(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
図1乃至
図8には、耳100に装着して使用する音響装置の範疇に含まれるイヤホン1の一実施形態が示されている。イヤホン1は、右耳用としても左耳用としても使用可能である。
【0009】
イヤホン1は、第2エンクロージャとしてのイヤホンケーシング10と、ドライバユニット20(
図8)と、皮膚接触部材としてのキャップ30(
図1乃至
図7)と、介在部材としてのバッフルチューブ40(
図7)と、を有する。
【0010】
イヤホンケーシング10は、アルミ板を絞り加工してなる一体成形品である。イヤホンケーシング10は、ヘッド部11(
図7、
図8)と、ボディ部12と、を有する。
【0011】
図8に示すように、ヘッド部11は、半球殻構造になっている。ボディ部12は、直管の両端を半球殻で塞いだ構造になっている。ヘッド部11とボディ部12とは、ネック部(括れ部)13を介して同軸状に接続されている。ヘッド部11の外径は、ボディ部12の外径よりも大きい。
【0012】
ヘッド部11の先端部(図示左端部)は開口している。ヘッド部11の先端11aには、プロテクタ50が取り付けられている。プロテクタ50は、ヘッド部11と略対称の半球殻状の部材である。プロテクタ50とヘッド部11とが組み合わされて球殻を成している。プロテクタ50は、メッシュ状の金属製の部材である。プロテクタ50は、音声を良好に透過させる。ヘッド部11の先端部の内側には、ドライバユニット20が嵌合する環状突起11bが設けられている。
【0013】
ドライバユニット20は、電気音響変換素子21と、第1エンクロージャとしてのドライバケーシング22と、を有する。電気音響変換素子21の先端(図示左端)には、放音部としての振動板21aが設けられている。振動板21aの背後(図示右側)には、入力電気信号を振動板21aの振動に変換する電気機械結合系(不図示)が設けられている。電気機械結合系は、ボイスコイル、マグネット、等(何れも不図示)で構成される。振動板21aの振動が空気振動すなわち音として放出される。電気音響変換素子21の基端(図示右端)には、一対の端子21bが設けられている。電気音響変換素子21は、ドライバケーシング22に収容されている。ドライバケーシング22は、電気音響変換素子21との間に第1共鳴室61を形成する。
【0014】
ドライバケーシング22は、円筒部22aと、端板部22b、とからなる。円筒部22aは、電気音響変換素子21を包囲している。電気音響変換素子21の振動板21aは、円筒部22aの前端から露出している。電気機械結合系(不図示)の駆動軸は円筒部22aの中心軸と同軸上に配置されている。円筒部22aの後端は、端板部22bで塞がれている。端板部22bの内面(図示左面)には、一対の端子22cが設けられている。端板部22bの外面(図示右面)には、一対の端子22dが設けられている。端板部22bの内面の端子22cと外面の端子22dとは、スルーホール(不図示)で電気的に接続されている。端板部22bの内面の端子22cには、電気音響変換素子21の端子21bが電気的に接続されている。端板部22bには、ポート(通気孔)22eが設けられている。ポート22eは、端板部22bの内面及び外面に開口している。
【0015】
ドライバケーシング22は、円筒部22aがヘッド部11の環状突起11bに嵌合することにより、ヘッド部11内に安定に保持されている。この例では、ドライバケーシング22の後端(図示右端)が、ヘッド部11の内壁に全周に亘って接している。これにより、ヘッド部11と端板部22bとの間に第2共鳴室62が形成されている。第2共鳴室62は、ポート22eを介して第1共鳴室61と連通している。
【0016】
また、この例では、ボディ部12の内部空間が第3共鳴室63をなす。第3共鳴室63は、ネック部13の内部空間64を介して第2共鳴室62と連通している。すなわち、第2共鳴室62と第3共鳴室63との連通部(内部空間64)は、くびれている。
【0017】
ボディ部12の軸方向(図示左右方向)の中央の下部には、ケーブル挿入孔(不図示)が設けられている。ボディ部12には、ケーブル挿入孔(不図示)と同軸にブッシング71が取り付けられている。ボディ部12内すなわち第3共鳴室63には、ブッシング71を介してケーブル72の一端側が挿入されている。第3共鳴室63内で、ケーブル72の一端部がボディ部12に固定され、その一端部から2本のリード線73が引き出されている。リード線73はそれぞれ端子21bに電気的に接続されている。ケーブル72の他端部は、プラグ(不図示)が備えられて音楽再生装置などに接続される。
