(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原料ガス中の硫黄化合物を除去する脱硫器と、前記脱硫器を通過した原料ガスを用いて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器とを備え、前記脱硫器は、原料ガス中の硫化カルボニルを硫化水素に分解する硫化カルボニル分解触媒と、前記硫化カルボニル分解触媒の下流側に前記硫化水素を吸着する硫化水素吸着剤と、前記硫化水素吸着剤の上流側に原料ガス中の二硫化炭素を吸着する二硫化炭素吸着剤を備える、水素生成装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、エネルギーを有効に利用することが可能である分散型の発電装置として、発電効率及び総合効率が共に高い燃料電池コージェネレーションシステム(以下、単に「燃料電池システム」という)が注目されている。
【0003】
この燃料電池システムは、発電部の本体として、燃料電池を備えている。この燃料電池としては、例えば、リン酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、アルカリ水溶液形燃料電池、固体高分子形燃料電池、或いは、固体電解質形燃料電池等が用いられる。
【0004】
これらの燃料電池の内で、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池(略称、「PEFC」)は、発電運転の際の動作温度が比較的低いため、燃料電池システムを構成する燃料電池として好適に用いられる。特に、固体高分子形燃料電池は、リン酸形燃料電池と比べて、電極触媒の劣化が少なく、かつ電解質の逸散が発生しないため、携帯用電子機器や電気自動車等の用途において特に適に用いられる。
【0005】
さて、燃料電池の多く、例えば、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池は、発電運転の際に水素を燃料として用いる。しかし、それらの燃料電池において発電運転の際に必要となる水素の供給手段は、通常、インフラストラクチャーとして整備されてはいない。
【0006】
従って、リン酸形燃料電池や固体高分子形燃料電池を備える燃料電池システムにより電力を得るためには、その燃料電池システムの設置場所において、燃料としての水素を生成する必要がある。
【0007】
燃料電池に供給する水素を生成する反応としては、改質反応が一般的である。改質反応は、例えば原料となる炭化水素と水蒸気とをNi系やRu系の改質触媒を用いて600℃〜700℃程度の高温で反応させることにより、水素を主成分とした水素含有ガスを生成する。
【0008】
また、改質部には昇温用の燃焼器が設けられている。そして、この燃焼器は、燃料電池システムの発電時、燃焼器に供給した空気とともに、燃料電池の発電で使用されなかった改質ガス中の水素を燃焼させて、吸熱反応である改質反応が行われる改質触媒の温度を約700℃に維持している。
【0009】
さらに、燃料電池システムの起動運転時には、この燃焼器は、水素生成前の原料ガスおよび原料ガスと水素の混合ガスを燃焼させて、改質触媒の温度を昇温している。
【0010】
通常、水素生成装置に供給する原料ガスは硫黄化合物を含む。具体的には、都市ガス(市街地において、ガス会社のガス供給基地から地下のガス管等を通じて家庭等に供給されるガス)や液化石油ガス中には、原料由来の硫黄分のほか、漏洩検知のための付臭剤として、サルファイド類、メルカプタン類等の硫黄化合物が添加される。
【0011】
従来、原料ガスに含まれる硫黄化合物の除去方法として、水添脱硫法や吸着脱硫法が知られている。水添脱硫法は、燃料ガスに水素を添加し、Cu−Zn触媒等の触媒の存在下で、硫黄化合物を硫化水素に分解させ、分解生成物である硫化水素を吸着させて脱硫する
