特許第6442586号(P6442586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6442586パワーリザーブを検出する機械式計時器用ムーブメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442586
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】パワーリザーブを検出する機械式計時器用ムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04B 9/00 20060101AFI20181210BHJP
【FI】
   G04B9/00
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-206820(P2017-206820)
(22)【出願日】2017年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-96976(P2018-96976A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2017年10月26日
(31)【優先権主張番号】16203366.6
(32)【優先日】2016年12月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン・ヴィラール
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−098056(JP,A)
【文献】 特開2011−164052(JP,A)
【文献】 特開2001−349962(JP,A)
【文献】 独国特許発明第000010312447(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバレルシステム(2、3)を有するパワーリザーブ指示をする機械式計時器用ムーブメント(1)であって、
前記バレルシステム(2、3)には、差動ギヤ(10)のシャシー車(10a)のような巻き車に接続された巻き出力と、及び前記差動ギヤ(10)の冠状体(10b)のような巻き緩め車に接続された巻き緩め出力とがあり、
前記差動ギヤ(10)は、パワーリザーブを表示するようにパワーリザーブインジケーター(12)に接続されており、
当該計時器用ムーブメント(1)は、前記冠状体(10b)上に配置される少なくとも1つのロック用メンバー(13、14)と、及び前記シャシー車に対して前記冠状体が回転しているときに前記シャシー車(10a)上に配置される少なくとも1つのロック用要素(11)とを有し、
前記ロック用メンバーは、前記パワーリザーブがゼロにあるときに前記ロック用要素と接触して当該計時器用ムーブメントを止めるように意図されている
ことを特徴とする機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項2】
前記シャシー車(10a)は、前記冠状体(10b)に同軸にマウントされる
ことを特徴とする請求項1に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項3】
前記冠状体(10b)は、周部エッジと基礎部を有し、
前記ロック用メンバー(13、14)は、前記周部エッジの内側上に配置される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項4】
前記シャシー車(10a)は、前記シャシー車(10a)上にて自由に回転をするようにマウントされた前記ロック用要素として遊星車(11)を有し、
前記遊星車(11)は、前記冠状体又は前記シャシー車が回転しているときに回転駆動されるように、前記冠状体(10b)の周部エッジの環状の内面に接触している
ことを特徴とする請求項3に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項5】
前記遊星車(11)は、前記シャシー車(10a)の軸方向のアームの1つ上にて自由に回転するように構成している
ことを特徴とする請求項4に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項6】
前記パワーリザーブインジケーターは、軸方向のアーバー(12’)を備えた太陽ピニオン(12)であり、
前記太陽ピニオンは、前記冠状体(10b)と前記シャシー車(10a)の間に配置され、
前記軸方向のアーバー(12’)は、前記シャシー車(10a)にある中央開口を通り抜ける
ことを特徴とする請求項4に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項7】
前記太陽ピニオン(12)は、前記遊星車(11)が回転しているときに回転駆動されるように前記遊星車(11)に接触している
