(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フォトマスキング化合物は、光の適用に際して第一および第二の光異性体の間で相互転換する可逆的に光異性化可能なフォトマスキング化合物であり、第一の異性体は光の少なくとも一の活性化波長にて第二の異性体が行うよりも多くの光を吸収する、請求項2の組成物。
光開裂可能な結合には、クマリン部分、ニトロベンジルエーテル部分、ニトロインドリンエーテル部分、p-ヒドロキシフェナシル部分、またはそれらの組合せが含まれる、請求項6の組成物。
光学ヒドロゲル組成物は、眼内レンズ、角膜インレー、角膜リング、またはヒトペイシェントにおける人工角膜(keratoprotheses、keratoprosthesis)としての使用のために形成され、およびそれに適する、請求項1の組成物。
光開裂可能な結合の少なくとも一部分を開裂するように、フォーカスされた、近IR、可視またはUV光源によって照射され、光学ヒドロゲル組成物内で水の再分配が可能にされる、請求項1のヒドロゲル組成物から導かれる光学デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明的な実施態様の詳細な説明
本発明は、添付の図面および実施例に関連して行われる以下の説明を参照することによってより一層難なく理解することができ、それらのすべてはこの開示の一部を形成する。この発明は、ここに記載されるか、または示される特定の生成物、方法、条件またはパラメータに制限されず、およびここに用いられる用語は、ほんの一例として特定の実施態様を説明する目的のためのものであり、そして請求される発明を何ら制限することを意図するものではないと理解すべきである。同様に、特に記載のない限り、可能なメカニズムまたは作用のモードまたは改善ための理由に関する任意の説明は単なる例示であることを意味し、およびここで本発明は、任意のそのような示唆されたメカニズムまたは作用のモードまたは改善のための理由の正確さまたは不正確さによって制約されるべきではない。この明細書、請求の範囲、および図面を通して、それらの説明が、組成物および前記組成物を作成および使用する方法に言及することが認識される。すなわち、本開示が、組成物または組成物を作成もしくは使用する方法に関連した特徴または実施態様を説明または請求する場合、そのような説明または請求項が、これらの前後関係(コンテクスト)の各々および一つ一つにおいて、これらの特徴またはすべての実施態様毎に拡張することを意図されることが理解される(すなわち、組成物、作成の方法、および使用の方法)。
【0013】
本開示において、単数形「a(ある)」、「an(母音の前で“a”の代わりに主に用いる)」、および「the(その)」には、複数の参照が含まれ、および特定の数値の参照には、前後関係が明らかに他を示さない限り、少なくともその特定の値が含まれる。したがって、たとえば、「物質」への言及は、そのような物質およびその技術での熟練者(当業者)に知られるその等価物、等々の少なくとも一への言及である。
【0014】
値は、デスクリプター「約」の使用によって近似として表現されるとき、特定の値は別の実施態様を形成することが理解されるであろう。一般に、用語「約」の使用は、開示される主題によって得ようとする所望の特性に応じて変動することができ、およびその機能に基づいて、それが使用される特定の前後関係において解釈される近似を指し示す。その技術での精通した人(当業者)は、これをルーチンの問題として解釈することができるであろう。いくらかのケースにおいて、特定の値のために使用される有効数字の数は、単語「約」の広さを決定する一つの非限定的な方法でありうる。他のケースでは、一連の値において使用される階級は、各値について用語「約」に使用可能な意図する範囲を決定するために用いられうる。示される、すべての範囲は包括的で、および組み合わせ可能である。すなわち、範囲において述べられる値への言及には、その範囲内のあらゆる値が含まれる。
【0015】
明確性について、ここで別々の実施態様の前後関係で説明される本発明の一定の特徴はまた、単一の実施態様において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。言い換えると、明らかに不適合または特に除外されない限り、それぞれの個々の実施態様は、任意の他の実施態様(群)と合体可能であると考えられ、およびそのような組合せは別の実施態様であると考えられる。逆に、簡潔にするために、単一の実施態様の前後関係で説明される本発明の様々な特徴はまた、別々にまたは任意のサブ(下位)コンビネーションで提供されてもよい。最終的に、実施態様は、一連のステップの一部分またはより一層一般的な構造の一部分として説明されうる一方、前記各ステップはまた、それ自体で無関係な実施態様、他のものと合体可能と考えることができる。