方法であり、この場合水素の添加や加熱が必要である。
【0012】
一方、吸着脱硫法は、活性炭、金属酸化物、あるいはゼオライト等を主成分とする吸着脱硫剤(以下、脱硫剤)に燃料ガスを通過させることにより、硫黄化合物を吸着させて除去する方法である。この脱硫剤による方法では、加熱することで、吸着能力を増加させる方法もあるが、常温で吸着させる方がシステムがより簡易になるので好ましい。
【0013】
従来、吸着脱硫剤としては例えば特許文献1のようにY型ゼオライトに銀をイオン交換により担持した脱硫剤が挙げられており、ターシャリーブチルメルカプタンに代表されるメルカプタン類やジメチルスルフィドに代表されるサルファイド類の除去に対し、優れた性能を見せることが知られている。
【0014】
一方で上記の脱硫剤は硫化カルボニルに対する吸着量が小さく、特に液化石油ガスなどのC3以上の炭化水素を含む炭化水素ガスや、ベンゼン、トルエンなどの重質炭化水素を含む液化工程を経ない天然ガス中に含まれている硫化カルボニルに対しては吸着量が小さいため、別の手段により除去する方法が必要となる。
【0015】
そこで、特許文献2に示すようにゼオライト系脱硫剤の後段に硫化カルボニルを硫化水素に分解する硫化カルボニル分解触媒を置き、さらに後段に分解して生成した硫黄種を除去する第二の脱硫剤を置く構成が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1の発明は、原料ガス中の硫黄化合物を除去する脱硫器と、脱硫器を通過した原料ガスを用いて改質反応により水素含有ガスを生成する改質器とを備え、脱硫器は、原料ガス中の硫化カルボニルを硫化水素に分解する硫化カルボニル分解触媒と、硫化カルボニル分解触媒の下流側に硫化水素を吸着する硫化水素吸着剤と、硫化水素吸着剤の上流側に原料ガス中の二硫化炭素を吸着する二硫化炭素吸着剤を備える水素生成装置である。
【0028】
これにより、硫化水素吸着剤と二硫化炭素との接触を抑制でき、硫化水素吸着剤上での二硫化炭素からの副生成物生成を抑制することが出来る為、常温で高い吸着量を持つ硫化水素吸着剤を使用でき、脱硫器を小型化することが出来る。
【0029】
第2の発明は、特に第1の発明の硫化カルボニル分解触媒が、Al、Ti、Zrから選択される少なくとも一種の元素を含む、水素生成装置である。
【0030】
これにより、常温においても硫化カルボニルからの硫化水素生成が可能でありながら、硫化カルボニル分解触媒上での二硫化炭素からの副生成物生成を抑制できる。
【0031】
第3の発明は、特に第1あるいは第2の発明の硫化水素吸着剤が、脱硫器の使用環境温度で、二硫化炭素により改質器に有害な副生成物を生成する材料を含む水素生成装置である。
【0032】
これにより、二硫化炭素により改質器に有害な副生成物を生成する材料は硫化水素吸着量が大きい傾向がある為、脱硫器の小型化が可能となる。また、二硫化炭素から副生成物
を生成しない材料であれば、二硫化炭素吸着剤を必要としないため、構成を簡略化することが出来る。
【0033】
第4の発明は、特に第1から第3の発明の原料ガスが、液化工程を経ない天然ガス、あるいは液化石油ガスが含まれる、水素生成装置である。
【0034】
これにより、硫化水素吸着剤上での副生成物生成は、二硫化炭素と、プロパンより高沸点の炭化水素成分との反応により生成するため、高沸点の炭化水素成分を含む液化工程を経ない天然ガス、あるいは液化石油ガスを含む原料ガス中の硫化カルボニル、および二硫化炭素の除去に対し、脱硫器の小型化が可能となる。
【0035】
第5の発明は、第1から第4の発明のいずれかの水素生成装置であって、硫化水素吸着剤が、少なくともCuを含む、水素生成装置である。
【0036】
これにより、Cuを含む吸着剤はその他の吸着剤に比べ常温での硫化水素吸着量が高い為、硫化水素吸着剤量を削減し、脱硫器を小型化することが出来る。
【0037】
