(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フレキシブルフラットケーブル(以下、「FFC」と記す)に関する技術を開示する。
【0003】
2つの回路基板がFFCで互いに電気的に接続されて構成された電子機器では、映像信号などの情報量が多い信号を伝送するときに、差動データ伝送方式が使われることがある。
【0004】
差動データ伝送方式の代表的なものの1つに、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)がある。LVDSは、高速なデジタル・インターフェイスを可能にする技術であり、例えば、表示装置の内部の回路基板間で映像信号を伝送するとき等に使用される。LVDSの伝送レートは1チャネルあたり数百Mbpsである。
【0005】
近年、表示パネルが高解像度化している。例えば、約4000×2000の画素(ピクセル)を有する表示パネル(以下、「4k2kパネル」と記す)等もある。このような高解像度化した表示パネルを備えた表示装置では、映像の情報量が従来よりも増加するため、映像信号の伝送量が従来よりも増加する。そのため、このような表示装置では、映像信号の伝送にLVDSを用いたとしても、伝送すべき信号の本数(チャネル数)の増加を抑えることは困難である。そして、信号本数の増加に対応するために1つのFFCに含まれる信号線の本数(チャネル数)が増加すると、回路基板を設計する際に様々な制約や困難が生じることがある。
【0006】
1チャネルあたりの信号伝送量を増加できれば、1つのFFCに含まれる信号線の本数(チャネル数)を低減することができる。そして、1チャネルあたりの信号伝送量をギガビットレート(Gpbs)にすることが可能な伝送方式が、LVDSの代替技術として提案されている。この伝送方式は、例えば、最大伝送レートが3.75GbpsのV−BY−One(登録商標)HSや、最大伝送レートが5.4GbpsのeDP(embedded Display Port)等である。
【0007】
これらの伝送方式にもとづく高周波信号を回路基板間で伝送するためのケーブルには、一般的に、インピーダンス整合され、伝送信号の品質を保つことができるFFCが使用される。そして、そのようなFFCは、一般的に、信号が流れる配線導体が絶縁体で覆われ、その配線導体の一方の面(シールド面)に、電磁波ノイズの漏洩や混入を防止するために、誘電体、GND用導体金属箔、絶縁体、を重ねた構造を有する。以下、FFCにおける一方の面(シールド面)を「FFCのシールド面」、他方の面を「FFCの信号面」と記す。
【0008】
上記のFFCで互いに接続された回路基板を有する電子機器では、金属で形成された部材(金属材料)にFFCの信号面が面接触すると、その接触領域に発生する静電容量と、配線抵抗等の抵抗成分とでローパスフィルタ(LPF)が形成されることがある。そして、このLPFが、FFCを流れる高周波信号を減衰させることがある。この静電容量は、FFCの信号面と金属材料との接触面積に比例して大きくなり、この静電容量が大きくなるほどFFCを流れる高周波信号の減衰量は大きくなりやすい。
【0009】
例えば表示パネルとして液晶パネルを備えた表示装置では、回路基板は、液晶パネルの背面側を覆う金属材料(液晶パネルの表示部を支える支持部)上に配置されることが一般的である。FFCは、電磁波ノイズの漏洩や混入を防止するために、シールド面が表示装置のバックカバーに対向するように配置される。したがって、FFCに「たわみ」等が生じると、FFCの信号面が金属材料に面接触してしまう可能性がある。
【0010】
そして、ギガビットレートの高周波信号を内部の回路基板間で送受信するように構成された電子機器では、金属材料とFFCの信号面とに面接触が生じると、FFCを伝送する信号が減衰し、受信側の回路基板が信号を正常に受信できない可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0017】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0018】
(実施の形態1)
以下、
図1〜
図6を用いて、実施の形態1を説明する。なお、本実施の形態では、FFCを備えた電子機器の一例として、液晶パネルを表示パネルとして備える表示装置を挙げているが、本開示は何らこの表示装置に限定されるものではない。本開示は、複数の回路基板をFFCで互いに接続し、回路基板間で送受信する高周波信号をFFCを介して伝送する電子機器に適用可能である。
【0019】
[1−1.構成]
図1は、実施の形態1における表示装置100の背面図である。
図1には、バックカバーを外した表示装置100を背面側から見た平面図を概略的に示している。なお、本実施の形態では、表示装置100において、映像の表示面が設けられた側(映像表示側)を正面とし、映像の表示面に対向する側(バックカバー側)を背面とする。
