特許第6442849号(P6442849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442849
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/00 20060101AFI20181217BHJP
   B23K 9/32 20060101ALI20181217BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B23K37/00 A
   B23K9/32 E
   B23K15/00 507
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-71675(P2014-71675)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193019(P2015-193019A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和裕
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−216948(JP,A)
【文献】 特開2005−21953(JP,A)
【文献】 特開2013−230495(JP,A)
【文献】 特開2010−125480(JP,A)
【文献】 特開2010−51998(JP,A)
【文献】 特開平10−193160(JP,A)
【文献】 特開平4−111977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00−37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する有底筒状体の形状に形成されたノズルと、
該ノズルの内方に収容配置される溶接熱源と、を備え、
前記ノズルの開口部の周縁部を接合体に当接させた状態で、前記溶接熱源でスパッタを発生させながら前記接合体を溶接するように構成し、
前記ノズルの開口部の周縁部を前記接合体に当接させた状態で、前記ノズルと前記接合体とにより囲まれた前記ノズルの内部空間が閉空間であり、
前記溶接熱源は、前記ノズルの内壁に支持具を介して取り付けられていることを特徴とする溶接装置。
【請求項2】
前記ノズルの開口部の周縁部の内周側に傾斜部を形成し、この傾斜部を接合体に突き当てながら溶接することを特徴とする請求項1に記載の溶接装置。
【請求項3】
前記接合体における前記ノズルの開口部の周縁部が当接する当接部に、前記ノズルの開口部の傾斜部に沿って延在する傾斜面部を形成したことを特徴とする請求項2に記載の溶接装置。
【請求項4】
前記ノズルを導電体から形成し、前記ノズルと溶接電源とをアース線を介して接続したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項5】
前記ノズルの内周側に、スパッタを吸引する吸引口を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項6】
前記ノズルおよびトーチを、前記接合体の下側に配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、接合体同士を溶接接合する技術が公知である(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載されたアーク溶接方法は、接合体である第1端子と第2端子とをクランプ手段によって突き合わせ、その突合せ部分をアーク溶接するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−52420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の溶接装置では、第1端子および第2端子が覆われていないため、アーク溶接時に発生するスパッタが周囲に飛散し、周辺の電子部品の短絡等の不具合を起こすおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、溶接時に発生するスパッタが周囲に飛散することを抑制する溶接装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る溶接装置においては、開口部を有する有底筒状体の形状に形成されたノズルの内方に溶接熱源を配置する。また、前記ノズルの開口部の周縁部を接合体に当接させた状態で溶接を行う。前記ノズルの開口部の周縁部を前記接合体に当接させた状態で、前記ノズルと前記接合体とにより囲まれた前記ノズルの内部空間が閉空間である。前記溶接熱源は、前記ノズルの内壁に支持具を介して取り付けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る溶接装置においては、ノズルの開口部の周縁部を接合体に当接させて、溶接熱源をノズルと接合体とによって囲まれた閉空間内に配置させる。この状態で溶接を行うと、ノズルの外方に飛散するスパッタの量が減少する。このように、溶接時に発生するスパッタが周囲に飛散することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るアーク溶接装置および接合体を示す、一部を断面にして示す正面図である。
図2図1の要部を側方から見た側面図である。
図3】第1の接合体を保持治具に固定した状態を示す断面図である。
図4】第1の接合体および第2の接合体を保持治具に固定した状態を示す断面図である。
図5】第1の接合体および第2の接合体の上側から下方に向けて、第1実施形態に係るアーク溶接装置を下降させた状態を示す正面図であり、ノズルの開口部の周縁部を接合体に当接させている。
図6図5の状態からアーク溶接装置を更に下降させて、第1の接合体および第2の接合体におけるバスバーの上端部同士を当接させた状態を示す正面図である。
