(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442775
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/206 20110101AFI20181217BHJP
B60R 21/2165 20110101ALI20181217BHJP
【FI】
B60R21/206
B60R21/2165
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-96172(P2016-96172)
(22)【出願日】2016年5月12日
(65)【公開番号】特開2017-202769(P2017-202769A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】前田 健人
(72)【発明者】
【氏名】尾臺 晋介
【審査官】
石井 孝明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−193817(JP,A)
【文献】
特開2012−158276(JP,A)
【文献】
特開2005−193820(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0124617(US,A1)
【文献】
特開2005−199810(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0071459(US,A1)
【文献】
特開2003−312432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/206
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前席シートの前方の車体の縦壁部材に物品収納ボックスが開閉可能に取り付けられた車両に用いられ、前記物品収納ボックスの下方に設置されて乗員の膝部を保護する乗員保護装置において、
衝撃の入力時に袋体を前記前席シート方向に膨張展開させるエアバッグ部と、
前記袋体を折り畳んだ状態で前記エアバッグ部が収容される収容ケースと、
前記袋体の前記前席シート側に配置され、前記袋体の膨張展開時に破断して前記袋体の前記前席シート方向の展開を許容するカバー部と、
前記エアバッグ部とともに前記収容ケースに収容され、前記袋体の膨張展開時に、前記物品収納ボックスの下端と当該下端に近接する近接部材との隙間を覆う誘導部材と、を備え、
前記カバー部の破断予定部は、前記カバー部が下開きで開口するように前記カバー部の車両上下方向の上面に設けられ、かつ前記収納ボックスの下端に対向して配置されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記物品収納ボックスは、前記前席シート側の斜め下方に揺動して開く蓋部を有し、
前記誘導部材は、前記袋体の膨張展開時に、前記蓋部の下端と当該下端に近接する前記縦壁部材との隙間を覆うように展開可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記誘導部材は、前記袋体を折り畳み状態で拘束する拘束部材を兼ねて構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記誘導部材は、前記袋体の膨張展開とともに展開する自由端を有し、
前記袋体の膨張展開時における前記カバー部の破断予定部から前記自由端までの長さは、前記破断予定部から前記物品収納ボックスの下端までの長さよりも長く設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前席シートに着座した乗員の膝部を保護する車両の乗員保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の乗員保護装置として、衝撃の入力時に前席シートの前方から袋体が膨張展開し、乗員の膝部を保護するニーエアバッグ装置を備えたものが知られている。
また、助手席の前方のインストルメントパネル等の縦壁部材には、書類や小物等の物品を収納可能な物品収納ボックスが取り付けられている。このため、助手席側にニーエアバッグ装置を設置する場合には、ニーエアバッグ装置は物品収納ボックスの下方に配置される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の乗員保護装置は、インストルメントパネルの助手席に臨む面に物品収納ボックスが下開き回動可能に取り付けられ、ニーエアバッグ装置が物品収納ボックスの回動部の下方に配置されている。