【0016】
用語「随意」または「随意に」は、続いて記載される状況が、発生してよく、またはそうでなくてもよいことを意味し、その結果、状況が発生する場合およびそれが発生しない場合が含まれる。たとえば、語句「随意に変形可能な」は、ヒドロゲルが照射後にヒドロゲル内での水の再分配にもかかわらず、実際に変形しても、またはそうしなくてもよいことを意味する(少なくとも任意の知覚の程度まで)。このように、記載「随意」は、必要とされないが、随意条件が発生可能にさせる。
【0017】
移行の用語「備える(comprising、「から構成される」、「含む」とも称される。)」、「から本質的になる」、および「からなる」は、特許専門用語(patent vernacular)において認められた意味でのそれらのものを一般的に暗示することを意図し、すなわち、(i)「備える」は、「含む」、「含有する」、または「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、および追加の、列挙されていない要素または方法ステップを排除せず、(ii)「からなる」は、任意の要素、ステップ、または請求項に特定されない成分を除外し、および(iii)「から本質的になる」は請求の範囲を特定された物質またはステップ「および基本的および新規な特徴(群)には実質影響しないもの」の請求される発明に制限する。語句「備える」(またはその等価物)の観点で説明される実施態様はまた、実施態様として、「からなる」、および「から本質的になる」に関して無関係に記載されるものを提供する。「から本質的になる」に関して提供されるそれらの実施態様について、基本的なおよび新規な特徴(群)は、光の適用を用いヒドロゲルの形状または屈折率(または双方)を変え、ヒドロゲルの特性およびヒドロゲル内の水の同時に生じる再分配を修飾するために、方法の簡易な操作性(またはそのような方法において使用されるシステムまたはそれから導かれる組成物)である。
【0018】
リストが提示されるとき、特に明記しない限り、そのリストの個々の要素、およびそのリストのすべての組合せは、別個の実施態様であることが理解されるべきである。たとえば、「A、B、またはC」として提示される実施態様のリストは、実施態様、「A」、「B」、「C」、「AまたはB」、「AまたはC」、「BまたはC」または「A、B、またはC」を含むと解釈されるべきである。
【0019】
本発明の一定の実施態様は、それらの光学ヒドロゲル組成物が含まれ、
アクリラート(アクリレートとも称される。以下同じ)、メタクリラート、または双方のアクリラートおよびメタクリラートモノマーから調製される少なくとも一の親水性ポリマーまたはコポリマーで、光開裂可能な結合により架橋される親水性ポリマーまたはコポリマー、
ヒドロゲルには、全体のヒドロゲル組成物の重量に対して約10重量%から約50重量%までの範囲における量において水が含まれ、
前記組成物は、約200および約1000nmからの範囲において光の少なくとも一の波長に透明であり、および
前記光開裂可能な結合は、約200nmおよび約1000nm(1ミクロン)からの範囲において光の少なくとも一の活性化波長の適用による開裂に受容性である
ことを備える(から構成される)。いくらかの実施態様において、光の少なくとも一の活性化波長は、約200nmから約300nmまで、約300nmから約400nmまで、約500nmから約600nmまで、約600nmから約700nmまで、約700nmから約800nmまで、約800nmから約900nmまで、約900nmから約1000nm(1ミクロン)までの範囲、またはこれらの範囲の二またはそれよりも多く(二以上)の任意の組合せで存在する。他の特定の波長はここに記載される。いくらかの実施態様において、本組成物は随意に、光開裂可能な結合の開裂およびヒドロゲル内の水の再分配に際して変形可能である。
【0020】
ここで用いられるように、用語「光学ヒドロゲル」は、物理的特性で、生体適合性および光学特性(例は、視覚的明瞭さ)を含めたものをもち、光学デバイス(光学装置、光学素子)において用いるのに適するヒドロゲル組成物を暗示するために用いる。しかしながら、ここに説明する基本的原理(例は、電磁放射の適用による架橋密度における選択的変化後のゲル内の液相の再分配に基づく形状または光学的特性の変化)が、他のゲル組成において使用するのにも適しており、およびこれらの他の組成物も本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0021】
