特許第6442753号(P6442753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442753
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】密封装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/18 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   F16J15/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-238900(P2012-238900)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-88905(P2014-88905A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月16日
【審判番号】不服2017-13104(P2017-13104/J1)
【審判請求日】2017年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100096873
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 廣泰
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博明
(72)【発明者】
【氏名】守尾 亮
(72)【発明者】
【氏名】庄島 大八
【合議体】
【審判長】 平田 信勝
【審判官】 大町 真義
【審判官】 内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−27127(JP,A)
【文献】 特開2009−191920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に往復移動自在に構成された2部材のうちの一方の部材に設けられた環状の装着溝に装着されて、これら2部材間の環状隙間を封止するゴム状弾性体製の密封装置であって、外周側には、環状の外周凸部と、該外周凸部の両側に備えられる円筒面部とが設けられ、内周側には、環状の内周凸部と、該内周凸部の両側に備えられる円筒面部とが設けられている密封装置の製造方法において、
外周側に円筒面部と環状の外周凸部とが交互に複数備えられ、かつ内周側に円筒面部と環状の内周凸部とが交互に複数備えられると共に、外周側の円筒面部と内周側の円筒面部は軸線方向において同じ位置になるように備えられ、かつ外周凸部と内周凸部も軸線方向において同じ位置になるように備えられるゴム状弾性体製の筒状の成形体を成形する工程と、
前記成形体に対して、外周側の各円筒面部に沿ってそれぞれ突切りを行う工程と、
を含む密封装置の製造方法であって、
前記成形する工程においては、
略円柱状の中型と、略円筒状の外型と、これらの型の下側に設けられる下型とを有する金型機構により前記筒状の成形体を成形すると共に、
前記金型機構により前記成形体が成形された後に、該成形体を前記外型の内側に保持させた状態で、前記下型と共に前記中型を移動させ、その後、前記外型から前記成形体を取り出すことを特徴とする密封装置の製造方法。
【請求項2】
相対的に往復移動自在に構成された2部材のうちの一方の部材に設けられた環状の装着溝に装着されて、これら2部材間の環状隙間を封止するゴム状弾性体製の密封装置であって、外周側には、環状の外周凸部と、該外周凸部の両側に備えられる円筒面部とが設けられ、内周側には、環状の内周凸部と、該内周凸部の両側に備えられる円筒面部とが設けられている密封装置の製造方法において、
外周側に円筒面部と環状の外周凸部とが交互に複数備えられ、かつ内周側に円筒面部と環状の内周凸部とが交互に複数備えられると共に、外周側の円筒面部と内周側の円筒面部は軸線方向において同じ位置になるように備えられ、かつ外周凸部と内周凸部も軸線方向において同じ位置になるように備えられるゴム状弾性体製の筒状の成形体を成形する工程と、
前記成形体に対して、外周側の各円筒面部に沿ってそれぞれ突切りを行う工程と、
を含む密封装置の製造方法であって、
前記成形する工程においては、
略円柱状の中型と、略円筒状の外型と、これらの型の下側に設けられる下型とを有する金型機構により前記筒状の成形体を成形すると共に、