【0018】
ボディ部12は、イヤホン1を耳100に付け外しする際に指で摘まむ部分として機能し得る。
【0019】
図1乃至
図7に示すように、キャップ30は、略球形の部材である。キャップ30は、スポンジ材で形成されている。キャップ30に使用されるスポンジ材は、通気性の高い連続気泡構造を有している。その代表例は、高発泡・高通気ウレタンフォームである。キャップ30は、柔軟性、弾力性及び通気性を有する。キャップ30は、音を透過させる部材である。キャップ30は、耳障りな高域成分の音を取り除くアナログフィルターとして機能しうる。
【0020】
図7に示すように、キャップ30は、バッフルチューブ40及びプロテクタ50が取り付けられている状態のヘッド部11を覆う。キャップ30とバッフルチューブ40とを組み合わせることにより、ボディ部12側(図示右側)の端部を除き、略球体をなす。電気音響変換素子21の振動板21a及び側部21cは、キャップ30で覆われる。キャップ30は、電気音響変換素子21を外耳道110(
図9)の内壁111から離して支持する。この例では、電気音響変換素子21とキャップ30との間に、ドライバケーシング22、プロテクタ50、ヘッド部11及びバッフルチューブ40が介在している。
【0021】
バッフルチューブ40は、イヤホンケーシング10のヘッド部11側に外装されている。バッフルチューブ40は、ボディ部12のヘッド部11側の端部からプロテクタ50の中間部に延びている。バッフルチューブ40のボディ部12側の端部40aは、キャップ30で覆われない。端部40aの表面は、自然状態におけるキャップ30の表面と同じ曲率の部分球面である。
【0022】
バッフルチューブ40の先端部(図示左端部)40bは開口している。バッフルチューブ40の先端部40bとプロテクタ50との間には、環状の狭い隙間が形成されている。バッフルチューブ40のボディ部12側の端部40aは、全周に亘ってボディ部12に気密に接している。端部40aには、内側に向けて環状の返し部41が設けられている。返し部41が、ボディ部12の半球殻に倣って面接触することにより、バッフルチューブ40とボディ部12との間の気密性が保たれている。返し部41は、ネック部13に達している。
【0023】
バッフルチューブ40は、電気音響変換素子21との間に空気室65を形成する。この例では、ヘッド部11とバッフルチューブ40との間に空気室65が形成されている。
【0024】
バッフルチューブ40は、電気音響変換素子21とキャップ30との間に存在する。この例では、バッフルチューブ40と電気音響変換素子21との間に、ドライバケーシング22及びヘッド部11が存在している。
【0025】
バッフルチューブ40は、イヤホンケーシング10よりも軟らかい。
【0026】
バッフルチューブ40は、弾力性を有する。バッフルチューブ40は、エラストマでできている。エラストマの例として、シリコーンゴムを挙げることができる。エラストマでできたバッフルチューブ40とスポンジ材(発泡ウレタンフォーム、発泡シリコーン、等)でできたキャップ30との間には、比較的大きい摩擦力が働く。その摩擦力が電気音響変換素子21とキャップ30との相対移動を難くしている。これにより、電気音響変換素子21に対するキャップ30の位置ずれ、及びイヤホンケーシング10からのキャップ30の不用意な離脱或いは望まない離脱が防止される。
【0027】
上記のように構成された第1実施形態のイヤホン1は、
図9に示すように、キャップ30が外耳道110に嵌まることにより、バッフルチューブ40と外耳道110の内壁111との間に、キャップ30が介在する。電気音響変換素子21は、外耳道110の内壁111から離して支持される。電気音響変換素子21は、振動板21aを外耳道110内に向けて配置される。電気音響変換素子21の振動板21aは、外耳道110内の入り口112付近に配置される。そして、電気音響変換素子21から発せられた音がキャップ30を放射状に透過して外耳道110内に放音される。音導管93及びイヤピース94(
図22参照)が存在しないため、外耳道110内の入り口112付近にて電気音響変換素子21から発せられた再生音が、キャップ30を透過して外耳道110の皮膚やその周辺の骨に伝達される。
【0028】
よって、第1実施形態のイヤホン1によれば、電気音響変換素子21から発せられた音を、外耳道110周辺の音を感じる部分の能力を最大限に活用して、自然な音響として認知することができる。
【0029】