ヒドロゲルは、ヒドロゲル構造を支えることが可能な任意の親水性ポリマーシステムを含むことができるが、好ましい実施態様において、この技術の一つの重要な適用は、光学デバイスでのその使用であり、ヒトペイシェント中に移植され、ポリマー(重合体)およびヒドロゲルは、そのような適用において、適合性であり、使用するのに適する。さらに、これらのヒドロゲルは、アクリレート、メタクリレート、または双方のアクリレートおよびメタクリレートモノマーを含む生体適合性物質から調製されるポリマーを含むことができる。ここで使用されるように、用語「(メタ)アクリレート」は、そのような物質として、当該技術分野で認識されているように、アクリレート、メタクリレート、または双方のアクリレートおよびメタクリレートモノマーを含む物質を指す。より一層好ましい実施態様において、アクリレートまたはメタクリレート(即ち、「(メタ)アクリレート」)は、水の適合性官能基、たとえば、ヒドロアルキル(例は、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピル)基のようなもので置換される。非親水性モノマーは、ポリマー物質の親水性および屈折率を修飾するのを助けるために用いることができ、および(メタ)アクリル酸エステル重合体のケースにおいて、疎水性のアクリレート/メタクリレートを、これらの特性を調整するために用いることができる。模範的で適切な(メタ)アクリレートには、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル2-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、エチル2-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレートおよび3-フェニルプロピル(メタ)アクリレートが含まれる。たとえば、スキーム1および
図1を参照。
【化1】
【0022】
本発明のヒドロゲルは架橋され、少なくともいくらかのクロスリンカー(架橋剤)が光開裂可能な結合を備える。このことは、選択的開裂を可能にし、およびヒドロゲルの架橋密度における変化を伴い、それは順に、材料の形状および屈折率に影響を及ぼすことができる。そのような連結は、電磁放射線、特に光の任意の供給源と共に光開裂可能になるように選定されうる。なるべくなら、連結は、光、たとえば、多光子照射の共焦点供給源により光開裂可能になるように選定され、ヒドロゲルまたはヒドロゲルを含む光学装置の本体においてどこにでも連結の選択的開裂を可能にする。これを達成するための一つの特に魅力的なシステムは、二重または多光子照射の適用によって光開裂に対して受容性である光開裂可能な結合を使用することである。多光子照射は、二またはそれよりも多くの低エネルギー光子のほぼ同時に起こる吸収を、そうでなければ唯一、高エネルギーレーザーによってアクセス可能なエネルギーレベルを与えるように提供する。この方法は、特に魅力的であり、なぜなら、その共焦点性質のためであり、それは物体(オブジェクト)、この場合にヒドロゲルにおいて、3次元の精度と共にエネルギーを集中する能力を提供する。さらに、この技術は、高エネルギーが照射するレーザーの焦点の周りに小さな容量においてだけ集束されることを提供し、その結果、照射は、周囲の物質を変化させたり、または損傷させたりすることなく、特定の標的領域または容量(ボリューム)に制限される。
【0023】
そのような複数の励起/照射に関連した化学物質には、クマリン、オルト-ニトロベンジルアルコールまたはエーテル類、ニトロインドリンアルコールまたはエーテル類、またはp-ヒドロキシフェナシル部分を含むものが包含され、および本発明では、官能基のこれらのタイプのうちの一またはそれよりも多く(一以上)を含む結合が好ましい。これらはポリマー骨格中に前駆体を組み込み、そして次に、それらを架橋することによるか、またはプレポリマーのモノマーと一緒に直接に物質を重合することによるかのいずれかで、ヒドロゲルマトリクス中に組み込むことができる。たとえば、(メタ)アクリレートポリマーの場合に、望ましい架橋ヒドロゲルは、(メタ)アクリレートモノマーを、ある構造で、次のようなもの
【化2】
式中、nは1から100までの範囲における整数である、
を有する一以上の化合物と共重合することによって得ることができる。明らかに、架橋密度は得られるポリマーの物理的性質に影響を及ぼし、および通常の技量の者は過度な実験を伴わずに要望通りに特性を調節ことができるであろう。
【0024】
