(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
赤外光を照射する赤外光源と、それぞれ縦型オーバーフロードレインを有し、かつ半導体基板上に行列状に配置された、赤外光を信号電荷に変換する複数の第1画素、及び可視光を信号電荷に変換する複数の第2画素を有する固体撮像装置とを備えた撮像装置の駆動方法であって、
背景光成分を排除した距離画像を生成するために、赤外光の照射期間で前記複数の第1画素から第1の信号を得るステップと、赤外光の非照射期間で前記複数の第1画素から第2の信号を得るステップと、第1のフレーム走査期間内で、前記第1及び第2の信号を出力するステップとを、行い、
赤外成分を排除した可視光画像を生成するために、前記複数の第1画素から第3の信号を得るステップと、前記複数の第2画素から第4の信号を得るステップと、第2のフレーム走査期間内で、前記第3及び第4の信号を出力するステップとを、行う
ことを特徴とする撮像装置の駆動方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る撮像装置を用いた測距システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1中の固体撮像装置の第1の実施形態を示す平面図である。
【
図3】
図1中の固体撮像装置の第1の実施形態を示す別の平面図である。
【
図4】
図2の固体撮像装置の概略動作を示すタイミング図である。
【
図5】
図2の固体撮像装置のあるタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図6】
図2の固体撮像装置の次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図7】
図2の固体撮像装置の更に次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図8】
図2の固体撮像装置の更に次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図9】
図2の固体撮像装置の距離信号蓄積期間における詳細動作を示すタイミング図である。
【
図10】
図1中の固体撮像装置の第1の実施形態の別のフィルタ配置例を示す平面図である。
【
図11】
図1中の固体撮像装置の第2の実施形態を示す平面図である。
【
図12】
図1中の固体撮像装置の第3の実施形態を示す平面図である。
【
図13】
図12の固体撮像装置の概略動作を示すタイミング図である。
【
図14】
図12の固体撮像装置のあるタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図15】
図12の固体撮像装置の次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図16】
図12の固体撮像装置の更に次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図17】
図12の固体撮像装置の更に次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図18】
図12の固体撮像装置の更に次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図19】
図12の固体撮像装置の距離信号蓄積期間における詳細動作を示すタイミング図である。
【
図20】
図1中の固体撮像装置の第3の実施形態の別のチャネルストップ領域の構成を示す平面図である。
【
図21】
図1中の固体撮像装置の第4の実施形態を示す平面図である。
【
図22】
図21の固体撮像装置の概略動作を示すタイミング図である。
【
図23】
図21の固体撮像装置のあるタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図24】
図21の固体撮像装置の次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図25】
図21の固体撮像装置の更に次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図26】
図21の固体撮像装置の更に次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図27】
図21の固体撮像装置の更に次のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【
図28】