図7】第1の接合体および第2の接合体におけるバスバー同士を接合した状態を示す正面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るアーク溶接装置および接合体を示す、一部を断面にして示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1,2に示すように、第1実施形態に係るアーク溶接装置1は、開口部3を有する有底筒状体の形状に形成されたノズル5と、該ノズル5の内方に収容配置されて先端から溶接ワイヤ7が順次に送給されるトーチ9(溶接熱源)と、トーチ9に電流を供給する溶接電源11と、トーチ9にシールドガスを供給するガスボンベ13と、ノズル5内のスパッタ15を吸引する吸引装置17と、を備えている。
【0011】
前記ノズル5は、導電体から形成されており、下端部が開放された開口部3に形成された有底筒状体に形成されている。即ち、ノズル5は、左右一対の側壁19,21と、該側壁19,21に対して直交して配置され、一対の側壁同士19,21を結ぶ前壁および後壁(図示せず)と、これらの側壁19,21、前壁および後壁の上側の開口を塞ぐ上壁23と、から構成される。前記開口部3の周縁部25の内周側は、傾斜部27に形成されている。具体的には、傾斜部27は、上方に向かうに従って径方向内側に向かうように斜めに延在している。つまり、側壁19,21の下端部は、下方に行くに従って先細りする形状に形成されている。
【0012】
また、側壁19,21の下端部の内周面における傾斜部27のすぐ上側には、吸引口31が形成されている。この吸引口31は、正面視で円形に形成されており、側壁19,21の内部を貫通して上下方向に延びる吸引通路33の下端が前記吸引口31に接続されている。また、吸引通路33の上端は、配管36を介して吸引装置本体35に接続されている。ここで、吸引装置17は、吸引装置本体35と、該吸引装置本体35に接続された配管36と、側壁19,21の内部に形成された吸引通路33と、吸引口31と、から構成されている。スパッタ15が発生すると、該スパッタ15は吸引口31から吸引されたのち吸引通路33から配管36を介して吸引装置本体35で収集される。
【0013】
前記トーチ9(溶接熱源)は、全体がノズル5の内部空間37の内部に収容配置されている。具体的には、一対の側壁19,21の上部同士を結ぶ支持脚41が設けられ、該支持脚41の下側にシリンダー43が取り付けられ、該シリンダー43にトーチ9が取り付けられている。従って、シリンダー43を作動させると、トーチ9が上下に移動する。また、トーチ9の先端からは溶接ワイヤ7が送り出され、接合体51にアーク溶接するときにスパッタ15が発生する。なお、ガスボンベ13からは、ガス配管14を介してトーチ9にシールドガスが供給され、溶接電源11からは、トーチケーブル45を介して電流が供給される。
そして、前記溶接電源11は、前述のように、トーチケーブル45を介してトーチ9に接続されている。また、溶接電源11には、第1のアース線47と第2のアース線49が接続されている。第1のアース線47は溶接電源11とノズル5を接続し、第2のアース線49によって溶接電源11が接地されている。
【0014】
また、接合体51は、第1の接合体53と第2の接合体とからなる。
【0015】
第1の接合体53は、正面視がL字状に形成されたバスバー55と、該バスバー55の一端にモールドされたモールド樹脂57と、から構成される。前記バスバー55は、横方向に延在する延設部59と、該延設部59の先端から屈曲して上方に延びる脚部61とから一体に形成されている。脚部61の上端の外側(図1の左側)には、前記ノズル5の傾斜部27に沿って延在する傾斜面部63が形成されている。即ち、傾斜面部63は、上方に行くに従って図1の右側に向かうように斜めに形成されており、ノズル5の傾斜部27と面接触するように構成されている。
【0016】
第2の接合体65も、正面視がL字状に形成されたバスバー67と、該バスバー67の一端にモールドされたモールド樹脂69と、から構成される。前記バスバー67は、横方向に延在する延設部71と、該延設部71の先端から屈曲して上方に延びる脚部73とから一体に形成されている。脚部73の上端の外側(図1の右側)には、前記ノズル5の傾斜部27に沿って延在する傾斜面部75が形成されている。即ち、傾斜面部75は、上方に行くに従って図1の左側に向かうように斜めに形成されており、ノズル5の傾斜部27と面接触するように構成されている。
【0017】
そして、本実施形態では、第1の接合体53におけるバスバー55の脚部61の上端と、第2の接合体65におけるバスバー67の脚部73の上端と、を接合する。なお、第1の接合体53の傾斜面部63および第2の接合体65の傾斜面部75は、ノズル5の傾斜部27に当接する当接部77に形成されている。
【0018】
次いで、図3図7を用いて、本実施形態による溶接作業の手順を説明する。
【0019】
まず、図3に示すように、保持治具81の左側に第1の接合体53をボルト83を介して締結する。具体的には、図1のモールド樹脂57を取付板85に結合し、この取付板85を保持治具81にボルト83で締結する。
【0020】
次に、図4に示すように、保持治具81の右側に第2の接合体65をボルト83を介して締結する。具体的には、図1のモールド樹脂69を取付板87に結合し、この取付板87を保持治具81にボルト83で締結する。ここで、バスバー55,67の脚部61,73において、下端同士61a,73aは当接しているが、上端同士61b,73bは互いに間隔をおいて離れて配置されているため、上端同士61b,73bの間に隙間が形成されている。
【0021】
こののち、図5に示すように、本実施形態に係るアーク溶接装置1を、ノズル5の開口部3を下側に配置した状態で配置し、下降させる。すると、ノズル5の開口部3の傾斜部27が、第1および第2の接合体53,65の傾斜面部63,75に突き当たって、第1および第2の接合体53,65のバスバー55,67の脚部61,73の上端同士61b,73bが近接するように脚部61,73を内側に向けて押し付けて弾性変形させる。
