特許第6442779号(P6442779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442779
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】MRI用ヘッドホンユニット
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20181217BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20181217BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   A61B5/055 390
   H04R17/00
   H04R1/10 102
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-187229(P2014-187229)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-59435(P2016-59435A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】501494230
【氏名又は名称】小林 興弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 興弘
【審査官】 後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−150702(JP,A)
【文献】 特開2010−227500(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0311176(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0238362(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック振動素子と、セラミック振動素子よりも振動面積が大きい非磁性体からなる振動板と、振動板の背面に配置された第一の防音材と、更にその背面に設けられた可撓性を有する屈曲板と、前記セラミック振動素子と振動板全体を覆うように振動板の外周に設けられた第三の防音材と、前記振動板の放音方向に設けられた吸音材からなる中心に穴を有する第四の防音材と、前記屈曲板の背面に設けられ該屈曲板全体を覆う大きさの吸音材で構成された第二の防音材とから構成されることを特徴とするMRI用ヘッドホンユニット。
【請求項2】
セラミック振動子、振動板、屈曲板、第一の防音材、第二の防音材、第三の防音材の全てが非磁性体で構成されることを特徴とする請求項1記載のMRI用ヘッドホンユニット。
【請求項3】
第二の防音材の外側から耳に対して振動板を押圧するようにすることを特徴とする請求項1記載のMRI用ヘッドホンユニット。
【請求項4】
第一の防音材、第二の防音材、第四の防音材のうち少なくとも第一の防音材と第二の防音材がそれぞれ吸収する音声周波通帯域が異なる材質から構成されることを特徴とする請求項1に記載のMRI用ヘッドホンユニット。
【請求項5】
第一の防音材、第二の防音材、第四の防音材は、ウレタンによって構成されることを特徴とする請求項1に記載のMRI用ヘッドホンユニット。
【請求項6】
MRIのガントリー内に装着され、被験者の耳とガントリー内壁との間で挟持され、被験者の耳に圧接されることを特徴とする請求項1に記載のMRI用ヘッドホンユニット。
【請求項7】
電気信号を供給する非磁性体から成る信号線が接続されたセラミック振動素子と、セラミック振動素子よりも表面積が大きい非磁性体からなりセラミック振動素子と一体に接着された第一の振動板と、第一の振動板と共にセラミック振動素子を挟持するように配置され、セラミック振動子と一体に接着された第二の振動板と、第二の振動板の背面に配置された前記第一、第二の振動板の外周よりも大きい外周を有する第一の防音材と、該第一の防音材の背面に設けられた可撓性を有する非磁性体から成る屈曲板と、前記屈曲板のさらに背面に設けられ吸音材で構成された第二の防音材と、前記第一の防音材の放音側に設けられ前記第一の振動板、セラミック素子、第二の振動板を貼り合わせた振動板ユニットの厚みよりもわずかに厚く構成され中央に振動板ユニットを収納できる穴を有するドーナツ型の吸音材から成る第三の吸音材と、第三の吸音材の放音側に設けられ、前記第三の吸音材の内径よりも小さな内径を有する防音材から成る第四の防音材とから構成され第一の振動板を聴取者の耳に圧接することを特徴とする非磁性体から成るMRI用ヘッドホンユニット。
