(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442790
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】リチウム−硫黄電池の充電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/10 20060101AFI20181217BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20181217BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20181217BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20181217BHJP
H01M 10/46 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
H02J7/10 C
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/44 A
H01M10/46
【請求項の数】14
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-504737(P2016-504737)
(86)(22)【出願日】2014年3月21日
(65)【公表番号】特表2016-519919(P2016-519919A)
(43)【公表日】2016年7月7日
(86)【国際出願番号】GB2014050888
(87)【国際公開番号】WO2014155068
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年2月16日
(31)【優先権主張番号】13160777.2
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】1318214.2
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】315014590
【氏名又は名称】オキシス エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール コロニーツィン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エインスワース
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス カバシク
【審査官】
坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−530796(JP,A)
【文献】
特表2005−505118(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0261048(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/133274(WO,A1)
【文献】
特開平06−343233(JP,A)
【文献】
特開平04−217826(JP,A)
【文献】
米国特許第04503378(US,A)
【文献】
特開2009−252381(JP,A)
【文献】
特表2008−519403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/10
H01M 10/052
H01M 10/058
H01M 10/44
H01M 10/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間t、または容量Qの関数として充電中の電池の電圧Vをモニターするステップ、
電池が充電の第1段階および第2段階の間を遷移する電圧領域において、dV/dtまたはdV/dQが最大となる電池の基準容量Qrefを決定するステップ、
電池の容量が、aを1.1〜1.4として、a×Qrefに達した場合に充電を終止するステップ
を含むリチウム−硫黄電池の充電方法。
【請求項2】
aが1.2〜1.3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
aが1.25である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
電池が充電の第1段階および充電の第2段階の間を遷移する電圧領域が1.5〜2.4Vである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
電池が充電の第1段階および充電の第2段階の間を遷移する電圧領域が1.9〜2.35Vである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
基準容量Qrefが、電池が充電の第1段階および第2段階の間を遷移する電圧領域において、dV/dtまたはdV/dQが最大となり、d2V/dt2またはd2V/dQ2がゼロとなる点を計算することにより決定される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