前記金型機構により前記成形体が成形された後に、該成形体を前記中型の外側に保持させた状態で、前記下型と共に前記中型を移動させ、その後、前記中型から前記成形体を取り出すことを特徴とする密封装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に往復移動自在に構成された2部材間の環状隙間を封止する密封装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相対的に往復移動自在に構成された2部材間の環状隙間を封止するゴム状弾性体製の密封装置が知られている。かかる密封装置は、2部材のうちの一方の部材に設けられた環状の装着溝に装着され、他方の部材に対して摺動するように用いられる。なお、このような密封装置としては、断面がD字形状のいわゆるDリングや、断面が矩形の角リングに対して、摺動側に環状の凸部が形成されたものなどが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような密封装置において、特に内径が大きな密封装置の場合には、コストや生産効率の観点から、一つ一つの密封装置を個別に成形するよりも、一つの成形体に対して突切りを行うようにして製造する方が優位である。
【0004】
しかしながら、環状の凸部が内周側に設けられる密封装置の場合において、上記突切りを行おうとした場合、環状の凸部の位置を認識するのが難しいため、突切りを行う位置の精度を高くするのが難しいという問題がある(特許文献2参照)。
【0005】
また、上記のようなDリングなどの密封装置の場合、密封装置の本体部分が装着溝内で拘束されて変形しにくいため、摺動抵抗が高くなり易いという欠点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−222169号公報
【特許文献2】特許第2794568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、内周側に環状の内周凸部を有する密封装置であっても、生産効率を高めつつ突切り位置の精度を高めることを可能とする密封装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明の密封装置の製造方法は、
相対的に往復移動自在に構成された2部材のうちの一方の部材に設けられた環状の装着溝に装着されて、これら2部材間の環状隙間を封止するゴム状弾性体製の密封装置であって、外周側には、環状の外周凸部と、該外周凸部の両側に備えられる円筒面部とが設けられ、内周側には、環状の内周凸部と、該内周凸部の両側に備えられる円筒面部とが設けられている密封装置の製造方法において、
外周側に円筒面部と環状の外周凸部とが交互に複数備えられ、かつ内周側に円筒面部と環状の内周凸部とが交互に複数備えられると共に、外周側の円筒面部と内周側の円筒面部は軸線方向において同じ位置になるように備えられ、かつ外周凸部と内周凸部も軸線方向において同じ位置になるように備えられるゴム状弾性体製の筒状の成形体を成形する工程と、
前記成形体に対して、外周側の各円筒面部に沿ってそれぞれ突切りを行う工程と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、筒状の成形体に対して突切りを行うことにより、一つの成形体から複数の密封装置を得ることができる。従って、一つ一つの密封装置を個別に成形する場合に比べて、生産効率を高めることができる。また、突切りの際には、外周側の各円筒面部に沿ってそれぞれ突切りを行えば良いので、位置決めが容易であり、突切りを行う位置の精度を高くできる。従って、内周側に環状の内周凸部が必要な密封装置の場合であっても、突切りを行う位置の精度を高くできる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の密封装置の製造方法によれば、内周側に環状の内周凸部を有する密封装置であっても、生産効率を高めつつ突切り位置の精度を高めることができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の実施例1に係る密封装置の側面図である。
図2図2は本発明の実施例1に係る密封装置の平面図である。
図3図3は本発明の実施例1に係る密封装置の断面図である。
図4図4は本発明の実施例1に係る密封装置の装着溝への装着状態を示す模式的断面図である。
図5図5は本発明の実施例1に係る密封装置の使用時の様子を示す模式的断面図である。
図6図6は本発明の実施例1に係る密封装置の装着溝への装着状態を示す模式的断面図である。
図7図7は本発明の実施例1に係る密封装置の成形工程説明図である。
図8図8は本発明の実施例1に係る成形工程に用いる金型の模式的断面図である。
図9図9は本発明の実施例1に係る成形工程によって得られる成形体の一部破断断面図である。
図10図10は本発明の実施例1に係る突切り工程説明図である。
図11図11は本発明の実施例2に係る密封装置の装着溝への装着状態を示す模式的断面図である。
図12図12は本発明の実施例3に係る密封装置の装着溝への装着状態を示す模式的断面図である。
図13図13は本発明の実施例4に係る密封装置の装着溝への装着状態を示す模式的断面図である。
図14図14は本発明の実施例5に係る密封装置の装着溝への装着状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
(実施例1)
