(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の速度と、センサの検出結果に基づく停止位置までの距離である制動距離とに基づいて、前記停止位置で停止するための基準フィードフォワード制動力を導出する基準フィードフォワード制動力導出部と、
前記車両の速度に基づいて推定制動距離を導出し、前記導出した推定制動距離と前記制動距離との乖離を小さくするためのフィードバック制動力を導出するフィードバック制動力導出部と、
前記車両の速度と、前記制動距離との関係に基づいて、前記フィードバック制動力を低減する成分を含む補正制動力を算出する補正制動力算出部と、を含み、
前記基準フィードフォワード制動力と前記フィードバック制動力と前記補正制動力とに基づいて前記車両を前記停止位置で停止させる制御を行う自動停止制御部を備える、
車両制御装置。
前記補正制動力算出部は、前記車両の速度が所定の閾値よりも大きくかつ前記制動距離が所定の閾値よりも小さい場合、および、前記車両の速度が所定の閾値よりも小さくかつ前記制動距離が所定の閾値よりも大きい場合には、前記フィードバック制動力を低減する成分を前記補正制動力に含めない、
請求項1記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0014】
<全体構成>
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0015】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、ファインダ14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、車両センサ70と、運転操作子80と、自動運転制御ユニット100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0016】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)の任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0017】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。レーダ装置12は、FM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0018】
ファインダ14は、照射光に対する散乱光を測定し、対象までの距離を検出するLIDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)である。ファインダ14は、自車両Mの任意の箇所に一つまたは複数が取り付けられる。
【0019】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御ユニット100に出力する。また、物体認識装置16は、必要に応じて、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14の検出結果をそのまま自動運転制御ユニット100に出力してよい。カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14のうち一部または全部は、「センサ」の一例である。
【0020】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi−Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0021】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0022】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備え、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ70の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。経路決定部53により決定された地図上経路は、MPU60に出力される。また、ナビゲーション装置50は、経路決定部53により決定された地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。なお、ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。また、ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから返信された地図上経路を取得してもよい。
【0023】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61として機能し、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、経路において分岐箇所や合流箇所などが存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0024】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20を用いて他装置にアクセスすることにより、随時、アップデートされてよい。
【0025】
車両センサ70は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0026】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイールその他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御ユニット100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一方または双方に出力される。
【0027】
自動運転制御ユニット100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部140とを備える。第1制御部120および第2制御部140は、「車両制御装置」の一例である。第1制御部120と第2制御部140は、それぞれ、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。また、以下に説明する第1制御部120と第2制御部140の機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0028】
