(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442589
(24)【登録日】2018年11月30日
(45)【発行日】2018年12月19日
(54)【発明の名称】計時器用機構を切り替えるデバイスを有する計時器
(51)【国際特許分類】
G04G 21/00 20100101AFI20181210BHJP
G04F 7/08 20060101ALI20181210BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20181210BHJP
【FI】
G04G21/00 304L
G04F7/08 A
H01H36/00 W
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-224481(P2017-224481)
(22)【出願日】2017年11月22日
(65)【公開番号】特開2018-87813(P2018-87813A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】16201163.9
(32)【優先日】2016年11月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】デルドレ・ルノアール
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ・サルチ
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・レジュレ
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ブジャン
【審査官】
藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭48−015094(JP,Y1)
【文献】
実公昭49−010859(JP,Y1)
【文献】
実開昭57−061590(JP,U)
【文献】
米国特許第04409576(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04F 7/00−8/08
G04B 19/00
G04C 3/00
G04G 21/00
H01H 36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の状態と第2の状態の間で切り替わることができる機構(24)と、前記機構をその第1の状態と第2の状態の間で切り替えるスイッチングデバイスと、及び前記スイッチングデバイスを発動させる発動デバイス(32)とを有する計時器であって、
前記スイッチングデバイスは、前記発動デバイスによって発動されるオペレーティングメンバー(34)と、及びスイッチングメンバー(36)とを有し、
前記スイッチングデバイスは、前記スイッチングメンバーが、前記機構が第1の状態である第1の安定位置から前記機構が第2の状態である第2の安定位置へと、そしてその逆へと、必要に応じて変わることができ、
当該計時器は、
− 前記スイッチングメンバーに固定されており、前記スイッチングメンバーが前記第1の安定位置から前記第2の安定位置へと、そしてその逆へと変わるときに、第1の切り換え位置と第2の切り換え位置の間のスイッチングパスに沿った運動をする第1のバイポーラー磁石(50)と、
− 前記スイッチングデバイスの支持体に固定されており、前記第1の切り換え位置と前記第2の切り換え位置の間で前記第1のバイポーラー磁石と磁気的相互作用を絶えずする第2のバイポーラー磁石(52)と、
− 前記オペレーティングメンバーを少なくとも部分的に形成している少なくとも第1の高透磁性要素(54)とを有し、
前記オペレーティングメンバーは、前記発動デバイスによって繰り返し発動されるときに、前記第1の高透磁性要素(54)が、第1のオペレーティング位置と第2のオペレーティング位置の間で往復運動をするように構成しており、
前記スイッチングデバイスは、前記第1の高透磁性要素がその前記第1のオペレーティング位置にあるときに、前記第1及び第2のバイポーラー磁石が、その間に、実質的にスイッチングパス全体にわたって、磁気的反発力を発生させ、また、前記第1の高透磁性要素がその前記第2のオペレーティング位置にあるときに、前記第1及び第2のバイポーラー磁石が、その間に、前記第2のバイポーラー磁石の側に位置している前記スイッチングパスの少なくとも一部の部分において磁気的引力を発生させるように構成している
ことを特徴とする計時器。
【請求項2】
前記磁気的反発力は、磁気的反発力単独で、前記スイッチングメンバー(36)をその前記第1の安定位置と前記第2の安定位置の間で発動させて前記スイッチングメンバーを前記第2の安定位置に保持するために十分な強度及び範囲を有し、
前記磁気的引力は、磁気的引力単独で、前記スイッチングメンバーをその前記第2の安定位置と前記第1の安定位置の間で発動させて前記スイッチングメンバーを前記第1の安定位置に保持するために十分な強度及び範囲を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器。
【請求項3】
前記オペレーティングメンバー(34)は、オペレーティングレバーによって形成され、このオペレーティングレバーは、前記第1の高透磁性要素が前記第1のオペレーティング位置と前記第2のオペレーティング位置をそれぞれ定める第1の角度位置と第2の角度位置の間で回転するように回転し、