基準容量Qrefが、1.5〜2.4Vの選択される電圧範囲においてdV/dtまたはdV/dQを計算することにより決定される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
基準容量Qrefが、1.9〜2.35Vの選択される電圧範囲においてdV/dtまたはdV/dQを計算することにより決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
リチウム−硫黄電池の少なくとも2回の充電サイクルで繰り返される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
リチウム−硫黄電池の各充電サイクルで繰り返される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
時間t、または容量Qの関数として充電中の電池の電圧Vをモニターするための手段、
電池が充電の第1段階および第2段階の間を遷移する電圧領域において、dV/dtが最大となる電池の基準容量Qrefを決定するための手段、
電池の容量が、aを1.1〜1.4として、a×Qrefに達した場合に充電を終止するための手段
を備えるリチウム−硫黄電池のための電池管理システム。
【請求項12】
dV/dtまたはdV/dQが最大となり、d2V/dt2またはd2V/dQ2がゼロとなる基準容量Qrefを決定するための手段を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムをリチウム−硫黄電池に接続するための手段をさらに備える、請求項11〜12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
リチウム硫黄電池を備える、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム−硫黄電池の充電方法に関する。本発明はまたリチウム−硫黄電池を充電するための電池管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なリチウム−硫黄電池は、リチウム金属またはリチウム金属合金から形成されるアノード(陰極)、および硫黄元素または他の電気活性硫黄材料から形成されるカソード(陽極)からなる。硫黄または他の電気活性硫黄含有材料は、その導電性を向上させるため、炭素のような導電性材料と混合してもよい。一般的には、炭素および硫黄は粉砕した後、溶剤およびバインダーと混合し、スラリーを形成する。スラリーは集電体に塗布した後、乾燥させ、溶剤を除去する。得られる構造物はカレンダー加工して複合構造物を形成し、これを所望の形状に切断してカソードを形成する。セパレータはカソード上に配置され、リチウムアノードはセパレータ上に配置される。電解質を次に組立電池中に導入し、カソードおよびセパレータを湿潤させる。
【0003】
リチウム−硫黄電池は二次電池である。リチウム−硫黄電池が放電される場合、カソード中の硫黄は2段階で還元される。第1段階では、硫黄(例えば硫黄元素)は多硫化物種、S
n2−(n≧2)まで還元される。これらの種は一般的には電解質に可溶性である。放電の第2段階では、多硫化物種は硫化リチウム、Li
2Sまで還元され、これは一般的にはアノードの表面上に堆積する。
【0004】
電池が充電される場合、2段階メカニズムは逆に起こり、硫化リチウムが多硫化リチウム、その後リチウムおよび硫黄まで酸化される。この2段階メカニズムはリチウム−硫黄電池の放電および充電プロファイルの両方で見ることができる。従って、リチウム−硫黄電池が充電される場合、その電圧は一般的には電池が充電の第1および第2段階の間を遷移する際に変曲点を通過する。
【0005】
リチウム−硫黄電池は外部電流を電池に印加することにより(再)充電してもよい。一般的には、電池は、例えば2.45Vの、固定カットオフ電圧まで充電される。しかしながら、循環を長期間繰り返すと、電池の容量は低下し得る。実際、特定回数のサイクル後、電池の内部抵抗の増加のため、電池は固定カットオフ電圧まで充電することができなくなり得る。電池を選択されるカットオフ電圧まで繰り返し充電することにより、電池は最終的には繰り返し過充電され得る。望ましくない化学反応は、例えば、電池の電極および/または電解質の損傷を引き起こし得るので、これは電池の寿命に悪影響を及ぼし得る。
【0006】
前述を考慮して、リチウム−硫黄電池の過充電を回避することが望ましい。特許文献1は、リチウム硫黄電池が完全に充電される点を決定するプロセスについて記載する。具体的には、この特許文献1は硝酸リチウムのようなN−O添加剤を電池の電解質に添加するステップについて記載する。この特許文献1の16ページ、第29〜31行の記述によると、添加剤は完全充電の点で電圧が急増する充電プロファイルをもたらすのに効果的である。したがって、この電圧の急増が見られた後に充電を終止することができる。この電圧の急増は、充電の第2段階が完了した後、上述した充電の2段階の間の変曲点を超える電圧で起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/111988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方法は、電池が完全容量に達する際の電池の電圧の非常に急速な増加に基づく。しかしながら、すべてのリチウム−硫黄電池がこうした充電プロファイルを示すわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、
