(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
帯状の基材の一方の面側に、少なくとも原子層堆積膜とオーバーコート層とがこの順で積層する積層体の製造のうち、前記原子層堆積膜及び前記オーバーコート層がインラインで形成される積層体の製造方法であって、
第1の処理室内で、前記基材の一方の面に前記原子層堆積膜を形成する原子層堆積膜形成工程と、
前記原子層堆積膜の前記基材とは反対側の一方の面の外周部のみと接触するガイドローラにより、前記原子層堆積膜が形成された前記基材を、前記第1の処理室から第2の処理室内に案内する基材案内工程と、
前記第2の処理室内に案内された前記原子層堆積膜の一方の面に、オーバーコート層を形成するオーバーコート層形成工程と、
前記オーバーコート層を形成後、前記第2の処理室内で、前記オーバーコート層の前記原子層堆積膜とは反対側の一方の面に巻き取りローラのローラ面とを接触させて該巻き取りローラにより前記積層体をロール状に巻き取る巻き取り工程と、
を含み、
前記基材案内工程では、前記原子層堆積膜の前記基材とは反対側の一方の面の外周部のみと接触するガイドローラと、前記原子層堆積膜が形成された前記基材を前記ガイドローラに押し付ける押さえローラとにより、前記原子層堆積膜が形成された前記基材を、前記第1の処理室から第2の処理室内に案内し、前記押さえローラの前記基材を前記ガイドローラに押し付けるローラ面は、前記基材の案内方向からみて、前記基材側に向けて凸形状となっていることを特徴とする積層体の製造方法。
前記オーバーコート層形成工程では、前記原子層堆積膜と同等の機械的強度を有する前記オーバーコート層を、前記オーバーコート層の厚さが前記原子層堆積膜の厚さよりも厚くなるように形成することを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
前記原子層堆積膜形成工程の前に、前記基材の一方の面に、無機物質及び有機高分子の少なくとも一方を含有するアンダーコート層を形成するアンダーコート層形成工程を有し、
前記原子層堆積膜形成工程では、前記アンダーコート層の前記基材とは反対側の一方の面に対し、該アンダーコート層の一方の面から露出する前記無機物質及び前記有機高分子の一方と結合するように、前記原子層堆積膜を形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
前記基材案内工程では、前記第1の処理室内の圧力と、前記第2の処理室内の圧力との間の圧力とされた中間室を経由して、前記基材を前記第1の処理室から前記第2の処理室に案内することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
前記オーバーコート層形成工程では、フラッシュ蒸着法により、前記オーバーコート層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
前記オーバーコート層形成工程では、真空蒸着法により、前記オーバーコート層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
前記オーバーコート層形成工程では、化学蒸着法により、前記オーバーコート層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
前記搬送方向において前記原子層堆積膜形成部の前段に配置され、前記基材の一方の面に、無機物質及び有機高分子の少なくとも一方を含有するアンダーコート層を形成するアンダーコート層形成部を有することを特徴とする請求項10〜請求項13のいずれか1項に記載の積層体製造装置。
【背景技術】
【0002】
従来、物質を気体のように原子または分子レベルで動ける状態になった気相を用いて物体の表面に薄膜を形成する方法としては、化学気相成長(CVD(Chemical Vapor Deposition)ともいう。以下、「CVD」という。)法と、物理気相成長(PVD(Physical Vapor Deposition)ともいう。以下、「PVD」という。)法と、がある。
PVD法としては、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等がある。スパッタリング法は、膜質及び厚さの均一性に優れた高品質な薄膜の成膜が行えるため、液晶ディスプレイ等の表示デバイスに広く適用されている。
【0003】
CVD法は、真空チャンバ内に原料ガスを導入し、基板上において、熱エネルギーにより、1種類或いは2種類以上のガスを分解または反応させることで、固体薄膜を成長させる方法である。
このとき、成膜時の反応を促進させたり、反応温度を下げたりするために、プラズマや触媒(Catalyst)反応を併用するものがある。
このうち、プラズマ反応を用いるCVD法を、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法という。また、触媒反応を利用するCVD法を、Cat−CVD法という。
このようなCVD法を用いると、成膜欠陥が少なくなるため、例えば、半導体デバイスの製造工程(例えば、ゲート絶縁膜の成膜工程)等に適用されている。
近年、成膜方法として、原子層堆積法(ALD(Atomic Layer Deposition)法。以下、「ALD法」という。)が注目されている。
【0004】
ALD法は、表面吸着した物質を表面における化学反応によって原子レベルで一層ずつ成膜していく方法である。上記ALD法は、CVD法の範疇に分類されている。
いわゆるCVD法(一般的なCVD法)は、単一のガスまたは複数のガスを同時に用いて基坂上で反応させて薄膜を成長させるものである。それに対して、ALD法は、前駆体(以下、「第1の前駆体」という。例えば、TMA(Tri-Methyl Aluminum))、またはプリカーサともいわれる活性に富んだガスと、反応性ガス(ALD法では、前駆体と呼ばれる。以下、該前駆体を「第2の前駆体」という。)と、を交互に用いることで、基板表面における吸着と、これに続く化学反応と、によって原子レベルで一層ずつ薄膜を成長させていく特殊な成膜方法である。
【0005】
ALD法の具体的な成膜方法は、以下のような手法で行われる。
始めに、いわゆるセルフ・リミッティング効果(基板上の表面吸着において、表面がある種のガスで覆われると、それ以上、該ガスの吸着が生じない現象のことをいう。)を利用し、基板上に前駆体が一層のみ吸着したところで未反応の前駆体を排気する(第1のステップ)。
次いで、チャンバ内に反応性ガスを導入して、先の前駆体を酸化または還元させて所望の組成を有する薄膜を一層のみ形成した後に反応性ガスを排気する(第2のステップ)。
ALD法では、上記第1及び第2のステップを1サイクルとし、そのサイクルを繰り返し行うことで、基板上に薄膜を成長させる。
【0006】
したがって、ALD法では、二次元的に薄膜が成長する。また、ALD法は、従来の真空蒸着法やスパッタリング法等との比較では、もちろんのこと、一般的なCVD法と比較しても、成膜欠陥が少ないことが特徴である。
このため、食品及び医薬品等の包装分野や電子部品分野等の幅広い分野への応用が期待されている。
ALD法の1つとして、第2の前駆体を分解し、基板上に吸着している第1の前駆体と反応させる工程において、反応を活性化させるためにプラズマを用いる方法がある。この方法は、プラズマ活性化ALD(PEALD(Plasma Enhanced ALD))法、または、単に、プラズマALD法と呼ばれている。
【0007】
ALD法の技術そのものは、1974年にフィンランドのDr.Tuomo Sumtolaによって提唱された。一般的に、ALD法は、高品質・高密度な成膜が得られるため、半導体デバイス製造分野(例えば、ゲート絶縁膜の形成工程)で応用が進められており、ITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)にもそのような記載がある。
ALD法は、他の成膜法と比較して斜影効果(スパッタリング粒子が基板表面に斜めに入射して成膜バラツキが生じる現象)が無いという特徴があるため、ガスが入り込める隙間があれば成膜が可能である。
そのため、ALD法は、深さと幅との比が大きい高アスペクト比を有する基板上のラインやホールの被膜や、3次元構造物の被膜用途であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)関連技術への応用が期待されている。
【0008】
しかしながら、ALD法にも欠点がある。ALD法の欠点としては、例えば、特殊な材料を使用する点等が挙げられるが、最大の欠点としては、成膜速度が遅いことである。ALD法の成膜速度は、例えば、通常の真空蒸着法やスパッタリング法等の成膜法の成膜速度の1/5〜1/10程度の速度であり、非常に遅い。
上記説明したALD法を用いて薄膜が形成される基板としては、例えば、ウェハやフォトマスク等の小さな板状の基板、大面積でフレキシブル性がない基板(例えば、ガラス基板)、フィルム等のように大面積でフレキシブル性がある基板等がある。
【0009】
これらの基板に薄膜を形成するための量産設備では、取り扱いの容易さ、及び成膜品質等によって様々な基板の取り扱い方法が提案され、かつ実用化されている。
例えば、ウェハに薄膜を成膜する場合の成膜装置としては、1枚のウェハを成膜装置のチャンバ内に搬送して成膜した後、成膜されたウェハと未処理のウェハとを入れ替えて、再び成膜処理を行う枚葉式成膜装置や、チャンバ内に複数のウェハをまとめてセットし、その後、全てのウェハに同一の成膜処理を行うバッチ式成膜装置等がある。
【0010】
また、ガラス基板に薄膜を成膜する場合の成膜装置としては、成膜の源となる部分に対してガラス基板を逐次搬送しながら同時に成膜を行うインライン式成膜装置がある。
さらに、フレシキブル基板に薄膜を成膜する場合の成膜装置としては、ローラからフレシキブル基板を巻き出しながら成膜を行い、別のローラでフレシキブル基板を巻き取る、いわゆるロールツーロールを採用したコーティング成膜装置がある。
【0011】