【0020】
表示装置100は、表示パネルと、信号基板110と、タイミングコントローラ基板(以下、「TCon基板」と記す)120と、電源基板102と、音声を出力する複数のスピーカー103と、複数のモジュール部104と、FFC200と、を有する。
【0021】
表示パネルは、映像を表示するための複数の表示素子が2枚のガラス基板間に形成された表示部と、この表示部(ガラス基板)を支えるシャーシ部101と、を備える。シャーシ部101は、支持部の一例である。ガラス基板は表示装置100の正面側に配置され、シャーシ部101は表示装置100の背面側に配置されている。そのため、
図1には、表示パネルのシャーシ部101が示され、表示部は示されていない。このシャーシ部101は、例えばアルミニウム等の金属を材料として形成されているが、他の材料で形成されていてもよい。
【0022】
信号基板110は、外部の映像信号発生装置や放送局等から受信した信号(入力映像信号等)に信号処理を施して出力する信号処理回路(図示せず)、が搭載された回路基板である。信号処理回路は第1の回路の一例であり、信号基板110は第1の回路基板の一例である。
【0023】
TCon基板120は、信号基板110に搭載された信号処理回路から出力される映像信号を受け取り、この映像信号にもとづく映像を表示パネルの表示部に表示するための信号を生成する駆動回路(図示せず)、が搭載された回路基板である。駆動回路は第2の回路の一例であり、TCon基板120は第2の回路基板の一例である。
【0024】
電源基板102は、交流の家庭用電源を直流電源に変換する電源回路(図示せず)が搭載された回路基板である。表示装置100において、信号基板110、TCon基板120、および電源基板102の各回路基板は、シャーシ部101上に配置されている。表示装置100では、各回路基板はシャーシ部101に固定されているものとするが、本実施の形態は、各回路基板の配置位置や固定方法を何ら限定するものではない。各回路基板は支持部以外の部材(例えば、筐体等)に固定されていてもよく、また、シャーシ部101の直上に配置されてなくてもよい。
【0025】
モジュール部104は、例えば、リモートコントローラからの赤外線信号を受信する受光部、Wi−Fi(登録商標)接続部、Bluetooth(登録商標)接続部、等であるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0026】
各スピーカー103と信号基板110、および各モジュール部104と信号基板110、のそれぞれは、ワイヤーハーネス300で互いに電気的に接続されている。
【0027】
FFC200は、シャーシ部101上に配置され、信号基板110とTCon基板120とを互いに接続し、信号処理回路と駆動回路との間で送受信される高周波信号を伝送するように構成されている。
【0028】
信号基板110は、端子群112を有する。端子群112は、例えば、HDMI(登録商標)端子、USB(Universal Serial Bus)端子、YUV端子、チューナー、等であるが、何らこれらに限定されるものではない。そして、信号基板110には、端子群112から入力される映像信号および音声信号の復調やノイズ除去処理等の信号処理を行うように構成された信号処理回路を集積したLSI(Large Scale Integrated circuit。図示せず)が搭載されている。
【0029】
信号基板110に搭載された信号処理回路は、入力映像信号を表示パネルの表示部に適した映像信号に変換し、変換後の映像信号(デジタルの映像信号)を出力するように構成されている。この信号処理回路は、表示パネルの表示部の駆動方式や画素数等にもとづき、入力映像信号に様々な信号処理を施す。また、この信号処理回路は、スピーカー103および各モジュール部104を制御するようにも構成されている。
【0030】
なお、信号処理回路に代えてプロセッサーを信号基板110に搭載し、信号処理回路と同等の動作をするように作成したプログラムをこのプロセッサーで実行させる構成としてもよい。
【0031】
TCon基板120には、信号基板110上の信号処理回路から出力されてくるデジタルの映像信号を受信し、その映像信号を表示パネルの表示部の仕様にあわせた信号に変換するように構成された駆動回路を集積したIC(Integrated circuit。図示せず)が搭載されている。TCon基板120に搭載された駆動回路は、信号基板110に搭載された信号処理回路から出力される映像信号を受信し、その映像信号にもとづく映像を表示パネルの表示部に表示するために、その映像信号を表示パネルの表示部に適した形式にし、適切なタイミングで出力するように構成されている。そして、駆動回路は、信号処理回路から出力されてくる映像信号にもとづく映像を表示パネルの表示部に表示するために、表示部の各表示素子(液晶セル)を駆動する信号を、その映像信号にもとづき出力する。
