【実施例】
【0036】
以下、本発明の電気スズ及びスズ合金メッキ浴の調製例、当該調製例で得られたメッキ浴を用いて電気メッキにより半導体基板にビア充填した実施例、当該実施例で得られた基板のビア充填部でのボイドの発生度合を中心としたビア充填適性評価試験例を順次述べる。
本発明は上記調製例、実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0037】
《電気スズ及びスズ合金メッキ浴の調製例》
下記の実施例1〜
14のうち、実施例2はスズ−銀合金メッキ浴の例、実施例3はスズ−ビスマス合金メッキ浴の例、実施例4はスズ−銅合金メッキ浴の例、その他の実施例は全てスズメッキ浴の例である。
実施例1〜10は充填用有機化合物に不飽和カルボン酸(クロトン酸)と芳香族アルデヒド(ベンズアルデヒド)を併用した
例、実施例11は不飽和カルボン酸(メタクリル酸)と芳香族アルデヒド(ベンズアルデヒド)を併用した例、実施例
12は不飽和カルボン酸(クロトン酸)と芳香族ケトン(ベンザルアセトン)を併用した例、実施例
13は不飽和カルボン酸(クロトン酸)と脂肪族アルデヒド(クロトンアルデヒド)を併用した例、実施例
14は不飽和カルボン酸(クロトン酸)と芳香族カルボン酸(1−ナフトエ酸)を併用した例である。
実施例5〜10は夫々実施例1を基本としたもので、実施例5はノニオン系界面活性剤を減量した例、実施例6〜7は夫々ノニオン系界面活性剤の種類を変更した例、実施例8は2種のノニオン系界面活性剤を併用した例、実施例9は充填用有機化合物のうちの不飽和カルボン酸(クロトン酸)を減量した例、実施例10は充填用有機化合物のうちの芳香族アルデヒド(ベンズアルデヒド)を減量した例である。
【0038】
一方、下記の比較例1〜14のうち、比較例1、6、9、13はスズ−銀合金メッキ浴の例、比較例2、7、10、14はスズ−銅合金メッキ浴の例、その他の比較例は全てスズメッキ浴の例である。
比較例1〜4は従来公知のメッキ浴の例、比較例5〜7はノニオン系界面活性剤(D)を含有して本発明の充填用有機化合物(C)を含まないブランク例、比較例8〜10は本発明の充填用有機化合物(C)を含有してノニオン系界面活性剤(D)を含まないブランク例、比較例11はノニオン系界面活性剤(D)を含有して本発明で規定する成分(C)以外の有機化合物を含む例、比較例12〜14は成分(C)と界面活性剤を共存させたもので、いわば特許文献1の段落44の記述に準拠して、界面活性剤にノニオン系ではなくアニオン系界面活性剤を使用した例である。
【0039】
(1)実施例1
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
クロトン酸 2g/L
ベンズアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0040】
(2)実施例2
下記の組成で電気スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 3g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
クロトン酸 2g/L
ベンズアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0041】
(3)実施例3
下記の組成で電気スズ−ビスマス合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 80g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi2+として) 4g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化クレゾール(EO23モル) 10g/L
クロトン酸 2g/L
ベンズアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0042】
(4)実施例4
下記の組成で電気スズ−銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 0.5g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 3g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化クレゾール(EO23モル) 10g/L
クロトン酸 2g/L
ベンズアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0043】
(5)実施例5
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 15g/L
クロトン酸 2g/L
ベンズアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0044】
(6)実施例6
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化クレゾール(EO23モル) 10g/L
クロトン酸 2g/L
ベンズアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0045】
(7)実施例7
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
