特許第6442693号(P6442693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東洋新薬の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442693
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】キャベツ発酵物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20181217BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20181217BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20181217BHJP
【FI】
   A23L19/00 A
   A23L33/135
   A23L33/10
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-70563(P2017-70563)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-170983(P2018-170983A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2017年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】吉本 雄
(72)【発明者】
【氏名】松下 愛
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0119401(KR,A)
【文献】 特開2008−245573(JP,A)
【文献】 特開2002−138046(JP,A)
【文献】 特開2001−190251(JP,A)
【文献】 特開2002−119238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャベツの粉砕物と、ブランチングによる加熱工程を経て得られたキャベツの搾汁物とを、キャベツの粉砕物1重量部に対してキャベツの搾汁物を5重量部以上含むように混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物をラクトバチルス・プランタラムにより発酵させる発酵工程と、
を有することを特徴とするキャベツ発酵物の製造方法。
【請求項2】
前記キャベツの粉砕物が、キャベツの粉砕前又は粉砕後にキャベツを加熱する加熱工程を有する方法によって製造されたことを特徴とする請求項1に記載のキャベツ発酵物の製造方法。
【請求項3】
前記発酵工程は、pHが4.0〜4.5になった時点で終了させることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャベツ発酵物の製造方法。
【請求項4】
前記発酵工程後に賦形剤を添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキャベツ発酵物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャベツ発酵物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、優れた効能があるとしてキャベツ発酵物が注目されており、中でもキャベツ発酵エキスを配合した製品が特定保健用食品として許可を受けるなど話題を呼んでいる。
【0003】
キャベツの発酵物を得る方法としては、キャベツの粉砕物を発酵させる方法と、キャベツの搾汁物(抽出物)を発酵させる方法が挙げられる。
キャベツの粉砕物を発酵させる方法としては、例えば特許文献1、2が挙げられる。キャベツの粉砕物はキャベツを粉砕するだけで製造できるため、製造コストがかからないという利点があるが、一方で発酵に時間がかかるという難点がある。
キャベツの搾汁物又は抽出物を発酵させる方法としては、例えば特許文献3〜5が挙げられる。キャベツの搾汁物又は抽出物は、発酵が短時間で行えるという利点があるが、一方で、キャベツを搾汁又は抽出する必要があるため製造コストが高くなるという難点がある。
キャベツ発酵物を含む製品が製造される段階では、製造コストの低減や良好な製造効率が求められるため、発酵をより短時間で行うことができ、製造コストをさらに抑えることのできる技術が求められている。
【0004】
