(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442829
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】透析装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
A61M1/16 111
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-18537(P2014-18537)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-144722(P2015-144722A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 忠行
(72)【発明者】
【氏名】上田 満隆
(72)【発明者】
【氏名】山下 悦孝
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 拓
(72)【発明者】
【氏名】斎尾 英俊
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−077869(JP,A)
【文献】
特開2005−192921(JP,A)
【文献】
特開2005−176221(JP,A)
【文献】
特開2007−075410(JP,A)
【文献】
特表2010−515494(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0234080(US,A1)
【文献】
特表2013−516293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00−1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析装置本体と、
前記透析装置本体に電気的に接続されたパラメトリックスピーカーとを備え、
前記透析装置本体は、前記パラメトリックスピーカーに電気的に接続されて前記パラメトリックスピーカーの指向方向および可聴音発生位置を調整する制御部を有し、
前記パラメトリックスピーカーは、前記透析装置本体に搭載されており、
前記パラメトリックスピーカーは、前記透析装置本体の上端部に配置されていることにより、前記透析装置本体の正面側および背面側の両方に可聴音を発生可能に設けられている、透析装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記パラメトリックスピーカーから発生させる音声の内容に応じて、予め前記制御部に入力されていた前記パラメトリックスピーカーの指向方向および可聴音発生位置の複数のパターンの中から1つのパターンを選択し、該1つのパターンに合うように前記パラメトリックスピーカーの指向方向および可聴音発生位置を調整する、請求項1に記載の透析装置。
【請求項3】
前記制御部が人体検出センサーと接続され、
前記制御部は、前記人体検出センサーの検出結果に基づいて、前記パラメトリックスピーカーの指向方向および可聴音発生位置を調整する、請求項1または2に記載の透析装置。
【請求項4】
前記人体検出センサーが対象人物識別機能を有する、請求項3に記載の透析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析装置に関し、特に、音声信号を出力可能な透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超指向性スピーカー装置の構成を開示した先行文献として、特開2002−354572号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された超指向性スピーカー装置は、可聴音信号を生成する音源と、超音波帯域に属する搬送波を利用して、可聴音信号の音響放射特性を制御する音響放射制御器と、音響放射制御器によって音響放射特性が制御された可聴音信号を増幅する増幅器と、増幅器が増幅した可聴音信号を受けて可聴音を放射するスピーカーとを備える。
【0003】
音の指向方向および指向性の度合いを変え得るパラメトリックスピーカーを開示した先行文献として、特開2004−349816号公報(特許文献2)がある。特許文献2に記載されたパラメトリックスピーカーは、超音波帯域の周波数で電圧が振動する信号を生成する発振器と、発振器が生成した信号を音声信号に基づいて振幅変調する振幅変調器と、振幅変調器によって変調された被変調信号を超音波に変換して空中に放射する複数の電気音響変換器を並べてなる電気音響変換器アレイと、各電気音響変換器に入力される被変調信号の位相を変化させる複数の移相器を有する位相制御手段とを備え、位相制御手段によって各電気音響変換器に入力される被変調信号の位相を変化させることにより、音の指向方向を変え得る。
【0004】
電器音響変換器から可聴音が発生する位置までの距離を変え得るパラメトリックスピーカーを開示した先行文献として、特開2004−349817号公報(特許文献3)がある。特許文献3に記載されたパラメトリックスピーカーは、超音波帯域の周波数で電圧が振動する信号を生成する発振手段と、発振手段が生成した信号を音声信号に基づいて振幅変調する振幅変調器と、振幅変調器によって変調された被変調信号を超音波に変換して空中に放射する電気音響変換器とを備える。発振手段は、電圧制御発振器と搬送波発生回路とで構成され、その発振周波数が可変である。パラメトリックスピーカーは、発振手段の発振周波数を変えることにより、電気音響変換器から放射された超音波が自己復調して可聴音が発生する位置までの距離を変えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−354572号公報
【特許文献2】特開2004−349816号公報
