(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成の振動デバイスでは、集積回路チップの能動面に直接振動素子が片持ち支持で固定されている。このように、直接振動素子が固定される場合は、温度変化などによって生じる振動素子の応力が固定部から放散されにくく、この応力の影響によって振動素子の振動特性の低下を生じてしまう虞がある。このような応力の振動素子への影響を減少させるためには、固定部の面積を小さくすることが有効である。しかしながら、固定部の面積を小さくした前述の片持ち支持の構成では、落下などによる衝撃が振動素子に加わった場合、衝撃応力が片持ちの固定部分に集中するため、振動素子と集積回路チップの能動面との接続強度が低下してしまうなどの不具合が生じ易く、固定部の面積を小さくすることが難しいという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
〔適用例1〕本適用例に係る振動デバイスは、基板と、前記基板の第1の面と接続されている接続部と、前記接続部から延在し、且つ前記接続部と離間する位置に支持部と、を備えている弾性部材と、前記支持部に支持されている振動素子と、を備え、複数の前記弾性部材によって、3以上の前記支持部を介して前記振動素子が支持されていることを特徴とする。
【0007】
本適用例の振動デバイスによれば、ベース基板に接続された複数の弾性部材の、接続部から離間して設けられている3以上の支持部に振動素子が接続されている。このように、振動素子は、ベース基板に対して複数の弾性部材で支持されるとともに、複数の弾性部材の3か所以上の支持部によって支持されている、すなわち、振動素子は3か所以上の支持部で支持されているとともに、3か所以上の支持部は複数の弾性部材の接続部を介してベース基板に接続されることとなる。したがって、例えば、振動素子の一端側で支持されている、所謂片持ち支持されている振動素子と比較すると、本適用例の振動素子は、少なくとも2か所以上の位置でベース基板と接続されていることになり、外部からの応力がかかっても、3か所以上の支持部および複数の弾性部材の接続部で応力を分散できるため、例えば、振動素子の振動特性変動、スプリアス、などが発生する可能性が低減される、または、支持強度が低下する可能性を低減することができる。また、温度変化などによって生じる振動素子の熱膨張変化による応力が弾性部材によって吸収、あるいは放散され、応力の影響による振動素子の振動特性低下を低減することもできる。さらに、弾性部材で振動素子を支持していることにより、外部からの衝撃力などに対する緩衝効果等により、振動素子への振動特性変動、例えばスプリアスの発生、などが低減され、更には支持強度が低下する可能性を低減することができる。
【0008】
〔適用例2〕上述の適用例において、前記弾性部材は、平面視で細長形状に延在し、且つ曲げ部を備えているバネ部を備えていることを特徴とする。
【0009】
上述の適用例によれば、平面視で細長形状に延在し、且つ曲げ部を備えているバネ部材によって振動素子が支持されている。このような構成の弾性部材では、応力がかかったときの変形(撓み)の自由度が増すことから振動素子を支持した時の応力の吸収、あるいは放散がされ易く、振動素子の振動特性低下を低減することができる。また、衝撃力などの緩衝効果等も得られることにより、振動素子の支持強度が低下する可能性を低減することができる。
【0010】
〔適用例3〕上述の適用例において、前記振動素子は、平面視で円形形状を有し、前記支持部が前記円形形状の中心に点対称に配置されていることを特徴とする。
【0011】
上述の適用例によれば、円形の振動素子を幾何学的にバランスよく支持することとなり、振動デバイスに付加される外部からの衝撃力などの応力が、振動素子に対して偏ってかかってしまう可能性を低減する、例えば、3以上の支持部のうち1か所に偏って応力がかかる可能性を低減することができる。従って、応力による、振動素子と支持部との接続強度が低下する可能性を低減したり、スプリアスの発生等を低減したりすることができる。
【0012】
〔適用例4〕上述の適用例において、前記振動素子は、互いに表裏の関係にあるそれぞれの面に励振電極を備えており、前記弾性部材は導電性を有し、3以上の前記支持部の少なくとも一つと、前記励振電極の少なくとも一方と、は導電性を備えた接合部材により接続されていることを特徴とする。
【0013】
上述の適用例によれば、振動素子に備えている励振電極の一方とベース基板との電気的な接続を、弾性部材を介して行うことができるため、弾性部材により振動素子の固定と電気的接続とを兼用することができるので、効率的に振動素子をベース基板に配置することができる。
【0014】
〔適用例5〕上述の適用例において、前記振動素子は、互いに表裏の関係にあるそれぞれの面に励振電極が設けられており、前記励振電極の一方は、前記第1の面に形成されている接続電極と、ワイヤーボンディングによって電気的接続がなされていることを特徴とする。
【0015】
上述の適用例によれば、励振電極の他方と基板に備える接続電極との接続が、ワイヤーボンディングによって行われるため、振動素子とベース基板との電気的な接続の自由度が高くなり、振動素子の励振電極のレイアウト、あるいはベース基板の接続電極のレイアウトの設計自由度を高めることができる。
【0016】
〔適用例6〕上述の適用例において、前記振動素子は、互いに表裏の関係にあるそれぞれの面に励振電極を備えており、前記弾性部材は導電性を有し、3以上の前記支持部の少なくとも一つと、前記励振電極の一方と、は、導電性を備えた接合部材により接続されているとともに、前記励振電極の他方は、前記第1の面に形成された接続電極と、ワイヤーボンディングによって電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