また、第1実施形態のイヤホン1によれば、電気音響変換素子21の放音部としての振動板21aが外耳道110内の入り口112付近に配置されるので、電気音響変換素子21から発せられる音を効率良く外耳道110に導くことができる。よって、小寸(小出力)の電気音響変換素子21を使用しているにもかかわらず、その再生音を自然な音響として認知できる。
【0030】
また、第1実施形態のイヤホン1は、音導管93(
図22参照)を使用しないため、電気音響変換素子21から聴覚器官に伝達される音域が制限されない。よって、電気音響変換素子21の性能を十分に発揮させることができる。
【0031】
また、第1実施形態のイヤホン1は、キャップ30の外形が球形であるので、多くの人の外耳道110にフィットし易い。また、キャップ30の外形が球形であることにより、電気音響変換素子21から発せられる音が偏りなく放射状に外耳道110内に放音される。また、耳に対する装着角度が多少変化しても、バッフルチューブ40と外耳道110の内壁111との間に、キャップ30が介在し、電気音響変換素子21が外耳道110の内壁111から離して支持される。
【0032】
また、第1実施形態のイヤホン1は、耳100に接触する部分がキャップ30だけであり且つキャップ30が柔軟なスポンジ材からなるので、耳100への装着感が良好で、長時間着けていても耳100に痛みが生じにくい。
【0033】
また、第1実施形態のイヤホン1は、外耳道110に嵌まるキャップ30が通気性を有するスポンジ材からなるので、外耳道110を気密に密閉しない。このためタッチノイズが発生しにくい。
【0034】
また、第1実施形態のイヤホン1は、ドライバケーシング22及びヘッド部11とキャップ30との間にバッフルチューブ40が存在するので、外耳道110を気密に密閉しないにもかかわらず、中低音再現性が良い。外耳道110外への音漏れが抑制されるからである。また、バッフルチューブ40の内部空間が空気室65をなすので、中低音再現性が更に良好である。バッフルチューブ40は、空気室65内の空気を共振させることで、中低音域の音響増幅器として機能し得る。
【0035】
また、第1実施形態のイヤホン1は、バッフルチューブ40の先端部40bとプロテクタ50との間に環状の狭い隙間が形成されていることで、電気音響変換素子21の振動板21aから発せられ後方(外耳道110の外側)に回り込む音が空気室65内に伝達し易くなる。そして、バッフルチューブ40のボディ部12側の端部40aが全周に亘ってボディ部12に気密に接していることで、空気室65内に伝達した音が空気室65の後方(外耳道110の外側)に伝達し難くなる。これにより、外耳道110外への音漏れがより効果的に抑制され、中低音再現性がより良好となる。
【0036】
また、第1実施形態のイヤホン1は、第1共鳴室61と第2共鳴室62と第3共鳴室63とを備え、第1共鳴室61と第2共鳴室62とが細い通路(ポート22e)で結ばれているので、低音が増幅される。そして、第2共鳴室62と第3共鳴室63とが細い通路(内部空間64)で結ばれているので、低音が更に増幅される。
【0037】
[第2実施形態]
以下の説明において、既に説明した実施形態と同一又は機能的に共通の構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
図10及び
図11に示すイヤホン2は、バッフルチューブ40がネック部13からプロテクタ50の中間部に延びている。バッフルチューブ40は、ネック部13及びヘッド部11の基端部(図示右端部)に全周に亘って気密に接している。キャップ30とバッフルチューブ40とを組み合わせることにより、バッフルチューブ40とネック部13との境界部分を除き、略球体をなす。それは、
図7における球体よりも真球に近い球体である。
【0039】
第2実施形態によれば、キャップ30とバッフルチューブ40とを組み合わせてなるほぼ完全な球体を備えた斬新なデザインのイヤホン2を実現し得る。その他の作用・効果は第1実施形態と同様である。
【0040】
[第3実施形態]
図12乃至
図16に示すイヤホン3では、イヤホンケーシング10が、細い棒状のボディ部14を有している。ケーブル72は、ヘッド部11の基端部(図示右側端部)に設けられた孔11cから、ヘッド部11の外に延びている。バッフルチューブ40の基端部(図示右側端部)には、ケーブル72との干渉を避けるための切欠(不図示)が設けられている。ボディ部14は、先端部(図示右側端部)が丸い円筒形状である。ボディ部14の径寸法は、
図10及び
図11に示すイヤホン2のネック部13の径寸法と同じである。このイヤホンケーシング10は、