【0004】
特許文献2に記載の乗員保護装置は、インストルメントパネルの助手席に臨む面に物品収納ボックスが前後スライド可能に取り付けられ、ニーエアバッグ装置が物品収納ボックスの下方に配置されている。また、特許文献2に記載の乗員保護装置は、物品収納ボックスが、収納凹部を有するボックス本体と、ボックス本体の後部側(助手席に臨む側)に回動可能に取り付けられた蓋部と、を有している。物品収納ボックスは、助手席に乗員が着座していないときには、ボックス本体ごと前後方向にスライド可能とされ、助手席に乗員が着座しているときには、ボックス本体のスライドを禁止して蓋部を開閉できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−203232号公報
【特許文献2】特開2005−193817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの乗員保護装置の場合にも、物品収納ボックスの下端と、その下端に近接する部材の間に隙間があると、インフレータのガス圧を受けて膨張した袋体が物品収納ボックスの下端に接触する可能性が考えられるため、衝撃の入力時におけるエアバッグ部の袋体の膨張展開をより安定させることが課題となっている。本発明は、このような課題を解決することができる乗員保護装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乗員保護装置は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る乗員保護装置は、前席シートの前方の車体の縦壁部材(例えば、実施形態のインストルメントパネル2)に物品収納ボックス(例えば、実施形態の物品収納ボックス5)が開閉可能に取り付けられた車両に用いられ、前記物品収納ボックスの下方に設置されて乗員の膝部を保護する乗員保護装置において、衝撃の入力時に袋体(例えば、実施形態の袋体11)を前記前席シート方向に膨張展開させるエアバッグ部(例えば、実施形態の袋体11及びインフレータ12)と、
前記袋体を折り畳んだ状態で前記エアバッグ部が収容される収容ケース(例えば、実施形態の収容ケース13)と、前記袋体の前記前席シート側に配置され、前記袋体の膨張展開時に破断して前記袋体の前記前席シート方向の展開を許容するカバー部(例えば、実施形態のカバー部16)と、前記エアバッグ部とともに前記収容ケースに収容され、前記袋体の膨張展開時に、前記物品収納ボックスの下端と当該下端に近接する近接部材との隙間を覆う誘導部材(例えば、実施形態の誘導布17)と、を備え、
前記カバー部の破断予定部(例えば、実施形態の破断予定部15)は、前記カバー部が下開きで開口するように前記カバー部の車両上下方向の上面に設けられ、かつ前記収納ボックスの下端に対向して配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成により、衝撃の入力時にエアバッグ部の袋体が膨張展開を開始すると、誘導部材が物品収納ボックスの下端と近接部材との隙間を覆い、袋体が当該隙間部分で物品収納ボックスの下端に直接接触するのを規制される。これにより、物品収納ボックスが乗員保護装置の上方に設けられる場合においても、袋体が乗員の膝方向により安定して展開することになる。
この場合、袋体の膨張展開初期にカバー部が上部側の破断予定部で破断すると、カバー部から袋体に、当該袋体を前席シート側の斜め上方に向かわせる反力が作用し易くなる。この結果、袋体が乗員の膝部の前方にスムーズに展開するようになる。
【0009】
前記物品収納ボックスは、前記前席シート側の斜め下方に揺動して開く蓋部(例えば、実施形態の蓋部21)を有し、前記誘導部材は、前記袋体の膨張展開時に、前記蓋部の下端と当該下端に近接する前記縦壁部材との隙間を覆うように展開可能とされるようにしても良い。
この場合、物品収納ボックスの蓋部が前席シート側の斜め下方に揺動して開いているときにも、エアバッグ部の袋体が膨張展開を開始すると、誘導部材が蓋体の下端と縦壁部材との隙間を覆うようになる。この結果、下方に揺動変位した蓋体の下端に袋体が直接接触することがなくなる。
【0011】
前記誘導部材は、前記袋体を折り畳み状態で拘束する拘束部材を兼ねて構成されるようにしても良い。
この場合、誘導部材が拘束部材を兼ねるため、誘導部材と拘束部材を別々に設ける場合に比較して部品点数を削減することができる。
【0012】