上述の適用例によれば、振動素子に備えられている励振電極の一方とベース基板との電気的な接続を、弾性部材を介して行うことができるため、弾性部材により振動素子の固定と電気的接続とを兼用することができるので、効率的に振動素子をベース基板に配置することができるとともに、励振電極の他方と基板に備えられている接続電極との接続が、ワイヤーボンディングによって行われるため、振動素子とベース基板との電気的な接続の自由度が高くなり、振動素子の励振電極のレイアウト、あるいはベース基板の接続電極のレイアウトの設計自由度を高めることができる。
【0018】
〔適用例7〕上述の適用例において、前記基板の前記第1の面の裏面となる第2の面に、発熱部材が備えられていることを特徴とする。
【0019】
上述の適用例によれば、発熱部材によって振動デバイスに備える振動素子の温度を所望の温度範囲に制御することができる、例えば、OCXO(温度制御型水晶発振器:Oven Controlled Xtal Oscillator)を構成することができる。発熱部材の熱は複数の弾性部材を介して、弾性部材の支持部から振動素子に伝導するので、振動素子に熱を伝えやすくすることができる。従って、安定した高い精度の振動デバイスを得ることができる。
【0020】
〔適用例8〕上述の適用例において、前記基板の前記第1の面には、前記振動素子を収容する収容空間を形成する蓋体が接合され、前記収容空間が気密に封止されていることを特徴とする。
【0021】
上述の適用例によれば、蓋体によって気密に封止された空間に、振動素子が収納された振動デバイスを提供することができる。即ち、振動素子が搭載される空間を気密に封止された空間とすることで、振動素子への外部からの影響を低減した振動デバイスとすることが可能となる。
【0022】
〔適用例9〕本適用例の電子機器は、上述の適用例のいずれかに記載の振動デバイスを備えていることを特徴とする。
【0023】
本適用例の電子機器によれば、応力による振動特性の低下や落下衝撃などによる振動特性の低下などを低減できる振動デバイスを用いているため、より安定した特性とすることが可能な電子機器を提供することが可能となる。
【0024】
〔適用例10〕本適用例の移動体は、上述の適用例のいずれかに記載の振動デバイスを備えていることを特徴とする。
【0025】
本適用例の移動体によれば、応力による振動特性の低下や落下衝撃などによる振動特性の低下などを低減できる振動デバイスを用いているため、より安定した特性とすることが可能な移動体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1を用い、第1実施形態に係る振動デバイスについて説明する。
図1は、第1実施形態に係る振動デバイスの概略構成を示し、(a)は平面図、(b)は(a)に示すA−A´部の断面図である。なお、図を分かり易くするため、
図1(a)は、蓋部材を省略(透視)した図としている。
【0029】
図1(a)および
図1(b)に示す第1実施形態に係る振動デバイス100は、振動基板31の両平面に励振電極32a,33aが形成された振動素子30と、振動素子30を支持する弾性部材としての板バネ41,42と、振動素子30や板バネ41,42を収納するパッケージ10と、パッケージ10との間に収納空間(搭載する空間)としての内部空間100aを形成する蓋体としてのリッド20と、を有している。パッケージ10を構成する基板としてのベース基板11の外部平面の第2の面11bには発熱部材としての発熱素子50が備えられている。以下、振動素子30、パッケージ10、板バネ41,42、発熱素子50、およびリッド20について順次詳細に説明する。
【0030】
(振動素子)
本実施形態の振動素子30は、圧電材料の一例として、水晶により形成されたSCカット水晶基板(圧電基板)が振動基板31に用いられている。ここでSCカット水晶基板(圧電基板)について、
図2を参照して説明する。
図2は、SCカット水晶基板の構成を示す概略図である。なお、図が複雑になるため、
図2(a)と、
図2(b)とに分けて図示している。
図2(a)に示すように、本例のSCカット水晶基板1は、直交座標系(X,Y,Z)の2回の回転(φ1、θ1)に続き、
図2(b)に示すように、直交座標系(X’,Y’’,Z’)の1回の回転(η1)を経て得られる水晶基板である。水晶結晶は三方晶系に属し、互いに直交する結晶軸X,Y,Zを有する。X軸、Y軸、Z軸は、夫々電気軸、機械軸、光学軸と呼称される。Z軸は、Z軸の回りに120°毎にX軸、Y軸の組がある3回対称軸であり、X軸は2回対称軸である。
図2(a)に示すように、水晶結晶の構成は、電気軸としてのX軸、機械軸としてのY軸、光学軸としてのZ軸からなる直交座標系(X,Y,Z)を用いて記述される。
【0031】
図2(a)に示すように、SCカット水晶基板1は、まず直交座標系(X,Y,Z)のX軸の回りに所定角度φ1(例えば34°)分を回転し、この回転により得られた新たな直交座標系(X,Y’,Z’)のZ’軸の回りに所定角度θ1(例えば22°)分を回転し、この回転により得られた直交座標系を(X’,Y’’,Z’)とする。厚さ方向がY’’軸方向と平行であり、両主面がX’Z’面(X’軸とZ’軸とで構成する平面)を含む矩形状の基板を切り出すと、通常のSCカット水晶基板1が得られる。
【0032】
また、
図2(b)に示すように、上記の2回の回転に加え、直交座標系(X’,Y’’,Z’)のY’’軸の回りに角度η1分を回転させると新たな直交座標系(X’’,Y’’,Z’’)が得られる。この新たな直交座標系(X’’,Y’’,Z’’)において、厚さ方向がY’’軸方向と平行であり、両主面がX’’Z’’面(X’’軸とZ’’軸とで構成する平面)を含む矩形状の基板を切り出すことによってもSCカット水晶基板2を得ることができる。本例のSCカット水晶基板2は、矩形状のSCカット水晶基板1の一方の相対する二辺は、X’’軸と平行であり、他方の相対する二辺は、Z’’軸と平行であり、Y’’軸方向が厚さ方向となる水晶基板である。そして、これらのSCカット水晶基板1またはSCカット水晶基板2から切り出された平板が、本実施形態の振動基板31(振動素子30)として用いられる。
