特許第6442858号(P6442858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6442858血液状態解析装置、血液状態解析システム、血液状態解析方法、および該方法をコンピューターに実現させるための血液状態解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442858
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】血液状態解析装置、血液状態解析システム、血液状態解析方法、および該方法をコンピューターに実現させるための血液状態解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/86 20060101AFI20181217BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20181217BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20181217BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20181217BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20181217BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20181217BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G01N33/86
   G01N33/49 B
   G01N33/72 A
   G01N33/483 E
   G01N27/22 B
   G01N27/04 Z
   G01N27/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-85511(P2014-85511)
(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公開番号】特開2015-206609(P2015-206609A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】林 義人
(72)【発明者】
【氏名】ブルン マルクオレル
(72)【発明者】
【氏名】町田 賢三
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−181400(JP,A)
【文献】 特開2009−243955(JP,A)
【文献】 特表2002−542452(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0292932(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第2260407(GB,A)
【文献】 成田厚子 ほか,血液凝固検査における誤差要因について 第1報 検体の採取法による影響,医学検査,1995年,第44巻第5号,890−894
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料に、抗凝固処理解除剤添加した状態において、前記血液試料の状態を、前記血液試料の電気的特性に基づいて解析する装置であって、
血漿中の前記抗凝固処理解除剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記抗凝固処理解除剤の濃度に対応して補正する補正部を備える血液状態解析装置。
【請求項2】
前記相関関係は、予め定められたものである請求項1記載の血液状態解析装置。
【請求項3】
血漿中の前記抗凝固処理解除剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係を求める相関検出部を備える請求項1又は2に記載の血液状態解析装置。
【請求項4】
前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価して、前記血液凝固評価結果を得る血液凝固評価部を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の血液状態解析装置。
【請求項5】
前記血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量に基づいて、前記血液試料中の血漿中に存在する前記抗凝固処理解除剤の濃度を算出する血漿中薬剤濃度算出部を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の血液状態解析装置。
【請求項6】
前記血液試料の電気的特性に基づいて、前記血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を求める赤血球量的評価部を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の血液状態解析装置。
【請求項7】
前記赤血球量的評価部によって得られたヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量に基づいて、前記血液試料中の血漿中に存在する前記抗凝固処理解除剤の濃度を算出する血漿中薬剤濃度算出部を備える請求項6記載の血液状態解析装置。
【請求項8】
前記血液試料の電気的特性を測定する測定部を備える請求項1から7のいずれか一項に記載の血液状態解析装置。
【請求項9】
前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価して、前記血液凝固評価結果を得る血液凝固評価部と、
前記血液試料の電気的特性に基づいて、ヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を求める赤血球量的評価部と、
を備える請求項8記載の血液状態解析装置。
【請求項10】
前記血液凝固評価部では、前記血液試料の第1の周波数における電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価し、
前記赤血球量的評価部では、前記血液試料の前記第1の周波数とは異なる第2の周波数における電気的特性に基づいて、ヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を求める、
請求項9記載の血液状態解析装置。
【請求項11】
血液試料の電気的特性を測定する測定部を備える電気的特性測定装置と、
前記血液試料に、抗凝固処理解除剤添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する装置であって、血漿中の前記抗凝固処理解除剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記抗凝固処理解除剤の濃度に対応して補正する補正部を備える血液状態解析装置と、
を有する血液状態解析システム。
【請求項12】
前記電気的特性測定装置での測定結果および/または前記血液状態解析装置での解析結果を記憶するサーバーを備える請求項11記載の血液状態解析システム。
【請求項13】