重要なことには、架橋密度は、ヒドロゲルマトリクス内の水の量および分配に影響を及ぼす。好ましい実施態様において、光学ヒドロゲル組成物は、約5重量%から約10重量%まで、約10重量%から約20重量%まで、約20重量%から約30重量%まで、約30から約40重量%まで、約40重量%から約50重量%まで、約50重量%から約60重量%まで、またはこれらの範囲の二以上の任意の組合せの範囲の水を含み、そこでは重量パーセントは全体の光学ヒドロゲル組成物の重量に対するものである。好ましい実施態様では、水は約10重量%から約50重量%までの範囲で存在する。いくらかの実施態様では、水は、ヒドロゲル組成物の本体内で異方的に存在してもよい(すなわち、連続または不連続勾配のように存在)。たとえば、ヒドロゲルが、平坦または湾曲したシートの形態であるか、またはレンズの形態であり、二(またはそれよりも多く)の表面を有することで特徴付けられる場合、製造の方法に応じて、架橋密度は一方の面近くで他の面よりも高くすることができ、または表面の間の密度に対してそれぞれまたはすべての面でより一層高くもしくは低くてもよい。架橋密度におけるこの変化は、次いで、そのような構造の本体内の水の濃度に対して対応する逆の効果を有することが期待されるであろう。しかし、いくらかの実施態様では、これらのヒドロゲル組成物における水はヒドロゲル組成物の本体全体にわたって実質均一に分配される。用語「実質均一」はヒドロゲルにわたっていくらかの微視的変動を可能にするが、これらの変動は巨視的スケールでヒドロゲルを含むデバイスの有用性に対して比較的重要でないことを言外に意味する。
【0025】
架橋部分の化学的性質はまた、それらの開裂が、より一層高いエネルギーのUVまたは可視光によるか、集束された光源の使用を意図的に通しての照射によって、またはいくらかのケースにおいて、適切な波長の環境光によっても、影響を及ぼされることがありうるようにされる。これらの連結の不注意な開裂を避けるために、たとえば、組成物または対応する光学装置が環境光に曝されるとき、いくらかの実施態様において、本発明の光学ヒドロゲル組成物にはさらに、約200nmから約365nmまでの範囲における光の波長を吸収するフォトマスキング化合物が含まれる(comprisea)ことができる。いくらかの実施態様において、フォトマスキング化合物には、ベンゾトリアゾール部分が含まれる(例は、
図5参照)。いくらかの実施態様において、このフォトマスキング化合物は、光の適用に際して第一および第二の光異性体間で相互転換する可逆的に光異性化可能なフォトマスキング化合物であり、そこでは、第一の異性体は光の少なくとも一の活性化波長にて、第二の異性体が行うよりも多くの光を吸収する。そのような光異性体、および操作のそれらの原理は、米国(U. S.)特許第8604098号および第8933143号明細書において説明されており、ここに参照することによってその内容を、少なくともそのようなフォトマスキング構造およびそれらの使用の方法の説明のために組み込む。そのような組成物において、フォトマスキング化合物は一般的に、第一の異性体および第二の異性体間で第一の波長および強度での電磁エネルギーの吸収により光異性化可能であり、なるべくなら、本発明の場合において、フォトマスキング化合物は、フォトマスキング化合物が第一の異性体から第二の異性体へ光異性化されない限り、またはそうされるまで、光開裂可能な結合の開裂をブロックするのに十分な量で存在する。そのような光異性化可能なフォトマスキング化合物は、シス-トランス、環化、または開環変換によって動作しえ、およびたとえば、アゾアリーレン(azoarylenes)、フルギド、スピロピラン、ナフトピラン、キノン、スピロオキサジン、ニトロン、チオインジゴ、ジアリールエテン、またはジチエニルエチレン(dithienylethylenes)などのような化合物を含むことができる。
【0026】
ここに記載のように、本発明の一定の実施態様は、これらの光学ヒドロゲル組成物が形造られ、および随意に、ヒトペイシェントに移植するために設計された光学デバイスとしての使用に適することを提供する。そのような光学デバイスには、眼内レンズ、角膜インレー、角膜リング、または人工角膜(人工角膜片)が含まれる。これらのデバイスはまた、ペイシェントのレンズカプセル(水晶体嚢)において配置することができる。これらの光学デバイスは、たとえば、親水性眼内レンズのために、今回、匹敵する目下のところ利用可能な光学デバイスの製造のために利用されるものと同様の技術を用いて調製することができる。ここに記載されるように、適切な架橋密度および水含量と共に、レンズは様々なパワー(倍率)の折り畳み可能なレンズを提供するように成形することができ、および標準的な触覚学(standard haptics)を用いて製造することができる。
【0027】