図1図10を参照して、本発明の実施例1に係る密封装置及びその製造方法について説明する。なお、本実施例に係る密封装置は、自動車におけるATやCVTなどのミッション系の往復動用の油圧シールとして好適に用いることができる。また、その他、建機や農機など、一般産業機械における往復動用のシールとしても用いることができる。
【0017】
<密封装置>
図1図3を参照して、本発明の実施例1に係る密封装置について説明する。図1は本発明の実施例1に係る密封装置の側面図であり、図2は本発明の実施例1に係る密封装置の平面図であり、図3は本発明の実施例1に係る密封装置の断面図(図2中のAA断面図)である。
【0018】
本実施例に係る密封装置100は、ゴム状弾性体製の環状の部材である。そして、密封装置100における外周側には、環状の外周凸部110と、外周凸部110の両側に備えられる円筒面部111,112とが設けられている。また、密封装置100における内周側には、環状の内周凸部120と、内周凸部120の両側に備えられる円筒面部121,122とが設けられている。
【0019】
ここで、本実施例においては、外周凸部110と内周凸部120の断面の形状寸法は同一となるように設計されている(図3参照)。また、本実施例においては、外周凸部110と内周凸部120の先端における断面形状は円弧状である。また、外周側の円筒面部111,112と内周側の円筒面部121,122は、軸線方向において同じ位置になるように設計されている。また、外周凸部110と内周凸部120も、軸線方向において同じ位置になるように設計されている。従って、密封装置100の断面形状については、径方向の中心線に対して対称形状となっている。なお、後述するように、成形時の離型性の関係で、外周凸部110または内周凸部120の一方の突出高さを低めに設定する必要があることから、本実施例での外周凸部110及び内周凸部120の突出高さは、後述する実施例の場合に比べて低めに設定されている。より具体的には、これら外周凸部110及び内周凸部120の突出高さ(円筒面部からの突出高さ)は0.2mm以上0.4mm以下の範囲で設定される。これにより、離型抵抗を小さくすることができる。
【0020】
<密封構造及び密封装置の挙動>
特に、図4及び図5を参照して、本実施例に係る密封装置100を用いた密封構造、及び密封装置100の挙動について説明する。
【0021】
本発明に係る密封装置は、相対的に往復移動自在に構成された2部材のうちの一方の部材に設けられた環状の装着溝に装着されて、これら2部材間の環状隙間を封止するために用いられる。ここでは、その一例として、相対的に往復移動自在に構成された軸200とハウジング300のうち、軸200に設けられた環状の装着溝210に装着されるように用いられる密封装置100の場合を示す。図4は本発明の実施例に係る密封装置100が
装着溝210に装着された状態を示す模式的断面図であり、図5は本発明の実施例に係る密封装置100の使用時の様子を示す模式的断面図である。
【0022】
上記の通り、本実施例に係る密封装置100の場合には、外周凸部110の突出高さを低めに設定している。そのため、外周凸部110がハウジング300の軸孔310の内周面に対して、より確実に摺動するように、密封装置100における外周側の円筒面部111,112が、装着溝210よりも飛び出すように設定されている。つまり、図4に示すように、密封装置100が装着溝210に装着された状態において、溝底面から円筒面部111,112までの距離aが、装着溝210の深さbよりも長くなるように設定している。また、円筒面部111,112を装着溝210よりも飛び出すように設定したことに伴い、円筒面部111,112の端部のエッジ部分が、装着溝210の外側における軸200とハウジング300との間の微小な環状隙間Sに噛み込まれてしまうことを抑制するために、装着溝210の側面と軸200表面との間には、比較的大きな面取り211を形成している。
【0023】
軸200とハウジング300が相対的に往復移動した場合には、密封装置100における外周凸部110は、ハウジング300の軸孔310の内周面によって引き摺られることにより変形する。また、本実施例に係る密封装置100の場合には、装着溝210の溝底側にも内周凸部120が設けられているため、この内周凸部120の両側の円筒面部121,122と装着溝210の溝底との間には空間が形成されている。従って、上記空間が形成されている分だけ拘束力が低くなるため、軸200とハウジング300が相対的に往復移動した場合には、装着溝210内においても密封装置100は変形する。
【0024】
なお、図5では、軸200に対してハウジング300が相対的に図中右側に移動している際の状態を示している。この状態においては、密封装置100は、装着溝210内において変形を伴いつつ、外周凸部110が軸孔310の内周面によって図中右側に引き摺られるように変形する。
【0025】
<本実施例に係る密封装置の優れた点>
