特許第6442712号(P6442712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442712
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】熱利用装置
(51)【国際特許分類】
   F24T 10/15 20180101AFI20181217BHJP
   F25B 30/06 20060101ALI20181217BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20181217BHJP
   F24S 60/30 20180101ALN20181217BHJP
   F24S 90/00 20180101ALN20181217BHJP
【FI】
   F24T10/15
   F25B30/06 T
   F25B27/00 H
   !F24S60/30 010
   !F24S90/00 300
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-29409(P2016-29409)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-146054(P2017-146054A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100170494
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩夫
(72)【発明者】
【氏名】川邉 義和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 桂司
(72)【発明者】
【氏名】広田 正宣
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−61786(JP,A)
【文献】 実開昭58−16827(JP,U)
【文献】 特開2006−349265(JP,A)
【文献】 特開2014−181864(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0181044(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24T 10/15
F25B 27/00
F25B 30/06
F24S 60/30
F24S 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体中に熱流体の搬送と熱交換を行なう第1の熱流体搬送配管を配設した第1の熱利用領域と、前記第1の熱利用領域の側面を取り囲み第2の熱流体搬送配管が配設された第2の熱利用領域と、前記第1の熱利用領域と前記第2の熱利用領域との間および前記第1の熱利用領域の上面に設けられた断熱手段とで構成され地中との熱交換を行う熱利用領域を具備し、前記第1第2の熱流体搬送配管には複数の温度測定手段と前記熱流体の流れ方向の制御を行なう熱流体制御手段とを備え、採熱や蓄熱などの運転モードと前記温度測定手段の出力結果とに基づいて、前記熱流体の流れ方向を制御することを特徴とする熱利用装置。
【請求項2】
蓄熱運転時に、前記第1の熱利用領域の次に前記第2の熱利用領域を前記熱流体が流れるように前記熱流体制御手段が制御することを特徴とする、請求項1に記載の熱利用装置。
【請求項3】
蓄熱利用運転時に、前記第2の熱利用領域の次に前記第1の熱利用領域を前記熱利用流体が流れるように前記熱流体制御手段が制御することを特徴とする、請求項1あるいは請求項2のいずれかに記載の熱利用装置。
【請求項4】
地中熱利用運転時に、前記第1の熱利用領域の次に前記第2の熱利用領域を前記熱流体が流れるように前記熱流体制御手段が制御することを特徴とする、請求項1に記載の熱利用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱および蓄熱利用と地中熱利用を行なう装置において、効率良く蓄熱および地中熱利用を行なうと共に装置の簡素化や小型化を図る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古くから太陽熱は様々な形で利用されており、その用途は、太陽熱温水器や、暖房などの空気調和、さらには、集光して太陽炉やソーラークッカーなど多岐にわたっている。近年は、地球温暖化防止の観点から、太陽熱や地中熱など従来利用されていなかった熱源を利用することで、エネルギー消費量の削減の取り組みが重要視されている。
【0003】