図21の固体撮像装置の距離信号蓄積期間における詳細動作を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、添付の図面を用いて説明を行うが、これらは例示を目的としており、本発明がこれらに限定されることを意図しない。図面において実質的に同一の構成、動作及び効果を表す要素については、同一の符号を付す。
【0016】
図1は、本発明に係る撮像装置を用いた測距システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、背景光源102からの可視光と赤外光とを含む照明を備えた撮影対象空間内に被写体101が位置する。撮像装置は、赤外光源103と、レンズ104と、固体撮像装置105と、制御部106と、信号処理部107とを備えており、TOF(Time Of Flight)型、パターン照射型、ステレオ型等の、よく知られた種々の赤外線方式のうちのいずれかを採用した測距システムを構成する。
【0017】
赤外光源103は、被写体101に向けて、例えば波長850nmの赤外レーザー光を照射する。背景光及び赤外レーザー光は、被写体101で反射してレンズ104に入射し、固体撮像装置105に結像する。固体撮像装置105は、半導体基板上に行列状に配置された、赤外光を信号電荷に変換する複数の第1画素と、可視光を信号電荷に変換する複数の第2画素とを有する。制御部106は、赤外光源103と固体撮像装置105との同期をとるように制御する。信号処理部107は、固体撮像装置105の出力から、赤外レーザー光に基づく距離画像信号とともに、可視光画像信号を生成する。
【0018】
なお、図示していないが、レンズ104と固体撮像装置105の間に、任意の光学フィルタ(例えば、可視光波長領域と特定の近赤外波長帯のみを透過するバンドパスフィルタ)を設けてもよい。
【0019】
以下、
図1中の固体撮像装置105の種々の具体例について説明する。
【0020】
すべての実施形態において、全て固体撮像装置105がCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであって、測距システムがTOF型である場合を説明する。
【0021】
《第1の実施形態》
図2及び
図3は、
図1中の固体撮像装置105の第1の実施形態を示す平面図である。
【0022】
図2及び
図3に示した固体撮像装置は、半導体基板上に行列状に配置された複数の光電変換部10を備える。これら光電変換部10は、可視光を信号電荷に変換する複数の光電変換部10aと、赤外光を信号電荷に変換する複数の光電変換部10bとに分けられる。可視光の光電変換部10aは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)を選択的に透過するフィルタを備える。赤外光の光電変換部10bは、赤外(IR)光を選択的に透過するフィルタを備える。
【0023】
図2の固体撮像装置は、光電変換部10a,10bから読み出された信号電荷を列方向に転送する垂直転送部11と、垂直転送部11によって転送された信号電荷を行方向(水平方向)に転送する水平転送部12と、水平転送部12によって転送された信号電荷を増幅して出力する電荷検出部13と、全画素の光電変換部10のそれぞれに対応して設けられ、垂直転送部11へ同時に読み出すことが可能な第1の読み出し電極14a,14bと、全画素の光電変換部10のそれぞれに対応して設けられているが、少なくとも赤外光の光電変換部10bから、垂直転送部11へ選択的に読み出すことが可能な第2の読み出し電極14c,14dとを更に備える。
【0024】
なお、本実施形態では、特定の画素から信号を選択的に読み出すために、例えば、第2の読み出し電極14cは各ラインの画素に張り巡らされているものの、光電変換部10bから読み出す画素以外は、チャネルストップ領域18を設けて信号が読み出されないようにしてある。もう1つの第2の読み出し電極14dも同様に、チャネルストップ領域18によって、特定の光電変換部から選択的に信号電荷を読み出すことが可能になっている。
【0025】
ここで、固体撮像装置は、全画素読み出し(プログレッシブスキャン)対応のインターライントランスファ方式のCCDであり、例えば、垂直転送部11は、1画素あたり垂直転送電極14が4ゲートあり、2画素周期の8相駆動(φV1〜φV8)であり、水平転送部12は2相駆動(φH1,φH2)である。垂直転送部11は、光電変換部10a,10bに溜まった信号電荷は、例えば、垂直転送部11中の点線で示した信号パケット16a〜16dに、それぞれ振り分けて読み出され、垂直転送部11を図中下方向に転送されたあと、水平転送部12を図中左方向に転送されて出力される。
【0026】