第1制御部120は、例えば、外界認識部121と、自車位置認識部122と、行動計画生成部123とを備える。行動計画生成部123は、速度決定部123Aと制動距離推定部123Bとを含む。
【0029】
外界認識部121は、カメラ10、レーダ装置12、およびファインダ14から物体認識装置16を介して入力される情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体両の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。また、外界認識部121は、カメラ10の撮像画像に基づいて、自車両Mがこれから通過するカーブの形状を認識する。外界認識部121は、カーブの形状をカメラ10の撮像画像から実平面に変換し、例えば、二次元の点列情報、或いはこれと同等なモデルを用いて表現した情報を、カーブの形状を示す情報として行動計画生部123に出力する。
【0030】
また、外界認識部121は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、外界認識部121は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、外界認識部121は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、外界認識部121は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0031】
また、外界認識部121は、物体の位置、道路区画線の位置などの認識処理において、その時点における認識精度を導出し、認識精度情報として行動計画生成部123に出力する。例えば、一定期間の制御サイクルの中で、道路区画線を認識できた頻度に基づいて、認識精度情報を生成する。また、認識精度情報は、地図との比較によって生成されてよい。例えば、第2地図情報62を参照し、カメラ10によって撮像可能な位置に一時停止位置や交差点、右左折路など(「特定の道路事象」の一例)があるにも関わらず、カメラ10の撮像画像からそれらが認識できない場合に、認識精度が低下したことを示す認識精度情報を生成してもよい。認識精度情報は、例えば、「高」、「中」、「低」の三段階で認識精度を表現した情報である。
【0032】
ここで、制御サイクルとは、車両制御装置が繰り返し処理を行う場合における、各処理の基準時点をいう。制御サイクルは、クロック信号が入力された時点であってもよいし、クロック信号を分周した時点であってもよいし、クロック信号または分周信号に対してオーバーサンプリングまたはダウンサンプリングされた時点であってもよい。
【0033】
自車位置認識部122は、例えば、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。
図2は、自車位置認識部122により走行車線L1に対する自車両Mの相対位置および姿勢が認識される様子を示す図である。自車位置認識部122は、例えば、自車両Mの基準点(例えば重心)の走行車線中央CLからの乖離OS、および自車両Mの進行方向の走行車線中央CLを連ねた線に対してなす角度θを、走行車線L1に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識する。なお、これに代えて、自車位置認識部122は、自車線L1のいずれかの側端部に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。自車位置認識部122により認識される自車両Mの相対位置は、推奨車線決定部61および行動計画生成部123に提供される。
【0034】
行動計画生成部123は、推奨車線決定部61により決定されて推奨車線を走行するように、且つ、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自動運転において順次実行されるイベントを決定する。イベントには、例えば、一定速度で同じ走行車線を走行する定速走行イベント、前走車両に追従する追従走行イベント、前走車両を追い越す追い越しイベント、障害物を回避する回避イベント、カーブを走行するカーブ走行イベント、車線変更イベント、合流イベント、分岐イベント、停止イベント、自動運転を終了して手動運転に切り替えるためのテイクオーバイベントなどがある。また、これらのイベントの実行中に、自車両Mの周辺状況(周辺車両や歩行者の存在、道路工事による車線狭窄など)に基づいて、回避のための行動が計画される場合もある。
【0035】
行動計画生成部123は、自車両Mが将来走行する目標軌道を生成する。各機能部の詳細については後述する。目標軌道は、例えば、速度決定部123A(後述)により決定された速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0036】
図3は、推奨車線に基づいて目標軌道が生成される様子を示す図である。図示するように、推奨車線は、目的地までの経路に沿って走行するのに都合が良いように設定される。行動計画生成部123は、推奨車線の切り替わり地点の所定距離手前(イベントの種類に応じて決定されてよい)に差し掛かると、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベントなどを起動する。各イベントの実行中に、障害物を回避する必要が生じた場合には、図示するように回避軌道が生成される。
【0037】
また、行動計画生成部123は、カーブ走行イベントを実行する場合、第2地図情報62に含まれる情報に基づいて目標軌道を設定したり、カメラ10の撮像画像に基づいて外界認識部121がカーブの形状を認識した認識結果に基づいて目標軌道を生成したりする。前者は、自車両Mがこれから通過するカーブの形状に関して十分な情報が第2地図情報62に含まれている場合に可能となり、後者は、十分な情報が第2地図情報62に含まれていない場合でも実行可能である。
【0038】
第2制御部140は、行動計画生成部123によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0039】
第2制御部140は、例えば、取得部141と、操舵制御部143と、速度制御部144と、自動停止制御部145を備える。
【0040】
取得部141は、行動計画生成部123により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得する。操舵制御部143は、ステアリング装置220を制御する。速度制御部144は、目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。