ことを特徴とする請求項6に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項8】
前記冠状体の周部エッジには前記冠状体(10b)の内面上に、第1のロック用メンバー(13)と、及び前記第1のロック用メンバーから角度的にオフセットしている第2のロック用メンバー(14)とがあり、
前記遊星車(11)は、前記バレルシステムの巻き緩め段階において前記冠状体又は前記シャシー車が回転しているときに前記第1のロック用メンバー(13)まで回転駆動され、これによって、パワーリザーブがゼロであるときに前記第1のロック用メンバー(13)と接触した際に当該計時器用ムーブメントを止め、
前記遊星車(11)は、前記バレルシステムの巻き段階において前記冠状体又は前記シャシー車が回転しているときに前記第2のロック用メンバー(14)まで回転駆動され、これによって、前記第2のロック用メンバー(14)と接触する際に当該計時器用ムーブメントを止める
ことを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項9】
前記ロック用メンバーは、前記シャシー車の前記ロック用要素と連係するようにロックするためのノッチ(13、14)又は先を切られた歯列部分である
ことを特徴とする請求項3に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項10】
前記第1のロック用メンバー(13)と前記第2のロック用メンバー(14)は、前記シャシー車の前記ロック用要素と連係するようにロックするためのノッチ(13、14)又は先を切られた歯列部分である
ことを特徴とする請求項8に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項11】
前記バレルシステム(2、3)の巻き出力と前記シャシー車(10a)の間に、第1の減速段(5a、6、7a)が配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項12】
前記バレルシステム(2、3)の巻き緩め出力と前記冠状体(10b)の間に、第2の減速段(5b、8、7b)が配置される
ことを特徴とする請求項11に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【請求項13】
当該計時器用ムーブメントは、駆動車セット(4)を有し、中央アーバー(4a)と、及び前記中央アーバー(4a)の2つのリムの間にて自由に回転するようにマウントされるリング(4b)とによって構成しており、
前記中央アーバー(4a)は、前記バレルシステム(2、3)の巻き出力及び前記第1の減速段に接続しており、
前記リング(4b)は、前記バレルシステム(2、3)の巻き緩め出力及び前記第2の減速段に接続している
ことを特徴とする請求項12に記載の機械式計時器用ムーブメント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーリザーブ検出手段を備える機械式計時器用ムーブメントに関する。計時器用ムーブメントは、差動ギヤの巻き車と、及びこの差動ギヤの巻き緩め車とに接続される少なくとも1つのバレルシステムを有する。
【背景技術】
【0002】
機械式計時器用ムーブメントは、一般的には、巻き出力において少なくとも1つの車及び巻き緩め出力において少なくとも1つの車を駆動するバレルシステムを有する。これらの巻き出力及び巻き緩め出力はそれぞれ、差動ギヤの巻き車及び巻き緩め車に接続している。差動ギヤの中間車に接続された車セットがパワーリザーブ表示を制御するが、パワーリザーブがゼロであるときにムーブメントを止める動作のために設けられるムーブメントの要素はない。
【0003】
欧州特許EP0568499B1は、機械式腕時計用のパワーリザーブインジケーターデバイスについて記載している。このインジケーターデバイスは、バレルの巻き又は巻き緩めのときに回転駆動されるインジケーターメンバーを備えた少なくとも1つの星形車を有する。このインジケーターメンバーによって、腕時計のパワーリザーブを表示することが可能になる。しかし、パワーリザーブがゼロに近づいたときにムーブメントが止められることを確実にするためには何も設けられていない。
【0004】
スイス特許CH698752B1は、パワーリザーブインジケーター機構を有する計時器について記載している。これは、対向している2つのバレルを有し、これらは、パワーリザーブ表示機構を制御する共通のアーバーによって接続されている。しかし、パワーリザーブがゼロに近づいたときにムーブメントが止められることを確実にするためには何も設けられていない。
【0005】
