(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の水分濃度検出ユニットの寸法関係とは異なる場合がある。
【0018】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る水分濃度検出ユニットの概略構成を示す断面図である。
図1を参照するに、本実施の形態の水分濃度検出ユニット10は、光源11と、光源位置規制部材13と、電源14と、第1の光ファイバ16と、ガス経路内蔵部材18と、ガス供給管21と、水分検出部23と、シール部材24と、水分検出部固定部材26と、第2の光ファイバ28と、受光部固定部材31と、受光部33と、電圧計測部35と、水分濃度算出部36と、を有する。
【0019】
光源11は、第1の光ファイバ16を介して、水分検出部23に特定波長の光を照射する。光源11としては、照射する光の波長を可変なものを用いるとよい。光源11としては、例えば、LEDランプを用いることができる。
多孔性金属錯体層23−2の材料として、例えば、銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートを用いる場合、光源11が照射する光の波長(特定波長)は、例えば、350nm以上650nm以下の範囲内にするとよい。
【0020】
光源11が照射する光の波長が350nm未満であると、光源11から照射され、水分検出部23を透過した透過光の強度を受光部33が受光した際、電圧を発生させることが困難となる可能性がある。
また、光源11が照射する光の波長が650nmよりも大きくなると、光源11から照射され、水分検出部23を透過した透過光の強度を受光部33が受光した際、電圧を発生させることが困難となる可能性がある。
したがって、光源11が照射する光の波長は、例えば、350nm以上650nm以下の範囲内にすることで、受光部33が透過光の強度に応じた電圧を出力することが可能となるので、受光部33が出力する電圧値(電圧出力値)を用いて、ガスに含まれる水分濃度を算出することができる。
【0021】
また、上記銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートを用いる場合、光源11が照射する光の波長は、例えば、450nm以上550nm以下がより好ましい。光源11が照射する光の波長を450nm以上550nm以下の範囲内とすることで、ガスに含まれる水分濃度をより精度良く算出することができる。
【0022】
光源位置規制部材13は、第1の光ファイバ16の他端16Bよりも下方に配置されている。光源位置規制部材13は、固定用金具(図示せず)を介して、第1の光ファイバ16の他端16Bを固定している。
光源位置規制部材13は、光源11の外形に対応した貫通部13Aを有する。貫通部13Aは、光源位置規制部材13の中央部に設けられている。貫通部13Aは、光源11が水分検出部23に特定波長の光を照射可能な状態で、光源11の位置を規制している。光源11は、光源位置規制部材13の貫通部13Aに固定されている。
電源14は、光源11のプラス端子11A及びマイナス端子11Bと電気的に接続されている。電源14から電力が供給された際、光源11は、特定波長の光を照射する。
【0023】
第1の光ファイバ16は、その一端16Aが水分検出部23を構成する多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aと対向するように配置され、他端16Bが光源11と対向するように配置されている。
第1の光ファイバ16は、所定の方向(水分検出部23から光源11に向かう方向)に延在している。第1の光ファイバ16は、第1の部分38と、第2の部分39と、を有する。第1及び第2の部分38,39は、第1の光ファイバ16の延在方向と同じ方向に延在している。
【0024】
第1の部分38は、円柱形状とされたコア部16−1のみで構成されている。第1の部分38は、第1の光ファイバ16の延在方向に設けられた挿入穴42、及び多孔性金属錯体層露出部45に配置されている。
第2の部分39は、コア部16−1と、コア部16−1の側面を覆うクラッド部16−2と、で構成されている。第2の部分39は、その一部が挿入穴42に配置されており、残りの部分がガス経路内蔵部材18の下方に配置されている。第1及び第2の部分38,39を構成するコア部16−1は、一体とされている。
【0025】
第1の光ファイバ16の一端16Aは、コア部16−1のみで構成されており、第1の光ファイバ16の他端16Bは、コア部16−1及びクラッド部16−2で構成されている。
第1の光ファイバ16の一端16Aは、ガス経路内蔵部材18の上面に対して面一とされている。第1の光ファイバ16の他端16Bを構成するコア部16−1は、光源11と対向するように配置されている。