前記第1の高透磁性要素(54)が前記第2の角度位置にあるときに、前記第1の高透磁性要素は、前記第2のバイポーラー磁石の磁軸によって定められるアライメント軸(56)上に実質的に配置され、これによって、前記第1の高透磁性要素は、前記第1及び第2のバイポーラー磁石の間に実質的にあり、前記第1の高透磁性要素(54)が前記第1の角度位置にあるときに、前記第1の高透磁性要素は、前記アライメント軸から離れている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の計時器。
【請求項4】
前記第1のバイポーラー磁石(50)の前記スイッチングパスは、前記アライメント軸と実質的に一致しており、
前記第1のバイポーラー磁石は、その磁軸が実質的に前記アライメント軸に沿った方向に向いているように構成しており、
前記第1及び第2のバイポーラー磁石は、反対の極性を有するように構成している
ことを特徴とする請求項3に記載の計時器。
【請求項5】
前記オペレーティングレバーには、その回転軸(58)と前記第1の高透磁性要素の間に開口(68)があり、
前記第2のバイポーラー磁石(52)は、少なくとも前記オペレーティングレバーがその前記第2の角度位置にあるときに、前記開口内に配置されており、
前記開口は、前記オペレーティングレバーがその前記第1及び第2の角度位置の間で自由に回転することができるように構成している輪郭を有する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の計時器。
【請求項6】
前記オペレーティングレバーは、2つの位置合わせくぼみがある位置合わせばね(64)に関連づけられたピン(66)を有し、
前記2つの位置合わせくぼみは、前記ピンが前記2つの位置合わせくぼみ内に順次的に収容されるときに、前記オペレーティングレバーの第1及び第2の角度位置をそれぞれ定める
ことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の計時器。
【請求項7】
前記発動デバイスは、所与の平行移動の方向に平行移動するようにガイドされるシャトル(72)を有し、
前記シャトルには、前記オペレーティングレバーの後方部の方を向いている一端において、細長材ばね(78)があり、この細長材ばね(78)の端には発動頭部(80)があり、前記細長材ばね(78)は、その変形していない位置において、前記平行移動の方向と平行であって、実質的に前記オペレーティングレバーの前記回転軸を通る、スラスト軸(70)に沿って延在しており、
前記オペレーティングレバーの前記後方部は、前記回転軸に対して前記第1の高透磁性要素の反対側に位置しており、
前記後方部は、2つの発動くぼみ(85、86)がある対称的な輪郭を有し、前記2つの発動くぼみは、前記回転軸を実質的に通る対称軸(88)の両側にそれぞれ位置しており、前記発動頭部を受けるように構成している輪郭をそれぞれ有しており、
前記2つの発動くぼみの間には、突起部(82)があり、前記突起部には、前記2つの発動くぼみまで続いている2つの対称的なフランク(83、84)があり、
前記後方部の前記対称軸は、前記突起部の先端部を実質的に通り抜け、
前記シャトルと前記オペレーティングレバーは、前記シャトルが前記オペレーティングレバーの方向に押されたときに、前記発動頭部が、まず、前記発動頭部に対向している前記突起部の前記2つのフランクの一方に沿って滑り、前記発動頭部が前記フランクの底部にて前記発動くぼみ内にて収容されるまで前記細長材ばねを弾性変形させ、そして、前記発動頭部が、前記オペレーティングレバーにおいて力のモーメントを発生させて、前記オペレーティングレバーが、前記第1の角度位置と前記第2の角度位置の間の中間角度位置を少なくとも過ぎるように回転駆動されることが可能になり、
これによって、前記オペレーティングレバーがその第1及び第2の角度位置の間で交互に傾けることを可能にする
ことを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の計時器。
【請求項8】
前記オペレーティングメンバーは、さらに、前記第1の高透磁性要素が前記第1のオペレーティング位置にあるときに前記第1及び第2のバイポーラー磁石と実質的にアライメント状態となるように構成している第2の高透磁性要素(60)を有する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の計時器。
【請求項9】
前記第2の高透磁性要素(60)は、前記スイッチングパスに沿った前記第1のバイポーラー磁石の位置にかかわらず、前記第1及び第2のバイポーラー磁石の一方又は他方の近くに位置するように構成している
ことを特徴とする請求項8に記載の計時器。
【請求項10】
前記スイッチングメンバーは、前記第1の磁石が固定された連結レバー(38)を有する連結デバイス(30)によって形成されており、
前記連結レバーの前記第1及び第2の安定位置は、2つの止め(44、45)によってそれぞれ定められており、前記2つの止めの間を前記連結レバーのアームが通る
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の計時器。
【請求項11】
前記機構は、クロノグラフ機構であり、
前記発動デバイスは、当該計時器のユーザーが発動することができるプッシャー(90)を有する