本実施例に係る密封装置100によれば、外周側にも内周側にも環状の凸部(外周凸部110と内周凸部120)が設けられている。従って、外周側で摺動する用途、及び内周側で摺動する用途のいずれにも適用可能である。つまり、上記のように、軸200の装着溝210に装着させて、ハウジング300の軸孔の内周面に対して外周凸部110を摺動させる用途に用いることができるだけでなく、ハウジングの軸孔の内周に設けられた環状の装着溝に装着させて、軸の外周面に内周凸部120を摺動させる用途にも用いることができる。
【0026】
このような用途に用いる場合について、図6を参照して、簡単に説明する。図6に示す例においては、上記のように構成された密封装置100は、相対的に往復移動自在に構成された軸(不図示)とハウジング300のうち、ハウジング300に設けられた環状の装着溝310に装着される。なお、この図示の例においても、密封装置100が装着溝310に装着された状態においては、溝底面から円筒面部121,122までの距離aが、装着溝310の深さbよりも長くなるように設定される。この図示の例においても、上記の図4,5に示す用途で用いられる場合と同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0027】
そして、外周側にも内周側にも環状の凸部(外周凸部110と内周凸部120)が設けられているので、径方向の圧縮に対する反力を抑制することができる。また、上記のように、内周凸部120の両側の円筒面部121,122と装着溝210の溝底との間には、空間が形成されている分だけ拘束力が低くなり、装着溝210内においても、密封装置1
00は変形し易くなる。つまり、密封装置100の追随性が高くなる。これらのことが相俟って、相乗効果的に摺動抵抗を低減させることができる。従って、密封装置100の摺動摩耗を抑制し、耐久性を高めることができる。例えば、密封装置100がCVTにおける往復動油圧シールとして用いられた場合には、CVTプーリー等による微小幅のストロークが発生する条件下においても、摺動部への油膜の形成がより確実に行われ、摺動抵抗を低減させることができる。なお、密封装置100を内周側で摺動する用途で用いた場合でも同様のメカニズムとなり、同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0028】
また、外周凸部110の両側には円筒面部111,112が設けられているので、装着溝210の外側における微小な環状隙間Sに環状の外周凸部110がはみ出してしまうことを抑制できる。なお、密封装置100を内周側で摺動する用途で用いた場合でも同様のメカニズムとなり、同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0029】
更に、本実施例に係る密封装置100の場合には、外周凸部110と内周凸部120の断面の形状寸法は同一となるように設計され、当該断面形状については、径方向の中心線に対して対称形状となっている。従って、表裏が裏返ったまま使用されてしまっても、正常に用いられた場合と同等の機能を得ることができる。
【0030】
なお、本実施例に係る密封装置100の場合には、後述する他の実施例の場合に比べて、内周凸部120の突出高さを高めに設定している。そのため、他の実施例の場合に比べて、装着溝210内での密封装置100の変形量を大きくすることができ、追随性を高くすることができる。
【0031】
<密封装置の製造方法>
図7図10を参照して、本実施例に係る密封装置100の製造方法について説明する。本実施例に係る製造方法においては、一つ一つの密封装置を個別に成形するのではなく、成形体を成形した後に、この成形体に対して突切りを行うことで、一つの成形体から複数の密封装置が得られるようにしている。以下、成形工程と突切り工程について説明する。
【0032】
<<成形工程>>
図7図9を参照して、成形工程について説明する。図7は本発明の実施例1に係る密封装置の成形工程説明図であり、図8は本発明の実施例1に係る成形工程に用いる金型の模式的断面図である。なお、図7においては、成形装置全体を断面的(縦に切断した断面)にて示しており、図8においては金型の横断面を示している。また、図9は本発明の実施例1に係る成形工程によって得られる成形体の一部破断断面図である。
【0033】
本実施例においては、射出成形によって、成形体100aを成形している。射出成形については、公知技術であるので、その詳細な説明は省略する。なお、本実施例においては、スクリュー式射出成形機500によって、成形体100aを成形している。このスクリュー式射出成形機500は、概略、生地150を溶融させた状態としながら射出する射出機構510と、射出機構510によってキャビティC内に射出された溶融状態のゴム材料を成形する金型機構520とから構成される。金型機構520は、略円柱状の中型521と、略円筒状の外型522と、これらの型の下側に設けられる下型523とを備えている。
【0034】
成形を行う場合には、型締めが完了した後に、射出機構510によって、キャビティC内に溶融材料を射出する。そして、材料が硬化し、金型を冷却した後、下型523と共に、中型521を図中下方向に移動させる。この際、成形体100aは、外型522の内側に保持されたままになる場合と、中型521の外側に保持されて、中型521と共に図中