【0033】
なお、本発明に係る水晶基板は、前述のようなSCカットに限定されるものではなく、厚みすべり振動で振動するATカット、BTカット、等の他の圧電基板にも広く適用できる。例えば、ATカット水晶基板の場合は、Y軸およびZ軸共にX軸を回転軸として略35°15′回転させて、夫々Y’軸、およびZ’軸とする。したがって、ATカット水晶基板は、直交する結晶軸X、Y’、Z’を有する。ATカット水晶基板は、厚さ方向がY’軸方向に沿っており、Y’軸に直交するXZ’面(X軸およびZ’軸を含む面)を含む面が主面であり、厚みすべり振動を主振動として振動する。このATカット水晶基板を加工して、振動素子30の素板としての振動基板31を得ることができる。また、振動素子30としては、上記以外にも、弾性表面波共振子や、MEMS(MICRO Electro Mechanical Systems)振動素子でも構わない。さらに、上記の振動素子30の基板材料としては、水晶の他、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料、又はシリコン半導体材料等を用いてもよいし、上記の振動素子の励振手段としては、圧電効果によるものを用いてもよいし、クーロン力による静電駆動を用いてもよい。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の振動素子30は、前述したSCカット水晶基板1から形成された円板状の振動基板31の、互いに表裏の関係にある第1の主面31aと第2の主面31bに、電極として励振電極32a,33a、および接続電極32b,33bが形成されている。励振電極32aは、略円形をなしており、振動基板31(振動素子30)における第1の主面31a(表の主面)の中央部に形成されている。また、接続電極32bは、第1の主面31aの一方の外周端側に形成されており、一方の端部が励振電極32aに接続され、他方の端部が振動基板31の外縁に向かって延設されている。また、励振電極33aは、略円形であり、振動基板31(振動素子30)における第2の主面31b(裏の主面)の中央部にあって、平面視で、表側の励振電極32aとほぼ重なるように形成されている。接続電極33bは、第2の主面31bの一方の外周端側に、平面視で、第1の主面31aの接続電極32bとほぼ重なるように形成されており、一方の端部が励振電極33aに接続され、他方の端部が振動基板31の外縁に向かって延設されている。なお、接続電極32bと、接続電極33bとは、平面視でほぼ重なるように形成されることに限定されない。板バネ41,42に支持され、電気的接続が可能な位置に接続電極33bが配置されればよく、平面視で接続電極32bと、接続電極33bとが異なる位置に配設されていてもよい。
【0035】
(パッケージ)
図1(a)および
図1(b)に示すパッケージ10は、底板となる基板としてのベース基板11と、ベース基板11の第2の面11bの反対面の振動素子30が載置される第1の面11aの周縁部に設けられている枠状の側壁12とを有している。パッケージ10は、振動素子30を収納するものである。また、側壁12の上面には、接合材としてのシールリング60が設けられている。
【0036】
パッケージ10は、上面に開放する収納空間としての凹部(内部空間100a)を有している。凹部の開口は、接合材としてのシールリング60を介して側壁12に接合されている蓋部材としてのリッド20によって塞がれている。そして、パッケージ10の凹部の開口が塞がれて密封された内部空間100a(収納空間)が形成される。密封された内部空間100aは、その内部圧力を所望の気圧に設定できる。例えば、内部空間100aに窒素ガスを充填しての大気圧としたり、真空(通常の大気圧より低い圧力(1×10
5Pa〜1×10
-10Pa以下(JIS Z 8126−1:1999))の気体で満たされた空間の状態)としたりすることで、より安定した振動素子30の振動を継続することができる。なお、本実施形態の内部空間100aは、上記の真空に設定されている。
【0037】
枠状の側壁12は、略四角形の周状に設けられており、上記凹部の上面に開口する開口形状が略四角形状をなしている。そして、板状のベース基板11と側壁12とに囲まれた凹部が振動素子30を収納する内部空間(収納空間)100aとなる。側壁12の上面に配設されている接合材としてのシールリング60は、例えばコバール等の合金で形成されている。シールリング60は、蓋部材としてのリッド20と側壁12と、を接合する接合材としての機能を有しており、側壁12の上面に沿って枠状(本実施形態では略四角形状の周状)に設けられている。なお、側壁12の開口形状は、略四角形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよく、その場合には、側壁12の開口形状に適合させた形状を有する枠状のシームリング60が配設される。
【0038】
パッケージ10は、振動素子30やリッド20の熱膨張係数と一致、あるいは極力近い熱膨張係数を備えた材料によって形成され、本実施形態では、セラミックを用いている。パッケージ10は、所定の形状に成形されたグリーンシートを積層し、焼結することによって形成される。なお、グリーンシートは、例えば所定の溶液中にセラミックのパウダーを分散させ、バインダーを添加して生成される混練物がシート状に形成された物である。
【0039】