図11におけるヘッド部11と細い棒状のボディ部14とが、
図11におけるネック部13を介さずに一体化した構造になっている。ボディ部14は、中空構造であっても充実構造であってもよい。
【0041】
第3実施形態によれば、キャップ30とバッフルチューブ40とを組み合わせてなるほぼ完全な球体とその球体から突出する細い棒状のボディ部14とを備えた、構造がシンプルで且つデザインが斬新なイヤホン3を実現し得る。ボディ部14は、イヤホン3を耳100に付け外しする際に指で摘まむ部分として機能し得る。その他の作用・効果は第1実施形態及び第2実施形態と同様である。ただし、ボディ部14が充実構造である場合、ボディ部14に第3共鳴室63(
図11参照)が存在しない。また、ボディ部14が中空構造であっても、その内部空間の容積は、第3共鳴室63(
図11参照)よりも小さい。よって、イヤホン3の低音再現性は、第1実施形態及び第2実施形態のイヤホン1、2とは異なる。
【0042】
[第4実施形態]
図17及び
図18に示すイヤホン4は、イヤホンケーシング10がヘッド部11のみを有する。ヘッド部11の基端部には、ケーブル固定蓋15が取り付けられている。ケーブル固定蓋15はヘッド部11に強固に固定されている。ケーブル72の一端部(図示左側端部)は、ケーブル固定蓋15の中央の孔15aに挿入されている。ケーブル72の一端部には、抜け防止リング16が取り付けられている。抜け防止リング16は、ケーブル72のシース72aに強固に固定されている。抜け防止リング16は、ケーブル固定蓋15からのケーブル72の抜けを防止する。抜け防止リング16は、ケーブル固定蓋15に対するケーブル72の一端部の姿勢を安定に保つ。これにより、リード線73と端子21bとの接続部に張力などが作用しないようになっている。
【0043】
第4実施形態によれば、キャップ30とバッフルチューブ40とを組み合わせてなるほぼ完全な球体からケーブル72だけが延びる、構造がシンプルで且つデザインが斬新なイヤホン4を実現し得る。その他の作用・効果は第2実施形態と同様である。ただし、ボディ部12(
図10及び
図11参照)を備えていないため、キャップ30及びバッフルチューブ40とからなる部分が、イヤホン4を耳100に付け外しする際に指で摘まむ部分になる。ケーブル72のヘッド部11との接続部近傍を指で摘まんで、イヤホン4を耳100に付け外しすることも可能である。
【0044】
[第5実施形態]
図19に示すイヤホン5は、バッフルチューブ40の内側に、音響振動吸収層42が設けられている。音響振動吸収層42は、バッフルチューブ40とヘッド部11とが近接する部分の空間(空気室65の図示右側の空間)を埋めるようにして設けられている。音響振動吸収層42は、シリコーンを主原料とした柔らかいゲル状の素材からなる。ゲル状の素材の例として、株式会社タイカにより開発されたαGEL(登録商標)を挙げることができる。
【0045】
第5実施形態によれば、バッフルチューブ40の内側に音響振動吸収層42が設けられているので、外耳道110外への音漏れを第4実施形態よりも効果的に抑制し得る。その他の作用・効果は第4実施形態と同様である。ただし、第4実施形態よりも空気室65の容積が小さくなるため、バッフルチューブ40の音響増幅器としての性能は第4実施形態と相違する。
【0046】
なお、本発明の実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的
思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。
【0047】
例えば、第1乃至第5実施形態のイヤホン1乃至5は、ケーブル72がイヤホンケーシング10に常時接続されているが、イヤホンケーシング10にリケーブル用の端子を設け、当該端子に任意のケーブルを接続するようにしてもよい。
【0048】
また、第1乃至第5実施形態のイヤホン1乃至5は、バッフルチューブ40の先端部40bとプロテクタ50との間に、環状の狭い隙間が形成されているが、当該隙間は必須の構成要素ではない。当該隙間が存在しなくても或いは当該隙間が存在しない方が、中低音再現性を高める上で有利である可能性もある。また、バッフルチューブ40とヘッド部11とにより密閉構造の空気室65を形成してもよい。電気音響変換素子21から発せられた音で密閉構造の空気室65内の空気が共振する構造により、バッフルチューブ40がより高性能な音響増幅器として機能し得る可能性がある。
【0049】