第1の光ファイバ16の他端16Bを構成するクラッド部16−2は、光源位置規制部材13の上面に固定されている。
【0026】
第1の光ファイバ16を構成するコア部16−1は、光源11が照射する特定波長の光を伝送するとともに、伝送した該光を多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに照射する。
第1の光ファイバ16を構成するコア部16−1の直径は、例えば、0.5mm〜3mmの範囲内で適宜設定することができる。この場合、クラッド部16−2の厚さは、例えば、1mm〜3mmの範囲内で適宜設定することができる。
【0027】
このように、一端16Aが水分検出部23を構成する多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aと対向するように配置され、他端16Bが光源11と対向するように配置された第1の光ファイバ16を設けることで、光源11が照射した光を多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに効率良く照射させることができる。
【0028】
ガス経路内蔵部材18は、部材本体41と、挿入穴42と、ガス供給用経路43と、多孔性金属錯体層露出部45と、ガス排出用経路46と、を有する。
部材本体41は、柱状とされた部材である。部材本体41の一面には、シール部材24を介して、水分検出部23が配置されている。部材本体41の材料としては、例えば、ステンレス等を用いることができる。
【0029】
挿入穴42は、部材本体41の下端側から部材本体41の中心に延在するように配置された穴である。挿入穴42の一端は、部材本体41の下端から露出されている。
挿入穴42は、第1の光ファイバ16の延在方向と同じ方向に延在している。挿入穴42には、第1及び第2の部分38,39の一部が挿入されている。挿入穴42は、第2の部分39の位置を規制している。挿入穴42の直径は、例えば、第2の部分39の直径と等しくなるように構成することができる。
【0030】
ガス供給用経路43は、挿入穴42の外側に位置する部材本体41の下部を貫通し、かつ挿入穴42と交差するように配置されている。ガス供給用経路43は、挿入穴42と一体とされている。ガス供給用経路43は、挿入穴42に挿入された第1の光ファイバ16のうち、第1の部分38(言い換えれば、挿入穴42よりも縮径されたコア部16−1)を露出している。
ガス供給用経路43には、水分を含んだガスが供給される。そして、ガス供給用経路43に供給された該ガスは、第1の部分38の延在方向に案内されることで、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに供給される。
【0031】
多孔性金属錯体層露出部45は、挿入穴42上に位置する部材本体41を貫通するように設けられた凹部である。多孔性金属錯体層露出部45の上端は、部材本体41の上面から露出されている。
多孔性金属錯体層露出部45は、挿入穴42の上端と一体に構成されている。多孔性金属錯体層露出部45は、挿入穴42よりも幅広形状とされている。多孔性金属錯体層露出部45は、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aと対向するように配置されている。
【0032】
ガス排出用経路46は、多孔性金属錯体層露出部45の外側に位置する部材本体41の上部を貫通し、かつ多孔性金属錯体層露出部45と交差するように設けられている。
ガス排出用経路46は、多孔性金属錯体層露出部45と一体とされている。ガス排出用経路46は、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに供給されたガスを、多孔性金属錯体層露出部45を介して、ガス経路内蔵部材18の外側に排出するための経路である。
【0033】
ガス供給管21は、第1の部分38との間に隙間を介在させることの可能な大きさとされた管状部材である。ガス供給管21は、第2の部分39よりも上方に位置する挿入部42、及び多孔性金属錯体層露出部45に配置されている。
ガス供給管21は、挿入穴42と略同じ外径とされており、挿入部42に固定されている。ガス供給管21は、第1の部分38を収容している。ガス供給管21の上端は、部材本体41の上面に対して面一とされている。
【0034】
ガス供給管21と第1の部分38との間には、第1の部分38の延在方向に延在する環状空間51が形成されている。ガス供給管21は、ガス供給用経路43と対向する部分に切欠き部21Aを有する。
切欠き部21Aは、ガス供給用経路43に供給された水分を含むガスを環状空間51にっ導くための導入部として機能する。また、環状空間51は、ガス供給用経路43に供給されたガスを、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに案内する経路として機能する。