【特許文献3】特開2004−349817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の透析装置においては、透析装置の異常を、警報音を発して医療従事者に知らせている。この警報音は、透析装置から離れた位置にいる医療従事者に聞こえるように発せられるため、透析装置の近くにいる患者にとって不快な騒音であった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、告知対象者にのみ聞こえる音声を発信可能な透析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づく透析装置は、透析装置本体と、透析装置本体に電気的に接続されたパラメトリックスピーカーとを備える。透析装置本体は、パラメトリックスピーカーに電気的に接続されてパラメトリックスピーカーの指向方向および可聴音発生位置を調整する制御部を有する。
【0009】
本発明の一形態においては、制御部は、パラメトリックスピーカーから発生させる音声の内容に応じて、予め制御部に入力されていたパラメトリックスピーカーの指向方向および可聴音発生位置の複数のパターンの中から1つのパターンを選択し、この1つのパターンに合うようにパラメトリックスピーカーの指向方向および可聴音発生位置を調整する。
【0010】
本発明の一形態においては、パラメトリックスピーカーは、透析装置本体に搭載されている。
【0011】
本発明の一形態においては、制御部が人体検出センサーと接続されている。制御部は、人体検出センサーの検出結果に基づいて、パラメトリックスピーカーの指向方向および可聴音発生位置を調整する。
【0012】
本発明の一形態においては、人体検出センサーが対象人物識別機能を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透析装置において告知対象者にのみ聞こえる音声を発信できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】透析室内において、複数の透析装置が配置された状態を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る透析装置の外観を示す斜視図である。
【
図3】同実施形態に係る透析装置において、透析装置本体の操作手順を告知する音声をオペレータに向けて発信している状態を示す斜視図である。
【
図4】同実施形態に係る透析装置において、透析装置本体の異常を告知する音声をスタッフルーム内のスタッフに向けて発信している状態を示す斜視図である。
【
図5】同実施形態に係る透析装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】同実施形態に係る透析装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態の変形例に係る透析装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】同変形例に係る透析装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る透析装置について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、透析室内において、複数の透析装置が配置された状態を示す平面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る透析装置の外観を示す斜視図である。
【0017】
図1,2に示すように、透析室1内において、患者が位置するベッド4とベッド4に隣接して配置された透析装置5とからなる複数の透析ユニットが、複数の列をなすように配置されている。透析室1の角部には、スタッフ(医療従事者)3が常駐するスタッフルーム2が配置されている。なお、透析室1内における透析ユニットの配置は、上記に限られない。
【0018】
図2に示すように、透析装置5は、透析装置本体6と、透析装置本体6に電気的に接続されたパラメトリックスピーカー7とを備える。本実施形態に係る透析装置5においては、パラメトリックスピーカー7は、透析装置本体6に搭載されている。ただし、パラメトリックスピーカー7の配置は上記に限られず、たとえば、透析装置本体6に隣接して配置されていてもよい。
【0019】
パラメトリックスピーカー7としては、指向方向および可聴音発生位置を調整可能な公知のパラメトリックスピーカーを用いることができる。本実施形態に係るパラメトリックスピーカー7は、透析装置本体6の状態に応じて複数種類の音声を発信する。以下、音声の内容に応じて変化するパラメトリックスピーカー7の動作について説明する。
【0020】
図3は、本実施形態に係る透析装置において、透析装置本体の操作手順を告知する音声をオペレータに向けて発信している状態を示す斜視図である。
図4は、本実施形態に係る透析装置において、透析装置本体の異常を告知する音声をスタッフルーム内のスタッフに向けて発信している状態を示す斜視図である。
図5は、本実施形態に係る透析装置の構成を示すブロック図である。
図6は、本実施形態に係る透析装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
【0021】
図3〜6に示すように、本実施形態に係る透析装置本体6は、パラメトリックスピーカー7に電気的に接続されてパラメトリックスピーカー7の指向方向および可聴音発生位置を調整する制御部10を有する。また、透析装置本体6は、透析装置本体6への操作信号を制御部10に入力するために制御部10に電気的に接続された入力部11と、透析装置本体6の各機構からの出力信号を制御部10に入力するために制御部10に電気的に接続された出力部12とを含む。
【0022】
制御部10は、パラメトリックスピーカー7から発生させる音声の内容に応じて、予め制御部10に入力されていたパラメトリックスピーカー7の指向方向および可聴音発生位置の複数のパターンの中から1つのパターンを選択し、この1つのパターンに合うようにパラメトリックスピーカー7の指向方向および可聴音発生位置を調整する。
【0023】
本実施形態においては、パラメトリックスピーカー7の指向方向および可聴音発生位置の2つのパターンが予め制御部10に入力されている。制御部10は、透析装置本体6の状態に応じてパラメトリックスピーカー7から発信させる音声を決定し、決定した音声の内容に応じてパラメトリックスピーカー7の指向方向および可聴音発生位置の2つのパターンの中から1つのパターンを選択する。
【0024】
すなわち、制御部10は、パラメトリックスピーカー7の指向方向を音声の告知対象者に向けて、パラメトリックスピーカー7の可聴音発生位置を音声の告知対象者の存在位置にする。
