特許第6442719号(P6442719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442719
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】ヘッドホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   H04R1/10 103
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-210759(P2014-210759)
(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公開番号】特開2016-82349(P2016-82349A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 幸三
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−050647(JP,A)
【文献】 実開昭58−061596(JP,U)
【文献】 特開2008−066977(JP,A)
【文献】 実開昭56−167688(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内にヘッドホンユニットが組み込まれる左右一対のイヤピースと、
長手方向に湾曲する形状からなるヘッドバンドと、
前記ヘッドバンドの長手方向の両方の端部と前記イヤピースとをそれぞれ連結し、前記ヘッドバンドの長手方向において進退可能な状態で前記端部に保持されるスライダーと、
前記スライダーの表面において前記イヤピースのそれぞれを電気的に接続する結線部材を覆うカバー部材と、を有するヘッドホンであって、
前記スライダーは、前記ヘッドバンドの長手方向に沿った長孔を有し、
前記カバー部材は、前記長孔に沿って前記結線部材を内部に保持する空間を有していて前記結線部材を覆い
前記空間は、前記カバー部材の長手方向の両方の端部において前記結線部材が通る開口部になっている、
ヘッドホン。
【請求項2】
前記開口部は、前記カバー部材の短手方向を開口するように形成されている第1開口部と、前記カバー部材の長手方向を開口するように形成されている第2開口部を有する請求項1記載のヘッドホン。
【請求項3】
前記第1開口部は、前記ヘッドバンド側に形成されていて、
前記第2開口部は、前記イヤピース側に形成されている、
請求項2記載のヘッドホン。
【請求項4】
前記ヘッドバンドの両方の端部には、突起部が配置されていて、
前記突起部は、前記スライダーの長孔に嵌っている、
請求項1乃至3のいずれかに記載のヘッドホン。
【請求項5】
前記スライダーの一部には、短手方向の溝が前記スライダーの長手方向に一定間隔で形成されている、
請求項1乃至4のいずれかに記載のヘッドホン。
【請求項6】
前記ヘッドバンドの両方の端部には、弾性部材が配置されていて、
前記弾性部材の凸部が前記溝に嵌るクリック機構を形成する、
請求項記載のヘッドホン。
【請求項7】
上記スライダーは、金属からなる、
請求項1乃至6のいずれかに記載のヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
耳覆い型のヘッドホン、または耳載せ型のヘッドホンは、左右一対のイヤピースをヘッドバンドで連結して構成される。各イヤピースには、イヤパッドを備えるハウジング内にスピーカと同じ構造のドライバーユニットが組み込まれている。ヘッドバンドは、ユーザーの頭頂部を跨ぐように湾曲した形状であって、弾性部材を備えている。ユーザーが当該ヘッドホンを装着したとき、ヘッドバンドは、左右のイヤピースのイヤパッドが適度の圧力をもってユーザーの耳または側頭部に接するように押圧力を与える。また、このようなヘッドホンは、ヘッドバンドに対するイヤパッドの位置を調整できる調整機構を備えている。調整機構によって、ユーザーがヘッドホンを装着するときに、イヤピースをユーザーの耳または側頭部の適切な位置に合わせられる。
【0003】