パッケージ10を構成するベース基板11の第1の面11aには、少なくともPAD電極71a,71b,72が設けられている。PAD電極71aには導電性を有する接合部材としての導電性接着剤81を介して板バネ41が接合され、PAD電極71bには後述するボンディングワイヤー90の一端が接続されている。また、PAD電極72には接合部材としての樹脂接着剤83を介して板バネ42が接合されている。PAD電極71a,71b,72は、例えば、銀・パラジウムなどの導電ペーストあるいはタングステンメタライズなどを用い、必要とされる形状を形成後に焼成を行い、その後ニッケルおよび金あるいは銀などをメッキすることによって形成される。少なくともPAD電極71a,71bは図示しないパッケージ10に形成された引回し配線によってベース基板11の第2の面11bに形成された外部接続電極11cと電気的に接続されている。
【0040】
そして、PAD電極71aは、導電性接着剤81、板バネ41を介して、接合部材としての導電性接着剤82aによって振動基板31の第2の主面31bに形成された励振電極33aの接続電極33bと電気的に接続されている。また、PAD電極71bは、ボンディングワイヤー90によって、振動基板31の第1の主面31aに形成された励振電極32aの接続電極32bと電気的に接続されている。
【0041】
PAD電極72は、少なくとも対向するベース基板11の第1の面11aと、振動基板31の第2の主面31bと、の間隙(クリアランス)を形成し、振動素子30とベース基板11と、が接触する可能性を低減する。更には、樹脂接着剤83の広がりを抑制するために、金属面のPAD電極72上に樹脂接着剤83を塗布することが好ましい。このように、PAD電極71a上に導電性接着剤81を介して板バネ41を接続するとともに、PAD電極72上に樹脂接着剤83を介して板バネ42を接続することで、板バネ41および板バネ42は同様の構成部材を用いてベース基板11に配置されることになる。すなわち、板バネ41および板バネ42は、ベース基板11の第1の面11aおよび凹部11dの底面と略平行な状態を保つことができるため、板バネ41に導電性接着剤81を介し、且つ板バネ42に樹脂接着剤83を介して接続されている振動基板31も、ベース基板11の第1の面11aおよび凹部11dの底面と略平行な状態を保つことができる。これにより、振動基板31とベース基板11とを略平行に保つことができるため、ベース基板11の第1の面11aと、振動基板31の第2の主面31bとが接触する可能性を低減することもできる。なお、振動素子30の接地電極としてPAD電極72と接合させる場合には、導電性を有する樹脂接着剤83を用いるが、電気的な接続を要しない場合には絶縁性の接合材料を用いてもよい。
【0042】
(板バネ)
ここで、
図3を参照しながら、板バネ41,42の詳細について説明する。
図3は、板バネの一例を示す、(a)は平面図、(b)は正面図である。なお、板バネ41と板バネ42と、は同じ構成であるので、板バネ41によって説明し、板バネ42の説明は省略する。
【0043】
板バネ41は、厚み0.05mm程度の板材から形成され、
図3に示すように、基部41aと、基部41aから2つの支持腕として第1支持腕41bと、第2支持腕41cと、が、互いに離間する方向に延設されている。第1支持腕41bの延設端部には第1支持部41dが延設され、第2支持腕41cの延設端部には第2支持部41eが延設され、第1支持部41dおよび第2支持部41eは振動素子30を支持する。
【0044】
第1支持腕41bは細幅状に、複数の曲げ部41fを設けながら延在させて形成されている。同様に第2支持腕41cも、細幅状に、複数の曲げ部41gを設けながら延在させて形成されている。このように、第1支持腕41bおよび第2支持腕41cに、それぞれ複数の曲げ部41f,41gを設けることにより、板バネ41の
図3(b)に示す矢印W方向への撓み易さを増すことができ、振動素子30を板バネ41に接続したときに、振動素子30のW方向に振動、あるいは外乱による移動に対して、より緩衝効果を高めることができる。なお、第1支持腕41bおよび第2支持腕41cは、
図3(a)に示すように振動素子30の外縁に沿って延在されることが好ましい。第1支持腕41bおよび第2支持腕41cが、振動素子30の外縁に沿って延在されることで板バネ41の平面に沿った方向(W方向に交差する方向)の第1支持腕41bおよび第2支持腕41cの剛性を高めことができ、振動素子30の励振方向に交差する方向の外乱の影響を受けにくい振動デバイス100を得ることができる。
【0045】
板バネ41,42は、銅合金の一例であるりん青銅などのバネ性(弾性)を有する板材をエッチング加工などによって外形形成する。なお、板バネ41,42を形成する材料としては、弾性材であれば特に限定されないが、銅、他の銅合金(例えばベリリウム銅)を用いることが好適である。銅、りん青銅、あるいはベリリウム銅などの他の銅合金は、高導電性であり、熱伝導性が良く且つ良好なバネ性を有していることから、板バネ41,42として用いることにより、振動素子30への発熱素子50からの熱エネルギーの伝導性を確保しつつ、振動素子30の応力緩和も行うことができる。また、弾性部材の一例として、板状の形状をしている板バネ41,42について説明したが、弾性部材としてはこれに限らず、弾性変形するものであればよく、棒状、コイル状、蛇腹状、また板状の部材の表裏を貫通する穴が開いている等の形状を用いてもよい。
【0046】
(振動素子の取り付け)
振動素子30は、パッケージ10の側壁12に囲まれた凹部内に収納されている。振動素子30は、平面視で、第2の主面(裏の主面)31bの接続電極33bと、第1支持部41dとが、接続部材として、例えばポリイミド樹脂を含む導電性接着剤82aによって接続されている。また、振動素子30は、第2支持部41eにおいて、接続部材として樹脂接着剤82bによって接続されている。このように樹脂を含む導電性接着剤82aによって振動素子30が板バネ41の第1支持部41dに接続されることにより、導電性接着剤82aに含まれる樹脂により、振動素子30の応力緩和を図ることができると共に、電気的導通を確保することが可能となる。なお、第2支持部41eでの接続は、電気的導通の必要がないため、接続部材としての樹脂接着剤82bは、導電性を有していなくてもよい。