また、各画素には、縦型オーバーフロードレイン(VOD:Vertical Overflow Drain)が備えられている。基板に接続されているVSUB電極17に高電圧(φSubパルス)が印加されると、全画素の信号電荷は一括に基板に排出される構成となっている。これにより、横型オーバーフロードレインのような各画素のフォトダイオードの面積や、垂直転送部の面積を縮める要素がないため、感度を高く保つことが可能となる。
【0027】
なお、本実施形態に示すように、赤外光の光電変換部10bからのみ信号を読み出すことが可能な第2の読み出し電極14cを設けることにより、垂直転送部11が8相駆動である場合、例えば、
図3のように、光電変換部10bに溜まった信号を選択的に、つまり、図中V5ゲートから読み出し、点線で示した信号パケット16a,16b,16cに、それぞれ振り分けて読み出すことが可能となり、1つの光電変換部10bから複数の信号を得て、距離信号中の背景光を減算することが可能となる。
【0028】
なお、この
図3も含めて、以後、説明に必要な場合を除き、
図2に示すチャネルストップ領域18は図示しない。
【0029】
図4は、
図2及び
図3の固体撮像装置の概略動作を示すタイミング図であって、第1のフレーム走査期間内に、背景光による影響を排除した距離画像を生成するための信号を得て、第2のフレーム走査期間内に可視光画像を得る例を示している。また、
図5〜
図8は、
図2及び
図3の固体撮像装置の個々のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【0030】
図4に示す垂直同期パルスVDは、例えば2VDでちょうど毎秒30フレーム(30fps)であり、1フレーム走査期間内に、背景光による影響を排除した距離画像を生成するための距離信号20、距離信号21、背景光信号22が得られ、次のフレーム走査期間に、可視光画像を生成するための可視光信号23、可視光信号24が得られる。
【0031】
まず、奇数フレームの初めに、第1の距離信号蓄積期間Ta1を開始する。第1の距離信号蓄積期間Ta1では、読み出しパルスφV5を印加し、赤外光を照射して、
図5に示すように、距離信号20を読み出し、これを信号パケット16aに蓄積する。
【0032】
第1の距離信号蓄積期間Ta1が終了すると、
図6に示すように、距離信号20を1段逆方向へ転送し、第2の距離信号蓄積期間Ta2を開始する。第2の距離信号蓄積期間Ta2では、読み出しパルスφV5を印加し、赤外光を照射して、距離信号21を読み出し、これを信号パケット16bに蓄積する。
【0033】
第2の距離信号蓄積期間Ta2が終了すると、
図7に示すように、距離信号20及び距離信号21を信号パケット16a,16bとともに1段逆方向へ転送し、背景光信号蓄積期間Tbを開始する。背景光信号蓄積期間Tbでは、赤外光を照射せずに、第1の距離信号蓄積期間Ta1及び第2の距離信号蓄積期間Ta2と同じ長さの期間だけ背景光を露光した後、読み出しパルスφV5を印加し、背景光信号22を読み出し、これを信号パケット16cに蓄積する。
【0034】
なお、
図4のタイミング図では、説明を簡単にするために、
図5〜
図7の動作は1フレームあたり1回ずつとなっているが、出力する前に、これら一連の
図5〜
図7の動作を繰り返し、また、1サイクルの周期を速めることで、動体に対する測距精度を上げることが可能である。
【0035】
信号転送期間Tc1では、垂直転送部11及び水平転送部12を順次走査することにより、距離信号20、距離信号21、背景光信号22を順次出力する。
【0036】
このとき、任意のタイミングで、基板排出パルスφSubを印加し、全画素の信号電荷を排出する。基板排出パルスφSubの印加終了により、光電変換部10aの可視光信号23及び光電変換部10bの可視光信号24が各光電変換部に蓄積され始める。
【0037】
次に、偶数フレームの初めに、読み出しパルスφV2,φV6を印加し、
図8に示すように、前フレームの信号転送期間Tc1の露光により蓄積された可視光信号23及び可視光信号24を、信号パケット16a〜16dに蓄積する。
【0038】
信号転送期間Tc2では、垂直転送部11及び水平転送部12を順次走査することにより、可視光信号23及び可視光信号24を順次出力する。
【0039】
図9は、
図4の固体撮像装置の第1の距離信号蓄積期間Ta1、及び第2の距離信号蓄積時間Ta2と、背景光信号蓄積期間Tbにおける詳細動作を示すタイミング図である。
【0040】
第1及び第2の距離信号蓄積期間Ta1,Ta2,Tbにおいて、垂直転送電極14cに印加する読み出しパルスφV5は、Highレベルに固定され、基板排出パルスφSubがLowレベルになったときに電荷が蓄積される。
【0041】
距離画像の生成においては、まず、距離信号20及び距離信号21に含まれる背景光成分を、背景光信号22を用いて排除する。例えば、