【0035】
第1の部分38の直径が2mmの場合、ガス供給管21の内径としては、例えば、3mmとすることができる。
ガス供給管21としては、例えば、ステンレス製のチューブを用いることができる。
【0036】
水分検出部23は、フィルタ23−1と、多孔性金属錯体層23−2と、を有する。水分検出部23は、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aが第1の光ファイバ16の一端16A及び多孔性金属錯体層露出部45と対向するとともに、シール部材24を介して、部材本体41の上面(言い換えれば、ガス経路内蔵部材18の上面)に押圧されるように配置されている。
【0037】
フィルタ23−1は、多孔性金属錯体層23−2が配置される一面23−1aを有する。フィルタ23−1の一面23−1aは、第1の光ファイバ16の一端16A及び多孔性金属錯体層露出部45と対向するように配置されている。フィルタ23−1は、光透過性を有する材料で構成されている。
フィルタ23−1としては、例えば、波長が100nm〜1000nmの光を20%以上透過させるものを用いることができる。
フィルタ23−1としては、例えば、テフロン(登録商標)製メッシュを用いることができる。
フィルタ23−1としてテフロン(登録商標)製メッシュを用いる場合、フィルタ23−1の厚さは、例えば、0.1mm〜3mmの範囲内で適宜設定することができる。
【0038】
多孔性金属錯体層23−2は、フィルタ23−1の一面23−1aを覆うように配置されている。多孔性金属錯体層23−2は、多孔性金属錯体(以下、「多孔性金属錯体A」という)で構成されている。
多孔性金属錯体Aは、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)であり、金属(以下、「金属B」という)と有機配位子(以下、「有機配位子D」という)とを含む。該金属有機構造体では、金属Bと有機配位子D(有機リガンド)とが相互作用することで、活性炭やゼオライトをはるかに超える高表面積を持つ多孔質の配位ネットワーク構造を有する。
【0039】
金属B及び有機配位子Dは、架橋構造であるため、高いガス吸脱着性能を有する。また、該架橋構造により構成された骨格には、数nm〜数十nm程度の隙間が存在しており、当該隙間にガス分子が取り込まれる。
したがって、上記金属有機構造体を用いることで、上記隙間において、可逆的なガス分子の吸脱着を短時間で繰り返すことが可能となる。
【0040】
有機配位子Dとしては、下記一般式(7)に示す構造とされたトリメシン酸、下記一般式(8)に示す構造とされたテレフタル酸、下記一般式(9)に示す構造とされたイミダゾール、下記一般式(10)に示す構造とされた1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、下記一般式(11)に示す構造とされた1,2,4,5-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、及び下記一般式(12)に示す構造とされた2-ヒドロキシテレフタル酸のうち、いずれかを含むものを用いるとよい。
【0047】
上記一般式(7)〜(12)で示されるいずれかの構造を含む有機配位子Dを用いることで、構造内に多数の空隙が生じるため、水分の吸脱着の容易な金属有機構造体を作製することができる。
ベンゼン環にカルボキシル基が2つ配位したテレフタル酸、並びにカルボキシル基が3つ配位したトリカルボン酸を有機配位子Dとして用いる場合、金属Bとしては、例えば、Zn、Cu、Co、Cr、Al、Sc、及びLiを用いることができる。
【0048】
また、テレフタル酸にのみ配位する金属Bとしては、例えば、Fe、Ni、Zr、及びBeを例示することができる。
また、トリカルボン酸にのみ配位する金属Bとしては、例えば、Cu、Nd、Sm、Mo、Tm、及びYbを例示することができる。
金属Bとしては、例えば、CuまたはCoを用いることが好ましい。このように、金属BとしてCuまたはCoを用いることで、水分の吸脱着による発色を顕著にすることができる。
【0049】
多孔性金属錯体Aとなる金属有機構造体としては、例えば、銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート(銅原子にベンゼントリカルボン酸が配位した金属錯体であるCu−BTC(Copper Benzene‐1,3,5−Tricarboxylate))を用いるとよい。
その他、コバルト原子にベンゼントリカルボン酸が配位した金属錯体であるCo−BTC、鉄原子にベンゼントリカルボン酸が配位した金属錯体であるFe−BTC、モリブテン原子にベンゼントリカルボン酸が配位した金属錯体であるMo−BTC、クロム原子にテレフタル酸が配位したCr−TPA(Chromium-Tererhthalic acid)、亜鉛原子にテレフタル酸が配位したCr−TPA等を用いてもよい。