【請求項8】
第一の振動板と第二の振動板はそれぞれ面積が異なっており共振周波数が異なることを特徴とする請求項7記載のMRI用ヘッドホンユニット。
【請求項9】
第一の振動板と第二の振動板はその厚みが異なっており共振周波数が異なることを特徴とする請求項7記載のMRI用ヘッドホンユニット。
【請求項10】
第一と第二の振動板はその素材を異なっており共振周波数が異なることを特徴とする請求項7記載のMRI用ヘッドホンユニット。
【請求項11】
セラミック振動子と該セラミック振動子と一体に設けられた振動板から成る発音体を有するヘッドホンユニットにおいて、前記発音体を囲繞し且つ装着状態において耳殻が挿入される空間を放音側に有する吸音材から成る防音体と、防音体の背面に設けられた可撓性材料から成る屈曲板と屈曲板の更に背面に設けられた防音材から構成されることを特徴とするMRI用ヘッドホンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI装置(Magnetic Resonance Imaging system磁気共鳴画像装置)の騒音環境下で診断を受ける被験者とMRI装置を操作する医師(検査人)との間で片方向通話及び双方向通話を行うために被験者が装着するMRI用(非磁性)ヘッドホンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MRI装置の診断性能が向上し高度な診断を行う高精細診断画像が得られるようになり多くの病院でMRI装置の導入が図られ医療分野における重要な装置として毎日多くの患者(被験者)の診断などに使われている。
【0003】
MRI装置は周知のごとく高磁場を発生させて被験者の患部に磁場を照射させる事により細胞の変化を高精細な画像で検知診断する事が出来る進んだ装置である。
【0004】
しかし高精細な画像を得る為には高磁場を発生させなくてはならない。この高磁場を発生させる為にはMRI装置のコイルに断続的に高電圧を加えて発生させるが、コイルに高電圧を断続的に与える事によりコイルに大きな電流が流れることになって同時に大きな騒音が発生する。
【0005】
現在のMRI装置は上述したようにコイルに断続的な大電流を加える方式であるため、この騒音を少なくする取り組みは種々行われているが、現時点で騒音を無くす事は困難である。
【0006】
MRIによる診断は、このようなMRIの騒音環境下において被験者の診断を行わなくてはならず、しかも通常の診断時間でも短くて15分長くて30分から40分位の時間を必要とするため、この間、被験者は固定されて動くことができない上に騒音を我慢しなくてはならないという負担を負うことになり、その苦痛は図り知れないものが有る。
【0007】
また、従来のMRI装置室には検査人である医師から被験者へ音声で情報を伝える事が出来る手段として、MRI室モニタースピーカーを設置することが提案されていたが、MRI室モニタースピーカーの場合は、MRI装置の診断が停止した状態では騒音レベルは低く静かで、被験者はMRI室モニタースピーカーにより医師の音声を聞くことが可能である。
【0008】
しかし一旦MRI装置が動作を開始する事によりMRIの騒音レベルは大きくなり医師の指示が騒音にマスキングされて被験者はMRI室モニタースピーカーで医師の音声を聞く事が困難になってしまう問題が有った。
【0009】
また、非常に高い騒音の中で、検査を行う医師から被験者に問いかけたり、「リラックスしてください」「もうすぐ終わります」などと指示を出したりしなければならないが、通常のヘッドホンは、磁性体を用いているために、MRIの画像に悪影響を及ぼすなどの理由で、MRIでは使う事が出来ない。そのため、非磁性体によるヘッドホンが提案されているが、セラミック素子を使っているために、高音のみが強く非常に聞きにくいなどの欠点が有った。
【0010】