【0032】
なお、駆動回路に代えてプロセッサーをTCon基板120に搭載し、駆動回路と同等の動作をするように構成したプログラムをこのプロセッサーで実行させる構成としてもよい。
【0033】
信号基板110とTCon基板120とは、2本のFFC200で互いに電気的に接続されている。信号基板110上には、FFC200を信号基板110上の信号処理回路に電気的に接続するためのレセプタクルコネクタ111が2つ実装されている。また、TCon基板120上にも、FFC200をTCon基板120上の駆動回路に電気的に接続するためのレセプタクルコネクタ121が2つ実装されている。以下、それぞれのレセプタクルコネクタを、単に「コネクタ」と記す。
【0034】
コネクタ111にはFFC200の一方の端部が接続され、コネクタ121にはFFC200の他方の端部が接続される。これにより、信号基板110上の信号処理回路とTCon基板120上の駆動回路とは、互いに電気的に接続される。信号基板110上の信号処理回路とTCon基板120上の駆動回路との間では、高周波のデジタル映像信号が、FFC200を介して高速に(例えば、ギガビットレートで)送受信される。
【0035】
なお、信号基板110とTCon基板120とを互いに接続するFFC200の数は、何ら2本に限定されるものではない。FFC200の数は、1本でもよく、3本以上でもよい。
【0036】
信号基板110は、ワイヤーハーネス300を信号処理回路に電気的に接続するコネクタ113を有する。一方の端部をコネクタ113に接続し、他方の端部をモジュール部104またはスピーカー103に接続したワイヤーハーネス300は、信号基板110上の信号処理回路と、モジュール部104またはスピーカー103との間で送受信される信号を伝送する。ワイヤーハーネス300は、表示パネルのシャーシ部101との間にFFC200を挟み込むように配置されている。そのため、
図1に示すように、ワイヤーハーネス300はFFC200と交差する。ワイヤーハーネス300は、長さが相対的に長く、またそれぞれの長さが互いに異なるため、分散しやすい。そこで、表示装置100では、ワイヤーハーネス300が分散しないように、ワイヤーハーネス300を互いに纏め、接着テープ400で表示パネルのシャーシ部101上に固定している。表示装置100では、接着テープ400でシャーシ部101上に固定されたワイヤーハーネス300により、FFC200はシャーシ部101に押圧されている。
【0037】
信号基板110は、ケーブル350を接続するためのコネクタ114を有する。電源基板102は、ケーブル350を接続するためのコネクタ115を有する。一方の端部をコネクタ114に接続し、他方の端部をコネクタ115に接続したケーブル350により、信号基板110上の電源および接地電位は、電源基板102上の電源回路の電源および接地電位のそれぞれと電気的に接続される。これにより、電源基板102上の電源回路から信号基板110上の信号処理回路に、適切に設定された電圧が供給される。
【0038】
なお、表示装置100が備える各回路の動作は、一般的に使用されている液晶テレビ等の表示装置と実質的に同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0039】
次に、FFC200について説明する。
【0040】
図2は、実施の形態1におけるFFC200の概略図である。
図2には、信号基板110のコネクタ111およびTCon基板120のコネクタ121に接続する前のFFC200の一例を示している。
【0041】
FFC200には、表(おもて)面と裏面とがある。本実施の形態では、FFC200の表面をシールド面206とし、裏面を信号面207とする。FFC200は、一定の可撓性(flexibility)、および繰り返しの折り曲げに耐え得る耐久性、を有するように形成されている。そのため、FFC200は、任意の形状に折り曲げた状態を維持することができる。例えば、FFC200は、FFC200に設けられた折り目を維持することができる。折り目については後述する。
【0042】
図2には、一例として、FFC200を約Xmm(ミリメートル。例えば、約50mm)の長さで繰り返し折り曲げた状態を示している。FFC200は、このように折り曲げた状態を維持できるので、例えば保管や運送に要する容積を低減できる。
【0043】
図3は、実施の形態1におけるFFC200の端部断面の部分拡大図である。
図3には、
図2に破線で示す領域の部分断面図を拡大して示している。
【0044】
本実施の形態に示すFFC200は、複数の物質層を積層して形成され、約0.5〜1mmの厚みを有する。FFC200は、例えば