また、第1乃至第5実施形態のイヤホン1乃至5は、第1共鳴室61を備えているが、第1共鳴室61は必須の構成要素ではない。
【0050】
また、第1乃至第3実施形態のイヤホン1乃至3は、第2共鳴室62を備えているが、第2共鳴室62は必須の構成要素ではない。
【0051】
また、第1及び第2実施形態のイヤホン1、2は、第3共鳴室63を備えているが、第3共鳴室63は必須の構成要素ではない。
【0052】
また、第1乃至第5実施形態のイヤホン1乃至5は、イヤホンケーシング10を備えているが、イヤホンケーシング10は必須の構成要素ではない。イヤホンケーシング10を省略し、
図20に示すように、ドライバユニット20にキャップ30を被せてもよい。
図20では、介在部材としてのチューブ43がドライバユニット20に直接取り付けられている。
【0053】
また、第1乃至第5実施形態のイヤホン1乃至5は、空気室65を備えているが、空気室65は必須の構成要素ではない。
図20に示す第6実施形態のイヤホン6では、チューブ43がドライバユニット20の側面に密接しているため、チューブ43とドライバユニット20との間に空気室65は存在しない。
【0054】
また、第1乃至第5実施形態のイヤホン1乃至5は、第1エンクロージャとしてのドライバケーシング22を備えているが、ドライバケーシング22は必須の構成要素ではない。例えば、
図20におけるドライバユニット20が電気音響変換素子21自体であってもよい。この場合、電気音響変換素子21の端子21bにケーブル72のリード線73が直接接続される。また、介在部材としてのチューブ43が電気音響変換素子21に直接取り付けられる。また、介在部材としてのチューブ43を電気音響変換素子21に直接取り付け、チューブ43と電気音響変換素子21との間に空気室を設けてもよい。たとえば、チューブ43の軸方向中間部を膨らませることで、チューブ43と電気音響変換素子21との間に空気室65を設けることが可能である。
【0055】
また、第1乃至第6実施形態のイヤホン1乃至6は、球形のキャップ30を備えているが、キャップ30の形状は任意である。キャップ30の形状は、例えば、楕円球体状、円柱状、弾丸状、等でもよい。
【0056】
また、第1乃至第5実施形態のイヤホン1乃至5において、吸音材からなるバッフルチューブ40を使用してもよい。バッフルチューブ40自体が音を吸収することで、バッフルチューブ40による外耳道110外への音漏れ防止性能を高めることができる。第6実施形態のイヤホン6において、吸音材からなるチューブ43を使用してもよい。チューブ43が音を吸収することで、外耳道110外への音漏れを抑制できる。
【0057】
また、上記実施形態では、キャップ30としてスポンジ材からなる部材を用いているが、伸縮性、柔軟性及び通気性を有する部材であれば、スポンジ材からなる部材に限らない。
【0058】
また、上記実施形態では、放音部としての振動板21aが外耳道110内の入り口112付近に配置される装着態様(
図9)を例示したが、それ以外の装着態様とすることも可能である。本発明に係る音響装置の装着態様には、放音部としての振動板21aが外耳道110の丁度入り口112に配置される装着態様が含まれる。本発明に係る音響装置の装着態様には、放音部としての振動板21aが外耳道110外の入り口112付近に配置される装着態様が含まれる。
【0059】
また、上記実施形態では、電気音響変換素子21の放音部として振動板21aを例示したが、放音部は振動板21aに限らない。放音部は、音声発生源となる振動体から発せられた音の出口(窓)であってもよい。すなわち、電気音響変換素子21は、ダイナミック型に限らず、バランスド・アーマチュア型でもよい。また、電気音響変換素子21は、低域用、中域用、高域用、等、音響特性の異なる複数の電気音響変換素子で構成されてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、音響装置の実施形態の例として、イヤホンの形態例を示したが、本発明に係る音響装置には、イヤホン以外の音響装置も含まれる。イヤホン以外の音響装置の例として、補聴器、インカム、等、マイクを備えた機器を挙げることができる。また、本発明に係る音響装置には、左右両方の耳に装着して使用するものと、左右どちらか一方の耳に装着して使用するものとが含まれる。
【0061】
[総括]
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0062】
(1) 耳(耳100)に装着して使用する音響装置(イヤホン1乃至6)であって、