なお、フレシキブル基板だけではなく、成膜対象となる基板を連続搬送できるようなフレキシブルなシート、または一部がフレシキブルとなるようなトレイに載せて連続成膜するwebコーティング成膜装置もコーティング成膜装置に含まれる。
いずれの成膜装置による成膜方法や基板取り扱い方法についても、品質面や取り扱いの容易さ等から判断して、成膜速度が最速となるような成膜装置の組み合わせが採用されている。
【0012】
特許文献1には、可撓性及び光透過性のあるプラスチック基板の上に発光ポリマーを搭載し、ALD法により、該発光ポリマーの表面及び側面に原子層蒸着膜をトップコーティングすることが開示されている。
また、特許文献1には、上記手法を用いることで、コーティング欠陥を減らすことが可能になると共に、数十ナノメートルの厚さにおいて、気体透過を桁違いに低減させることが可能であることが開示されている。
【0013】
特許文献2には、真空可能なチャンバと、該真空可能なチャンバ内の少なくとも2の原子層堆積源で、各原子層堆積源は該真空可能なチャンバの残りの部分から隔離されている原子層堆積源と、該真空可能なチャンバを貫通して基板を搬送する(基板搬送手段)原子層堆積装置が開示されている。
また、特許文献2には、原子層堆積膜が形成された基板を再巻き取りドラムに巻き取ることが開示されている。
【0014】
特許文献3には、基材の外面に沿って薄膜状の原子層堆積膜を形成する第1の工程と、第1の工程と直列の工程内にあるインラインにおいて、原子堆積膜の外面に沿って、原子堆積膜よりも機械的強度の高いオーバーコート層を形成し、積層体を生成する第2の工程と、第2の工程で形成されたオーバーコート層が剛体に接触するように、積層体を収納する第3の工程と、を含む積層体の製造方法が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の積層体、及び積層体製造装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0025】
(第1の実施形態)
<第1の実施形態に係る積層体>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法により製造される積層体を模式的に示す断面図である。
ここでは、第1の実施形態の積層体の製造方法について説明する前に、第1の実施形態の積層体の製造方法により製造される積層体10の構成について説明する。
図1を参照するに、積層体10は、フィルム状とされた積層体であり、基材11と、原子層堆積膜12と、オーバーコート層14と、を有する。
基材11は、所定の方向に延在する帯状かつフィルム状とされた基材である。基材11は、原子層堆積膜12が形成される一方の面11aと、一方の面11aとは反対側に配置された他方の面11bと、を有する。
【0026】
基材11の材料としては、例えば、高分子材料を用いることができる。該高分子材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミドフィルム(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等のプラスチック材料を用いることができる。
なお、基材11の材料は、上記材料に限定されず、耐熱性、強度物性、及び電気絶縁性等を考慮して適宜選択することができる。
【0027】
基材11の厚さとしては、例えば、積層体10が適用されるエレクトロルミネッセンス素子等の電子部品や、精密部品の包装材料としての適正等を考慮して、12μm以上200μm以下の範囲で適宜選択することができる。
原子層堆積膜12は、基材11の一方の面11aを覆うように配置されている。原子層堆積膜12は、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法により形成される膜であり、ガスバリア層(バリア層)として機能する膜である。
【0028】
原子層堆積膜12としては、例えば、AlO
x、TiO
x、SiO
x、ZnO
x、SnO
x等の無機酸化膜、或いはこれらの無機物よりなる窒化膜や酸窒化膜、または他元素からなる酸化膜、窒化膜、酸窒化膜等を用いることができる。
原子層堆積膜12の厚さは、例えば、2nm〜500nmの範囲内で適宜設定することができる。
【0029】
オーバーコート層14は、原子層堆積膜12の一方の面12aを覆うように配置されている。オーバーコート層14は、原子層堆積膜12の一方の面12aを覆うことで、原子層堆積膜12の一方の面12aと剛体とが直接接触すること抑制して、原子層堆積膜12に傷が発生することを抑制するための保護層(具体的には、原子層堆積膜12のガスバリア性の低下を抑制するための保護層)として機能する。
【0030】
このように、原子層堆積膜12の一方の面12aにオーバーコート層14を配置させることにより、例えば、後述する
図2に示す積層体製造装置20を用いて、積層体10を製造する際、オーバーコート層14の一方の面14aと巻き取りローラ82のローラ面とを接触させて、積層体10をローラ状に巻き取ることが可能となる。
これにより、巻き取りローラ82との接触に起因する原子層堆積膜の損傷を抑制することができる。
【0031】
オーバーコート層14としては、例えば、原子層堆積膜12の機械的強度と同等以上の機械的強度を有する層を用いることができる。
このように、原子層堆積膜12の機械的強度と同等以上の機械的強度を有するオーバーコート層14を用いることで、巻き取りローラ82との接触に起因する原子層堆積膜12の損傷をさらに抑制することができる。
【0032】
また、巻き取りローラ82以外の剛体(例えば、搬送用のローラ)がオーバーコート層14に接触して、積層体10に外力が印加された場合でも原子層堆積膜12の一方の面12aが損傷することを抑制できる。
また、原子層堆積膜12と同等の機械的強度を有するオーバーコート層14を用いる場合には、オーバーコート層14の厚さが原子層堆積膜12の厚さよりも厚くなるようにするとよい。
これにより、積層体10をローラ状に巻き取る際に、原子層堆積膜12が損傷することを抑制する効果をさらに向上できる。
【0033】
オーバーコート層14としては、例えば、官能基がOH基またはCOOH基を有する水系バリアコート膜で構成された層を用いることができる。また、オーバーコート層14は、無機物質を含んでもよい。上記水系バリアコート膜とは、水系の有機高分子や、金属アルコキシドやシランカップリング剤等の有機金属化合物よりなる加水分解重合体、及びこれらの複合体よりなり、かつバリア性を有するコート膜のことをいう。
【0034】
上記水系の有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン等を用いることができる。
有機金属化合物である金属アルコキシドは、一般式として、R1(M−OR
2)で表される。但し、上記R1,R2は、炭素数1〜8の有機基であり、Mは、金属原子(以下、「金属原子M」という)である。
【0035】
なお、金属原子Mとしては、例えば、Si、Ti、Al、Zn等を用いることができる。
金属原子MがSiのR1(Si−OR
2)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラプトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を例示することができる。
【0036】
金属原子MがZrのR1(Si−OR
2)としては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロボキシジルコニウム、テトラプトキシジルコニウム等を例示することができる。
金属原子MがTiのR1(Si−OR
2)としては、例えば、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラプトキシチタニウム等を例示することができる。
【0037】
金属原子MがAlのR1(Si−OR
2)としては、例えば、テトラメトキシアルミニウム、テトラエトキシアルミニウム、テトライソプロポキシアルミニウム、テトラプトキシアルミニウム等がある。
また、オーバーコート層14に無機物質からなる無機粒子を添加する場合、該無機物質としては、例えば、粘土鉱物の一種であるカオリナイトより粒径の大きい体質顔料を用いることが好ましい。
【0038】
このような無機物質としては、例えば、ハロイサイト、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、アルミナ等を用いることができる。
また、オーバーコート層14に無機物質を層状化合物として添加する場合、該無機物質としては、例えば、人口粘土、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト、ヘクトライト、サポライト、スチブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、カオリナイト、フライボンタイト等を用いることができる。
【0039】
さらに、上記層状化合物を構成する無機物質としては、例えば、パイロフェライト、タルク、モンモリロナイト(人口粘土と重複)、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、バーミュキュライト、セリサイト、海緑石、セラドナイト、カオリナイト、ナクライト、デッカイト、ハロサイト、アンチゴライト、クリソタイル、アメサイト、クロンステダイト、シャモサイト、緑泥石、アレバルダイト、コレンサイト、トスダイト等を用いることができる。
【0040】
なお、体質顔料以外の無機粒子(球状粒子)としては、例えば、多結晶性化合物を用いることができる。該多結晶性化合物としては、例えば、ジルコニアやチタニア等の金属酸化物、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の一般式がMM’OXで表される金属原子(M、M’、・・・)が2種以上含まれる金属酸化物等を用いることができる。
【0041】
<第1の実施形態に係る積層体製造装置>
図2は、本発明の第1の実施形態に係る積層体製造装置の概略構成を示す正面図である。
図2において、
図1に示す積層体10、及び積層体10を構成する構成要素と同一構成部分には、同一符号を付す。
