特許第6442786号(P6442786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新中村化学工業株式会社の特許一覧

特許6442786保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442786
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/17 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   C08G59/17
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-78584(P2015-78584)
(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公開番号】特開2016-199629(P2016-199629A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190895
【氏名又は名称】新中村化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093377
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 良子
(74)【代理人】
【識別番号】100108235
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】西村 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】中井 孝仁
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−234148(JP,A)
【文献】 特表2010−518237(JP,A)
【文献】 特表平10−512283(JP,A)
【文献】 国際公開第97/003954(WO,A1)
【文献】 特開2008−174506(JP,A)
【文献】 特開2012−017444(JP,A)
【文献】 特開2007−326933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I);
【化1】
(式中、R1は炭素数8〜30のアルキル基を表す。)
で表されるペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)を触媒として用いて、2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造することを特徴とするエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【請求項2】
ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピレンオネート)(I)を、アクリル酸および/またはメタクリル酸の質量に基づいて、0.001〜10質量%の割合で用いる請求項1に記載のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【請求項3】
重合禁止剤を更に用いる請求項1または2に記載のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期保存後も粘度の増加がないかまたは粘度の増加が小さくてゲル化が生じず、しかも反応性能などの物性変化のない、保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法およびそれにより得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、1分子中にカチオン重合性または付加反応性のエポキシ基とラジカル重合性の(メタ)アクリレート基を有し、エポキシ基と(メタ)アクリレート基に由来する高い反応性を有していて、硬化性(架橋性)に優れ、しかもその重合・硬化物はエポキシ化合物(エポキシ樹脂)に由来する優れた耐熱性、耐薬品性、密着性、機械的特性、電気特性を備えている。
そのため、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、カチオン重合開始剤およびラジカル重合開始剤を添加し、必要に応じて、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外の他の重合性化合物(反応性化合物)、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外のエポキシ化合物、ラジカル重合性化合物などの1種または2種以上を更に配合して、半導体やその他の電子部品の封止剤、液晶表示装置の枠シール剤、レジスト材料、接着剤、コーティング剤、構造用材料などの種々の用途に用いられている。
しかし、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、保存安定性に劣っており、時間の経過に伴って、粘度の増加、重合・硬化性能の低下などが生じ易いことから、保存安定性の向上が求められている。
【0003】
1分子中にエポキシ基とカルボキシル基を有するカルボン酸変性エポキシエステル樹脂の保存安定性を向上させるために、トリフェニルホスフィン、トリフェニルアンチモン、トリフェニルビスマスなどの3価の有機VB族化合物からなる触媒を用いてエポキシ化合物とカルボン酸を反応させてエポキシエステル樹脂を合成し、ついで当該エポキシエステル樹脂に多塩基酸無水物を反応させてエポキシ基とカルボキシル基を有するカルボン酸変性エポキシエステル樹脂を製造するに当たって、エポキシエステル樹脂の合成後またはカルボン酸変性エポキシエステル樹脂の製造後に、酸化を行って触媒を不活化することが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この従来技術による場合は、カルボン酸変性エポキシエステル樹脂の保存安定性を向上させるために、エポキシエステル樹脂の合成後またはカルボン酸変性エポキシエステル樹脂の製造後に酸化処理を行って有機VB族化合物からなる触媒を不活化するという、触媒の失活処理が必要であるため、手間がかかり工程的に繁雑であり、有利な方法ではない。
【0004】
また、脂環エポキシ基と(メタ)アクリレート基を有する脂環エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物にニトロソ化合物を添加して安定化することが知られている(特許文献2)。
しかし、特許文献2には、この技術が、グリシジル基などのような、脂環エポキシ基以外のエポキシ基と(メタ)アクリレート基を有するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の長期保存安定性の向上に有効であることは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−330456号公報
【特許文献2】特開平8−81452号公報
【特許文献3】特開2013−103950号公報
【特許文献4】特開2008−174506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エポキシ基と(メタ)アクリル基の両方を有する、保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を、触媒の失活処理などの手間のかかる処理工程を行うことなく、簡単に且つ確実に得ることのできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成すべく本発明者らは研究を重ねてきた。そして、エポキシ基と(メタ)アクリル酸エステル基の両方を有するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に、特定のリン化合物を添加すると、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の保存安定性が向上し、長期保存後も粘度の上昇が小さくてゲル化が生じず、しかもエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の反応性能(重合性能、硬化性能、架橋性能)などの低下が生じないことを見出して先に出願した(特許文献3)。
【0008】