また、キャベツは熱を加えると好ましくない独特の臭いが生じてしまうため、キャベツの効能に着目してキャベツ汁を含む飲料を製造する場合、熱殺菌時の加熱や濃縮工程での加熱によって生じる独特の臭いが問題であった。そのため、例えば、特許文献5では所定の乳酸菌(ラクトバチルス・プランタラム)でキャベツ汁を発酵させることが提案されており、キャベツ汁の熱変による異臭発生等の問題を除去することを試みている。
しかしながら、上記の技術によってもなおキャベツ発酵物の風味や香りの改善は不十分であり、より摂取しやすくなるように、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3409038号公報
【特許文献2】特開2004−357509号公報
【特許文献3】特許第3502316号公報
【特許文献4】特開2006−298871号公報
【特許文献5】特許第4087548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような従来の事情に対処してなされたもので、風味や香りが改善されたキャベツ発酵物を短時間で製造できるキャベツ発酵物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のキャベツ発酵物の製造方法は、キャベツの粉砕物と、キャベツの搾汁物又は抽出物とを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を発酵させる発酵工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、風味や香りが改善されたキャベツ発酵物を短時間で製造できるキャベツ発酵物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のキャベツ発酵物の製造方法について詳細を説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0010】
本発明のキャベツ発酵物の製造方法は、キャベツの粉砕物と、キャベツの搾汁物又は抽出物とを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を発酵させる発酵工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
キャベツの搾汁物又はキャベツの抽出物としては、いずれを用いてもよいが、キャベツの栄養成分を豊富に含む観点から、キャベツの搾汁物を用いることが特に好ましい。
【0012】
(キャベツの粉砕物の製造方法)
キャベツの粉砕物としては特に制限されるものではなく、例えば、キャベツをざく切り状にカットし、洗浄工程、加熱工程、冷却工程、水切り工程、粗砕工程を経た後、細砕工程によってペースト状にすることによって得ることができる。また、キャベツの発酵物の風味を向上させる観点から、得られたキャベツの粉砕物を冷凍してもよい。キャベツの粉砕物は、例えば、市販のキャベツをミキサーや市販の粉砕機で粉砕することにより得ることができる。
粉砕物の状態、程度としては特に制限されるものではないが、発酵の速度を早くする観点から、ペースト状であることが好ましい。
【0013】
(キャベツの粉砕物の製造工程における加熱工程)
前記キャベツの粉砕物の製造においては、キャベツの粉砕前又は粉砕後に加熱工程を含むことが好ましい。加熱工程を行うことにより、発酵が進みやすくなり、発酵時間がさらに短くなる。また、得られるキャベツ発酵物の風味や香りもより向上する。
【0014】
キャベツの粉砕物の製造工程における加熱工程について、加熱温度は特に制限されるものではないが、殺菌強度を保ち菌汚染のリスクを少なくする観点から、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、90℃以上が最も好ましい。また、風味の劣化防止の観点及び加工コストの削減の観点から、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、110℃以下が最も好ましい。
【0015】
キャベツの粉砕物の製造工程における加熱工程について、加熱時間は特に制限されるものではないが、殺菌強度を保ち菌汚染のリスクを少なくする観点から、30秒以上が好ましく、60秒以上がより好ましく、80秒以上がさらに好ましく、90秒以上が最も好ましい。また、風味の劣化防止及び加工コストの削減の観点から、600秒以下が好ましく、300秒以下がより好ましく、240秒以下がさらに好ましく、180秒以下が最も好ましい。
【0016】
キャベツの粉砕物の製造工程における加熱工程について、加熱の方法としては特に制限されるものではないが、風味や香りが好ましいキャベツ発酵物を得られるという観点から、キャベツの粉砕前にブランチングによる加熱工程(キャベツを熱水に浸すことによって加熱する方法)が特に好ましい。