第6の発明は、第1から第5の発明のいずれかの水素生成装置と、水素生成装置から供給される水素含有ガスを用いて発電する燃料電池と、を備える燃料電池システムである。
【0038】
これにより、硫化カルボニルと二硫化炭素が含まれた原料ガスを用いた場合でも、小型かつ、加熱装置を持たない脱硫器を使用でき、改質触媒の被毒を抑制しながら、脱硫器加熱に必要となるエネルギーを節約することが出来る。
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる水素生成装置7の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0041】
図1に示すように、本実施の形態の水素生成装置7は、常温脱硫剤1と、二硫化炭素吸着剤2と、硫化カルボニル分解触媒3と、硫化水素吸着剤4と、脱硫器5と、改質器6とを備え、生成した水素含有ガスを水素利用機器8に供給する。
【0042】
常温脱硫剤1は原料ガス中の硫黄化合物を除去するものであり、本実施の形態ではAgをイオン交換担持したY型ゼオライトを用いる。除去する硫黄化合物は、付臭成分として人為的に原料ガスへ添加されるもの、および、原料ガス自体に由来する天然の硫黄化合物の双方を対象とする。
【0043】
具体的には、ターシャリブチルメルカプタン(TBM:tertiary-butylmercaptan)、ジメチルスルフィド(DMS:dimethyl sulfide)、テトラヒドロチオフェン(THT:tetrahydrothiophene)、メチルメルカプタン(methyl mercaptan)等である。
【0044】
二硫化炭素吸着剤2は、原料ガス中の二硫化炭素を吸着する吸着剤であり、Cuを担持した活性炭を用いる。Cu/活性炭は高い二硫化炭素吸着量を持ちながら、二硫化炭素からのメルカプタン類生成量が極めて小さいという特徴があり、二硫化炭素吸着剤2として特に好適に使用できる。
【0045】
二硫化炭素吸着剤2の位置は常温脱硫剤1の下流側、かつ硫化カルボニル分解触媒3の上流側である。二硫化炭素は吸着力がその他の成分に対し低いため、二硫化炭素より吸着
力が大きい成分(例えば硫化水素、TBMなど)が共存していない方が吸着量が大きくなる。
【0046】
よって、本実施の形態に示したように常温脱硫剤1と硫化カルボニル分解触媒3の間の位置に設置することにより、好適に使用できる。二硫化炭素吸着剤2にて、原料ガス中の二硫化炭素を除去することにより、下流の硫化水素吸着剤4に二硫化炭素が供給されず、副生成物の生成を抑制できる。
【0047】
硫化カルボニル分解触媒3は、原料ガス中の硫化カルボニルを硫化水素に分解する触媒であり、γ−アルミナを用いる。分解は、下記の反応式1により進行すると考えられるため、反応には水分が必要となり、水分の供給源はガス中の水分である。これらの触媒上では硫化カルボニルは硫化水素に分解されるが、二硫化炭素から副生成物は生成しない為、二硫化炭素吸着剤2の設置位置の自由度を高めることが出来る。
【0048】
COS+H
2O→CO
2+H
2S・・・・・(反応式1)
硫化水素吸着剤4は、硫化カルボニル分解触媒3により分解生成した硫化水素を吸着する吸着剤であり、Cu,Mn酸化物を用いる。このCuを含む吸着剤は、他の吸着剤に比べて、常温での硫化水素吸着量が高いため、加熱装置を用いることなく脱硫器5を小型化できる。
【0049】
脱硫器5は、常温脱硫剤1、二硫化炭素吸着剤2、硫化カルボニル分解触媒3、硫化水素吸着剤4を格納する容器であり、流通するガスを漏洩させないようステンレススチールで構成されている。また、粒度が異なる脱硫剤を分離して格納する為に、脱硫器5内部には金網などを用いて仕切りが設置されている。
【0050】
改質器6は、原料ガスを用いて水素含有ガスを生成する水蒸気改質器である。
