特許第6442894号(P6442894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6442894蛍光体付着ガラス粉末及び波長変換部材の製造方法並びに波長変換部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442894
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】蛍光体付着ガラス粉末及び波長変換部材の製造方法並びに波長変換部材
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/22 20060101AFI20181217BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20181217BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20181217BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20181217BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20181217BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20181217BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20181217BHJP
   F21V 9/00 20180101ALI20181217BHJP
【FI】
   C03C17/22 AZNM
   C09K11/02 Z
   C09K11/00 C
   C09K11/08 G
   H01L33/50
   B82Y40/00
   B82Y20/00
   F21V9/00
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-146912(P2014-146912)
(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-23098(P2016-23098A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角見 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】西宮 隆史
(72)【発明者】
【氏名】浅野 秀樹
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−258308(JP,A)
【文献】 特開平10−249210(JP,A)
【文献】 特開2012−226877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/22
C09K 11/00
C03C 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス粉末の表面に無機ナノ蛍光体粒子を付着させた蛍光体付着ガラス粉末を製造する方法であって、
前記無機ナノ蛍光体粒子が分散媒に分散した液中で、前記無機ナノ蛍光体粒子と前記ガラス粉末を接触させる工程と、
前記液中の前記分散媒を除去することにより、前記ガラス粉末の表面に前記無機ナノ蛍光体粒子を付着させる工程とを備え
前記ガラス粉末が、ガラス粉末を凝集させた成形体の形態である、蛍光体付着ガラス粉末の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス粉末を、前記液中に添加することにより、前記無機ナノ蛍光体粒子と前記ガラス粉末を接触させる、請求項1に記載の蛍光体付着ガラス粉末の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス粉末に、前記液を霧状にして吹き付けることにより、前記無機ナノ蛍光体粒子と前記ガラス粉末を接触させる、請求項1に記載の蛍光体付着ガラス粉末の製造方法。
【請求項4】
前記成形体が、ガラス粉末に圧力をかけることより凝集させた成形体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体付着ガラス粉末の製造方法。
【請求項5】
前記成形体が、ガラス粉末を仮焼して凝集させた成形体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体付着ガラス粉末の製造方法。
【請求項6】
前記成形体が、ガラス粉末を含むガラスグリーンシートを仮焼して得られる成形体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体付着ガラス粉末の製造方法。
【請求項7】
前記成形体を、前記液中に浸漬することにより、前記無機ナノ蛍光体粒子と前記ガラス粉末を接触させる、請求項のいずれか一項に記載の蛍光体付着ガラス粉末の製造方法。
