(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定手段は、前記モータの回転角度を検出する回転角度検出センサを用いて前記定荷重バネの引き出し量を測定する請求項1又は請求項2に記載のケーブル処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態の移動ロボットについて図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の移動ロボット1は、例えば放射能によって汚染された空間PAなどにおける作業など、人間による作業が困難な作業を行うロボットである。
移動ロボット1は、移動ロボット本体2と、移動ロボット本体2に取り付けられたケーブル処理装置4と、移動ロボット本体2と制御装置5とを接続するケーブル3と、を備えている。即ち、本実施形態の移動ロボット1は、ケーブル処理装置4を備えている。
制御装置5は、安全な空間SAに設置されており、危険な空間PAとの間には、壁Wが設置されている。ケーブル3は、壁Wに形成された孔Hを介して安全な空間SAから危険な空間PAに引き出されている。
なお、制御装置5は、移動ロボット本体2に設けてもよい。即ち、移動ロボット本体2を制御するための制御部と兼ねる構成としてもよい。
【0020】
移動ロボット1は、例えば、複数のタイヤ又は無限軌道6を有し全方向に移動可能なロボットである。移動ロボット1には適宜カメラやセンサ7を搭載させることができる。
ケーブル3は、制御装置5からの制御信号を移動ロボット1に送信したり、カメラやセンサ7からの情報を制御装置5に送信したりするための光ファイバである。ケーブル3は、送電用の電線や、通信用の光ファイバなどの複数のケーブル3をアウターケーブルによって纏める構成としてもよい。
【0021】
ケーブル3は、移動ロボット1の移動に伴い、ケーブル処理装置4から送り出されたり、巻き取られたりする。ケーブル処理装置4は、移動ロボット1が制御装置5から離間する方向に移動した場合、ケーブル3を送り出す(長くする)。ケーブル処理装置4は、移動ロボット1が制御装置5に接近する方向に移動した場合、ケーブル3を巻き取る(短くする)。
【0022】
図2に示すように、ケーブル処理装置4は、ケーブル3が巻回されるケーブルドラム10と、モータ11と、定荷重バネ12(定張力バネ)と、を主な構成要素として有している。上記構成要素は、例えば板状のベース部9上に配置することができる。ケーブルドラム10は、第一ブラケット19によってベース部9に対して回転可能に支持されている。
【0023】
ケーブルドラム10は、円柱形状をなし、その外周面にケーブル3が巻回されている。ケーブルドラム10の直径は、ケーブル3の種類、長さに応じて適宜設定されるが、本実施形態のケーブル処理装置4のように光ファイバを巻回する場合、光ファイバに負荷がかからないような直径に設定される。
【0024】
ケーブルドラム10の近傍であって、ケーブル3が延在する方向には、ケーブル3のガイド部材として機能するレベルワインダ13が設置されている。レベルワインダ13は、ケーブル3が通される通し筒14と、通し筒14をケーブルドラム10の中心軸方向に沿う方向にスライド移動させるガイドレール15と、を有している。ガイドレール15は、ベース部9に所定の方法で固定されている。通し筒14は、ケーブルドラム10の回転に同期してガイドレール15に沿って往復移動する。これにより、ケーブル3がケーブルドラム10の外周面上に均等に振り分けられる。
【0025】
モータ11は、例えば、DCモータなどの電動機を採用することができる。モータ11は、モータ出力軸17と、円筒形状の外周面を有するケーシング18と、を有している。モータ出力軸17は、ケーブルドラム10と同軸に接続されている。換言すれば、モータ11とケーブルドラム10とは、モータ出力軸17の軸中心、モータ11のケーシング18の中心軸、及びケーブルドラム10の中心軸が一致するように接続されている。これにより、モータ出力軸17が回転することによって、ケーブルドラム10がケーブルドラム10の中心軸回りに回転する。