図1には示されていないが、各改質反応において必要となる機器は適宜設けられ、水蒸気を生成する蒸発器、及び蒸発器に水を供給する水供給器が設けられる。改質器6内の改質触媒において、原料ガスが水蒸気改質反応して、水素含有ガスが生成され、生成した水素含有ガスは水素利用機器8によって利用される。
【0051】
水素利用機器8は、水素生成装置7より供給される水素含有ガスを用いる機器であり、本実施の形態においては水素精製装置である。
【0052】
以上のように構成された水素生成装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0053】
まず、原料ガスとして、液化石油ガスが脱硫器5に供給されて、常温脱硫剤1と接触する。
【0054】
常温脱硫剤1であるAg/ゼオライトによって原料ガス中の硫黄化合物が吸着、除去されるが、液化石油ガス中、あるいは重質炭化水素を含む天然ガスに含まれた二硫化炭素、および硫化カルボニルはAg/ゼオライトへの吸着量が非常に小さいため、初期の一時期を除いて、大部分が下流に流出する。
【0055】
ついで、二硫化炭素、および硫化カルボニルが含まれた原料ガスが、二硫化炭素吸着剤2に接触し、Cu/活性炭により二硫化炭素が除去される。ここで、二硫化炭素が除去されることにより、下流に存在する硫化水素吸着剤4に二硫化炭素が供給されず、二硫化炭素を原料とした副生成物の生成を抑制することが出来る。
【0056】
常温脱硫剤1、二硫化炭素吸着剤2により、硫黄種としては硫化カルボニルのみが残留
した原料ガスは、ついで、硫化カルボニル分解触媒3であるγ−アルミナと接触し、加水分解によって硫化水素に分解される。
【0057】
生成した硫化水素は、常温で高い硫化水素吸着量を持つ硫化水素吸着剤4であるCu,Mn触媒によって吸着、除去され、全ての硫黄種が除去された原料ガスは改質器6において、水素含有ガスに改質される。得られた水素含有ガスは水素利用機器8で利用される。
【0058】
以上の工程により、原料ガス中に二硫化炭素が存在した場合においても、二硫化炭素からの副生成物生成を抑制でき、常温で高い硫化水素吸着量を持つ硫化水素吸着剤4を使用できるため、小型で、加熱装置を必要としない脱硫器5を使用して、二硫化炭素、硫化カルボニルを除去することが出来る。
【0059】
なお、本実施の形態では、上記の水素生成装置の構成および運転方法を用いたが、これに限るものでなく、下記のような構成および運転方法を用いることができる。
【0060】
原料ガスは、本実施の形態ではC3以上の炭化水素を含む液化石油ガスであるが、その他の原料ガス、具体的には液化工程を経ないで供給されるメタンを主成分とする天然ガス等の少なくとも炭素及び水素から構成される有機化合物を含むガスであってもよい。
【0061】
常温脱硫剤1は、Agをイオン交換担持したゼオライト以外に、Cuに例示される金属元素をイオン交換担持されたゼオライトや金属イオンを添着した活性炭が挙げられる。
【0062】
二硫化炭素吸着剤2としては、Cu/活性炭以外に、金属元素をイオン交換担持されたゼオライトや金属を担持した活性炭、還元により活性化されたCu,Zn触媒を使用できる。
【0063】
二硫化炭素吸着剤2の配置は、常温脱硫剤1の下流側、かつ硫化カルボニル分解触媒3の上流側に限定されるものではなく、硫化水素吸着剤4より上流側であれば良い。たとえば、常温脱硫剤1や硫化カルボニル分解触媒3と混合して配置してもかまわない。
【0064】
硫化カルボニル分解触媒3としては、γ相のアルミナ以外に、その他の結晶相のアルミナ、チタニア、ジルコニアを使用しても良い。
【0065】
硫化カルボニル分解触媒3への水の供給源は、ガス中の水分以外に触媒表面の吸着水であっても良く、γ−アルミナを使用した場合、露点が−50℃において触媒に対し8wt%以上の硫化カルボニルを硫化水素に分解できる為、特に水分を供給しなくとも実用上は問題ない。
【0066】
