(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442585
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】衛星電波腕時計
(51)【国際特許分類】
G04R 60/10 20130101AFI20181210BHJP
G04R 20/02 20130101ALI20181210BHJP
G04G 21/04 20130101ALI20181210BHJP
G04C 9/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
G04R60/10
G04R20/02
G04G21/04
G04C9/00 301A
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-205193(P2017-205193)
(22)【出願日】2017年10月24日
(62)【分割の表示】特願2014-44829(P2014-44829)の分割
【原出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-28553(P2018-28553A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2017年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 健
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明
【審査官】
藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−152582(JP,A)
【文献】
特開2012−163456(JP,A)
【文献】
特開2007−132876(JP,A)
【文献】
実開昭56−097775(JP,U)
【文献】
特開2008−298585(JP,A)
【文献】
特開2012−189570(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01318437(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04R 20/02,60/10
G04C 9/00
G04G 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻情報を含む衛星電波を受信するアンテナと、
文字板と、
前記文字板より視認側に配置される複数の指針と、
導電体をそれぞれ含む複数の時字と、
を備え、
前記導電体は、前記指針の回転面のうち少なくともいずれか1の回転面より視認側に配置され、
前記アンテナは、前記導電体よりも視認側の反対側に配置される衛星電波腕時計。
【請求項2】
前記アンテナは、前記1の回転面より視認側の反対側に配置される請求項1に記載の衛星電波腕時計。
【請求項3】
平面視において、前記導電体と前記アンテナは重畳して配置される請求項1又は2に記載の衛星電波腕時計。
【請求項4】
少なくとも一部の前記時字は風防に設けられる請求項1乃至3のいずれかに記載の衛星電波腕時計。
【請求項5】
前記文字板の外周に配置される見返しリングをさらに備え、
少なくとも一部の前記時字は前記見返しリングに設けられる請求項1乃至4のいずれかに記載の衛星電波腕時計。
【請求項6】
平面視において前記アンテナと重畳して配置される前記時字に含まれる前記導電体は、少なくとも1の他の前記時字に含まれる前記導電体よりも小さい請求項1乃至5のいずれかに記載の衛星電波腕時計。
【請求項7】
平面視において前記アンテナと重畳して配置される前記時字に含まれる前記導電体は、少なくとも1の他の前記時字に含まれる前記導電体よりも視認側に配置される請求項1乃至6のいずれかに記載の衛星電波腕時計。
【請求項8】
平面視において、前記時字は、前記指針と重畳しないように配置される請求項1乃至7のいずれかに記載の衛星電波腕時計。
【請求項9】
前記文字板は前記アンテナよりも視認側に配置される請求項1乃至8のいずれかに記載の衛星電波腕時計。
【請求項10】
前記指針は導電体を含む請求項1乃至9のいずれかに記載の衛星電波腕時計。
【請求項11】
時刻情報を含む衛星電波を受信するアンテナと、
導電体をそれぞれ含む複数の時字と、を備え、
平面視において前記アンテナと重畳して配置される前記時字に含まれる前記導電体は、少なくとも1の他の前記時字に含まれる前記導電体よりも小さい衛星電波腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛星電波腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)衛星等の測位システムに用いられる人工衛星からの電波(以降、衛星電波と称する。)を受信し時刻を修正する電波腕時計(以降、衛星電波腕時計と称する。)が提案されている。GPS信号に代表される測位信号には、正確な時刻情報が含まれるためである。