【0017】
(キャベツの搾汁物の製造方法)
キャベツの搾汁物としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、キャベツを洗浄後、加熱工程を経てから粉砕して搾汁し、遠心分離した後、再度加熱してから冷却し、さらに濃縮したもの等が挙げられる。キャベツの搾汁物としては、搾汁したものをそのまま用いてもよいが、発酵を効率的に進める観点から搾汁液の濃縮物を用いることが特に好ましい。濃縮の程度としては特に制限されるものではなく、例えば、Brixが8〜20になるように濃縮したものを用いることができる。
【0018】
(キャベツの抽出物の製造方法)
キャベツの抽出物としては、特に制限されるものではなく、例えば、キャベツを洗浄後、加熱工程を経てから粉砕してペースト状としたキャベツに対して抽出溶剤を用いて抽出し、殺菌することにより得ることができる。
抽出溶剤としては、例えば、水、エタノール等が挙げられる。
抽出の操作としては、例えば、加温・酵素処理後に加温等をすることにより行うことができる。
【0019】
(キャベツの搾汁物又は抽出物の製造工程における加熱工程又は殺菌工程)
キャベツの搾汁物又は抽出物の製造工程においては、殺菌強度を保ち菌汚染のリスクを少なくする観点及び味や香りの向上が期待できる観点から加熱工程を1回以上行うことが好ましい。中でも、粉砕前及び粉砕後に加熱工程を行うことが特に好ましい。
【0020】
粉砕前の加熱工程としては、風味や香りが好ましいキャベツ発酵物を得られるという観点から、ブランチングによる加熱工程が特に好ましい。加熱温度は特に制限されるものではないが、殺菌強度を保ち菌汚染のリスクを少なくする観点及び発酵の速度を早くする観点から、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、90℃以上が最も好ましい。また、風味の劣化防止の観点及び加工コストの削減の観点から、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、110℃以下が最も好ましい。
【0021】
粉砕後の加熱工程としては、加熱による殺菌工程が好ましい。加熱温度は特に制限されるものではないが、菌汚染のリスクを少なくしてキャベツの搾汁物又は抽出物を長期間保管できるようにする観点から、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましく、120℃以上が最も好ましい。また、風味の劣化防止の観点及び加工コストの削減の観点から、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましく、140℃以下が最も好ましい。
【0022】
(キャベツ発酵物の製造方法)
以下、キャベツ発酵物の製造方法について記載する。
得られるキャベツ発酵物の剤形に特に制限はなく、例えば、液状、ペースト状、粉末状であってもよいが、加工及び保管の容易さの観点から粉末状であることが特に好ましい。
【0023】
<混合工程>
混合工程は、キャベツの粉砕物と、キャベツの搾汁物又は抽出物とを混合して混合物を得る工程である。
【0024】
前記混合物は、キャベツの発酵を効率的に進める観点から、前記キャベツの粉砕物1重量部に対して、前記キャベツの搾汁物又は抽出物を5重量部以上含むことが好ましく、20重量部以上含むことがより好ましく、100重量部以上含むことがさらに好ましく、300重量部以上含むことが最も好ましい。また、風味や香りをより好ましくする観点から、前記キャベツの粉砕物1重量部に対して、前記キャベツの搾汁物又は抽出物を100000重量部以下含むことが好ましく、10000重量部以下含むことがより好ましく、5000重量部以下含むことがさらに好ましく、2000重量部以下含むことが最も好ましい。
【0025】
キャベツの粉砕物と、キャベツの搾汁物又は抽出物とを混合した混合物を発酵させることにより、キャベツの粉砕物とキャベツの搾汁物又は抽出物の風味とが調和してお互いの良さを引き立たせるという理由から、得られたキャベツ発酵物の風味や香りを改善することができる。また、混合物を用いることで、発酵を短時間で行うことができるとともに、搾汁物(又は抽出物)のみを用いる場合よりも製造コストを抑えることができる。
一方、キャベツの粉砕物のみである場合やキャベツの搾汁物又は抽出物のみである場合、発酵に時間がかかり、風味や香りが従来のものと同程度となり、改善がみられない。
【0026】