【0047】
図4は、振動素子30を板バネ41,42に取り付ける配置を説明する平面概念図である。
図1に示すように、本実施形態に係る振動デバイス100は、略円形の外形を有する振動基板31を用いて振動素子30が形成されている。この振動素子30を板バネ41,42の支持部41d,41e,42d,42eにおいて接続支持している。従って、振動素子30の平面視における支持部41d,41e,42d,42eの配置は、バランスを保って配設されることが好ましい。
【0048】
例えば、
図4に示すように、板バネ41の第1支持腕41bの端部に備える第1支持部41dと、振動素子30と、を接続する導電性接着剤82aの塗布中心s11と、板バネ42の第1支持腕42bの端部に備える第1支持部42dと、振動素子30と、を接続する樹脂接着剤84aの塗布中心s21と、は、振動素子30の平面中心Cbに対して点対称に配置される。同様に、板バネ41の第2支持腕41cの端部に備える第2支持部41eと、振動素子30と、を接続する樹脂接着剤82bの塗布中心s12と、板バネ42の第2支持腕42cの端部に備える第2支持部42eと、振動素子30と、を接続する樹脂接着剤84bの塗布中心s22と、は、振動素子30の平面中心Cbに対して点対称に配置される。
【0049】
このように、振動素子30の平面形状の中心Cbに対して、塗布中心s11,s12,s21,s22が点対称に配置されることにより、安定して振動素子30を支持することができる。なお、塗布中心s11,s12,s21,s22を点対称に配置するということは、s11とs21とを結ぶ仮想線L1と、s12とs22とを結ぶ仮想線L2との交点Csは、振動素子30の中心Cbを中心とするφδの直径の領域Dの領域内となるように配置されればよく、厳密に中心Cbに交点Csが重ならなくてもよい。φδは、製造上のばらつきなどの工程能力に応じる許容範囲として設定され、振動素子30の外形(直径)が8mmの場合、δ≒1mmとなる。すなわち、振動素子30の外形(直径)に対して、δは12.5%程度として設定されていればよい。
【0050】
また、平面視で隣り合う接着剤が配設され、支持部によって支持される支持点数をn箇所とし、隣り合う支持点と、交点Cs、もしくは中心Cbと、を繋ぐ線分のなす角度α°は、
α°≒360°/n
であることが好ましい。例えば、
図4に示す振動素子30の場合には支持点は、塗布中心s11,s12,s21,s22の4点、すなわちn=4であることから、α°≒90°であることが好ましい。このように、支持点としての塗布中心s11,s12,s21,s22を配置することにより、バランスよく振動素子30を板バネ41,42によって支持することができる。
【0051】
なお、上述した支持点としての塗布中心s11,s12,s21,s22の配置方法は、換言すると振動素子30の中心Cbに対して回転対称に配置する、と言える。回転対称に配置させることにより、支持点が、奇数点の配置であってもバランスよく振動素子を支持することができる。例えば支持点が3点である場合、α°は、
α°≒360°/3≒120°
と設定することで、バランスの良い振動素子30の支持が可能となる。
【0052】
板バネ41,42は基部41a,42aをベース基板11に固定し、支持部41d,41e,42d,42eによって振動素子30を支持することで、パッケージ10の中空領域の中に振動素子30を配置することで、落下衝撃などの応力が振動デバイス100に加わった場合の衝撃力が板バネ41,42の弾性によって吸収され、振動素子30に加わる衝撃力を減少させる、所謂緩衝作用を大きくすることができるものである。この作用において、上述したように振動素子30に対して支持点の配置バランスを考慮して配設することにより、振動素子30が外部からの衝撃力等の応力が振動素子30に対して偏ってかかってしまう可能性を低減することができ、応力による、振動素子30と支持部41d,41e,42d,42eの接続強度が低下する可能性を低減したり、ノイズ、例えばスプリアス等が発生する可能性を低減したりすることができる。
【0053】
なお、ベース基板11の第1の面11a側には、振動デバイス100に外部からの衝撃力などによって、振動素子30とベース基板11との不用意な接触を低減するため、
図1に示すように、凹部11dが設けられていてもよい。凹部11dは、
図1(a)に示すように、平面視において、少なくとも、板バネ41,42の支持部41d,41e,42d,42eに干渉しない領域となるように凹部側壁11eを有する平面形状で形成する。
【0054】
(蓋体としてのリッド)
リッド20は、板状の部材であり、パッケージ10の上面に開放する凹部(収納空間)の開口を塞ぎ、凹部の開口の周囲を、例えばシーム溶接法などを用いて接合されている。本実施形態のリッド20は、板状であるため、形成が行い易く、さらには形状の安定性にも優れる。また、本実施形態のリッド20には、コバールの板材が用いられている。リッド20にコバールの板を用いることで封止の際に、コバールで形成されているシールリング60とリッド20とが同じ溶融状態で溶融され、さらには合金化もされ易いため封止を容易に、且つ確実に行うことができる。なお、リッド20には、コバールに換えて他の材料の板材を用いてもよく、例えば、42アロイ、ステンレス鋼などの金属材料、またはパッケージ10の側壁12と同じ材料、本実施形態ではセラミック、などを用いることができる。なお、リッド20とパッケージ10との接合は、上記のシーム溶接法に限らず、例えば、樹脂、ガラス等の接着剤として機能する接合部材を介して接合してもよいし、リッド20とパッケージ10との接合部材として前述の樹脂やガラス等を用いる場合には、リッド20を樹脂やガラス等を用いることもできる。