【0022】
すると、図6に示すように、第1および第2の接合体53,65のバスバー55,67の脚部61,73の上端同士61b,73bが当接するため、トーチ9は、ノズル5および第1および第2の接合体53,65によって形成される内部空間37(閉空間)内に収容配置される。この状態で、第1および第2の接合体53,65におけるバスバー55,67の脚部61,73の上端同士61b,73bの境界部分に向けて、溶接ワイヤ7が溶解したアーク70を吹き付ける。なお、このとき、スパッタ15が発生する。以上の工程によって、図7に示すように、バスバー55,67の脚部61,73の上端同士61b,73bを接合することができる。
【0023】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0024】
(1)本実施形態に係るアーク溶接装置1は、開口部3を有する有底筒状体の形状に形成されたノズル5と、該ノズル5の内方に収容配置されるトーチ9(溶接熱源)と、を備えている。前記ノズル5の開口部3の周縁部25を接合体51に当接させた状態で、前記トーチ9でスパッタ15を発生させながら前記接合体51を溶接するように構成した。
このように、ノズル5の開口部3の周縁部25を接合体51に当接させると、トーチ9はノズル5と接合体51とによって囲まれた閉空間内に配置される。この状態で溶接を行うと、ノズル5の外方に飛散するスパッタ15の量が減少する。従って、周辺の電子部品の短絡などの不具合が減少する。
【0025】
(2)前記ノズル5の開口部3の周縁部25の内周側に傾斜部27を形成し、この傾斜部27を接合体51に突き当てながら溶接する。
ノズル5の開口部3の傾斜部27を接合体51に突き当てることによって、接合体51に対するノズル5の位置決めを行うことができる。従って、別途にノズルの位置決め治具を設ける必要がなく、位置決め治具を配置するスペースも不要になる。
【0026】
(3)前記接合体51における前記ノズル5の開口部3の周縁部25が当接する当接部77に、前記ノズル5の開口部3の傾斜部27に沿って延在する傾斜面部63,75を形成した。
【0027】
接合体51の傾斜面部63,75は、ノズル5の傾斜部27に当接するため、接合体51に対するノズル5の位置決めを更に効率的に行うことができる。
【0028】
また、接合体51の先端部が傾斜面部63,75によって山形状に形成されるため、接合部の熱引き量が減少し、熱を集中しやすくするために接合品質が向上する。
【0029】
さらに、熱を集中させやすくなるので、傾斜面部63,75がない構造よりも少ない入熱量で接合できる。よって、接合体51に繋がっている部品および周辺部品への熱影響を低減させることができる。
【0030】
(4)前記ノズル5を導電体から形成し、前記ノズル5と溶接電源11とを第1のアース線47(アース線)を介して接続した。
【0031】
アースを必要とするアーク溶接や電子ビーム溶接などについて、アースクランプの設置が不要になり、デッドスペースを小さくすることができる。
【0032】
(5)前記ノズル5の内周側に、スパッタ15を吸引する吸引口31を設けた。
これにより、溶接で発生するスパッタ15を吸引口31を介してノズル5の外方に排出することにより、ノズル5に付着したスパッタ15がノズル5を移動するときに落下するスパッタ15の二次飛散を効果的に防止することができる。
【0033】
[第2実施形態]
次に、図8を用いて本発明の第2実施形態を説明するが、前記第1実施形態と同じ構成の部位には同一符号を付けて説明を省略する。
【0034】
図8に示すように、本実施形態では、アーク溶接装置と接合体との上下位置関係を第1実施形態とは反対にする。即ち、第1実施形態では、接合体51を下側に配置し、アーク溶接装置1を上側に配置した。しかし、第2実施形態では、接合体51を上側に配置し、アーク溶接装置101を下側に配置する。また、ノズル105の上壁は開放し、スパッタ取出口123を形成する。このスパッタ取出口123は、端部124aが軸支されたドア124によって開閉可能に構成されている。よって、スパッタ15が溜まったら、ドア124を開けてスパッタ15を下方に排出させる。
【0035】
第1および第2の接合体53,65におけるバスバー55,67の脚部61,73の下端同士の境界部分に向けて、溶接ワイヤ7が溶解したアーク70を上側に向けて吹き付ける。これによって、バスバー55,67の脚部61,73の下端同士を接合することができる。
【0036】
ここで、アーク70の発生によってスパッタ15が飛散するが、重力によってノズル105の下側に集まる。
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0037】
(1)前記ノズル105およびトーチ9を、前記接合体51の下側に配置した。
【0038】
従って、スパッタ15が重力で下方に落下するため、飛散したスパッタ15を容易に回収することができる。また、第1実施形態の上下位置関係の場合よりも、スパッタ15の飛散防止の効果が大きくなる。
【0039】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、種々の変更および変形が可能である。
【0040】
例えば、前記実施形態では、アーク溶接を例に取ったが、電子ビーム溶接などのスパッタが発生する溶接に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 アーク溶接装置(溶接装置)
3 開口部
5 ノズル
9 トーチ(溶接熱源)
11 溶接電源
15 スパッタ
25 周縁部
27 傾斜部
31 吸引口
47 第1のアース線(アース線)
51 接合体
63 傾斜面部
75 傾斜面部
77 当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8