ことを特徴とする請求項10に記載の計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのオペレーティング状態の間で計時器用機構を切り替えるスイッチングデバイスに関する。
【0002】
本発明は、一般的には、第1の状態と第2の状態の間で切り替わることができるスイッチング機構と、この機構を切り替えるスイッチングデバイスと、及びこのスイッチング機構を発動するデバイスとを有する計時器に関する。前記スイッチングデバイスは、発動デバイスによって発動されるオペレーティングメンバーと、及び当該機構がその第1の状態にある第1の安定位置から当該機構がその第2の状態にある第2の安定位置へと、及びその逆に、必要に応じて変わることができるスイッチングメンバーとを有する。
【0003】
本発明は、特に、機械式計時器用ムーブメントの機構のための連結デバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
クロノグラフ機構を連結する様々なデバイスが当業者に知られている。欧州特許出願EP2897003は、クロノグラフ機構用の伝統的な連結デバイスを開示している。この連結デバイスは、中間車を有しており、この中間車は、連結が係合しているとき(デバイスが連結状態であるとき)には、クロノグラフ車と駆動車と同時に噛み合い、連結が解除されているとき(デバイスが分離状態であるとき)には、これらの2つの車のうちの少なくとも一方から取り除かれて、それらの2つの車の間の運動学的連鎖を壊す。このために、連結デバイスは、2つのアームの第1の端において中間車を担持している連結レバーを有する。この連結レバーは、連結レバーの第2のアームの端がカラム車に対向するように安定配置され続けるように、第1の戻しばねに関連づけられている。このようにして、カラム車が一種のカムを形成し、連結レバーの前記端がカム従動子を形成する。クロノグラフ機構の連結と分離を交互に制御するカラム車を発動させるために、第2の戻しばねに関連づけられた回転するクリックを一端にて担持する大きなレバーが設けられる。
【0005】
上記の伝統的な連結機構は複雑である。これは、複雑なカラム車を有するいくつかの枢支メンバーを有し、したがって、比較的高コストな部品となる。2つの前記ばねは、設けられた機械的な接触領域において摩擦力を発生させ、このことによって、磨耗する。また、このようなばねは脆弱であり、時間が経過すると弾性が変わってしまう。最後に、計時器内にて様々なメンバー、特に、カラム車を発動するクリック、及びクリックに往復運動を行わせる大きなレバー、を機能させるためには、精密に組み立てなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の伝統的なタイプのデバイスのいくつかの短所をなくした異なるタイプの計時器用機構のためのスイッチングデバイスを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、第1の状態と第2の状態の間で切り替わることができる機構と、この機構をその第1の状態と第2の状態の間で切り替えるスイッチングデバイスと、及び前記スイッチングデバイスを発動させる発動デバイスとを有する計時器に関し、
前記スイッチングデバイスは、前記発動デバイスによって発動されるオペレーティングメンバーと、及びスイッチングメンバーとを有し、
前記スイッチングデバイスは、前記スイッチングメンバーが、前記機構が第1の状態である第1の安定位置から前記機構が第2の状態である第2の安定位置へと、そしてその逆へと、必要に応じて変わることができる。
この計時器は、
− 前記スイッチングメンバーに固定されており、前記スイッチングメンバーが前記第1の安定位置から前記第2の安定位置へと、そしてその逆へと変わるときに、第1の切り換え位置と第2の切り換え位置の間のスイッチングパスに沿った運動をする第1のバイポーラー磁石と、
− 前記スイッチングデバイスの支持体に固定されており、第1の切り換え位置と第2の切り換え位置の間で前記第1のバイポーラー磁石と磁気的相互作用を絶えずする第2のバイポーラー磁石と、
− 前記オペレーティングメンバーを少なくとも部分的に形成している少なくとも第1の高透磁性要素とを有する。
【0008】
前記オペレーティングメンバーは、前記発動デバイスによって繰り返し発動されるときに、前記第1の高透磁性要素が、第1のオペレーティング位置と第2のオペレーティング位置の間で往復運動(レシプロケーティング運動)をするように構成している。前記スイッチングデバイスは、前記第1の高透磁性要素がその前記第1のオペレーティング位置にあるときに、前記第1及び第2のバイポーラー磁石が、その間に、実質的にスイッチングパス全体にわたって、磁気的反発力を発生させ、また、前記第1の高透磁性要素がその第2のオペレーティング位置にあるときに、前記第1及び第2のバイポーラー磁石が、その間に、前記第2のバイポーラー磁石の側に位置している前記スイッチングパスの少なくとも一部の部分において磁気的引力を発生させるように構成している。
【0009】
以下において説明しない特定の実施形態において、磁気スイッチングデバイスに加えて、戻し力が比較的低いばねが設けられ、これによって、一方向のスイッチングメンバーの運動に参加し、及び/又はその安定位置の1つにおいてこのスイッチングメンバーを保持することを支援する。特に、スイッチングパスが比較的長い場合、このようなばねは、スイッチングメンバーに作用して、第1の高透磁性要素がその第2のオペレーティング位置にあるときに、スイッチングメンバーを第2のバイポーラー磁石の方に引きつけるために磁気吸引力が介在するまで、第2のバイポーラー磁石の反対側に位置しているスイッチングパスの第1の部分を横断してスイッチングメンバーを動かす。