【0003】
ここで、衛星電波は電離層をまたぐ必要があるため極超短波を使用していることから、衛星電波腕時計では、極超短波の受信に適し、腕時計に収まる程度に小型で薄型のアンテナ、例えばパッチアンテナが用いられる。
【0004】
下記特許文献1には、指針のうちアンテナと平面的に重なる部分に、金属材料よりも電波透過性の良い電波透過領域を形成した電波時計が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−163914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アナログ時計では一般に盤面に時字が設けられ、指針が指し示す時刻を読み取れるようになされているが、この時字は同時に時計の重要な装飾要素でもあり、特に高級感が要求される場合には金属等の導電体を使用したいとの要求がある。
【0007】
しかしながら、金属等の導電体は、電波を反射・吸収するため、アンテナの受信面付近に金属などの導電体を配置すると、受信しようとする電波が遮蔽されたり、マルチパス干渉の影響を受けたりすることにより受信感度が低下する。この効果は、導電体の影響を受けやすい短波長の電波ほど顕著になるため、極超短波を使用する衛星電波を受信しようとする場合、アンテナの受信面近辺に配置する時字に導電体、特に金属材料を使用することが実用上困難となっていた。
【0008】
本発明は時字の視認性を向上させた衛星電波腕時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0010】
(1)時刻情報を含む衛星電波を受信するアンテナと、文字板と、前記文字板より視認側に配置される複数の指針と、導電体をそれぞれ含む複数の時字と、を備え、前記導電体は、前記指針の回転面のうち少なくともいずれかより視認側に配置される衛星電波腕時計。
【0011】
(2)(1)において、平面視において、前記導電体と前記アンテナは重畳して配置される衛星電波腕時計。
【0012】
(3)(1)又は(2)のいずれかにおいて、少なくとも一部の前記時字は風防に設けられる衛星電波腕時計。
【0013】
(4)(1)乃至(3)のいずれかにおいて、前記文字板の外周に配置される見返しリングをさらに備え、少なくとも一部の前記時字は前記見返しリングに設けられる衛星電波腕時計。
【0014】
(5)(1)乃至(4)のいずれかにおいて、平面視において前記アンテナと重畳して配置される前記時字に含まれる前記導電体は、少なくとも1の他の前記時字に含まれる前記導電体よりも小さい衛星電波腕時計。
【0015】
(6)(1)乃至(5)のいずれかにおいて、平面視において前記アンテナと重畳して配置される前記時字に含まれる前記導電体は、少なくとも1の他の前記時字に含まれる前記導電体よりも視認側に配置される衛星電波腕時計。
【0016】
(7)(1)乃至(6)のいずれかにおいて、平面視において、前記時字は、前記指針と重畳しないように配置される衛星電波腕時計。
【0017】
(8)(1)乃至(7)のいずれかにおいて、前記文字板は前記アンテナよりも視認側に配置される衛星電波腕時計。
【0018】
(9)(1)乃至(8)のいずれかにおいて、前記指針は導電体を含む衛星電波腕時計。
【0019】
(10)時刻情報を含む衛星電波を受信するアンテナと、導電体をそれぞれ含む複数の時字と、を備え、平面視において前記アンテナと重畳して配置される前記時字に含まれる前記導電体は、少なくとも1の他の前記時字に含まれる前記導電体よりも小さい衛星電波腕時計。
【発明の効果】
【0020】
上記本発明の(1)の側面によれば、時字の視認性を向上させた衛星電波腕時計が得られる。
【0021】
また、上記本発明の(2)乃至(9)の側面によれば、衛星電波の受信感度を実用上十分なものに保ちつつ、時字に導電体を使用することができる衛星電波腕時計が得られる。
【0022】
また、上記本発明の(10)の側面によれば、衛星電波の受信感度を向上させた衛星電波腕時計が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る衛星電波腕時計を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る衛星電波腕時計の断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る衛星電波腕時計の断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る衛星電波腕時計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る衛星電波腕時計1を示す図である。