【0041】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECUとを備える。ECUは、走行制御部141から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0042】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、走行制御部141から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、走行制御部141から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0043】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、走行制御部141から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0044】
<速度・自動停止制御>
以下、速度決定部123A、制動距離推定部123B、速度制御部144、および自動停止制御部145の機能について説明する。速度決定部123Aは、主に、設定された速度で走行する定速走行イベントにおいて動作する。また、速度決定部123Aは、その他のイベントにおける上限速度を決定する処理を行ってもよい。制動距離推定部123Bは、主に停止イベントにおいて動作する。速度制御部144は、速度決定部123Aにより決定された目標速度に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。自動停止制御部145は、制動距離推定部123Bにより推定された推定制動距離に基づいて、自動停止制御を行う。
【0045】
[速度制御]
図4は、速度決定部123A、制動距離推定部123B、速度制御部144、および自動停止制御部145の機能について説明するための図である。
【0046】
速度決定部123Aには、設定速度V_set、認識精度情報、および実速度V_actが入力される。設定速度V_setとは、特に障害の無い状態で自車両Mが走行する最高速度であり、法定速度、乗員により設定された速度などに基づいて決定される。例えば、法定速度が80[km/h]で乗員により設定された速度が70[km/h]である場合、設定速度V_setは70[km/h]である。また、認識精度情報に関しては前述した通りである。実速度V_actは、例えば、車両センサ70に含まれる車速センサから入力された値である。
【0047】
図5は、速度決定部123Aの機能構成図である。速度決定部123Aは、例えば、認識精度に基づく補正部123Aaと、レートリミッタ部123Abと、一次遅れフィルタ処理部123Acとを備える。
【0048】
認識精度に基づく補正部123Aaは、認識精度情報に基づいて設定速度Vsecを補正する。例えば、認識精度に基づく補正部123Aaは、認識精度が「高」の場合、設定速度Vsecをそのまま出力し、認識精度が「中」の場合、設定速度Vsecに0.9を乗算して出力し、認識精度が「低」の場合、設定速度Vsecに0.75を乗算して出力するというふうに、認識精度が低下するのに応じて設定速度V_setを小さい値に補正する。以下、認識精度に基づく補正部123Aaにより補正された設定速度V_setを補正済速度Vrと称する。
【0049】
レートリミッタ部123Abは、補正済速度Vrに対して、例えば1サイクル前の値との差分を一定以下に制限する処理を行い、第1修正目標速度Vr_f1として出力する。なお、「1サイクル前の値」に代えて、「所定サイクル前の値」としてもよい。ここで、速度決定部123Aが繰り返し処理を行う際の制御サイクルを「k」で表すと、第1修正目標速度Vr_f1は式(1)で表される。式中、αはレートリミット値であり、式(2)で表されるように、実速度V_actが閾値Vth未満である場合は比較的小さいα1が用いられ、実速度V_actが閾値Vth
以上である場合は比較的大きいα2(α1<α2)が用いられる。閾値Vthは、例えば、十〜数十[km/h]程度の値である。
【0050】
Vr_f1=MIN(Vr(k),Vr(k−1)+α) …(1)
α=α1 (V_act<Vth)
=α2 (V_act≧Vth) …(2)
【0051】
一次遅れフィルタ部123Acは、第1修正目標速度Vr_f1に対して一次遅れフィルタ処理を行い、第2修正目標速度Vr_f2として出力する。
【0052】
図6は、車両の発進時および中間加速時において生成される第1修正目標速度Vr_f1および第2修正目標速度Vr_f2を例示した図である。図示するように、発進時において設定速度V_setが立ち上がった場合、第1修正目標速度Vr_f1に関しては、実速度V_actが閾値Vth未満の期間(時刻t1〜t2)においては、レートリミット値αが比較的小さいα1であるため、第1修正目標速度Vr_f1の増加率が、レートリミット値αがα2である期間(時刻t2〜t3)に比して小さくなっている。これによって、自車両Mに生じるピッチングなどの挙動を抑制し、ひいては自車位置認識部122の認識精度の低下も抑制することができる。
【0053】
一方、中間加速時において、設定速度V_setが立ち上がった場合、第1修正目標速度Vr_f1に関しては、加速前の実速度V_actが閾値Vth以上であれば、設定速度V_setに到達するまでの期間(時刻t11〜t12)において、レートリミット値αはα2で一定であるため、第1修正目標速度Vr_f1の増加率も一定である。
【0054】
第2修正目標速度Vr_f2は、第1修正目標速度Vr_f1に対して一次遅れフィルタ処理を行ったものであるため、発進時と中間加速時のそれぞれの速度変化に基づく速度の増加パターンを示している。
図6の例では、第1修正目標速度Vr_f1の加速応答性は中間加速時の方が高くなっているため、第2修正目標速度Vr_f2も同様に、加速応答性は中間加速時の方が高くなる。
【0055】
図7は、速度制御部144の機能構成図である。速度制御部144は、例えば、FF(フィードフォワード)駆動力決定部144Aと、FB(フィードバック)コントローラ144Bと、分配部144Cとを備える。
【0056】
FF駆動力決定部144Aは、例えば、第1修正目標速度Vr_f1で走行した場合の車両の走行抵抗と釣り合う駆動力を導出し、フィードフォワード駆動力Facc_FFとして出力する。フィードフォワード駆動力Facc_FFは、例えば、式(3)〜(6)に基づいて導出される。ここで、Raは空気抵抗であり、Rrはころがり抵抗であり、Reは勾配抵抗である。勾配を取得する手段が存在しない場合、Reの項は省略されてよい。また、λは空気抵抗係数であり、Sは車両前面の投影面積であり、μはころがり抵抗係数であり、mwは自車両Mの車重であり、gは重力加速度であり、θは勾配である。