【0010】
好ましい実施形態において、前記磁気的反発力は、磁気的反発力単独で、前記スイッチングメンバーをその前記第1の安定位置と前記第2の安定位置の間で発動させて前記スイッチングメンバーを前記第2の安定位置に保持するために十分な強度及び範囲を有し、前記磁気的引力は、磁気的引力単独で、前記スイッチングメンバーをその前記第2の安定位置と前記第1の安定位置の間で発動させて前記スイッチングメンバーを前記第1の安定位置に保持するために十分な強度及び範囲を有する。
【0011】
本発明の磁気システム、特に、2つの前記オペレーティング位置の間で可動な少なくとも1つの高透磁性要素を有するオペレーティングメンバーの結果として、磁性スイッチングデバイスは、双安定系を定める。また、前記の好ましい実施形態において、スイッチングデバイスは、スイッチングメンバーに関連づけられた戻しばねを必要としない。
【0012】
好ましい変形態様において、オペレーティングメンバーは、回転レバーによって形成され、これによって、オペレーティングレバーが発動されたときに、高透磁性要素は、2つの所定の角度位置の間で回転運動をする。このようなレバーは、カラム車よりも作ることが単純な部品を構成している。特に、オペレーティングレバーは、第1の高透磁性要素が、第1のオペレーティング位置と第2のオペレーティング位置をそれぞれ定める第1の角度位置と第2の角度位置の間で回転をするように回転する。次に、第1の高透磁性要素がその第2の角度位置にあるときに、この第1の高透磁性要素は、実質的に第1及び第2のバイポーラー磁石の間にて位置するように、第2のバイポーラー磁石の磁軸によって定められるアライメント軸上に実質的に位置している。しかし、この第1の角度位置において、第1の高透磁性要素は、前記アライメント軸から離れる。
【0013】
なお、オペレーティングレバーの発動には、戻しばねに関連づけられた回転するクリックを必要としない。また、磁性システムによって、オペレーティングメンバーとスイッチングメンバーの間のいずれの接触も回避することができる。
【0014】
好ましい変形態様において、第1のバイポーラー磁石の前記スイッチングパスは、アライメント軸と実質的に一致しており、この第1のバイポーラー磁石は、その磁軸が実質的にアライメント軸に沿った方向に向いているように構成しており、前記第1及び第2のバイポーラー磁石は、反対の極性を有するように構成している。
【0015】
例として与えられる添付の図面を参照しながら、下において、本発明について詳細に説明する。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】特定のふるまいが本発明においてうまく利用される磁性システムを概略的に示している。
【
図2】
図1の磁性システムの可動磁石に発生する磁力のグラフを、この磁性システムの一部を形成する高透磁性要素からの距離の関数として示している。
【
図3】クロノグラフ機構が連結デバイスによって連結状態と分離状態の間で切り替えられるような本発明の1つの実施形態の平面図である
【
図4】クロノグラフ機構が連結デバイスによって連結状態と分離状態の間で切り替えられるような本発明の1つの実施形態の平面図である
【
図5A】
図5A〜5Dは、2つの角度的なオペレーティング位置の間でのオペレーティングレバーの発動の様々な順次的な段階を示している。
【
図5B】
図5A〜5Dは、2つの角度的なオペレーティング位置の間でのオペレーティングレバーの発動の様々な順次的な段階を示している。
【
図5C】
図5A〜5Dは、2つの角度的なオペレーティング位置の間でのオペレーティングレバーの発動の様々な順次的な段階を示している。
【
図5D】
図5A〜5Dは、2つの角度的なオペレーティング位置の間でのオペレーティングレバーの発動の様々な順次的な段階を示している。
【
図6】
図6A〜6Dは、連結レバーによって担持される磁石にて発生する磁力をそれぞれ発生する4つの特定の状況における本発明に係る磁性システムを概略的に示している。
【
図7】オペレーティングレバーの角度位置の関数として4つのトルク曲線を示しており、これらの曲線は、連結レバーがその連結位置又は分離位置にあるときにトルクレバーと連結レバーに与えられるトルクをそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、
図1及び2を参照しながら、オペレーティングメンバーとスイッチングメンバーの間の、双安定性であって、好ましくは、非接触である、スイッチングデバイスを達成するために本発明が巧妙に実装する磁性システムについて説明する。これには、スイッチングメンバーをその2つの安定位置の一方の位置又は他方の位置に動かして保持するために戻しばねを必要としない。
【0018】
磁性システム2は、固定された第1の磁石4と、高透磁性要素6と、及び第2の磁石8とを有する。この第2の磁石8は、変位軸に沿って、第1の磁石4と要素6によって形成されるアセンブリーに対して動くことができる。この変位軸は、ここにおいて、前記の3つの磁性要素のアライメント軸10と一致している。要素6は、第1の磁石と第2の磁石の間にて、第1の磁石の近くであって第1の磁石に対して所定の位置に配置されている。特定の変形態様において、要素6と磁石4の間の距離は、磁石4の磁化軸に沿った磁石4の長さの10分の1よりも小さい又は実質的に等しい。要素6は、例えば、カーボン鋼、炭化タングステン、ニッケル、FeSi又はFeNi、又はVacozet(登録商標)(CoFeNi)又はVacoflux(登録商標)(CoFe)のようなコバルトを含有する他の合金によって作られている。好ましい変形態様において、この高透磁性要素は、鉄又はコバルトベースの金属性ガラスによって構成している。要素6は、飽和場B