図1には、胴10、見返しリング12、時字20、文字板22、分針30、時針32、秒針34、竜頭40を示している。本実施形態に係る衛星電波腕時計1において、胴10と図示されない裏蓋、並びに時字20は金属材料で形成されている。さらに、特に材質を限定するものではないが、本実施形態では分針30、時針32及び竜頭40についても金属材料製とされている。文字板22には種々の装飾を施すことができる。ただし、文字板22を金属等の導電体で形成することとすると、文字板22によって衛星電波が遮蔽されるおそれがあり、電波受信感度の低下を招くおそれがあるので、文字板22は絶縁材料で形成することが望ましい。例えば、文字板22は、各種の合成樹脂、セラミックス、又は貝等の生体鉱物で形成することとしてよい。
【0026】
本実施形態に係る衛星電波腕時計1はアナログ時計であり、毎正時を示す時字20が配置され、分針30、時針32、及び秒針34で時字20を指し示すことによって、それぞれ時分秒を表示する。衛星電波腕時計1のユーザは、竜頭40を回転させることで時刻合わせをはじめとする各種操作を行うことができる。また、衛星電波腕時計1は、GPS衛星等より送信される衛星信号に含まれる日付や時刻に関する情報に基づき時刻合わせを行うことができる。
【0027】
本実施形態において、時字20は金属材料で形成されることとするが、金属材料を含んで形成することとしてもよいし、金属以外の導電体を含んで形成することとしてもよい。また、
図1に示した時字20の大きさ及び形状は一例であり、これ以外にも種々の大きさ及び形状を採用することができる。もっとも、時字20は、分針30や秒針34と干渉しないように設計する必要がある。
【0028】
なお、本実施形態に係る衛星電波腕時計1は、指針として分針30、時針32、及び秒針34を有するものであるが、その他に各種の表示を行う補助指針、例えば24時間表示やパワーリザーブを設けてもよい。また、竜頭40に替えて又は加えてプッシュボタンを設けることとして、ユーザが種々の操作を行えるようにしてもよい。
【0029】
なお、
図1に示した衛星電波腕時計1のデザインは一例にすぎない。ここで示したもの以外にも、例えば、衛星電波腕時計1の外形形状を、丸型でなく角型にしてもよいし、文字板22に日窓を設けて日付や曜日を表示することとしてもよい。また、見返しリング12に替えて又は加えて、樹脂材料等の透明な材料で形成したスペーサリングを設けることとしてもよい。
【0030】
なお、本明細書では、衛星電波腕時計という用語を、腕時計であって、かつ、GPS衛星等からの衛星信号を受信し、当該衛星信号に含まれる日付や時刻に関する情報に基づき、腕時計内部に保持している時刻の情報である内部時刻を修正する機能を有している腕時計を指すものとして用いる。
【0031】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る衛星電波腕時計1の断面図である。
図2は、
図1のII−II断面を示す図であり、衛星電波腕時計1の12時方向及び6時方向を含む断面を示す図である。
図2には、
図1に示したもののほか、風防14、裏蓋16、ムーブメント50並びにムーブメント50に取り付けられたパッチアンテナ52及び電池54を示している。ここで、分針30、時針32、及び秒針34は、それぞれ文字板22より視認側(風防14側)に設けられる。なお、ムーブメント50は、各指針を駆動する輪列及びモータや、水晶振動子を有する時計回路、衛星電波受信のための高周波回路及び衛星電波腕時計1全体の動作を制御する制御回路等を実装した回路基板等を地板と呼ばれる枠に組み付けたものであり、多数の部材からなっているが、
図2ではその外形のみを示している。
【0032】
電池54は、衛星電波腕時計1の電源であり、衛星電波腕時計1が有する各種電装品に電源を供給する。すなわち、電池54は、衛星電波を受信するための高周波回路の駆動電源であり、衛星電波腕時計1全体の制御を行う制御回路の電源であり、各指針を駆動するモータの電源でもある。電池54は、例えばリチウム電池等の1次電池であってよい。
【0033】
なお、文字板22の裏蓋16側に太陽電池を配置し、電池54としてリチウムイオン二次電池等の二次電池を採用することとしてもよい。その場合、文字板22は、太陽電池が十分な発電量を確保できる程度に光を透過する材料で形成することが望ましい。
【0034】
パッチアンテナ52は、矩形の平面形状を有する平面アンテナであり、衛星電波等の極超短波の電波を受信するのに適したアンテナである。パッチアンテナ52は、文字板22の裏蓋16側に文字板22と平行に配置され、受信面が文字板22側を向くように配置される。この配置は、衛星電波が金属材料製の胴10及び裏蓋16により遮蔽されるため、文字板22を透過して視認側から入射する衛星電波を受信するためのものである。
【0035】
前述の通り、衛星電波等の極超短波の電波は、導電体によって反射・吸収されるため、電波を受信する観点からは、パッチアンテナ52の受信面側の近傍には導電体が配置されないことが望ましい。しかしながら、衛星電波腕時計1等の腕時計では、装飾効果の観点から金属等の導電体を用いたいという要求があり、パッチアンテナ52の受信感度との両立が望まれる。