前記サーバーは、ネットワークを介して、前記電気的特性測定装置および/または前記血液状態解析装置と接続されている請求項12記載の血液状態解析システム。
【請求項14】
血液試料に、抗凝固処理解除剤添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する方法であって、
血漿中の前記抗凝固処理解除剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記抗凝固処理解除剤の濃度に対応して補正する補正工程を行う血液状態解析方法。
【請求項15】
血液試料に、抗凝固処理解除剤添加した状態における前記血液試料の状態の解析に用いるプログラムあって、
血漿中の前記抗凝固処理解除剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記抗凝固処理解除剤の濃度に対応して補正する補正機能をコンピューターに実現させるための血液状態解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、血液状態解析装置に関する。より詳しくは、血液試料に、抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤および抗血小板剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する装置、血液状態解析システム、血液状態解析方法、および該方法をコンピューターに実現させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞懸濁液中の細胞の体積分率を得る方法として、懸濁液の低周波電気伝導度(100kHz以下の周波数)と、細胞を含まない溶媒の低周波電気伝導度(100kHz以下の周波数)を用いる手法が知られている(非特許文献1)。例えば、球形細胞が希薄に分散した懸濁液では、細胞の体積分率は、下記数式(1)のように得ることができる。
【0003】
【数1】
【0004】
一方、懸濁している細胞の形状が球形ではない場合、その細胞の形状も考慮する必要があり、例えば、回転楕円体の細胞が希薄に分散した懸濁液では、細胞の体積分率は、下記数式(2)のように得ることができる。
【0005】
【数2】
【0006】
また、懸濁液の細胞密度が高く、希薄分散系としては扱えない濃厚懸濁液では、細胞間の相互作用を考慮した別の式を用いる必要がある。
【0007】
しかしながら、これらの従来の方法では、細胞を含まない溶媒の電気伝導度を用いる必要があり、懸濁液のみのデータから細胞の体積分率を求めることはできない。また、細胞は、溶媒中で凝集せずに分散している必要がある。そのため、例えば、血漿成分を含む血液の場合は、一般に、赤血球の連銭、凝集などが生じるため、従来の方法で、赤血球の体積分率などを求めることはできない。しかも、その連銭や凝集の度合は、血液の流動や、静置させてからの時間によって様々に変化するため、連銭や凝集の度合を加味した計算式を求めることは困難であり、現在そのような数式は知られていない。
【0008】
ところで、一般的な血液凝固検査としては、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)に代表される血液凝固検査が知られている。これらの方法は、血液試料を遠心分離して得られる血漿中に含まれ、凝固反応に関与するタンパク質を分析する方法である。この分野は技術的に確立しており、医療現場におけるニーズはほぼ充足されていると見られてきた。
【0009】
しかし、迅速性が要求される周術期(急性期)治療等において、患者の包括的な凝固病態を的確かつ簡便に検査したいというニーズに答えるには、前記の方法は不十分である。具体的には、例えば、人工心肺装置による体外循環を伴う心臓手術、重度外傷治療、肝臓移植手術等の大規模手術では、外科的出血だけでなく、凝固異常に起因する出血が持続することがある。それにも拘わらず、従来の凝固検査では、生体内の凝固反応において重要な役割を果たす血小板・赤血球等の細胞成分が遠心分離により除去されるため、検査結果が実際の臨床的病態と齟齬することも多い。
【0010】
また、患者の凝固病態は周術期を通じて大幅に変動し、しばしば出血傾向から血栓傾向に転じることがあるが、PTやAPTTは出血傾向の検査であり、血栓傾向の高感度な検査法は未だ確立されていない。
【0011】
急性期の包括的凝固検査として、血液凝固過程に伴う粘弾性変化を力学的に測定するトロンボエラストメトリーが、TEG(登録商標)やROTEM(登録商標)として欧米企業により製品化されている。しかし、これらは、(1)測定が自動化されておらず、検査結果が測定者の手技に依存する、(2)振動の影響を受けやすい、(3)品質管理(QC)手順が煩雑で、QC用試薬が高価である、(4)出力信号(トロンボエラストグラム)の解釈に熟練を要する等の理由が、十分な普及を阻む第一の原因であると考えられる。そのため、包括的凝固検査を行えば輸血不要である患者に対しても、現状ではしばしば予防的・経験的に血液製剤が使用され、感染症等のリスクが増大するだけでなく、血液製剤の浪費と医療費の増大をもたらしている。
【0012】
近年、血液の凝固の程度を簡便且つ正確に評価する技術が、開発されつつある。例えば、特許文献1には、血液の誘電率から血液凝固に関する情報を取得する技術が開示されており、「一対の電極と、上記一対の電極に対して交番電圧を所定の時間間隔で印加する印加手段と、上記一対の電極間に配される血液の誘電率を測定する測定手段と、血液に働いている抗凝固剤作用が解かれた以後から上記時間間隔で測定される血液の誘電率を用いて、血液凝固系の働きの程度を解析する解析手段と、を有する血液凝固系解析装置」が記載されている。
【0013】
この方法における血液検体としては、クエン酸などを抗凝固剤として用いて静脈から採血されたものを用いるのが一般的である。測定開始直前に塩化カルシウム水溶液などの抗凝固処理解除剤を用いて抗凝固作用を解除し、血液凝固反応を進行させた状態で測定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−181400号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Phys. Med. Biol. 54 (2009) 2395-2405
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述のように、血液凝固能を評価する技術は、日々、進歩を続けているが、その一方で、近年、患者の臨床的な状態とは別に、他の何らかの要因によりアーティファクトが生じてしまうことが分かってきた。
【0017】
そこで、本技術では、簡便かつ精度の高い血液凝固能の評価が可能な技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために、本発明者らは、血液の凝固能評価結果に生じるアーティファクトの原因について鋭意研究を行った。その結果、血液の凝固能評価結果は、測定時に用いる薬剤が、血液中の血球成分の排除体積効果によって血漿中に濃縮されることにより、大きな影響を受けることを見出し、本技術を完成させるに至った。
即ち、本技術では、まず、血液試料に、抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤および抗血小板剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する装置であって、