【請求項8】
前記成形体に、前記液を浸透させるにより、前記無機ナノ蛍光体粒子と前記ガラス粉末を接触させる、請求項のいずれか一項に記載の蛍光体付着ガラス粉末の製造方法。
【請求項9】
ガラス中に無機ナノ蛍光体粒子を含有した波長変換部材を製造する方法であって、
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法で前記蛍光体付着ガラス粉末を製造する工程と、
前記蛍光体付着ガラス粉末を焼結する工程とを備える、波長変換部材の製造方法。
【請求項10】
前記焼結を、真空雰囲気下で行う、請求項に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項11】
焼結温度が、400℃以下である、請求項または10に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載の方法で製造されたことを特徴とする波長変換部材。
【請求項13】
ガラス粉末の表面に無機ナノ蛍光体粒子を付着させた蛍光体付着ガラス粉末を焼結して得られることを特徴とする波長変換部材。
【請求項14】
請求項1〜のいずれか一項に記載の方法で製造された前記蛍光体付着ガラス粉末からなる波長変換部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体付着ガラス粉末の製造方法、及び波長変換部材の製造方法、並びに波長変換部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)や半導体レーザー(LD)等の励起光源を用い、これらの励起光源から発生した励起光を、蛍光体に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いる発光装置が検討されている。また、蛍光体として、半導体ナノ微粒子または量子ドットと呼ばれる無機ナノ蛍光体粒子を用いることが検討されている。無機ナノ蛍光体粒子は、その直径を変えることにより蛍光波長の調整が可能であり、高い発光効率を有する。
【0003】
しかしながら、無機ナノ蛍光体粒子は、空気中の水分や酸素と接触すると劣化しやすいという性質を有している。このため、無機ナノ蛍光体粒子は、外部環境と接しないように封止して用いる必要がある。封止材として、樹脂を用いると、励起光が蛍光体によって波長変換される際、エネルギーの一部が熱に変換されるため、その熱により樹脂が変色するという問題がある。また、樹脂は耐水性に劣り、水分を透過しやすいため、蛍光体が劣化しやすいという問題がある。
【0004】
このような事情から、特許文献1においては、封止材として、樹脂の代わりにガラスを用いた波長変換部材が提案されている。具体的には、特許文献1には、無機ナノ蛍光体粒子とガラス粉末を含む混合物を焼結することにより、ガラスを封止材として用いた波長変換部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−87162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無機ナノ蛍光体粒子は、ガラス粉末に比べ非常に粒子サイズが小さいため、凝集しやすい。そのため、特許文献1に記載の波長変換部材では、無機ナノ蛍光体粒子が凝集した状態で、ガラス中に封止されてしまうという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、無機ナノ蛍光体粒子がガラスマトリクス中に良好な状態で分散された波長変換部材を作製することができる蛍光体付着ガラス粉末の製造方法、該製造方法を用いた波長変換部材の製造方法及び、波長変換部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蛍光体付着ガラス粉末の製造方法は、ガラス粉末の表面に無機ナノ蛍光体粒子を付着させた蛍光体付着ガラス粉末を製造する方法であって、無機ナノ蛍光体粒子が分散媒に分散した液中で、無機ナノ蛍光体粒子とガラス粉末を接触させる工程と、液中の分散媒を除去することにより、ガラス粉末の表面に無機ナノ蛍光体粒子を付着させる工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
本発明では、例えば、ガラス粉末を、液中に添加することにより、無機ナノ蛍光体粒子とガラス粉末を接触させることができる。
【0010】
本発明では、例えば、ガラス粉末に、液を霧状にして吹き付けることにより、無機ナノ蛍光体粒子とガラス粉末を接触させることができる。
【0011】
本発明では、例えば、液と、ガラス粉末を分散させた分散液とを混合することにより、無機ナノ蛍光体粒子とガラス粉末を接触させることができる。
【0012】
