備えており、オブチュレータ50が係合部29と係合した状態において、第2テーパー形状部54の外周面はチューブ本体2の縁部30と嵌合して当接している。つまり、第2テーパー形状部54の外周面は、周方向Cの全域に亘って縁部30と当接した状態となっている。このような構成とすることにより、第1テーパー形状部25と第2テーパー形状部54との間の径方向Bの段差を、チューブ本体2の先端面における厚みT(
図6参照)だけとすることができ、第2テーパー形状部54の外周面が周方向Cの全域でチューブ本体2の縁部30と当接していない構成と比較して、チューブ本体2の先端5における挿入抵抗を軽減することができる。
【0078】
なお、本発明は、上述した実施形態で特定される構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上述したチューブ本体2は、先端部8、カフ装着部9及び基端部11を湾曲しない直線状の筒部としているが、先端部から基端部までを湾曲したチューブ本体とすることもできる。
【0079】
更に、
図6に示すように、上述したチューブ本体2における、第2直線L4上の第2吸引用ルーメン13の中点Sは、第1仮想平面P1上に位置しておらず、側面部24側にずれた位置にあるが、
図6の断面視において中点Sが第1仮想平面P1上に位置する構成とすれば、気管内の背中側の内面に貯留し易い痰等の異物Xが、第2吸引用ルーメン13を通じて吸引され易くなるため、このような配置とすることがより好ましい。また、
図6に示すように、上述したチューブ本体2における、第2直線L4上の第2吸引用ルーメン13の中点Sが、第1仮想平面P1上に位置していない構成とする場合であっても、
図14に示すように、第2吸引口部13bとしての吸引口については、第1交線L1上の点K1に近い位置に形成するようにすれば、異物Xを吸引し易い構成とすることができる。なお、
図14は、
図7と同位置での断面を示しており、この断面視において、第2吸引口部13bとしての吸引口のうち吸引口の最大径を構成する2点を通る第3直線L5(仮想線)上での吸引口の中点Uが第1仮想平面P1上に位置するように、第2吸引口部13bとしての吸引口は配置されている。