太陽熱利用については、一般的に、採熱可能な時間帯が日中に限られており、熱を利用したい時間帯と必ずしも一致しないので蓄熱を行なうことが多い。給湯に利用する場合、ほとんどの例において、太陽熱で暖めた湯を貯め直接利用されている。
暖房に使用する場合、太陽熱で暖めた空気を利用する方法や、家屋の躯体を暖めて蓄熱しておく方法や、蓄熱槽を設けて顕熱潜熱を問わず蓄熱槽内の蓄熱材に蓄熱する方法など多くの提案がなされている。また、特許文献1のように、温室などで太陽熱を地中に蓄熱して利用する発明なども多く出願されている。
【0004】
また、加熱に利用する太陽熱と違って、季節や一日の気温の変化に対して、安定して温度を保っている熱源として地中熱がある。気候の厳しい地域には、暑さ、寒さをしのぐために地中熱を利用した伝統的な住居が存在する。
【0005】
地中熱について言えば、日本の場合、地下10mの地中温度は年間を通して安定(15℃前後)している。1〜2mの深さでも、冬は10℃、夏は25℃程度の温度を維持しており、夏は冷房、冬は暖房に利用することができる。近年は技術の発展にともない、より積極的に利用が進められている。
【0006】
利用方法としては、外気を地中の熱交換器を通した後、室内に取り入れることで空調負荷を低減する方法や、特許文献2のように、適宜の間隔を設けて地中に埋設した複数の密封管を熱交換器として組み込んでヒートポンプサイクルを構成し、空気調和機(暖房)を効率良く運転する方法などもある。また、地中に埋設した熱交換器から放熱して冷凍サイクルを構成すれば、冷房を効率良く行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平3−80449号公報
【特許文献2】特公平4−46343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の太陽熱や地中熱を空気調和に利用する熱利用装置においては、暖房への利用は比較的容易で、タンクや蓄熱槽あるいは構造物や土壌などに蓄熱して利用することもできる。一方、冷房に利用するためには吸収ないしは吸着式冷凍機や、デシカント装置などといった装置が必要となり設備コストが大きくなる。その結果、暖房のためだけに設備を導入するケースも多くある。
【0009】
地中熱は、冷房では地中熱を取り出す熱交換器に、空気や水などを通して直接利用する
こともできるし、ヒートポンプと組み合わせれば、冷房暖房どちらでも利用することができる。
【0010】
地中熱利用設備に、冬季は太陽熱で暖めた空気あるいは水を流し、地中に蓄熱すれば、太陽熱を蓄熱する専用装置を設置する必要が無くなり、設置スペースが不要になり設備コストも抑えることができる。
【0011】
しかしながら、従来の地中熱利用設備においては、先の特許文献2にも記載があるように、効率よく地中熱を取り出すため、適宜の間隔を設けて熱交換器が埋設されており、蓄熱を行なう際に、地中に与えた熱は拡散し、地中の空間としては大きな熱量があっても土壌の温度はそれほど上昇しない。太陽熱の利用では、冷房と暖房で取水井と還水井を入れ替えることで、1シーズンかけて蓄熱を行なう帯水層蓄熱とは違って、昼間に貯めた熱をその日のうちに使ってしまうような運転の繰返しとなるため、その傾向は顕著になる。
【0012】
ヒートポンプによる暖房運転においては、地中熱を蒸発器に与える構成となるため、地中の温度が上昇しないと、大幅な運転効率の向上は望めない。
【0013】
つまり、従来の熱利用装置において、太陽熱と地中熱の両方を効率よく利用して空気調和を行なうためには、太陽熱利用のための蓄熱設備と、地中熱利用設備とを別々に設置する必要があった。その結果、二つの装置を設置するスペースと、二つの装置を導入するコストがかかるという課題があった。
【0014】
従って本発明は、こうした課題を解決し、太陽熱と地中熱の両方を効率よく利用して熱利用装置の設置スペースと導入コストを削減することのできる熱利用装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来の課題を解決するために、本発明の熱利用装置は、熱伝導特性に優れ大きな熱容量を有する熱媒体中に、熱流体の搬送と熱交換を行なう第1の熱流体搬送配管を立体的に配置した第1の熱利用領域と、前記第1の熱利用領域の側面を取り囲むように第2の熱流体搬送配管が配備された第2の熱利用領域と、前記第1の熱利用領域と、前記第2の熱利用領域の間および前記第1の熱利用領域の上面に設けられた断熱手段とで構成された熱利用領域を地中に埋設すると共に、複数の温度測定手段と、前記第1の熱流体搬送配管および前記第2の熱流体搬送配管に流す熱流体の流れ方向の制御を行なう熱流体制御手段を備え、採熱や蓄熱などの運転モードや、前記温度測定手段の測定結果に基づいて、前記第1および第2の熱流体搬送配管に流す前記熱流体の流れ方向を制御するものである。