−エチレンジアミン(EO モル・PO モル) 10g/L
クロトン酸 2g/L
ベンズアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0046】
(8)実施例8
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレントリスチレン化フェノール(EO15モル) 5g/L
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
−エチレンジアミン(EO モル・PO モル) 3g/L
クロトン酸 2g/L
ベンズアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0047】
(9)実施例9
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
クロトン酸 1g/L
ベンズアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0048】
(10)実施例10
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
クロトン酸 2g/L
ベンズアルデヒド 0.1g/L
イオン交換水 残部
【0050】
(11)実施例11
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
メタクリル酸 2g/L
ベンズアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0051】
(12)実施例12
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
クロトン酸 1g/L
ベンザルアセトン 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0052】
(13)実施例13
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
クロトン酸 1g/L
クロトンアルデヒド 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0053】
(14)実施例14
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
クロトン酸 1g/L
1−ナフトエ酸 0.3g/L
イオン交換水 残部
【0054】
(15)比較例1
下記の組成で電気スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 70g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 1.5g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸ナトリウム 2g/L
イオン交換水 残部
【0055】
(16)比較例2
下記の組成で電気スズ−銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Cu2+として) 0.5g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 2g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化クレゾール(EO23モル) 5g/L
ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル(EO35モル) 2g/L
イオン交換水 残部
【0056】
(17)比較例3
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 115g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 8g/L
ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル(EO35モル) 2g/L
カテコール 0.5g/L
イオン交換水 残部
【0057】
(18)比較例4
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化クレゾール(EO23モル) 4g/L
ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル(EO35モル) 2g/L
カテコール 0.5g/L
イオン交換水 残部
【0058】
(19)比較例5
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 60g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 8g/L
ポリオキシエチレン分岐デシルエーテル(EO35モル) 2g/L
イオン交換水 残部
【0059】
(20)比較例6
下記の組成で電気スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 3g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
イオン交換水 残部
【0060】
(21)比較例7