本発明では、ガラス粉末は、ガラス粉末を凝集させた成形体の形態であってもよい。この場合、成形体は、ガラス粉末に圧力をかけることより凝集させた成形体であってもよい。また、成形体は、ガラス粉末を仮焼して凝集させた成形体であってもよい。また、成形体は、ガラス粉末を含むガラスグリーンシートを仮焼して得られる成形体であってもよい。
【0013】
本発明では、例えば、成形体を、液中に浸漬することにより、無機ナノ蛍光体粒子とガラス粉末を接触させることができる。
【0014】
本発明では、例えば、成形体に、液を浸透させるにより、無機ナノ蛍光体粒子とガラス粉末を接触させることができる。
【0015】
本発明の波長変換部材の製造方法は、ガラス中に無機ナノ蛍光体粒子を含有した波長変換部材を製造する方法であって、本発明の製造方法で蛍光体付着ガラス粉末を製造する工程と、蛍光体付着ガラス粉末を焼結する工程とを備えることを特徴としている。
【0016】
焼結を、真空雰囲気下で行うことが好ましい。
【0017】
焼結温度は、400℃以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の第1の局面の波長変換部材は、本発明の波長変換部材の製造方法で製造されたことを特徴とする波長変換部材である。
【0019】
本発明の第2の局面の波長変換部材は、ガラス粉末の表面に無機ナノ蛍光体粒子を付着させた蛍光体付着ガラス粉末を焼結して得られることを特徴とする波長変換部材である。
【0020】
本発明の第3の局面の波長変換部材は、本発明の蛍光体付着ガラス粉末の製造方法で製造された蛍光体付着ガラス粉末からなる波長変換部材である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、無機ナノ蛍光体粒子がガラスマトリクス中に良好な状態で分散された波長変換部材を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態の蛍光体付着ガラス粉末を示す模式的断面図である。
図2】本発明の他の実施形態の蛍光体付着ガラス粉末を示す模式的断面図である。
図3】本発明の一実施形態の波長変換部材を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態の蛍光体付着ガラス粉末を示す模式的断面図である。図1に示すように、本実施形態の蛍光体付着ガラス粉末1は、ガラス粉末2の表面に、多数の無機ナノ蛍光体粒子3が良好な分散状態で付着することにより構成されている。本実施形態の蛍光体付着ガラス粉末1は、無機ナノ蛍光体粒子3が分散媒に分散した液中で、無機ナノ蛍光体粒子3とガラス粉末2を接触させた後、液中の分散媒を除去することにより製造することができる。
【0025】
無機ナノ蛍光体粒子3とガラス粉末2を、無機ナノ蛍光体粒子3が分散媒に分散した液中で接触させる具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0026】
(1)ガラス粉末2を、無機ナノ蛍光体粒子3が分散媒に分散した液に添加する方法。
【0027】
(2)ガラス粉末2に、無機ナノ蛍光体粒子3が分散媒に分散した液を霧状にして吹き付ける方法。
【0028】
(3)ガラス粉末2を分散させた分散液と、無機ナノ蛍光体粒子3が分散媒に分散した液を混合する方法。
【0029】
図2は、本発明の他の実施形態の蛍光体付着ガラス粉末を示す模式的断面図である。図2に示すように、本実施形態の蛍光体付着ガラス粉末11においては、ガラス粉末が、ガラス粉末2を凝集させた成形体4の形態を有している。成形体4を構成する各ガラス粉末2の表面に、無機ナノ蛍光体粒子3が良好な分散状態で付着している。成形体4は、例えば、型に入れたガラス粉末2に圧力をかけることにより凝集させたものであってもよい。また、成形体4は、例えば、型に入れたガラス粉末2を加熱し、仮焼することにより凝集させたものであってもよい。また、成形体4は、ガラス粉末と、樹脂バインダーとを含むガラスグリーンシートを仮焼して得られるものであってもよい。
【0030】
成形体4を構成するガラス粉末2と無機ナノ蛍光体粒子3を、無機ナノ蛍光体粒子3が分散媒に分散した液中で接触させる具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0031】
(4)成形体4を、無機ナノ蛍光体粒子3が分散媒に分散した液に浸漬する方法。
【0032】
(5)成形体4に、無機ナノ蛍光体粒子3が分散媒に分散した液を浸透させる方法。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態の波長変換部材を示す模式的断面図である。図3に示すように、本実施形態の波長変換部材20は、ガラス5中に無機ナノ蛍光体粒子3を良好な分散状態で含有している。本実施形態の波長変換部材20は、図1に示す蛍光体付着ガラス粉末1または図2に示す蛍光体付着ガラス粉末11を、焼結することにより製造することができる。焼結温度は、500℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがさらに好ましく、350℃以下であることが特に好ましい。焼結温度が高くなると、蛍光体が劣化する場合がある。一方、ガラス粉末2を緻密に焼結するため、焼結温度は、150℃以上であることが好ましい。