図2に示すように、裏面(信号面207)から順に、絶縁体皮膜202a、導体201、絶縁体皮膜202b、誘電体203、導体204、絶縁体205、の6層が積層されて構成されている。したがって、裏面(信号面207)として外部に露出するのは絶縁体皮膜202aの一方の面であり、表面(シールド面206)として外部に露出するのは絶縁体205の一方の面である。絶縁体皮膜202a、絶縁体皮膜202b、絶縁体205は、例えば合成樹脂等の比較的絶縁性が高い材料で形成されている。
【0045】
導体201は、信号の伝送路であり、高周波信号を伝送できるように例えば銅等の比較的導電性が高い材料で形成されている。信号基板110とTCon基板120との間で伝送される信号(例えば、高周波のデジタル映像信号等)は、この導体201を通過する。なお、導体201は、複数の線状に分かれており、FFC200は、その線の数に応じた数の信号を通すことができる。本実施の形態における表示装置100は、導体201の線数が51本と41本の2つのFFC200を使用しているが、導体201の線数は何らこれらの数値に限定されるものではない。
【0046】
絶縁体皮膜202aの他方の面は導体201の一方の面に密着しており、導体201の他方の面は絶縁体皮膜202bの一方の面に密着している。このように、導体201の両面は、比較的絶縁性が高い絶縁体皮膜202a、絶縁体皮膜202bで覆われている。
【0047】
絶縁体皮膜202bの他方の面には誘電体203の一方の面が密着しており、誘電体203の他方の面には導体204の一方の面が密着している。導体204は、例えば銅等の比較的導電性が高い材料で形成されており、接地電位(グランドライン、以下「GND」とも記す)に接続される。そして、導体204の他方の面は、絶縁体205の他方の面に密着している。
【0048】
ただし、FFC200の各端部208は、コネクタ111、121に電気的に接続できるように、絶縁体皮膜202aおよび絶縁体205で覆われておらず、導体201、絶縁体皮膜202b、誘電体203、導体204を積層した領域が露出している。一方の端部208がコネクタ111に接続され、他方の端部208がコネクタ121に接続されることで、導体201とコネクタ111およびコネクタ121とが電気的に接続され、導体204とコネクタ111およびコネクタ121とが電気的に接続される。これにより、信号基板110の接地電位とTCon基板120の接地電位は実質的に同電位となり、また、信号基板110上の信号処理回路とTCon基板120上の駆動回路との間で信号の送受信を行うことができる。
【0049】
FFC200では、誘電体203および(または)導体204の材料や厚みを調整し、導体201と導体204のインピーダンスを100Ωに整合している。なお、FFC200は何ら6層構造に限定されるものではなく、厚みやインピーダンスも何ら上述した数値に限定されるものではない。
【0050】
本実施の形態において、FFC200は、上述した構造を有するため、シールド面206と信号面207とで電磁波ノイズの遮蔽性(電磁波ノイズの漏洩および混入を防止する能力)に差がある。シールド面206から信号の伝送路である導体201までの距離は、信号面207から導体201までの距離よりも大きい。さらに、導体201とシールド面206との間には、接地電位に接続された導体204を含む複数の物理層が挟まれており、この導体204は電磁波を遮蔽するシールド層として機能する。一方、導体201と信号面207との間には絶縁体皮膜202aの1層しかない。そのため、信号面207よりもシールド面206の方が、電磁波ノイズの遮蔽性に優れている。
【0051】
本実施の形態における表示装置100では、FFC200は、シールド面206が表示装置100の背面側に、信号面207が表示パネルのシャーシ部101側になるように、配置される。これは、FFC200を通る高周波信号による電磁波ノイズが表示装置100の外部に漏洩するのを防止するためである。
【0052】
図4Aは、実施の形態1におけるFFC200の端部208を信号面207側から見た平面図である。
図4Aでは、FFC200の一部を省略して示している。また、
図4Aでは、絶縁体皮膜202aの下に配線された導体201を破線で示している。
【0053】
上述したように、表示装置100では、導体201の線数が互いに異なる(例えば、51本と41本)2つのFFC200を使用している。FFC200は、一方の端部208はコネクタ111に接続できるように、他方の端部208はコネクタ121に接続できるように、それぞれの形状が設定されている。そして、上述したように、FFC200の端部208では、導体201は絶縁体皮膜202aで覆われておらず、また、導体204は絶縁体205で覆われていない。したがって、端部208の信号面207側では、
図4Aに示すように、導体201と絶縁体皮膜202bとが交互に露出している。絶縁体皮膜202bが露出しているのは、導体201が設けられていない領域である。
【0054】