時間(t)または容量(Q)の関数として充電中の電池の電圧Vをモニターするステップ、
電池が充電の第1段階と第2段階との間を遷移する電圧領域において、dV/dtまたはdV/dQが最大となる電池の基準容量Q
refを決定するステップ、
電池の容量が、aを1.1〜1.4として、a×Q
refに達した場合に充電を終止するステップ
を含むリチウム−硫黄電池の充電方法が提供される。
【0010】
好適には、aは1.2〜1.3、より好適には1.25である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】充電の2段階の間の変曲点を示す、リチウム−硫黄電池の充電プロファイルである。
【
図2】
図1のリチウム−硫黄電池の充電プロファイルにおける電池の電圧(V)の時間に関する一階微分(dV/dt)プロファイルである。
【
図3】
図1のリチウム−硫黄電池の充電プロファイルにおける電池の電圧(V)の時間に関する二階微分(d
2V/dt
2)プロファイルである。
【0012】
リチウム−硫黄電池が放電される場合、カソード中に存在する硫黄材料は2段階で還元される。とくに、硫黄はまず、放電の第1段階において、多硫化物種、S
n2−(n≧2)まで還元される。これらの多硫化物種は一般的には電解質に可溶性である。放電の第2段階では、多硫化物種は硫化リチウム、Li
2Sまで還元され、これはリチウムアノードの表面上に堆積する。
【0013】
電池が充電される場合、2段階メカニズムは逆に起こり、硫化リチウムが多硫化リチウム、その後リチウムおよび硫黄まで酸化される。この2段階メカニズムはリチウム−硫黄電池の放電および充電プロファイルの両方で見ることができる。よって、リチウム−硫黄電池が充電される場合、その電圧は、電池が充電の第1および第2段階の間を遷移する際に、時間とともに変曲点を通過する。
図1は、充電の2段階の間の変曲点を示す、リチウム−硫黄電池の充電プロファイルである。
【0014】
本発明では、変曲点での基準容量Q
refは、dV/dtまたはdV/dQが最大となる容量を決定することにより決定される。変曲点は、電池が充電の第1段階と第2段階との間を遷移する電圧領域において起こる。よって、変曲点は、電池が完全充電に近づいた際に充電の第2段階を超えては起こらない。代わりに、変曲点は、有利なことに、充電の第1および第2段階の間で起こる基準点となり、そこから特定の充電サイクルの電池の終止電圧を決定することができる。一般的には、変曲点は、顕著な割合の陰極硫黄材料(例えば硫黄元素)が依然として電解質に(例えば多硫化物として)溶解する時に起こる。好適には、変曲点は、陰極硫黄材料の少なくとも80%、より好適には少なくとも90%、またより好適には少なくとも95%が電解質に(例えば多硫化物として)溶解する時に起こる。溶液中に溶解する陰極硫黄材料の割合は、既知の方法により、例えば、電池中の残留固体硫黄の量から陰極材料として導入された初期量の硫黄材料の割合として決定することができる。
【0015】
好適な実施形態では、dV/dtまたはdV/dQが最大となる点は、2.4V未満の電圧で決定される。一般的には、電池は、1.5〜2.4V、好適には1.8〜2.38V、より好適には1.9〜2.35V、例えば、2.0〜2.35Vの間で放電の第1段階と第2段階との間を遷移する。dV/dtまたはdV/dQの値は、したがって、有利にはこうした電圧範囲内で計算される。1つの実施形態では、dV/dtまたはdV/dQの値は、こうした電圧範囲内で選択される点で計算される。疑義を回避するため、dV/dtまたはdV/dQが最大となる電池の容量Q
refは、当技術分野において周知の方法により決定することができる。例えば、電池の容量Qは、電池が一定電流を用いて充電される場合、電流と時間を掛けることにより決定してもよい。dV/dQが決定される場合でも、したがって、Q
refの値は容易に計算することができる。
【0016】
1つの実施形態では、基準容量Q
refは、電池の電圧が、例えば、2.4V以下、好適には2.38V以下、より好適には2.35V以下の値まで増加した際に充電サイクルのdV/dtまたはdV/dQを計算することにより決定される。1つの実施形態では、基準容量Q
refは、電池の電圧が、例えば、1.5V以上、好適には1.8V以上、より好適には1.9V以上、例えば2.0V以上の値から増加した際に充電サイクルのdV/dtまたはdV/dQを計算することにより決定される。好適な実施形態では、基準容量Q
refは、例えば、少なくとも1.5〜2.4V、好適には1.8〜2.38V、より好適には1.9〜2.35V、さらにより好適には2.0〜2.35V、またより好適には2.1〜2.35V、例えば、2.2〜2.35Vの選択される電圧範囲において、dV/dtまたはdV/dQを計算することにより決定される。1つの実施形態では、基準容量Q
refは、例えば、2.25〜2.35Vの選択される電圧範囲において、dV/dtまたはdV/dQを計算することにより決定される。dV/dtまたはdV/dQの値はある範囲内の選択される点で決定してもよく、dV/dtまたはdV/dQの最大値はこれらの選択される点から決定または計算してもよい。