硫化水素吸着剤4としては、Cu,Mn系以外に、Cuを含む吸着剤、特に、Cu,Ni,Zn系、Cu/活性炭を用いた吸着剤などが例示される。これらの吸着剤は、常温でも高い吸着量を示すが、Cu,Mn系、あるいはCu,Ni,Zn系の硫化水素吸着剤4は、二硫化炭素が供給されることにより、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタンなどのメルカプタン類、ジメチルジスルフィドなどのジスルフィド類が副生成物として生成する。
【0067】
脱硫器5は、使用期間、条件下でガス、脱硫材料を安全に保持できるのであれば、これに限るものではなく、ポリプロピレンなどの樹脂やアルミニウム合金などの非鉄金属で構成されても良い。また、粒度が同一の触媒を充填する場合や、混合による影響を無視できる場合は、充填剤仕切りを設置しなくとも良い。
【0068】
改質器6における改質反応は、水蒸気改質以外の形態であってもよく、例えば、オートサーマル反応及び部分酸化反応等であってもよい。改質反応がオートサーマル反応であれば、水素生成装置7は、水蒸気を生成する蒸発器、及び蒸発器に水を供給する水供給器に加え、改質器6に空気を供給する改質空気供給器が設けられる。
【0069】
水素利用機器8は水素精製装置以外に、燃料電池、水素燃料電池車、水素貯蔵装置であってもよい。
【0070】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2にかかる燃料電池システム10の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0071】
図2に示すように、本実施の形態の燃料電池システム10は、常温脱硫剤1と、二硫化炭素吸着剤2と、硫化カルボニル分解触媒3と、硫化水素吸着剤4と、脱硫器5と、改質器6とを備え、原料ガスとして、天然ガスを使用し、生成した水素含有ガスを燃料電池9に供給する。原料ガスに天然ガスを使用する点、および燃料電池9を除く上記構成については実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0072】
燃料電池9は、水素生成装置7より供給される水素含有ガスを用いて発電する固体酸化物形燃料電池である。
【0073】
以上のように構成された本実施の形態の燃料電池システムについて、以下、その動作、作用を説明する。
【0074】
実施の形態2にかかる燃料電池システム10は、原料ガス中に二硫化炭素が存在した場合においても、常温で高い硫化水素吸着量を持つ硫化水素吸着剤4を使用できるため、小型で、加熱装置を必要としない脱硫器5を使用して、改質触媒の硫黄被毒を抑制することが出来、長期間において、発電を継続することが出来る。
【0075】
なお、本実施の形態では、上記の水素生成装置の構成および運転方法を用いたが、これに限るものでなく、下記のような構成および運転方法を用いることができる。
【0076】
原料ガスは、天然ガス以外に、液化石油ガスを含むガスであっても良い。
【0077】
燃料電池9は、固体酸化物型燃料電池に限らず、いずれの種類の燃料電池であってもよく、例えば、高分子電解質形燃料電池(PEFC)、またはリン酸形燃料電池であってもよい。
【0078】
実施の形態2の水素生成装置7は、燃料電池9の種類に応じて必要な機器を追加してよい。例えば、燃料電池9がPEFCである場合、改質器6からの水素含有ガスには一酸化炭素が多量に含有されている為、これを低減する為に変成器、選択酸化器、及び選択酸化空気供給器などを追加しても良い。
【実施例】
【0079】
次に本発明の効果を常温脱硫剤1を省いて構成した試験用脱硫器の評価結果に基づき、さらに詳細に説明する。
【0080】
(実施例1)
ステンレス管に、硫化カルボニル分解触媒3として、住友化学(株)製の球状アルミナ「KHD−12」を6cc充填し、また、同様のステンレス管に硫化水素吸着剤4として
クラリアント触媒(株)製のCu,Mn触媒[HyProGen GS−6]を6cc充填した。