【0026】
モータ11のケーシング18は、第一ブラケット19を介して、モータ出力軸17の中心軸回りに回転自在に支持されている。即ち、モータ11のケーシング18は、中心軸回りに回転が許容されている。これにより、ケーシング18に対してモータ出力軸17の回転を固定した上でケーシング18を回転させることによって、ケーブルドラム10を回転させることができる。モータ出力軸17は、モータ11に僅かに駆動力を発生させることによって停止・回転位置の保持が可能となる。
【0027】
即ち、モータ出力軸17を停止し保持力を発生させた状態(サーボロック状態)でモータ11のケーシング18自体を中心軸回りに回転させることで、ケーブルドラム10を回転させてケーブル3の巻き取り・送り出しを行うことができる。
なお、
図2においては、一方の第一ブラケット19がモータ11を支持し、他方の第一ブラケット19がケーブルドラム10を支持する構成となっているが、一対の第一ブラケット19がモータ11を両側から支持する構成としてもよい。
【0028】
ケーブル処理装置4は、モータ11のケーシング18の回転を制動可能な制動機構20を有している。制動機構20は、ケーシング18の外周面に当接するシュー部材を有しており、制御装置5の指令に応じてシュー部材をケーシング18の外周面に押し付けることによってモータ11のケーシング18の回転(モータ11のモータ出力軸17ではない)を制動可能である。
【0029】
定荷重バネ12は、軸部であるバネドラム21とバネドラム21に巻回されている帯状の板バネ部22とから構成されている。定荷重バネ12は、荷重・張力が一定であり、板バネ部22のストロークによって荷重・張力が変化しない特性を持ったバネである。
定荷重バネ12のバネドラム21は、ベース部9に固定された第二ブラケット23を介して回転自在に支持されている。定荷重バネ12の板バネ部22の先端部24(他端部)は、モータ11のケーシング18の外周面に、例えばボルトのような締結部材によって固定されている。定荷重バネ12の板バネ部22の基端部25(一端部)は、バネドラム21及び第二ブラケットを介してベース部9に接続されている。
【0030】
定荷重バネ12の出力は、常にケーブルドラム10を介してケーブル3を巻き取る方向WDにケーシング18の外周面に回転する荷重をかけるような出力となっている。換言すれば、ケーブル3には、モータ11のケーシング18の外周面及びケーブルドラム10を介して定荷重バネ12の張力が加えられる。また、定荷重バネ12の最大ストロークは、例えば500mmとすることができる。
【0031】
ケーブル処理装置4は、定荷重バネ12のバネドラム21の回転角度を検出することができる回転角度検出センサ26(ポテンショメータ、ロータリーエンコーダ等)を備えている。回転角度検出センサ26は、制御装置5に定荷重バネ12のバネドラム21の回転角度に対応する回転角度信号(例えば電圧等)を送信する。
【0032】
本実施形態のケーブル処理装置4は、通常状態においては、定荷重バネ12の出力を用いてケーブル3を巻き取っている。即ち、定荷重バネ12は、ケーブルドラム10がケーブル3を巻き取る回転方向に一定の荷重を付与している。また、ケーブル3が送り出される際はケーブル3の引き出し量に応じて定荷重バネ12の板バネ部22が引き出される。
しかしながら、定荷重バネ12のストロークは有限であるため、適宜、モータ出力軸17を回転させる(モータ11の駆動力を用いてケーブルドラム10を回転させる)ことによって、ケーブル3を巻き取ったり、送り出したりすると同時に、モータ11のケーシング18が回転することで、定荷重バネ12のストローク位置(引き出し量)を適切に調整できる構成となっている。つまり、モータ11の駆動力を用いてケーブル3の巻き取り・送り出しを行うことによって、この間に定荷重バネ12のストローク位置を中立位置に戻すことができる。