欧州特許EP1970778B1も引用する。これは、ムーブメント及びパワーリザーブインジケーターデバイスを備えた計時器について記載している。この計時器は、腕時計プレートと棒体の間でマウントされるバレルシステムを有する。パワーリザーブインジケーターデバイスは、第1の入力によってバレルアーバーに、そして、第2の入力によってバレルに、接続している差動ギヤを有する。差動ギヤは、バレルアーバーに対して同軸に配置される。バレル出力は、パワーリザーブインジケーターメンバーに接続している。パワーリザーブがゼロに近づいたときにムーブメントが止められることを確実にするためには何も設けられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の主な目的は、パワーリザーブがゼロに近いときにムーブメントの動作を止めることができるようなパワーリザーブ検出手段を備える機械式計時器用ムーブメントを提案することによって、従来技術の課題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、独立請求項1に記載の特徴を有するパワーリザーブ検出手段を備える機械式計時器用ムーブメントに関する。
【0008】
従属請求項2〜12において、機械式計時器用ムーブメントの特定の態様が定められている。
【0009】
機械式計時器用ムーブメントの利点の1つは、駆動用の車セットによってバレルシステムに接続される差動ギヤ、及び1つ又は2つの減速ギヤ段の車セットを有することに基づいている。差動ギヤは、パワーリザーブインジケーターの太陽ピニオンが同軸にマウントされている冠状体と、及び太陽ピニオンの軸方向のアーバーにマウントされたシャシー車とを有する。ロック用要素がシャシー車にマウントされて、インジケートされるパワーリザーブ検出位置がゼロであるときに冠状体のロック用メンバーと接触するようになる。
【0010】
好ましいことに、ロック用要素は、冠状体のエッジの内表面によって回転駆動される遊星歯車である。遊星車を最小パワーリザーブ位置にロックするために、ノッチ又は先を切られた歯列部分の形態であるロック用メンバーが設けられ、これは、計時器用ムーブメントを止めることも行う。遊星車を最大パワーリザーブ位置にロックするために、別のロック用メンバーも設けることができる。
【0011】
図面を参照しながら以下の説明(これに限定されない)を読むことによって、当該パワーリザーブ検出手段を備える計時器用ムーブメントの目的、利点及び特徴をより明確に理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るパワーリザーブ検出手段を備える機械式計時器用ムーブメントの1つの実施形態についての上側から見た三次元的な図である。
図2】バレル、及び本発明に係るバレルを巻くないしチャージする機能のための列についての上側から見た三次元的な図である。
図3】バレルシステム及びパワーリザーブ検出手段についての横から見た部分的断面図である。これらは、本発明に係るバレルの巻き又はチャージ機能のための車セットを見やすくするために一直線上に配置されている。
図4】バレル、及び本発明に係るバレルの巻き緩めないしディスチャージの機能のための列についての上側から見た三次元的な図である。
図5】バレルシステム及びパワーリザーブ検出手段についての横から見た部分的断面図である。これらは、本発明に係るバレルの巻き緩めないしディスチャージの機能のための車セットを見やすくするために一直線上に配置されている。
図6図6a及び6bは、本発明にしたがって最大パワーリザーブ位置及び最小パワーリザーブ位置にて機械式計時器用ムーブメントをロックするための前記のいくつかの要素を備えた差動遊星ギヤについての三次元的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、当業者に周知なパワーリザーブ検出手段を備える機械式計時器用ムーブメントの部品はすべて、単純化した形態でしか説明しない。
【0014】
図1は、機械式計時器用ムーブメント1のいくつかの特定の部品についての上側から見た三次元的な図を示している。機械式計時器用ムーブメント1は、少なくとも1つのバレルシステムを有し、これは、単一のバレル又は2つのバレル2及び3を備え、駆動のための巻き出力及び巻き緩め出力、特に、タイムベースギヤ列(図示せず)、を有するような周知なシステムであることができる。
【0015】
機械式計時器用ムーブメント1は、回転軸のまわりを回転するようにマウントされた差動ギヤ10を有し、これは、バレルシステムの巻き出力及び巻き緩め出力にそれぞれ接続される。差動ギヤ10は、好ましくは、第1のバレル2から巻き出力に、そして、第2のバレル3から巻き緩め出力に、減速段又は回転速度減速列を介して接続している。バレルシステム2、3と差動ギヤ10の間に、駆動車セット4を設けることができる。この駆動車セット4は、中央アーバー4aと、及びこのアーバー4aのまわりに同軸に配置されたリング4bとを有することができる。リング4bは、中央アーバー4aのまわりの回転が可能なように、中央アーバー4aの2つのリムの間の中央アーバー4aの中間部分にて保持される。アーバー4aのリム又は2つの端における直径は、リング4bの外径と同一であることができる。