血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する補正部を備える血液状態解析装置を提供する。
本技術に係る血液状態解析装置において、前記相関関係は、予め定められたものであってもよいし、装置に前記相関関係を求める相関検出部を備えることで、解析時に前記相関関係を求めた上で、前記補正部によって補正を行うことも可能である。
本技術に係る血液状態解析装置において用いる前記血液凝固評価結果は、予め公知の手法により求められた結果でもよいし、装置に、前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価して、前記血液凝固評価結果を得る血液凝固評価部を備えることで、同一の装置内で前記血液凝固評価結果を求めることも可能である。
本技術において、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度の算出方法は特に限定されず、一般的な算出方法により求めることができるが、例えば、前記血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量に基づいて、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度を算出することが可能である。この際、装置に、前記血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量に基づいて、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度を算出する血漿中薬剤濃度算出部を備えることで、同一の装置内で前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度を求めることも可能である。
また、この際のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量は、予め公知の手法により求められた値を用いることもできるし、装置に、前記血液試料の電気的特性に基づいて、前記血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を求める赤血球量的評価部を備えることで、同一の装置内でヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を求めることも可能である。
本技術に係る血液状態解析装置には、前記血液試料の電気的特性を測定する測定部を備えることもできる。
また、本技術に係る血液状態解析装置には、前記血液凝固評価部と、前記赤血球量的評価部と、を両方備えることもできる。この場合、両評価部における評価に用いる電気的特性は、同一の周波数の電気的特性を用いることもできるが、前記血液凝固評価部では、前記血液試料の第1の周波数における電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価し、前記赤血球量的評価部では、前記血液試料の前記第1の周波数とは異なる第2の周波数における電気的特性に基づいて、ヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を求めることも可能である。
【0019】
本技術では、次に、血液試料の電気的特性を測定する測定部を備える電気的特性測定装置と、
前記血液試料に、抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤および抗血小板剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する装置であって、血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する補正部を備える血液状態解析装置と、
を有する血液状態解析システムを提供する。
本技術に係る血液状態解析システムには、前記電気的特性測定装置での測定結果および/または前記血液状態解析装置での解析結果を記憶する情報記憶部を備えるサーバーを備えることも可能である。
この場合、前記サーバーは、ネットワークを介して、前記電気的特性測定装置および/または前記血液状態解析装置と接続することもできる。
【0020】
本技術では、更に、血液試料に、抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤および抗血小板剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する方法であって、
血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する補正工程を行う血液状態解析方法を提供する。
【0021】
本技術では、加えて、血液試料に、抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤および抗血小板剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を添加した状態における前記血液試料の状態の解析に用いるプログラムあって、
血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する補正機能をコンピューターに実現させるための血液状態解析プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本技術によれば、簡便かつ精度の高い血液凝固能の評価が可能である。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本技術に係る血液状態解析装置1の概念を模式的に示す模式概念図である。
図2】本技術に係る血液状態解析システム10の概念を模式的に示す模式概念図である。
図3】本技術に係る血液状態解析方法のフローチャートである。
図4】実施例1において、誘電率測定によって得られた血液凝固時間(CFT100)と、ヘマトクリット値との相関関係を示す図面代用グラフである。
図5】実施例1において、誘電率測定によって得られた血液凝固能を示す各種パラメータと、ヘマトクリット値との相関関係を示す図面代用グラフである。
図6】実施例2において、誘電率測定によって得られた血液凝固時間(CFT100)と、カルシウム濃度との相関関係を示す図面代用グラフである。
図7】実施例2において、誘電率測定によって得られた血液凝固能を示す各種パラメータと、カルシウム濃度との相関関係を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.血液状態解析装置1
(1)補正部11
(2)相関検出部12
(3)血液凝固評価部13
(4)血漿中薬剤濃度算出部14
(5)赤血球量的評価部15
(6)測定部16
(7)記憶部17
(8)血液試料
2.血液状態解析システム10
(1)電気的特性測定装置101
(2)血液状態解析装置1
(3)サーバー102
(4)表示部103
(5)ユーザーインターフェース104
3.血液状態解析方法
(1)補正工程I
(2)相関検出工程II
(3)血液凝固評価工程III
(4)血漿中薬剤濃度算出工程IV
(5)赤血球量的評価工程V
(6)測定工程VI