下方向に移動する場合があり得る。つまり、密封装置100において、外周凸部110の突出高さと内周凸部120の突出高さとの関係で、外型522に保持されるか、中型521に保持されるかが定まる。本実施例の場合には、両者の突出高さは同一に設定しており、外型522に保持されるが、後述する実施例において、外周凸部の突出高さよりも、内周凸部の突出高さの方を数倍程度高く設定している場合には、成形体100aは中型521の外側に保持されて、中型521と共に図中下方向に移動する。
【0035】
そして、本実施例の場合には、下型523と共に、中型521を図中下方向に移動させた後に、外型522の内側に保持された状態にある成形体100aを取り出す。なお、後述の実施例において、成形体100aが中型521に保持されている場合には、中型521から成形体100aを取り外すことは言うまでもない。
【0036】
以上の成形工程によって得られるゴム状弾性体製の筒状の成形体100aは、外周側に円筒面部130と環状の外周凸部110とを交互に複数備え、内周側に円筒面部140と環状の内周凸部120とを交互に複数備えている。また、外周側の円筒面部130と内周側の円筒面部140は軸線方向において同じ位置になるように備えられている。また、外周凸部110と内周凸部120も、軸線方向において同じ位置になるように備えられている。なお、以下に示す突切りを行うため、円筒面部130,140の軸線方向の幅は0.2mm以上に設定している。
【0037】
<<突切り工程>>
図10を参照して、突切り工程について説明する。図10は本発明の実施例1に係る突切り工程説明図である。
【0038】
上記の成形工程により得られた成形体100aを回転機構610に取り付けた状態で、回転機構610によって成形体100aを回転させながら、突切りバイト620によって、切断することにより密封装置100を得ることができる。ここで、成形体100aに対して、外周側の円筒面部130における軸線方向の中心位置(図10中点線部参照)に突切りバイト620の先端を押し当てることで、当該位置に沿って突切りを行う。このような突切りを全ての円筒面部130に対して順次行うことにより、一つの成形体100aから複数の密封装置100を得ることができる。
【0039】
なお、1次加硫成形品である密封装置100(成形体100a)の品質を向上させるために、突切り工程後、または突切り工程前に二次加硫を施すのが望ましい。
【0040】
<本実施例に係る密封装置の製造方法の優れた点>
本実施例に係る密封装置100の製造方法によれば、筒状の成形体100aに対して突切りを行うことにより、一つの成形体100aから複数の密封装置100を得ることができる。従って、一つ一つの密封装置を個別に成形する場合に比べて、生産効率を高めることができる。また、突切りの際には、成形体100aにおける外周側の各円筒面部130における軸線方向の中心位置に沿ってそれぞれ突切りを行えば良いので、位置決めが容易であり、突切りを行う位置の精度を高くできる。従って、内周側に環状の内周凸部120が必要な密封装置100の場合であっても、内周凸部120の位置を確認する必要がないため、突切りを行う位置の精度を高くできる。なお、本実施例においては、外周凸部110の両側に備えられる円筒面部111,112の軸線方向の長さ、及び内周凸部120の両側に備えられる円筒面部121,122の軸線方向の長さを同一寸法に設定している。そのため、円筒面部130における軸線方向の中心位置に沿ってそれぞれ突切りを行う場合を示したが、同一寸法に設定しない場合には、中心位置からずれた位置に突切りを行うことは言うまでもない。
【0041】
(実施例2)
図11には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1においては、密封装置における外周凸部と内周凸部の突出高さを等しくしていたのに対し、本実施例においては、密封装置の外周凸部の突出高さの方が内周凸部の突出高さよりも高く設定した場合の構成を示す。
【0042】
その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。また、密封装置の製造方法についても、上記実施例1の場合と同一であるので、その説明は省略する。
【0043】
図11は本発明の実施例2に係る密封装置の装着溝への装着状態を示す模式的断面図である。上記の通り、実施例1における成形工程においては、金型内において材料が硬化した後に、成形体100aを外型522の内側に保持させた状態で、下型523と共に、中型521を図7中下方向に移動させる。ここで、中型521の外周と成形体100aの内周には凹凸が形成されており、いわゆるアンダーカットが存在する。従って、成形体100aの内周凸部の突出高さを高くするほど離型抵抗が増大する。なお、中型521を移動させた後に、外型522から成形体100aを取り出す際においては、成形体100aは内側に弾性的に変形するので、外周凸部の離型性はそれほど問題にならない。以上のことから、離型性を高めるためには、成形体100aの内周凸部の突出高さは低い方がよい。なお、成形体100aの内周凸部の突出高さと密封装置100の内周凸部の突出高さが等しいことは言うまでもない。