【0016】
第1のバレル2の巻き出力車は、中央アーバー4aの第1のリム又は第1の端に接触しており、これによって、中央アーバー4aを回転駆動する。第1のバレル2の巻き出力車は、中央アーバー4aの第1のリム又は第1の端の歯列と噛み合う歯列を有することができる。第2のバレル3の巻き緩め出力車は、リング4bに接触しており、これによって、リング4bを回転駆動する。第2のバレル3の巻き緩め出力車は、リング4bの歯列と噛み合う歯列を有することができる。
【0017】
図2〜5を参照しながら下で詳細に説明するように、駆動車セット4は、バレルシステム2、3と差動ギヤ10の間の減速段の車セット5、6、7、8を回転駆動する。第1のバレル2の巻き出力から、駆動車セットのアーバー4aは、その第2のリムを介して、第1の減速段の車セット5a、6、7aを駆動する。そのうち、第1の減速段の第3の車7aは、差動ギヤ10の第1の巻き車10aに接触している。これは、フライホイールの形態のシャシー車である。第2のバレル3の巻き緩め出力から、駆動車セット4のリング4bは、第2の減速段の車セット5b、8及び7bを駆動し、第2の減速段の第3の車7bは、差動ギヤ10の冠状体10bに接触している。冠状体10bは、好ましくは、シャシー車10aと同軸に配置される。
【0018】
このように、差動ギヤ10は、冠状体10bと、冠状体と同軸であるシャシー車10aと、及びパワーリザーブインジケーターとして軸方向のアーバー12’を備える太陽ピニオン12とを有する。軸方向のアーバー12’は、シャシー車10aにある中央開口を通り抜けて、パワーリザーブインジケーター針(図示せず)に接続することができる。太陽ピニオン12は、シャシー車10aと冠状体10bの間の冠状体10bの基礎部に配置され、シャシー車10aと冠状体10bと同軸である。好ましくは、冠状体10bの外径は、シャシー車10aの外径と同様であるが、太陽ピニオン12の直径は、冠状体10bの周部エッジの内側に配置されるように、シャシー車10aの外径よりも小さい。
【0019】
差動ギヤ10は、さらに、冠状体10b、そして好ましくは、冠状体10bの周部エッジ、に関連する運動を止めるメンバー13、14を少なくとも1つ有する。これによって、シャシー車10aに接続された少なくとも1つのロック用要素11と連係して、バレルシステムのゼロパワーリザーブ位置にて、可能性としてはさらに、バレルシステムの最大巻き位置にて、計時器用ムーブメントを止める。
【0020】
差動ギヤ10のシャシー車10aは、ロック用要素として、シャシー車10aの軸方向のアーム上で回転するようにマウントされる少なくとも1つの遊星車11を有する。この遊星車11は、冠状体10bの周部エッジの環状の内面に接触しており、シャシー車10aに対して冠状体10bが回転しているときに回転駆動される。好ましくは、冠状体10bの内面には、その周部の少なくとも一部分にわたって、遊星車11の歯列と噛み合う歯列がある。太陽ピニオン12は、その周部エッジに接する遊星車11によって駆動される。また、太陽ピニオン12には、遊星車11と噛み合う歯列を有することができる。冠状体10b、遊星車11及び太陽ピニオン12の周部エッジは、冠状体10bの基礎部上にて同じ平面内に配置される。
【0021】
第1のロック用要素は、第1のノッチ13又は第1の先を切られた歯列部分であることができ、この少なくとも第1のロック用要素と遊星車11が接触をすると、冠状体10bは、シャシー車10aに対して回転するようにロックされる。これには、パワーリザーブがゼロであるときに計時器用ムーブメントを止める効果もある。バレルシステムを巻いているときに、遊星車11は、第2のロック用メンバーと接触する。この第2のロック用メンバーは、第2のノッチ14又は第2の先を切られた歯列部分であることができる。そして、冠状体10bは、シャシー車10aに対して回転するように固定される。このことには、バレルシステムの巻きが完了した際に計時器用ムーブメントを止める効果もある。2つのロック位置の間のシャシー車に対する冠状体の回転角度を、例えば、90°〜180°にセットすることができるが、他の角度にセットすることもできる。
【0022】
図2及び3は、バレルシステムの第1のバレル2、車セット、及びバレルシステムの巻き又はチャージ機能のための差動ギヤ10についての上側から見た三次元的な図及び鉛直方法の部分的な断面図を示している。
【0023】