MRIで頭部などの検査をするためには、被験者の頭部を固定するためのガントリーと言われる装置を用いるが、ガントリーと被験者の頭部との間は10mm程度の非常に狭い空間しかなく、音質の良いヘッドホンを使おうとしても、音質の良いヘッドホンは比較的厚みが有るため、狭い空間に合うヘッドホンは使えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−245580号公報
【特許文献2】特開2006−148295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はMRI装置作動中に発生する騒音によって、検査を行う医師から被験者である患者に対する指示が聞き取りにくかったり、被験者が狭い空間に固定されることによる閉所恐怖症のような精神的な圧迫を取り除くために気持ちが落ち着くような音や音楽を流しても、騒音にマスキングされて非常に聞きにくいなどの欠点があった。
【0013】
その上、頭部を覆うガントリーの中に被験者が聴取するヘッドホンを入れなければならないが、ガントリー内面と被験者の皮膚の表面との間の隙間は10mm程度と極めて狭く、通常のヘッドホンを挿入することはほとんど不可能であった。
【0014】
特許文献1に示した特開2005−245580号公報には、MRIの被験者が装着するヘッドホンが記載されており、骨伝導を用いることも提案されている。しかしながら、最近のMRIは良好な画像を得るために磁界の強度を高めたり、被験者とガントリーの間を非常に狭く設定しているので、騒音が更に高くなるとともに、ガントリーと被験者との間隙は大きいもので10mm程度しかないので、通常の構造を有するヘッドホンは、たとえ骨伝導を用いるものであっても、この間に押し込む事は非常に難しく、且つ、人間の耳の周辺やガントリーの内面も湾曲していることから、空間も湾曲したものになり、硬い材質で構成されたヘッドホンをこの隙間に挿入することはほとんど不可能であった。
【0015】
また、従来セラミックなどを用いたヘッドホンなどもMRI用として提案されているが、構造的な制限から、音声は出るとしても高音域に偏っていて非常に聞きにくいなどの欠点があり、音質が良くMRIの騒音下においても、聞き取りやすいヘッドホンが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明に係るMRI用ヘッドホンユニットにおいては、小型セラミック振動素子1を用いており、その放音方向にセラミック振動子1の面積よりも大きな面積を有する振動板2が一体に張り付けられていて、セラミック振動子1の背面には、防音ウレタンなどの音を吸収する特性を持ち且つ圧力を受けると変形する特性を有する吸音材によって成形された第一の防音材3が貼りつけられている。
更に第一の防音材3の背面には、可撓性を有する塩化ビニールなどの非磁性体によって構成され、第一の防音材よりも大きい面積を有する屈曲版4が一体に貼りつけられている。
また、屈曲版4の更に背面には防音効果を高めるための防音ウレタンなどによって構成された第二の防音材5が一体に貼りつけられている。
セラミック振動子1及び振動板2の周囲には、ドーナツ状に防音ウレタンなどの吸音材によって構成された第三の防音材6が設けられており、セラミック振動子1及び振動板2の周囲を覆うように構成されている。
【0017】
更に、第三の防音材6の放音方向には、振動板2が被験者の耳に接触できるように第三の防音材6よりも内径が小さいドーナツ状の第四の防音材7が第三の防音材6と一体に構成されており、被験者がMRIで検査を受けるために本発明のヘッドホンを装着したときに、第四の防音材7の中央部に設けられた穴から被験者の耳が挿入され、振動板2と接触するように構成されている。
【0018】
第四の防音材7は中央の穴に聴取者の耳殻が挿入された場合、耳殻の周囲を覆うようになり、聴取者に騒音が届かないように耳の周辺を密閉して防音するものである。
また、聴取者の耳殻が第四の防音材7の中央の穴に挿入され聴取する状態では、耳殻及びその周辺が直接振動板1に接触することになり、振動板の振動は耳殻の接触している部分を通して、聴取者に直接伝わることになる。
【0019】