図9に示すように、照射光パルスの立ち下がり時刻で終わる反射光に基づく信号電荷の量をIR1、立ち下がり時刻によらない信号電荷の量をIR2、被写体までの距離をz、光速をcとすると、
z=c×Δt/2
=(c×Tp/2)×(Δt/Tp)
=(c×Tp/2)×(IR1/IR2)
となる。
【0042】
また、可視光画像の生成においても、可視光信号23に含まれる赤外成分を、可視光信号24を用いて排除することができるため、色再現性の高い可視光画像を生成することができる。
【0043】
以上、第1の実施形態に係るTOF型測距システムによれば、固体撮像装置に備えられた垂直転送部11の駆動相数を増加することで、1フレーム走査期間内で、背景光による影響を排除した距離画像を得るとともに、別フレームで色再現性の高い可視光画像を得ることが可能となることに加え、各画素には縦型オーバーフロードレインを備えることで、光電変換部10の領域を広げて感度向上、または、垂直転送部11の領域を広げて垂直転送部11の飽和信号量を高めることで、測距精度向上が可能となる。
【0044】
感度向上によって、例えば、照射する赤外光源の出力を抑えたり、赤外光を照射する露光時間を短くしたりして、いずれも測距システム全体の消費電力を抑えることに繋がる。
【0045】
その上、本実施形態に示すようなTOF型システムに適した駆動をする場合、縦型オーバーフロードレイン構造により、電荷排出のためのパルスφSubは基板に印加され、画素全体に伝わることから、横型オーバーフロードレインのように、画素上の配線層から各画素に、電荷排出のための高電圧を印加せずに済むため、暗電流などのノイズ源にもなりにくい。
【0046】
また、本実施形態の固体撮像装置は、従来の固体撮像装置に比べて、駆動相数の変更、及び、一部の読み出し電極に対応したチャネルストップ領域を追加するのみで対応可能なため、複雑な製造方法を要することなく、実現することが可能である。
【0047】
更に、従来技術では、可視光信号23に含まれる赤外成分を排除するためには、別フレームから専用の信号を得る必要があり、可視光画像の色再現性が低下する課題があったが、第1の実施形態に係るTOF型測距システムによれば、同一フレームから可視光信号23と可視光信号24を得て、赤外成分を排除することができるため、色再現性の高い可視光画像を得ることが可能になる。
【0048】
なお、本実施形態では、第1のフレームにおいて、光電変換部10bから得た信号のみが垂直転送部11に読み出されるため、
図7に示すように、動作上、隣接する垂直転送部11上に信号パケット16d,16e,16fも存在するが、光電変換部10aからは信号が読み出されないので、実質的には空パケットとなっている。
【0049】
よって、水平転送時に、この2列毎に存在する空きパケットにも信号16a〜16cを順次詰めることで、奇数フレームが短縮できることから、更なるフレームレートの向上も可能である。
【0050】
また、他にも、例えば、
図10に示すように、赤外光の光電変換部10bを市松状に配置して、残りの市松状に空いている画素に可視光の光電変換部10aを配置した場合、赤外光の光電変換部10bに対応した第2の読み出し電極14c,14dに、読み出しパルスφV1,φV5を印加することで、第1のフレーム走査期間において、信号パケット16a〜16cだけでなく、信号パケット16d〜16fにも距離信号を蓄積することが可能となり、距離画像の解像度が増す利点があるので、特に、距離画像の解像度が必要なときにこのフィルタ配置は有効である。
【0051】
《第2の実施形態》
図11は、
図1中の固体撮像装置105の第2の実施形態を示す平面図である。
【0052】
第2の実施形態に係る固体撮像装置は、第1の実施形態に係る固体撮像装置と比較して、垂直転送部11の構成が異なる。しかし、1フレーム走査期間内で、背景光による影響を排除した距離画像を生成するとともに、別フレームで赤外成分を排除した可視光画像を得ることができる構造及び駆動方法を提供することを目的とする点は、第1の実施形態に係る固体撮像装置と同様である。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、同じ点は説明を省略する。
【0053】
図11に示した固体撮像装置は、
図2及び
図3の固体撮像装置と比較して、読み出し電極14a,14bが、読み出し電極14c,14dと同じように、市松状にのみ読み出せるようになっており、例えば、赤外光の光電変換部10bに対応した読み出し電極14bは、チャネルストップ領域18を設けて信号が読み出されないようにしてある。読み出し電極14aも同様である。
【0054】
本実施形態の場合、第1の実施形態の駆動タイミングである