また、
図2において、Aは基材巻回用ローラ36の回転方向(以下、「A方向」という)、Bは支持部材21の回転方向(以下、「B方向」という)、Cはダンサーローラ81の回転方向(以下、「C方向」という)をそれぞれ示している。
また、
図2において、基材11または積層体10の近傍に付した矢印(上記符号A〜Cが付されていない矢印)は、基材11の搬送方向(設定の搬送方向)を示している。
さらに、紙面の都合上、実際には数十個(例えば、70個)存在する膜形成部43を図示することが困難なため、
図2では、3つの膜形成部43のみを図示する。
【0042】
次に、
図2を参照して、
図1に示す積層体10を製造する際に使用する第1の実施形態に係る積層体製造装置20について説明する。
第1の実施形態の積層体製造装置20は、所定の方向(一方向)に延在する帯状の基材11をインラインでロールツーロール方式により、基材11の一方の面11aに、原子層堆積膜12と、オーバーコート層14と、を順次形成する装置である。
【0043】
第1の実施形態の積層体製造装置20は、支持部材21と、基材搬送部23と、プラズマ前処理部24と、原子層堆積膜形成部26と、ガイドローラ27と、一対の押さえローラ28と、中間室29と、オーバーコート層形成部31と、積層体巻き取り部33と、を有する。
図3は、
図2に示す領域Dで囲まれた基材及び支持部材を拡大した図である。
図3において、
図1及び
図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0044】
図2及び
図3を参照するに、支持部材21は、外面21aが円筒面のロール形状となっており、その外面21aが基材11の他方の面11bと接触する。支持部材21は、B方向に回転することで、基材巻回用ローラ36から供給された基材11を、プラズマ前処理部24、複数の原子層堆積膜形成部26、ガイドローラ27の順に通過させる。支持部材21の外面21aは、基材11を搬送するためのガイド面として機能する。
【0045】
上記支持部材21としては、例えば、ドラムを用いることができる。
基材搬送部23は、プラズマ前処理部24の前段において、支持部材21の外面21aと対向するように配置されている。基材搬送部23は、基材巻回用ローラ36と、基材繰り出し用ローラ37と、を有する。
基材巻回用ローラ36は、そのローラ面が支持部材21の外面21aと対向するように、支持部材21から離間した位置に配置されている。基材巻回用ローラ36のローラ面には、所定の方向(一方向)に延在する帯状の基材11が巻回される。
【0046】
基材巻回用ローラ36は、A方向に回転することで、基材繰り出し用ローラ37を介して、支持部材21の外面21aに基材11を搬送する。
基材繰り出し用ローラ37は、そのローラ面37aが支持部材21の外面21a及び基材巻回用ローラ36のローラ面と対向するように、支持部材21と基材巻回用ローラ36との間に配置されている。
【0047】
基材繰り出し用ローラ37は、基材巻回用ローラ36よりも外径の小さいローラであり、基材11の他方の面11bと支持部材21の外面21aとが接触するように、支持部材21に基材11を供給する。このため、基材繰り出し用ローラ37は、支持部材21の外面21aに近接して配置されている。
支持部材21の外面21aに供給された基材11は、支持部材21の外面21aに沿って、プラズマ前処理部24に搬送される。
【0048】
図1及び
図2を参照するに、プラズマ前処理部24は、基材繰り出し用ローラ37と原子層堆積膜形成部26との間を通過する基材11の一方の面11aと対向するように配置されている。
プラズマ前処理部24は、基材11の一方の面11aに対してプラズマ前処理を実施する処理チャンバ41を有する。処理チャンバ41は、処理チャンバ41内に基材搬送部23により供給された基材11を導入する導入口(図示せず)と、プラズマ前処理された基材11を処理チャンバ41の外に導出する導出口(図示せず)と、を有する。
【0049】
プラズマ前処理部24では、例えば、酸素プラズマ雰囲気に基材11の一方の面11aを暴露させることで、基材11の一方の面11aの改質(具体的には、基材11の一方の面11aの官能基を変化させること)を行う。
プラズマ前処理された基材11は、支持部材21の外面21aに沿って、原子層堆積膜形成部26に搬送される。
なお、上記プラズマ前処理の条件は、基材11の材料の特性に応じて、適宜選択することができる。
原子層堆積膜形成部26は、複数(
図2の場合、紙面の都合上、3つのみ図示)の膜形成部43を有する。
【0050】
なお、第1の実施形態では、原子層堆積膜12の一例として、酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜を形成する場合を例に挙げて、以下の説明を行う。
複数の膜形成部43は、プラズマ前処理部24とガイドローラ27との間に基材11の一方の面11aと対向するように配置されている。
膜形成部43は、パージ用チャンバ45と、前駆体吸着用チャンバ46と、第2の前駆体供給用ノズル47と、を有する。
なお、第1の実施形態において、「第1の処理室」とは、パージ用チャンバ45、前駆体吸着用チャンバ46、及び第2の前駆体供給用ノズル47よりなる室のことをいう。
【0051】
よって、原子層堆積膜形成部26は、基材11の搬送方向に配置された複数の第1の処理室を有する。
パージ用チャンバ45は、基材11の搬送方向に配置された前駆体吸着用チャンバ46及び第2の前駆体供給用ノズル47を収容している。パージ用チャンバ45は、前駆体吸着用チャンバ46の前後に位置する基材11の一方の面11a、及び第2の前駆体供給用ノズル47の前後に位置する基材11の一方の面11aを露出している。
【0052】
パージ用チャンバ45は、パージ用チャンバ45内に基材11を導入するための導入口(図示せず)と、パージ用チャンバ45外に基材11を導出するための導出口(図示せず)と、を有する。
パージ用チャンバ45内は、パージガス(例えば、O
2ガスとN
2ガスとを混合させた混合ガス)で充填されている。
パージ用チャンバ45内では、前駆体吸着用チャンバ46を通過させることで基材11の一方の面11aに吸着する余分(過剰)な第1の前駆体(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)及び副生成物の除去を行うと共に、第2の前駆体供給用ノズル47を通過させることで基材11の一方の面11aに吸着する余分(過剰)な第2の前駆体(例えば、H
2O)及び副生成物の除去を行う。
【0053】
なお、本発明における「第2の前駆体」とは、第1の前駆体(本実施形態の場合、TMA)に酸化、窒化、または酸窒化反応をさせる物質のことをいう。
前駆体吸着用チャンバ46は、パージ用チャンバ45内に収容されており、第2の前駆体供給用ノズル47の前段に配置されている。
前駆体吸着用チャンバ46は、前駆体吸着用チャンバ46内に基材11を導入するための導入口(図示せず)と、パージ用チャンバ45内(言い換えれば、前駆体吸着用チャンバ46外)に基材11を導出するための導出口(図示せず)と、を有する。
【0054】
第1の前駆体としてトリメチルアルミニウム(TMA)を用いて、原子層堆積膜12として酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜を形成する場合、前駆体吸着用チャンバ46内は、窒素ガスとトリメチルアルミニウム(TMA)とが混合された雰囲気にすることができる。
この場合、前駆体吸着用チャンバ46内の圧力は、例えば、10〜50Pa、前駆体吸着用チャンバ46の内壁の温度は、例えば、70℃に保持することができる。
【0055】
第2の前駆体供給用ノズル47は、パージ用チャンバ45内に収容されており、前駆体吸着用チャンバ46の後段に配置されている。
第2の前駆体供給用ノズル47は、基材11と対向するように配置されている。第2の前駆体供給用ノズル47は、基材11の一方の面11aに水を供給するためのノズルである。
【0056】
原子層堆積膜12として酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜を形成する場合、第2の前駆体供給用ノズル47内は、窒素ガスと水とが存在する雰囲気にすることができる。
この場合、第2の前駆体供給用ノズル47内の圧力は、例えば、10〜50Pa、第2の前駆体供給用ノズル47の内壁の温度は、例えば、70℃に保持することができる。
この場合、第2の前駆体供給用ノズル47と対向する基材11では、基材11の一方の面11aに吸着したトリメチルアルミニウム(TMA)と水とが反応することで、原子層堆積膜12である酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜の一部を構成する一原子層レベルの酸化アルミニウム(Al
2O
3)層が形成される。
【0057】
その後、トリメチルアルミニウム(TMA)と水とが反応した基材11は、第2の前駆体供給用ノズル47から導出され、パージ用チャンバ45内に搬送される。そして、パージ用チャンバ45内で余分(過剰)な第2の前駆体(この場合、H
2O)、及び副生成物が除去されることで、一方の面11aに一原子層レベルの酸化アルミニウム(Al
2O
3)層が形成される。
そして、該酸化アルミニウム(Al
2O
3)層が形成された基材11は、パージ用チャンバ45の外に導出される。
【0058】
上記説明した1つの膜形成部43内で行われる一連の処理を1サイクルとして、一原子層レベルの酸化アルミニウム(Al
2O
3)層が形成され、上記1サイクルの処理が原子層堆積膜形成部26を構成する複数の膜形成部43でそれぞれ1回ずつ行われることで、積層された該酸化アルミニウム(Al
2O
3)層の厚さの合計の値と酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜の所望の厚さとを略一致させる。
したがって、原子層堆積膜形成部26を構成する膜形成部43の数は、原子層堆積膜12である酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜の所望の厚さに応じて決定される。