上記の調整機構は、ヘッドバンドの長さを調整するものである。以下、この調整機構を「ヘッドバンド長さ調整機構」という。従来から、ヘッドバンド長さ調整機構として、種々のものが知られている。例えば、ヘッドバンドの外側に操作部材を配置して、ユーザーがヘッドホンを装着した状態でヘッドバンドの長さを調整できるヘッドホンが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-82851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のヘッドホンにおけるヘッドバンド長さ調整機構は、部品点数が多く、構造も複雑である。また、従来から知られているヘッドバンド長さ調整機構は、相対的にスライドする2つ以上の異なる部材を有し、これら異なる部材が互いに擦り合う。したがって、ヘッドバンド長さ調整機構には、耐摩耗性が求められる。また、ヘッドバンド長さ調整機構は、ヘッドバンドに対してスライド移動する部材を備える。このスライドする部材がヘッドバンドから外れないような、抜け防止となる構造が必要になる。この点、特許文献1のような構成では、抜け防止構造のための部品点数が多くなる。
【0006】
また、音源装置との接続端子を左右のイヤピースのいずれか一方に設けて、他方のイヤピースには一方のイヤピースから結線部材を用いて接続する場合、結線部材はヘッドバンド内部を通すことになる。そうすると、ヘッドバンドの長さを調整することで、左右のイヤピースの間を繋ぐ結線部材を這わせる部分の長さが変わる。そこで、ヘッドバンドを短くしたときは、結線部材が外部に露出することなく、かつ、ヘッドバンドの内部空間で絡まずに収納できる構造が必要である。
【0007】
本発明は、ヘッドバンド長さ調整機構の耐摩耗性を高め、かつ部品点数を抑えつつ、抜け防止構造も備えるヘッドホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
ハウジング内にヘッドホンユニットが組み込まれる左右一対のイヤピースと、
長手方向に湾曲する形状からなるヘッドバンドと、
前記ヘッドバンドの長手方向の両方の端部と前記イヤピースとをそれぞれ連結し、前記ヘッドバンドの長手方向において進退可能な状態で前記端部に保持されるスライダーと、
前記スライダーの表面において前記イヤピースのそれぞれを電気的に接続する結線部材を覆うカバー部材と、を有するヘッドホンであって、
前記スライダーは、前記ヘッドバンドの長手方向に沿った長孔を有し、
前記カバー部材は、前記長孔に沿って前記結線部材を内部に保持する空間を有していて前記結線部材を覆い
前記空間は、前記カバー部材の長手方向の両方の端部において前記結線部材が通る開口部になっていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヘッドバンド長さ調整機構の耐摩耗性を高め、かつ部品点数を抑えつつ、抜け防止構造も備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るヘッドホンの全体形状の例を示す斜視図である。
図2】上記ヘッドホンが備えるスライダー部分を内側から見た拡大斜視図である。
図3】上記ヘッドホンが備えるスライダー部分の分解斜視図である。
図4】上記ヘッドホンが備えるスライダー部分の分解側面図である。
図5】上記ヘッドホンが備えるスライダー部分を外側から見た拡大斜視図である。
図6】上記ヘッドホンが備えるスライダー部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るヘッドホンの実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るヘッドホン100の全体の形状を示す斜視図である。図1に示されるように、ヘッドホン100は、左右一対のイヤピース1と、ヘッドバンド2と、スライダー3と、固定部材4と、カバー部材5と、を有してなる。
【0012】
各イヤピース1は、イヤパッド102を備えるハウジング101の内部にヘッドホンユニットを組み込んだものであって、各ハウジング101の外部にはアーム部材11が取り付けられている。このアーム部材11は、イヤピース1のハウジング101と後述するスライダー3及びカバー部材5とを連結させる部材である。
【0013】
具体的には以下のとおりである。アーム部材11は、二股に別れたアームを有している。この二股のアームは、ハウジング101の外周面の約半周を囲んでいる。上記二股のアームの各先端部は、ハウジング101の外周部に軸によって連通されている。ハウジング101は、上記の二股のアームの先端の軸を回転軸として所定の範囲で回転運動ができるようにアーム部材11に固定されている。
【0014】