S及び透磁率μによって特徴づけられる。磁石4及び8は、例えば、フェライト、FeCo又はPtCo、NdFeBやSmCoのような希土類含有材料によって作られている。これらの磁石は、残留場Br1及びBr2によって特徴づけられる。
【0019】
高透磁性要素6には、中央軸があり、この中央軸は、好ましくは、第1の磁石4の磁化軸、そして、第2の磁石8の磁化軸と、実質的に一致しており、この中央軸は、ここではアライメント軸10と一致している。磁石4及び8の磁化方向どうしは反対方向である。このように、これらの第1及び第2磁石どうしは、異なる極性を有し、特定の相対的な距離にわたって相対運動を行うことができる。要素6と可動磁石8の間の距離Dは、この可動磁石8と、当該磁性システムの他の2つの要素4、6との間の離間距離を表している。なお、ここにおいて、軸10は直線状であるように構成しているが、この態様には限定されない。実際に、以下において説明する実施形態におけるように、変位軸が曲がっているようにすることもできる。この場合、要素6の中央軸は、好ましくは、曲がった変位軸の接線方向を実質的に向いており、したがって、このような磁性システムのふるまいは、おおまかに見ると、ここで説明している磁性システムのふるまいと同様である。このことは、曲率半径が要素6と可動磁石8の間の可能性のある最大距離と比べて大きいときにはなおさらである。
図1に示す好ましい変形態様において、要素6の中央軸10に直交する直交平面における寸法構成は、前記直交平面への射影における第1の磁石4の寸法構成や第2の磁石8の寸法構成よりも大きい。なお、第2の磁石が移動距離の端にて高透磁性要素に対向するように止められるときに、第2の磁石には、硬化された表面又は硬質材の精密表面層があることが好ましい。
【0020】
2つの磁石4及び8どうしは互いに反発するように構成している。これによって、高透磁性要素6がなければ、これらの2つの磁石4、8を反発力が互いに遠ざける。しかし、驚くべきことに、要素6がこれらの2つの磁石4、8の間に配置されていることによって、可動磁石8と要素6の間の距離が十分に小さいと、可動磁石8に発生する磁力の方向が逆転して、可動磁石8に磁気的引力がはたらく。
図2の曲線12は、可動磁石8と高透磁性要素6の間の距離Dの関数として、磁性システム2が可動磁石8にて発生させる磁力を表している。なお、可動磁石8において、距離Dの第1の範囲D1にわたって、磁石8を要素6に対して保持し又は磁石8が要素6から離れていれば磁石8を要素6の方に戻す傾向がある磁気的引力が全体として発生する。2つの磁石の間に高透磁性(特に、強磁性)要素があることに起因するこの全体的な引力によって、互いに磁気的に反発するように構成している2つの磁石4、8の間の磁力を反転させることが可能になり、これに対して、この可動磁石8において、距離Dの第2の範囲D2にわたって、磁気的反発力が全体として発生する。この第2の範囲は、距離Dの第1の範囲に対応する距離よりも大きい要素6と磁石8の間の距離に対応している。第2の範囲は、実際上、最大距離D
maxまでに制限されている。この最大距離D
maxは、一般的には、可動磁石8の離間距離を制限する止めによって定められる。
【0021】
可動磁石にて発生する磁力は、距離Dの連続関数であり、したがって、距離D
invでゼロ値を有する。この距離D
invで、当該磁力が反転する(
図2)。このことは、磁性システム2の注目すべきふるまいである。反転距離D
invは、当該磁性システムを形成する3つの磁性部品4、6、8の幾何学的構成及びそれらの磁気的性質によって決められる。このようにして、この反転距離を、ある程度、磁性システム2の3つの磁性要素4、6、8の物理的パラメータと、及び強磁性要素6と固定磁石4の離間距離とによって、選択することができる。同じことが、曲線12の傾斜の進展にも当てはまる。なぜなら、この傾斜の変化、そして、特に、可動磁石8が強磁性要素に近づくときの引力の強さ、を調整することができるからである。
【0022】
以下、
図3〜7を参照しながら、本発明の1つの実施形態について説明する。
【0023】
計時器用ムーブメント22は、クロノグラフ車26によって部分的に示しているクロノグラフ機構24を有する。このクロノグラフ機構は、伝統的な形態で、止められた分離された第1の状態と、連結された第2の状態の間で切り替わることができる。クロノグラフ車26は、計時器用ムーブメントの駆動車28に運動学的に連結されている。このために、クロノグラフ機構のためにスイッチングデバイスが設けられ、当該機構のための連結デバイス30と、及び連結デバイス30を発動させる発動デバイス32とを形成している。連結デバイス30は、発動デバイスによって発動されるオペレーティングレバー34によって形成されるオペレーティングメンバーと、及びプレート23にマウントされた連結レバー38、レバーバー40及びこの連結レバー38とレバーバー40の間で回転する連結車42を有するスイッチングメンバー36とを有する。スイッチングメンバー36は、レバー38のアームが止め44に対向するように安定配置されており連結車42がクロノグラフ車と連係していない位置にあるような第1の安定位置(