前記音響装置は、電気音響変換素子(電気音響変換素子21)と、皮膚接触部材(キャップ30)と、介在部材(バッフルチューブ40)と、を有し、
前記電気音響変換素子は、その放音部(振動板21a)及び側部(側部21c)が前記皮膚接触部材で覆われ、
前記皮膚接触部材は、柔軟性、弾力性及び通気性を有し、且つ、音を透過させる部材であり、
前記介在部材は、前記電気音響変換素子に直接又は間接的に固定されて前記皮膚接触部材と前記電気音響変換素子との間に存在するとともに、前記皮膚接触部材との間の摩擦力により前記電気音響変換素子と前記皮膚接触部材との相対移動を難くし、
前記皮膚接触部材が外耳道(外耳道110)に嵌まることにより、前記電気音響変換素子が当該外耳道の内壁(内壁111)から離して支持される、音響装置。
【0063】
(1)の音響装置は、前記皮膚接触部材が柔軟性、弾力性及び通気性を有する部材であるので、耳への装着感が良好で、長時間着けていても耳に痛みが生じにくい。
(1)の音響装置は、前記皮膚接触部材が通気性を有するので、耳への装着時に外耳道を気密に密閉しない。このため所謂タッチノイズが発生しにくい。
(1)の音響装置は、前記介在部材と前記皮膚接触部材との間の摩擦力により前記電気音響変換素子と前記皮膚接触部材との相対移動を難くしているので、前記電気音響変換素子に対する前記皮膚接触部材の位置ずれや、前記皮膚接触部材の不用意な離脱が防止される。
【0064】
(2) 前記介在部材は、前記電気音響変換素子との間に空気室(空気室65)を形成する、(1)の音響装置。
【0065】
(2)の音響装置は、前記介在部材と前記電気音響変換素子との間に空気室が存在するので、中低音再現性が良い。
【0066】
(3) 前記電気音響変換素子を収容する第1エンクロージャ(ドライバケーシング22)と、
前記第1エンクロージャを収容する第2エンクロージャ(イヤホンケーシング10)と、を更に有し、
前記第1エンクロージャは、前記電気音響変換素子との間に第1共鳴室(第1共鳴室61)を形成し、
前記第2エンクロージャは、前記第1エンクロージャとの間に第2共鳴室(第2共鳴室62)を形成し、
前記第1エンクロージャには、前記第1共鳴室と前記第2共鳴室とを互いに連通させるポート(ポート22e)が設けられている、(1)又は(2)の音響装置。
【0067】
(3)の音響装置は、前記第1共鳴室及び前記第2共鳴室により低音が増幅されるので、中低音再現性がより良い。
【0068】
(4) 前記第2エンクロージャの内部には、前記第2共鳴室と連通する第3共鳴室(第3共鳴室63)が形成されている、(3)の音響装置。
【0069】
(4)の音響装置は、前記第2共鳴室および前記第3共鳴室により低音が更に増幅されるので、中低音再現性が更に良い。
【0070】
(5) 前記第2エンクロージャにおける前記第2共鳴室と前記第3共鳴室との連通部(内部空間64)は、くびれている、(4)の音響装置。
【0071】
(5)の音響装置は、前記第2共鳴室と前記第3共鳴室との連通部における空気の粘性増大により低音が更に増幅されるので、中低音再現性が更に良い。
【0072】
(6) 前記皮膚接触部材は、スポンジ材からなる部材である、(1)乃至(5)のいずれか1に記載の音響装置。
【0073】
(6)の音響装置は、耳に接触する部分がスポンジ材からなる部材だけであるので、耳への装着感が良好で、長時間着けていても耳に痛みが生じにくい。
【0074】
(7) 前記皮膚接触部材の外形は、球形である、(1)乃至(6)のいずれか1に記載の音響装置。
【0075】
(7)の音響装置は、前記皮膚接触部材の外形が球形であることで、多くの人の外耳道にフィットし易い。また、前記電気音響変換素子から発せられる音が偏りなく放射状に外耳道内に放音される。また、耳に対する装着角度が多少変化しても、前記介在部材と外耳道の内壁との間に、前記皮膚接触部材が介在し、前記電気音響変換素子が当該外耳道の内壁から離して支持される。
【解決手段】イヤホン6は、電気音響変換素子21と、キャップ30と、チューブ43と、を有する。電気音響変換素子21は、放音部21a及び側部21cがキャップ30で覆われる。キャップ30は、柔軟性、弾力性及び通気性を有し、且つ、音を透過させる部材である。チューブ43は、電気音響変換素子21に直接又は間接的に固定される。チューブ43は、電気音響変換素子21とキャップ30との間に存在する。チューブ43とキャップ30との間に摩擦力が生じ、電気音響変換素子21とキャップ30とが相対移動し難くい。キャップ30が外耳道に嵌まることにより、電気音響変換素子21が当該外耳道の内壁から離れて支持される。