【0044】
そこで、本実施例に係る密封装置100においては、内周凸部120Xの突出高さを低めに設定し、外周凸部110Xの突出高さを高めに設定している。より具体的には、内周凸部120Xの突出高さ(円筒面部121,122からの突出高さ)は0.1mm以上0.3mm以下、外周凸部110Xの突出高さ(円筒面部111,112からの突出高さ)は0.4mm以上0.8mm以下の範囲で設定される。
【0045】
以上のように構成される本実施例に係る密封装置100の場合においても、上記実施例1に係る密封装置100の場合と同様の作用効果を得ることができる。なお、本実施例に係る密封装置100は、軸200の装着溝210に装着させて、ハウジングの軸孔の内周面に対して外周凸部110Xを摺動させる用途に好適に用いられる。ここで、本実施例の場合、内周凸部120Xの突出高さが実施例1に比べて低いことから、離型性に関しては、実施例1の場合よりも優れている。
【0046】
また、本実施例の場合には、外周凸部110Xの突出高さを高めに設定したことで、密封装置100が装着溝210に装着された状態において、溝底面から円筒面部111,112までの距離aが、装着溝210の深さbよりも短くなるように設定することが可能となる。
【0047】
このように、上記距離aを深さbより短くすることで、円筒面部111,112の端部のエッジの部分が、装着溝210の角部と干渉し、傷付くことを抑制できる。従って、実施例1の場合のように、装着溝210の側面と軸200表面との間に、比較的大きな面取りを形成する必要がない。
【0048】
(実施例3)
図12には、本発明の実施例3が示されている。上記実施例1においては、密封装置における外周凸部と内周凸部の突出高さを等しくしていたのに対し、本実施例においては、密封装置の内周凸部の突出高さの方が外周凸部の突出高さよりも高く設定した場合の構成を示す。
【0049】
その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。また、密封装置の製造方法についても、離型時において、成形体が外型ではなく中型に保持される点以外は、上記実施例1の場合と同一であるので、その説明は適宜省略する。
【0050】
図12は本発明の実施例3に係る密封装置の装着溝への装着状態を示す模式的断面図である。本実施例に係る密封装置100においては、内周凸部120Xaの突出高さを高めに設定し、外周凸部110Xaの突出高さを低めに設定している。より具体的には、内周凸部120Xaの突出高さ(円筒面部121,122からの突出高さ)は0.4mm以上0.8mm以下、外周凸部110Xaの突出高さ(円筒面部111,112からの突出高さ)は0.1mm以上0.3mm以下の範囲で設定される。
【0051】
本実施例における成形工程においては、金型内において材料が硬化した後に、下型523と共に、中型521を図7中下方向に移動させると、成形体100aは中型521に保持されており、中型521と共に下方向に移動する。ここで、外型522の内周と成形体100aの外周には凹凸が形成されており、いわゆるアンダーカットが存在する。しかしながら、本実施例では、密封装置100の外周凸部110Xaの突出高さを低めに設定している(つまり成形体100aの外周凸部の突出高さを低めに設定している)ので、離型抵抗を低くすることができる。なお、中型521から成形体100aを取り外す際においては、成形体100aは外側に弾性的に変形させることができるので、内周凸部の離型性はそれほど問題にならない。
【0052】
以上のように構成される本実施例に係る密封装置100の場合においても、上記実施例1に係る密封装置100の場合と同様の作用効果を得ることができる。なお、本実施例に係る密封装置100は、ハウジング300の軸孔の内周に設けられた環状の装着溝310に装着させて、軸の外周面に内周凸部120Xaを摺動させる用途に好適に用いられる。
【0053】
また、本実施例の場合にも、実施例2の場合と同様に、内周凸部120Xaの突出高さを高めに設定したことで、密封装置100が装着溝310に装着された状態において、溝底面から円筒面部121,122までの距離aが、装着溝310の深さbよりも短くなるように設定することが可能となる。従って、上記実施例2の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
(実施例4)
図13には、本発明の実施例4が示されている。上記実施例1においては、密封装置における外周凸部と内周凸部の突出高さを等しくしていたのに対し、本実施例においては、密封装置の外周凸部の突出高さの方が内周凸部の突出高さよりも高く設定し、かつ内周凸部の先端を円筒面とした場合の構成を示す。
【0055】