本発明者らは、その後も長期保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を得るための研究を更に続けてきた。その結果、2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造するに当たって、「ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)」という特定の化合物を触媒として用いて当該製造反応を行うと、長期保存安定性に一層優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物が得られることを見出して本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) 下記の一般式(I);
【0010】
【化1】
(式中、R1は炭素数8〜30のアルキル基を表す。)
で表されるペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)を触媒として用いて、2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造することを特徴とするエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法である。
【0011】
そして、本発明は、
(2) ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピレンオネート)(I)を、アクリル酸および/またはメタクリル酸の質量に基づいて、0.001〜10質量%の割合で用いる前記(1)のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法;および、
(3) 重合禁止剤を更に用いる前記(1)または(2)のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造方法;
である。
【0012】
さらに、本発明は、
(4) 前記(1)〜(3)のいずれかの製造方法で得られる保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物;および、
(5) 70℃で7日間保存したときにゲル化しない前記(4)のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物;
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によって得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、70℃で7日間保存と苛酷試験を行ったときにも、ゲル化が生じず、当初の粘度をそのまま維持しているかまたは粘度が上昇しても低い粘度を維持しており、長期保存安定性に極めて優れている。
本発明の製造方法によって得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、長期保存後も反応性能(重合性能、硬化特性、架橋性能など)の低下などの物性の変化が小さく、当初の反応性能を維持している。
本発明による場合は、保存安定性を確保するためにエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造に用いた触媒を不活化処理するという繁雑で手間のかかる処理を行う必要がなく、更にはエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の保存安定性の向上のためにポリエポキシ化合物の製造後に安定剤を添加するという余分な工程を行う必要がなく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)よりなる触媒の存在下でポリエポキシ化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させるだけで、保存安定性に極めて優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を簡単に且つ確実に製造することができる。
本発明の製造方法によって得られる本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は保存安定性に極めて優れているので、本発明のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物にカチオン重合開始剤およびラジカル重合開始剤を添加し、また必要に応じて、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外の他の重合性化合物(反応性化合物)、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外のエポキシ化合物、ラジカル重合性化合物などの1種または2種以上を更に配合して、半導体やその他の電子部品の封止剤、液晶表示装置の枠シール剤、レジスト材料、接着剤、コーティング剤、構造用材料などの種々の用途に有効に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物(以下単に「ポリエポキシ化合物」ということがある)の一部のエポキシ基に、アクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造する。
本発明の製造方法で用いるポリエポキシ化合物としては、2個以上のエポキシ基を有する化合物であればいずれでもよく、例えば、2個以上のグリシジル基を有する化合物、2個以上の脂環式エポキシ基(シクロヘキセン環などのような不飽和脂肪族環の不飽和基部分の酸化によって形成されるエポキシ基)を有する化合物、グリシジル基と脂環族エポキシ基を合計で2個以上有する化合物などを挙げることができる。そのうちで、ポリエポキシ化合物としては、2個以上のグリシジル基を有する化合物が放射線または熱による硬化の際に硬化性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を生成できる点から、好ましく用いられる。
【0015】
本発明の製造方法で用い得るポリエポキシ化合物のうち、2個以上のグリシジル基を有するポリエポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;臭素化エポキシ樹脂(テトラブロモビスフェノールとエピクロロヒドリンとの反応、またはテトラブロモビスフェノールおよびビスフェノールの混合物とエピクロロヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂);トリシクロデカンジメタノールのジグリシジルエステル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエステルなどの脂環族ポリアルコールのポリグリシジルエステル;グリシジルエステル型樹脂(ポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとの反応生成物をNaOHなどのアルカリを用いて脱塩酸して得られるエポキシ樹脂);グリシジルアミン型樹脂(アミン類またはアミノフェノールにエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂);ヒンダトイン型エポキシ樹脂(ヒンダトインにエピクロロヒドリンを反応させて得られるエポキシ樹脂);水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂(水素化したビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどにエピクロロヒドリンを反応させて得られる生成物をNaOHなどのアルカリを用いて脱塩酸して得られるエポキシ樹脂)などを挙げることができる。
【0016】
本発明の製造方法で用い得るポリエポキシ化合物のうち、2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エタンなどを挙げることができる。
【0017】
本発明の製造方法では、ポリエポキシ化合物として、上記したポリエポキシ化合物の中の1種または2種以上を用いることができる。
エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造に当たっては、上記したポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基に、アクリル酸を単独で反応させてもよいし、メタクリル酸を単独で反応させてもよいし、またはアクリル酸とメタクリル酸の両方を反応させてもよい。
ポリエポキシ化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させるに当たっては、両者の使用割合は、エポキシ基が確実に残留しているエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造するという観点から、ポリエポキシ化合物中のエポキシ基1当量に対して、アクリル酸および/またはメタクリル酸(アクリル酸とメタクリル酸の両方を用いる場合は両者の合計)を1当量未満の割合で用いることが必要である。