そして、本実施の形態に示すFFC200には、複数の折り目210が設けられている。各折り目210は、シールド面206側が谷折りになり、信号面207側が山折りになるように形成されている。したがって、表示装置100に設置されたFFC200には、折り目210と折り目210との間がシールド面206側(表示装置100のバックカバー側)にアーチ状に突出した領域が生じる。本実施の形態では、約50〜70mmに設定された間隔(
図4Aに「Wa」で示す)で、9つの折り目210をFFC200に設けている。
【0055】
図4Bは、実施の形態1におけるFFC200の折り目210を部分拡大して示す断面図である。なお、
図4Bには、表示パネルのシャーシ部101を示し、表示部は省略している。
【0056】
図4Bに示すように、折り目210には、約5〜40mmの幅(
図4Bに「Wd」で示す)に設定された折り返しが設けられている。そして、本実施の形態では、折り目210の折り返し部分(山折りされた信号面207の領域)が表示パネルのシャーシ部101に接触するように、FFC200を表示装置100に設置する。
【0057】
なお、上述したFFC200に設ける折り目210の数、折り目210の間隔、および折り返しの幅、は単なる一例であり、何ら上述した数値に限定されるものではない。FFC200に設ける折り目210の数、折り目210の間隔、および折り返しの幅、等は、FFC200を使用する電子機器(または表示装置)の仕様や大きさ、およびFFC200の素材や大きさ等に応じて、適切に設定することが望ましい。
【0058】
なお、FFC200の信号面207が、金属を材料とする表示パネルのシャーシ部101に接触する面積は、できるだけ小さい方が望ましい。したがって、FFC200に設ける折り目210の数はより少ない方が好ましく、折り返しの幅もより狭い方が好ましい。
【0059】
図5Aは、
図1のA−A線における断面図である。
図5Bは、実施の形態1における表示装置100のFFC200近傍を部分的に拡大して示した平面図である。
図5A、
図5Bには、FFC200を信号基板110とTCon基板120とに接続した状態を、断面図および平面図を用いて示している。
図5Aには、表示パネルのシャーシ部101を示し、表示部は省略している。
【0060】
なお、
図5A、
図5Bでは、信号基板110とTCon基板120との離間距離を「Wb」としている。
【0061】
図5A、
図5Bに示すように、信号基板110とTCon基板120とを電気的に接続するFFC200は、表示パネルのシャーシ部101上に配置される。FFC200の長さは、信号基板110とTCon基板120との離間距離Wbよりも長くなるように設定されている。そのため、各端部208を信号基板110とTCon基板120とにそれぞれ接続したFFC200には、FFC200が有する弾性力により、両方の端部208から中心方向に向かう応力が加わる。この応力は、FFC200の各折り目210を、表示パネルのシャーシ部101に押圧する力として働く。
【0062】
これにより、FFC200の各折り目210は表示パネルのシャーシ部101に押し付けられる。FFC200は、折り目210の折り返しが、折り目210同士の間隔Waよりも短い間隔Wcで、表示パネルのシャーシ部101に接触する。すなわち、FFC200は、折り目210の折り返しとシャーシ部101との接触部の間隔Wcが、隣り合う折り目210間の間隔Waよりも短くなるように、設置される。これにより、折り目210と折り目210との間には、FFC200が有する弾性力により、シャーシ部101に接触する折り目210を起点として背面側にアーチ状に突出した(シールド面206が凸状となる)領域が形成される。
【0063】
例えば、信号基板110とTCon基板120とを電気的に接続するFFCを、折り目210を設けず、コネクタ111とコネクタ121との離間距離Wbに実質的に等しい長さに設定したとする。この構成は、FFCが表示パネルのシャーシ部101に接触する可能性が低く、理想的である。しかし、現実的には、FFCを製造するときに、FFCの長さにバラつきが生じ、コネクタ111とコネクタ121との離間距離Wbよりも長さが短いFFCが製造されることがある。そのようなFFCは、表示装置100に使用できない。このような問題の発生を防止するためには、FFCの長さを、コネクタ111とコネクタ121との離間距離Wbよりも長くする必要がある。しかし、単に長さを長くしただけで折り目210を設けていないFFCは、信号基板110とTCon基板120とを電気的に接続したときに「たわみ」が生じ、FFCと表示パネルのシャーシ部101とに予期しない面接触が生じる可能性がある。
【0064】