(7)記憶工程VII
4.血液状態解析プログラム
【0025】
1.血液状態解析装置1
図1は、本技術に係る血液状態解析装置1(以下、「装置1」ともいう)の概念を模式的に示す模式概念図である。本技術に係る血液状態解析装置1は、抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤および抗血小板剤からなる群より選択される1種以上の薬剤(以下、「前記薬剤」とする)を添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する装置であって、補正部11を少なくとも備える。また、必要に応じて、相関検出部12、血液凝固評価部13、血漿中薬剤濃度算出部14、赤血球量的評価部15、測定部16、記憶部17などを備えることもできる。
【0026】
前記薬剤としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム等(すなわち、これらはカルシウム塩である)などの抗凝固処理解除剤;組織因子、接触因子、エラグ酸、カオリン、セライト、トロンビン、バトロキソビンなどの凝固活性化剤;クエン酸、ヘパリン、ヒルジン、EDTA、直接トロンビン阻害剤、活性化第X因子阻害剤などの抗凝固剤;コラーゲン、アラキドン酸、ADP、トロンビンなどの血小板活性化剤;アセチルサリチル酸(アスピリン)、プロスタグランジン、トロンボキサン合成酵素阻害剤、チエノピリジン誘導体(塩酸チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレルなど)、PDE3阻害剤、5−セロトニン受容体2拮抗剤、GPIIb/IIIa阻害剤などの抗血小板剤からなる群より選択される1種以上を自由に選択して用いることができる。
【0027】
以下、各部について詳細に説明する。
【0028】
(1)補正部11
補正部11では、血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する。
【0029】
本技術では、後述する実施例に示す通り、同一の血液検体を用いた場合であっても、添加する前記薬剤の血漿中における濃度によって、血液凝固能を示すパラメータが変化することを見出した。即ち、添加する前記薬剤の量や、血液検体中に占める血漿の割合などに応じて、血液凝固評価結果に誤差が生じることを見出した。そこで、血液凝固評価結果を、血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正することで、血漿中における前記薬剤の濃度が変化することにより生じるアーティファクトを排除し、より精度の高い評価を行うことができる。
【0030】
補正部11では、血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係によって得られた検査値の濃度依存性や、前記相関関係によって定められた補正定数を用いた補正関数などによって、基準薬剤濃度における検査値に補正する。
【0031】
補正部11における補正で用いる前記相関関係は、予め定められたものであってもよいし、装置1に後述する相関検出部12を備えることで、解析時に前記相関関係を求めた上で、補正部11によって補正を行うことも可能である。
【0032】
(2)相関検出部12
相関検出部12では、血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係が求められる。本技術に係る血液状態解析装置1において、この相関検出部12は必須ではなく、前述の通り、予め定められた相関関係を用いることもできるが、相関検出部12を備えることで、相関関係の検出と補正とを、一つの装置内で行うことが可能である。血液相関関係の求め方は、特に限定されず、一般的な統計学的手法を用いて求めることができるが、例えば、以下のような方法を挙げることができる。
【0033】
(a)相関係数を求める方法
相関検出部12では、例えば、2つ以上の異なる血漿中薬剤濃度における検査値の濃度依存性から相関係数を求める方法を採用し、前記相関関係を求めることができる。そして、得られた相関係数に基づいて、前記補正部11において、基準薬剤濃度における検査値に補正することで、正確な評価結果を得ることができる。
【0034】
この方法では、検体ごとに相関係数を求めるため、それぞれの検体に適した補正を行うことができる。
【0035】
(b)補正定数を求める方法
相関検出部12では、例えば、複数の検体に対し、1検体当たり2つ以上の異なる血漿中薬剤濃度における検査値の濃度依存性を示す回帰式を各検体ごとにそれぞれ求め、それぞれの回帰式の係数または複数の係数の数学的組み合わせの中で、検体によらずほぼ一定の値を持つものを見つけて、ほぼ全ての検体に用いることが可能な補正定数を求める方法を採用し、前記相関関係を求めることができる。
【0036】
この方法では、一旦、補正定数を求めてしまえば、次の解析からは、1検体当たり1つの血漿中薬剤濃度における測定で補正を行うことができるというメリットがある。
【0037】
(3)血液凝固評価部13
血液凝固評価部13では、血液試料の電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価して、前記血液凝固評価結果を得る。この血液凝固評価部13は、本技術に係る血液状態解析装置1では必須ではなく、例えば、予め別の装置や方法によって、前記血液凝固評価結果を得ることも可能である。
【0038】
血液試料の電気的特性は、外部の電気的特性測定装置、又は本技術に係る血液状態解析装置1に後述する測定部16が備えられている場合には、該測定部16において測定された生のデータをそのまま用いることができる。あるいは、生データからノイズを除去したデータを用いることもできる。
【0039】
血液凝固評価部13で用いることが可能な血液の電気的特性としては、例えば、誘電率、インピーダンス、アドミッタンス、キャパシタンス、コンダクタンス、導電率、位相角などを挙げることができる。これらの電気的特性は、下記表1に示す数式によって、互いに変換可能である。そのため、例えば、血液試料の誘電率測定の結果を用いて血液凝固の程度を評価した評価結果は、同一の血液試料のインピーダンス測定の結果を用いた場合の評価結果と同一になる。これらの電気量や物性値の多くは複素数を用いて記述することができ、それによって変換式を簡略化することができる。
【0040】
【表1】
【0041】
血液凝固評価部13における評価に用いる電気的特性は、任意の周波数の電気的特性を用いることもできるが、特に、周波数1kHz〜50MHzにおける血液試料の電気的特性から、血液凝固の程度を評価することが好ましく、周波数3MHz〜15MHzにおける血液試料の電気的特性から、血液凝固の程度を評価することがより好ましい。周波数1kHz〜50MHzにおいて、血液凝固による電気的特性の変化がみられ、周波数3MHz〜15MHzでは、電気的特性の変化がより顕著にみられるからである。
【0042】
(4)血漿中薬剤濃度算出部14
血漿中薬剤濃度算出部14では、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度を算出する。この血漿中薬剤濃度算出部14は、本技術に係る血液状態解析装置1では必須ではなく、例えば、予め別の装置や方法によって、血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度を測定することも可能である。