【0016】
これにより、前記第1の熱利用領域は底面を通じて地中熱の利用が可能なだけでなく、前記断熱手段と地中熱利用に優れた前記第2の熱利用領域が第1の熱利用領域を取り囲むことで熱の拡散を抑え、前記第1の熱利用領域は効率よく蓄熱と地中熱利用を行なうことができる。
【0017】
さらに、運転モードや前記温度測定手段の測定結果に基づいて、前記熱流体制御手段により前記熱流体の流れ方向を制御することで、より効率の良い運転ができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱利用装置は、地中に埋設した一つの装置で、蓄熱と地中熱利用の両方を効率よく行なうことができる。従って、設置スペースと導入コストを削減することのできる装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態1における熱利用装置を用いた空調システムの構成図
図2】本発明の実施の形態1における熱利用装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の発明は、熱媒体中に熱流体の搬送と熱交換を行なう第1の熱流体搬送配管を配設した第1の熱利用領域と、前記第1の熱利用領域の側面を取り囲み第2の熱流体搬送配管が配設された第2の熱利用領域と、前記第1の熱利用領域と前記第2の熱利用領域との間および前記第1の熱利用領域の上面に設けられた断熱手段とで構成され地中との熱交換を行う熱利用領域を具備し、前記第1第2の熱流体搬送配管には複数の温度測定手段と前記熱流体の流れ方向の制御を行なう熱流体制御手段とを備え、採熱や蓄熱などの運転モードと前記温度測定手段の出力結果とに基づいて、前記熱流体の流れ方向を制御するものである。
【0021】
これにより、前記第1の熱利用領域は底面を通じて地中熱の利用が可能なだけでなく、前記断熱手段と地中熱利用に優れた前記第2の熱利用領域が第1の熱利用領域を取り囲むことで熱の拡散を抑え、前記第1の熱利用領域は効率よく蓄熱と地中熱利用を行なうことができる。
従って、第1の発明は、地中に埋設した一つの装置で、蓄熱と地中熱利用の両方を効率よく行なうことができる。設置スペースと導入コストを削減することのできる装置を提供することができる。
【0022】
第2の発明は、第1の発明において、蓄熱運転時に、前記第1の熱利用領域の次に前記第2の熱利用領域を前記熱流体が流れるように前記熱流体制御手段が制御するものである。
【0023】
これにより、第2の発明は、前記蓄熱運転時に前記第1の熱利用領域の温度差を周囲の土壌に比べて大きくし、蓄熱量を増やすことができる。
【0024】
従って、同一容積で蓄熱量が増えれば、蓄熱量の多い蓄熱性能の高い装置を、同一蓄熱量を設定するならば、設置スペースのちいさな装置を提供することができる。
【0025】
第3の発明は、第1、第2の発明において、蓄熱利用運転時に、前記第2の熱利用領域の次に前記第1の熱利用領域を前記熱利用流体が流れるように前記熱流体制御手段が制御するものである。
【0026】
これにより、第1、第2の発明は、前記蓄熱利用運転時に効率よく蓄熱を取出し、蓄熱で蓄積した温度差を有効に利用することができる。
【0027】
従って、本発明の熱利用装置を用いて、前記蓄熱の取り出し効率に優れた蓄熱利用を行なうことができる。
【0028】
第4の発明は、地中熱利用運転時に、前記第1の熱利用領域の次に前記第2の熱利用領域を前記熱流体が流れるように前記熱流体制御手段が制御するものである。
【0029】
前記第2の熱利用領域は、前記断熱手段で囲われた前記第1の熱利用領域に比べると、地中との熱交換に優れている。比較的効率の良くない前記第1の熱利用装置には、流入直後の温度差の大きな前記熱流体を通し、その後効率の良い前記第2の熱利用領域へ通すことで、効率よく地中熱を利用することができる。
【0030】
従って、本発明の熱利用装置を用いて、効率の良い地中熱利用を行なうことができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における熱利用装置を用いた、空調システムの構成図を示すものである。
【0032】
図1に示すように、第1の実施の形態における熱利用装置を用いた空調システムは、ヒートポンプ式空気調和機の室外機9と室内機10が冷媒配管で接続され、室外機9を熱源機として室内機10が冷風あるいは温風を出して空気調和をおこなう。
【0033】