【0057】
Facc_FF=Ra+Rr+Re …(3)
Ra=λ×S×(Vr_f1)
2 …(4)
Rr=μ×mw×g …(5)
Re=mw×g×sinθ …(6)
【0058】
一方、FBコントローラ144Bは、例えば、スライディングモードコントローラとして動作し、スライディングモード制御によってフィードバック駆動力Facc_FBを決定し、出力する。FBコントローラ144Bは、例えば、簡易型SMC(Sliding-Mode Controller)として動作してもよいし、適応外乱オブザーバ付SMCとして動作してもよい。なお、簡易型SMCは、PID制御に比して、オーバーシュートや振動的挙動の抑制を簡易な処理で行うことができる。また、適応外乱オブザーバ付SMCは、簡易型SMCよりもオーバーシュートや振動的挙動の抑制能力が更に優れている。
【0059】
簡易型SMCとして動作する場合、FBコントローラ144Bは、式(7)で表される切換関数σ(k)がゼロとなる状態を維持するように、第2修正目標速度Vr_f2(k)に対するフィードバック制御を行う。式中、Eは第2修正目標速度Vr_f2と実速度V_actとの偏差である。また、nは切換関数時間差であり、例えば3〜8制御サイクルに相当する値である。切換関数σ(k)がゼロとなる状態とは、偏差Eの時間的変化が、E(k)=−S×E(k−n)で表される切換直線上にある状態である。式中、Sは切換関数パラメータであり、マイナス1から0の間の値である。
【0060】
σ(k)=E(k)+S×E(k−n) …(7)
【0061】
FBコントローラ144Bは、式(8)に基づいて、フィードバック駆動力Facc_FB(t)を計算する。式中、Urch(k)は到達則入力であり、式(9)で表される。また、Uadp(k)は適応則入力であり、式(10)で表される。KrchおよびKadpは、それぞれ負の値のフィードバック係数である。このように、FBコントローラ144Bは、切換直線からの乖離を小さくするための制御を行う。
【0062】
Facc_FB(k)=Urch(k)+Uadp(k) …(8)
Urch(k)=Krch×σ(k) …(9)
【数1】
【0063】
適応外乱オブザーバ付SMCとして動作する場合、FBコントローラ144Bは、式(8)に代えて、式(11)に基づいて、フィードバック駆動力Facc_FB(k)を計算する。式中、Ueq(k)は等価制御入力であり、式(12)で表される。式中、a1、a2、b1は、式(13)で表される偏差モデルのパラメータである。また、Sは切換関数パラメータである。
【0064】
Facc_FB(k)=Urch(k)+Ueq(k) …(11)
Ueq(k)=(1/b1)×{(1−s−a1)×E(k)+(s−a2)×E(k−1)−c1(k)} …(12)
E(k+1)=a1×E(k)+b1×E(k−1)+b1+Facc_FB(k) …(13)
【0065】
また、式(12)のc1(k)は、式(14)で表される適応外乱推定値である。式中、Kidは係数であり、E_id(k)は、式(15)で表される同定誤差である。式(15)におけるE_hat(k)は、式(16)で定義される偏差推定値である。
c1(k)=c1(k−1)+Kid×E_id(k) …(14)
E_id(k)=E_hat(k)−E(k) …(15)
E_hat(k)=a1×E(k−1)+b1×E(k−2)+b1×Facc_FB(k)+c1(k−1) …(16)
【0066】
分配部144Cは、FF駆動力決定部144Aにより出力されたフィードフォワード駆動力Facc_FFと、FBコントローラ144Bにより出力されたフィードバック駆動力Facc_FBとを加算して得られる駆動力要求Facc_rqを、走行駆動力出力装置200に与える駆動力T_pt_accと、ブレーキ装置210に与えるブレーキトルクT_bk_accに分配する。具体的に、分配部144Cは、駆動力要求Facc_rqが正の値である場合(すなわち加速要求である場合)、或いはエンジンブレーキなどで実現可能な絶対値の小さい負の値である場合(すなわち比較的小さい減速要求である場合)、駆動力要求Facc_rqを駆動力T_pt_accに割り当て、そうでない場合に、駆動力要求Facc_rqの少なくとも一部をブレーキトルクT_bk_accに割り当てる。
【0067】
以上説明したように、実施形態の車両制御装置によれば、認識精度情報により示される認識精度が低下している場合、自車両Mの目標速度Vrを、設定速度V_setよりも小さい速度に決定する。この結果、周辺状況を正確に認識できているか否かに基づいて、速度を適切に制限することができる。
【0068】
[制動距離推定(その1)]
図8は、制動距離推定部123Bの構成図(その1)である。実施形態で例示する制動距離推定部123Bの機能には2パターンが存在し、そのうち
図8に示す構成を、制動距離推定部123B(1)と称する。制動距離推定部123B(1)は、例えば、推定制動距離初期値算出部123Baと、基準制動距離変化量算出部123Bbと、検出制動距離変化量算出部123Bcと、適応フィルタ係数算出部123Bdとを備える。
【0069】
推定制動距離初期値算出部123Baには、検出制動距離Dis_brk_detと、自動ブレーキフラグF_ABKとが入力される。
【0070】
検出制動距離Dis_brk_detは、外界認識部121または自車位置認識部122により検出された停止位置までの距離である。停止位置とは、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象の手前の位置をいう。外界認識部121または自車位置認識部122は、カメラ10の撮像画像等に基づいて、これらの道路事象を検出し、自車両Mから停止位置まで距離を検出して行動計画生成部123に出力する。これが検出制動距離Dis_brk_detである。
【0071】
自動ブレーキフラグF_ABKは、制動距離推定部123Bおよび自動停止制御部145による自動ブレーキ制御を行うか否かを指示するフラグ情報である。自動ブレーキフラグF_ABKが1であれば自動ブレーキ制御が行われ、自動ブレーキフラグF_ABKが0であれば自動ブレーキ制御が行われない。自動ブレーキフラグF_ABKは、行動計画生成部により設定される。これについては後述する。
【0072】