本実施の形態では、FFC200を、離間距離Wbよりも長いサイズに設定するとともに折り目210を設けた構成とする。これにより、製造時のバラつきによりコネクタ同士を電気的に接続できないような短いFFCが製造される、といった問題を防止することができる。さらに、信号基板110とTCon基板120とをFFC200によって電気的に接続したときに、FFC200が有する弾性力により、各折り目210を表示パネルのシャーシ部101に押圧する力をFFC200に生じさせることができる。これにより、FFC200には、折り目210と折り目210との間に、折り目210を起点として背面側にアーチ状に突出した領域が形成され、折り目210の折り返しは表示パネルのシャーシ部101に押し付けられる。したがって、表示装置100では、この折り目210が支えとなり、FFC200は、表示パネルのシャーシ部101上に安定した状態で維持される。
【0065】
本実施の形態では、さらに、
図5Bに示すように、FFC200の折り目210の位置にワイヤーハーネス300を配置して、表示パネルのシャーシ部101とワイヤーハーネス300との間に折り目210を挟み込み、この状態が維持されるようにワイヤーハーネス300をシャーシ部101に接着テープ400等で固定してもよい。これにより、FFC200には、折り目210を表示パネルのシャーシ部101に押圧する力がワイヤーハーネス300によって加えられ、FFC200の折り目210がシャーシ部101から浮き上がることが防止される。したがって、FFC200をより安定な状態でシャーシ部101上に維持することができる。
【0066】
[1−2.動作]
以上のように構成された表示装置100において、FFC200を伝送する信号の周波数と減衰量との関係を説明する。
【0067】
図6は、実施の形態1における表示装置100に設置されたFFC200を流れる信号の周波数と減衰量との関係を示す図である。
図6において、横軸は信号の周波数(GHz)を示している。縦軸は信号の減衰量(dB)を示しており、下方ほど(マイナスの数値が大きくなるほど)減衰量が大きくなることを示している。
【0068】
なお、
図6に示すグラフは、信号基板110とTCon基板120との間を長さ約400mmのFFC200で電気的に接続し、FFC200を伝送する信号の周波数を変えながら入力信号と出力信号の振幅比を計測する、という実験の結果をまとめたものである。また、
図6には、本実施の形態に示す構成にもとづく実験結果を示すグラフPとの比較のために、グラフQ、R1、R2を示す。
【0069】
図6において、グラフPは、FFC200に約50mm間隔で5つの折り目210を設け、各折り目210の折り返し幅Wdを数mm(約5mm)に設定し、それら5つの折り目210を、上述と同様の構成で表示パネルのシャーシ部101へ接触させた時の、FFC200を流れる信号の周波数と減衰量との関係を示すグラフである。
【0070】
グラフQは、FFC200に折り目210を設けず、FFC200の5箇所を、間を空けて、長さ40mmの接着テープで表示パネルのシャーシ部101に固定した時の、FFC200を流れる信号の周波数と減衰量との関係を示すグラフである。すなわちこの構成では、FFC200のうちの離散した5箇所(総計5×40mm=200mmの領域)が、接着テープによりシャーシ部101に接触している。
【0071】
グラフR1は、FFC200に折り目210を設けず、FFC200に「たわみ」を生じさせ、FFC200のうちの約200mmの連続した領域を、FFC200の弾性力を利用して表示パネルのシャーシ部101に面接触させた時の、FFC200を流れる信号の周波数と減衰量との関係を示すグラフである。
【0072】
グラフR2は、FFC200に折り目210を設けず、FFC200を長さ200mmの接着テープで表示パネルのシャーシ部101に固定した時の、FFC200を流れる信号の周波数と減衰量との関係を示すグラフである。
【0073】
グラフQ、R1、R2に関する実験は、FFC200のうちの約200mmの領域が表示パネルのシャーシ部101に接触している点で共通している。
【0074】
なお、
図6には、表示装置100の表示部に表示する映像に、実質的に影響を与えない減衰量の下限を示す基準線を、破線で示している。したがって、
図6に示すグラフからは、この基準線よりも減衰量が大きい(基準線よりも下側にグラフがある)ときは、表示部に表示する映像に何らかの影響を与える可能性があり、この基準線よりも減衰量が小さい(基準線よりも上側にグラフがある)ときは、表示部に表示する映像に実質的に影響を与えない、ということが分かる。
【0075】
図6に示すように、グラフQは、どの周波数においても減衰量が基準線を越えていない(基準線よりも上側にグラフがある)。一方、グラフR1とグラフR2は、いずれも減衰量が基準線を越えている領域(基準線よりも下側の領域)がある。
【0076】