重ねて、光開裂可能な架橋部分の存在は、光を用いて形状およびこれらの光学ヒドロゲル組成物の光学特性またはデバイス(the shape and optical characteristics these optical hydrogel compositions or devices)を変える能力を提供し、これらの変換を達成し、および構造を生じさせるための方法はまた、本発明の範囲内である。
【0028】
たとえば、本発明の一定の実施態様には、光学デバイスの屈折率を修飾するそれらの方法が含まれ、前記光学デバイスには、光学ヒドロゲル組成物が含まれ、前記光学デバイスまたは光学ヒドロゲルには、ここに記載されるデバイスまたはヒドロゲルのいずれかが含まれ、方法には、少なくとも一部分の光開裂可能な結合を開裂させるように、約200nmから約1ミクロンまでの範囲において(または任意の一以上のここに記載されるこのより一層広い範囲のサブ範囲)光の少なくとも一の波長を用いて光学ヒドロゲル組成物を照射することが含まれる。この照射は、ヒドロゲルにおいて所望の変化に影響を与えるために、必要な数の光開裂可能な結合を開裂させるのに十分なパワーおよび期間にて、UV-Visの、または多光子近IR波長の向けられた(directed)焦点を用いて達成することができる(所望の特性、例は、屈折率の変化によって定められるように)。LASIKまたは白内障手術のために有用であると目下考えられるレーザーは、本願において有用であることが期待される。そのような処置において、レーザーは、約0.05nJから1000nJまでの範囲において、またはこの範囲内のサブ範囲においてパルスエネルギーを適用することができる(例は、約0.2nJから約100nJまでおよび約0.5から約10nJまで)。そのような処置において、レーザーは、約1フェムプト秒(femptoseconds、femtosecond)から約500フェムト秒まで、なるべくなら、約4から約100フェムト秒までの範囲内の持続時間をもつパルスを提供する。そのようなパルスパワーおよび持続時間は、この場で記載の(instantly described)光学ヒドロゲルにおいて適切であると考えられる。
【0029】
レンズまたは他の光学デバイスの場合、このことは、予め定められた方法において、デバイスの光学特性を調整するために使用することができる。これらの光不安定な(photolabile)結合の選択的な、および集中した開裂、およびそのような局所的架橋密度は、ヒドロゲル構造内の水の再分配をもたらし、それは順に、レンズの屈折力での変化を生成し、ヒドロゲルの照射領域がより一層多くの水を吸収するからである。水およびマトリクス物質が異なる屈折率をもつので、レンズのこの領域は、レンズの形状が変化するようにパワーを変化させる。(スキーム2)。クマリン系架橋剤の10%により負荷されたレンズの365nmでの照射は、検出可能な形状変化をもたらした(
図2)。
【化3】
【0030】
レーザー、特に共焦点多光子レーザーの使用は、これらの方法に特に適し、ヒドロゲルマトリクス内で照射の正確で、そして集中した照射、および三次元の制御が、組成物またはデバイスの他の部分に損傷を与えることなく可能にされる。このようにして、ヒドロゲル内での変化を三次元において調整することが可能で、たとえば、屈折率への変化の正確な制御に影響を与えるように、三次元の随意にオーバーレイされたポケット、チャネル、またはより一層低い架橋密度/水のより一層高い濃度の層が生成される。
【0031】
一定のサブの実施態様はまた、方法類を提供し、そこでは方法はヒトの眼において光学デバイスの外科的挿入後に実行される。他のサブの実施態様は、方法がさらに、光学ヒドロゲル組成物の屈折率において変化を検証することを含むことを提供する。各々の創意に富む方法類は、先行する照射の効果を確認して後、一以上の回数繰り返してもよい。後の照射は、より一層正確なチューニングのための光学ヒドロゲルまたはデバイスの同じか、または異なる部分に適用されてもよい。
【0032】
フォトマスキング光異性体を含むそれらの組成物について、方法類はさらに、光開裂可能な結合の光開裂を適用する前に、フォトマスキング化合物の光異性化を引き起こすために、光異性化が、フォトマスキング化合物を第一の光異性体から第二の光異性体に変換するように、第一の波長の十分な電磁エネルギーを適用することを含んでもよく、およびそこでは第二の光異性体は第二の波長で第一の光異性体が行うよりも少なくしか光を吸収しない。光異性化は、シス-トランス、環化、またはフォトマスキング化合物内で開環遷移を含んでいてもよい。
【0033】