室外機9はさらに、ブライン循環系と接続しており、そのブライン循環系の一要素として熱利用装置1が使用されている。図1のブライン循環系では、室外機9と熱利用装置1の他に、ブラインを循環させるポンプ11、太陽熱を利用するための太陽熱熱交換器13、ブラインを室外機9に通したり、バイパスさせたりを制御する切替弁12が接続されており、太陽熱熱交換器13は、太陽熱パネル15と水を循環させるポンプ14とで太陽熱利用系を構成している。
【0034】
太陽熱を利用する際には、ポンプ14を動作させ、太陽熱パネル15で暖めた水を太陽熱熱交換器13へ送り、ブラインを暖める。その熱を、室外機9で利用する場合には、切替弁12を、ブラインを室外機9へ送るよう動作させ、熱利用装置1へ蓄熱する場合は、室外機9をバイパスさせてポンプ11へブラインを送るよう動作させる。
【0035】
室外機9においては、冷房運転であれば、ブラインに熱を与え、暖房運転であればブラインから熱を吸収する。
【0036】
熱利用装置1は、天面と側面を断熱壁4で囲まれた蓄熱領域2と、その蓄熱領域2の外側を囲うように配置された地中熱領域3と、ブラインの流れる向きを切り替える切替弁8とで構成されており、蓄熱領域2と地中熱領域3は地中に埋設されている。切替弁8と蓄熱領域2、切替弁8と地中熱領域3、蓄熱領域2と地中熱領域3はそれぞれブライン配管でつながれており、各ブライン配管には、温度センサ5、温度センサ6、温度センサ7が配置されている。
【0037】
図2は熱利用装置1の説明図で、蓄熱領域2と地中熱領域3は水平断面で見た様子を示している。
図2に示すように、蓄熱領域2には、第1の熱流体搬送配管22が、地中熱領域3には、第2の熱流体搬送配管23が配備されており、切替弁8の弁体16が移動するとブラインの流れる方向が切り替わる。これから説明を行なうが、図2の弁体16の位置は蓄熱利用モードの位置である。
【0038】
図2において、ポンプ11から送られてくるブラインは矢印19のように切替弁8に流入すると共に流出していく。図2では、弁体16が矢印17の方向に移動した状態で、ブラインは矢印20のように、切替弁8から地中熱領域3の第2の熱流体搬送配管23を通り、蓄熱領域2の第1の熱流体搬送配管22を通って切替弁8へ戻ってくる。
【0039】
反対に、切替弁8の弁体16が、矢印18の方向へ移動すると、ブラインは矢印21のように、切替弁8から蓄熱領域2の第1の熱流体搬送配管22を通り、地中熱領域3の第2の熱流体搬送配管23を通って切替弁8へ戻ってくる。
【0040】
蓄熱領域2は蓄熱を行なうためのものであり、効率よく蓄熱を行なうためには熱容量が
大きい材料を用い、熱の拡散を抑えるため断熱壁で覆うのが望ましい。さらに、蓄熱および蓄熱利用を速やかに行なうことができるように熱伝導率の良いものが好ましく、また、地中熱の利用も可能なように、適度に地中と熱的に連結しているのが望ましい。
【0041】
地中の温度は、比較的浅いところでは外気温度の影響を受けやすく、冬期であれば、浅いところほど温度が低く、蓄熱領域2は断熱壁4が無ければ天面で多く熱を失うことになる。その次に、面積の大きな側面からも熱を失うので、断熱壁4は蓄熱領域2の天面と側面のみを断熱するよう設計されている。底面は、全体から見ると面積が小さく地中の温度も安定しているので比較的熱を失いにくく、地中熱の利用ができるように断熱はしない。
【0042】
地中熱領域3は、地中熱利用を効率よく利用するために、蓄熱領域2と同様、熱容量が大きく熱伝導性に優れる材料を使用するのが望ましい。地中熱領域3は、周囲の土壌との熱的な連結が重視され、断熱はこれを阻害するので行なうことはない。
【0043】
そして、使用する材料の特性としては、蓄熱領域2では、特に熱容量が重要で、地中熱領域3では、熱伝導性が重要である。具体的な例を挙げると、安価で安定な熱容量の大きな材料としては水(熱伝導は良くない)が、熱伝導に優れた材料としては硅砂がある。
【0044】
蓄熱領域2としては、熱容量の点でも熱伝導の点でも比較的良好な特性を持つコンクリート容器内に、第1の熱流体搬送配管22を配置し水と硅砂で満たすのが良い。地中熱領域3としては、第2の熱流体搬送配管23の周りに硅砂を満たすのが良い。
【0045】
蓄熱を行なう場合は、蓄熱領域2の温度ができるだけ高くなるように、切替弁8の弁体16を矢印18の方向に移動させて(図2は移動前の状態)、温度の高いブラインをまず最初に蓄熱領域2の第1の熱流体搬送配管22に通し、その後地中熱領域3の第2の熱流体搬送配管23に通す。
【0046】
すると、ブラインが運んできた熱で蓄熱領域2が暖められ、残った熱で地中熱領域3が温められる。蓄熱領域2は底面以外断熱されており、流入ブライン温度に近いところまで温度が上昇していく。地中熱領域3は、蓄熱領域2ほどは温度上昇することは無いが、周囲の土壌も含めた大きな領域に太陽熱を蓄熱していくことになる。
【0047】