【0025】
具体的には、スタッフ(医療従事者)3が透析装置本体6の操作をした場合、入力部11から制御部10に操作信号が入力される。信号が入力された制御部10は、
図6に示すように、入力された信号が入力部11からの操作信号か否かを判定する(S100)。なお、透析装置本体6の操作としては、透析液および血液の流量設定、または、透析装置本体6に異常が発生した際の復旧などがある。
【0026】
制御部10に入力された信号が入力部11からの操作信号である場合、制御部10は、入力された操作信号に基づいてパラメトリックスピーカー7から発信させる音声を決定するとともに、
図3,6に示すように、パラメトリックスピーカー7の指向方向をオペレータであるスタッフ(医療従事者)3に向けて、パラメトリックスピーカー7の可聴音発生位置をオペレータであるスタッフ(医療従事者)3の存在位置9aにする(S101)。
【0027】
この場合、パラメトリックスピーカー7から、オペレータであるスタッフ(医療従事者)3のみに対して、入力部11への入力手順などの透析装置本体6の操作手順を説明する音声が告知される。
【0028】
透析装置本体6のいずれかの機構において異常が発生した場合、出力部12から制御部10に異常が発生した機構からの出力信号が入力される。信号が入力された制御部10は、
図6に示すように、入力された信号が入力部11からの操作信号か否かを判定する(S100)。なお、異常が発生した機構からの出力信号としては、許容量以上の気泡を検知した気泡センサーからの出力信号、静脈圧が一定圧力を超えたことを検知した圧力センサーからの出力信号、または、透析液の温度が一定温度を超えたことを検知した温度センサーからの出力信号などがある。
【0029】
制御部10に入力された信号が入力部11からの操作信号ではない場合、制御部10は、入力された出力信号に基づいてパラメトリックスピーカー7から発信させる音声を決定するとともに、
図4,6に示すように、パラメトリックスピーカー7の指向方向をスタッフルーム2内のスタッフ(医療従事者)3に向けて、パラメトリックスピーカー7の可聴音発生位置をスタッフルーム2内のスタッフ(医療従事者)3の存在位置9bにする(S102)。
【0030】
この場合、パラメトリックスピーカー7から、スタッフルーム2内のスタッフ(医療従事者)3のみに対して、警報音または異常が発生した透析装置本体6の機番などが告知される。
【0031】
上記のように、本実施形態に係る透析装置5においては、告知対象者にのみ聞こえる音声を発信できる。その結果、患者および医療従事者の両方に対する透析装置5の快適性および利便性を向上することができる。
【0032】
なお、制御部10が人体検出センサーと接続されていてもよい。
図7は、本実施形態の変形例に係る透析装置の構成を示すブロック図である。
図8は、本実施形態の変形例に係る透析装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態の変形例に係る透析装置においては、人体検出センサー13が透析装置本体6の制御部10と電気的に接続されている。人体検出センサーは、たとえば、赤外線センサー、マイクロ波電波センサー、無線センサーまたはこれらの組み合わせによって構成されている。
【0033】
好ましくは、人体検出センサーが、スタッフ(医療従事者)3のみを識別して検出する対象人物識別機能を有する。この場合、透析室1内にいわゆるユビキタスセンサネットワークが構築されている。スタッフ(医療従事者)3は無線タグを付帯し、人体検出センサーは無線タグの位置を検出する。
【0034】
具体的には、無線タグが信号を発し、透析室1内に配置された複数の無線ノードでその信号の受信電波強度を測定する。測定した各受信電波強度は位置検出サーバに集められ、位置検出サーバは位置検出アルゴリズムにより無線タグの位置を検出する。なお、位置検出アルゴリズムとしては、公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0035】
本実施形態の変形例に係る透析装置においては、人体検出センサー13によって透析室1内のスタッフ(医療従事者)3の位置を検出し、その検出結果に基づいて制御部10が、パラメトリックスピーカー7の指向方向をスタッフ(医療従事者)3に向け、パラメトリックスピーカー7の可聴音発生位置をスタッフ(医療従事者)3の存在位置にすることが可能である。
【0036】
具体的には、変形例に係る透析装置において信号が入力された制御部10は、
図8に示すように、入力された信号が入力部11からの操作信号か否かを判定する(S100)。制御部10に入力された信号が入力部11からの操作信号である場合、制御部10は、入力された操作信号に基づいてパラメトリックスピーカー7から発信させる音声を決定するとともに、
図3,8に示すように、パラメトリックスピーカー7の指向方向をオペレータであるスタッフ(医療従事者)3に向けて、パラメトリックスピーカー7の可聴音発生位置をオペレータであるスタッフ(医療従事者)3の存在位置9aにする(S101)。
【0037】
制御部10に入力された信号が入力部11からの操作信号ではない場合、制御部10は、入力された出力信号に基づいてパラメトリックスピーカー7から発信させる音声を決定するとともに、人体検出センサー13によって透析室1内のスタッフ(医療従事者)3の位置を検出する(S200)。
【0038】
次に、制御部10は、
図4,8に示すように、人体検出センサー13からの検出結果に基づいて、パラメトリックスピーカー7の指向方向を透析室1内のスタッフ(医療従事者)3に向けて、パラメトリックスピーカー7の可聴音発生位置を透析室1内のスタッフ(医療従事者)3の存在位置9bにする(S201)。
【0039】
この構成により、透析室1内に位置しているスタッフ(医療従事者)3にのみ確実に安定して音声を発信できる。その結果、患者に誤って音声が発信されることを防止しつつ、スタッフ(医療従事者)3に警報音などが届かないことを防止できる。
【0040】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 透析室、2 スタッフルーム、4 ベッド、5 透析装置、6 透析装置本体、7 パラメトリックスピーカー、10 制御部、13 人体検出センサー。