請求項2の発明に係るMRI用ヘッドホンユニットは、請求項1の発明におけるセラミック振動子、振動板、屈曲版、第一の防音材、第二の防音材、第三の防音材、信号線の全ての構成物が非磁性体で構成されているもので、すべてが非磁性体で構成されることにより、高磁場となるMRIの中でも使用することができ、且つMRIで撮影される画像の画質にも何ら悪影響を及ぼすことがない。
【0020】
請求項3の発明に係るMRI用ヘッドホンユニットは第二の防音材の外側から耳に対して振動板を押し付けるように押圧するもので、ヘッドホン全体の第一から第四までの防音材と屈曲版を一番外側に位置する第二の防音材の外側から耳に対して押圧するもので有るから、ヘッドホン全体の撓みによる変形を使う事ができるものであり、ガントリーの内側形状や被験者の頭部形状に合わせてヘッドホン全体が撓み、ガントリーと被験者の頭部がどのような状態でも装着できるものである。
【0021】
請求項4の発明に係るMRI用ヘッドホンユニットは、ヘッドホンの構成物である防音材に吸収する音響特性の異なるものを用いるものであり、吸収する周波数を異ならせることによって外部から入り込むMRIの騒音の周波数特性に合わせてエネルギーの高い所を吸収するようにして効果的に防音効果を得るものである。
【0022】
請求項5の発明に係るMRI用ヘッドホンユニットにおいては、ヘッドホンの構成物である第一の防音材、第二の防音材、第四の防音材を防音効果のあるウレタンで構成することにより、防音効果及び屈曲性に優れ、狭い空間にも圧縮された状態で挿入することができるヘッドホンを提供するものである。
【0023】
請求項6の発明に係るMRI用ヘッドホンユニットにおいては、被験者の頭部とガントリーの内壁との間でヘッドホンが挟持され、弾性材で構成された防音材が撓む事によって被験者の頭部の形状やガントリーの内壁の形状の違いにかかわらず、MRIの騒音に対する防音効果と音声の信号の伝達を良好に行えるようにしたものである。
【0024】
請求項7の発明に係るMRI用ヘッドホンにおいては、基本的構成は請求項1のヘッドホンと同様であるが、請求項7のヘッドホンユニットは、セラミック振動素子を挟んで第一の振動板と第二の振動板が設けられ、セラミック振動素子の振動を2つの振動板によって音響特性を調整して効率良く音声に変換し、良い音を再生するものである。
【0025】
請求項8の発明に係るMRI用ヘッドホンユニットにおいては、請求項7のヘッドホンにおいて第一の振動板と第二の振動板はそれぞれ面積が異なるもので、面積を異ならせることによって振動板固有の共振周波数を異ならせることができ、適宜それぞれの振動板の面積を調整することにより、ヘッドホンとしての周波数特性を調整することができるもので、広帯域化するなど、最適な音響特性を有するヘッドホンを得ることができるものである。
【0026】
請求項9の発明に係るMRI用ヘッドホンユニットにおいては、第一と第二の振動板の厚みを異ならせたもので、厚みが異なることにより、共振周波数も変わるので、二つの振動板の共振周波数を適宜調整して良好な周波数特性を有するヘッドホンを得ることができるものである。
【0027】
請求項10の発明におけるMRI用ヘッドホンユニットは、請求項7の第一と第二の振動板の素材を異ならせるものであり、素材の違いによってそれぞれの振動板の共振周波数を異ならせるもので、二つの振動板の共振周波数を適宜調整して広帯域化するなど、良好な周波数特性を有するヘッドホンを得ることができるものである。
【発明の効果】
【0028】
この発明のヘッドホンにおいては、ヘッドホンユニット全体を非磁性体で構成し、セラミック振動子1及び振動板以外の構成物を変形可能な防音材で構成し、なおかつ間に可撓性を有する素材で構成された屈曲版を設けた事により、非装着状態においては、ヘッドホンとしての形状を保つとともに、MRIのガントリー内で被験者が装着する場合には、被験者の頭部とガントリーの内部の形状に対応して変形することにより、メーカーごとにガントリー内部の形状が異なったとしても、装着可能になるものである。
【0029】
また、セラミック振動子1と一体に張り付けられた振動板が、少なくとも被験者の耳殻の一部に接触するようにしたことにより、騒音下でも耳殻を通して音声を被験者に伝えることが可能である。
【0030】
更に、振動板の周辺を防音材によって囲み、耳の周辺も防音材で囲んだ事により、MRIが発生する騒音を効率良く遮断することができ、耳殻を通して伝導するなどの効果との相乗効果により、被験者は比較的騒音の少ない環境で、明瞭な音声で医師の指示を聞いたり、リラックスできるような音楽を聴くことができるものである。