前記誘導部材は、前記袋体の膨張展開とともに展開する自由端(例えば、実施形態の自由端17a)を有し、前記袋体の膨張展開時における前記カバー部の破断予定部(例えば、実施形態の破断予定部15)から前記自由端までの長さは、前記破断予定部から前記物品収納ボックスの下端までの長さよりも長く設定されるようにしても良い。
この場合、袋体の膨張展開時に、カバー部が破断予定部で破断すると、誘導部材の自由端が物品収納ボックスの下端を越えた位置まで展開する。したがって、カバー部の破断によって残された部位と、物品収納ボックスの下端との間にできる隙間が誘導部材によって確実に覆われ、袋体の安定した膨張展開が可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エアバッグ部の袋体の膨張展開時に、物品収納ボックスの下端と近接部材との隙間を覆う誘導部材を備えているため、衝撃の入力時におけるエアバッグ部の袋体の膨張展開を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の乗員保護装置を搭載した車両の助手席前部の縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の乗員保護装置を搭載した車両の物品収納ボックスが開いた状態での
図1と同様の縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の乗員保護装置を搭載した車両の
図1の一部を拡大した断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の乗員保護装置を搭載した車両の袋体の展開初期における
図3と同様の断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の乗員保護装置を搭載した車両の袋体の展開後期における
図1と同様の断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態の乗員保護装置を搭載した車両の
図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図には、車両の前方を指す矢印FRと、車両の上方を指す矢印UPが記されている。
【0016】
図1は、本実施形態に係る乗員保護装置1を搭載した車両の助手席の前方部分を断面にして示した図である。
図面において、符号2は、助手席(前席シート)の前方に配置される縦壁部材の主要部を構成するインストルメントパネルである。インストルメントパネル2は、図示しないウインドシールドガラスの下端から車体後方側に延出する上壁部2aと、上壁部2aの後端部から前部下方側に向かって湾曲して延出する縦壁部2bと、を有している。上壁部2aの下面側には、衝撃の入力時に助手席に着座した乗員の上半身を拘束する助手席用主エアバッグ装置3が設置されている。縦壁部2bの下縁には、前方側に開口する凹部4が設けられており、その凹部4に物品収納ボックス5が回動可能に取り付けられている。
【0017】
インストルメントパネル2の凹部4の下方には、衝撃の入力時に助手席に着座した乗員の膝部Nを保護するニーエアバッグ装置10が配置されている。なお、図中の符号6は、車室内のフロア部であり、符号7は、物品収納ボックス5とニーエアバッグ装置10の設置部の前方側に配置されている空調ユニットである。
【0018】
助手席用主エアバッグ装置3は、ガス圧を受けて膨張展開する袋体31と、衝撃の入力時に袋体31に高圧のガスを供給するインフレータ32と、を備え、折り畳まれた袋体31がインフレータ32とともにリテーナ33を介して車体側の固定部材に取り付けられている。インストルメントパネル2の上壁部2aには、袋体31がインフレータ32からガス圧を受けて膨張展開したときに破断する図示しない破断予定部(ティアライン)が設けられている。破断予定部を破断して上壁部2aを押し開いた袋体31は、ウインドシールドガラスの内面に当接して向きを変え助手席の着座者方向に展開する。
【0019】
物品収納ボックス5は、上方側に開口して内部に物品を収納可能なボックス本体部20と、ボックス本体部20の後面側(助手席に臨む側)に一体に設けられた蓋部21と、を備えている。ボックス本体部20と蓋部21は、インストルメントパネル2に回動可能に支持されている。ボックス本体部20と蓋部21は、インストルメントパネル2の凹部4よりも下方に位置されている回動軸線o1を中心として回動可能とされており、蓋部21は、凹部4を閉じた状態から助手席側の斜め下方に揺動することにより、凹部4を後部上方側に開放するようになっている。物品収納ボックス5は、この状態において、ボックス本体部20に対して物品の出し入れが可能となる。
【0020】
図2は、回動軸線o1を中心として物品収納ボックス5が開かれた状態を示す