【0033】
具体的には、設定された下限(定荷重バネ12の最大ストロークよりも手前に設定される)を越えて定荷重バネ12が引き出された場合に、モータ11による送り出しを行うとともに、定荷重バネ12が緩んで設定された上限を越えた場合に、モータ11による巻取りを行う。これにより、モータ11の駆動時に定荷重バネ12を中立位置に戻すことができる。以下、本実施形態のケーブル処理装置4の動作概念について説明する。
【0034】
図3は、本実施形態のケーブル処理装置4の動作概念を説明する模式図である。
ケーブル処理装置4の制御装置5は、ケーブル3に常に定荷重バネ12の荷重(張力T)がかかるように、モータ11の制御を行う。即ち、モータ11の出力を用いた巻き取り及び送り出しは、定荷重バネ12のストロークの短さを補う際に用いられる。
定荷重バネ12の張力Tを用いて巻き取り・送り出しを行う際、モータ出力軸17は、モータ11のケーシング18に対する回転が固定されている(出力軸固定状態)。この際、モータ11に僅かな駆動力がかけられていることによって、モータ出力軸17の回転位置が保持されている。これにより、ケーシング18の外周面が定荷重バネ12の張力Tによって回転すると、モータ出力軸17を介して接続されているケーブルドラム10が回転してケーブル3の巻き取り・送り出しが行われる。
【0035】
制御装置5は、バネドラム21の回転位置を参照することによって定荷重バネ12のストローク位置が所定の中立位置となるように、モータ11を制御する。具体的には、ケーブル3が急に引っ張られた場合に定荷重バネ12が、定荷重バネ12の最大ストロークまで伸びないように、モータ11を用いて定荷重バネ12のストロークを調整する制御を行う。
制御装置5は、定荷重バネ12のストローク位置Pを測定する測定手段を有している。制御装置5の測定手段5aは、バネドラム21の回転角度に比例する電圧である回転角度電圧DPに基づいて定荷重バネ12のストローク位置Pを推定する。
なお、制御に際して設定される中立位置は、定荷重バネ12のストロークの中心位置である必要はない。本実施形態の中立位置は、ケーブル3が不用意に引っ張られた際に、定荷重バネ12が十分に伸びるような位置を設定することができる。
【0036】
制御装置5は、適宜設定された閾値を用いてモータ11を制御する。
閾値は、定荷重バネ12のストロークを基準にして設定されている。閾値は、定荷重バネ12のストロークがある程度長くなった位置である下限と、定荷重バネ12のストロークがある程度短くなった位置である上限と、定荷重バネ12の中立位置範囲の下限側である中立下限と、定荷重バネ12の中立位置範囲の上限側である中立上限である。
【0037】
制御装置5は、定荷重バネ12のストローク位置が下限から上限の範囲になるように、制御を行う。即ち、制御装置5は、例えばケーブル3が引き出されて下限を超過した場合に、モータ11を用いた送り出しを行うことによって、定荷重バネ12のストローク位置を中立位置に戻す。即ち、モータ11がケーブル3を送り出している間は、ケーブル3から定荷重バネ12にかかる荷重が小さくなるか、なくなるため、定荷重バネ12が有する張力Tによって、定荷重バネ12が巻き戻される。
同様に、制御装置5は、例えばケーブル3が緩んで上限を超過した場合に、モータ11を用いた巻き取りを行うことによって、定荷重バネ12のストローク位置を中立位置に戻す。
【0038】
上限及び下限は、定荷重バネ12の最大ストロークなどに基づいて適宜設定される。上限から下限の範囲が狭い場合、後述する緊急送り出しの際のストロークを大きくすることが出来るが僅かなケーブル3の引っ張りや弛みに対して都度モータ11が動くため、電力消費量は大きくなる。
一方、上限から下限の範囲が広い場合、緊急送り出しの際のストロークが短くなるが、僅かなケーブル3の引っ張りや弛みに対して都度モータ11が動く必要が無いため電力消費量は小さく出来る。