【0043】
血漿中薬剤濃度算出部14では、前記血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量に基づいて、血漿中薬剤濃度を算出することを特徴とする。ヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量が多い血液試料は、相対的に血漿量が少なく、逆に、ヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量が少ない血液試料は、相対的に血漿量が多い。即ち、血漿量は、血液試料中のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量と負の相関を示す。
【0044】
そして、同量の前記薬剤を添加した場合、ヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量が多い血液試料は、相対的に血漿量が少ないため、血漿中の薬剤濃度が高くなり、逆に、ヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量が少ない血液試料は、相対的に血漿量が多いため、血漿中の薬剤濃度は低くなる。即ち、同量の前記薬剤を添加した場合、血漿中に存在する前記薬剤の濃度は、血液試料中のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量と正の相関を示す。この相関を利用して、血漿中薬剤濃度算出部14では、前記血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量に基づいて、血漿中薬剤濃度を算出する。
【0045】
血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量は、予め別の装置や方法によって、求めた測定値を用いることもできるし、装置1に、後述する赤血球量的評価部15を備え、この赤血球量的評価部15において得られたヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を用いることもできる。
【0046】
(5)赤血球量的評価部15
赤血球量的評価部15では、血液試料の電気的特性に基づいて、ヘマトクリット値及び/又はヘモグロビン量を評価する。この赤血球量的評価部15は、本技術に係る血液状態解析装置1では必須ではなく、例えば、予め別の装置や方法によって、血液試料中のヘマトクリット値及び/又はヘモグロビン量を測定することも可能である。
【0047】
赤血球量的評価部15で用いることが可能な血液の電気的特性としては、前記血液凝固評価部13で用いることが可能な電気的特性と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【0048】
赤血球量的評価部15における評価に用いる電気的特性は、任意の周波数の電気的特性を用いることもできるが、本発明では特に、周波数2〜25MHzにおける血液試料の電気的特性から、ヘマトクリット値及び/又はヘモグロビン量を評価することが好ましく、周波数2〜10MHzにおける血液試料の電気的特性から、ヘマトクリット値及び/又はヘモグロビン量を評価することがより好ましい。周波数2〜25MHzにおける血液試料の電気的特性は、赤血球連銭による影響を受けにくく、また、血液凝固反応が一定レベルに達するまでの間は変動が小さく、一般的な従来の血液検査で得られるヘマトクリット値及びヘモグロビン量と、相関するからである。また、10MHzより高い周波数では血液の電気的応答が弱くなり、相対的にノイズの影響が強くなるので、10MHz以下の電気的特性を用いることで、より正確な評価を行うことができる。
【0049】
なお、赤血球量的評価部15で用いる血液の電気的特性は、測定開始後なるべく早い段階での電気的特性を用いることが好ましい。具体的には、抗凝固剤による抗凝固を解除した後、3分以内における電気的特性を用いることが好ましい。抗凝固解除後3分以内であれば、血液の連銭や凝固による影響を最小限に抑えることができるからである。また、凝固活性化剤を加えて行う測定の場合は血液凝固が開始されるまでの時間が短いので、抗凝固解除後1分以内における電気的特性を用いることが好ましい。
【0050】
本技術に係る血液状態解析装置1には、前記補正部11に加え、前記血液凝固評価部13と、血漿中薬剤濃度算出部14と、赤血球量的評価部15と、を備えることもできる。これらを備えることで、一度の測定で得られた電気的特性から、血液凝固能およびヘマトクリット値及び/又はヘモグロビン量の評価を行い、得られたヘマトクリット値及び/又はヘモグロビン量から血漿中の薬剤濃度を算出し、算出した血漿中の薬剤濃度に対応して、得られた血液凝固能評価結果を補正するという一連のプロセスを、一つの装置内で行うことができる。その結果、解析コストの削減や解析時間の短縮などを実現させることが可能である。
【0051】
本技術に係る血液状態解析装置1に、血液凝固評価部13と、赤血球量的評価部15と、を両方備える場合、両評価部における評価に用いる電気的特性は、同一の周波数の電気的特性を用いることもできるが、血液凝固評価部13では、血液試料の第1の周波数における電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価し、赤血球量的評価部15では、血液試料の前記第1の周波数とは異なる第2の周波数における電気的特性に基づいて、ヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を求めることも可能である。例えば、前述の通り、血液凝固評価部13と赤血球量的評価部15とでは、評価に用いる電気的特性の好ましい周波数が異なるため、それぞれにより適した周波数帯域の電気的特性を用いることで、より正確な評価を行うことができる。
【0052】
(6)測定部16
測定部16では、血液試料の電気的特性を測定する。本技術に係る血液状態解析装置1において、この測定部16は必須ではなく、外部の電気的特性測定装置を用いて測定したデータを用いることも可能である。
【0053】
測定部16には、一又は複数の血液試料保持部を備えることができる。血液状態解析装置1において、この血液試料保持部は必須ではなく、例えば、公知のカートリッジタイプの測定用容器などを設置可能な形態に、測定部16を設計することもできる。
【0054】
測定部16に血液試料保持部を備える場合、該血液試料保持部の形態は、測定対象の血液試料を測定部16内に保持することができれば特に限定されず、自由な形態に設計することができる。例えば、基板上に設けた一又は複数のセルを血液試料保持部として機能させたり、一又は複数の容器を血液試料保持部として機能させたりすることができる。
【0055】
一又は複数の容器を血液試料保持部として用いる場合、その形態も特に限定されず、測定対象の血液試料を保持可能であれば、円筒体、断面が多角(三角、四角或いはそれ以上)の多角筒体、円錐体、断面が多角(三角、四角或いはそれ以上)の多角錐体、或いはこれらを1種または2種以上組み合わせた形態など、血液試料の状態や測定方法などに応じて自由に設計することができる。
【0056】