推定制動距離初期値算出部123Baは、検出制動距離Dis_brk_detと、自動ブレーキフラグF_ABKとに基づいて、推定制動距離初期値Dis_brk_det_ini(k)を算出する。推定制動距離初期値Dis_brk_det_ini(k)には、外界認識部121または自車位置認識部122により停止位置が検出され、停止位置までの距離(例えば、40[m]といった値)が検出されると、自動ブレーキ制御が終了するまで同じ値が設定される。また、推定制動距離初期値Dis_brk_det_ini(k)には、いくつかの検出値に基づき何らかの統計処理により求められた値が使用されてよい。停止位置が初めて検出された時点が、所定時点の一例である。自動ブレーキ制御は、目標の停止位置で自車両Mが停止したり、その他の割込み条件が成立した場合に終了する。推定制動距離初期値算出部123Baは、推定制動距離初期値Dis_brk_det_ini(k)を、例えば、式(17)に基づいて算出する。
【0074】
ここで、自動ブレーキフラグF_ABKの設定手法について説明する。行動計画生成部123は、例えば、式(18)に基づいて自動ブレーキフラグF_ABKを設定する。前提として、検出制動距離Dis_brk_detは、外界認識部121または自車位置認識部122により停止位置が検出されない場合、便宜上、マイナスの所定値が設定されるものとする。式(18)のうち最上段のF_ABK=1となる条件は、前回までの制御サイクルで停止位置が検出されておらず(従って、検出制動距離Dis_brk_det(k−1)はマイナス)、今回の制御サイクルで停止位置が検出され(従って、検出制動距離Dis_brk_det(k)はプラス)、且つ第1地図情報54または第2地図情報62において停止位置に相当する道路事象が存在することである。自動ブレーキフラグF_ABK(k)が1に設定されると、以降の制御サイクルk+iにおいて、第1地図情報54または第2地図情報62において停止位置に相当する道路事象が存在しなくなる場合を除き、自動ブレーキフラグF_ABK(k+i)は1に維持される。
【0076】
基準制動距離変化量算出部123Bbには、自動ブレーキフラグF_ABKと、実速度V_actとが入力される。基準制動距離変化量算出部123Bbは、例えば、式(19)に基づいて、基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)を算出する。式中、ΔTは制御周期であり、制御サイクル(k)と(k−1)との間の時間である。基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)は、制御サイクル(k)と(k−1)の間の走行距離を負の値として積算した積算値である。
【0078】
検出制動距離変化量算出部123Bcには、検出制動距離Dis_brk_detと、自動ブレーキフラグF_ABKと、推定制動距離初期値算出部123Baにより算出された推定制動距離初期値Dis_brk_det_iniとが入力される。検出制動距離変化量算出部123Bcは、例えば、式(20)に基づいて、検出制動距離変化量ΔDis_brk_det(k)を算出する。ここで、推定制動距離初期値Dis_brk_det_ini(k)は自動ブレーキ制御の間、不変であるので、検出制動距離変化量ΔDis_brk_det(k)は、検出制動距離Dis_brk_det(k)が自車両Mの走行に応じて短くなるのに応じて、絶対値が徐々に大きくなる負の値となる。検出制動距離Dis_brk_det(0)が40[m]であるとすると、検出制動距離変化量ΔDis_brk_det(k)は、0からスタートし、マイナス40[m]前後まで単調減少する値となる。
【0080】
適応フィルタ係数算出部123Bdには、推定制動距離初期値算出部123Baにより算出された推定制動距離初期値Dis_brk_det_ini(k)、基準制動距離変化量算出部123Bbにより算出された基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)、および、検出制動距離変化量算出部123Bcにより算出された検出制動距離変化量ΔDis_brk_det(k)が入力される。適応フィルタ係数算出部123Bdは、例えば、検出制動距離変化量ΔDis_brk_detと推定制動距離変化量ΔDis_brk_estの偏差を同定誤差E_BKDとし、同定誤差E_BKDの二乗値を最小化するアルゴリズム(例えば逐次型最小二乗法、固定ゲイン法など)により、適応フィルタ係数A_BKD(k)を算出する。
【0081】
適応フィルタ係数A_BKD(k)は、検出制動距離変化量ΔDis_brk_det(k)と基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)との乖離、すなわちカメラ10の撮像画像解析による検出距離の変化量と、実速度V_actの積算による基準制動距離の変化量との乖離を表す同定誤差E_BKD_id(k)を打ち消す方向に調整され、1を中心に変動する値である。
【0082】
適応フィルタ係数算出部123Bdは、例えば、例えば、式(21)および(22)に基づいて同定誤差E_BKD_id(k)を算出する。式中、Lim()は、上限値を制限するリミット関数である。リミット関数によって検出制動距離Dis_brk_detの変動成分が適応フィルタ係数A_BKDに及ぼす影響度を制限することができる。これによって、例えばブレーキ出力による自車両Mのピッチングによってカメラ10の撮像画像が揺れたことに対し、自動ブレーキ制御が過度に追従することを防止することができる。式(22)において、閾値Dthは、例えば5[m]程度の距離である。この距離は、ボンネットの存在などによって、カメラ10の撮像画像において一時停止線などが認識できなくなる限界距離である。適応フィルタ係数算出部123Bdは、検出制動距離Dis_brk_detが閾値Dth以下となると、適応フィルタ係数A_BKD(k)の更新を停止する。すなわち、適応フィルタ係数算出部123Bdは、検出制動距離Dis_brk_detが閾値Dth以下であるか否かを繰り返し判定し、閾値Dth以下になると適応フィルタ係数A_BKD(k)の更新を停止する。
【0084】
更に、適応フィルタ係数算出部123Bdは、例えば、式(23)に基づいてパラメータ更新ゲインKP(k)を算出し、同定誤差E_BKD_id(k)とパラメータ更新ゲインKP(k)とに基づいて、例えば、式(24)により適応フィルタ係数調整値dA_BKD(k)を算出する。適応フィルタ係数調整値dA_BKD(k)は、同定誤差E_BKD_id(k)にパラメータ更新ゲインKP(k)を乗算した値の積算値である。
【0086】
そして、適応フィルタ係数算出部123Bdは、式(25)に示すように、適応フィルタ係数調整値dA_BKD(k)を1に加算して適応フィルタ係数A_BKD(k)を算出する。
【0088】