図1と同様の断面図である。
物品収納ボックス5は、
図2に示すように、上方が開かれた状態において、蓋部21の下端21aが助手席側の斜め下方に変位する。
【0021】
図3は、
図1の物品収納ボックス5の一部とニーエアバッグ装置10部分を拡大して示した断面図である。また、
図4は、物品収納ボックス5が開き、かつニーエアバッグ装置10が作動を開始したときの
図4と同様の断面図である。
図3,
図4に示すように、ニーエアバッグ装置10は、ガス圧を受けて膨張展開する袋体11と、衝撃の入力時に袋体11に高圧のガスを供給するインフレータ12と、助手席方向に開口し、内部に折り畳まれた袋体11とインフレータ12を収容する収容ケース13と、を備えている。収容ケース13は、インフレータ12とともに車体側の図示しない固定部材に取り付けられている。
本実施形態においては、袋体11とインフレータ12がニーエアバッグ装置10のエアバッグ部を構成している。
【0022】
また、収容ケース13内で折り畳まれた袋体11の助手席側には、樹脂製の内装部材14が配置されている。この内装部材14は、インストルメントパネル2と一体の部材であっても、インストルメントパネル2と別の部材であっても良い。内装部材14は、凹部4の下縁部4aのほぼ下方位置に少なくとも車幅方向に延出する破断予定部15(ティアライン)が形成されている。破断予定部15は、衝撃の入力時に袋体11が膨張したときに、袋体11の展開圧力を受けて破断する。内装部材14の破断予定部15よりも下方の領域は、袋体11の助手席側を覆うカバー部16とされ、
図4に示すように、破断予定部15の破断を契機として下開きに開口するようになっている。カバー部16は、下開きに開口することによって袋体11の助手席方向の展開を許容する。破断予定部15は、カバー部16の車両上下方向の上部に設けられている。
【0023】
ところで、折り畳まれた状態で収容ケース13内に配置される袋体11は、誘導部材である誘導布17によって周囲を覆われている。誘導布17は、折り畳まれた袋体11の前後の面と上下の面を覆い、袋体11の下面に対応する部位には、縫合部等から成る破断予定部18が設けられている。
【0024】
誘導布17は、袋体11の膨張時に破断予定部18が破断することにより、袋体11の下面と後面を覆う部分が上方側に跳ね上がって展開する。誘導布17は、破断予定部18に隣接する部分を自由端17aとして車両の後部上方側に展開する。本実施形態の場合、誘導布17は、不織布等から成る柔軟な内装布17iと、内装布17iの外面側に一体に取り付けられ、摩擦係数が高く物品収納ボックス5の下端に接触したときに当該下端と接触状態を維持し易い外装布17oと、を有している。
【0025】
誘導布17は、袋体11の膨張展開時に、物品収納ボックス5の下端(蓋部21の下端21a)と、内装部材14のカバー部16が破断された端部(破断予定部15)との隙間D1を覆うように展開可能とされている。また、誘導布17は、袋体11が膨張展開しない状態(ニーエアバッグ装置10が非作動の状態)では、袋体11を折り畳み状態で拘束する拘束部材として機能している。
【0026】
誘導布17の展開時における長さは、詳細には以下のように設定されている。
即ち、誘導布17は、
図4に示すように、内装部材14のカバー部16の破断予定部15から自由端17aまでの長さL2が、破断予定部15から物品収納ボックス5の蓋部21の下端21a(蓋部21が最大に開いたときの蓋部21の下端21a)までの長さL1よりも長く設定されている。
【0027】
本実施形態に係る乗員保護装置1は、以上のような構成であるため、車両への衝撃の入力時にニーエアバッグ装置10の袋体11が膨張展開を開始すると、
図4に示すように、誘導布17が前部上方側に展開して、物品収納ボックス5の下端21aと、その下端21aに近接する部材(内装部材14)との隙間D1を覆うようになる。このため、物品収納ボックス5の蓋部21が下方に揺動変位していない場合はもとより、蓋部21が下方に揺動変位している場合であっても、袋体11が隙間D1部分で物品収納ボックス5の下端21aに直接接触することがなくなる。
【0028】
図5は、袋体11の展開後期における
図1と同様の断面を示す図である。
上述のように、袋体11の展開初期に袋体11が物品収納ボックス5の下端21aに直接接触するのを誘導布17によって規制されるため、袋体11は、