図3)から、レバー38の前記アームが止め45に対向するように安定配置されており連結車42がクロノグラフ車と連係している位置にあるような第2の安定位置(
図4)へと、またこの逆にも、必要に応じて変えることができる。
【0024】
このために、第1のバイポーラー磁石50は、レバー38の第1の端に固定される。このレバー38は、レバー38の第2の端にてアーバー46のまわりを回転する。スイッチングメンバー36がその第1の安定位置からその第2の安定位置に移るとき、磁石50は、この磁石50が第1の切り換え位置と第2の切り換え位置の間を移動する円弧によって定められるスイッチングパスに沿って運動をする。この第1の切り換え位置と第2の切り換え位置はそれぞれ、スイッチングメンバー36の第1及び第2の安定位置に対応している。磁石50は、第2の切り換え位置から第1の切り換え位置へと移るときに、同じパスを反対方向に追跡する。
【0025】
次に、計時器22は、プレート23に固定される第2のバイポーラー磁石52を有する。これによって、第1のバイポーラー磁石50と磁気的相互作用をその第1及び第2の切り換え位置の間で絶えず発生させる。
【0026】
本発明によると、オペレーティングレバー34は、第1の高透磁性要素54を有し、オペレーティングレバー34が発動デバイス32によって繰り返し発動されるときに、第1の高透磁性要素54が第1のオペレーティング位置と第2のオペレーティング位置の間で往復運動を行うように構成している。オペレーティングレバー34は、第1のオペレーティング位置と第2のオペレーティング位置をそれぞれ定める第1の角度位置(
図3)と第2の角度位置(
図4)の間で第1の高透磁性要素54が回転するように回転する。第1の要素54がその第2の角度位置にあるときに、第1の要素54は、実質的に第1及び第2のバイポーラー磁石の間に位置しており、これによって、前記2つのバイポーラー磁石と、
図1及び2を参照しながら上で説明したタイプの磁性システムを形成する。
【0027】
好ましくは、第1の要素54は、その第2の角度位置において、磁石52の磁軸によって定められるアライメント軸56上に配置される。これによって、第1の要素54は、実質的に第1及び第2のバイポーラー磁石の間に位置し、これに対して、第1の角度位置では、第1の要素54はアライメント軸56から離れている。好ましくは、説明した実施形態における場合のように、バイポーラー磁石50のスイッチングパスは、実質的にアライメント軸56と一致しており、これによって、2つのバイポーラー磁石は、スイッチングパスに沿った磁石50のいずれの位置においても、実質的にこのアライメント軸にてアライメント状態となっている。次に、磁石50は、その磁軸が実質的にアライメント軸に沿った方向を向いており、第1及び第2のバイポーラー磁石50及び52は、反対の極性を有するように構成している。
【0028】
図面、特に、
図4及び5D、を参照しながら説明する好ましい変形態様において、一方では、オペレーティングレバー34がその第2のオペレーティング位置にあり、したがって、第1の要素54が第2の磁石52に対向しており、他方では、スイッチングメンバー36が第1の磁石50に磁気的引力がはたらく第2の安定位置にあるとき、この第1の磁石50、第2の磁石52及び高透磁性要素54はすべて、アライメント軸56にてアライメント状態となっている。すなわち、これらの2つの磁石のそれぞれの磁軸及び要素54の軸方向の軸は、平行であり、同じ線上に位置している。アライメント軸が回転軸58を通ることは、好ましいが、何ら必須ではない。
【0029】
オペレーティングレバー34は、さらに、第1の高透磁性要素54がその第1のオペレーティング位置(
図3)にあるときに、実質的に第1及び第2のバイポーラー磁石50及び52とアライメント状態であるように構成している第2の高透磁性要素60を有する。この第2の要素60が本発明にとって不可欠なわけではないことをすぐにわかるであろう。したがって、特定の変形態様において、オペレーティングレバー34には、1つのみの高透磁性要素、すなわち、要素54、がある。しかし、第2の要素60は、特に、オペレーティングレバー34がその第1のオペレーティング位置にあるときに第2の磁石52からの磁束をアライメント軸56に沿って部分的に通して、要素54が磁石からの磁束をアライメント軸に対する横断方向に大きく逸らさずに第1の磁石50との相互作用を促進するようにはたらくために、有利である。また、この要素60は、磁気的反発力を調整するようにはたらき、特に、この力を制限するようにはたらく。好ましい変形態様において、第2の高透磁性要素は、スイッチングパスに沿った第1のバイポーラー磁石の位置にかかわらず、第1及び第2のバイポーラー磁石の一方又は他方の近くに位置しており、全スイッチングパスにわたって磁気的反発力を有するように構成している。
【0030】
オペレーティングレバー34は、位置合わせばね64に関連づけられたピン66によって形成される位置合わせデバイス62を有する。この位置合わせばね64には、2つの位置合わせくぼみがあり、これらの2つのくぼみは、これらの2つのくぼみにピンが順次的に収容されるときに、レバーの第1及び第2の角度位置をそれぞれ定める。オペレーティングレバー34には、さらに、その回転軸58と第1の高透磁性要素54の間に開口68がある。この開口68の中に、第2の磁石52が配置され、この開口68は、オペレーティングレバー34がその第1及び第2の角度位置の間にて自由に回転することができるような輪郭を有する。図示した変形態様において、開口68は、円弧の形態であり、要素54及び60は、回転軸を中心とするようにこの開口68に対向するように、円弧状の開口の対称軸の両側に配置される。