また、容器を構成する素材についても特に限定されず、測定対象の血液試料の状態や測定目的などに影響のない範囲で、自由に選択することができる。本技術では特に、加工成形のし易さなどの観点から、樹脂を用いて容器を構成することが好ましい。本技術において、用いることができる樹脂の種類も特に限定されず、血液試料の保持に適用可能な樹脂を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリル、ポリサルホン、ポリテトラフルオロエチレンなどの疎水性かつ絶縁性のポリマーやコポリマー、ブレンドポリマーなどが挙げられる。本技術では、この中でも特に、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、およびポリサルホンから選ばれる一種以上の樹脂で血液試料保持部を形成することが好ましい。これらの樹脂は、血液に対して低凝固活性であるという性質を有するからである。
【0057】
血液試料保持部は、血液試料を保持した状態で密封可能な構成であることが好ましい。ただし、血液試料の電気的特性を測定するのに要する時間停滞可能であって、測定に影響がなければ、気密な構成でなくてもよいものとする。
【0058】
血液試料保持部への血液試料の具体的な導入および密閉方法は特に限定されず、血液試料保持部の形態に応じて自由な方法で導入することができる。例えば、血液試料保持部に蓋部を設け、ピペットなどを用いて血液試料を導入した後に蓋部を閉じて密閉する方法や、血液試料保持部の外表面から注射針を穿入し、血液試料を注入した後、注射針の貫通部分を、グリスなどで塞ぐことで、密閉する方法などが挙げられる。
【0059】
測定部16には、一又は複数の印加部を備えることができる。血液状態解析装置1において、この印加部は必須ではなく、例えば、血液試料保持部に外部から電極を挿入できるように設計することで、外部の印加装置を用いることも可能である。
【0060】
印加部は、測定を開始すべき命令を受けた時点または血液状態解析装置1の電源が投入された時点を開始時点として、設定される測定間隔ごとに、血液試料に対して、所定の電圧を印加する。
【0061】
印加部の一部として用いる電極の数や電極を構成する素材は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、自由な数の電極を自由な素材を用いて構成することができる。例えば、チタン、アルミニウム、ステンレス、白金、金、銅、黒鉛などが挙げられる。本技術では、この中でも特に、チタンを含む電気伝導性素材で電極を形成することが好ましい。チタンは、血液に対して低凝固活性であるという性質を有するためである。
【0062】
測定部16では、複数の測定を行うことも可能である。複数の測定を行う方法としては、例えば、測定部16を複数備えることにより複数の測定を同時に行う方法、一つの測定部16を走査させることにより複数の測定を行う方法、血液試料保持部を移動させることにより複数の測定を行う方法、測定部16を複数備え、スイッチングにより実際に測定を行う測定部16を一または複数選択する方法などを挙げることができる。
【0063】
(7)記憶部17
本技術に係る血液状態解析装置1には、補正部11で補正した補正結果、相関検出部12で求めた相関関係、血液凝固評価部13および/または赤血球量的評価部15で評価した各評価結果、血漿中薬剤濃度算出部14で算出した血漿中薬剤濃度、測定部16で測定した測定結果などを記憶する記憶部17を備えることができる。本技術に係る血液状態解析装置1において、記憶部17は必須ではなく、外部の記憶装置を接続して、各結果を記憶することも可能である。
【0064】
本技術に係る血液状態解析装置1において、記憶部17は、各部ごとに、それぞれ別々に設けても良いし、一つの記憶部17に、各部で得られる各種結果を記憶させるように設計することも可能である。
【0065】
(8)血液試料
本技術に係る血液状態解析装置1において、測定対象とすることが可能な血液試料は、血液を含有する試料であれば特に限定されず、自由に選択することができる。血液試料の具体例としては、全血またはこれの希釈液、前記薬剤以外の薬剤を添加した血液試料などを挙げることができる。
【0066】
2.血液状態解析システム10
図2は、本技術に係る血液状態解析システム10の概念を模式的に示す模式概念図である。本技術に係る血液状態解析システム10は、大別して、電気的特性測定装置101と、血液状態解析装置1と、を少なくとも備える。また、必要に応じて、サーバー102、表示部103、ユーザーインターフェース104などを備えることもできる。以下、各部について詳細に説明する。
【0067】
(1)電気的特性測定装置101
電気的特性測定装置101は、血液試料の電気的特性を測定する測定部16を備える。測定部16の詳細は、前述した血液状態解析装置1における測定部16と同一である。
【0068】
(2)血液状態解析装置1
血液状態解析装置1は、前記薬剤を添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する装置であって、補正部11を少なくとも備える。また、必要に応じて、相関検出部12、血液凝固評価部13、血漿中薬剤濃度算出部14、赤血球量的評価部15などを備えることもできる。なお、血液状態解析装置1に備える各部は、前述した血液状態解析装置1の詳細と同一である。
【0069】
(3)サーバー102
サーバー102には、電気的特性測定装置101での測定結果及び/又は血液状態解析装置1での解析結果を記憶する記憶部17を備える。記憶部17の詳細は、前述した血液状態解析装置1における記憶部17と同一である。
【0070】
(4)表示部103
表示部103では、補正部11で補正した補正結果、相関検出部12で求めた相関関係、血液凝固評価部13および/または赤血球量的評価部15で評価した各評価結果、血漿中薬剤濃度算出部14で算出した血漿中薬剤濃度、測定部16で測定した測定結果などが表示される。表示部103は、表示するデータや結果毎に、複数設けることも可能であるが、一つの表示部103に、全てのデータや結果を表示することも可能である。
【0071】
(5)ユーザーインターフェース104
ユーザーインターフェース104は、ユーザーが操作するための部位である。ユーザーは、ユーザーインターフェース104を通じて、本技術に係る血液状態解析システム10の各部にアクセスすることができる。
【0072】
以上説明した本技術に係る血液状態解析システム10では、電気的特性測定装置101、血液状態解析装置1、サーバー102、表示部103及びユーザーインターフェース104がそれぞれネットワークを介して接続されていてもよい。
【0073】
3.血液状態解析方法
図3は、本技術に係る血液状態解析方法のフローチャートである。本技術に係る血液状態解析方法では、前記薬剤を添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する方法であって、補正工程Iを少なくとも行う。また、必要に応じて、相関検出工程II、血液凝固評価工程III、血漿中薬剤濃度算出工程IV、赤血球量的評価工程V、測定工程VI、記憶工程VIIなどを行うこともできる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0074】
(1)補正工程I
補正工程Iでは、血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する。補正工程Iで行う補正方法の詳細は、前述した血液状態解析装置1の補正部11で実行される補正方法と同一である。