【0050】
多孔性金属錯体Aは、水分子に対する反応に特徴がある。多孔性金属錯体Aは、水分子の可逆的な吸脱着を速やかに行うため、該水分子の濃度が変化した際、該変化の量に応じて発色度合が顕著に変化し、水分濃度の変化を速やかに検出することが可能となる。例えば、銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートの場合、青色の濃淡の発色度合が顕著に変化する。
【0051】
多孔性金属錯体A(金属有機構造体)として銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートを用いた場合、多孔性金属錯体層23−2の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下の範囲内で適宜選択することができる。
多孔性金属錯体層23−2の厚さが10μmよりも薄いと、前述の水分濃度に対する発色変化を感知しない可能性がある。多孔性金属錯体層23−2の厚さが100μmよりも厚いと、光が透過しない可能性がある。
したがって、多孔性金属錯体層23−2の厚さを10μm以上1000μm以下とすることで、光の透過を効率よく行うことが可能となる。
【0052】
上記構成とされた水分検出部23は、多孔性金属錯体層23−2に水分を含むガスが供給され、かつ光源11から特定波長の光が照射された際、該ガスに含まれる水分濃度に応じた強度の透過光を透過させる。該透過光は、第2の光ファイバ28に供給される。
【0053】
シール部材24は、リング状の部材であり、部材本体41の上面と多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aとの間に配置されている。シール部材24は、部材本体41の上面と多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aとの間から、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに供給したガスが漏れることを防止する機能を有する。
シール部材24としては、例えば、Oリング(環状パッキン)を用いることができる。
【0054】
水分検出部固定部材26は、中央部を貫通する挿入穴26Aを有した板状の部材である。挿入穴26Aは、第2の光ファイバ28の直径(外径)と略等しい大きさとされている。
水分検出部固定部材26は、挿入穴26Aが多孔性金属錯体層露出部45と対向するように、ガス経路内蔵部材18の上方に配置されている。
水分検出部固定部材26の下面26aは、挿入穴26Aの下端を塞ぐように配置されたフィルタ23−1の他面23−1bと接触している。水分検出部固定部材26の下面26aには、水分検出部23が固定されている。水分検出部固定部材26を構成する材料としては、例えば、アクリロリトリル、ブタジエン、及びスチレンが共重合したABS樹脂を用いることができる。
【0055】
第2の光ファイバ28は、その一端28A側に位置する部分が挿入穴26Aに挿入された状態で、水分検出部固定部材26に固定されている。第2の光ファイバ28の一端28Aは、フィルタ23−1の他面23−1bと接触している。第2の光ファイバ28は、第1の光ファイバ16と同じ方向に延在するように配置されている。
【0056】
第2の光ファイバ28は、コア部28−1と、クラッド部28−2と、で構成されている。コア部28−1の一端は、第1の部分38を構成するコア部16−1の一端と対向するように配置されている。
このように、第2の光ファイバ28を構成するコア部28−1の一端と、第1の部分38を構成するコア部16−1の一端と、を対向配置させることで、水分検出部23を通過した透過光をコア部28−1に効率良く導くことが可能となるので、ガスに含まれる水分の濃度を精度良く検出することができる。
【0057】
また、コア部28−1に効率良く透過光を導く観点から、コア部28−1の直径は、例えば、第1の光ファイバ16を構成するコア部16−1の直径と同じ大きさにするとよい。
コア部28−1としては、例えば、第1の光ファイバ16を構成するコア部28−2と同様な構成のものを用いることができる。
クラッド部28−2は、コア部28−1の側面を覆うように配置されている。クラッド部28−2としては、例えば、第1の光ファイバ16を構成するクラッド部16−2と同様な構成のものを用いることができる。
【0058】
受光部固定部材31は、中央部を貫通する挿入穴31Aを有した板状の部材である。挿入穴31Aは、第2の光ファイバ28の直径(外径)と略等しい大きさとされている。
挿入穴31Aには、第2の光ファイバ28の他端28B側に位置する部分が挿入されている。第2の光ファイバ28の他端28側は、挿入穴31Aに挿入された状態で、受光部固定部材31に固定されている。