【0031】
発動デバイス32は、平行移動の方向に平行移動するようにガイドされるシャトル72を有する。このために、シャトル72には、2つの長穴74及び75がある。この長穴74及び75の中には、プレート23に固定された2つのアーバー上で回転するようにマウントされた2つのローラー76及び77がそれぞれ配置されている。2つの安定した角度位置の間にて2つの回転方向にレバー34を交互に発動するために、シャトル72には、レバー34の後方部の方を向いている一端において、細長材ばね78がある。この細長材ばね78の端には発動頭部80があり、細長材ばね78は、その変形していない位置(安定配置位置)において、平行移動の方向と平行であって、好ましいことに、オペレーティングレバー34の回転軸58を通る、スラスト軸70に沿って延在している。次に、レバー34の後方部は、回転軸58に対して第1の要素54の反対側に位置している。この後方部には、対称的な輪郭があり、回転軸58を通る対称軸88の両側にそれぞれ形成された2つの発動くぼみ85及び86があり、発動くぼみ85及び86のそれぞれの輪郭は、発動頭部80を受けるように構成している。また、レバーの後方部には、2つの発動くぼみの間に突起部82がある。この突起部82には、2つの対称的なフランク83及び84があり、このフランク83及び84はそれぞれ、2つの発動くぼみまで続いている。前記後方部の対称軸88は、実質的に突起部82の先端部を通り抜ける。
【0032】
注目すべきことに、
図5A〜5Dに示すように、シャトル72とオペレーティングレバー34は、レバー34がその2つのオペレーティング位置のいずれかにありシャトルがプッシャー90によってレバーの方に押されるときに、発動頭部80が、まず、前記発動頭部(
図5Aを参照)に対向している突起部の2つのフランクの一方(
図5Aのフランク84)に当接し、そして、第1の発動頭部80が発動くぼみの内側の関心事のくぼみの底部にて収容されるまで(
図5Bを参照)、当該フランクに沿って滑り、細長材ばね78を弾性変形させるように構成している。そして、シャトルをその平行移動の方向に沿って押し続けると、発動頭部80は、スラスト力F1を発生させて、このスラスト力F1は、第1及び第2の角度位置の間の中央角度位置を少なくとも通り越すようにレバーを回転駆動させる力のモーメントをレバー上にて発生させる(図を5C参照)。これによって、オペレーティングレバー34がその2つのオペレーティング位置の他方の方に方向を変えることができる(
図5Dを参照)。このレバー発動動作を繰り返すことによって、オペレーティングレバー発動デバイスは、オペレーティングレバー34の2つのオペレーティング位置に対応する第1及び第2の安定した角度位置の間でオペレーティングレバー34を交互に傾けることができる。
【0033】
なお、シャトル72に戻し力を与えるばね92が設けられる。プッシャー90が押しボタンと一体的に回転する場合、このばね92を、プッシャー90に関連づけられた押しボタンに組み入れられたばねによって置き換えることができる。下でわかるように、本発明のスイッチングデバイスには、プッシャーに対するスラスト力が低いことが必要であり、これによって、シャトルに関連づけられたばねの戻し力を選択することによってクロノグラフ機構の状態を変えるようにユーザーが与える必要がある力を決めることが本質的に可能となる。
【0034】
以下のいくつかの考察は、図示した好ましい実施形態に関連している。
− ピン66が対称軸88上に位置しているということは、位置合わせデバイス62の1つのみの有利な対称的な変形態様を形成する。
− 細長材ばね78がシャトルのスラスト軸70上に安定配置時(細長材ばねが変形していない状態)に配置されるということは、好ましいが必須ではない変形態様を表している(実際に、それらの間に特定の角度があることも想到することができる)。
− 安定配置時に細長材ばねが配置されるスラスト軸が回転軸58を通ること、そして、レバーの両方のオペレーティング位置においてこのスラスト軸と同じ角度的オフセット(絶対値で)を対称軸88が有することは、好ましい変形態様を構成している。
− アライメント軸56がシャトルの平行移動の方向と平行であるということは、特定の必須ではない場合を構成している。
− スラスト軸70がアライメント軸56と一致するということは、有利であるが必須ではない場合を構成している。
【0035】
以下、
図1及び2を参照しながら、
図6A〜6D及び7を特に参照して、上記の磁性システムの動作を踏まえて、連結デバイス30の動作について説明する。
図7は、要素54の2つのオペレーティング位置の間のオペレーティングレバー34の2つの安定位置の間の第1の高透磁性要素54の角度位置についての4つのトルク曲線を、オペレーティングレバー34の角度位置の関数としてそれぞれ示している。図面を参照しながら説明した実施形態において、0°位置は、要素54の第2のオペレーティング位置に対応しており、20°位置は、要素54の第1のオペレーティング位置に対応している。レバーの0°角度位置において、連結デバイスは、連結している又は連結位置にされる。レバーの20°角度位置において、連結デバイスは、分離している又は分離位置にされる。これらの4つの曲線は、一方では、クロノグラフレバー38に、したがって、スイッチングメンバー36(曲線100及び102)に、はたらくトルク、そして、他方では、スイッチングメンバーがその第1の安定位置(曲線100及び104)又はその第2の安定位置(曲線102及び106)のいずれかに保持(強制的に)されているときに、オペレーティングレバー(曲線104及び106)にはたらくトルクを表している。