下記の組成で電気スズ−銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 0.5g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 3g/L
ポリオキシエチレンジスチレン化クレゾール(EO23モル) 10g/L
イオン交換水 残部
【0061】
(22)比較例8
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 70g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
グルタルアルデヒド 0.1g/L
イオン交換水 残部
【0062】
(23)比較例9
下記の組成で電気スズ−銀合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 70g/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) 0.7g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 1.5g/L
ベンズアルデヒド 0.5g/L
イオン交換水 残部
【0063】
(24)比較例10
下記の組成で電気スズ−銅合金メッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Cu2+として) 0.5g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール 1.5g/L
ベンズアルデヒド 0.1g/L
イオン交換水 残部
【0064】
(25)比較例11
下記の組成で電気スズメッキ浴を建浴した。
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として) 100g/L
ポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル) 10g/L
クエン酸 10g/L
イオン交換水 残部
【0065】
(26)比較例12
上記実施例1を基本として、10g/Lのポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル)(=ノニオン系界面活性剤)に替えて、アニオン系界面活性剤であって特許文献1の段落44に例示されたアルキルエーテルスルホン酸塩を2g/L含有させた。
【0066】
(27)比較例13
上記実施例2を基本として、10g/Lのポリオキシエチレンクミルフェノール(EO10モル)に替えて、アニオン系界面活性剤であるアルキルエーテルスルホン酸塩を2g/L含有させた。
【0067】
(28)比較例14
上記実施例4を基本として、10g/Lのポリオキシエチレンジスチレン化クレゾール(EO23モル)(=ノニオン系界面活性剤)に替えて、アニオン系界面活性剤であるアルキルエーテルスルホン酸塩を2g/L含有させた。
【0068】
《ビアの充填実施例》
そこで、先ず、次の2種類の円形状ビア構造を有する半導体基板P、Qを準備した。
[基板P](下記の2a、4aは
図2での符号に相当)
絶縁層開口径(2a):50μm
絶縁層開口径(2a):マスク層開口径(4a)=1:2.5
絶縁層の高さ:20μm、アスペクト比:0.40
[基板Q](下記の2a、4aは
図2での符号に相当)
絶縁層開口径(2a):90μm
絶縁層開口径(2a):マスク層開口径(4a)=1:3.3
絶縁層の高さ:25μm、アスペクト比:0.20
上記基板Pは本発明のビア構造の要件を満たすものであり、基板Qは当該要件から外れたものである(絶縁層開口径に比してマスク層開口径がかなり大きい)。
但し、基板Qは絶縁層開口径に比してマスク層開口径がかなり大きいため、冒述したように、 ビア底部にまで電流が流れ易くなり電流密度の偏りが抑制され、ビア充填の際にボイドが発生し難くなる。このように、基板Qはボイドが発生し難いビア構造であるため、リードフレームなどの電気メッキに汎用される従来浴に相当する比較例1〜4を用いて評価試験を行ったが、実施例1〜
14では、電流密度の偏りが発生し易い構造の基板Pのみに絞って評価試験を行ない、ボイドが発生し難いビア構造を有する基板Qでの評価試験は行わなかった。比較例5〜14も同様である。
【0069】
次いで、各基板のビア開口部に、上記実施例1〜
14及び比較例1〜14の各電気スズ又はスズ合金メッキ浴を用いて下記の条件で電気メッキを行い、スズ又はスズ合金材料をビアに充填した。
その後、基板からマスク層を剥離して、ビア充填されたスズ又はスズ合金をリフローして突起電極を形成するのであるが、後述の評価試験では、このビア充填されたスズ又はスズ合金材料について、ボイドの有無を主眼とした充填状態を調べた。
【0070】
[電気メッキ条件]
(1)スズメッキ浴
浴温:30℃
陰極電流密度:1.0A/dm2
(2)スズ−銀合金メッキ浴
浴温:30℃
陰極電流密度:1.0A/dm2
(3)スズ−銅合金メッキ浴
浴温:30℃
陰極電流密度:1.0A/dm2
(4)スズ−ビスマス合金メッキ浴
浴温:30℃
陰極電流密度:1.0A/dm2
【0071】
《ビアの充填適性評価試験例》
ビア充填した上記基板P、Qについて、メッキ後のビア構造部を含む領域を切り出してエポキシ系樹脂にて封止し、硬化後の樹脂埋め込み試料を回転研磨機によりビア構造部が露出するまで研磨し、ビア構造部の縦断面が視認可能な状態の試料を作成した。
そして、マイクロスコープによりビア構造部の当該縦断面を観察し、ボイドの発生の有無を中心としてビア充填の優劣を評価した。