上述するように、照射された組成物は、記載された方法類を使用して、初期組成物から導かれ、また本発明の範囲内のものである。完全を期すために、そのような実施態様には、ここに記載のヒドロゲル組成物のいずれかから導かれるそれらの光学デバイスが含まれ、それらのいずれかは、光開裂可能な結合の少なくとも一部分を開裂させるように、フォーカスされた(集束された)、近IR、可視またはUVの光源によって照射される。そのような光開裂の程度は、光学ヒドロゲルのいくらかの物理的特性、たとえば、架橋密度、形状、または屈折率において、真の変化に影響を及ぼすのに十分な必要がある。光学デバイスのその光学ヒドロゲル部分内の架橋密度における変化は、光学ヒドロゲル組成物内の水の再分配を可能にする。照射前組成物に比べて、光開裂可能な結合の少なくとも一部分を開裂することは、光学ヒドロゲル組成物の変形または形状の変化をもたらすことがある。そのような変形は発生することができ、知覚できず、またはヒドロゲル本体の外部にあるいくらかの制約によって妨げられることがある。光開裂可能な結合の少なくとも一部分を開裂することは、光学ヒドロゲルの屈折率の変化をもたらすことができる。そのようなものは、ヒドロゲル内の架橋密度および水の関連再分配において変化の予想される帰結であろう。照射された光学デバイスは、ヒドロゲルの本体に対して、追加の三次元ポケット、チャネル、または層、本質の観点で規定することができ、および随意に互いにオーバーレイされてよく、そうでなければ、それらは元の、照射前構造において存在してなかった。
【0034】
実施態様の以下のリストは、前の説明を置き換えたり、または取り替えたりするのではなく、補足することを意図する。
【0035】
実施態様1。光学ヒドロゲル組成物は、
アクリラート、メタクリラート、または双方のアクリラートおよびメタクリラートモノマーから調製される少なくとも一の親水性ポリマーまたはコポリマーで、親水性ポリマーまたはコポリマーは、光開裂可能な結合で架橋されており、
ヒドロゲルは、全体のヒドロゲル組成物の重量に対して約10重量%から約50重量%までの範囲での量において水を含み、
前記組成物は、約200および約1000nmまたは約365nmないし約1000nmの範囲において光の少なくとも一の波長に対して透明であり、および
前記光開裂可能な結合は、約200nmから約300nm、約300nmから約400nmまで、約500nmから約600nmまで、約600nmから約700nmまで、約700nmから約800nmまで、約800nmから約900nmまで、約900nmから約1000nm(1ミクロン)まで、またはこれらの範囲のうちの二以上の任意の組合せの範囲において光の少なくとも一の活性化波長の適用による開裂に受容性であることを備える。いくらかの実施態様において、組成物はヒドロゲル内の光開裂可能な結合の開裂および水の再分配に際して変形可能である。
【0036】
実施態様2。実施態様1の組成物には、さらに、約200nmから約365nmまでの範囲において光の波長を吸収するフォトマスキング化合物が含まれる。いくらかの実施態様において、フォトマスキング化合物には、ベンゾトリアゾール部分が含まれる。
【0037】
実施態様3。実施態様2の組成物で、そこでは、フォトマスキング化合物は、第一および第二の光異性体間で光の適用に際して相互転換する可逆的光異性化可能なフォトマスキング化合物であり、そこでは、第一の異性体は光の少なくとも一の活性化波長にて第二の異性体が行うよりも多くの光を吸収する。
【0038】
実施態様4。実施態様1ないし3のいずれかの一の組成物で、そこでは、アクリラートまたはメタクリラートモノマーは、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、またはヒドロキシプロピル基で置換される。
【0039】
実施態様5。実施態様1ないし4のいずれかの一の組成物では、アクリラートまたはメタクリラートモノマーには、22-ヒドロキシメチル(メタ)アクリラート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、メチル-2-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリラート、またはエチル2-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリラートが含まれる。
【0040】
実施態様6。実施態様1ないし5のいずれかの一の組成物で、そこでは、光開裂可能な結合は二重または多重光子照射の適用によって光開裂に受容性である。これらの実施態様のいくらかでは、光開裂可能な結合は、多光子励起に影響を受けやすいとして説明することができる。
【0041】
実施態様7。実施態様1ないし6のいずれかの一の組成物で、そこでは、光開裂可能な結合には、クマリン部分、ニトロベンジルエーテル部分、ニトロインドリンエーテル部分、p-ヒドロキシフェナシル部分、またはそれらの組合せが含まれる。