【0036】
スイッチングメンバーの位置にかかわらず、2つの磁石50、52及び2つの高透磁性要素54及び60によって構成している磁性システムによって発生する磁力が作るトルクが、オペレーティングレバー34が0°角度位置を占めるときの磁気的引力に対応する負トルクから、レバーが20°角度位置を占めるときの磁気的反発力に対応する正トルクへと変わることがわかる。したがって、オペレーティングレバー34の0°角度位置においては、連結メンバーにて発生するトルク範囲TR1は全体的に負であり、レバーの20°角度位置においては、連結メンバーに与えられるトルク範囲TR2は全体的に正である。結論として、
図7のトルク曲線によって明らかなように、連結デバイスは、第1の要素54がその第2のオペレーティング位置にあるときに(
図4及び
図6A)、第1の磁石のスイッチングパス全体にわたって、第1及び第2の磁石50及び52がこれらの間に磁気的引力(引き合う磁力)を発生させるように構成しており、これによって、第1の要素54がその第1のオペレーティング位置にあるときに(
図3及び
図6C)、スイッチングパス全体にわたって、第1及び第2の磁石がこれらの間に磁気的反発力(反発し合う磁力)を発生させる。
【0037】
また、磁気的反発力は、スイッチングメンバー36をその第1の安定位置とその第2の安定位置の間で発動させて、そして、この第2の安定位置に前記メンバーを保持するために、前記磁気的反発力単独で十分な強度と範囲を有するようにされる。これに対して、磁気吸引力は、スイッチングメンバーをその第2の安定位置とその第1の安定位置の間で発動させて、そして、この第1の安定位置にメンバーを保持するために、前記磁気吸引力単独で十分な強度と範囲を有するようにされる。したがって、この好ましい実施形態において、スイッチングメンバーに関連づけられた戻しばねの必要性はない。
【0038】
図7は、本発明に係るスイッチングデバイスの別の利点を示している。オペレーティングレバー34に与えられるべきトルクが、スイッチングメンバー(連結レバー38)に与えられるトルクよりもはるかに低いことが観察される。したがって、伝統的な機械デバイスと比較して、連結機能や分離機能を開始させるためにユーザーがプッシャーに対して与える必要がある力が小さくなる。
【0039】
なお、別の変形態様において、オペレーティングメンバーが磁気的反発力を発生させるその2つのオペレーティング位置の一方のオペレーティング位置にあるときにクロノグラフ機構が駆動され、オペレーティングメンバーが磁気的引力を発生させるその2つのオペレーティング位置の他方のオペレーティング位置にあるときにクロノグラフ機構が止められるように、分離状態と連結状態が逆に変わる。
【0040】
図6A〜6Dは、連結レバー38と一体化された磁石50に発生する磁力の変化を、オペレーティングレバー34の角度位置の関数として示している。
図6Aは、オペレーティングレバー34がその安定した連結位置にある連結状態の連結デバイス30を部分的に示している。磁力FM1は、固定磁石52の方向を向いている磁気的引力であり、この力は、実質的にアライメント軸56に沿う方向を向いており、比較的大きな強さを有する。なぜなら、可動磁石50が高透磁性要素54(2つの要素54及び60のうちの長い方)に対向する短い距離の位置に位置しているからである。また、この要素54も固定磁石52から短い距離のところに位置している。
図6Bは、時計回りの方向にオペレーティングレバー34を傾けることによって分離状態に移行する連結デバイスを示している。この変化の間にレバー34が回転するときに、磁力FM2は向きを変え、この磁力は、可動磁石50やこの磁石を担持する連結レバー38にとって磁気的反発力になる。
図6Cは、高透磁性要素60(2つの要素54及び60のうちの短い方)が実質的にアライメント軸56上でアライメント状態であるような、安定した分離位置におけるオペレーティングレバー34を示している。要素60と可動磁石50の間の距離は、比較的大きく、磁気反発力FM3は、実質的にアライメント軸に沿った方向を向いている。最後に、
図6Dは、レバー34が反時計回りの方向に傾くときに連結状態から分離状態へと移行している連結デバイスを示している。この変化の間に磁力FM4は再び向きを変え、可動磁石50が要素54に近づくにしたがって磁気的引力になる。オペレーティングレバー34が回転を終えると、
図6Aの構成に再び戻る。このようにして、本発明に係る連結デバイスの1つの完全なサイクルが終わる。
【符号の説明】
【0041】
24 機構
30 連結デバイス
32 発動デバイス
34 オペレーティングメンバー
36 スイッチングメンバー
38 連結レバー
44、45 止め
50 第1のバイポーラー磁石
52 第2のバイポーラー磁石
54 第1の高透磁性要素
56 アライメント軸
58 回転軸
60 第2の高透磁性要素
64 位置合わせばね
66 ピン
68 開口
70 スラスト軸
72 シャトル
78 細長材ばね
80 発動頭部
82 突起部
83、84 フランク
85、86 発動くぼみ
88 対称軸
90 プッシャー