制御装置5は、定荷重バネ12のストローク量(最大ストローク)を最大限に利用しつつ、定荷重バネ12のストローク位置が常に中立位置近傍に位置するように(即ち、ケーブル3が急に引っ張られた場合に対応できるように)、モータ11の制御を行う。
【0039】
図3には、閾値(下限、中立下限、中立上限、上限)と回転角度検出センサ26によって検出されたバネドラム21の回転角度に基づいて推定される定荷重バネ12のストロークの位置Pとの関係を模式的に示した。
図3(a)においては、定荷重バネ12のストロークの位置Pは、中立範囲内にある。
【0040】
図3(a)に示すように、移動ロボット1が前進するなどしてケーブル3が引っ張られた場合、定荷重バネ12の板バネ部22が引き出される。ケーブル3は、定荷重バネ12の張力Tに抗する形で引き出される。この際、定荷重バネ12の板バネ部22が引き出されることによって、バネドラム21が回転する。
【0041】
バネドラム21の回転角度は、回転角度検出センサ26によって検出され、制御装置5に送信される。制御装置5の測定手段5aは、回転角度に基づいて定荷重バネ12のストローク位置Pを推定する。
図3(a)のストローク位置Pは、ケーブル3が引っ張られる前の段階であり、中立位置の範囲内にあることを示している。即ち、この状態において、ケーブル3が急に引っ張られた場合は、定荷重バネ12が引き伸ばされることによって、ケーブル3に負担がかかることがない。
【0042】
図3(b)に示すように、ケーブル3が引っ張られてストローク位置Pが下限に達すると(制御装置5がバネドラム21の回転角度を参照することによって、ストローク位置が下限に達したと判断すると)、制御装置5は、モータ出力軸17をケーブル3を送り出す方向FDに回転駆動させる。これにより、ケーブルドラム10がケーブル3を送り出す方向FDに回転し、ケーブル3が送り出されるとともに、定荷重バネ12のストローク位置が徐々に、中立位置の方向に復帰する。
【0043】
図3(c)に示すように、定荷重バネ12のストローク位置Pが、中立下限に達すると(中立位置の範囲に入ると)、制御装置5は、モータ出力軸17の回転を停止させ、モータ11は出力軸固定状態となる。
【0044】
図3(d)に示すように、移動ロボット1が後退するなどしてケーブル3が緩んだ場合、定荷重バネ12の板バネ部22がバネドラム21に巻かれて短くなる。ケーブル3の緩みは、定荷重バネ12の張力Tによって取り除かれる。この際、定荷重バネ12の板バネ部22が短くなることによって、バネドラム21が回転する。
【0045】
図3(e)に示すように、ケーブル3が緩んでストローク位置が上限に達すると(制御装置5がバネドラム21の回転角度を参照することによって、ストローク位置が上限に達したと判断すると)、制御装置5は、モータ出力軸17をケーブル3を巻き取る方向WDに回転駆動させる。これにより、ケーブルドラム10がケーブル3を巻き取る方向に回転し、ケーブル3が巻き取られるとともに、定荷重バネ12のストローク位置Pが徐々に、中立位置の方向に復帰する。
【0046】
図3(f)に示すように、定荷重バネ12のストローク位置Pが、中立上限に達すると(中立位置の範囲に入ると)、制御装置5は、モータ出力軸17の回転を停止させ、モータ11は出力軸固定状態となる。
【0047】
ここで、ケーブル3が急に引っ張られた際の緊急送り出しの動作概念を説明する。
図4に示すように、移動ロボット1が階段を一段踏み外した際等、ケーブル3に急に引っ張りが加わった場合は、定荷重バネ12の最大ストロークの範囲(機械的な限界の範囲)で定荷重バネ12が伸びてケーブル3を素早く送り出す。この際、定荷重バネ12のストローク位置Pは、設定された下限を大幅に越えることとなる。制御装置5は、ストローク位置Pが下限を越えたことにより、モータ出力軸17を送り出し方向FDに回転駆動させる。これにより、定荷重バネ12は徐々に縮み、徐々に中立位置に復帰する。
【0048】