イヤピース1の内部のヘッドホンユニットは、接続端子に接続された接続コードを介して音源に接続される。接続端子は、左右一対のイヤピース1の一方に設けられている。したがって、音源から入力される信号は、イヤピース1の一方に入力される。イヤピース1の一方と他方は、いわゆる渡りコードによって電気的に接続されていて、この渡りコードを介して、音源からの信号は他方のイヤピース1にも入力される。この渡りコードは、イヤピース1から出てアーム部材11を経由してヘッドバンド2に至る部分における露出部分が、後述するカバー部材5によって覆われている。
【0015】
ヘッドバンド2は、ユーザーの頭頂部または後頭部を跨ぐように湾曲した形状を有している。ヘッドバンド2は、内部に板バネ状の弾性部材を備えている。ユーザーが装着していない状態のヘッドホン100は、図1に示すように、ヘッドバンド2の形状に倣って、イヤピース1の端部同士が近づいた状態になる。ユーザーが装着する状態では、ヘッドホン100は、ヘッドバンド2の長手方向の端部間の距離が広げられた状態になる。言い換えると、ユーザーが装着する状態ではイヤピース1同士の距離が広げられた状態になる。
【0016】
ヘッドホン100を装着するときは、ユーザーがイヤピース1を持ってヘッドバンド2の円弧を広げる。そうすると、イヤピース1には、ヘッドバンド2のバネ性によって端部同士を近づけようとする復元力が働く。すなわち、装着時のイヤピース1は、ヘッドバンド2が形成する円弧の内側に向かう力によって付勢される。この力がユーザーの側頭部に側圧を与える。この側圧によって、イヤピース1は、所定の位置で保持される。
【0017】
ヘッドバンド2の両端には、固定部材4が配置されている。固定部材4は樹脂からなる部材であって、構造の詳細については後述する。
【0018】
ヘッドホン100は、固定部材4とイヤピース1を保持するアーム部材11との間に、ヘッドバンド長さ調整機構を構成するスライダー3を有する。スライダー3の一方の端部は、固定部材4の長手方向の端に形成されている開口部分からヘッドバンド2の内部空間に進入し、ヘッドバンド2の長手方向において進退可能な状態で保持されている。すなわち、イヤピース1は、スライダー3によってヘッドバンド2の長手方向においてスライド移動ができるようになっている。
【0019】
スライダー3の他方の端部は、後述するカバー部材5とアーム部材11に固定されている。アーム部材11またはイヤピース1とヘッドバンド2の端部を持ち、互いを引き離す向きに力を加えると、スライダー3が固定部材4の内部から引き出されて、ヘッドバンド2の実質的な長さを伸ばすことができる。逆に、イヤピース1とヘッドバンド2を互いに押し付ける向きに力を加えると、スライダー3がヘッドバンド2の内部に進入して、ヘッドバンド2の実質的な長さを縮めることができる。このようにスライダー3によってヘッドバンド2の長さを調整することができる。
【0020】
次に、上記ヘッドバンド長さ調整機構の詳細な構成について図を用いて説明する。図2は、スライダー3の一部を拡大した図である。図2に示すように、スライダー3は全体的な外形が長方形の板材であって、長手方向に円弧を描くように湾曲している。スライダー3は、長手方向に沿って形成される長孔31と、長孔31の周辺とスライダー3の外周辺との間に連続的に形成される溝32と、を有している。
【0021】
長孔31は、スライダー3の長手方向の両方の端部方向に向けて伸びていて、スライダー3の長手方向の寸法よりも短い。長孔31は、スライダー3の短手方向(幅方向)の中央部分を通る位置に形成されている。長孔31は、後述する抜け防止構造の一部として作用する構成であるが、スライダー3の短手方向の中央部分に配置されることは必須ではない。長孔31は、スライダー3の幅方向の一方の側面に片寄った位置に形成されてもよい。この場合、長孔31によって分割されるスライダー3の面のうち、一方の側面側の長孔31の周辺とスライダー3の外周辺の間の面の幅は、後述するように渡りコードを配置できる程度の幅を確保できればよい。
【0022】
溝32は、スライダー3の位置決めに用いる「クリック機構」を構成する。溝32は、スライダー3の表面の一部を長孔31から外に向かって切削して凹ませたものであって、スライダー3の長手方向において一定間隔で連続的に形成されている。
【0023】
スライダー3の一方の端部は、固定部材4の固定端部41によって把持されている。また、スライダー3の他方の端部は、アーム部材11とカバー部材5によって把持されている。
【0024】