受光部固定部材31は、平坦で、かつ挿入穴31Aの上端を露出する上面31aを有する。受光部固定部材31を構成する材料としては、例えば、ステンレスを用いることができる。
【0059】
受光部33は、コア部16−1、水分検出部23、及びコア部28−1を通過した透過光を受光可能な状態で、挿入穴31Aの上端を塞ぐように、受光部固定部材31の上面31aに固定されている。
これにより、受光部33は、第2の光ファイバ28、水分検出部23、及び第1の光ファイバ16を介して、光源11と対向するように配置されている。
受光部33は、電圧計測部35と電気的に接続されている。受光部33は、水分検出部23を透過した透過光を受光し、該透過光の強度に応じた電圧を発生させ、電圧を出力する。受光部33としては、例えば、フォトダイオードや光電子増倍管等を用いることができる。
【0060】
電圧計測部35は、水分濃度算出部36と電気的に接続されている。電圧計測部35は、受光部33から出力された電圧を計測し、計測した受光部33の出力電圧値を水分濃度算出部36に送信する。
水分濃度算出部36は、記憶部(図示せず)と、演算部(図示せず)と、を有する。該記憶部には、ガスに含まれる水分濃度と受光部33の出力電圧値との関係を示す検量線に関するデータ(予め取得されたデータ)が格納されている。
演算部(図示せず)では、上記検量線、及び電圧計測部35が計測した出力電圧値に基づいて、ガスに含まれる水分濃度を算出する。水分濃度算出部36としては、例えば、パーソナルコンピュータを用いることができる。
【0061】
第1の実施の形態の水分濃度検出ユニットは、光透過性を有するフィルタ23−1、及びフィルタ23−1の一面23−1aを覆う多孔性金属錯体Aよりなる多孔性金属錯体層23−2を含む水分検出部23を備え、多孔性金属錯体は、金属B、及び該金属Bと配位結合する有機配位子Dとして、上記一般式(7)〜(12)で示されるいずれかの構造を含む。
上記一般式(7)〜(12)で示されるいずれかの構造を含む有機配位子Dを備えた多孔性金属錯体Aからなる多孔性金属錯体層23−2は、数nm〜数十nm程度の隙間を有した架橋構造であるため、水分子の可逆的な吸脱着を速やかに行うことが可能となる。
【0062】
したがって、水分濃度の低いガス(例えば、10ppb以下)から水分濃度の高いガ(例えば、100ppm以上)スに切り替えて水分濃度を検出する場合や、水分濃度の高いガスから水分濃度の低いガスに切り替えて水分濃度を検出する場合においても、測定対象でないガスに含まれていた水分の影響を受けにくくなるので、ガス中に含まれる水分濃度の検出感度の信頼性を向上させることができる。
【0063】
次に、
図1を参照して、
図1に示す水分濃度検出ユニット10を用いた本実施の形態の水分濃度検出方法について説明する。
初めに、光源11を用いて、第1の光ファイバ16を介して、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに特定波長の光を照射する。
このとき、350nm以上650nm以下の範囲内、好ましくは、450nm以上550nm以下の範囲内の特定波長の光を照射するとよい。
【0064】
次いで、光源11による光の照射を継続させた状態で、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに、水分を含んだガスを供給する。このとき、水分を含んだガスは、ガス供給用経路43及び環状空間51を介して、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに供給する。
これにより、多孔性金属錯体層23−2は、該ガスに含まれる水分の濃度に応じて色が変化し、この色の変化により、水分検出部23を透過する透過光の強度が変化する。該透過光は、第2の光ファイバ28を介して、受光部33に供給される。
【0065】
その後、受光部33は、特定波長の光のうち、水分検出部23を透過した透過光を受光するとともに、該透過光の強度に応じた電圧を出力させる。
次いで、電圧計測部35を用いて、透過光の強度に応じた受光部33の出力電圧値を計測する。電圧計測部35により計測された出力電圧値は、水分濃度算出部36に送信される。
次いで、水分濃度算出部36では、水分濃度算出部36の記憶部(図示せず)に格納されたガスに含まれる水分濃度と受光部33の出力電圧値との関係を示す検量線と、電圧計測部35により計測された出力電圧値と、に基づいて、ガスに含まれていた水分濃度を算出する。
【0066】
本実施の形態の水分濃度検出方法は、光源11を用いて、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに、特定波長の光を照射する工程と、該光の照射を継続させた状態で、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに、水分を含んだガスを供給する工程と、受光部33により、特定波長の光のうち、水分検出部23を透過した透過光を受光するとともに、該透過光の強度に応じた電圧を発生(出力)させる工程と、電圧計測部35により該電圧を計測する工程と、を含み、多孔性金属錯体層23−2が、上記一般式(7)〜(12)で示されるいずれかの構造を含む有機配位子Dを備えた多孔性金属錯体Aで形成されている。