図4とほぼ同じ駆動で動作可能であるが、1点だけ、第2フレーム走査期間の初めに印加する読み出しパルスが、φV2,φV6だけでなく、φV1,φV5にも印加する必要があることのみ異なる。具体的な動作で言えば、第1の実施形態の
図8のタイミングでの可視光信号23及び可視光信号24の読み出しが、読み出し電極14a,14bだけでなく、読み出し電極14c,14dも使って読み出す必要がある。それ以外は、第1の実施形態と変わりは無い。
【0055】
しかし、この構造であれば、例えば、可視光画像を取得する際に、レッドだけを読み出したり、ブルーだけを読み出したり、グリーンだけ読み出したりと、特定色だけ読み出すことも可能となり、取得できる可視画像のバリエーションを増やすことが可能である。なお、特定色だけ読み出す際は、空きパケットが数多くできるため、水平転送時に信号を詰めることで、信号出力時間の短縮も可能である。
【0056】
以上、第2の実施形態に係るTOF型測距システムによれば、第1の実施形態に係る固体撮像装置から、一部の読み出し電極にチャネルストップ領域18を追加するだけで、読み出す画像のバリエーションを増やす、つまり可視画像の自由度を増すことが可能となる。
【0057】
また、第1の実施形態と同様に、一部の読み出し電極に対応したチャネルストップ領域18の追加のみで対応可能なため、複雑な製造方法を要することなく、実現することが可能である。
【0058】
その上、1フレーム走査期間内で、背景光による影響を排除した距離画像を生成するとともに、別フレームで可視光画像を得ることが可能な点や、縦型オーバーフロードレインを備えることで、感度を高めてフレームレートを向上したり、垂直転送部11の飽和信号量を高めたりすることで、測距精度を向上させることが可能な点も同じである。
【0059】
《第3の実施形態》
図12は、
図1中の固体撮像装置105の第3の実施形態を示す平面図である。
【0060】
第3の実施形態に係る固体撮像装置は、第1の実施形態に係る固体撮像装置と比較して、垂直転送部11の構成が異なる。しかし、1フレーム走査期間内で、背景光による影響を排除した距離画像を生成するとともに、別フレームで可視光画像を得ることができる構造及び駆動方法を提供することを目的とする点は、第1の実施形態に係る固体撮像装置と同様である。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、同じ点は説明を省略する。
【0061】
図12に示した固体撮像装置は、
図2及び
図3の固体撮像装置と比較して、垂直転送部11は、1画素あたり垂直転送電極が5ゲートある、2画素周期の10相駆動(φV1〜φV10)である。
【0062】
図13は、
図12の固体撮像装置の概略動作を示すタイミング図であって、
図2及び
図3の固体撮像装置の概略動作を示すタイミング図である
図4と基本的には同じであるが、駆動相数の違いから、読み出しパルスを印加する電極が異なる。また、第1の実施形態に加えて、新たに距離信号25を取得している点が異なる。
【0063】
図14〜
図18は、
図12の固体撮像装置の個々のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【0064】
図13において、まず、奇数フレームの初めに、第1の距離信号蓄積期間Ta1を開始する。第1の距離信号蓄積期間Ta1では、読み出しパルスφV6を印加し、赤外光を照射して、
図14に示すように、距離信号20を読み出し、これを信号パケット16aに蓄積する。
【0065】
第1の距離信号蓄積期間Ta1が終了すると、
図15に示すように、距離信号20を1段逆方向へ転送し、第2の距離信号蓄積期間Ta2を開始する。第2の距離信号蓄積期間Ta2では、赤外光を照射して、読み出しパルスφV6を印加し、距離信号21を読み出し、これを信号パケット16bに蓄積する。
【0066】
第2の距離信号蓄積期間Ta2が終了すると、
図16に示すように、距離信号20及び距離信号21を信号パケット16a,16bとともに1段逆方向へ転送し、背景光信号蓄積期間Tbを開始する。背景光信号蓄積期間Tbでは、赤外光を照射せずに、第1の距離信号蓄積期間Ta1及び第2の距離信号蓄積期間Ta2と同じ長さの期間だけ背景光を露光した後、読み出しパルスφV6を印加し、背景光信号22を読み出し、これを信号パケット16cに蓄積する。
【0067】
背景光信号蓄積期間Tbが終了すると、
図17に示すように、距離信号20、距離信号21及び背景光信号22を信号パケット16a〜16cとともに1段逆方向へ転送し、第3の距離信号蓄積期間Ta3を開始する。第3の距離信号蓄積期間Ta3では、第1の距離信号蓄積期間Ta1と異なるタイミングで赤外光を照射して、読み出しパルスφV6を印加し、距離信号25を読み出し、これを信号パケット16dに蓄積する。
【0068】