【0055】
(発熱素子)
発熱部材としての発熱素子について
図5を用いて概略を説明する。
図5は、発熱部材としての発熱素子の概略を模式的に示す正断面図である。
図5に示す発熱素子50は、ベース基板11に接続された板バネ41,42を介して接続される振動素子30を加熱し、振動素子30の温度を一定に保つ、所謂恒温機能を有している電子部品である。
【0056】
図5に示すように、基体としての発熱素子50は、半導体などから形成された基板51の機能面側に、パワートランジスターまたは発熱抵抗体などから構成される発熱体52、温度センサー53、機能素子54などが配設されている。発熱体52は、温度センサー53で検出された信号に基づいて温度コントロールされ、一定温度を保つことができる。機能面上には、電気的に絶縁体である中間層55が設けられている。中間層55の上面には、発熱体52に対向するように設けられた熱伝導層56と、発熱体52あるいは機能素子54などと、接続配線層57や図示しない他の配線層あるいは貫通電極58などを用いて接続された外部接続電極59が設けられている。熱伝導層56は、発熱体52に対向するように設けられることにより、広い面積で発熱体52からの熱(熱エネルギー)を熱伝導層56に伝えることができる。換言すれば、効率よく発熱体52の熱を熱伝導層56に伝えられる。なお、発熱素子50は、前述の中間層55を設けられていない構成など、他の構成であってもよい。また、発熱素子50は、少なくとも発熱体52を備えていればよく、発熱体52、温度センサー53、機能素子54等は、同一基板51上に形成されていなくてもよい。
【0057】
図1に示すように、発熱素子50は、パッケージ10を構成するベース基板11の第2の面11bに熱伝導層56を密着させて、樹脂接着剤(図示せず)などによって固定されている。発熱素子50に設けられている外部接続電極59は、
図1には図示されていない発熱素子接続電極に電気的に接続され、パッケージ10のベース基板11の第2の面11bに設けられている外部接続電極11cと電気的に接続されている。
【0058】
発熱素子50からの熱(熱エネルギー)は、熱伝導層56または外部接続電極59等を介してベース基板11に伝えられる。ベース基板11に伝えられた熱は、真空気密に保持された内部空間100aには伝達され難いため、ベース基板11の第1の面11aに固定された板バネ41,42の基部41a,42aにPAD電極71a,72を介して伝達される。
【0059】
上述したように、板バネ41,42はリン青銅などの金属、すなわち熱伝導率の高い材料で構成されていることから、基部41a,42aに伝わった熱は効率よく支持部41d,41e,42d,42eへ伝えられる。そして、支持部41d,41e,42d,42eから振動素子30へ発熱素子50からの熱が送られる。
【0060】
板バネ41,42の支持部41d,41e,42d,42eは、振動素子30に対して、
図4で説明したようにバランスよく配置されていることから、発熱素子50から伝えられる熱は、振動素子30に伝わりやすくなるため、振動素子30を加熱しやすくしたり、振動素子30内における熱(温度)分布の不均一性を低減したりすることができ、安定した振動特性を得ることができる。
【0061】
(第2実施形態)
図6に第2実施形態に係る振動デバイス200を示し、(a)は平面図、(b)は(a)に示すB−B´部の断面図である。なお、図を分かり易くするため、
図6(a)は、蓋部材を省略(透視)した図としている。なお、第2実施形態に係る振動デバイス200は、第1実施形態に係る振動デバイス100における振動素子30の形態が異なる形態であり、その他の構成要素において第1実施形態に係る振動デバイス100と共通する構成要素には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0062】
図6(a)に示すように、本実施形態に係る振動デバイス200では、搭載される振動素子230が、振動基板31の第1の主面31a上に形成された励振電極232aから延在する接続電極232bは、第2の主面31b上に形成された励振電極233aから延在する接続電極233bと、平面視で重ならないように配置、形成されている。
【0063】
第1の主面31aに形成される接続電極232bからは、振動基板31の外周面を回り込む接続側面電極232cが延在し、さらに接続側面電極232cから振動基板31の第2の主面31b面に延在する裏面電極232dが形成されている。そして、裏面電極232dは、板バネ42の第2支持部42eに導電性接着剤284bによって固定され、電気的に接続されている。また、振動基板31の第2の主面31b上に形成された励振電極233aは、励振電極233aから延在する接続電極233bによって、導電性接着剤82aを介して板バネ41の第1支持部41dに固定され、電気的に接続されている。
【0064】
板バネ41は、基部41aを導電性接着剤81によってPAD電極271に固定され、電気的に接続されている。PAD電極271は、図示しないパッケージ210の内部配線によってベース基板211の外部に形成された外部接続電極211cのいずれかと電気的に接続されている。また板バネ42は、基部42aを導電性接着剤283によってPAD電極272に固定され、電気的に接続されている。PAD電極272は、図示しないパッケージ210の内部配線によってベース基板211の外部に形成された外部接続電極211cのいずれかと電気的に接続されている。
【0065】