【0017】
基準容量Q
refは、電池の特定の充電サイクルに応じて変動するので、電池のカットオフ電圧は、電流または同時に発生する電池の特性(例えば電圧対時間充電プロファイル)に応じて変動するだろう。例えば、電池が古くなるにつれ、電池の特性(例えば電圧対時間充電プロファイル)は変化し得、結果として、本発明の方法により決定されるQ
refおよびカットオフまたは終止点の値も変化するだろう。カットオフ点は各個別充電サイクル中の電流または同時に発生する電池の特性に応じて決定することができるため、本発明の方法を用いて電池を過充電するリスクは、したがって、低減される。有利なことに、これは容量低下のリスクを低減する。対照的に、リチウム硫黄電池の従来の充電方法では、電池の充電特性および電池の容量低下の程度に関係なく、電池は所定の電圧または容量まで充電される。電池を過充電するリスクは、したがって、とくに電池が古くなるにつれ、顕著となる。
【0018】
本発明の1つの実施形態では、例えば、選択される電圧範囲において、複数の点でdV/dtまたはdV/dQを計算することが望ましい場合があり得る。d
2V/dt
2またはd
2V/dQ
2がゼロとなることを確認し、dV/dtまたはdV/dQが確かにその最大値となることを確認するため、d
2V/dt
2またはd
2V/dQ
2の値も決定してもよい。好適には、充電は、dV/dtまたはdV/dQがその最大値となり、d
2V/dt
2またはd
2V/dQ
2がゼロとなる場合に終止される。1つの実施形態では、充電は、dV/dtがその最大値となり、d
2V/dt
2がゼロとなる場合に終止される。別の実施形態では、充電は、dV/dQがその最大値となり、d
2V/dQ
2がゼロとなる場合に終止される。疑義を回避するため、dV/dtまたはdV/dQがその最大値となり、d
2V/dt
2またはd
2V/dQ
2がゼロとなる点は、上述したように電池が充電の第1および第2段階の間を遷移する際に起こる。
【0019】
本発明の別の態様では、上述したような方法を行うための電池管理システムが提供される。また別の態様では、
時間t、または容量Qの関数として充電中の電池の電圧Vをモニターするための手段、
電池が充電の第1段階と第2段階との間を遷移する電圧領域において、dV/dtが最大となる電池の基準容量Q
refを決定するための手段、および
電池の容量が、aを1.1〜1.4として、a×Q
refに達した場合に充電を終止するための手段
を備えるリチウム−硫黄電池のための電池管理システムが提供される。
【0020】
本システムは、本システムをリチウム−硫黄電池に接続するための手段をさらに備えてもよい。好適には、本システムはリチウム硫黄電池を備える。
【0021】
好適な実施形態では、リチウム−硫黄電池は、一定電流で電気エネルギーを供給することにより充電される。電流は30分〜12時間、好適には8〜10時間の範囲の時間で電池を充電するように供給してもよい。電流は、0.1〜3mA/cm
2、好適には0.1〜0.3mA/cm
2の範囲の電流密度で供給してもよい。一定電流での充電の代替として、適切な容量に達するまで、リチウム−硫黄電池を一定電圧まで充電することも可能であり得る。適切な電圧は2.4〜3.0Vの範囲である。
【0022】
電気化学電池は、いずれかの適切なリチウム−硫黄電池であってもよい。電池は、一般的にはアノード、カソード、電解質および、有利にはアノードとカソードとの間に配置される多孔質セパレータを備える。アノードは、リチウム金属またはリチウム金属合金で形成してもよい。好適には、アノードは、リチウム箔電極のような、金属箔電極である。リチウム箔は、リチウム金属またはリチウム金属合金で形成してもよい。
【0023】
電気化学電池のカソードは、電気活性硫黄材料および導電性材料の混合物を含む。この混合物は、電気活性層を形成し、これは集電体と接触して配置してもよい。
【0024】
電気活性硫黄材料および導電性材料の混合物は、集電体に溶剤(例えば水または有機溶剤)中のスラリーの形態で塗布してもよい。溶剤は、その後除去してもよく、得られる構造物はカレンダー加工して複合構造物を形成してもよく、これを所望の形態に切断してカソードを形成してもよい。セパレータは、カソード上に配置してもよく、リチウムアノードはセパレータ上に配置してもよい。電解質を次に組立電池中に導入し、カソードおよびセパレータを湿潤させてもよい。
【0025】
電気活性硫黄材料は、硫黄元素、硫黄ベースの有機化合物、硫黄ベースの無機化合物および硫黄含有ポリマーからなっていてもよい。好適には、硫黄元素が用いられる。
【0026】
固体導電性材料は、いずれかの適切な導電性材料であってもよい。好適には、この固体導電性材料は、炭素で形成してもよい。例としてはカーボンブラック、カーボンファイバーおよびカーボンナノチューブが挙げられる。他の適切な材料は、金属(例えば、薄片、充填材および粉末)および導電性ポリマーを含む。好適には、カーボンブラックが用いられる。
【0027】
電気活性硫黄材料(例えば硫黄元素)の導電性材料(例えば炭素)に対する重量比は、1〜30:1、好適には2〜8:1、より好適には5〜7:1であってもよい。
【0028】