なお、混合物には、キャベツの粉砕物、キャベツの搾汁物・抽出物以外にもその他の成分を混合させることが可能であり、例えば、水、糖類、タンパク質、肉エキス、酵母エキス等を培地として混合してもよい。
【0027】
<発酵工程>
発酵工程では、前記混合物に乳酸菌を添加することにより発酵を行うことができる。
乳酸菌としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ストレプトコッカス・フェリカス、ビフィドバクテリウム・ロンガム等が挙げられる。中でも、ラクトバチルス・プランタラムが特に好ましい。
【0028】
乳酸菌の添加量としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能であるが、前記混合物1重量部に対して、0.00005〜0.0005重量部であることが好ましい。
【0029】
前記発酵工程は、pHが4.0〜4.5になった時点で終了させることが好ましく、4.0〜4.3になった時点で終了させることがより好ましい。
pHが4.5より大きい場合、発酵の進行が不十分であり、キャベツ発酵物が有する独特の風味が弱くなることがある。また、pHが4.0未満まで下がった場合、酸味が強すぎるため風味が悪くなることがある。
発酵工程における温度としては、適宜変更することが可能であるが、例えば30〜40℃であることが好ましい。
【0030】
前記発酵工程後に賦形剤を添加することが好ましい。
賦形剤としては、例えば、デキストリン、グルコース、シクロデキストリン、ゼラチン等が挙げられる。中でも、褐変(糖化)しにくく、安価であり、粘度が低く加工しやすいキャベツ発酵物の粉末が得られる等の理由から、デキストリンが好ましい。
【0031】
賦形剤の添加量としては、前記混合物の発酵終了時点におけるBrix値の2〜3倍量が好ましい。賦形剤の量が少なすぎる場合、噴霧乾燥工程において歩留(収量)が低下することがある。また、賦形剤の量が多すぎる場合、キャベツ発酵物が有する特有の風味が薄くなることがある。
【0032】
また、pHが4.0〜4.5になった時点で発酵を終了させた場合、Brix値としては、特に制限されるものではないが、例えば、3〜20であることが好ましい。また、このときの酸度(%)としては、特に制限されるものではないが、例えば、0.1〜0.8であることが好ましい。
【0033】
<その他の工程>
前記発酵工程後に、固体と液体を分離する工程を行ってもよい。
固体と液体とに分離するには、特に制限されるものではないが、例えば、濾過や遠心分離等が挙げられる。中でも濾過工程を行うことが好ましく、濾過工程により得られる液体の透明度を向上させることができる。
濾過としては、例えば、ラジオライト、セライト等を用いて行うことができる。
【0034】
また、固体と液体とに分離した後、液体を抽出し、加熱による殺菌処理を行ってもよい。ここでの加熱は、特に制限されるものではないが、例えば、70〜110℃であることが好ましく、10〜120分間行うことが好ましい。
【0035】
また、前記液体を噴霧乾燥する噴霧乾燥工程を行ってもよい。噴霧乾燥としては、例えば公知のスプレードライ等が挙げられる。
【0036】
(キャベツ発酵物の形態)
本発明のキャベツ発酵物の製造方法によって得られたキャベツ発酵物は、様々な形態にして用いることができ、特に制限されるものではない。例えば、錠剤、粉剤、顆粒剤、ソフトカプセル化剤、液状等の健康食品が挙げられる。また、粉剤、顆粒剤、ソフトカプセルは、そのまま飲んでもよいし、水等に溶解して飲んでもよい。
また、本発明によって得られたキャベツ発酵物に、食物繊維、乳酸菌、オリゴ糖、コラーゲン等を配合することにより、健康への効果や美容への効果に非常に優れた健康食品を得ることができる。
【実施例】
【0037】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
市販のキャベツを流水洗浄し、ミキサーにより粉砕し、生キャベツペーストを得た。次に、キャベツ粉砕物として上記生キャベツペースト1gと、キャベツの搾汁物99gと、水24gを混合して[混合物A]124gを得た。なお、キャベツの搾汁物は、キャベツを洗浄後、ブランチングによる加熱工程を経てから粉砕して搾汁し、遠心分離した後、130℃で30秒間加熱してから20℃まで冷却し、さらにBrixが12以上になるまで濃縮して得られたものである。
振とう培養器に[混合物A]124gを入れ、さらに乳酸菌末(ラクトバチルス・プランタラム)12.5mgを添加し、発酵を開始させた。
発酵では、糖度計、酸度計、pHメーターを用いて各値(Brix値、酸度、pH)のモニタリングを行いつつ発酵させた。発酵は35±2℃で行った。pHが4.4未満となった時点で発酵を終了させた。