【0042】
実施態様8。実施態様1ないし7のいずれかの一の組成物で、そこでは、少なくとも一の親水性ポリマーまたはコポリマーは、アクリラート、メタクリラート、または双方のアクリラートおよびメタクリラートモノマーを、次の構造をもつ一以上の化合物と共重合することによって調製される。
【化4】
式中、nは1から100までの範囲の整数である。
【0043】
実施態様9。実施態様1ないし8のいずれかの一の組成物で、そこでは、水は均一にヒドロゲル全体にヒドロゲル全体に分散される。
【0044】
実施態様10。実施態様1ないし9のいずれかの一の組成物で、そこでは、光学ヒドロゲル組成物が形造られ、ヒトペイシェントにおいて、眼内レンズ、角膜インレー、角膜リング、または人工角膜として使用するのに適する。
【0045】
実施態様11。実施態様1ないし10のいずれかの一の組成物で、そこでは、光学ヒドロゲル組成物はペイシェントのレンズカプセル(水晶体嚢)において位置される。
【0046】
実施態様12。実施態様1ないし11のいずれかの一のヒドロゲル組成物から誘導された光学デバイスで、それは、集束された、近IR、可視、またはUVの光源によって、光開裂可能な結合の少なくとも一部分が開裂されるように照射され、光学ヒドロゲル組成物内で水の再分配が可能にされる。
【0047】
実施態様13。実施態様12の光学デバイスで、そこでは、光開裂可能な結合の少なくとも一部分を開裂することは、光学ヒドロゲル組成物の変形または形状の変化をもたらす。
【0048】
実施態様14。実施態様121または13の光学デバイスで、そこでは、光開裂可能な結合の少なくとも一部分を開裂させることは、光学ヒドロゲル組成物の屈折率の変化をもたらす。
【0049】
実施態様15。実施態様12の光学デバイスで、そこでは、光源は二または多数の光子源を提供する。
【0050】
実施態様16。実施態様12の光学デバイスで、そこでは、水の再分配は、照射装置が照射前デバイスのものとは異なる形状をもつように光学ヒドロゲルに変形を引き起こす。
【0051】
実施態様17.実施態様1ないし11のいずれかの一の光学重合体ヒドロゲルを含む光学デバイスで、そこでは、光開裂可能な結合の少なくとも一部分は、光を用いる照射によって、なるべくなら、多光子プロセスによって開裂されている。
【0052】
実施態様18。実施態様12ないし17のいずれかの一の光学デバイスで、そこでは、光学デバイスの照射される領域は、ヒドロゲル組成物内で三次元構造によって規定される。
【0053】
実施態様19。実施態様12ないし18のいずれかの一の光学デバイスで、そこでは、照射されるデバイスは、照射前デバイスのものとは異なる屈折率を見せる。
【0054】
実施態様20。実施態様12ないし19のいずれかの一の光学デバイスで、そこでは、光源はレーザーである。
【0055】
実施態様21。実施態様20の光学デバイスで、そこでは、レーザーはヒトペイシェントでの使用に適する。
【0056】
実施態様22。実施態様20または21の光学デバイスで、そこでは、レーザーは約0.05nJから1000nJまでの範囲においてパルスエネルギーを提供する。
【0057】
実施態様23。実施態様20ないし22のいずれかの一の光学デバイスで、そこでは、レーザーは、約1フェムプト秒から約500フェムプト秒まで、なるべくなら約4から約100フェムプト秒までの範囲において持続時間を有するパルスを提供する。
【0058】
実施態様24。光学デバイスの屈折率を修飾するための方法で、そこでは、前記光学デバイスは光学ヒドロゲル組成物を含み(たとえば、実施態様1ないし11において説明されるようなもので、それらだけでないけれど)、
アクリラート、メタクリラート、または双方のアクリラートおよびメタクリラートモノマーから調製される少なくとも一の親水性ポリマーまたはコポリマーで、親水性ポリマーまたはコポリマーは光開裂可能な結合で架橋され、
ヒドロゲルには、全体のヒドロゲル組成物の重量に対して約10重量(wt)%から約50重量%までの範囲での量において水が含まれ、
前記組成物は、約200および約1000nmからの範囲において光の少なくとも一の波長に透明であり、および
前記光開裂可能な結合は、約200nmおよび約1000nm(1ミクロン)からの範囲において光の少なくとも一の活性化波長の適用による開裂に受容性であることから構成される。いくらかの実施態様において、組成物は、光開裂可能な結合の開裂およびヒドロゲル内の水の再分配に際して変形可能であり、
方法には、光開裂可能な結合の少なくとも一部分を開裂するように、約200nmから約1ミクロンまでの範囲において光の少なくとも一の波長により光学ヒドロゲル組成物を照射することが含まれる。
【0059】