【0036】
本実施形態に係る衛星電波腕時計1の時字20は、時針32の回転面S32より視認側に配置される。ここで、時針32の回転面S32とは、時針32が回転することによって描かれる軌跡を含む平面をいい、時字20が回転面S32より視認側に配置されるとは、時字20の最下面(最も裏蓋16側の面)が回転面S32より視認側にあることをいうものとする。このように時字20を配置すると、時字20を文字板22に直接固定して設ける場合と比較して、時字20がパッチアンテナ52の受信面から遠ざかることとなり、時字20による衛星電波の反射・吸収による影響が低減されるため、パッチアンテナ52の受信感度が向上する。
【0037】
ここで、理論的には、時字20の配置位置はパッチアンテナ52の受信面から遠ければ遠いほどよいことになるが、実用的には、時字20を少なくとも1の指針の回転面より視認側に配置することが配置位置を定める上での目安となる。一般的には、時針32が最も文字板22に近接して配置されるため、この目安は、本実施形態のように、時針32の回転面S32より時字20を視認側に配置することをいうものとなる。
【0038】
この理由について、時針32や分針30は本実施形態のように金属材料製とされる場合があるところ、かかる指針は時刻によってはパッチアンテナ52と平面視において重畳するため、その配置高さは、パッチアンテナ52の受信性能に大きな影響を与えないように設計される。したがって、かかる指針の回転面のいずれかより視認側に時字20を配置することにより、時字20によるパッチアンテナ52への受信性能を相当程度軽減することができ、実用上十分な受信感度が得られると考えられるのである。
【0039】
なお、本実施形態では、時字20は、分針30の回転面S30の延長線と交差する位置に配置されているが、さらにその配置位置を視認側とし、複数の指針の回転面より視認側、すなわち、分針の回転面S30や秒針34の回転面S34より視認側に配置してもよい。時字20がパッチアンテナ52の受信感度に与える影響は、時字20がパッチアンテナ52の受信面から遠ざかるほど少なくなると考えられるため、受信感度を向上させる観点からは、時字20は、複数の指針の回転面より視認側に設けることが望ましいといえる。
【0040】
本実施形態において、時字20は、見返しリング12に設けられた平坦部18に片持ちとなるように取り付けられる。平坦部18の高さ方向の位置は、時針32の回転面S32より視認側とされており、これにより、時字20は時針32の回転面S32より視認側に設けられる。なお、時字20は必ずしも見返しリング12の平坦部18に設けられなくともよく、見返しリング12の傾斜面に直接設けてもよいし、平坦部と傾斜部にまたがって設けてもよい。いずれの場合であっても、時字20は、少なくともいずれかの指針の回転面より視認側に配置される。
【0041】
本実施形態において、時字20は、見返しリング12の平坦部18から文字板22の中心側に突出し、文字板22と間隔をあけて空中に飛び出すように配置されている。このため、時字20は文字板22から浮き上がっているように視認され、特有の意匠が得られる。
【0042】
なお、本実施形態の効果の例としては、本実施形態に係る衛星電波腕時計1と、比較例として時字20を文字板22に直接設けた衛星電波腕時計をそれぞれ実際に制作したところ、本実施形態に係る衛星電波腕時計1では、パッチアンテナ52の受信感度がおおよそ0.5dB向上することが確認された。
【0043】
なお、本実施形態に係る衛星電波腕時計1では、全ての時字20を少なくとも1の指針(ここでは、時針32)の回転面S32より視認側に配置したが、少なくとも一部の時字20をかかる回転面より視認側に配置するようにしてもよい。特に、平面視においてパッチアンテナ52と重畳する位置及びその近傍に位置する時字20をかかる回転面より視認側に配置することは重要である半面、平面視においてパッチアンテナ52から遠い位置にある時字、例えば、本実施形態では4時〜8時位置にある時字20については、その高さ方向の配置位置は必ずしも重要でない。
【0044】
また、本実施形態においては、衛星電波腕時計1に金属製の見返しリング12を設け、かかる見返しリング12に時字20を設けたが、これに替え、樹脂材料等の絶縁材料で形成したスペーサリングを文字板22の外周に設け、当該スペーサリング上に時字20を設けることとしてもよい。この場合においても、時字20は、少なくともいずれかの指針の回転面より視認側に配置される。スペーサリングを透明な材料で形成すると、時字20が文字板22から浮いているかのように視認され、特有の意匠が得られる。
【0045】