また、本実施形態のケーブル処理装置4は、手動モードにてケーブル3の巻き取り・送り出しを実施することができる。
図5は、ケーブル処理装置4の手動モードにおける動作概念を説明する模式図である。
ケーブル処理装置4の手動モードを用いることによって、強制的にケーブル3を巻き取ったり、送り出したりすることができる。手動モードでは、制動機構20を用いて、モータ11のケーシング18を固定する。これにより、モータ11のケーシング18は回転不能になる。ケーブル3の巻き取り・送り出しは、モータ出力軸17を回転駆動することにより行う。即ち、ケーブル3の張力は、モータ11の出力によって発生するようになる。定荷重バネ12の張力Tはケーブル3に伝達されることはなく無効になる。
【0049】
次に、本実施形態のケーブル処理装置4の具体的な制御方法について説明する。
図6に示すように、本実施形態のケーブル処理装置4の制御に用いられるシステム構成は、定荷重バネ12のストローク位置が反映されるバネドラム21と、バネドラム21の回転角度電圧DPに応じて制御されるモータ11と、モータ11を制動可能な制動機構20と、回転角度電圧DPを検出する回転角度検出センサ26と、を有するケーブル処理装置本体4aと、モータ11及び制動機構20を制御するモータドライバ27と、回転角度検出センサ26から出力されるアナログ入力である回転角度電圧DPに基づいてモータドライバ27を制御する制御装置5と、を有する。また、手動モードにおいては、制御装置5は、制動機構20を用いてモータ11のケーシング18の回転を制動することができる。
【0050】
ケーブル処理装置4の自動制御は、バネドラム21の回転角度電圧DPと、定荷重バネ12のストローク位置Pの下限に対応して設定される下限電圧ELと、定荷重バネ12のストローク位置Pの上限に対応して設定される上限電圧EHと、定荷重バネ12のストローク位置Pの中立下限に対応して設定される中立下限電圧ECLと、定荷重バネ12のストローク位置Pの中立上限に対応して設定される中立上限電圧EHLと、を用いて行われる。
【0051】
図7に示すように、制御が開始されると、ケーブル処理装置4は、自動モードによって制御される。
次いで、第一手動・自動切り替え工程S11にて、手動モードにするか自動モードにするかが選択される。手動モードに切り替えられる場合は、
図8に示す手動モードにて制御が行われる。
【0052】
自動モードに切り替えられた場合は、回転角度電圧読み込み工程S12にて、定荷重バネ12のバネドラム21の回転角度に対応する回転角度電圧DPが回転角度検出センサ26を介して制御装置5に送信される。
制御装置5は、第一回転位置判定工程S13にて、回転角度電圧DPが、定荷重バネ12のストローク位置Pの下限に対応する下限電圧EL以下かどうかを判定する。即ち、定荷重バネ12のストローク位置Pが下限に達しているか否かを判定する。
【0053】
回転角度電圧DPが、下限電圧EL以下であると判定された場合には、第一手動・自動切り替え工程S11と同様に手動モードにするか自動モードにするかが選択された後、自動モードの場合はモータ出力軸17をケーブル3を送り出す方向FDに回転駆動する(モータ送り工程S15)。これにより、ケーブルドラム10がケーブル3を送り出す方向FDに回転し、ケーブル3が送り出されるとともに、定荷重バネ12のストローク位置が徐々に、中立位置の方向に復帰する。
【0054】
次いで、回転角度電圧読み込み工程S16にて、回転角度電圧DPが回転角度検出センサ26を介して制御装置5に送信される。次いで、制御装置5は、第二回転位置判定工程S17にて、回転角度電圧DPが定荷重バネ12のストローク位置Pの中立下限に対応する中立下限電圧ECL以上かどうかを判定する。
回転角度電圧DPが中立下限電圧ECL以上となった場合は、モータ11を停止して出力軸固定状態にする(モータ停止工程S18)。回転角度電圧DPが中立下限電圧ECL以下である場合は、モータ送り工程S15を継続する。
【0055】