グラフQが示す実験結果と、グラフR1、R2が示す実験結果との差は、FFC200と表示パネルのシャーシ部101とが、離散して接触している(グラフQ)のか、連続して接触している(グラフR1、R2)のか、の違いにより生じたと考えられる。グラフQ、R1、R2のいずれの実験においても、シャーシ部101に接触しているFFC200の長さの総和は200mmであり互いに等しい。しかし、グラフQと、グラフR1、R2との比較により、FFC200とシャーシ部101とが連続して接触している方が信号の減衰量はより大きくなり、離散して接触している方が信号の減衰量はより小さくなることがわかる。
【0077】
これらのことから、FFC200を伝送する信号の減衰量を抑制するためには、FFC200とシャーシ部101とを接触させるとき、接触領域を連続して設けるよりも、接触領域を離散させる方が望ましいことがわかる。
【0078】
なお、グラフR1が示す実験結果とグラフR2が示す実験結果との差は、FFC200とシャーシ部101とが、FFC200の弾性力等によって接触している(グラフR1)のか、接着テープによって接触している(グラフR2)のか、の違いにより生じたと考えられる。グラフR1とグラフR2との比較により、接着テープを用いてFFC200をシャーシ部101に固着させる方が減衰量がより大きくなることがわかる。このことから、FFC200とシャーシ部101とを接触させるとき、接着テープ等を用いない方が望ましいことがわかる。
【0079】
次に、グラフPについて説明する。
図6に示すように、グラフPとグラフQとを比較すると、グラフQの方がグラフPよりもやや減衰量が大きい。
【0080】
グラフPが示す実験結果と、グラフQが示す実験結果との差は、FFC200と表示パネルのシャーシ部101との接触面積の違いにより生じたと考えられる。グラフPの実験では、折り目210に設けた折り返しの幅は数mm(約5mm)である。一方、グラフQの実験では、折り目210に設けた折り返しの幅は約40mmである。グラフPとグラフQとの比較により、FFC200とシャーシ部101との接触面積が少ないほど減衰量がより小さくなることがわかる。
【0081】
しかしながら、グラフPとグラフQのいずれも減衰量は基準線を越えていない(基準線よりも上側にグラフがある)ので、グラフPの実験とグラフQの実験のいずれの構成も、映像の表示に関して実質的に問題はないと考えられる。このことから、折り目210に設ける折り返しの幅は、40mm程度までは許容される(表示映像に実質的に影響を与えない)と考えられる。
【0082】
以上のことから、本実施の形態では、信号基板110とTCon基板120との間を電気的に接続するFFC200に、折り目210を設け、折り目210に設けた折り返しが表示パネルのシャーシ部101に離散的に接触するようにFFC200を表示装置100に設置する。こうして、FFC200とシャーシ部101との接触領域を離散させるとともに、接触面積を相対的に少なくする。これにより、回路基板間で送受信する信号が高周波(数GHz)であっても、その高周波信号がFFC200を伝送する際の減衰量を低減することができる。
【0083】
なお、折り目210に設ける折り返しの幅は、上述したようにできるだけ狭い方が望ましいが、「0」にすることは物理的にできない。折り目210に設ける折り返しの幅の下限は、FFC200を形成する素材の物性等にもとづき決まる。これらのことから、ここでは折り目210に設ける折り返しの幅を約5〜40mmとするが、本実施の形態は、折り目210に設ける折り返しの幅を何らこの数値に限定するものではない。
【0084】
[1−3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、電子機器は、第1の回路が搭載された第1の回路基板と、第2の回路が搭載された第2の回路基板と、支持部と、フレキシブルフラットケーブルと、を備える。フレキシブルフラットケーブルは、支持部上に配置され、第1の回路基板と第2の回路基板とを互いに接続し、第1の回路と第2の回路との間で送受信される信号を伝送するように構成されている。そして、フレキシブルフラットケーブルに折り目を設け、その折り目が支持部に接触するようにフレキシブルフラットケーブルは設置される。
【0085】
フレキシブルフラットケーブルは、支持部と接触する折り目を起点としてアーチ状に突出した領域が生じるように設置されてもよい。
【0086】
フレキシブルフラットケーブルは、複数の折り目を有し、折り目と支持部との接触部間の間隔が、隣り合う折り目間の間隔よりも短くなるように設置されてもよい。
【0087】
フレキシブルフラットケーブルは、シールド面と信号面とを備え、シールド面が谷折りとなり信号面が山折りとなるように折り目が形成されてもよい。
【0088】
また、本実施の形態において、表示装置は、映像を表示する表示部およびその表示部を支える支持部を有する表示パネルと、第1の回路が搭載された第1の回路基板と、第2の回路が搭載された第2の回路基板と、フレキシブルフラットケーブルと、を備える。フレキシブルフラットケーブルは、支持部上に配置され、第1の回路基板と第2の回路基板とを互いに接続し、第1の回路と第2の回路との間で送受信される信号を伝送するように構成されている。そして、フレキシブルフラットケーブルに折り目を設け、その折り目が支持部に接触するようにフレキシブルフラットケーブルは設置される。