【0075】
(2)相関検出工程II
相関検出工程IIでは、血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係が求められる。本技術に係る血液状態解析方法において、この相関検出工程IIは必須ではなく、前述の通り、予め定められた相関関係を用いることもできる。相関検出工程IIで行う検出方法の詳細は、前述した血液状態解析装置1の相関検出部12で実行される検出方法と同一である。
【0076】
(3)血液凝固評価工程III
血液凝固評価工程IIIでは、血液試料の電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価して、前記血液凝固評価結果を得る。この血液凝固評価工程IIIは、本技術に係る血液状態解析方法では必須ではなく、例えば、予め別の装置や方法によって、前記血液凝固評価結果を得ることも可能である。血液凝固評価工程IIIで行う評価方法の詳細は、前述した血液状態解析装置1の血液凝固評価部13で実行される評価方法と同一である。
【0077】
(4)血漿中薬剤濃度算出工程IV
血漿中薬剤濃度算出工程IVでは、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度を算出する。この血漿中薬剤濃度算出工程IVは、本技術に係る血液状態解析方法では必須ではなく、例えば、予め別の装置や方法によって、血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度を測定することも可能である。血漿中薬剤濃度算出工程IVで行う算出方法の詳細は、前述した血液状態解析装置1の血漿中薬剤濃度算出部14で実行される算出方法と同一である。
【0078】
(5)赤血球量的評価工程V
赤血球量的評価工程Vでは、血液試料の電気的特性に基づいて、ヘマトクリット値及び/又はヘモグロビン量を評価する。この赤血球量的評価工程Vは、本技術に係る血液状態解析方法では必須ではなく、例えば、予め別の装置や方法によって、血液試料中のヘマトクリット値及び/又はヘモグロビン量を測定することも可能である。赤血球量的評価工程Vで行う評価方法の詳細は、前述した血液状態解析装置1の赤血球量的評価部15で実行される評価方法と同一である。
【0079】
(6)測定工程VI
測定工程VIでは、血液試料の電気的特性を測定する。本技術に係る血液状態解析方法において、この測定工程VIは必須ではなく、別の電気的特性測定方法などを用いて測定したデータを用いることも可能である。測定工程VIで行う測定方法の詳細は、前述した血液状態解析装置1の測定部16で実行される測定方法と同一である。
【0080】
(7)記憶工程VII
記憶工程VIIでは、補正工程Iで補正した補正結果、相関検出工程IIで求めた相関関係、血液凝固評価工程IIIおよび/または赤血球量的評価工程Vで評価した各評価結果、血漿中薬剤濃度算出工程IVで算出した血漿中薬剤濃度、測定工程VIで測定した測定結果などを記憶する。本技術に係る血液状態解析方法において、記憶工程VIIは必須ではなく、各結果を記憶せずに、その都度、解析を行うことも可能である。
【0081】
4.血液状態解析プログラム
本技術に係る血液状態解析プログラムは、前記薬剤を添加した状態において、前記血液試料の状態の解析に用いるプログラムであって、血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する補正機能をコンピューターに実現させるための血液状態解析プログラムである。また、必要に応じて、相関検出機能、血液凝固評価機能、血漿中薬剤濃度算出機能、赤血球量的評価機能、測定機能、記憶機能などをコンピューターに実現させることも可能である。
【0082】
言い換えると、本技術に係る血液状態解析プログラムは、前述した本技術に係る血液状態解析方法をコンピューターに実現させるためのプログラムである。よって、各機能の詳細は、前述した血液状態解析方法の各工程と同一であるため、ここでは説明を割愛する。
【実施例1】
【0083】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0084】
実施例1では、血液試料の電気的特性から得られる血液凝固能のパラメータと、ヘマトクリット値との相関性を調べた。なお、本実施例では、血液試料の電気的特性の一例として、誘電率を用いた。
【0085】
[実験方法]
(1)血液試料のヘマトクリット値の調製
クエン酸が内包された真空採血管(採血量1.8mL、6本)を用いて、健常者の静脈血を採血した。最初の1本は使用せずに廃棄し、残りの5本について、マイルドな条件による遠心分離(300g×10分)によって赤血球を採血管の下部に沈殿させ、一方の採血管から上澄みを一部取り、それを他方の採血管に加えた。次に、それぞれの採血管において再撹拌により赤血球を均質に分散させた。このようにして異なるヘマトクリット値の血液試料を調製した。
【0086】
(2)電気的特性の測定
前記で調製した各血液試料を、予め37℃で保温し、測定開始直前に少量の塩化カルシウム水溶液を加えて血液凝固反応を開始させた。それぞれの血液試料について、温度37℃、周波数域10MHzにおいて、誘電率測定を行った。
【0087】
[結果]
誘電率測定によって得られた血液凝固時間(CFT100)と、ヘマトクリット値との相関関係を図4に示す。図4に示す通り、血液凝固時間は、ヘマトクリット値の増加に伴って、増加することが分かった。
【0088】
また、誘電率測定によって得られた他のパラメータと、ヘマトクリット値との相関関係を図5に示す。図5中、Aは凝固開始時間とヘマトクリット値との相関関係、Bは最小誘電率増加強度を示す時間とヘマトクリット値との相関関係、Cは血液凝固時の誘電率増加強度とヘマトクリット値との相関関係、Dは凝固速度とヘマトクリット値との相関関係、をそれぞれ示す。
【0089】
図5に示す通り、凝固開始時間(A参照)、最小誘電率増加強度を示す時間(B参照)および血液凝固時の誘電率増加強度(C参照)については、ヘマトクリット値の増加に伴って概ね増加し、凝固速度(D参照)については、ヘマトクリット値の増加に伴って概ね減少することが分かった。
【実施例2】
【0090】
実施例2では、血液試料の電気的特性から得られる血液凝固能のパラメータと、添加する薬剤の血漿中の濃度との相関性を調べた。なお、本実施例では、血液試料の電気的特性の一例として、誘電率を用いた。
【0091】
[実験方法]
(1)電気的特性の測定
クエン酸が内包された真空採血管(採血量1.8mL、6本)を用いて、健常者2名の静脈血を採血した。最初の1本は使用せずに廃棄し、残りの5本について、予め37℃で保温し、測定開始直前に血液180μL当たり12μLの塩化カルシウム水溶液を、それぞれ濃度を100mMから400mMの範囲で変化させて加えて血液凝固反応を開始させた。それぞれの血液試料について、温度37℃、周波数域10MHzにおいて、誘電率測定を行った。
【0092】
[結果]
誘電率測定によって得られた血液凝固時間(CFT100)と、ヘマトクリット値との相関関係を図6に示す。図6に示す通り、血液凝固時間は、カルシウム濃度の増加に伴って、増加することが分かった。
【0093】