【0031】
特に、屈曲板の外側に第二の防音材を設け、装着状態ではこの部分が圧縮された状態でガントリーの内壁と接触する事により、ガントリーを通して被験者に伝わる騒音を効果的に防止することができるものである。
【0032】
その上、この発明においては、セラミック振動子1を振動板2と一体に貼り付けた事により、小さなセラミック振動子1を単独でヘッドホンとして用いるよりもより広い面積が振動することにより、音質が向上し、音圧も上がるなどの効果が有る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明のMRI用ヘッドホンに関するユニットの実施例で、(a)断面図、(b)正面図である。
図2】本発明のMRI用ヘッドホンの使用状態を示す概略図である。
図3】MRIにおける被験者との通信状態を示す図である。
図4】MRI用ヘッドホンの動作ブロック図である。
図5】本発明のMRI用ヘッドホンに関するユニットの他の実施例で(a)断面図、(b)正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0035】
図1は本発明のMRI用ヘッドホンの第一の実施例で、図(a)は断面図、図(b)は放音側から見たヘッドホンユニットの正面図である。
図において、1は小型セラミック振動素子であり、その放音方向にセラミック振動子1の面積よりも大きな面積を有する振動板2が接着剤などで一体に張り付けられており、セラミック振動子1の背面には、防音ウレタンなどの音を吸収する特性を持ち且つ圧力を受けると変形する特性を有する吸音材によって成形された第一の防音材3が貼り着けられている。
更に第一の防音材3の背面には、可撓性を有する塩化ビニールなどの非磁性体によって構成され、第一の防音材よりも大きい面積を有する屈曲版4が一体に張り付けられていて、屈曲版4の更に背面には防音効果を高めるための防音ウレタンなどの素材によって構成された第二の防音材5が一体に張り付けられている。
【0036】
この屈曲版4はヘッドホン全体の形状を保つことができる剛性を有し、且つヘッドホンがガントリー内に装着される場合などに変形してガントリーの内部と被験者の頭部の間の空間に合うように変形する特徴を有するものである。
セラミック振動子1と振動板2の周囲には、防音ウレタンなどの吸音材によって構成されたドーナツ状の第三の防音材6が設けられており、セラミック振動子1及び振動板2の周囲を覆うように構成されている。
【0037】
更に、第三の防音材6の放音方向には、被験者の耳が挿入できる程度の大きさの穴を中心に有する第三の防音材6よりも内径が小さいドーナツ状の第四の防音材7が第三の防音材6と一体に貼り付けられており、被験者がMRIで検査を受けるために本発明のヘッドホンを装着したときに、第四の防音材7の中央部に設けられた穴から被験者の耳が挿入され、振動板2と接触するように構成されている。
【0038】
第四の防音材7は中央の穴に聴取者の耳が挿入された場合、第三の防音材6と第四の防音材5が耳の周囲を覆うようになり、MRIの騒音が空間を通して聴取者に届かないように防音するものである。
【0039】
また、第四の防音材7の中央の穴から聴取者の耳が挿入された場合、聴取者の耳殻は直接振動板1に接触するものであり、セラミック振動子1の振動は、振動板2を通して増幅される形で接触している耳殻に伝達され、耳殻の振動板と接触している部分を通して、聴取者に直接伝達されることになる。
【0040】
この実施例では、第一の防音材3から第四の防音材7をそれぞれ別々に作って組み立てるように説明したが、第一の防音材3及び第四の防音材を一体に成型して、成型後にセラミック振動子1及び振動板2を装着しても良い。
また、MRIの騒音を効率良く吸収して防音効果を高めるために、第一から第四までの防音材それぞれかまたは一部を異なる防音特性を有する素材で構成することによって、より効果的に聴取者に対して防音する事も可能である。
振動板2の素材としては、紙やプラスチック、カーボンファイバーシートなどの通常スピーカーの振動板として用いられる素材で構成するなど、音質向上など所望の音響特性を得るために合う素材を選択することができるものである。
【0041】