発酵を終了させた後、ウォーターバスにて90℃で30分間保持した。これにより、[発酵物A1]を得た。
【0039】
次に、デキストリンを[発酵物A1]のBrix値の2.5倍量となるように添加し、[発酵物A2]を得た。次いで、濾過工程を行い、[発酵物A2]について液体と固体とに分離した。[発酵物A2]から分離した液体を10℃以下で冷却した後、オートクレーブにより105℃で5分間、加熱処理(殺菌処理)を行った。
次に、スプレードライヤーにより、噴霧乾燥を行い、粉末状のキャベツ発酵物を得た。
得られたキャベツ発酵物について、後述の評価を行った。
【0040】
(実施例2)
市販のキャベツを流水洗浄し、沸騰水(100℃)中で3分間ブランチングした後、ミキサーにより粉砕し、ブランチングキャベツペーストを得た。このブランチングキャベツペーストを実施例1におけるキャベツ粉砕物として用いた以外は、実施例1と同様にして粉末状のキャベツ発酵物を得た。
【0041】
(比較例1)
市販のキャベツを流水洗浄し、ミキサーにより粉砕し、生キャベツペーストを得た。次いで、キャベツ粉砕物として上記生キャベツペースト200gと、水48gを混合して[混合物B]248gを得た。
次に、振とう培養器に[混合物B]248gを入れ、さらに乳酸菌末(ラクトバチルス・プランタラム)を25mg添加し、発酵を開始させた。
発酵では、実施例1と同様にして各値のモニタリングを行いつつ発酵させた。発酵は35±2℃で行った。pHが4.4未満となった時点で発酵を終了させた。これにより、[発酵物B1]を得た。
【0042】
次に、遠心分離機を用い、[発酵物B1]について液体と固体とを分離した。次いで、[発酵物B1]から分離した液体を減圧下で加熱することにより濃縮し、[発酵物B2]を得た。次に、デキストリンを[発酵物B2]のBrix値の2.5倍量となるように添加し、[発酵物B3]を得た。[発酵物B3]を10℃以下で冷却した後、オートクレーブにより100℃で2分間、加熱処理(殺菌処理)を行った。
次に、スプレードライヤーにより、噴霧乾燥を行い、粉末状のキャベツ発酵物を得た。
【0043】
(比較例2)
キャベツの搾汁物99gと、水24gを混合して[混合物C]124gを得た。実施例1において、[混合物A]を[混合物C]に変えた以外は実施例1と同様にして粉末状のキャベツ発酵物を得た。
【0044】
上記実施例及び比較例において測定した各値を表1に示す。
発酵はpHが4.4未満になった時点で終了とし、発酵を開始してから終了までの時間を表1の発酵時間とした。また、表1中、Brix値は発酵終了時点の値であり、酸度(%)は発酵終了時点の値である。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から、実施例は比較例に比べて発酵が進みやすく、短時間で発酵できていることがわかる。
【0047】
(評価)
得られたキャベツ発酵物について、以下の評価を行った。
上記のようにして得られたキャベツ発酵物を少量(0.1g程度)とり、試験担当者5名により試食を行い、下記の評価項目及び評価基準で味や香りを官能試験により評価した。なお、下記評価基準にあるように、比較例1を基準とし、実施例1、2及び比較例2は比較例1に比べてどうであるかをランク付けした。また、表2における数値は、試験担当者5名の評価の数値を平均したものである。
【0048】
[評価項目]
甘さの好ましさ
苦味の好ましさ
渋味の好ましさ
酸味の好ましさ
後味の好ましさ
香りの好ましさ
総合評価
【0049】
[評価基準]
3:比較例1に比べて非常に良い
2:比較例1に比べて良い
1:比較例1に比べてやや良い
0:比較例1に比べて変わらない
−1:比較例1に比べてやや悪い
−2:比較例1に比べて悪い
−3:比較例1に比べて非常に悪い
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示されるように、実施例1、2はともに比較例1、2に比べて風味が良く、香りも改善されていることがわかる。さらに実施例2では実施例1に比べて良好な結果が得られていることがわかる。
以上より、本発明によれば、風味、香りが改善されたキャベツ発酵物を短時間で得られることがわかる。
【0052】
(実施例3〜9)
キャベツ粉砕物とキャベツ搾汁物の混合物の割合を表3に記載の割合に変更した以外、実施例2と同様の方法でキャベツ発酵物を製造した。この場合についても、風味、香りが改善されたキャベツ発酵物を短時間で得ることができた。
なお、表3の数値は重量部を表す。
【0053】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、健康食品等の用途に適用し得る。