【0059】
例えば、基材11の一方の面11aに、厚さ(所望の厚さ)10nmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜を形成する場合で、かつ1サイクルの酸化アルミニウム(Al
2O
3)層の厚さが0.14〜0.15nmの場合、70サイクルの処理が必要となる。
したがって、この場合、原子層堆積膜形成部26を構成する膜形成部43の数は、70個必要となる。
なお、原子層堆積膜形成部26において、原子層堆積膜12を成膜する幅を規定することができる。
【0060】
図4は、
図2に示す積層体製造装置のうち、領域Eに対応する部分を拡大した図である。
図4において、
図1及び
図2に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図5は、
図2に示すガイドローラの斜視図である。
図5では、
図2及び
図4に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
図6は、ガイドローラ、一対の押さえローラ、及びガイドローラと一対の押さえローラとの間に位置する原子層堆積膜が形成された基材の断面図である。
図6において、
図1、
図2、
図4、及び
図5に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0061】
図2、及び
図4〜
図6を参照するに、ガイドローラ27は、原子層堆積膜形成部26と中間室29との間に位置する支持部材21の外面21aの近傍に配置されている。
ガイドローラ27は、一対(2つ)のガイドローラ本体51と、回転軸52と、を有する。一対のガイドローラ本体51は、円柱形状とされている。一対のガイドローラ本体51は、それぞれローラ面51aを有する。
【0062】
一対のローラ面51aは、支持部材21の外面21aにより搬送される原子層堆積膜12の一方の面12の外周部と接触可能な位置に配置されている。
原子層堆積膜12の一方の面12aと接触するローラ面51aの幅W2は、例えば、基材11の幅W1の5〜10%程度の値にすることができる。
このように、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部のみと接触し、原子層堆積膜12が形成された基材11を第2の処理室であるオーバーコート層形成室61(以下、オーバーコート層形成室61を「第2の処理室」ということもある。)内に案内するガイドローラ27を有することで、原子層堆積膜12の一方の面12a全体と接触する従来のガイドローラを用いた場合と比較して、原子層堆積膜12にガイドローラ27に起因する傷の発生を抑制することができる。
【0063】
これにより、原子層堆積膜12のガスバリア性の低下を抑制できると共に、基材11と原子層堆積膜12との間の密着性の低下を抑制できる。
図2及び
図6を参照するに、一対(2つ)の押さえローラ28は、押さえローラ本体54と、回転軸55と、をそれぞれ有する。
押さえローラ本体54は、基材11の他方の面11bの外周部と接触するローラ面54aを有する。押さえローラ本体54は、ローラ面54aがガイドローラ本体51のローラ面51aと対向する位置に配置されている。回転軸55は、その一端が押さえローラ本体54と接続されている。
【0064】
上記構成とされた押さえローラ54は、ガイドローラ本体51に対して、ガイドローラ本体51のローラ面51aと接触する原子層堆積膜12が形成された基材11を押し付けるためのローラである。
このように、ガイドローラ本体51のローラ面51aに対して、ガイドローラ本体51と接触する原子層堆積膜12が形成された基材11を押し付ける押さえローラ54を有することで、ガイドローラ本体51のローラ面51aに対して、原子層堆積膜12が形成された基材11をしっかりと押し当てて、ローラ面51aから原子層堆積膜12が形成された基材11が外れることを抑制可能となるので、基材11の搬送方向を安定して変更させることができる。
【0065】
図2を参照するに、中間室29は、支持部材21及び原子層堆積膜形成部26から離間した位置に配置されている。中間室29は、第1の導入口29−1と、第2の導入口29−2と、を有する。
第1の導入口29−1は、中間室29の外から中間室29内に、原子層堆積膜12が形成された基材11を導入させるための導入口である。第2の導入口29−2は、中間室29内からオーバーコート層形成部31内に、原子層堆積膜12が形成された基材11を導入させるための導入口である。
【0066】
このように、第1の処理室から第2の処理室に基材11を搬送する際に通過する中間室29を有することで、例えば、第1の処理室と第2の処理室との間の真空度が大きく異なる場合、中間室29の真空度を第1の処理室の真空度と第2の処理室の真空度との間の値にすることで、段階的に真空度を変化させることができる。
具体的には、第1の処理室(具体的には、パージ用チャンバ45内)の真空度が100Pa、第2の処理室(オーバーコート層形成室61内)の真空度が0.01Paの場合、中間室29内の真空度は、例えば、1Paとすることができる。
【0067】
また、中間室29を設け、中間室29を介して、第2の処理室に原子層堆積膜12が形成された基材11を搬送することで、第1の処理室で使用するガスと第2の処理室で使用するガスとが混合されることを抑制できる。
オーバーコート層形成部31は、
図1に示すオーバーコート層14が形成される部分であり、オーバーコート層形成室61(第2の処理室)と、第1のローラ62と、第2のローラ63と、原料タンク65と、原料供給配管66と、原料供給用ポンプ68と、噴霧器69と、気化器72と、気体供給配管74と、コーティングノズル76と、光照射部78と、を有する。
【0068】
オーバーコート層形成室61は、中間室29に隣接して配置されており、第2の導入口29−2を露出するように区画されている。オーバーコート層形成室61は、第1の処理室の外側で、かつ第1の処理室から離間した位置に配置されている。
オーバーコート層形成室61は、第1のローラ62、第2のローラ63、原料タンク65、原料供給配管66、原料供給用ポンプ68、噴霧器69、気化器72、気体供給配管74、コーティングノズル76、及び光照射部78を収容している。
【0069】
オーバーコート層形成室61内の雰囲気は、コート材料の架橋の阻害にならないように、例えば、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気)にするとよい。
このように、原子層堆積膜12が形成される第1の処理室の外側で第1の処理室から離間した位置に配置され、かつ原子層堆積膜12の一方の面12aにオーバーコート層14(
図1参照)を形成するオーバーコート層形成室61(第2の処理室)を有することで、第2の処理室内で使用するガスが第1の処理室内に移動することを抑制可能になる共に、第1の処理室内で使用するガスが第2の処理室内に移動することを抑制可能となる。
【0070】
これにより、第1の処理室内で使用するガスと第2の処理室内で使用するガスとが混合された状態で、原子層堆積膜12及びオーバーコート層14が形成されることを抑制可能となるので、原子層堆積膜12及びオーバーコート層14の性能(膜質や膜特性等)を向上させることができる。つまり、ガスバリア性に優れた原子層堆積膜12を形成することができる。
【0071】
第1のローラ62は、第2の導入口29−2の近傍に配置されている。第1のローラ62は、第1及び第2の導入口29−1,29−2を通過した基材11の他方の面11b(
図1参照)と接触することで、原子層堆積膜12が形成された基材11の搬送方向を90度変更させて、第2のローラ63に向かう方向に基材11を搬送させる。
第2のローラ63は、第1のローラ62により搬送され、かつ原子層堆積膜12の一方の面12aにオーバーコート層14が形成された14a(
図1参照)と接触することで、基材11の搬送方向を変更させて、オーバーコート層形成室61内に配置された、積層体巻き取り部33(具体的には、積層体巻き取り部33を構成するダンサーローラ81)に搬送される。
【0072】
原料タンク65は、原料供給用配管66を介して、噴霧器69と接続されている。原料タンク65には、オーバーコート層14(
図1参照)の母材となるコート材料(例えば、アクリルモノマー等)が充填されている。
原料供給配管66は、その一端が原料タンク65と接続されており、他端が噴霧器69と接続されている。
【0073】
原料供給用ポンプ68は、原料タンク65の近傍に位置する原料供給配管66に設けられている。原料供給用ポンプ68は、原料供給配管66を介して、原料タンク65に充填されたコート材料を噴霧器69に供給する。
噴霧器69は、原料供給配管66の他端、及び気化器72と接続されている。噴霧器69は、原料供給配管66を介して供給されたコート材料を気化器72に対して噴霧する。噴霧器69としては、例えば、アトマイザーを用いることができる。
【0074】
気化器72は、噴霧器69及び気体供給配管74と接続されている。気化器72では、噴霧器62により噴霧されたコート材料を気化させることで、コート材料を気体状態にする。この気体状態とされたコート材料は、気体供給配管74を介して、コーティングノズル76に供給される。気化器72としては、例えば、エパボレーターを用いることができる。
気体供給配管74は、その一端が気化器72と接続されており、他端がコーティングノズル76と接続されている。気体供給配管74は、気体状態とされたコート材料をコーティングノズル76に供給する。気体供給配管74は、高温に保たれた配管である。
【0075】
コーティングノズル76は、第1のローラ62を通過直後の基材11に形成された原子層堆積膜12の一方の面12a(
図1参照)に、気体状態とされたコート材料を噴射することが可能な位置に配置されている。
原子層堆積膜12の一方の面12aに、噴射された気体状態とされたコート材料は、被膜層(オーバーコート層14の母材)となる。
光照射部78は、コーティングノズル76と第2のローラ63との間に搬送される上記被膜層に光(例えば、電子線や紫外線等)を照射可能な位置に配置されている。