実施態様25。実施態様24の方法で、そこでは、光開裂可能な結合の少なくとも一部分を開裂することは、光学ヒドロゲル組成物内で水の再分配をもたらす。
実施態様26。実施態様24または25の方法で、そこでは、光開裂可能な結合の少なくとも一部分を開裂することは、光学ヒドロゲル組成物の変形または形状の変化をもたらす。
【0060】
実施態様27。実施態様24ないし26のいずれかの一の方法で、そこでは、光開裂可能な結合の少なくとも一部分を開裂することは、光学ヒドロゲル組成物の屈折率の変化をもたらす。
【0061】
実施態様28。実施態様24ないし27のいずれかの一の方法で、そこでは、照射光はレーザーによって提供される。
【0062】
実施態様29。実施態様24ないし28のいずれかの一の方法で、そこでは、照射光は二または多光子光源によって提供される。
【0063】
実施態様30。実施態様24ないし29のいずれかの一の方法で、光学デバイスの照射領域(被照射領域)は、ヒドロゲル組成物内の三次元構造によって規定される。
【0064】
実施態様31。実施態様24ないし30のいずれかの一の方法で、そこでは、方法はヒトの眼において光学デバイスの外科的挿入後に行われる。
【0065】
実施態様32。実施態様24ないし31のいずれかの一の方法で、そこでは、さらに光学ヒドロゲル組成物の屈折率において変化を検証することが含まれる。
【実施例】
【0066】
以下の例は、この開示内で説明される概念のいくらかを例示するために提供される。各例は、組成物の特定の個々の実施態様を提供すると考えられる一方で、調製および使用の方法、例のいずれも、ここに記載されるより一層一般的な実施態様を制限するとみなされるべきではない。
【0067】
例1:選択的な光開裂はUV光を使用することによって実証される。しかし、眼においてレンズについて、レーザーは、二または複数の光子の化学的性質を生成するために使用される。調製されたレンズにおいて、標準的なUVブロックは通常の日光による形質転換を防止するために添加される。目下、白内障手術において使用するために開発されているLASIK手術に使用されるレーザーは、レンズパワー(レンズ解像度、レンズ倍率)における変化用にクロスリンク開裂および膨張を通して用いられる。変化は、より一層大きなゾーンを生成し、およびそれだけで材料破壊ではなく光開裂を与えるためにデフォーカスする(焦点をぼかす)ことができるビームの正確な制御を必要とする。
【0068】
例2:別のシステムにおいて、架橋剤(クロス-リンカー)は365の範囲において光によって切断され、その結果、角膜を通して簡単なアクセスがある。このアプローチにおいて、可逆的なUVブロックが用いられ、それは、365 nmにてブリーチされ(漂白され)るが、その後、波長の通常の範囲または架橋剤クロマフォア(chromaphore)の吸収の領域においてブロッキング状態に戻ってブロックを異性化する選択波長の下でブロッキング状態に戻る。アゾベンゼンおよびスチルベン誘導体はそのような状況で使用される(
図3A/Bおよび
図4)。
【0069】
例3:代わりのアプローチは、架橋剤の切断を行うために使用されるものとは異なる波長にて放出されるケージUVブロックを使用することである(
図3Cおよび
図3D)。潜在的ケージUVブロック−ベンゾトリアゾールの光分解プロファイルは、4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジルエーテルケージにより修飾され、
図5に示される。
【0070】
当業者が理解するように、本発明の膨大な修飾および変形はこれらの教示に照らして可能であり、およびこのようなすべてのものがこれによって予期される。たとえば、ここに説明する実施態様に加え、本発明は、ここに引用する発明の特徴および本発明の特徴を補完する引用された先行技術の参照のそれらのものの組合せから生じるものを予期し、および請求する。同様に、説明される任意の材料、特徴、または物品が、任意の他の材料、特徴、または物品と組み合わせて使用することができ、およびそのような組合せがこの発明の範囲内と考えられると理解されよう。
【0071】
この書類において引用または説明される各特許、特許出願、および発表の開示は、あらゆる目的のために、ここに参照することによりその全体が各々組み込まれる。
【0072】
以下の参照は、本発明またはその背景原理のいくらかの要素を理解する上で有用でありうる。
1。J. Trager(トレーガー)、H. C. Kim(キム)N. Hampp(ハンプ).、SPIE BIOS 2006、1-9。
2。W. H. Knox(ノックス)らへの、米国特許第7789910 B2号、〔Bausch & Lomb Incorporated(ボシュロム社)〕。