【0067】
このため、多孔性金属錯体層23−2が、水分子の可逆的な吸脱着を速やかに行うことが可能となる。
したがって、水分濃度の低いガス(例えば、10ppb以下)から水分濃度の高いガ(例えば、100ppm以上)スに切り替えて水分濃度を検出する場合や、水分濃度の高いガスから水分濃度の低いガスに切り替えて水分濃度を検出する場合においても、測定対象でないガスに含まれていた水分の影響(言い換えれば、直前に測定したガスの影響)を受けにくくなるので、ガス中に含まれる水分濃度の検出感度の信頼性を向上させることができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0069】
以下、実施例及び比較例について説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。
【0070】
(実施例)
<水分検出部の作製>
図1を参照して、水分検出部23の作製方法について説明する。
まず、厚さ1mmのテフロン(登録商標)製のフィルタ(アドバンテック株式会社製のPFO20(型番))を直径10mmの円形となるように切り出すことで、フィルタ23−1を作製した。
次いで、銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート(以下、「Cu−BTC」という)の分散液(多孔性金属錯体層23−2の材料)を作製した。該分散液は、Cu−BTCとして、BASF Ltd.社製のHKUST−1(型番)1mgをアセトン5mLに溶解させることで作製した。
【0071】
次いで、マイクロシリンジを用いて、作製した分散液を全量吸引した。次いで、フィルタフォルダとして、日本ミリポア株式会社のSX0001300(型番)を準備し、該フィルタフォルダの内部に、フィルタ23−1を配置させた。
次いで、上記フィルタフォルダにマイクロシリンジの先端を取り付け、マイクロシリンジ内に吸引された上記分散液をフィルタ23−1の一面23−1aに吹き付けた。
その後、分散液が塗布されたフィルタ23−1を自然乾燥させることで、フィルタ23−1の一面23−1aに厚さ100μmの多孔性金属錯体層23−2を形成した。このような手法により、フィルタ23−1及び多孔性金属錯体層23−2を有する水分検出部23を作製した。
【0072】
<水分濃度検出ユニットの構成>
ここで、実施例に使用した
図1に示す水分濃度検出ユニット10の構成について説明する。
光源11としては、Kingbright Electronic Co.Ltd.製のLEDランプであるL−7113QBC−D(型番)を用いた。第1及び第2の光ファイバ16,28としては、エドモンドオプティクスジャパン株式会社製の02−550(型番)を用いた。ガス供給管21としては、内径が2.0mmとされた株式会社光モール製の1433(型番)を用いた。
シール部材24としては、株式会社マスオカ製のOリングであるP−5(型番)を用いた。受光部33としては、TAOS Inc.製のTSL−257(型番)を用いた。電圧計測部35としては、日置電機株式会社製のDT4281(型番)を用いた。水分濃度算出部36としては、市販のパーソナルコンピュータを使用した。また、水分検出部23としては、上記説明した手法で作製されたものを用いた。
【0073】
<検量線の作製>
初めに、純度99.9999%とされた大陽日酸株式会社製の超高純度窒素ガスと、ベースガスが窒素ガスであって、水分濃度が100ppmとされた大陽日酸株式会社製の標準ガスと、を準備した。
次いで、超高純度窒素ガスと標準ガスとを希釈することで、水分濃度が0ppmとされた試料ガスE1、水分濃度が2ppmとされた試料ガスE2、水分濃度が4ppmとされた試料ガスE3、水分濃度が6ppmとされた試料ガスE4、水分濃度が8ppmとされた試料ガスE5、水分濃度が10ppmとされた試料ガスE6、水分濃度が20ppmとされた試料ガスE7、水分濃度が40ppmとされた試料ガスE8、水分濃度が60ppmとされた試料ガスE9、水分濃度が80ppmとされた試料ガスE10、及び水分濃度が100ppmとされた試料ガスE11を作製した。
【0074】
次いで、電源14を起動させて、光源11から、波長470nmの光を照射させた。次いで、圧力が0.1MPaとされた1000sccmの試料ガスE1を、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに供給させた。このとき、試料ガスE1には、水分が含まれていないため、多孔性金属錯体層23−2の色に変化は見られなかった。