図5に示すように助手席に着座した乗員の膝部N方向に安定して展開する。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る乗員保護装置1は、ニーエアバッグ装置10の袋体11の膨張展開時に、物品収納ボックス5の下端21aと、その下端21aに近接する部材(内装部材14)との隙間D1を覆う誘導布17を備えているため、衝撃の入力時における袋体11の膨張展開を安定させることができる。
【0030】
特に、本実施形態に係る乗員保護装置1においては、物品収納ボックス5の蓋部21が助手席側の斜め下方に揺動して開く構造を採用していても、袋体11の膨張展開時に、下方に変位した蓋部21の下端21aと、内装部材14の端部との隙間D1を覆うように誘導布17が展開可能とされているため、ニーエアバッグ装置10の袋体11の膨張展開をより安定させることができる。
なお、本実施形態では、物品収納ボックス5の蓋部21が助手席側の斜め下方に揺動して開く構造を採用しているため、物品収納ボックス5の開閉作動が安定するとともに、物品収納ボックス5に対する物品の出し入れが容易になる。
【0031】
また、本実施形態に係る乗員保護装置1では、袋体11の助手席側に配置されているカバー部16が車両上下方向の上部側に破断予定部15を有しており、袋体11の膨張展開時にカバー部16が下端側を回動支点として下開きで開口するようになっている。このため、袋体11の膨張展開初期に、下開きで開口しようとするカバー部16から、袋体11に、袋体11を助手席側の斜め上方に向かわせる反力が作用し易くなる。したがって、この構成を採用することにより、袋体11が乗員の膝部Nの前方にスムーズに展開するようになる。
【0032】
さらに、本実施形態に係る乗員保護装置1においては、カバー部16の上部側に破断予定部15が配置されているとともに、カバー部16の上方に配置されている物品収納ボックス5の蓋部21がカバー部16よりも助手席側に張り出している。このため、カバー部16を破断させるための破断予定部15が助手席や運転席に着座した乗員から見え難くなる。したがって、この構成を採用した場合には、車室内の見栄えを高めることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る乗員保護装置1においては、袋体11の膨張展開時に隙間D1を覆う誘導布17が、袋体11を折り畳み状態で拘束する拘束部材を兼ねるように構成されているため、誘導布17と拘束部材を別々に設ける場合に比較して部品点数を削減することができる。したがって、この構成を採用した場合には、製品コストの削減を図ることができる。
【0034】
また、本実施形態に係る乗員保護装置1の場合、誘導布17は、袋体11の膨張展開とともに展開する自由端17aを有し、袋体11の膨張展開時におけるカバー部16の破断予定部15から誘導布17の自由端17aまでの長さL2が、破断予定部15から物品収納ボックス5の下端21aまでの長さL1よりも長く設定されている。このため、袋体11の膨張展開時にカバー部16が破断予定部15で破断したときに、破断予定部15での破断によって内装部材14に残された部位と、物品収納ボックス5の下端21aとの間にできる隙間D1が誘導布17によって確実に閉塞される。したがって、この構成を採用した場合には、袋体11の膨張展開をより安定させることができる。
【0035】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、袋体の膨張展開時に展開する誘導部材の一例として誘導布17を挙げているが、誘導部材は可撓性を有する部材であれば、布以外の材質から成るものであっても良い。
【0036】
また、上記の実施形態においては、袋体を折り畳み状態で拘束する拘束部材によって誘導部材が構成されているが、
図6に示す他の実施形態のように、拘束部材以外の部材によって誘導部材を構成するようにしても良い。
図6に示す他の実施形態では、ニーエアバッグ装置10の袋体11の助手席側を覆う内装部材14Aのカバー部16Aが誘導部材を構成している。
図6に示す実施形態の場合、カバー部16Aの破断予定部15Aがカバー部16Aの車両上下方向の下部側に設けられており、袋体11の膨張展開時に、カバー部16Aが隙間D1を覆うように上開きに開口する。これにより、袋体11の膨張展開時に袋体11が収納ボックス5の下端に直接接触するのをカバー部16Aによって規制される。なお、
図6においては、
図1〜
図5に示した実施形態と同一部分に同一符号を付してある。
【符号の説明】
【0037】
1…乗員保護装置
2…インストルメントパネル
5…物品収納ボックス
11…袋体(エアバッグ部)
13…収容ケース
14…内装部材(近接部材)
12…インフレータ(エアバッグ部)
15…破断予定部
16…カバー部
17…誘導布(誘導部材)
17a…自由端
21…蓋部
D1…隙間