上記被膜層は、光(例えば、電子線や紫外線等)を照射されることで、架橋し、硬化されたオーバーコート層14が形成される。これにより、
図1に示す積層体10が形成される。
【0076】
その後、第2のローラ63を通過した積層体10は、積層体巻き取り部33(具体的には、積層体巻き取り部33を構成するダンサーローラ81)に搬送される。
図1及び
図2を参照するに、積層体巻き取り部33は、ダンサーローラ81と、巻き取りローラ82と、を有する。
ダンサーローラ81は、ローラ63の後段に設けられている。ダンサーローラ81は、積層体10を構成する基材11一方の面11bと接触するローラ面を有する。
【0077】
ダンサーローラ81は、積層体10が巻き取りローラ82に巻き取られる際に、積層体10に対して所定のテンションを印加させる機能を有する。ダンサーローラ81を通過した積層体10は、巻き取りローラ82に搬送される。
巻き取りローラ82は、ダンサーローラ81の外径よりも大きな外径とされたローラである。巻き取りローラ82は、ダンサーローラ81の後段に配置されている。巻き取りローラ82は、シート状とされた積層体10をロール状に巻き取るためのローラである。巻き取りローラ82のローラ面は、積層体10を構成するオーバーコート層14の一方の面14aと接触する。
【0078】
よって、巻き取りローラのローラ面が原子層堆積膜の一方の面と直接接触することがなくなるため、原子層堆積膜に巻き取りローラに起因する傷の発生を抑制することができる。
第1の実施形態の積層体製造装置によれば、原子層堆積膜12が形成される第1の処理室の外側で第1の処理室から離間した位置に配置され、かつ原子層堆積膜12の一方の面12aにオーバーコート層14(
図1参照)を形成するオーバーコート層形成室61(第2の処理室)を有することで、第2の処理室内で使用するガスが第1の処理室内に移動することを抑制可能になる共に、第1の処理室内で使用するガスが第2の処理室内に移動することを抑制可能となる。
【0079】
これにより、第1の処理室内で使用するガスと第2の処理室内で使用するガスとが混合された状態で、原子層堆積膜12及びオーバーコート層14が形成されることを抑制可能となるので、原子層堆積膜12及びオーバーコート層14の性能(膜質や膜特性等)を向上させることができる。つまり、ガスバリア性に優れた原子層堆積膜12を形成することができる。
【0080】
また、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部のみと接触し、原子層堆積膜12が形成された基材11をオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内に案内するガイドローラ27を有することで、原子層堆積膜12の一方の面12a全体と接触する従来のガイドローラを用いた場合と比較して、原子層堆積膜12にガイドローラ27に起因する傷の発生を抑制することができる。
【0081】
これにより、原子層堆積膜12のガスバリア性の低下を抑制できると共に、基材11と原子層堆積膜12との間の密着性の低下を抑制できる。
さらに、積層体10を構成するオーバーコート層14の一方の面14aと接触することで、積層体10をロール状に巻き取る積層体巻き取り部33を有することで、層体巻き取り部33を構成する巻き取りローラ82のローラ面が原子層堆積膜12の一方の面12aと直接接触することがなくなるため、原子層堆積膜12に巻き取りローラ82に起因する傷が発生することを抑制できる。
【0082】
<第1の実施形態の積層体の製造方法>
図7は、本発明の第1の実施形態に係る積層体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
次に、
図2〜
図4、及び
図7を参照して、第1の実施形態に係る積層体の製造方法について説明する。
図7に示すフローチャートの処理が開始されると、基材搬送部23により、基材巻回用ローラ36に巻回された基材11(例えば、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)よりなるフィルム)が円筒状の支持部材21の外面21aに沿って、プラズマ前処理部24に向かう方向に搬送される。このとき、基材11は、他方の面11bが支持部材21の外面21aと接触するように搬送される。
【0083】
STEP1では、基材11の一方の面11aをプラズマ前処理する。具体的には、プラズマ前処理部24により、例えば、酸素プラズマ雰囲気に基材11の一方の面11aを暴露させることで、基材11の一方の面11aの改質を行う。
その後、一方の面11aが改質された基材は、支持部材21の外面21aに沿って、原子層堆積膜形成部26に搬送され、処理は、STEP2へと進む。
なお、プラズマ前処理の条件は、基材11の材料の特性に応じて、適宜選択することができる。
【0084】
STEP2では、複数の膜形成部43を有する原子層堆積膜形成部26により、基材11の一方の面11aに、所望の厚さとされた原子層堆積膜12が形成される(原子層堆積膜形成工程)。
具体的には、STEP2では、以下の処理が行われる。始めに、搬送された基材11が1つ目の膜形成部43に到達すると、基材11は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気)とされたパージ用チャンバ45内に導入される。
パージ用チャンバ45内では、余分(過剰)な第1の前駆体(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA))の除去、及びSTEP1で処理された基材11の一方の面11aに吸着した副生成物の除去が行われる。
【0085】
次いで、基材11は、パージ用チャンバ45内に配置された前駆体吸着用チャンバ46内に導入する。前駆体吸着用チャンバ46内の雰囲気を、例えば、窒素ガスとトリメチルアルミニウム(TMA)とが混合された雰囲気とする場合、前駆体吸着用チャンバ46内の圧力は、例えば、10〜50Paにすることができる。この場合、前駆体吸着用チャンバ46の内壁の温度は、例えば、70℃に保持することができる。
【0086】
この場合、前駆体吸着用チャンバ46内では、基材11の一方の面11aに前駆体としてトリメチルアルミニウム(TMA)が吸着する。
その後、一方の面に前駆体を吸着した基材11は、前駆体吸着用チャンバ46から導出され、前駆体吸着用チャンバ46と第2の前駆体供給用ノズル47との間に位置するパージ用チャンバ45内において、余分(過剰)な前駆体(トリメチルアルミニウム(TMA))が除去される。
【0087】
次いで、一方の面11aに前駆体を吸着した基材11は、第2の前駆体供給用ノズル47内に導入される。
第2の前駆体供給用ノズル47内の雰囲気を、例えば、窒素ガスと水とが混在する雰囲気とする場合、第2の前駆体供給用ノズル47内の圧力は、例えば、10〜50Paにすることができる。この場合、第2の前駆体供給用ノズル47の内壁の温度は、例えば、70℃に保持することができる。
【0088】
この場合、第2の前駆体供給用ノズル47内では、トリメチルアルミニウム(TMA)と水とが反応することで、原子層堆積膜12である酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜の一部を構成する一原子層レベルの酸化アルミニウム(Al
2O
3)層が形成される。
その後、トリメチルアルミニウムと水とが反応した基材11は、第2の前駆体供給用ノズル47から導出され、パージ用チャンバ45内に搬送される。そして、パージ用チャンバ45内で余分(過剰)な第2の前駆体(この場合、H
2O)及び副生成物が除去される。
次いで、一方の面11aに一原子層レベルの酸化アルミニウム(Al
2O
3)層が形成された基材11は、パージ用チャンバ45の外に導出される。
【0089】
上記説明した1つの膜形成部43内で行われる一連の処理を1サイクルとして、一原子層レベルの酸化アルミニウム(Al
2O
3)層が形成され、上記1サイクルの処理が原子層堆積膜形成部26を構成する複数の膜形成部43でそれぞれ1回ずつ行われることで、積層された該酸化アルミニウム(Al
2O
3)層の厚さの合計の値と、原子層堆積膜12である酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜の所望の厚さと、を略一致させる。
【0090】
具体的には、例えば、基材11の一方の面11aに、厚さ(所望の厚さ)10nmの酸化アルミニウム膜を形成する場合、70個の膜形成部43を用いて、上記処理を70サイクル行うことで、厚さ(所望の厚さ)10nmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜を形成する。
上記説明したSTEP2に示す原子層堆積膜形成工程が終わると、処理は、STEP3へと進む。
【0091】
STEP3では、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部のみと接触するガイドローラ27により、中間室29を経由して、原子層堆積膜12が形成された基材11を、複数の第1の処理室のうち、最も後段に配置された第1の処理室からオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内に案内する(基材案内工程)。
具体的には、ガイドローラ27を構成するガイドローラ本体51のローラ面51a(
図4〜
図6参照)、及び一対の押さえローラ本体54(押さえローラ28の構成要素の1つ)のローラ面54a(
図2及び
図4参照)により、一方の面11aに原子層堆積膜12が形成された基材11は、支持部材21の外面21aからオーバーコート層形成室61内に配置された第1のローラ62に向かう方向(言い換えれば、中間室29及びオーバーコート層形成部31に向かう方向)に搬送される。
【0092】
このとき、原子層堆積膜12が形成された基材11の他方の面11bは、一対のローラ本体54のローラ面54aと接触し、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部は、一対のガイドローラ本体51のローラ面51aと接触する。