反応により生成するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に、エポキシ基の特性と(メタ)アクリル基の特性の両方を十分に発揮させるためには、ポリエポキシ化合物中のエポキシ基1当量に対して、アクリル酸および/またはメタクリル酸を0.1〜0.9当量の割合で用いることが好ましく、0.2〜0.8当量の割合で用いることがより好ましく、0.3〜0.7当量の割合で用いることが更に好ましい。
【0018】
ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造するに当たっては、従来、3級ホスフィン、4級オニウム塩、3級アミンなどの触媒が用いられてきた。しかし、3級ホスフィンなどの従来の触媒を用いて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、保存安定性に劣っており、何らかの安定剤を添加しないと、保存したときにゲル化し易い。
【0019】
それに対して、本発明では、ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造するに当たって、ポリエポキシ化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸の反応を、下記の一般式(I);
【0020】
【化2】
(式中、R1は炭素数8〜30のアルキル基を表す。)
で表されるペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)を触媒として用いて行う。それによって、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造後に安定剤を添加しなくても、長期保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を直接得ることができる。
【0021】
上記の一般式(I)において、R1の具体例としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(パルミチル基)、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基などを挙げることができる。
そのうちでも、本発明では、R1が炭素数10〜20のアルキル基であるペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)が、入手の容易性、製造の容易性などの点から好ましく用いられ、特に、R1がドデシル基(ラウリル基)であるペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)がより好ましく用いられる。
【0022】
ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)の使用量は、アクリル酸および/またはメタクリル酸(アクリル酸とメタクリル酸の両方を用いる場合は両者の合計)の質量に基づいて、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることが更に好ましい。
ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)の使用量が少なすぎると、ポリエポキシ化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸触媒との反応が遅くなり、保存安定性に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物が得られにくくなり、しかも得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の粘度が高くなり過ぎて取り扱い性が劣るようになり易い。
一方、ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)の使用量が多すぎると、長期の保存性を低下させる要因となり易い。
【0023】
本発明で触媒として用いるペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)は、既知の化合物であって、従来は、ポリオレフィン、ABS樹脂などのようなプラスチックの熱劣化防止剤、銅害防止剤、酸化防止剤などとして用いられているが(特許文献4、特に段落[0002]などを参照)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)をポリエポキシ化合物中のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させる際の触媒として用いることは従来知られていない。
かかる点から、ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造する際に、ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)を触媒として用いることによって、保存安定性に極めて優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物が得られるという本発明の効果は、予想外の効果であるといえる。
【0024】
ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)をポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させる際の触媒として用いずに、ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物に、後から(反応後に)ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)を添加した場合には、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の保存安定性は向上しないことが本発明者らの実験によって確認されており、かかる点からも、ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造する際の触媒としてペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)を用いることによって奏される、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の保存安定性の向上効果は予想外のことである。
【0025】
触媒として用いたペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)は、生成したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物から除去する必要はなく、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物中にそのまま含有させておくことができ、当該触媒の残留しているエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、室温などで長期間保存しても、ゲル化が生じず、当初と同じ粘度を維持しているか、または粘度が上昇しても低い粘度を維持していて、保存安定性に極めて優れており、しかも反応性能(重合性能、硬化性能、架橋性能など)の低下がない。
【0026】
ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)を触媒として用いてポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造するに当たっては、反応系中に重合禁止剤を添加してもまたは添加しなくてもいずれでもよいが、重合禁止剤を添加して反応を行うことが、反応により生成するエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の重合防止の点から好ましい。
その際に用いる重合禁止剤としては、限定されるものではないが、例えば、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール(別名:メトキノン)、p−ゼンゾキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエンなどを挙げることができる。重合禁止剤は1種類のみを使用してもよいし、または2種以上を併用してもよい。