信号転送期間Tc1では、垂直転送部11及び水平転送部12を順次走査することにより、距離信号20、距離信号21、背景光信号22、距離信号25を順次出力する。
【0069】
このとき、任意のタイミングで、基板排出パルスφSubを印加し、全画素の信号電荷を排出する。基板排出パルスφSubの印加終了により、光電変換部10aの可視光信号23及び光電変換部10bの可視光信号24が各光電変換部に蓄積され始める。
【0070】
次に、偶数フレームの初めに、読み出しパルスφV2,φV6を印加し、
図18に示すように、前フレームの信号転送期間Tc1の露光により蓄積された可視光信号23及び可視光信号24を、信号パケット16a〜16dに蓄積する。
【0071】
信号転送期間Tc2では、垂直転送部11及び水平転送部12を順次走査することにより、可視光信号23及び可視光信号24を順次出力する。
【0072】
図19は、
図13の固体撮像装置の第1、第2及び第3の距離信号蓄積期間Ta1,Ta2,Ta3及び、背景光信号蓄積期間Tbにおける詳細動作を示すタイミング図である。第1、第2、第3の距離信号蓄積期間Ta1,Ta2,Ta3及び背景光信号蓄積期間Tbにおいて、垂直転送電極14cに印加する読み出しパルスφV6は、Highレベルに固定され、基板排出パルスφSubがLowレベルになったときに電荷が蓄積される。
【0073】
距離画像の生成においては、まず、距離信号20、距離信号21及び距離信号25に含まれる背景光成分を、背景光信号22を用いて排除する。ここで、第1の実施形態と比べて、距離信号25が増えているが、例えば、距離信号20は長距離を演算するのに適した信号、距離信号25は近距離を演算するのに適した信号、といったように使い分けすることが可能となる。
【0074】
以上、第3の実施形態に係るTOF型測距システムによれば、固体撮像装置に備えられた垂直転送部11の駆動相数を更に増加することで、背景光による影響を排除した距離画像が近距離から遠距離まで対応できる、つまり、ダイナミックレンジの広い距離画像を生成することが可能となる。
【0075】
更に、図示はしていないが、垂直転送部11が10相駆動である場合でも、距離信号25を取得せず、距離信号20,21,22だけを扱う駆動も可能であるが、この場合は、
図12とは異なり、各信号パケットが常に2ゲート以上で蓄積が可能になるため、第1の実施形態や第2の実施形態と比べて、1フレーム走査期間内に取り扱える電荷量が増えて、4信号を取り扱う駆動だけでなく、この3信号を取り扱う駆動においても、距離精度の向上が可能である。
【0076】
なお、第1の実施形態と同様、赤外光の光電変換部10bを市松状に配置して、残りの空いている画素に可視光の光電変換部10aを配置すると、
図17で空きパケットとなっている16e〜16hを有効活用できるため、距離画像の解像度を増すことが可能な点は同じである(図示はしない)。
【0077】
また、第2の実施形態と同様に、本実施形態の固体撮像装置も、
図20に示すように、読み出し電極14a,14bを市松状にのみ読み出せるようにチャネルストップ領域18を設けることで、特定色のみ読み出せるようにすることが可能な点も同じである。
【0078】
《第4の実施形態》
図21は、
図1中の固体撮像装置105の第4の実施形態を示す平面図である。
【0079】
第4の実施形態に係る固体撮像装置は、第3の実施形態に係る固体撮像装置と比較して、垂直転送部11の構成が異なる。しかし、1フレーム走査期間内で、背景光による影響を排除した距離画像を生成するとともに、別フレームで可視光画像を得ることができる構造及び駆動方法を提供することを目的とする点は、第3の実施形態に係る固体撮像装置と同様である。以下、第3の実施形態と異なる点を中心に説明し、同じ点は説明を省略する。
【0080】
図21に示した固体撮像装置は、
図12の固体撮像装置と比較して、垂直転送部11は、1画素あたり垂直転送電極14が4ゲートある単純な4相駆動である。ただし、赤外光を信号電荷に変換する光電変換部10bの両側の垂直転送部11には、異なるφV1パルスが印加できるように、読み出し電極14b(図中、V1Lゲート)と読み出し電極14c(図中、V1Rゲート)が配置されており、読み出し電極14b,14cに印加する読み出しパルスφV1L,φV1Rを使い分けることにより、光電変換部10bの両側、どちらの垂直転送部11にも読み出せるようになっている。なお、本実施形態の特徴である読み出し電極の構成を示す都合上、VSub電極17が一番上のフォトダイオードとしか繋がっていないように描かれているが、実際は、第1及び第3の実施形態と同様、各光電変換部10には縦型オーバーフロードレインが設けられており、任意のタイミングでφSubパルスを印加することで、全ての光電変換部10の信号電荷を排出することが可能である。