このように、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部のみと接触するガイドローラ27により、原子層堆積膜12が形成された基材11をオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内に案内することで、原子層堆積膜12の一方の面12a全体と接触する従来のガイドローラを用いた場合と比較して、原子層堆積膜12にガイドローラ27に起因する傷の発生を抑制することができる。
【0093】
これにより、原子層堆積膜12のガスバリア性の低下を抑制できると共に、基材11と原子層堆積膜12との間の密着性の低下を抑制できる。
また、中間室29を経由して、原子層堆積膜12が形成された基材11を第1の処理室から第2の処理室内に案内することで、第1の処理室で使用するガスと第2の処理室で使用するガスとが混合されることがほとんどなくなるため、良好な膜質とされた原子層堆積膜12及びオーバーコート層14を形成することが可能となる。これにより、原子層堆積膜12のガスバリア性が低下することを抑制できる。
【0094】
さらに、基材案内工程では、第1の処理室内の圧力と、第2の処理室内の圧力との間の圧力とされた中間室を経由して、基材を第2の処理室に案内してもよい。
例えば、第1の処理室と第2の処理室との間の真空度が大きく異なる場合、第1の処理室の真空度と第2の処理室の真空度との間の真空度にすることで、段階的に真空度を変化させることができる。
【0095】
具体的には、第1の処理室(具体的には、パージ用チャンバ45内)の真空度が100Pa、第2の処理室(オーバーコート層形成室61内)の真空度が0.01Paの場合、中間室29内の真空度は、例えば、1Paとすることができる。
その後、オーバーコート層形成室61内に搬送された基材11は、第1のローラ62により搬送方向を変更され、第2のローラ63に向かう方向に搬送される。
【0096】
このとき、原子層堆積膜12が形成された基材11の他方の面11bは、第1ローラ62のローラ面と接触する。また、原子層堆積膜12が形成された基材11は、原子層堆積膜12の一方の面12aがコーティングノズル76及び光照射部78と対向するように搬送される。
上記STEP3の基材案内工程が終わると、処理は、STEP4へと進む。
【0097】
STEP4では、不活性ガス雰囲気に保たれたオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内で、原子層堆積膜12の一方の面12aに、オーバーコート層14を形成する(オーバーコート層形成工程)。
これにより、基材11、原子層堆積膜12、及びオーバーコート層14が積層された積層体10が製造される。
このように、原子層堆積膜12が形成される第1の処理室の外側で、かつ第1の処理室から離間した位置に配置されたオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内で、原子層堆積膜12の一方の面12aに、オーバーコート層14を形成することで、第1の処理室内で使用するガスと第2の処理室内で使用するガスとが混合することなく、オーバーコート層14及び原子層堆積膜12を形成することが可能となる。
【0098】
これにより、オーバーコート層14及び原子層堆積膜12及びオーバーコート層14の性能(膜質や膜特性等)を向上させることができる。つまり、ガスバリア性に優れた原子層堆積膜12を形成することができる。
上記オーバーコート層形成工程では、オーバーコート層14は、フラッシュ蒸着法により形成する。具体的には、以下の方法により、オーバーコート層14を形成する。
【0099】
始めに、コーティングノズルから原子層堆積膜12の一方の面12aに、気体状とされたコート材料(例えば、アクリルコート剤(例えば、エステルアクリレート、エーテルアクリレート、フェニルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、シリコーンアクリレート、アセタールアクリレート、ブタジエン系アクリレート、メラミンアクリレート等のアクリルモノマー又はアクリルオリゴマー、或いはベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、キサントン類、アセトフェノン誘導体等の光開始剤等を含むコート剤)を噴霧することで、被膜層(オーバーコート層14の母材)を形成する。
次いで、光照射部78により、被膜層に光(例えば、電子線光や紫外線光)を照射することで、架橋及び硬化させることで、オーバーコート層14を形成する。
【0100】
上記フラッシュ蒸着法は、真空中(例えば、電子線光の場合、0.01〜0.1Pa)でモノマー、オリゴマー等を所望の厚さでコーティングする方法であり、非接触で、溶媒等の多量の揮発成分を発生させることなく、かつ低熱負荷によって、オーバーコート層14となるアクリル層を形成することができる。このとき、常温において液体であり、溶媒を含まないアクリルモノマー、アクリルオリゴマー等が使用される。
【0101】
このように、溶媒を含まない(言い換えれば、揮発性ガスの発生の少ない)コート材料(オーバーコート層の材料)を用いるフラッシュ蒸着法により、オーバーコート層14を形成することで、第1の処理室内のガスと第2の処理室内のガスとが混合される恐れがさらに少なくなるため、膜質に優れた原子層堆積膜12及びオーバーコート層14を形成することができる。
【0102】
上記オーバーコート層14の厚さは、例えば、1μmとすることができるが、これに限定されない。オーバーコート層14の厚さは、目的に応じて、適宜選択することができる。
オーバーコート層14の厚さの調節は、以下の方法を用いて行う。オーバーコート層14の厚さを厚くしたい場合には、気化器72へのコート材料の滴下量を多くし、オーバーコート層14の厚さを薄くしたい場合には、気化器72へのコート材料の滴下量を少なくする。
また、オーバーコート層14の厚さの均一性の確保は、単位時間当たりのコート材料の滴下量を一定に保つことで行う。
【0103】
上記オーバーコート層形成工程では、原子層堆積膜12よりも機械的強度の高いオーバーコート層14を形成してもよい。
このように、原子層堆積膜12よりも機械的強度の高いオーバーコート層14を形成することで、オーバーコート層14の一方の面14aと巻き取りローラ82のローラ面とを接触させ、巻き取りローラ82により、積層体10をローラ状に巻き取る際に、原子層堆積膜12が損傷することをさらに抑制することができる。
【0104】
また、巻き取りローラ82以外の剛体(例えば、ローラ63)がオーバーコート層14に接触した場合でも原子層堆積膜12の一方の面12aが損傷することを抑制できる。
また、上記オーバーコート層形成工程では、厚さが原子層堆積膜12の厚さよりも厚くなるように、原子層堆積膜12と同等の機械的強度を有するオーバーコート層14を形成してもよい。
【0105】
このように、原子層堆積膜12と同等の機械的強度を有するオーバーコート層14を、原子層堆積膜12の厚さよりも厚くなるように形成することで、オーバーコート層14の一方の面と巻き取りローラ82のローラ面とを接触させ、巻き取りローラ82により、積層体10をローラ状に巻き取る際に、原子層堆積膜12が損傷することをさらに抑制することができる。
【0106】
また、巻き取りローラ82以外の剛体(例えば、ローラ63)がオーバーコート層14に接触した場合でも原子層堆積膜12の一方の面12aが損傷することを抑制できる。
上記STEP4のオーバーコート層形成工程が終わると、処理は、STEP5へと進む。
STEP5では、オーバーコート層14の一方の面14aと巻き取りローラ82のローラ面とを接触させ、巻き取りローラ82により、積層体10をローラ状に巻き取る(巻き取り工程)。
【0107】
このように、オーバーコート層14の一方の面14aと巻き取りローラ82のローラ面とを接触させ、巻き取りローラ82により、積層体10をローラ状に巻き取ることで、巻き取りローラ82のローラ面が原子層堆積膜12の一方の面12aと直接接触することがなくなるため、原子層堆積膜12に巻き取りローラ82に起因する傷の発生を抑制することができる。
【0108】
このとき、ダンサーローラ81および巻き取りローラ82は、オーバーコート層形成室61内に配置されている。
これにより、巻き取り時に巻き込まれるパーティクルの削減を行うことができ、巻き取り時のバリア劣化を低減することが可能となる。
また、オーバーコート層14を形成後、オーバーコート層14の一方の面14aがローラ面と接触する回数も低減できるため、ローラ起因の傷の発生リスクも低減させることが出来る。
【0109】
さらに、原子層堆積膜12の一方の面12aを覆うオーバーコート層14を形成することで、巻き取りローラ82に巻回させた際に、原子層堆積膜12同士が接触する恐れもなくなる(言い換えれば、原子層堆積膜12同士が接触することによる傷の発生を抑制できる)。
上記STEP5の巻き取り工程が終わると、
図7に示す処理は、終了する。
【0110】
第1の実施形態の積層体の製造方法によれば、原子層堆積膜12が形成される第1の処理室の外側で、かつ第1の処理室から離間した位置に配置されたオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内で、原子層堆積膜12の一方の面12aにオーバーコート層14を形成することで、第1の処理室内で使用するガスと第2の処理室内で使用するガスとが混合することなく、オーバーコート層14及び原子層堆積膜12を形成することが可能となる。
【0111】
また、巻き取りローラ82をオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内に配置することで、積層体10へのパーティクル付着が低減し、巻き取り後のガスバリア性の低下を抑制できる。
これにより、オーバーコート層14及び原子層堆積膜12及びオーバーコート層14の性能(膜質や膜特性等)を向上させることができる。つまり、ガスバリア性に優れた原子層堆積膜12を形成することができる。
【0112】