重合禁止剤を用いる場合にその添加量は、アクリル酸および/またはメタクリル酸(アクリル酸とメタクリル酸の両方を用いる場合は両者の合計)の質量に基づいて、0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜3質量%であることがより好ましく、0.1〜1質量%であることが更に好ましい。
【0027】
ポリエポキシ化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸との反応は、溶媒を用いずに行ってもよいし、または溶媒中で行ってもよい。
溶媒としては有機溶媒が好ましく用いられ、具体例としては、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系溶媒などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
溶媒の使用量は、ポリエポキシ化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸の合計質量に対して、60質量倍以下であることが好ましく、50質量倍以下であることがより好ましい。
【0028】
溶媒を用いることなく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)の存在下に、ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られる、溶媒を含まないエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、溶媒を含まないことが求められる用途(例えば、注型用材料、光造形用材料など)に、そのまま有効に使用することができる。
溶媒中で、ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)の存在下に、ポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させて得られる、溶媒を含むエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、溶媒を含んでいてもよい用途(例えば、塗料、接着剤など)にそのまま用いるか、または溶媒を除去してから溶媒を含まないことが求められる用途などに用いることができる。
【0029】
ペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)よりなる触媒の存在下でのポリエポキシ化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸の反応は、反応の促進、副生物の生成抑制などの点から、50〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
また、反応時間は、通常、2〜20時間が好ましく、4〜12時間が好ましい。
【0030】
上記した反応によって、エポキシ基と、アクリル酸エステル基および/またはメタクリル酸エステル基を有する、保存安定性に極めて優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物が得られる。
保存安定性に極めて優れる当該エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、カチオン重合開始剤およびラジカル重合開始剤を添加して、また必要に応じて、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外の他の重合性化合物(反応性化合物)、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物以外のエポキシ化合物、ラジカル重合性化合物などの1種または2種以上を更に配合して、例えば、半導体やその他の電子部品の封止剤、液晶表示装置の枠シール剤、レジスト材料、接着剤、コーティング剤、構造用材料などとして有効に使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例、比較例、参考例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の例中、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の粘度は、次のようにして測定した。
【0032】
(1)エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の粘度の測定法:
以下の実施例または比較例で得られたエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の製造直後の粘度およびそれを温度70℃で7日間保存したときの粘度を、JIS K7117−2に準じて、測定試料の温度制御が可能な恒温水槽を付属した円錐−平板型回転粘度計(コーン・プレート型粘度計)を使用して測定し[粘度測定時のエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物の温度は25℃]、3回測定してその平均値を採って粘度とした。
【0033】
《実施例1》
(1) 反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製「jER YL980」、エポキシ当量=186)100質量部、アクリル酸19.4質量部(ビスフェノールA型エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してアクリル酸0.5当量)およびp−メトキシフェノール(重合禁止剤)0.1質量部を仕込んで90℃に加熱撹拌して均一な混合溶液にした後、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.1質量部を添加して、同温度で6時間反応させて、エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ樹脂[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(A−a1)という](生成量119.4質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(A−a1)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、500,000mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(A−a1)を、温度70℃で7日間保存し、当該7日間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、500,000mPa・sのままであり(測定温度25℃)、粘度の上昇がなかった。
【0034】
《実施例2》
(1) 実施例1の(1)において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)の添加量を0.2質量部に変えた以外は、実施例1の(1)と同様にしてエポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ樹脂[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(A−a2)という](生成量119.4質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(A−a2)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、300,000mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(A−a2)を、温度70℃で7日間保存し、当該7日間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、300,000mPa・sのままであり(測定温度25℃)、粘度の上昇がなかった。
【0035】
《実施例3》
(1) 実施例1の(1)において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)の添加量を0.3質量部に変えた以外は、実施例1の(1)と同様にしてエポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ樹脂[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(A−a3)という](生成量119.4質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(A−a3)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、220,000mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(A−a3)を、温度70℃で7日間保存し、当該7日間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、220,000mPa・sのままであり(測定温度25℃)、粘度の上昇がなかった。