上述したように、第2実施形態に係る振動デバイス200では、励振電極232a,233aと、PAD電極271,272と、の電気的な接続にボンディングワイヤーを用いず、板バネ41の第1支持部41dと、板バネ42の第2支持部42eと、に接続電極233bおよび裏面電極232dを直接、導電性接着剤82a,284bを介して接続および固定することにより、振動素子230を幾何学的にバランスよく板バネ41および板バネ42で支持することができる。したがって、衝撃力等の応力による、振動素子と支持部との接続強度が低下してしまう可能性を低減したり、振動素子230の振動のバランスをより良好することで、振動素子230を励振させた時にスプリアス等が発生する可能性を低減したりすることができる。
【0066】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る振動デバイス300を示し、(a)は平面図、(b)は(a)に示すE−E´部の断面図である。なお、図を分かり易くするため、
図7(a)は、蓋部材を省略(透視)した図としている。なお、第3実施形態に係る振動デバイス300は、第1実施形態に係る振動デバイス100における発熱素子50の形態が異なる形態であり、その他の構成要素において第1実施形態に係る振動デバイス100と共通する構成要素には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0067】
図7に示すように、第3実施形態に係る振動デバイス300は、2つの発熱素子351,352を備えている。
図7(a)に示すように、振動デバイス300の平面視において、第1発熱素子351は、板バネ41の基部41a、および基部41aを固着する導電性接着剤81に重なるように配設され、第2発熱素子352は、板バネ42の基部42a、および基部42aを固着する樹脂接着剤83に重なるように配設されている。
【0068】
図7に示すように、発熱素子351,352を配設することにより、発熱素子351,352と、板バネ41,42の基部41a,42aと、が近接して配置され、発熱素子351,352の熱を板バネ41,42に伝導しやすくすることができる。従って、板バネ41,42を介して発熱素子351,352から振動素子30への熱伝導がしやすくなるため、振動素子30の温度制御をより正確に行ったり、振動素子30内における熱(温度)分布の不均一性を低減したりすることができる。
【0069】
(第4実施形態)
次に、
図8を用い、本発明の振動デバイスの第4実施形態に係る発振器について説明する。
図8は、本発明の振動デバイスとしての発振器1000の概略を示す正断面図である。なお、本実施形態の発振器1000に用いられている振動
デバイスは、前述の第1実施形態の振動デバイス100と同じ構成である。したがって、以下の説明では、振動デバイス100については、同符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0070】
図8に示す発振器1000は、プリント基板1010上に被せられた金属または樹脂製のキャップ1020によって形成された内部空間1000aを有している。キャップ1020は、プリント基板1010上に半田または接着剤などの接合部材1030を用いて接続されている。この内部空間1000aは、非気密、即ち大気開放されていてもよいし、気密空間であってもよい。内部空間1000aには、プリント基板1010に接続板1040によって接続されている振動デバイス100と、プリント基板1010上に接続されている回路素子1050とを備えている。振動デバイス100は、プリント基板1010に対向するように配置され、プリント基板1010に接続板1040を介して接続されている。なお、接続板1040は、振動デバイス100とプリント基板1010との電気的な接続を図る機能も有している。回路素子1050は、振動デバイス100に備える発熱素子50を制御する機能を少なくとも有している。また、振動デバイス100の裏面には、他の回路構成部品1060を備えていてもよい。また、プリント基板1010上には、回路素子1050に加えて、電子部品1070を備えていてもよい。プリント基板1010の裏面(外面)には、外部接続端子1010aが設けられている。外部接続端子1010aは、図示しないが、回路素子1050、電子部品1070などと電気的接続がされている。
【0071】
第4実施形態に係る発振器1000では、前述した第1実施形態の振動デバイス100の効果を有することで、外部からの衝撃力等の応力に対して影響を受けにくい発振器1000を提供できるともに、使用環境の温度変化による周波数の変動を抑制可能な、所謂周波数温度特性の精度を高めた振動デバイス100を用いた発振器1000を提供することが可能となる。即ち、使用環境の温度変化による特性変動を減少させた発振器1000を提供することが可能となる。なお、第4実施形態では、発振器1000を例に説明したが、回路素子1050の搭載されていない、所謂温度補償型の発振器にも同様な構成を適用することが可能である。
【0072】
<板バネの変形例>
ここで、
図9を用いて、板バネの変形例について説明する。
図9は、板バネの変形例を示し、(a)は平面図、(b)は(a)に示すF−F´部の拡大部分断面図である。前述の実施形態では、平板状の板バネ41,42を例に
図3を用いて説明したが、板バネは平板状に限らない。例えば
図9に示すように、板バネ43は、板厚方向に段加工(ディプレス)されて曲げられた段部Gが設けられている構成であってもよい。板バネ43には、基部43aから延在する第1支持腕43bおよび第2支持腕43cのそれぞれの先端部分に段部Gが設けられている。そして、第1支持腕43bの段部Gの部分に第1支持部43dが設けられ、第2支持腕43cの段部Gの部分に第2支持部43eが設けられている。なお、段部Gは、第1支持腕43bおよび第2支持腕43cのそれぞれの先端部分でなく、他の部位に曲げ部が設けられている構成でもよく、あるいは曲げられた部分が複数設けられている構成でもよい。
【0073】