カバー部材5は、非金属部材であって、例えば樹脂製の部材である。カバー部材5は、長手方向においてスライダー3と同様の円弧を描いた形状になっている。カバー部材5は、アーム部材11とともにスライダー3を把持する幅広部52と、幅広部52の一端から長手方向に向かって伸びるように形成されている狭小部51と、を有してなる。狭小部51は、スライダー3の一部の面に長孔31に沿って配置されるようになる。スライダー3の面の一部は、カバー部材5の狭小部51により表面が覆われる。狭小部51は、断面形状が略半円形のドーム形状であって、内側は長手方向に沿って掘削された空間が形成されている。このカバー部材5の内側の空間は、渡りコードを保持する空間になる。
【0025】
図3に示すように、スライダー3と固定部材4とカバー部材5はそれぞれ、長手方向において円弧を描くような外形を有している。これらが描く円弧の曲がり具合は、ヘッドバンド2の円弧と同様である。
【0026】
固定部材4の固定端部41の内側(図3紙面における奥側)には、金属製の弾性部材であるバネ43が配置されている。バネ43は、板バネを折り曲げたものであって、固定端部41に固定される平面部分と、平面部分に対向する側の凸部431と、を有してなる。バネ43の凸部431は、スライダー3の溝32に押し付けられて嵌るようになっている。凸部431は、スライダー3をヘッドバンド2に対して(固定部材4に対して)スライド移動させると、隣り合う溝32の間の畝状の盛り上がり部を乗り越えて移動できるような弾力を有している。すなわち、凸部431は溝32の形成部分を相対的にスライド移動し、凸部431が、溝32に嵌るときに「カチッ」というクリック感を生じさせる。このクリック感によってユーザーはヘッドバンド2の実質的な長さの変更度合いを感じることができる。
【0027】
スライダー3もバネ43も金属部材であり、スライダー3を移動させるときに互いに摩擦し合っても摩耗することはない。すなわち、ヘッドホン100のヘッドバンド長さ調整機構は、耐摩耗性が高い。
【0028】
また、図4に示すように固定部材4の固定端部41の内側(図4紙面上方向)には、抜け防止構造の一部であるボス42が形成されている。ボス42は、固定部材4の内面の一部を隆起させた突起部であって、スライダー3の一方の面側から長孔31に挿入されて、先端がスライダー3の他方の面から少し出るように配置される。
【0029】
ここで、抜け防止構造について詳細に説明する。図5に示すように、ボス42は、スライダー3の長孔31に挿入されていて、スライダー3をヘッドバンド2の長手方向に対してスライド移動させたときに、スライダー3が移動可能範囲の限界点に至るとボス42が長孔31の長手方向端部に当たるようになっている。すなわち、ボス42はスライダー3の移動可能範囲の限界点として作用する。これによって、スライダー3を移動可能範囲の限界点まで移動させても、ヘッドバンド2から抜け落ちることを防ぐことができる。
【0030】
以上のとおり、ヘッドホン100におけるヘッドバンド2の抜け防止構造は、ヘッドバンド2にスライダー3を固定する端部である固定部材4に配置されている。すなわち、当該抜け防止構造は、ヘッドバンド2とスライダー3を固定するための部材(固定部材4)において形成されるから、抜け防止構造のために別の部品を用いる必要がない。したがって、抜け防止構造を設けるに当って部品点数を少なくしても確実に抜け防止効果を得ることができる。
【0031】
図4に示すように、カバー部材5は、狭小部51の長手方向の先端に引掛け部513が形成されている。この引掛け部513をスライダー3の長手方向の先端付近に形成されている孔に引っ掛けることで、カバー部材5はスライダー3に固定されている。
【0032】
また、カバー部材5は、狭小部51の長手方向の先端付近に形成された第1開口部511と、幅広部52の端部付近に形成された第2開口部512と、を有する。第1開口部511は、ヘッドバンド2側に形成されている。第2開口部512は、イヤピース1側に形成されている。
【0033】
第1開口部511は、狭小部51の長手方向の先端付近における内側壁の一部を切除するように形成されている。第1開口部511の開口方向は、狭小部51の長手方向ではなく、短手方向に向いている。すなわち、狭小部51の内部空間は、第1開口部511によって、ヘッドバンド2の長手方向に交わる方向に開口されている。
【0034】
第2開口部512は、幅広部52の長手方向端部付近の内壁面を貫通するように形成されている。第2開口部512の開口方向は、幅広部52の長手方向に向いている。すなわち、幅広部52の内部空間は、第2開口部512によって、ヘッドバンド2の長手方向に向けて開口されている。
【0035】
以上のとおり、カバー部材5の内部空間は、狭小部51においてヘッドバンド2の長手方向に交わる方向に開口されていて、幅広部52においてヘッドバンド2の長手方向に開口されている。すなわち、カバー部材5の内部空間の開口部の一部は、ヘッドバンド2の長手方向およびスライダー3のスライド移動方向に交わる方向に向けて形成されている。