電気活性硫黄材料および導電性材料の混合物は、粒子状混合物であってもよい。混合物は、50nm〜20ミクロン、好適には100nm〜5ミクロンの平均粒径を有してもよい。
【0029】
電気活性硫黄材料および導電性材料の混合物(すなわち電気活性層)は、任意でバインダーを含んでもよい。適切なバインダーは、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ポリビニリデン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、メタクリレート(例えばUV硬化性メタクリレート)、およびジビニルエステル(例えば熱硬化性ジビニルエステル)の少なくとも1つから形成してもよい。
【0030】
上述したように、電気化学電池のカソードは、電気活性硫黄材料および固体導電性材料の混合物と接触した集電体をさらに備えてもよい。例えば、電気活性硫黄材料および固体導電性材料の混合物は、集電体上に堆積される。セパレータも電気化学電池のアノードとカソードとの間に堆積される。例えば、セパレータは、電気活性硫黄材料および固体導電性材料の混合物と接触してもよく、ひいては集電体と接触する。
【0031】
適切な集電体は、金属または金属合金で形成される箔、シートまたはメッシュのような、金属基板を含む。好適な実施形態では、集電体はアルミニウム箔である。
【0032】
セパレータは、電池の電極間でのイオンの移動を可能にするいずれかの適切な多孔質基板であってもよい。基板の多孔性は、少なくとも30%、好適には少なくとも50%、例えば、60%超でなければならない。適切なセパレータは、ポリマー材料で形成されるメッシュを含む。適切なポリマーは、ポリプロピレン、ナイロンおよびポリエチレンを含む。不織布ポリプロピレンがとくに好ましい。多層セパレータを用いることが可能である。
【0033】
好適には、電解質は、少なくとも1つのリチウム塩および少なくとも1つの有機溶剤からなる。適切なリチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiN(CF
3SO
2)
2)、ホウフッ化リチウムおよびトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF
3SO
3Li)の少なくとも1つを含む。好適には、リチウム塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムである。
【0034】
適切な有機溶剤は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルプロピルプロピオネート、エチルプロピルプロピオネート、酢酸メチル、ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、ジグリム(2−メトキシエチルエーテル)、テトラグリム、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、ヘキサメチルホスホアミド、ピリジン、ジメチルスルホキシド、リン酸トリブチル、リン酸トリメチル、N,N,N,N−テトラエチルスルファミド、ならびにスルホンおよびそれらの混合物である。好適には、有機溶剤は、スルホンまたはスルホンの混合物である。スルホンの例は、ジメチルスルホンおよびスルホランである。スルホランは、単独の溶剤としてまたは、例えば、他のスルホンと組み合わせて用いてもよい。
【0035】
電解質に用いられる有機溶剤は、例えば、電池の放電中に電気活性硫黄材料が還元される場合に形成される、n=2〜12として、式S
n2−の、多硫化物種を溶解することができなければならない。
【0036】
電解質中のリチウム塩の濃度は、好適には0.1〜5M、より好適には0.5〜3M、例えば、1Mである。リチウム塩は、好適には飽和の少なくとも70%、好適には少なくとも80%、より好適には少なくとも90%、例えば、95〜99%の濃度で存在する。
【0037】
1つの実施形態では、電解質は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムおよびスルホランを有する。
【0038】
電気活性硫黄材料および導電性材料の総量に対する電解質の重量比は、1〜15:1、好適には2〜9:1、より好適には6〜8:1である。
【実施例】
【0039】
この実施例では、時間(t)の関数として充電中の電池の電圧、Vをモニターした。
図1では電圧を時間の関数としてプロットした。
図1からわかるように、電池は約2.2V〜2.4Vの領域において充電の第1段階と第2段階との間を遷移する。この領域では、電池の基準容量、Q
refはある範囲の点でdV/dtを計算することにより決定される。基準容量、Q
refは、dV/dtが最大となり、d
2V/dt
2がゼロとなる点で決定される(
図2および3参照)。これは放電の第1および第2段階の間の変曲点である。この実施例では、電池の充電は容量が1.25Q
refに達した場合に終止された。このプロセスは電池の各充電プロセスで繰り返してもよい。この方法では、終止電圧は問題の充電サイクルでの電池の特定の特性(例えば充電プロファイル)に従って決定されるだろう。終止電圧は容量低下の程度に応じて変動するため、これは過充電のリスクを低減する。