【0081】
図22は、
図21の固体撮像装置の概略動作を示すタイミング図であって、
図12の固体撮像装置の概略動作を示すタイミング図である
図13と似ているが、駆動相数の違いから、読み出しパルスを印加する電極が異なる。また、第3の実施形態と比べて、距離信号などを取得する際(奇数フレーム)の信号転送回数が減っているとともに、信号パケット数が少ないことも本実施形態の特徴である。
【0082】
図23〜
図27は、
図21の固体撮像装置の個々のタイミングにおける動作を示す平面図である。
【0083】
まず、奇数フレームの初めに、第1の距離信号蓄積期間Ta1を開始する。第1の距離信号蓄積期間Ta1では、読み出しパルスφV1Lを印加し、赤外光を照射して、
図23に示すように、光電変換部10bの図中左側の垂直転送部11に距離信号20を読み出し、これを信号パケット16aに蓄積する。
【0084】
第1の距離信号蓄積期間Ta1が終了すると、距離信号20はそのままで、第2の距離信号蓄積期間Ta2を開始する。第2の距離信号蓄積期間Ta2では、読み出しパルスφV1Rを印加し、赤外光を照射して、光電変換部10bの図中右側の垂直転送部11に距離信号21を読み出し、これを光電変換部10bを介して信号パケット16aと反対側の信号パケット16bに蓄積する。
【0085】
第2の距離信号蓄積期間Ta2が終了すると、
図25に示すように、距離信号20及び距離信号21を信号パケット16a,16bとともに1段逆方向へ転送し、背景光信号蓄積期間Tbを開始する。背景光信号蓄積期間Tbでは、赤外光を照射せずに、第1の距離信号蓄積期間Ta1及び第2の距離信号蓄積期間Ta2と同じ長さの期間だけ背景光を露光した後、読み出しパルスφV1Lを印加し、光電変換部10bの図中左側の垂直転送部11に背景光信号22を読み出し、これを信号パケット16cに蓄積する。
【0086】
背景光信号蓄積期間Tbが終了すると、
図26に示すように、距離信号20、距離信号21及び背景光信号22はそのままで、第3の距離信号蓄積期間Ta3を開始する。第3の距離信号蓄積期間Ta3では、第1の距離信号蓄積期間Ta1と異なるタイミングで赤外光を照射して、露光した後、読み出しパルスφV1Rを印加し、光電変換部10bの図中右側の垂直転送部11に距離信号25を読み出し、これを光電変換部10bを介して信号パケット16cと反対側の信号パケット16dに蓄積する。
【0087】
信号転送期間Tc1では、垂直転送部11及び水平転送部12を順次走査することにより、距離信号20、距離信号21、背景光信号22、距離信号25を順次出力する。
【0088】
このとき、任意のタイミングで、基板排出パルスφSubを印加し、全画素の信号電荷を排出する。基板排出パルスφSubの印加終了により、光電変換部10aの可視光信号23及び光電変換部10bの可視光信号24が光電変換部に蓄積され始める。
【0089】
第2フレームの初めに、読み出しパルスφV2を印加し、
図27に示すように、前フレームの信号転送期間Tc1の露光により蓄積された可視光信号23及び可視光信号24を、信号パケット16a〜16dに蓄積する。
【0090】
信号転送期間Tc2では、垂直転送部11及び水平転送部12を順次走査することにより、可視光信号23及び可視光信号24を順次出力する。
【0091】
以上、第4の実施形態に係るTOF型測距システムによれば、固体撮像装置に備えられた垂直転送部11の駆動相数を増やすことなく、第3の実施形態と同じく、背景光による影響を排除した距離画像のダイナミックレンジを広くすることが可能となる。
【0092】
更に、
図23〜
図27に示すように、距離信号20,21,22,25も、基本的に2ゲートで蓄積が可能なため、第1の実施形態や第2の実施形態と比べて、1フレーム走査期間内に取り扱える電荷量が多く、距離精度の向上が可能である。
【0093】
なお、この第4の実施形態に係る構造であれば、位相差法を用いたTOF型測距システムの構築も容易に対応することが可能である。位相差法は、照射する赤外光を高速で点滅させ、反射光の位相遅れの程度を計測する手法である。例えば、
図28にその駆動タイミングの一例を示す。
【0094】
第1の実施形態や第3の実施形態と異なり、赤外光を信号電荷に変換する光電変換部10bに、2つの読み出し電極(V1L,V1R)が存在することから、距離画像を出力する第1フレームにおいて、
図28のように、180度位相の反転した信号を異なる信号パケットに交互に読み出すことが可能である。その後、先の位相と90度ずれた2つの信号を更に取得することで、位相の異なる4つの信号から距離を算出することが可能となる。
【0095】
この場合、第2フレームの可視画像を取得する過程は本実施形態に示すものと同じである。