【0036】
左右のイヤピース1を電気的に接続する渡りコードは、一方のイヤピース1のアーム部材11の端部とカバー部材5の第2開口部512により形成される開口からカバー部材5の内部空間に進入する。この渡りコードは、狭小部51の内部空間を通過して第1開口部511を通って固定部材4とヘッドバンド2の内部空間に至る。また、渡りコードは、ヘッドバンド2の内部空間から他方のイヤピース1に連なる固定部材4の内部空間と、カバー部材5の開口とアーム部材11の開口を通り抜けて他方のイヤピース1へと至る。
【0037】
すでに説明したとおり、イヤピース1側の開口部であるカバー部材5の第2開口部512は、渡りコードが進行する方向に向かって開口している。一方、ヘッドバンド2側の開口部である第1開口部511は、渡りコードが進行する方向(ヘッドバンド2の長手方向)ではなく、ヘッドバンド2の長手方向に交わる方向に向かって開口している。言い換えると、ヘッドバンド長さ調整機構において、渡りコードが配置される狭小部51の内部空間は、イヤピース1側においてはイヤピース1に向かって開口し、ヘッドバンド2側においてはヘッドバンド2の長手方向に直交する方向に向かって開口している。なお、第1開口部511は、カバー部材5の長手方向先端付近に形成されているから、スライダー3が固定部材4に固定された状態では、固定部材4とヘッドバンド2の内部空間にある。
【0038】
図6において示されるように、渡りコードである結線部材53は、第1開口部511から固定部材4側に引き出されている部分がヘッドバンド2の長手方向に直交する方向へと曲げられている。また、結線部材53は、上記引出部分においてスライダー3のスライド方向に折返され、ヘッドバンド長さ調整に対応できるようになっている。スライダー3を移動させて、イヤピース1とヘッドバンド2の距離を短くするとき、スライダー3がヘッドバンド2の内部へ進入する。このスライダー3のスライド移動にとともにカバー部材5もスライド移動する。そうすると、第1開口部511から引き出された結線部材53は、上記折り返し部分が移動することで、ヘッドバンド2の長さに対応しながらヘッドバンド2の内部空間を移動する。このとき、結線部材53には、スライダー3の移動方向に対して直交する方向に力が加わるが、固定部材4の内壁やヘッドバンド2の内壁との摩擦によって、引き出された部分はスライド移動する速度が遅くなる。そうすると、結線部材53は、スライダー3の移動方向とは逆の方向に順次湾曲しながら収納されるようになる。
【0039】
したがって、図6に示すように結線部材53は、カバー部材5によって外部に露出すること無く覆われていて、ヘッドバンド2の長さを短くするときには、カバー部材5から出た部分に形成される折り返し部がヘッドバンド2の長手方向奥側に移動する。これに伴って、結線部材53は、固定部材4とヘッドバンド2の内部空間におけるヘッドバンド2の端部方向に向けて折り返される。このように、結線部材53は、ヘッドバンド2の長さ調整に応じて、カバー部材5からヘッドバンド2等の内部空間に出た後も、重なったりからみ合ったりすること無く、スムーズに収まる。
【0040】
以上説明したヘッドホン100は、ヘッドバンド2の長さを調整するときにも結線部材53が外部に露出することなく、かつ、内部空間においてスムーズに収納される。これによって、ヘッドバンド2の長さ調整を確実かつスムーズに行えると共に、美観も保たれる。
【0041】
また、ヘッドホン100は、金属製のスライダー3と金属製のバネ43によってクリック機構を構成するので、ヘッドバンド2の長さを調整するときのスライド移動において、当該部品が摩擦により擦り減ることはなく、耐摩耗性に優れている。
【0042】
また、ヘッドホン100は、固定部材4に形成したボス42によって抜け防止構造を構成するので、部品点数を増やすことなく、確実な抜け防止構造を備えている。
【0043】
また、ヘッドホン100のスライダー3は金属製であるからヘッドバンド長さ調整機構を堅牢な構成にすることができ、かつ、長孔31によって軽量化を図ることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 イヤピース
2 ヘッドバンド
3 スライダー
4 固定部材
5 カバー部材
31 長孔
53 結線部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6