その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。また、密封装置の製造方法についても、上記実施例1の場合と同一であるので、その説明は省略する。
【0056】
図13は本発明の実施例4に係る密封装置の装着溝への装着状態を示す模式的断面図である。本実施例に係る密封装置100においても、上記実施例2の場合と同様に、内周凸部120Yの突出高さを低めに設定し、外周凸部110Yの突出高さを高めに設定している。より具体的には、内周凸部120Yの突出高さ(円筒面部121,122からの突出高さ)は0.1mm以上0.3mm以下、外周凸部110Yの突出高さ(円筒面部111,112からの突出高さ)は0.4mm以上0.8mm以下の範囲で設定される。
【0057】
そして、本実施例に係る密封装置100の場合には、内周凸部120Yの先端を円筒面としている。
【0058】
従って、本実施例の場合にも、実施例2の場合と同様に、密封装置100が装着溝210に装着された状態において、溝底面から円筒面部111,112までの距離aが、装着溝210の深さbよりも短くなるように設定することが可能となる。
【0059】
以上のように構成される本実施例に係る密封装置100の場合においても、上記各実施例に係る密封装置100の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
また、本実施例に係る密封装置100の場合には、内周凸部120Yの先端を円筒面としているので、軸200に設けられた装着溝210に密封装置100を装着する用途に用いる場合には、上記実施例1〜3の場合に比べて、装着安定性を高めることができる。ただし、上記実施例1〜3の場合に比べて、装着溝210内において密封装置100は変形し難くなる。そのため、外周凸部110Yの摺動性は実施例1〜3の場合よりも低くなる。
【0061】
(実施例5)
図14には、本発明の実施例5が示されている。上記実施例1においては、密封装置における外周凸部と内周凸部の突出高さを等しくしていたのに対し、本実施例においては、密封装置の内周凸部の突出高さの方が外周凸部の突出高さよりも高く設定し、かつ外周凸部の先端を円筒面とした場合の構成を示す。
【0062】
その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。また、密封装置の製造方法についても、離型時において、成形体が外型ではなく中型に保持される点以外は、上記実施例1の場合と同一であるので、その説明は省略する。
【0063】
図14は本発明の実施例5に係る密封装置の装着溝への装着状態を示す模式的断面図である。本実施例に係る密封装置100においては、内周凸部120Yaの突出高さを高めに設定し、外周凸部110Yaの突出高さを低めに設定している。より具体的には、内周凸部120Yaの突出高さ(円筒面部121,122からの突出高さ)は0.4mm以上0.8mm以下、外周凸部110Yaの突出高さ(円筒面部111,112からの突出高さ)は0.1mm以上0.3mm以下の範囲で設定される。なお、本実施例における成形工程については、実施例3の場合と同様である。
【0064】
以上のように構成される本実施例に係る密封装置100の場合においても、上記各実施例に係る密封装置100の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
また、本実施例に係る密封装置100の場合には、外周凸部110Yaの先端を円筒面としているので、ハウジング300の軸孔の内周に設けられた環状の装着溝310に密封装置100を装着する用途に用いる場合には、上記実施例4の場合と同様に、装着安定性を高めることができる。
【0066】
(その他)
上記成形工程においては、射出成形を行う場合を示したが、成形体100aは他の成形方法を用いて成形してもよい。例えば、圧縮成形によって、成形体100aを成形することもできる。なお、圧縮成形は、開いている金型内のキャビティに成形材料を入れて型を閉じ、一定時間、高圧のもとに加熱して、型内の材料を硬化させた後に、型を開いて成形
品を取り出す成形方法である。また、各実施例における密封装置100自体の効果は、一つ一つの密封装置100を個別に成形した場合でも得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
100 密封装置
100a 成形体
110,110X,110Xa,110Y,110Ya 外周凸部
111,112 円筒面部
120,120X,120Xa,120Y,120Ya 内周凸部
121,122 円筒面部
130 円筒面部
140 円筒面部
150 生地
200 軸
210 装着溝
300 ハウジング
310 軸孔
500 スクリュー式射出成形機
510 射出機構
520 金型機構
521 中型
522 外型
523 下型
610 回転機構
620 突切りバイト
C キャビティ
S 環状隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14