【0081】
さらに同様のステンレス管に二硫化炭素吸着剤2として、ステンレス管にキャボット・ノリット・ジャパン製[RGM 3]を120cc充填した。それぞれのステンレス管を二硫化炭素吸着剤2、硫化カルボニル分解触媒3、硫化水素吸着剤4の順に接続し、脱硫器5とした。
【0082】
ついで、脱硫器5の二硫化炭素吸着剤2側にガス供給管を、硫化水素吸着剤4側にガス排出管を、二硫化炭素吸着剤2と硫化カルボニル分解触媒3間にガスサンプリング管を接続した。
【0083】
ガス供給管から、脱硫したJIS−K−2240の1種1号に相当する液化石油ガス(プロパン80%以上)に、硫化カルボニル、二硫化炭素を添加し、硫化カルボニル濃度6.2vol−ppm、二硫化炭素濃度0.22vol−ppmとした液化石油ガスを450cc/minの流量で供給した。
【0084】
ここで、脱硫器5の温度は二硫化炭素吸着剤2、硫化カルボニル分解触媒3、硫化水素吸着剤4の全てを25℃に制御し、ガス排出管から排出される液化石油ガス中の硫黄種の濃度をSCD(硫黄化学発光検出器)を装備したガスクロマトグラフィー(アジレント製7890A)により測定した。
【0085】
排出ガス中の硫化水素の濃度が20vol−ppbに到達する時点までの硫化カルボニル供給量を、ガスサンプリング管で測定した硫黄濃度の積分値より求め、硫化水素吸着剤4に対する硫化水素吸着量を計算し、(表1)に示した。また、脱硫器5後の副生成物の有無についても(表1)に示した。
【0086】
【表1】
(実施例2)
硫化水素吸着剤4としてクラリアント触媒(株)製Cu,Zn触媒[MDC−7]にNiを5wt%含浸担持して作製したCu,Ni,Zn触媒を充填したこと以外は実施例1と同様の脱硫器5を作製し、同様の条件で試験を実施した。得られた硫化水素吸着量と脱硫器5後の副生成物の有無を(表1)に示した。
【0087】
(比較例1)
ステンレス管に、硫化カルボニル分解触媒3として、住友化学(株)製の球状アルミナ
[KHD−12]を6cc充填し、また、同様のステンレス管に硫化水素吸着剤4としてクラリアント触媒(株)製のCu,Zn触媒[MDC−7]を6cc充填した。それぞれのステンレス管を接続することで、比較例1の脱硫器5とした。
【0088】
ついで、脱硫器5の硫化カルボニル分解触媒3側にガス供給管を、硫化水素吸着剤4側にガス排出管を接続した。ガス供給管から、脱硫したJIS−K−2240の1種1号に相当する液化石油ガス(プロパン80%以上)に、硫化カルボニル、二硫化炭素を添加して、硫化カルボニル濃度6.2vol−ppm、二硫化炭素濃度0.22vol−ppmとした液化石油ガスを450cc/minの流量で供給した。
【0089】
ここで、脱硫器温度は硫化カルボニル分解触媒3、硫化水素吸着剤4共に25℃に制御し、ガス排出管から排出される液化石油ガス中の硫黄種の濃度をSCD(硫黄化学発光検出器)を装備したガスクロマトグラフィー(アジレント製7890A)により測定した。
【0090】
排出ガス中の硫化水素、二硫化炭素の濃度がそれぞれ20vol−ppbに到達する時点までのガス供給量から、硫化水素吸着剤4に対する硫化水素吸着量、および二硫化炭素吸着量を求め、(表1)に示した。また、脱硫器5後の副生成物の有無についても(表1)に示した。
【0091】
(比較例2)
硫化水素吸着剤4としてステンレス管に東ソー(株)製Y型ゼオライト[360HDU1C]にAgを2wt%イオン交換担持したAg/ゼオライトを充填したこと以外は比較例1と同様の脱硫器5を作製し、同様の条件で試験を実施した。得られた硫化水素吸着量と二硫化炭素吸着量、脱硫器5後の副生成物の有無を(表1)に示した。
【0092】
(比較例3)
硫化水素吸着剤4として日本エンバイロケミカルズ(株)製のNi/活性炭[粒状白鷺NCC]を充填したこと以外は比較例1と同様の脱硫器5を作製し、同様の条件で試験を実施した。得られた硫化水素吸着量と二硫化炭素吸着量、脱硫器5後の副生成物の有無を(表1)に示した。