蓄熱を利用する際は、切替弁8の弁体16を矢印17の方向に移動させて(図2に示す状態)、温度の低い地中熱領域3の第2の熱流体搬送配管23に通し、その後に温度の高い蓄熱領域2の第1の熱流体搬送配管22に通す。その結果、蓄熱利用時のブラインの温度を最も高くすることができる。
【0048】
次に、本発明の実施の形態1において、地中熱利用を行なう場合について説明する。
【0049】
蓄熱領域2は底面のみが地中と熱的に連結しており、地中と熱的に連結の強い地中熱領域3に比べると、同一熱量を取り出す場合温度が低下しやすい。したがって、切替弁8の弁体16を矢印18の方向に移動させて、ブラインをまず最初に蓄熱領域2の第1の熱流体搬送配管22に通し、その後地中熱領域3の第2の熱流体搬送配管23に通すとブラインの温度を最も高くすることができる。
【0050】
そして、通常の運転状況においては、蓄熱運転を行なった後に、蓄熱利用運転を行い、蓄熱を使い終わった後に地中熱利用運転を行なうことになる。このとき、蓄熱運転および地中熱利用運転と(弁体16の位置は同じ)、蓄熱利用運転とでは、切替弁8の弁体16の位置を変えなければならない。
【0051】
効率よく運転するためには、蓄熱利用運転から地中熱利用運転へ切り替えるときの切替弁8の切替タイミングが重要で、温度センサ5、6、7で各位置でのブライン温度をモニターし、切替弁8を切り替えるタイミングを判断する。
【0052】
理想的に蓄熱利用運転を行なっていると、温度センサ6の検知温度が一番低く、地中熱領域3で温められた分だけ温度センサ5の検知温度は上昇し、さらに、蓄熱領域2で暖められた分だけ温度センサ7の検知温度が上昇する。
【0053】
蓄熱の利用が進むにつれて、温度センサ7の検知温度の上昇率が減少してくる。同時に温度センサ5の検知温度の上昇率も減少するが、地中熱領域3は周囲の土壌から熱をもらうので、温度センサ7ほど検知温度の上昇率は低下しない。そして、最終的には温度センサ7の検知温度と温度センサ5の検知温度の差は、蓄熱領域2の底面から取得する熱量に見合う温度差となる。
【0054】
このとき、切替弁8を切り替えると、高い蓄熱領域2の第1の熱流体搬送配管22を流れるブラインの温度は低くなるため、再び熱を取り出すことが可能となる。そして、地中熱領域3のほうが周囲の土壌から熱をもらいやすいので、熱利用装置1としての採熱量は最大化することができる。
つまり温度センサ7の検知温度と温度センサ5の検知温度の差が所定の値まで低下したら、切替弁8を切り替えて、地中熱利用運転に切り替えることで、ブラインの流れ方向を適切に制御し、熱利用装置1としての採熱量を最大化する。
【0055】
以上説明したように、実施の形態1の熱利用装置1は、断熱壁4を有する蓄熱領域2と、その周囲の地中熱領域3からなる熱利用領域を有し、地中に埋設した一つの装置で、蓄熱と地中熱利用の両方を効率よく行なうことができる。
その結果、設置スペースと導入コストを削減することのできる装置を提供できる。
【0056】
また、蓄熱運転時に、蓄熱領域2の次に地中熱領域3を前記熱流体が流れるように切替弁8が制御を行なうことにより、蓄熱運転時に蓄熱領域2と周囲の土壌との温度差を大きくし、蓄熱量を増やすことができる。
【0057】
その結果、同一容積で蓄熱量が増えれば、蓄熱量の多い蓄熱性能の高い装置を、同一蓄熱量を設定するならば、設置スペースのちいさな装置を提供することができる。
【0058】
また、蓄熱利用運転時に、地中熱領域3の次に蓄熱領域2を前記熱利用流体が流れるように切替弁8が制御を行なうことで、蓄熱利用運転時に効率よく蓄熱を取出し、蓄熱で蓄積した温度差を有効に利用することができる。
【0059】
その結果、蓄熱の取り出し効率に優れた熱利用装置を提供することができる。
【0060】
また、地中熱利用運転時に、地中熱利用効率の良くない蓄熱領域2の次に効率の良い地中熱領域3熱流体が流れるように切替弁8が制御を行なうことで、効率よく地中熱を利用することができる。
【0061】
その結果、効率良く地中熱利用を行なう熱利用装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明にかかる空気調和機は、外気とは異なる熱源を適切かつ有効に利用して、効率のよい装置を提供するもので、その技術は空気調和機だけに止まらず、給湯などにも広く適用することができ、効果をもたらすものである。
【符号の説明】
【0063】
1 熱利用装置
2 蓄熱領域
3 地中熱領域
4 断熱壁
5 温度センサ
6 温度センサ
7 温度センサ
8 切替弁
9 室外機
10 室内機
11 ポンプ
12 切替弁
13 太陽熱熱交換器
14 ポンプ
15 太陽熱パネル
16 弁体
22 第1の熱流体搬送配管
23 第2の熱流体搬送配管
図1
図2