図2は被験者がガントリー9内に頭部11を挿入し、ヘッドレスト10の上に頭部11を載せた状態を概念的に示した図であり、ガントリー9はその断面を半分のだけ示してある。頭部11とガントリー9との間は非常に狭い空間で、10mm程度しかなく、その間に本発明のヘッドホンが圧縮されて装着されている状態を示したものであり、図1に示すような構造のヘッドホンの第四の防音材7に設けられた中央の穴から耳朶が挿入され、ガントリー9の内側と頭部11の側面との間の円弧状の空間にヘッドホン全体が圧縮され撓んだ形で装着されていることを示すものである。
【0042】
ガントリー9の内部形状は、図では円弧状に示して有るが、MRIの機種によって異なるものであり、ガントリー9の内面形状によっては、頭部11との間の間隙が図の下側が広くて、上側が狭くなるような台形状の空間になるものもある。
本発明のヘッドホンにおいては、ヘッドホンユニット全体が可撓性を有する吸音材と屈曲板4によって構成されていることによって、ガントリー9と被験者の頭部11とが形成する空間の形状にかかわらず全ての機種に対応することができるものである。
【0043】
図3に示すものは、MRIを概略示したもので、被験者15が移動するベッド(検査台)の上に寝ており、この状態でMRI装置14の中に移動して映像を撮影するものである。
被験者15は、ガントリー内の頭部にヘッドホン17を装着し、被験者の音声を拾える位置に設けられたマイク16を装着して、交信できるようにしたもので、MRIが設置された磁気的にシールドされた部屋と、その部屋の外部から医師などの検査を行う人がマイク20で被験者15に指示を与え、被験者15からの応答はマイク16で拾ってスピーカー19から音声として出すように構成したものである。
【0044】
図4に示したものは図3のMRIに用いるヘッドホンの電気回路を示す概略ブロック図で、音声ソースとして、音楽を被験者に聞かせるための音源23a、検査のための音声を聞かせる装置23b、検査用マイク23cなどが有り、それぞれに適応した音響特性を得るためのイコライザー22及び増幅器21を通して、ヘッドホン17に音声信号を供給するものである。
【0045】
図5に示すものは、本発明のヘッドホンの他の実施例を示すもので、図1と同様に(a)が側断面図であり、(b)が放音側から見たヘッドホンユニットの正面図である。
この実施例における、第一の防音材3aから第四の防音材7aの構成及び屈曲板4aの構成は図1に示すものと同じ構成であるから、説明を省略するが、それぞれ6aは第三の防音材、5aは第二の防音材を示すものである。
図においてセラミック振動子1aは、放音側に接着剤などで一体に貼り付けた第一の振動板2aと、セラミック振動子1aの背面側に一体に貼り付けられた第二の振動板2bによって振動部分が構成されており、第一の振動板2aの面積よりも第二の振動板2bの方の面積が広くなるように構成されている。
【0046】
この実施例においては、2つの振動板でセラミック振動子1aを挟持し、第一及び第二の振動板の面積を異ならせた事により、それぞれの振動板の共振周波数が事なることになり、それぞれの振動板の面積を適宜変更することによって再生音の周波数特性を広帯域にするなど、音響特性を調整することができ、より音質の良いヘッドホンを提供できるものである。
更に、第一、第二の振動板の素材を変えたり、厚みを変えることによって再生音を最適なものにチューニングする事が出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本、発明はMRI装置等の高騒音下で被験者と検査をする医師などとの間で交信が必要な場合に最適であり、MRI等を製造する産業等に利用することができるものである。
【符号の説明】
【0048】
1:セラミック振動素子
2:振動板
3:第一の防音材
4:屈曲版
5:第二の防音材
6:第三の防音材
7:第四の防音材
8:信号線
9:ガントリー
10:ヘッドレスト
11:被験者の頭部
12:被験者の耳朶
13:装着状態のヘッドホン
14:MRI装置
15:被験者
16:マイク
17:ヘッドホン
18:隔壁
19:スピーカー
20:マイク
21:アンプ
22:イコライザー
23a:音源
23b:音声装置
23c:検査者用マイク
2a:第一の振動板
2b:第二の振動板

図1
図2
図3
図4
図5