第一回転位置判定工程S13にて、回転角度電圧DPが、下限電圧EL以上であると判定された場合には、第三回転位置判定工程S19にて、回転角度電圧DPが、定荷重バネ12のストローク位置Pの上限に対応する上限電圧EH以下かどうかを判定する。ここで、回転角度電圧DPが、上限電圧EH以下であった場合は、定荷重バネ12のストローク位置Pが下限から上限の範囲にあるため、モータ11の制御を行うことなく、回転角度電圧DPの読み込みを継続する。
【0056】
回転角度電圧DPが、上限電圧EH以上であると判定された場合には、第一手動・自動切り替え工程S11と同様に手動モードにするか自動モードにするかが選択された後、自動モードの場合はモータ11のk17をケーブル3を巻き取る方向WDに回転駆動する(モータ巻き工程S21)。これにより、ケーブルドラム10がケーブル3を巻き取る方向WDに回転し、ケーブル3が巻き取られるとともに、定荷重バネ12のストローク位置Pが徐々に、中立位置の方向に復帰する。
【0057】
次いで、回転角度電圧読み込み工程S22にて、回転角度電圧DPが回転角度検出センサ26を介して制御装置5に送信される。次いで、制御装置5は、第四回転位置判定工程S23にて、回転角度電圧DPが定荷重バネ12のストローク位置Pの中立上限に対応する中立上限電圧ECH以下かどうかを判定する。
回転角度電圧DPが中立上限電圧ECH以下となった場合は、モータ11を停止して出力固定状態とする(モータ停止工程S24)。回転角度電圧DPが中立下限電圧ECL以下である場合は、モータ巻き工程S21を継続する。
【0058】
次に、手動モードにおけるケーブル処理装置4の制御方法について説明する。
図8に示すように、手動モードにおいては、まず、制動機構20を機能させることによって、モータ11のケーシング18の回転を制動する(制動機構ON工程S30)。次いで、指令待ち工程S31にて、ケーブル3を巻き取るか、ケーブル3を送り出すか、停止させるかの指令を待つ。制御装置5への指令は、キーボードを有するコンソールなどを用いて行うことができる。
【0059】
ケーブル3を巻き取る指令がなされた場合には、ケーブル巻き工程S32にてモータ11がケーブル3を巻き取る方向WDに回転駆動されることによって、ケーブル3が巻き取られる。
ケーブル3を送り出す指令がなされた場合には、ケーブル送り工程S33にてモータ11がケーブル3を送り出す方向FDに回転駆動させることによって、ケーブル3が送り出される。
ケーブル3を停止させる指令がなされた場合には、ケーブル停止工程S34にてモータ11が停止されることによって、ケーブル3の巻き取り・送り出しが停止される。
【0060】
次いで、手動・自動切り替え工程S35にて手動モードにするか自動モードにするかが選択された後、自動モードが選択された場合は、制動機構20をOFFにし(制動機構OFF工程S36)、手動モードが選択された場合には、指令待ち工程S31に戻る。
【0061】
次に、回転角度電圧DPに基づいてモータ11に送信される速度指令について説明する。
図9に示すように、回転角度電圧DPが下限電圧ELと中立下限電圧ECLとの間にある場合は、モータ11に指令される速度指令は、下限電圧ELから中立下限電圧ECLに近づくに従って巻き取り速度が遅くなるように制御される。
【0062】
同様に、回転角度電圧DPが上限電圧EHと中立上限電圧ECHとの間にある場合は、モータ11に指令される速度指令は、上限電圧EHから中立上限電圧ECHに近づくに従って送り出し速度が遅くなるように制御される。また、中立位置範囲(中立下限電圧ECLから中立上限電圧ECHの間)においては、モータ11に僅かに速度指令を指令することによってモータ11を停止状態に保持する。
【0063】
上記実施形態によれば、モータ11のケーシング18を回転自在に支持するとともに、定荷重バネ12を用いてモータ11のケーシング18の回転方向に一定の荷重を付与することによって、常に一定の張力Tをケーブル3に加えることができる。