また、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部のみと接触するガイドローラ27により、原子層堆積膜12が形成された基材11をオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内に案内することで、原子層堆積膜12の一方の面12a全体と接触する従来のガイドローラを用いた場合と比較して、原子層堆積膜12にガイドローラ27に起因する傷の発生を抑制することができる。
【0113】
これにより、原子層堆積膜12のガスバリア性の低下を抑制できると共に、基材11と原子層堆積膜12との間の密着性の低下を抑制できる。
さらに、積層体10を構成するオーバーコート層14の一方の面14aと接触することで、積層体10をロール状に巻き取る積層体巻き取り部33を有することで、層体巻き取り部33を構成する巻き取りローラ82のローラ面が原子層堆積膜12の一方の面12aと直接接触することがなくなるため、原子層堆積膜12に巻き取りローラ82に起因する傷が発生することを抑制できる。
【0114】
<第1の実施形態の変形例に係る積層体製造装置>
図8は、第1の実施形態の変形例に係る積層体製造装置の概略構成を模式的に示す正面図である。
図8において、
図2に示す第1の実施形態の積層体製造装置20と同一構成部分には、同一符号を付す。
図1に示す積層体10は、
図2に示す第1の実施形態の積層体製造装置20に替えて、
図8に示す第1の実施形態の変形例に係る積層体製造装置80を用いて製造することが可能である。
【0115】
ここで、
図8を参照して、第1の実施形態の変形例に係る積層体製造装置80の構成について説明する。
積層体製造装置80は、第1の実施形態の積層体製造装置20を構成するオーバーコート層形成部31(フラッシュ蒸着法によりオーバーコート層14を形成するオーバーコート層形成部)に替えて、オーバーコート層形成部91(真空蒸着法によりオーバーコート層14を形成するオーバーコート層形成部)を有すること以外は、積層体製造装置20と同様に構成される。
【0116】
積層体製造装置80では、ガイドローラ27が第1のガイドローラに相当し、後述するガイドローラ85が第2のガイドローラに相当する。
オーバーコート層形成部91は、
図2で説明したオーバーコート層形成部31を構成する原料タンク65、原料供給配管66、原料供給用ポンプ68、噴霧器69、気化器72、気体供給配管74、コーティングノズル76、及び光照射部78に替えて、メインローラ83、ガイドローラ85,86、ローラ87,88、蒸発源89、及び加熱装置(図示せず)を有すること以外は、オーバーコート層形成部31と同様に構成されている。
【0117】
メインローラ83は、一方の面11aに原子層堆積膜12が形成された基材11(
図4参照)を搬送するローラ面83aを有する。メインローラ83は、ローラ面83aと蒸発源89の上面とが対向するように、蒸発源89の上方に配置されている。
メインローラ83の下部に位置するローラ面83aに搬送される際、原子層堆積膜12の一方の面12aにオーバーコート層14(
図1参照)が形成される。
【0118】
ガイドローラ85は、メインローラ83のローラ面83aに近接して配置されている。ガイドローラ85は、基材11の他方の面11bとメインローラ83のローラ面83aとが接触するように、第1のローラ62を経由し、かつ原子層堆積膜12が形成された基材11を搬送する。
ガイドローラ85は、ガイドローラ27と同様な構成とされている。ガイドローラ85を構成するガイドローラ本体51のローラ面51aは、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部と接触する。
【0119】
このように、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部のみと接触し、原子層堆積膜12が形成された基材11をメインローラ83のローラ面83aに案内するガイドローラ85を有することで、原子層堆積膜12の一方の面12a全体と接触する従来のガイドローラを用いた場合と比較して、原子層堆積膜12にガイドローラ27に起因する傷の発生を抑制することができる。
【0120】
これにより、原子層堆積膜12のガスバリア性の低下を抑制できると共に、基材11と原子層堆積膜12との間の密着性の低下を抑制することができる。
ガイドローラ86は、メインローラ83のローラ面83aに近接して配置されている。ガイドローラ86は、メインローラ83を介して、ガイドローラ85と対向するように配置されている。
【0121】
ガイドローラ86は、ガイドローラ27と同様な構成とされている。ガイドローラ86は、オーバーコート層14が形成された基材11(
図1参照)をローラ87に向けて搬送する。
ガイドローラ86は、通常のローラであり、オーバーコート層14の一方の面14a(
図1参照)の外周部と接触する。
ローラ87は、ガイドローラ86の上方に配置されている。ローラ87は、基材11の他方の面11bと接触することで、積層体10の搬送方向を変更し、第2のローラ63に積層体10を搬送する。
【0122】
蒸発源89は、オーバーコート層14の母材となるコート材料を収容する容器である。蒸発源89に収容されたコート材料は、加熱装置(図示せず)に加熱されることで気化する。気化したコート材料は、メインローラ83のローラ面83aに搬送される基材11に形成された原子層堆積膜12の一方の面12aに付着することでオーバーコート層14となる。
上記加熱装置としては、例えば、電子ビームを用いて蒸発源89を加熱する装置や、蒸発源89(この場合、抵抗体として機能)として高融点金属を用いて、蒸発源89に通電させて、コート材料を加熱する装置等を例示することができる。
【0123】
上記構成とされた第1の実施形態の変形例に係る積層体製造装置80は、第1の実施形態の積層体製造装置20と同様な効果を得ることができる。
また、上記積層体製造装置80を用いて積層体10を製造する場合、真空蒸着法により、オーバーコート層14を形成すること以外は、第1の実施形態の積層体の製造方法と同様な手法により製造することができる。
オーバーコート層形成室61内の圧力は、例えば、0.01〜0.1Paにすることができる。
このように、真空蒸着法により、オーバーコート層14を形成することで、高速でオーバーコート層14を形成することができると共に、厚膜のオーバーコート層14を形成することができる。
【0124】
(第2の実施形態)
<第2の実施形態に係る積層体>
図9は、本発明の第2の実施形態に係る積層体の製造方法により製造される積層体を模式的に示す断面図である。
図9において、
図1に示す第1の実施形態の積層体10と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0125】
ここでは、第2の実施形態の積層体の製造方法について説明する前に、第2の実施形態の積層体の製造方法により製造される積層体100の構成について説明する。
図9を参照するに、積層体100は、第1の実施形態で説明した積層体10の構成に、さらに、アンダーコート層101を有すること以外は、積層体10と同様に構成される。
アンダーコート層101は、基材11の一方の面11aに配置されている。アンダーコート層101は、基材11と原子層堆積膜12との間に配置されている。アンダーコート層101の一方の面101a(基材11と接触するアンダーコート層101の他方の面の反対側に位置する面)は、原子層堆積膜12と接触している。
【0126】
アンダーコート層101としては、例えば、無機物質(例えば、ハロイサイト、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、アルミナ等)及び/または有機高分子(例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等)を含むアンダーコート層を用いることができる。
具体的には、アンダーコート層101としては、例えば、アクリルコート層、ウレタンコート層、無機物質を含有したアクリルコート層等を用いることができる。
【0127】
アンダーコート層101の厚さは、例えば、0.1〜10μmの範囲内で適宜設定することができる。
このように、アンダーコート層101が、基材11と原子層堆積膜12との間に配置され、且つ基材11の一方の面11a及び原子層堆積膜12と接触し、そのアンダーコート層101が無機物質及び/または有機高分子を含有する。これによって、例えば、アンダーコート層101が無機物質を含有する場合、原子層堆積膜12の前駆体(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA))が、アンダーコート層101の一方の面101aから露出する無機物質と結合するため、アンダーコート層101の一方の面方向に成長する二次元状の原子層堆積膜12が形成される。
【0128】
その結果、積層体100の厚さ方向において、ガスが通過するような隙間が形成されにくくなるため、積層体100のガスバリア性を向上させることができる。
また、アンダーコート層101が有機高分子を含有する場合、有機高分子が原子層堆積膜12の前駆体(例えば、トリメチルアルミニウム(TMA))と結合しやすい官能基を有するため、有機高分子の各官能基に結合した前駆体同士が互いに結合する。これによって、アンダーコート層101の一方の面101a方向に成長する二次元状の原子層堆積膜12が形成される。
【0129】
その結果、積層体100の厚さ方向にガスが通過するような形成されにくくなるため、積層体100のガスバリア性を向上させることができる。
さらに、アンダーコート層101が有機高分子及び無機物質を含有する場合、アンダーコート層101に無機物質が添加されていることで、有機高分子と無機物質とが相俟って、原子層堆積膜12の前駆体の吸着密度をさらに向上させることができる。
【0130】
<第2の実施形態に係る積層体製造装置>
図10は、本発明の第2の実施形態に係る積層体製造装置の概略構成を示す正面図である。
図10において、
図2に示す第1の実施形態の積層体製造装置20と同一構成部分には、同一符号を付す。
次に、