これらの図2及び3は、中央アーバー4aの第1のリムに接する第1の巻きバレル2の巻き出力車によって回転駆動される駆動車セット4の中央アーバー4aを明確に示している。中央アーバー4aの第2のリムは、第1の減速段の第1の車5aを駆動する。この第2のリムは、第1の車5aの外側歯列と噛み合う歯列を有することができる。第1の車5aの中央のピニオンは、第2の反転用車6を駆動する。第1の車5aの中央のピニオンは、第1の車5aの外側歯列よりも小さな直径を有し、これによって、第1の車5aの回転速度と比較して、第2の車6の回転速度を減らす。中央ピニオンは、第2の車6の外側歯列と噛み合う歯列を有することができる。第2の車6は、もっぱら反転用車としてはたらく第3の車7aを駆動する。第3の車7aは、第2の車6の外側歯列と噛み合う外側歯列を有することができる。第3の車7aの中央ピニオンは、差動ギヤ10のシャシー車10aに接触している。この中央ピニオンは、第3の車7aの外側歯列よりも小さな直径を有し、また、シャシー車10aの外側歯列と噛み合う歯列を有することができる。
【0024】
図4及び5は、バレルシステムの第2のバレル3、車セット、及びバレルシステムの巻き緩めないしディスチャージ機能のための差動ギヤ10についての上側から見た三次元的な図及び鉛直方向の部分的な断面図を示している。
【0025】
これらの図4及び5は、リング4bに接する第2の巻き緩めバレル3の巻き緩め出力車によって回転駆動される駆動車セット4のリング4bを明確に示している。リング4bは、第2の減速段の第1の車5bを駆動する。リング4bは、第1の車5bの外側歯列と噛み合う歯列を有することができる。第1の車5bの中央ピニオンは、第2の車8を駆動する。この第1の車5bの中央ピニオンは、第1の車5bの外側歯列よりも小さな直径を有し、これによって、第1の車5bの回転速度と比較して、第2の車8の回転速度を減らす。中央ピニオンは、第2の車8の外側歯列と噛み合う歯列を有することができる。第2の車8の中央ピニオンは、第3の車7bを駆動する。第2の車8の中央ピニオンは、第2の車8の外側歯列よりも小さな直径を有する。第3の車7bは、第2の車8の中央ピニオンの歯列と噛み合う外側歯列を有することができる。第3の車7bの中央ピニオンは、差動ギヤ10の冠状体10bの外側エッジに接触している。この中央ピニオンは、第3の車7bの外側歯列よりも小さな直径を有し、また、冠状体10bの外側エッジの外側歯列と噛み合う歯列を有することができる。
【0026】
図6a及び6bは、差動遊星ギヤ10についての三次元的な図を示している。差動遊星ギヤ10は、図6aにおいては、最大パワーリザーブ位置のものを示しており、図6bにおいては、ゼロパワーリザーブ位置のものを示している。可動部品は、ロックの前に各部品が回転する方向を示す矢とともに示している。
【0027】
冠状体10bとともに差動ギヤ10を示している。この冠状体10bは、周部エッジ及び基礎部又は底部と、冠状体の基礎部に同軸にマウントされた太陽ピニオン12と、及び太陽ピニオン12のアーバー12’に同軸にマウントされたシャシー車10aとを有する。遊星車11は、シャシー車10aの3つの軸方向のアームの1つに固定されたアーバーのまわりを回転するようにマウントされる。遊星車11は、冠状体10bの内側エッジ面によって回転駆動される。また、回転する駆動遊星車11は、遊星車11に接する太陽ピニオン12を回転させる。したがって、太陽ピニオン12は、パワーリザーブインジケーターの1つの部分であり、このパワーリザーブインジケーターは、さらに、太陽ピニオン12のアーバー12’の端に固定された針を有することができる。冠状体10bの内側エッジ面によって遊星車11が駆動されることを可能にしつつ、冠状体10bとシャシー車10aの間に十分な空間が設けられる。
【0028】
遊星車11は、ゼロパワーリザーブ検出位置を示している図6bにおいて、冠状体10bのエッジの第1のロック用メンバー13によってロックされる。遊星車11は、最大パワーリザーブ検出位置を示している図6aにおいて、冠状体10bのエッジの第2のロック用メンバー14によってロックされる。
【0029】
ロック用メンバー13及び14はそれぞれ、遊星車11を2つの最大及び最小のパワーリザーブ検出位置にロックすることを可能にしつつ、図6a及び6bに示した形とは異なる形を有することができることは明らかである。シャシー車にマウントされた遊星車11のロックによって、期待通りに計時器用ムーブメントを止めることができる。
【0030】
上記説明から、当業者であれば、請求の範囲にて定められる本発明の範囲から逸脱せずに、パワーリザーブ検出手段を備える機械式計時器用ムーブメントのいくつかの変形態様を想到することができるであろう。シャシー車のロック用要素は、遊星車の代わりに、冠状体のロック用メンバーに対してロックする突起であることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 計時器用ムーブメント
2、3 バレルシステム
4 駆動車セット
4a 中央アーバー
4b リング
5a、6、7a 第1の減速段
5b、8、7b 第2の減速段
10 差動ギヤ
11 遊星車
12 太陽ピニオン
13、14 ロック用メンバー
10a シャシー車
10b 冠状体
12’ 軸方向のアーバー
13、14 ロック用メンバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6