制動距離推定部123B(1)は、基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)に、適応フィルタ係数A_BKDを乗算し、推定制動距離変化量ΔDis_brk_estを算出する。そして、推定制動距離初期値Dis_brk_iniに推定制動距離変化量ΔDis_brk_estを加算して、推定制動距離Dis_brk_estを算出し、自動停止制御部145に出力する。なお、基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)は、制御サイクル(k)と(k−1)の間の走行距離を負の値として積算した積算値であるので、推定制動距離Dis_brk_estは、推定制動距離初期値Dis_brk_iniから、各制御サイクルにおける走行距離積算値に適応フィルタ係数A_BKDを乗算した値を減算した距離となる。
【0089】
[制動距離推定(その2)]
図9は、制動距離推定部123Bの構成図(その2)である。
図9に示す構成を、制動距離推定部123B(2)と称する。ここでは、推定制動距離初期値算出部123Ba、基準制動距離変化量算出部123Bb、および検出制動距離変化量算出部123Bcの機能については、
図8に示すものと同様であるため、説明を省略する。制動距離推定部123B(2)は、
図8に示した適応フィルタ係数算出部123Bdに代えて、適応フィルタ補正量算出部123Beを備える。
【0090】
適応フィルタ補正量算出部123Beには、推定制動距離初期値算出部123Baにより算出された推定制動距離初期値Dis_brk_det_ini(k)、基準制動距離変化量算出部123Bbにより算出された基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)、および、検出制動距離変化量算出部123Bcにより算出された検出制動距離変化量ΔDis_brk_det(k)が入力される。適応フィルタ補正量算出部123Beは、例えば、検出制動距離変化量ΔDis_brk_detと推定制動距離変化量ΔDis_brk_estの偏差を同定誤差E_BKDとし、同定誤差E_BKDの二乗値を最小化するアルゴリズム(例えば逐次型最小二乗法、固定ゲイン法など)により、適応フィルタ補正量C_BKD(k)を算出する。
【0091】
適応フィルタ補正量C_BKD(k)は、検出制動距離変化量ΔDis_brk_det(k)と基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)との乖離、すなわちカメラ10の撮像画像解析による検出距離の変化量と、実速度V_actの積算による基準制動距離の変化量との乖離を表す同定誤差E_BKD_id(k)を打ち消す方向に調整される値である。
【0092】
適応フィルタ補正量算出部123Beは
、例えば、式(26)および(27)に基づいて同定誤差E_BKD_id(k)を算出する。式中、Lim()は、上限値を制限するリミット関数である。リミット関数によって検出制動距離Dis_brk_detの変動成分が適応フィルタ補正量C_BKDに及ぼす影響度を制限することができる。これによって、例えばブレーキ出力による自車両Mのピッチングによってカメラ10の撮像画像が揺れたことに対し、自動ブレーキ制御が過度に追従することを防止することができる。式(27)において、閾値Dthは、例えば5[m]程度の距離である。この距離は、ボンネットの存在によって、カメラ10の撮像画像において一時停止線などが認識できなくなる限界距離である。適応フィルタ係数算出部123Bdは、検出制動距離Dis_brk_detが閾値Dth以下となると、適応フィルタ補正量C_BKD(k)の更新を停止する。すなわち、適応フィルタ補正量算出部123Beは、検出制動距離Dis_brk_detが閾値Dth以下であるか否かを繰り返し判定し、閾値Dth以下になると適応フィルタ補正量C_BKDの更新を停止する。
【0094】
更に、適応フィルタ補正量算出部123Beは、例えば、同定誤差E_BKD_id(k)と、式(28)に基づいて求められるパラメータ更新ゲインKPとに基づいて、例えば、式(29)により適応フィルタ係数補正量C_BKD(k)を算出する。
【0096】
制動距離推定部123B(2)は、基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)すなわち走行距離積算値に、適応フィルタ補正量C_BKDを加算し、推定制動距離変化量ΔDis_brk_estを算出する。そして、推定制動距離初期値Dis_brk_iniに推定制動距離変化量ΔDis_brk_estを加算して、推定制動距離Dis_brk_estを算出し、自動停止制御部145に出力する。なお、基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)は、制御サイクル(k)と(k−1)の間の走行距離を負の値として積算した積算値であるので、推定制動距離Dis_brk_estは、推定制動距離初期値Dis_brk_iniから、各制御サイクルにおける走行距離積算値から適応フィルタ補正量C_BKDを減算した値を減算した距離となる。なお、適応フィルタ補正量C_BKDの符号を反転させてもよく、その場合、推定制動距離Dis_brk_estは、推定制動距離初期値Dis_brk_iniから、各制御サイクルにおける走行距離積算値に適応フィルタ補正量C_BKDを加算した値を減算した距離となる。
【0097】
図10は、実施形態における検出制動距離Dis_brk_det(k)と推定制動距離Dis_brk_est(k)の時間的変化を例示した図である。
図10では、横軸が時間を表している。図示するように、検出制動距離Dis_brk_det(k)は、自車両Mの制動によるピッチングによって振動する変動成分を含むが、制動距離推定部123Bは適応フィルタ係数A_BKDまたは適応フィルタ係数補正量C_BKD(k)の作用によって、これを滑らかに修正することができる。これによって、自動停止制御部145に、スムーズな自動ブレーキ制御を行わせることができる。
【0098】
また、検出制動距離Dis_brk_det(k)は、閾値Dthを下回る水準ではゼロ或いは消失するが、制動距離推定部123Bは閾値Dthを下回る水準では適応フィルタ係数A_BKDまたは適応フィルタ係数補正量C_BKD(k)を固定するため、停止位置との距離が閾値Dthを下回ると、専ら基準制動距離変化量ΔDis_brk_est_bs(k)を用いて推定制動距離Dis_brk_estを算出するため、自動停止制御部145に、自車両Mが停止するまでスムーズに減速を行わせることができる。
【0099】