評価基準は次の通りである。
○:ボイドの発生がなく、優れた充填適性を具備していた。
×:ボイドの発生が認められ、充填適性がなかった。
【0072】
下表はその試験結果である。
尚、前述の通り、「−−」は試験を行わなかったことを意味する。
基板P 基板Q 基板P 基板Q
実施例1 ○ −− 比較例1 × ○
実施例2 ○ −− 比較例2 × ○
実施例3 ○ −− 比較例3 × ○
実施例4 ○ −− 比較例4 × ○
実施例5 ○ −− 比較例5 × −−
実施例6 ○ −− 比較例6 × −−
実施例7 ○ −− 比較例7 × −−
実施例8 ○ −− 比較例8 × −−
実施例9 ○ −− 比較例9 × −−
実施例10 ○ −− 比較例10 × −−
実施例11 ○ −− 比較例11 × −−
実施例12 ○ −− 比較例12 × −−
実施例13 ○ −− 比較例13 × −−
実施例14 ○ −− 比較例14 × −−
【0073】
《試験評価》
上表によれば、絶縁層開口径に比してマスク層開口径がかなり大きい基板Qに、従来のスズ浴に相当する比較例3〜4を適用した場合には、ビア底部とビア上部での電流密度の差異はあまりないため、ボイドの発生は認められなかった。しかしながら、絶縁層開口径に比してマスク層開口径の比率が基板Qより小さい基板Pに上記比較例3〜4を適用すると、ボイドが発生した。
同じく、従来のスズ−銀合金メッキ浴に相当する比較例1、従来のスズ−銅合金メッキ浴に相当する比較例2についても、基板Qに適用した場合にはボイドの発生はなかったが、基板Pではボイドが発生した。
一方、
図1は実施例1の電気スズメッキ浴を用いて基板Pにビア充填した際のビア開口部の縦断面視の拡大写真(倍率1000倍)であるが、同
図1によれば、絶縁層及びマスク層で囲繞されたビア開口部にボイドなしでスズが良好に充填されていることが認められる。
このように、実施例1〜
14のスズ系メッキ浴では、ビア底部とビア開口部で 電流密度に偏りが発生し易い基板Pに適用しても、ボイドが発生することはなかった。
従って、本発明のスズ及びスズ合金メッキ浴を特定のビア構造に適用した場合、従来浴ではボイドが発生したのに対して、実施例1〜
14では、 ビア上部の析出を効果的に抑制し、スズ又はスズ合金材料の析出をビア底部から優先的に進行させることができ、もってボイドを発生させずに円滑にビア充填できた。
このため、リフローし、或いはリフローせずに良好な突起電極を形成することができ、接合強度や電気特性に優れる。
【0074】
また、 ノニオン系界面活性剤(D)を含有するが本発明の充填用有機化合物(C)を含まない比較例5のスズ浴、同じく、本発明の充填用有機化合物(C)を含まない比較例 6のスズ−銀合金メッキ浴や比較例7のスズ−銅合金メッキ浴を基板Pに適用すると、夫々ボイドが発生した。
逆に、本発明の充填用有機化合物(C)を含有するがノニオン系界面活性剤(D)を含まない比較例8のスズ浴、同じく、ノニオン系界面活性剤(D)を含まない比較例9のスズ−銀合金メッキ浴や比較例10のスズ−銅合金メッキ浴をを基板Pに適用すると夫々ボイドが発生した。
従って、これらの比較例5〜10を実施例1〜
14に対比すると、特定のビア構造にボイドの発生なしに円滑にビア充填するには、 ビア上部への析出を有効に抑制するための充填用有機化合物(C)が必要であるが、その一方で、ボイドの発生を効果的に抑止するには、当該有機化合物(C)の存在だけでは足りず、ノニオン系界面活性剤(D)の共存が必要であることが判断できる。
【0075】
一方、比較例11を実施例1〜
14に対比すると、たとえノニオン系界面活性剤の共存下であっても、比較例11のような本発明で規定される以外の有機化合物を含有した場合にはボイド抑制効果はなく、ビア充填に際してボイド抑止の有効性を担保するためには、本発明の成分(C)で規定される特定の有機化合物の存在が必要であることが判断できる。
また、冒述の特許文献1の 電気スズ又はスズ合金メッキ浴には界面活性剤を添加できることが開示され、界面活性剤にはアニオン系界面活性剤が例示される(段落44)。比較例12〜14はいわばこの記述に準拠した例であり、たとえ本発明で規定される有機化合物(C)の共存下であっても、界面活性剤にノニオン系ではなく、 比較例12〜14のようなアニオン系を使用した場合にはボイド抑制効果は乏しく、ビア充填に際してボイド抑止の有効性を担保するためには、本発明で規定される有機化合物に加えて、界面活性剤の中でも特にノニオン系界面活性剤を使用することの選択的優位性が判断できる。
【0076】
他方、実施例1〜
14を詳細に検討すると、本発明の成分(C)と(D)の共存により、ボイドなしで円滑にビア充填できる電気メッキ浴は、スズメッキ浴に限らず、スズ−銀合金、スズ−銅合金、スズ−ビスマス合金などの特定のスズ合金メッキ浴であっても同じであることが分かる。
実施例1〜
14に示す通り、充填用有機化合物(C)
には、不飽和カルボン酸と芳香族アルデヒドの併用、不飽和カルボン酸と芳香族ケトンの併用、不飽和カルボン酸と脂肪族アルデヒドの併用、不飽和カルボン酸と芳香族カルボン酸の併用などの様々な選択肢がある。実施例1と9に示すように、当該成分(C)の含有量も適宜変化させることができる。
また、実施例1、3、7、8などに示すように、ノニオン系界面活性剤(D)の種類も様々な選択肢がある。実施例1と5に示すように、当該成分(D)の含有量も適宜変化させることができる。