また、定荷重バネ12のストローク位置Pが中立位置近傍に調整されることによって、ケーブル3が急激に引っ張られた場合に定荷重バネ12が伸びて、ケーブル3にかかる負荷を低減することができる。
【0064】
また、ケーブルドラム10とモータ出力軸17とを同軸となるように接続した構造、モータ11のケーシング18に定荷重バネ12の板バネ部22を巻回する構造としたことによって、ケーブル処理装置をより小型化することができる。
また、定荷重バネ12がケーブルドラム10にケーブル3を巻き取る回転方向に一定の荷重を付与することによって、ケーブル3に一定の張力を付加するケーブル処理が可能となる。
また、定荷重バネ12のストローク位置Pを定荷重バネ12のバネドラム21の回転角度を検出することによって推定する構成としたことによって、よりコンパクトな構造でケーブル処理装置4を構成することができる。
また、下限及び上限を適切に設定することによって、定荷重バネ12のストロークを最大限に生かしたケーブル処理装置4とすることができる。
【0065】
次に、本発明の実施形態の第一変形例のケーブル処理装置4について説明する。
図10は、本発明の実施形態の第一変形例のケーブル処理装置4の動作概念を説明する模式図である。
本変形例のケーブル処理装置4は、定荷重バネ12のストローク位置Pを検出する手段として、リミットスイッチ機構29を用いることを特徴としている。即ち、本変形例では、回転角度検出センサ26の代替として複数のリミットスイッチ30,31,32を用いる。リミットスイッチ機構29は、複数のリミットスイッチ30,31,32と、定荷重バネ12のバネドラム21に取り付けられた蹴り部材33と、を有している。
【0066】
リミットスイッチ30,31,32は、ケーブル3が引っ張られた際に下限として機能する送りリミットスイッチ30と、ケーブル3が緩んだ際に上限として機能する巻きリミットスイッチ31と、中立位置においてモータ11を停止させる停止リミットスイッチ32と、を有している。
図11に示すように、複数のリミットスイッチは、ベース部9側の所定位置に固定されている。蹴り部材33は、送りリミットスイッチ30を作動させる第一蹴り部34と、巻きリミットスイッチ31を作動させる第二蹴り部35と、停止リミットスイッチ32を作動させる第三蹴り部36と、から構成されている。蹴り部材33は、定荷重バネ12のバネドラム21の回転に伴って回転するように構成されている。
【0067】
本変形例のケーブル処理装置4の動作概念は、
図3に示す動作概念と略同等である。
即ち、
図10(a)に示すように、移動ロボット1が前進するなどしてケーブル3が引っ張られた場合、蹴り部材33が送りリミットスイッチ30側に回転移動する。
図10(b)に示すように、ケーブル3が引っ張られてストローク位置が下限に達すると、蹴り部材33の第一蹴り部34が送りリミットスイッチ30を作動させ、これにより、制御装置5はモータ出力軸17をケーブル3を送り出す方向FDに回転駆動させる。
【0068】
図10(c)に示すように、定荷重バネ12のストローク位置Pが、中立位置に達すると蹴り部材33の第二蹴り部35が停止リミットスイッチ32を作動させる。これにより、制御装置5は、モータ出力軸17の回転を停止させ、モータ11は出力軸固定状態となる。
【0069】
図10(d)に示すように、移動ロボット1が後退するなどしてケーブル3が緩んだ場合、定荷重バネ12の板バネ部22がバネドラム21に巻かれて短くなって蹴り部材33が巻きリミットスイッチ31側に移動する。
図10(e)に示すように、ケーブル3が緩んでストローク位置が上限に達すると蹴り部材33の第三蹴り部36が巻きリミットスイッチ31を作動させ、これにより、制御装置5は、モータ出力軸17をケーブル3を巻き取る方向WDに回転駆動させる。
【0070】
図10(f)に示すように、定荷重バネ12のストローク位置Pが、中立位置に達すると、制御装置5は、モータ出力軸17の回転を停止させ、モータ11は出力軸固定状態となる。
【0071】