【0089】
なお、本実施の形態において、表示装置100は上述の電子機器または表示装置の一例であり、シャーシ部101は上述の支持部の一例であり、信号処理回路は上述の第1の回路の一例であり、駆動回路は上述の第2の回路の一例であり、信号基板110は上述の第1の回路基板の一例であり、TCon基板120は上述の第2の回路基板の一例であり、FFC200は上述のフレキシブルフラットケーブルの一例であり、折り目210は上述の折り目の一例であり、間隔Wcは上述の「折り目と支持部との接触部間の間隔」の一例であり、間隔Waは上述の「隣り合う折り目間の間隔」の一例であり、シールド面206は上述のシールド面の一例であり、信号面207は上述の信号面の一例である。
【0090】
従来技術では、複数の回路基板をFFCで互いに接続する構成の電子機器において、金属材料で形成された支持部とFFCとの面接触を防止するために、例えば、樹脂クランパ等でFFCを支えたり、支持部とFFCとの間にスポンジ等の絶縁部材を挟み込む等して、支持部とFFCとの間に間隙を設ける対策がとられることが一般的である。あるいは、面接触しても信号が減衰しないように、両面に電磁波ノイズを遮蔽するためのシールド層を設けた両面シールド型FFCや、細線同軸ケーブル等を使用する、といった対策がとられる事もある。しかしながら、このような対策は、電子機器に使用する部品点数が増加したり、部品が高価になったりするため望ましくない。
【0091】
しかし、本開示によれば、実施の形態に一例を示したように、FFC200に設けた折り目210がシャーシ部101に接触してFFC200を支えるので、上述したような従来技術の構成を用いずとも、FFC200とシャーシ部101との面接触を防止しつつFFC200を安定な状態でシャーシ部101上に維持することができる。さらに、FFC200とシャーシ部101との接触領域が離散され、接触面積も相対的に少なくなるので、回路基板間で送受信する信号が高周波(数GHz)であっても、その高周波信号をFFC200が伝送する際の減衰量を低減することができる。
【0092】
これにより、例えば大画面の4k2kパネルを備えた液晶テレビ等、高周波信号を回路基板間で送受信するように構成され、かつ回路基板間の離間距離が相対的に大きい電子機器でも、FFCを伝送する高周波信号の減衰量を低減することができる。したがって、上述したような従来技術の構成を用いずとも、回路基板間での高周波信号の送受信をFFCを介して安定に行うことができる。
【0093】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0094】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0095】
実施の形態1では、電子機器の一例として、表示装置100を説明した。しかし、電子機器は、表示装置100に限定されない。電子機器は、複数の回路基板がFFCで互いに接続され、FFCを介して回路基板間で信号の送受信を行うように構成されていればよい。したがって、電子機器は、液晶以外のパネル(例えば、EL(Electro Luminescence)パネル、等)を備えた表示装置、ビデオカメラなどの映像信号記録装置、携帯用端末装置、計測装置、製造装置、パーソナルコンピュータやサーバコンピュータ、等であってもよい。
【0096】
また、実施の形態1では、支持部の一例としてシャーシ部101を説明したが、支持部は、シャーシ部101に限定されるものではない。金属材料で形成された板状のもの(金属板、等)を支持部とする電子機器であれば、本実施の形態に示した効果と同様の効果を得ることが可能である。
【0097】
また、両面が信号面の(すなわち、シールド層を備えない)FFCであっても、実施の形態1に示した構成と同様の構成にすることで、実施の形態1に示した効果と同様の効果を得ることが可能である。
【0098】
また、FFCを伝送する信号はGHz帯の高周波信号でなくてもよい。FFCを伝送する信号はMHz帯の信号やkHz帯の信号であってもよい。
【0099】
また、第1の回路は信号処理回路以外の回路であってもよく、第2の回路は駆動回路以外の回路であってもよい。
【0100】
なお、実施の形態に示したFFC200に設ける折り目210の数、折り目210の間隔、および折り返しの幅、等の数値は単なる一例であり、何ら上述した数値に限定されるものではない。FFCに設ける折り目の数、折り目の間隔、および折り返しの幅、等は、FFCを使用する電子機器(または表示装置)の仕様や大きさ、およびFFCの素材や大きさ等に応じて、適切に設定することが望ましい。