図11は、実施形態の制動距離推定部123B(1,2)と比較例とのそれぞれによる推定制動距離の時間的変化を例示した図である。
図11では、横軸が時間を表している。比較例の手法は、検出制動距離Dis_brk_det(k)に対して一次遅れフィルタなどのフィルタ処理を適用して変動成分を抑制したものである。比較例の手法では、検出制動距離Dis_brk_det(k)の変動成分を十分に除去しようとすると、フィルタ処理による遅れが大きくなり、推定制動距離が実際の制動距離の変化に対して十分に追従することができないため、制動動作に遅れが生じる場合がある。これに対し、実施形態の制動距離推定部123B(1,2)では、検出制動距離Dis_brk_det(k)の変動成分を抑制してスムーズな停止を実現しつつ、実際の制動距離の変化に対する追従性を向上させている。この結果、より正確に停止位置で自車両Mを停止させることができる。なお、
図11における定常状態での乖離は、検出制動距離Dis_brk_det(k)をゼロとした場合の相対誤差を例示したものである。
【0100】
以上説明したように、実施形態の車両制御装置によれば、スムーズな減速によって、より正確に停止位置で自車両Mを停止させることができる。
【0101】
[自動停止制御]
図12は、自動停止制御部145の構成図である。自動停止制御部145は、例えば、走行抵抗算出部145Aと、基準FF制動力導出部145Bと、速度に基づく制動距離推定部145Cと、制動距離偏差算出部145Dと、FBコントローラ145Eと、FF制動力補正量算出部145F、分配部145Gとを備える。
【0102】
走行抵抗算出部145Aは、前述したFF駆動力決定部144Aと同様の処理を行い(但し、入力を第1修正目標速度Vr_f1から実速度V_actに置き換える)、走行抵抗力Fabk_dragを算出する。
【0103】
基準FF制動力導出部145Bには、実速度V_actと推定制動距離Dis_brk_estとが入力される。推定制動距離Dis_brk_estは、「センサの検出結果に基づく停止位置までの距離である制動距離」の一例である。基準FF制動力導出部145Bは、実速度V_actと推定制動距離Dis_brk_estとに基づいて、基準フィードフォワード制動力Fabk_FF_bsを算出する。なお、「センサの検出結果に基づく停止位置までの制動距離」は、検出制動距離Dis_brk_detであってもよく、推定制動距離Dis_brk_estと検出制動距離Dis_brk_detとの双方に基づく距離であってもよく、その他の要素が反映された距離であってもよい。また、以下の説明において、推定制動距離Dis_brk_estを用いて行われる各処理(例えば、FF制動力補正量算出部145Fなどの処理)は、推定制動距離Dis_brk_estに代えて検出制動距離Dis_brk_detを用いて行われてもよい。
【0104】
ここで、自車両Mが停止するまでの停止時間をTstop、減速度Alfaが一定と仮定すると、実速度V_act、推定制動距離Dis_brk_est、および減速度alfaとの間には、式(30)で示される関係が成立する。式(30)では、Tstop=V_act/Alfaの関係に基づいて停止時間Tstopを消去している。式(30)から、一定の減速度で停止するための要求減速度Alfa_req(k)は、式(31)で求められる。熟練した運転者の場合、ブレーキ操作による制動力は、停止までの間、一定に近い推移を示すことが分かっている。実施形態の自動停止制御部145では、減速度一定の前提で基準フィードフォワード制動力Fabk_FF_bsを導出するため、違和感の無い自動ブレーキ制御を行うことができる。
【0106】
基準FF制動力導出部145Bは、式(32)に示すように、要求減速度Alfa_req(k)に自車両Mの車重mwを乗算して基準フィードフォワード制動力Fabk_FF_bs(k)を算出する。なお、基準FF制動力導出部145Bの処理は、上記演算によって行われてもよいし、例えば、実速度V_actと推定制動距離Dis_brk_estの組み合わせに対して要求加速度Alfa_reqまたは基準フィードフォワード制動力Fabk_FF_bsが対応付けられたテーブルやマップを参照して行われてもよい。
【0108】
速度に基づく制動距離推定部145Cは、例えば、式(33)に基づいて減速度推定値Alfa_act(k)を算出し、式(34)に基づいて推定停止時間Tstop_est(k)を算出し、式(35)に基づいて推定制動距離Dis_brk_est_onV(k)を算出する。式(33)におけるΔTは制御周期であり、mは減速度算出のサンプル差(例えば3〜5程度の値)である。このようにダウンサンプリングを行うことで、ノイズへの耐性を向上させることができる。
【0110】
制動距離偏差算出部145Dは、例えば、式(36)に基づいて制動距離偏差E_dbrk(k)を算出する。
【0112】
FBコントローラ145Eは、制動距離偏差E_dbrk(k)を小さくするためのフィードバック制御を行う。FBコントローラ145Eは、例えば、式(37)で表される切換関数σ(k)がゼロとなる状態を維持するようにフィードバック制御を行う。式中、nは切換関数時間差であり、例えば3〜8制御サイクルに相当する値である。切換関数σ(k)がゼロとなる状態とは、制動距離偏差E_dbrk(k)の時間的変化が、E_dbrk(k)=−S×E_dbrk(k−n)で表される切換直線上にある状態である。式中、Sはマイナス1から0の間の値である。
【0113】
σ(k)=E_dbrk(k)+S×E_dbrk(k−n) …(37)
【0114】
FBコントローラ145Eは、式(38)に基づいて、フィードバック制動力Fabk_FB(k)を計算する。式中、Fabk_rch(k)は到達則入力であり、式(39)で表される。また、Fabk_adp(t)は適応則入力であり、式(40)で表される。KrchおよびKadpは、それぞれ負の値のフィードバック係数である。このように、FBコントローラ145Eは、切換直線からの乖離を小さくするための制御を行う。
【0116】
式(38)におけるFabk_Holdは、クリープを抑制して停車可能な所定値である。また、閾値Vthは、例えば5[km/h]程度の値である。
【0117】
図13は、FF制動力補正量算出部145Fの処理の内容について説明するための図である。FF制動力補正量算出部145Fには、実速度V_actと、推定制動距離Dis_brk_estと、自動ブレーキフラグF_ABKと、フィードバック駆動力Fabk_FBとが入力される。FF制動力補正量算出部145Fは、これらの情報に基づいて、フィードフォワード制動力補正量Dfabk_FF(k)を算出する。フィードフォワード制動力補正量Dfabk_FF(k)は、補正制動力の一例である。