【0036】
《実施例4》
(1) 実施例1の(1)において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)の添加量を0.5質量部に変えた以外は、実施例1の(1)と同様にしてエポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ樹脂[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(A−a4)という](生成量119.4質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(A−a4)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、170,000mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(A−a4)を、温度70℃で7日間保存し、当該7日間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、170,000mPa・sのままであり(測定温度25℃)、粘度の上昇がなかった。
【0037】
《比較例1》
(1) 実施例1の(1)において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.1質量部の代わりに、トリフェニルホスフィン0.1質量部を用い、それ以外は実施例1の(1)と同様にしてエポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したビスフェノールA型エポキシ樹脂[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(A−b)という](生成量119.4質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(A−b)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、170,000mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(A−b)を、温度70℃で7日間保存しようとしたところ、3日目にゲル化し、粘度を測定することができなかった。
【0038】
《比較例2》
(1) 実施例1の(1)で得られた粘度170,000mPa・sのエポキシ基含有アクリレート化合物(A−b)の119.4質量部に、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)の0.1質量部を添加して、温度70℃で7日間保存しようとしたところ、3日目にゲル化し、粘度を測定することができなかった。
【0039】
《参考例1》
(1) 実施例1の(1)で得られた粘度170,000mPa・sのエポキシ基含有アクリレート化合物(A−b)の119.4質量部に、ヒドロキシエチリデンジホスホニックアシッド(別称:1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸)の0.1質量部を添加して、温度70℃で7日間保存し、当該7日間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、255,000mPa・sであり(測定温度25℃)、ゲル化は生じなかったが粘度が上昇した。
上記した実施例1〜4、比較例1〜2および参考例1の結果を、以下の表1にまとめて示す。
【0040】
【表1】
【0041】
上記の表1の結果にみるように、実施例1〜4では、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を触媒として用いて、ポリエポキシ化合物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)のエポキシ基の一部にアクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(A−a1)〜(A−a4)を製造したことによって、実施例1〜4で得られたエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(A−a1)〜(A−a4)は、70℃という高温で7日間保存したときに、粘度が変化しておらず、保存安定性に極めて優れている。
【0042】
それに対して、比較例1では、トリフェニルホスフィンを触媒として用いて、ポリエポキシ化合物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)のエポキシ基の一部にアクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(A−b)を製造したことにより、比較例1で得られたエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(A−b)は、70℃で保存したときに、3日目にゲル化し、保存安定性に劣っている。
比較例2では、トリフェニルホスフィンを触媒として用いて製造したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(A−b)に、その製造後にペンタエリスリトールテトラキス(3−ラルリルチオプロピオネート)を添加したことにより、エポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(A−b)を70℃で保存したときに、3日目にゲル化し、保存安定性に劣っている。
参考例1では、トリフェニルホスフィンを触媒として用いて製造したエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(A−b)に、その製造後に、ヒドロキシエチリデンジホスホニックアシッドを安定剤として添加したことにより、70℃で7日間保存したときに、ゲル化は生じないものの、粘度が初期の170,000mPa・sから7日目に255,000mPa・sまで上昇している。
【0043】
《実施例5》
(1) 反応容器に、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂(阪本薬品工業株式会社製「SR−TMP」、エポキシ当量=140)100質量部、アクリル酸26.5質量部(エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してアクリル酸0.52当量)およびp−メトキシフェノール(重合禁止剤)0.1質量部を仕込んで90℃に加熱撹拌して均一な混合溶液にした後、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.5質量部を添加して、同温度で6時間反応させて、エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したトリメチロールプロパン型エポキシ樹脂[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(B−a)という](生成量126.5質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(B−a)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、3,300mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(B−a)を、温度70℃で7日間保存し、当該7日間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、13,000mPa・sであった(測定温度25℃)。
【0044】
《比較例3》
(1) 実施例5の(1)において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.5質量部の代わりに、トリフェニルホスフィン0.1質量部を用い、それ以外は実施例5の(1)と同様にしてエポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したトリメチロールプロパン型エポキシ樹脂[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(B−b)という](生成量126.5質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(B−b)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、3,300mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(B−b)を、温度70℃で7日間保存しようとしたところ、3日目にゲル化し、粘度を測定することができなかった。