その後、電圧計測部35を用いて、試料ガスE1が供給された水分検出部23を透過した透過光の強度に応じた受光部33の出力電圧値を測定した。この場合の出力電圧値は、0.1Vであった。
【0075】
次いで、光源11から、波長500nmの光を照射させ、その後、多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに、圧力が0.1MPaとされた1000sccmの試料ガスE2を供給させた。このとき、試料ガスE2には、2ppmの濃度の水分が含まれているため、多孔性金属錯体層23−2は青系の色に変化した。
その後、電圧計測部35を用いて、試料ガスE2が供給された水分検出部23を透過した透過光の強度に応じた受光部33の出力電圧値を測定した。この場合の電圧値は、0.12Vとなり、試料ガスE1導入時からの電圧差は0.02Vとなった。
【0076】
次いで、上述した試料ガスE2を供給させた際の受光部33の出力電圧値を求める処理と同様な処理を、試料ガスE3〜D11に対しても行った。
その結果、試料ガスE3を供給したときの受光部33の出力電圧値は0.14V(電圧差0.04V)、試料ガスE4を供給したときの受光部33の出力電圧値は0.16V(電圧差0.06V)、試料ガスE5を供給したときの受光部33の出力電圧値は0.18V(電圧差0.08V)、試料ガスE6を供給したときの受光部33の出力電圧値は0.2V(電圧差0.1V)、試料ガスE7を供給したときの受光部33の出力電圧値は0.24V(電圧差0.14V)、試料ガスE8を供給したときの受光部33の出力電圧値は0.3V(電圧差0.2V)、試料ガスE9を供給したときの受光部33の出力電圧値は0.14V(電圧差0.04V)、試料ガスE10を供給したときの受光部33の出力電圧値は0.4V(電圧差0.3V)、試料ガスE11を供給したときの受光部33の出力電圧値は0.43V(電圧差0.33V)であった。
【0077】
試料ガスE1〜D11に含まれる水分濃度と、試料ガスE1〜D11を供給したときの受光部33の電圧値と、をプロットしてグラフ化した結果を
図2に示す。
図2は、試料ガスに含まれる水分濃度と受光部の電圧出力値との関係を示す検量線のグラフである。
【0078】
<水分濃度の検出感度>
図2に示す検量線を用いて、シグナルノイズ比(S/N比)計算法により、実施例の水分濃度検出ユニット10を用いた場合の水分濃度の検出感度(検出限界)を計算した。具体的には、下記式(I)を用いて検出限界(以下、「検出限界L」という)を求めた。
下記式(I)において、Lは検出限界、Sは試料ガスのシグナル強度、Nはノイズ幅、Cは試料ガス中の水分濃度をそれぞれ示している。なお、下記式(I)では、ノイズ幅の2倍の値を検出限界Lと定義した。
【0080】
上記式(I)に、N=1mV、S=20mV、C=100ppbを代入することで、実施例の水分濃度検出ユニット10が検出可能な水分濃度が10ppb(=検出限界L)であることが分かった。
【0081】
<応答速度の評価>
次に、純度99.9999%とされた大陽日酸株式会社製の超高純度窒素ガスと、ベースガスが窒素ガスであって、水分濃度が100ppmとされた大陽日酸株式会社製の標準ガスと、を交互に多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに供給し、このとき受光部33から出力される出力電圧値を測定した。この結果を
図3に示す。
【0082】
図3は、ガスの供給開始からの経過時間と受光部の電圧出力値との関係を示すグラフである。
図3を参照するに、超高純度窒素ガスを供給させた状態から標準ガスに切り替えた場合において、受光部33の出力電圧値が標準ガスに起因する出力電圧値に切り替わる時間は、約1分程度であった。
また、標準ガスを供給させた状態から超高純度窒素ガスに切り替えた場合において、受光部33の出力電圧値が超高純度窒素ガスに起因する出力電圧値に切り替わる時間は、約3分程度であった。
【0083】
<光源から照射する光の波長の検討>
ここでは、光源11として、上述したLEDランプに替えて、照射する光の波長を変化させることが可能な株式会社インデコ製の半導体レーザ照射装置であるDL SHGpro(型番)を用いたこと以外は、上述した水分濃度検出ユニット10と同じ構成とされた装置を用いた。
そして、透過光の強度を電圧値として検出するために必要な光(半導体レーザ照射装置から照射する光)の波長域を検討した。
【0084】
このとき、水分濃度が1ppmとされた大陽日酸株式会社製の標準ガスを多孔性金属錯体層23−2の一面23−2aに供給した。
また、半導体レーザ照射装置から照射する光の波長は、350nm、375nm、400nm、425nm、450nm、475nm、500nm、525nm、550nm、575nm、600nm、625nm、650nm、675nm、及び700nmとした。そして、各波長のときに、受光部33から出力される出力電圧値を測定した。この結果を