【0034】
焼結時の雰囲気は、真空雰囲気や窒素やアルゴンを用いた不活性雰囲気であることが好ましい。それにより、焼結時にガラス粉末2の劣化や着色を抑制することができる。特に、真空雰囲気であれば、波長変換部材20における気泡の発生を抑制することができる。
【0035】
以下、本発明における各構成について、さらに詳細に説明する。
【0036】
(無機ナノ蛍光体粒子)
本発明における無機ナノ蛍光体粒子は、粒径が1μm未満である無機結晶からなる蛍光体粒子である。このような無機ナノ蛍光体粒子としては、一般に、半導体ナノ微粒子または量子ドットと呼ばれるものを用いることができる。このような無機ナノ蛍光体粒子の半導体としては、II−VI族化合物、及びIII−V族化合物が挙げられる。II−VI族化合物としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTeなどが挙げられる。III−V族化合物としては、InP、GaN、GaAs、GaP、AlN、AlP、AlSb、InN、InAs、InSbなどが挙げられる。これらの化合物から選択される少なくとも1種、またはこれら2種以上の複合体を本発明の無機ナノ蛍光体粒子として用いることができる。複合体としては、コアシェル構造のものが挙げられ、例えばCdSe粒子表面がZnSによりコーティングされたコアシェル構造のものが挙げられる。
【0037】
本発明の無機ナノ蛍光体粒子の粒径は、例えば100nm以下、50nm以下、特に1〜30nm、1〜15nm、さらには1.5〜12nmの範囲で適宜選択される。
【0038】
本発明の無機ナノ蛍光体粒子としては、分散媒中での分散性を高めるため、その表面がポリマーなどからなる分散剤でコーティングされているものを用いることが好ましい。
【0039】
(ガラス粉末)
本発明に用いるガラス粉末は、500℃以下、より好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下の軟化点を有するガラスからなるものを用いることが好ましい。ガラスの軟化点が高くなると、焼結温度が高くなるため、無機ナノ蛍光体粒子が劣化しやすくなる。好適なガラス粉末としては、SnO−P系ガラス、SnO−P−B系ガラス、SnO−P−F系ガラス、Bi系ガラスなどからなるものが挙げられる。
【0040】
SnO−P系ガラスとしては、ガラス組成として、モル%表示で、SnO 40〜85%、P 15〜60%を含有するもの、特にSnO 60〜80%、P20〜40%を含有するものが好ましい。
【0041】
SnO−P−B系ガラスとしては、ガラス組成として、モル%で、SnO 35〜80%、P 5〜40%、B 1〜30%を含有するものが好ましい。
【0042】
SnO−P系ガラス及びSnO−P−B系ガラスには、さらに任意成分として、Al0〜10%、SiO 0〜10%、LiO 0〜10%、NaO 0〜10%、KO 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%およびBaO 0〜10%を含有していても構わない。また、上記成分以外にも、Ta、TiO、Nb、Gd、Laなどの耐候性を向上させる成分や、ZnOなどのガラスを安定化させる成分などをさらに含有させることもできる。
【0043】
SnO−P−F系ガラスとしては、カチオン%で、P5+ 10〜70%、Sn2+ 10〜90%、アニオン%で、O2−30〜100%、F 0〜70%を含有するものが好ましい。さらに、耐候性を向上させるために、B3+、Si4+、Al3+、Zn2+またはTi4+等を合量で0〜50%含有していても構わない。
【0044】
Bi系ガラスとしては、ガラス組成として、質量%で、Bi10〜90%、B 10〜30%を含有するものが好ましい。さらに、ガラス形成成分として、SiO、Al、B、P等をそれぞれ0〜30%含有していても構わない。
【0045】
SnO−P系ガラス及びSnO−P−B系ガラスの軟化点を低下させ、かつガラスを安定化させる観点から、SnOとPのモル比(SnO/P)は、0.9〜16の範囲内であることが好ましく、1.5〜10の範囲内であることがより好ましく、2〜5の範囲内であることがさらに好ましい。モル比(SnO/P)が小さすぎると、低温での焼成が困難になり、無機ナノ蛍光体粒子が焼結時に劣化しやすくなる場合がある。また、耐候性が低くなりすぎる場合がある。一方、モル比(SnO/P)が大きすぎると、ガラスが失透しやすくなり、ガラスの透過率が低くなりすぎる場合がある。
【0046】