【0045】
《実施例6》
(1) 反応容器に、1,6−ヘキサンジオール型エポキシ樹脂(阪本薬品工業株式会社製「SR−16H」、エポキシ当量=160)100質量部、アクリル酸22.9質量部(エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してアクリル酸0.51当量)およびp−メトキシフェノール(重合禁止剤)0.1質量部を仕込んで90℃に加熱撹拌して均一な混合溶液にした後、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.5質量部を添加して、同温度で6時間反応させて、エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化した1,6−ヘキサンジオール型エポキシ樹脂[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(C−a)という](生成量122.9質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(C−a)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ180mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(C−a)を、温度70℃で7日間保存し、当該7日間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、560mPa・sであった(測定温度25℃)。
【0046】
《比較例4》
(1) 実施例6の(1)において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.5質量部の代わりに、トリフェニルホスフィン0.1質量部を用い、それ以外は実施例6の(1)と同様にしてエポキシ基の一部がアクリル酸エステル化した1、6−ヘキサンジオール型エポキシ化合物[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(C−b)という](生成量122.9質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(C−b)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ180mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(C−b)を、温度70℃で7日間保存しようとしたところ、3日目にゲル化し、粘度を測定することができなかった。
【0047】
《実施例7》
(1) 反応容器に、グリセリン型エポキシ樹脂(阪本薬品工業株式会社製「SR−GLG」、エポキシ当量=143)100質量部、アクリル酸25.5質量部(エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してアクリル酸0.51当量)およびp−メトキシフェノール(重合禁止剤)0.1質量部を仕込んで90℃に加熱撹拌して均一な混合溶液にした後、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.5質量部を添加して、同温度で6時間反応させて、エポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したグリセリン型エポキシ樹脂[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(D−a)という](生成量125.5質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(D−a)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、2,500mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(D−a)を、温度70℃で7日間保存し、当該7日間保存後の粘度を上記した方法で測定したところ、10,000mPa・sであった(測定温度25℃)。
【0048】
《比較例5》
(1) 実施例7の(1)において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.5質量部の代わりに、トリフェニルホスフィン0.1質量部を用い、それ以外は実施例7の(1)と同様にしてエポキシ基の一部がアクリル酸エステル化したグリセリン型エポキシ化合物[以下「エポキシ基含有アクリレート化合物(D−b)という](生成量125.5質量部)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(D−b)の製造直後の粘度を上記した方法で測定したところ、2,500mPa・sであった(測定温度25℃)。
(3) 上記(1)で得られたエポキシ基含有アクリレート化合物(D−b)を、温度70℃で7日間保存しようとしたところ、3日目にゲル化し、粘度を測定することができなかった。
上記した実施例5〜7および比較例3〜5の結果を、以下の表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
上記の表2の結果にみるように、実施例5、6および7では、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)を触媒として用いて、ポリエポキシ化合物(トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、1,6−ヘキサンジオール型エポキシ樹脂またはグリセリン型エポキシ樹脂)のエポキシ基の一部にアクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(B−a)、(C−a)または(D−a)を製造したことによって、実施例5、6および7で得られたエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(B−a)、(C−a)および(D−a)は、いずれも70℃という高温で7日間保存してもゲル化せず、実際の使用に問題のない粘度を保っている。
【0051】
それに対して、比較例3、4および5では、フェニルホスフィンを触媒として用いて、ポリエポキシ化合物(トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、1,6−ヘキサンジオール型エポキシ樹脂またはグリセリン型エポキシ樹脂)のエポキシ基の一部にアクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(B−b)、(C−b)または(D−b)を製造したことにより、比較例3、4および5で得られたエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(B−b)、(C−b)および(D−b)は、70℃で保存したときに、いずれも3日目にゲル化してしまっており、保存安定性に劣っていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上記の一般式(I)で表されるペンタエリスリトールテトラキス(3−アルキルチオプロピオネート)(I)を触媒として用いて、2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物の一部のエポキシ基にアクリル酸および/またはメタクリル酸を反応させてエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を製造する本発明の方法は、保存安定性に極めて優れ且つ反応性能に優れるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を簡単に且つ確実に製造するための方法として極めて有用であり、しかも本発明の製造方法により得られるエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物は、例えば、半導体やその他の電子部品の封止剤、液晶表示装置の枠シール剤、レジスト材料、接着剤、コーティング剤、構造用材料などの用途に用いるための素材として極めて有用である。