また、誘電率測定によって得られた他のパラメータと、カルシウム濃度との相関関係を図7に示す。図7中、Aは凝固開始時間とカルシウム濃度との相関関係、BはCFT50時間(最小誘電率増加強度を示す時間と誘電凝固時間との中点)とカルシウム濃度との相関関係、をそれぞれ示す。
【0094】
図7に示す通り、両パラメータともに、カルシウム濃度の増加に伴って増加することが分かった。
【0095】
実施例2では、ヘマトクリット値が一定の血液試料に対し、加える塩化カルシウムの濃度を変化させた結果である。即ち、血液凝固能を示すパラメータは、血漿中のカルシウム濃度に依存して変化することが分かった。
【0096】
実施例1および2の結果は、血中(血漿中)のカルシウム濃度が不明な場合、検査結果としての血液凝固時間の信頼性が低下することを意味する。例えば、正常値よりも長い血液凝固時間が検査結果として得られた場合、血液凝固能の低下による出血傾向を示しているのか、単に血漿中のカルシウム濃度が高いからなのか、直ちに判定することはできないことが分かった。同じ濃度のカルシウム水溶液を同じ量加えたとしても、血液試料中のヘマトクリット値が違っていれば、血漿中に存在する実効的なカルシウム濃度も変わることになるからである。
【0097】
以上の結果から、血液凝固評価結果は、血漿中に存在する薬剤の濃度に依存して変化するため、血液凝固評価結果を血漿中に存在する薬剤の濃度に対応して補正することで、より精度の高い評価を行うことができることが分かった。
【0098】
また、血液試料中の血漿中に存在する薬剤の濃度は、血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量に基づいて算出することができることが分かった。
【0099】
なお、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
(1)
血液試料に、抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤および抗血小板剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する装置であって、
血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する補正部を備える血液状態解析装置。
(2)
前記相関関係は、予め定められたものである(1)記載の血液状態解析装置。
(3)
血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係を求める相関検出部を備える(1)記載の血液状態解析装置。
(4)
前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価して、前記血液凝固評価結果を得る血液凝固評価部を備える(1)から(3)のいずれかに記載の血液状態解析装置。
(5)
前記血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量に基づいて、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度を算出する血漿中薬剤濃度算出部を備える(1)から(4)のいずれかに記載の血液状態解析装置。
(6)
前記血液試料の電気的特性に基づいて、前記血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を求める赤血球量的評価部を備える(1)から(5)のいずれかに記載の血液状態解析装置。
(7)
前記赤血球量的評価部によって得られたヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量に基づいて、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度を算出する血漿中薬剤(6)記載の血液状態解析装置。
(8)
前記血液試料の電気的特性を測定する測定部を備える(1)から(7)のいずれかに記載の血液状態解析装置。
(9)
前記血液試料の電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価して、前記血液凝固評価結果を得る血液凝固評価部と、
前記血液試料の電気的特性に基づいて、前記血液試料のヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を求める赤血球量的評価部と、
を備える(8)記載の血液状態解析装置。
(10)
前記血液凝固評価部では、前記血液試料の第1の周波数における電気的特性に基づいて、血液凝固の程度を評価し、
前記赤血球量的評価部では、前記血液試料の前記第1の周波数とは異なる第2の周波数における電気的特性に基づいて、ヘマトクリット値および/またはヘモグロビン量を求める、(9)記載の血液状態解析装置。
(11)
血液試料の電気的特性を測定する測定部を備える電気的特性測定装置と、
前記血液試料に、抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤および抗血小板剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する装置であって、血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する補正部を備える血液状態解析装置と、
を有する血液状態解析システム。
(12)
前記電気的特性測定装置での測定結果および/または前記血液状態解析装置での解析結果を記憶するサーバーを備える(11)記載の血液状態解析システム。
(13)
前記サーバーは、ネットワークを介して、前記電気的特性測定装置および/または前記血液状態解析装置と接続されている(12)記載の血液状態解析システム。
(14)
血液試料に、抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤および抗血小板剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を添加した状態において、前記血液試料の状態を解析する方法であって、
血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する補正工程を行う血液状態解析方法。
(15)
血液試料に、抗凝固処理解除剤、凝固活性化剤、抗凝固剤、血小板活性化剤および抗血小板剤からなる群より選択される1種以上の薬剤を添加した状態における前記血液試料の状態の解析に用いるプログラムあって、
血漿中の前記薬剤の濃度と血液凝固評価結果との相関関係に基づいて、前記血液試料の血液凝固評価結果を、前記血液試料中の血漿中に存在する前記薬剤の濃度に対応して補正する補正機能をコンピューターに実現させるための血液状態解析プログラム。
【符号の説明】
【0100】
1 血液状態解析装置
11 補正部
12 相関検出部
13 血液凝固評価部
14 血漿中薬剤濃度算出部
15 赤血球量的評価部
16 測定部
17 記憶部
10 血液状態解析システム
101 電気的特性測定装置
102 サーバー
103 表示部
104 ユーザーインターフェース
I 補正工程I
II 相関検出工程
III 血液凝固評価工程
IV 血漿中薬剤濃度算出工程
V 赤血球量的評価工程
VI 測定工程
VII 記憶工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7