図4に示す。
【0085】
図4は、多孔性金属錯体層に照射する光の波長と受光部の電圧出力値との関係を示すグラフである。
なお、
図4からは分かり難いが、波長が350nmのときの受光部33の電圧出力値は0.1Vあり、波長が650nmのときの受光部33の電圧出力値は0.1Vであった。また、波長が675nm及び700nmのときの受光部33の電圧出力値は0.1Vであった。
図4に示す結果から、透過光の強度を電圧値として検出するために必要な光の波長域は、350nm以上650nm以下であることが確認できた。
また、受光部33の電圧出力値を0.004V以上にするために必要な光の波長域は、450nm以上550nm以下であることが確認できた。
【0086】
(比較例1)
比較例1では、実施例で使用した銅ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートに替えて、和光純薬株式会社製の銅フタリロシアニンであるPhthalocyanine Copper(II)を用いて、多孔性金属錯体層を作製したこと以外は、同様な手法により、比較例1の水分検出部を作製した。
比較例1の多孔性金属錯体層は、実施例の多孔性金属錯体層23−2と同様な手法により作製した。また、比較例1の多孔性金属錯体層の厚さは、100μmとした。比較例1の基板としては、実施例で説明した厚さ1mmで、かつ直径10mmのテフロン(登録商標)フィルタ(ADVANTEC製のPFO20(型番))を用いた。
【0087】
次いで、
図1に示す水分濃度検出ユニット10に比較例1の水分検出部をセットし、ベースガスが窒素ガスであって、水分濃度が300ppbとされた大陽日酸株式会社製の標準ガスを比較例1の多孔性金属錯体層に供給し、このときの透過光の強度に応じた受光部33の出力電圧値を測定したところ、受光部33からの電圧の出力は確認できなかった。
同様な試験を、ベースガスが窒素ガスであって、水分濃度が500ppbとされた大陽日酸株式会社製の標準ガスと、水分濃度が1000ppbとされた大陽日酸株式会社製の標準ガスと、を用いて行った。これらの標準ガスの場合も受光部33からの電圧の出力は確認できなかった。
また、上記3種の標準ガスを用いた場合において、比較例1の多孔性金属錯体層の色の変化はみられなかった。このことから、比較例1の多孔性金属錯体層は、水分との反応により、色が変化しないことが確認できた。
【0088】
(比較例2)
初めに、特許文献1に記載された静電容量センサと同様な原理を採用したGEセンシング&インスペクション・テクノロジーズ株式会社製の水分検出センサであるMS−1と、純度99.9999%とされた大陽日酸株式会社製の超高純度窒素ガスと、ベースガスが窒素ガスであって、水分濃度が100ppmとされた大陽日酸株式会社製の標準ガスと、を準備した。
【0089】
次いで、上記超高純度窒素ガス及び標準ガスを実施例で使用した希釈器を用いて希釈して水分濃度を変化させて、水分検出センサ(MS−1)の水分濃度の検出限界を算出した。その結果、水分検出センサ(MS−1)の水分濃度の検出限界は、0.5ppm(500ppb)であった。
【0090】
次いで、水分検出センサ(MS−1)に対して、初めに超高純度窒素ガスを供給し、次いで、超高純度窒素ガスの供給を停止させた上で標準ガスを供給し、その後、標準ガスの供給を停止させた上で超高純度窒素ガスを供給し、水分検出センサ(MS−1)からの信号出力時間を連続的に測定した。
その結果、超高純度窒素ガスから標準ガスへ切り替えた場合には、水分検出センサ(MS−1)の出力信号が標準ガスに関する出力信号になるまでの時間が約30分であった。また、標準ガスから超高純度窒素ガスへ切り替えた場合には、水分検出センサ(MS−1)の出力信号が超高純度窒素ガスに関する出力信号になるまでの時間が約44分であった。
【0091】
(実施例及び比較例2の水分濃度の検出感度の評価結果のまとめ)
上記実施例及び比較例2の水分濃度の検出感度の結果から、比較例2の検出限界が0.5ppm(500ppb)であるのに対して、実施例では、検出限界が10ppbであり、実施例の水分検出部23の水分濃度の検出感度が非常に高いことが確認できた。
【0092】
(実施例及び比較例2の応答速度の評価結果のまとめ)
上記実施例及び比較例2の応答速度の結果から、超高純度窒素ガスから標準ガスへ切り替えた場合において、標準ガスに関する電圧値或いは出力信号になるまでの時間は、実施例の場合、比較例2の1/30程度の時間で済むことが確認できた。
また、標準ガスから超高純度窒素ガスへ切り替えた場合には、実施例の場合、比較例2の1/15程度の時間で済むことが確認できた。
以上の結果から、実施例の水分検出部23は、比較例2の水分検出センサ(MS−1)と比較して、ガスを切り替えた際の応答速度が非常に速いことが確認できた。