図10を参照して、
図9に示す積層体100を製造する際に使用する第2の実施形態に係る積層体製造装置110について説明する。
第2の実施形態の積層体製造装置110は、第1の実施形態の積層体製造装置20の構成に、さらに、アンダーコート層形成部111を有すること以外は、積層体製造装置20と同様に構成される。
アンダーコート層形成部111は、プラズマ前処理部24と原子層堆積膜形成部26との間に搬送される基材11の一方の面11aと対向するように配置されている。
【0131】
アンダーコート層形成部111は、プラズマ前処理が実施された基材11の一方の面11aに、無機物質及び/または有機高分子を含有するアンダーコート層101を形成するための装置である。アンダーコート層形成部111としては、例えば、フラッシュ蒸着装置を用いることができる。
また、アンダーコート層形成部111は、基材繰り出し用ローラ37と原子層堆積膜形成部26との間を通過する基材11の一方の面11aと対向するように配置されるほか、オーバーコート層形成室61のような処理室を別途設けて、配置されてもよい。
【0132】
上記構成とされた積層体製造装置110は、所定の方向(一方向)に延在する帯状の基材11をインラインでロールツーロール方式により、基材11の一方の面11aに、アンダーコート層101と、原子層堆積膜12と、オーバーコート層14と、を順次形成する装置である。
第2の実施形態の積層体製造装置によれば、基材11及び原子層堆積膜12と接触するように、基材11の一方の面11aと原子層堆積膜12との間に、無機物質及び/または有機高分子を含んだアンダーコート層101を形成するアンダーコート層形成部111を有することにより、無機物質及び/または有機高分子を含むアンダーコート層101を形成した場合、積層体100の厚さ方向において、ガスが通過するような隙間が形成されにくくなり、積層体100のガスバリア性を向上させることができる。
【0133】
<第2の実施形態の積層体の製造方法>
図11は、本発明の第2の実施形態に係る積層体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
次に、
図9〜
図11を参照して、第2の実施形態に係る積層体の製造方法について説明する。
図11に示すフローチャートの処理が開始されると、基材搬送部23により、基材巻回用ローラ36に巻回された基材11(例えば、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)よりなるフィルム)が支持部材21の外面21aに沿って、プラズマ前処理部24に向かう方向に搬送される。このとき、基材11は、他方の面11bが支持部材21の外面21aと接触するように搬送される。
【0134】
STEP11では、
図7で説明したSTEP1と同様な手法により、基材11の一方の面11aをプラズマ前処理する。
その後、一方の面11aが改質された基材は、支持部材21の外面21aに沿って、原子層堆積膜形成部26に搬送され、処理は、STEP12へと進む。
STEP12では、改質された基材11の一方の面11aに、アンダーコート層101を形成する(アンダーコート層形成工程)。
具体的には、例えば、フラッシュ蒸着法により、アンダーコート層101として、厚さ0.1μmとされたアクリル層を形成する。
【0135】
上記STEP12に示すアンダーコート層形成工程が終わると、処理は、STEP13へと進む。
STEP13では、
図7で説明したSTEP2と同様な手法により、複数の膜形成部43を有する原子層堆積膜形成部26により、アンダーコート層101の一方の面101aに、所望の厚さとされた原子層堆積膜12を形成する(原子層堆積膜形成工程)。
例えば、原子層堆積膜12として、厚さ10nmの酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜を形成する。
【0136】
上記STEP13に示す原子層堆積膜形成工程が終わると、処理は、STEP14へと進む。
STEP14では、
図7で説明したSTEP3と同様な手法により、原子層堆積膜12の一方の面12aの外周部のみと接触するガイドローラ27により、中間室29を経由して、最も後段に配置された膜形成部43からオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内に、アンダーコート層101及び原子層堆積膜12が形成された基材11を案内する(基材案内工程)。
【0137】
第1の処理室の真空度が100Pa、第2の処理室の真空度が1Paの場合、中間室29内の真空度は、例えば、10Paとすることができる。
オーバーコート層形成室61内に搬送された基材11は、第1のローラ62により搬送方向を変更され、ガイドローラ85を介して、メインローラ83のローラ面83aに搬送される。
【0138】
上記STEP14の基材案内工程が終わると、処理は、STEP15へと進む。
STEP15では、不活性ガス雰囲気に保たれたオーバーコート層形成室61(第2の処理室)内で、原子層堆積膜12の一方の面12aに、オーバーコート層14を形成する(オーバーコート層形成工程)。
これにより、基材11、アンダーコート層101、原子層堆積膜12、及びオーバーコート層14が順次積層された積層体100が製造される。
【0139】
STEP15では、
図7で説明したSTEP4と同様な手法により、オーバーコート層14を形成する。
上記STEP15のオーバーコート層形成工程が終わると、処理は、STEP16へと進む。
STEP16では、オーバーコート層14の一方の面14aと巻き取りローラ82のローラ面とを接触させ、巻き取りローラ82により、積層体100をローラ状に巻き取る(巻き取り工程)。
STEP16では、
図7で説明したSTEP5と同様な手法により、積層体100をローラ状に巻き取る。上記STEP16の巻き取り工程が終わると、
図11に示す処理は、終了する。
【0140】
第2の実施形態の積層体の製造方法によれば、原子層堆積膜形成工程の前に、基材11の一方の面11aに、無機物質及び/または有機高分子を含有するアンダーコート層101を形成するアンダーコート層形成工程を有し、原子層堆積膜形成工程において、アンダーコート層101の一方の面101aに、アンダーコート層101の一方の面101aから露出する無機物質及び/または有機高分子と結合するように、原子層堆積膜12を形成することで、例えば、無機物質を含有するアンダーコート層101を形成した場合、原子層堆積膜12の前駆体が、アンダーコート層101の一方の面101aから露出した無機物質に結合するため、アンダーコート層101の一方の面101a方向に成長する二次元状の原子層堆積膜12が形成されることになる。
【0141】
その結果、積層体100の厚さ方向において、ガスが通過するような隙間が形成されにくくなるため、積層体100のガスバリア性を向上させることができる。
一方、有機高分子を含有するアンダーコート層101を形成する場合、有機高分子が原子層堆積膜12の前駆体と結合しやすい官能基を有するため、有機高分子の各官能基に結合した前駆体同士が互いに結合する。これによって、アンダーコート層101の一方の面101a方向に成長する二次元状の原子層堆積膜12が形成されることになる。
【0142】
その結果、積層体100の厚さ方向にガスが通過するような形成されにくくなるため、積層体100のガスバリア性を向上させることができる。
また、有機高分子及び無機物質を含有するアンダーコート層101を形成した場合、アンダーコート層101に無機物質が添加されていることで、有機高分子と無機物質とが相俟って、原子層堆積膜12の前駆体の吸着密度をさらに向上させることができる。
【0143】
なお、第2の実施形態の積層体の製造方法は、先に説明した第1の実施形態の積層体の製造方法と同様な効果も得ることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0144】
図12は、他の積層体製造装置の概略構成を示す正面図である。
図12において、
図8に示す第1の実施形態の変形例に係る積層体製造装置80と同一構成部分には、同一符号を付す。
図12に示すように、第1の実施形態の変形例に係る積層体製造装置80の構成に、
図10に示すアンダーコート層形成部111を設けることで、積層体製造装置120を構成してもよい。
【0145】
このような構成とされた積層体製造装置120は、
図10に示す第2の実施形態の積層体製造装置110と同様な効果を得ることができる。
また、第1及び第2の実施形態では、フラッシュ蒸着法または真空蒸着法により、オーバーコート層14を形成する場合を例に挙げて説明したが、化学蒸着法(例えば、CVD法)により、オーバーコート層14を形成してもよい。
【0146】
このように、化学蒸着法を用いてオーバーコート層14を形成することで、原子層堆積膜12への損傷が少ないオーバーコート層14を形成することができる。つまり、緻密で、バリア性が向上したオーバーコート層14を形成することができる。
また、オーバーコート層14を形成する領域とその外部との差圧を大きく取る必要がなくなる。
【0147】
以上述べたように、本発明によれば、高分子の基材上に形成したALD膜の表面にオーバーコート層を設けることにより、ロールツーロール方式の積層体製造装置による機械的な外力(ストレス)によってオーバーコート層に傷やピンホールが生じないため、積層体のガスバリア性を高くすることができるが、オーバーコート層を成膜する際、オーバーコート層を単独の室内で適正な成膜圧力帯にて行うことで、より良質なオーバーコート層を成膜し、結果的にガスバリア性を良化させることができる。
【0148】
さらには、オーバーコート層と同室内で基材を巻き取ることで基材へのパーティクル付着の低減や、ローラとの接触による傷の発生を低減させることができるため、安定したガスバリア性を得ることが出来る。
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)、液晶ディスプレイ、半導体ウェハ等の電子部品、医薬品や食料等の包装用フィルム、精密部品の包装用フィルム等に使用される積層体の製造方法、及び該積層体を製造する積層体製造装置に適用できる。