【0093】
(比較例4)
硫化水素吸着剤4として東ソー(株)製Y型ゼオライト[360HDU1C]にCuを2wt%イオン交換担持したCu/ゼオライトを充填したこと以外は比較例1と同様の脱硫器5を作製し、同様の条件で試験を実施した。得られた硫化水素吸着量と二硫化炭素吸着量、脱硫器5後の副生成物の有無を(表1)に示した。
【0094】
(比較例5)
硫化水素吸着剤4としてキャボット・ノリット・ジャパン製のCu/活性炭[RGM 3]を充填したこと以外は比較例1と同様の脱硫器5を作製し、同様の条件で試験を実施した。得られた硫化水素吸着量と二硫化炭素吸着量、脱硫器5後の副生成物の有無を(表1)に示した。
【0095】
(比較例6)
硫化水素吸着剤4としてクラリアント触媒(株)製のCu,Mn触媒[HyProGen GS−6]を充填したこと以外は比較例1と同様の脱硫器5を作製し、同様の条件で試験を実施した。得られた硫化水素吸着量と二硫化炭素吸着量、脱硫器5後の副生成物の有無を(表1)に示した。
【0096】
(比較例7)
硫化水素吸着剤4として硫化水素吸着剤4としてクラリアント触媒(株)製Cu,Zn触媒[MDC−7]にNiを2wt%含浸担持して作製したCu,Ni,Zn触媒を充填したこと以外は比較例1と同様の脱硫器5を作製し、同様の条件で試験を実施した。得られた硫化水素吸着量と二硫化炭素吸着量、脱硫器5後の副生成物の有無を(表1)に示した。
【0097】
(表1)にみられるように、実施例1、実施例2に示した、二硫化炭素吸着剤2としてCu/活性炭を備え、硫化水素吸着剤にCu,Mn触媒、あるいはCu,Zn,Ni触媒を備えた脱硫器では、高い硫化水素吸着量を持ちながら、脱硫器5後に副生成物が存在せず、二硫化炭素を硫化水素吸着剤4より上流で除去することにより、二硫化炭素からの副生成物の生成を抑制できたことが確認された。
【0098】
それに対し、比較例1から4に示した硫化水素吸着剤を用いた場合には、副生成物は生成しないものの、吸着量が実施例に比べて低く、実施例に比べ脱硫器サイズを小さくすることが出来ない。なお、比較例2と比較例4、比較例3と比較例5の比較から、Ag、Niを担持した硫化水素吸着剤4に対し、Cuを担持した吸着剤の方が硫化水素吸着量が優れていることが確認された。
【0099】
よって、Cuを含む硫化水素吸着剤4を用いることにより、硫化水素吸着剤量を削減でき、脱硫器を小型化することが出来る。
【0100】
一方、比較例6、比較例7に示した硫化水素吸着剤4は他のものに比べ、硫化水素吸着量が高い反面、脱硫器後にプロピルメルカプタンやエチルメルカプタン、ジメチルジスルフィドなどの副生成物が存在することが確認された。
【0101】
副生成物の生成濃度は液化石油ガスのボンベ交換直前に上昇し、ボンベ交換後に低下する傾向が見られたことから、液化石油ガス中のプロパンより高沸点の成分との反応により生成していると考えられる。
【0102】
ここで、プロパンより高沸点の炭化水素種としては、ブタン、ベンゼンなどのCとHのみで構成されるガス成分のみならず、メタノールやエタノールなどのアルコール類も含まれる。
【0103】
また、本試験の予察として、副生成物が生成する比較例6と比較例7の硫化水素吸着剤4に、液化石油ガスと共に二硫化炭素のみを供給した場合においても、副生成物の生成が見られたことから、硫化水素吸着剤4からの副生成物生成は二硫化炭素と、上記液化石油ガス中のプロパンより高沸点の成分との反応により生成している事が分かった。
【0104】
よって、実施例1や実施例2のように二硫化炭素吸着剤2を硫化水素吸着剤4の上流側に備え、硫化水素吸着剤4への二硫化炭素流入を抑制することで、副生成物の生成を抑制しながら、脱硫器を小型にすることができる。
【0105】
上記の説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。