さらに、衛星電波腕時計1に補助指針が設けられた場合についても、上記と同様の考え方が適用できる。このことは、特殊な補助指針、例えば、文字板22よりも裏蓋16側に(すなわち、文字板22より沈み込むように)配置された補助指針や、平面視においてパッチアンテナ52と全く重畳することのない補助指針については、これを考慮する必要が無いことを意味している。なぜなら、このような補助指針はそもそもパッチアンテナ52の受信性能に影響を殆ど与えないと考えられるため、その配置高さを決定するにあたり、受信性能への影響が考慮されていないためである。したがって、時字20の配置高さを決定するにあたっては、文字板22より視認側に配置される指針のみを考慮すればよく、さらに、平面視においてパッチアンテナ52と重畳することのある指針について考慮すればよいことになる。
【0046】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る衛星電波腕時計の断面図である。第2の実施形態における時字20の一部は、第1の実施形態におけるものと設けられる位置が異なる。第2の実施形態において、時字20のうち平面視においてパッチアンテナ52と重畳して配置される時字20(
図3の紙面右側に示される時字20)は、風防14に設けられる。時字20のうち平面視においてパッチアンテナ52と重畳せずに配置される時字20(
図3の紙面左側に示される時字20)は、第1の実施形態と同様、見返しリング12に設けられる。
【0047】
時字20を風防14に設けることにより、パッチアンテナ52の受信面から時字20までの距離がさらに大きくなり、時字20がパッチアンテナ52の受信感度に与える影響をさらに低減することができる。ここで、本実施形態では、時字20のうち平面視においてパッチアンテナ52と重畳して配置される時字20を風防14に設けることとしたが、全ての時字20を風防14に設けることとしてもよい。
【0048】
本実施形態では、時字20は風防14の裏面、すなわち文字板22に向き合う面に貼付固定されることにより設けられている。しかしながら、これ以外の構成、例えば、金属などの導電体を風防14に印刷したり、蒸着したりすることにより時字20を形成してもよいし、貼付、印刷及び蒸着等の方法を組み合わせて時字20を形成してもよい。また、時字20はその脱落や損傷を防止する観点から、風防14に設ける場合にはその裏面に設けることが望ましいが、風防14の表面に時字20を設けることを妨げるものではない。
【0049】
本実施形態では、時字20の一部を他の時字20よりも視認側に配置する構成として、一部の時字20を風防14に設け、他の時字20を見返しリング12に設けるようにしているが、その他の構成を採用しても差し支えない。例えば、見返しリング12に複数段の平坦部を設け、一部の時字20を視認側の平坦部に配置し、他の時字20を文字板22側の平坦部に配置してもよい。或いは、複数段の平坦部を有する透明なスペーサリングを設け、同様の構成を採用してもよい。また、見返しリング12の平坦部より視認側となる位置の傾斜面に時字20を配置することとしてもよい。いずれにしても、より視認側に配置される時字20は平面視においてパッチアンテナ52と重畳して配置されるものであることが望ましい。
【0050】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態に係る衛星電波腕時計を示す図である。第3の実施形態と第1の実施形態との相違点は、11時方向乃至1時方向に小型時字24が配置されている点である。本実施形態において、平面視でパッチアンテナ52と重畳して配置される時字は小型時字24であり、他の時字20(2時方向乃至10時方向に配置される時字20)と比較して大きさが小さい。もっとも、10時方向や2時方向に配置される時字20も小型時字24に置き換えることとしてもよい。
【0051】
小型時字24は他の時字20と比較して幅が細く、パッチアンテナ52の受信面に入射する衛星電波を遮蔽する場合が少ないと考えられる。そのため、小型時字24を採用することにより、11時方向乃至1時方向に比較的大きい時字20を配置する場合に比べて、パッチアンテナ52の受信感度が向上することとなる。
【0052】
本実施形態では、小型時字24を採用することにより、比較的大きい時字20によってより自由度の高い装飾表現を可能としつつ、パッチアンテナ52に対する時字の影響をさらに抑えることができ、時字の美的外観を保ちつつ、パッチアンテナ52の受信感度を向上させることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、時字20及び小型時字24は、第1の実施形態と同様に見返しリング12に設けることとしているが、小型時字24を風防14に設けることとしてもよい。また、透明なスペーサリングを設けることとして、時字20及び小型時字24を、スペーサリングに設けることとしてもよい。
【0054】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。
【符号の説明】
【0055】
1 衛星電波腕時計、10 胴、12 見返しリング、14 風防、16 裏蓋、18
平坦部、20 時字、22 文字板、24 小型時字、30 分針、32 時針、34
秒針、40 竜頭、50 ムーブメント、52 パッチアンテナ、54 電池。