ガラス粉末の平均粒子径D50は0.1〜100μm、特に1〜50μmであることが好ましい。ガラス粉末の平均粒子径D50が小さすぎると、焼結時に気泡が発生しやすくなる。このため、得られる波長変換部材の機械的強度が低下する場合がある。また、波長変換部材中に発生した気泡が原因で光散乱ロスが大きくなり、発光効率が低下する場合がある。一方、ガラス粉末の平均粒子径D50が大きすぎると、無機ナノ蛍光体粒子がガラスマトリクス中に均一に分散されにくくなり、その結果、得られる波長変換部材の発光効率が低くなる場合がある。ガラス粉末の平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0047】
(分散媒)
本発明において用いる分散媒は、無機ナノ蛍光体粒子を分散させることができるものであれば特に限定されない。一般には、ヘキサン、オクタン等の適当な揮発性を有する無極性溶媒が好ましく用いられる。しかしながら、これに限定されるものではなく、適当な揮発性を有する極性溶媒であってもよい。
【0048】
無機ナノ蛍光体粒子の分散媒中での濃度は、0.5質量%〜20質量%、特に1質量%〜10質量%であることが好ましい。無機ナノ蛍光体粒子の分散媒中での濃度が低すぎると、十分な発光強度を有する波長変換部材が得られにくくなる。一方、無機ナノ蛍光体粒子の分散媒中での濃度が高すぎると、ガラス粉末表面に均一に付着させることが困難となる。
【0049】
(蛍光体付着ガラス粉末)
本発明の蛍光体付着ガラス粉末における無機ナノ蛍光体粒子とガラス粉末の含有割合は、質量比で、1:1000〜1:10であることが好ましく、1:200〜1:50であることが好ましい。蛍光体付着ガラス粉末における無機ナノ蛍光体粒子の割合が低すぎると、十分な発光強度を有する波長変換部材が得られにくくなる。一方、蛍光体付着ガラス粉末における無機ナノ蛍光体粒子の割合が高すぎると、ガラス粉末の表面に均一に付着させることが困難となる。また、励起光が無機ナノ蛍光体粒子全体に照射されにくくなり、蛍光を発しない無機ナノ蛍光体粒子が多くなる傾向がある。
【0050】
(成形体)
上述のように、本発明におけるガラス粉末は、ガラス粉末を凝集させた成形体の形態であってもよい。このような成形体は、上述のように、ガラス粉末に圧力をかけることにより凝集させたものであってもよいし、ガラス粉末を仮焼することにより凝集させたものであってもよいし、ガラスグリーンシートを仮焼して得られるものであってもよい。
【0051】
なお、成形体を、グリーンシートを仮焼して成形する方法としては、以下の方法が挙げられる。ガラス粉末に、所定量の樹脂、可塑剤、溶剤等を含む樹脂バインダーを添加してスラリーとし、スラリーを、ドクターブレード法等によって、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルムの上に、シート状に成形する。シート状に成形したスラリーを仮焼することにより成形体が得られる。
【0052】
(波長変換部材)
本発明の波長変換部材は、上述のように、本発明の蛍光体付着ガラス粉末を焼結することにより製造することができる。焼結温度は、上述のように、500℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがさらに好ましく、350℃以下であることが特に好ましい。
【0053】
本発明の蛍光体付着ガラス粉末においては、ガラス粉末の表面に無機ナノ蛍光体粒子が良好な分散状態で付着しているので、本発明の蛍光体付着ガラス粉末を焼結することにより得られる波長変換部材は、ガラスマトリクス中に良好な分散状態で無機ナノ蛍光体粒子を含有している。したがって、発光効率、耐久性及び信頼性に優れた波長変換部材とすることができる。
【0054】
また、蛍光体付着ガラス粉末として、ガラス粉末を凝集した成形体の表面に無機ナノ蛍光体粒子を付着させたものを用いる場合、以下の効果が得られる。
【0055】
(1)波長変換部材内における無機ナノ蛍光体粒子の含有量を制御しやすい。
【0056】
(2)無機ナノ蛍光体粒子が均一に付着した蛍光体付着ガラス粉末が得られやすい。
【0057】
(3)蛍光体付着ガラス粉末を作製するために、無機ナノ蛍光体粒子が分散媒に分散した液の必要量が比較的少なく、歩留りを向上できる(特に、成形体に液を浸漬させる場合は、無駄となる無機ナノ蛍光体粒子が発生しにくい)。
【0058】
(4)分散媒の除去〜焼結の工程を連続的に行うことができ、製造効率に優れる。
【0059】
上記の波長変換部材は、蛍光体付着ガラス粉末を焼結することにより製造しているが、蛍光体付着ガラス粉末を焼結せずに、そのまま波長変換部材として用いることもできる。この場合、表面にコーティング膜を設けたり、あるいは封止用の容器中に収納するなどして、封止した状態で用いることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の蛍光体付着ガラス粉末及び波長変換部材は、テレビ、パソコン、スマートフォン等の携帯電話のディスプレイのバックライト用光源に使用される部材として好適である。
【符号の説明】
【0061】
1…蛍光体付着ガラス粉末
2…ガラス粉末
3…無機ナノ蛍光体粒子
4…成形体
5…ガラス
11…蛍光体付着ガラス粉末
20…波長変換部材
図1
図2
図3