【0118】
FF制動力補正量算出部145Fは、入力された実速度V_actと推定制動距離Dis_brk_estとに基づいて、速度重み関数Wsp_i(k)と制動距離重み関数Wdis_i(k)とをそれぞれ求める。ここで、例えばi=3であるが、iはその他の数であっても構わない。
【0119】
図14は、速度重み関数Wsp_i(k)の導出規則を示す図である。図示するように、速度重み関数Wsp_1(k)は、実速度V_actが閾値V1以下であれば1、閾値V1と閾値V2の間では実速度V_actの増加に応じて単調減少し、閾値V2以上ではゼロを出力する。速度重み関数Wsp_2(k)は、実速度V_actが閾値V1以下であれば0、閾値V1と閾値V2の間では実速度V_actの増加に応じて単調増加し、閾値V2と閾値V3の間では実速度V_actの増加に応じて単調減少し、閾値V3以上ではゼロとなる値を出力する。速度重み関数Wsp_3(k)は、実速度V_actが閾値V2以下であればゼロ、閾値V2と閾値V3の間では実速度V_actの増加に応じて単調増加し、閾値V3以上では1を出力する。
【0120】
図15は、制動距離重み関数Wdis_i(k)の導出規則を示す図である。図示するように、制動距離重み関数Wdis_1(k)は、(以下、原則として)、推定制動距離Dis_brk_estが閾値D1以下であれば1、閾値D1と閾値D2の間では推定制動距離Dis_brk_estの増加に応じて単調減少し、閾値D2以上ではゼロを出力する。制動距離重み関数Wdis_2(k)は、推定制動距離Dis_brk_estが閾値D1以下であれば0、閾値D1と閾値D2の間では推定制動距離Dis_brk_estの増加に応じて単調増加し、閾値D2と閾値D3の間では推定制動距離Dis_brk_estの増加に応じて単調減少し、閾値D3以上ではゼロとなる値を出力する。制動距離重み関数Wdis_3(k)は、推定制動距離Dis_brk_estが閾値D2以下であればゼロ、閾値D2と閾値D3の間では推定制動距離Dis_brk_estの増加に応じて単調増加し、閾値D3以上では1を出力する。
【0121】
図13における領域A1は、速度重み関数Wsp_1(k)と制動距離重み関数Wdis_1(k)が共にゼロでない制御領域、領域A2は、速度重み関数Wsp_2(k)と制動距離重み関数Wdis_2(k)が共にゼロでない制御領域、領域A3は、速度重み関数Wsp_3(k)と制動距離重み関数Wdis_3(k)が共にゼロでない制御領域を示している。これらの制御領域は、自動ブレーキ制御によって速度と停止位置までの距離が共に減少していく典型的な制御領域であり、細かな調整があると好ましい制御領域である。FF制動力補正量算出部145Fは、これら以外の制御領域、すなわち、実速度V_actが所定の閾値(β1)よりも大きくかつ推定制動距離Dis_brk_estが所定の閾値(β2)よりも小さい場合、および、実速度V_actが所定の閾値(β3)よりも大きくかつ推定制動距離Dis_brk_estが所定の閾値(β4)よりも小さい場合、下記のフィードバック制動力を低減する成分Fabk_FB(k−1)をフィードフォワード制動力補正量Dfabk_FF(k)に含めなくてもよい。ここで、β1≧β3であり、β2≦β4である。弱い制動力が出力されている場合にフィードバックにより制動力が変化すると乗員が不快感を覚える場合があるが、フィードフォワードの効果によりフィードバック補正量の絶対値を抑制することができる。
【0122】
更に、FF制動力補正量算出部145Fは、例えば、式(41)に基づいて、適応誤差信号Evns_ab(k)を求め、適応誤差信号Evns_ab(k)と速度重み関数Wsp_i(k)および制動距離重み関数Wdis_i(k)とに基づいて、例えば、式(42)により、局所適応誤差信号Evns_ab_ij(k)を求める。式(41)におけるFabk_FB(k−1)は、前述したフィードバック制動力の前回値である。
【0124】
そして、FF制動力補正量算出部145Fは、例えば、式(43)に基づいて、局所適応誤差信号Evns_ab_ij(k)の積算値である局所補正値Dff_abk_ij(k)を求め、式(44)に示すように、局所補正値Dff_abk_ij(k)を引数i、jについて集計してフィードフォワード制動力補正量Dfabk_FF(k)を算出する。式(43)におけるKvns_abkは適応ゲインである。
【0126】
自動停止制御部145は、基準フィードフォワード制動力Fabk_FF_bs(k)とフィードフォワード制動力補正量Dfabk_FF(k)とを加算してフィードフォワード制動力Fabk_FFを求める。そして、走行抵抗力Fabk_dragと、フィードフォワード制動力Fabk_FFとフィードバック制動力Fabk_FBとを加算して、自動ブレーキ用制動力要求Fabk_rqを算出する。
【0127】
分配部145Gは、自動ブレーキ用制動力要求Fabk_rqを、走行駆動力出力装置200に与える駆動力T_pt_abkと、ブレーキ装置210に与えるブレーキトルクT_bk_abkとに分配する。
【0128】
図16は、フィードフォワード制動力補正量Dfabk_FFを制御に加えることによる効果を説明するための図である。
図16の左図はフィードフォワード制動力補正量Dfabk_FFを制御に加えなかった場合の速度、駆動力(マイナスは制動力)、制動距離の変化を示しており、
図16の右図はフィードフォワード制動力補正量Dfabk_FFを制御に加えた場合の速度、駆動力(マイナスは制動力)、制動距離の変化を示している。図示するように、フィードフォワード制動力補正量Dfabk_FFを制御に加えた場合、停止位置の接近に対する応答性が向上し、制動距離がマイナスになる現象、すなわち停止位置を超えて自車両Mが停止するオーバーランが抑制されている。
【0129】
以上説明したように、実施形態の車両制御装置によれば、減速度一定の前提で基準フィードフォワード制動力Fabk_FF_bsを導出し、更に、制動距離偏差E_dbrk(k)を小さくするようにフィードバック制御を行うことで、正確かつスムーズな自動ブレーキ制御を行うことができる。
【0130】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0131】
例えば、上記実施形態では、目的地までの経路に沿って自動運転を行うことについて説明したが、これに限らず、道なり自動運転を行うものであってもよい。道なり自動運転とは、車線変更を行わず走行車線を維持して走行するが、カーブにおいては自動的に操舵制御を行うものである。また、操舵力の出力に関しては乗員の操作に任せ、専ら駆動・制動制御のみを自動的に行うものであってもよい。