上記第一変形例によれば、より簡素な構成でケーブル処理装置4を構成することができる。また、回転角度検出センサ26と、リミットスイッチとを組み合わせることによって、ケーブル処理装置4の信頼性を向上させることができる。即ち、リミットスイッチ機構29を回転角度検出センサ26のバックアップとして利用することができる。
【0072】
次に、本発明の実施形態の第二変形例のケーブル処理装置について説明する。
図12に示すように、第二変形例のケーブル処理装置のケーブルドラム10と、モータ出力軸17とは平歯車を介して接続されている。ケーブルドラム10のケーブルドラム軸10aには第一平歯車41が取り付けられ、モータ出力軸17には第二平歯車42が取り付けられている。
ケーブルドラム10とモータ11は、モータ11の駆動力が第一平歯車41及び第二平歯車42を介してケーブルドラム10に伝達されるように配置されている。これにより、ケーブルドラム軸10aとモータ出力軸17とは、平行に配置される。
上記第二変形例によれば、ケーブル処理装置4の配置自由度を向上させることができる。
【0073】
次に、本発明の実施形態の第三変形例のケーブル処理装置について説明する。
図13に示すように、第三変形例のケーブル処理装置のケーブルドラム10と、モータ出力軸17とはかさ歯車を介して接続されている。ケーブルドラム10のケーブルドラム軸10aには第一かさ歯車43が取り付けられ、モータ出力軸17には第二かさ歯車44が取り付けられている。
ケーブルドラム10とモータ11は、モータ11の駆動力が第一かさ歯車43及び第二かさ歯車44を介してケーブルドラム10に伝達されるように配置されている。これにより、ケーブルドラム軸10aとモータ出力軸17とは、直交するように配置される。
上記第三変形例によれば、第二変形例のケーブル処理装置と同様に、ケーブル処理装置4の配置自由度を向上させることができる。
【0074】
次に、本実施形態の第四変形例のケーブル処理装置について説明する。
図14に示すように、第四変形例のケーブル処理装置のモータ11Bは、四角柱形状のモータ本体部16とモータ出力軸17と、モータ本体部16を覆うように設けられたケーシング18Bとから構成されている。本実施形態のケーシング18Bは円筒形状の外周面を有し、モータ本体部16にモータ出力軸17と同心となるように取り付けられている。ケーシング18Bは、ケーシング18Bの中心軸とモータ出力軸17の中心軸は一致するように取り付けられている。
上記第四変形例によれば、モータのケーシングの外周面(外形)が円筒形状でないモータや、本体部が小さく定荷重バネ12の板バネ部22を取り付けられないモータの使用が可能となる。また、ケーシング18Bを別に用意することによって、定荷重バネ12の板バネ部22をケーシング18Bに取り付けることが容易となる。
【0075】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態のケーブル処理装置を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図15に示すように、本実施形態のケーブル処理装置4B(ベース部9)は、安全な空間SA(ケーブルドラム基地)の所定の位置に固定されている。即ち、本実施形態の移動ロボット1Bはケーブル処理装置を備えていない。
上記実施形態によれば、移動ロボット1Bを軽量化することができる。また、移動ロボット1Bが作業中であっても、ケーブル処理装置4Bの状態を監視したり調整・修理等を行ったりすることができる。
【0076】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、回転角度検出センサ26を用いて定荷重バネ12のバネドラム21の回転角度を検出する構成としたが、回転角度検出センサ26を用いてモータ11のケーシング18の回転角度を検出して、ケーシング18の回転角度に基づいて定荷重バネ12のストローク位置Pを推定する構成としてもよい。