板バネ43のように、段加工された段部Gが設けられていることにより、板バネ43は第1支持部43d、および第2支持部43eの位置だけで振動素子30と接することになり、第1支持腕43b、第2支持腕43c、および基部43aと振動素子30とが接触する可能性を低減することができる。即ち、第1支持腕43bおよび第2支持腕43cと振動素子30との不要な接触による振動特性への影響を低減することが可能となる。
【0074】
(第5実施形態)
次いで、上述した実施形態に係る振動デバイス100,200,300、および発振器1000のいずれかを適用した電子機器について、
図10〜
図12に基づき、詳細に説明する。なお、説明では、振動素子30を備えた振動デバイス100を適用した例を示している。
【0075】
図10は、本発明の一実施形態に係る振動デバイス100を備える電子機器としてのモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成の概略を示す斜視図である。この図において、パーソナルコンピューター2000は、キーボード2010を備えた本体部2020と、表示部2030を備えた表示ユニット2040とにより構成され、表示ユニット2040は、本体部2020に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。このようなパーソナルコンピューター2000には、信号処理のタイミング源としての機能を備えた振動デバイス100が内蔵されている。
【0076】
図11は、本発明の一実施形態に係る振動デバイス100を備える電子機器としての携帯電話機(PHSも含む)の構成の概略を示す斜視図である。この図において、携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3010、受話口3020および送話口3030を備え、操作ボタン3010と受話口3020との間には、表示部3040が配置されている。このような携帯電話機3000には、信号処理のタイミング源としての機能を備えた振動デバイス100が内蔵されている。
【0077】
図12は、本発明の一実施形態に係る振動デバイス100を備える電子機器としてのデジタルスチールカメラの構成の概略を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。ここで、従来のフィルムカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、デジタルスチールカメラ4000は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0078】
デジタルスチールカメラ4000におけるケース(ボディー)4010の背面には、表示部4020が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部4020は、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。また、ケース4010の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCD等を含む受光ユニット4030が設けられている。
【0079】
撮影者が表示部4020に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン4040を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー4050に転送、格納される。また、このデジタルスチールカメラ4000においては、ケース4010の側面に、ビデオ信号出力端子4060と、データ通信用の入出力端子4070とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子4060にはテレビモニター4100が、データ通信用の入出力端子4070にはパーソナルコンピューター4200が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリー4050に格納された撮像信号が、テレビモニター4100や、パーソナルコンピューター4200に出力される構成になっている。このようなデジタルスチールカメラ4000には、信号処理のタイミング源としての機能を備えた振動デバイス100が内蔵されている。
【0080】
なお、本発明の一実施形態に係る振動デバイス100は、
図10のパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、
図11の携帯電話機、
図12のデジタルスチールカメラの他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、タブレット型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、カーナビゲーション装置、リアルタイムクロック装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、移動体通信基地局用機器、ルーターやスイッチなどのストレージエリアネットワーク機器、ローカルエリアネットワーク機器、ネットワーク用伝送機器、ヘッドマウントディスプレイ、モーショントレース、モーショントラッキング、モーションコントローラー、PDR(歩行者位置方位計測)等の電子機器に適用することができる。なお、第4実施形態で説明した発熱素子(加熱素子)50を備えた振動デバイス100を用いた発振器1000などを用いれば、通信基地局などの温度環境の厳しい条件下で使用される電子機器に好適である。
【0081】
(第6実施形態)
図13は第6実施形態に係る移動体の一例としての自動車を概略的に示す斜視図である。自動車5000には本発明の一実施形態に係る振動デバイス100が搭載されている。例えば、同図に示すように、移動体としての自動車5000にはタイヤ5010などを制御する振動デバイス100を内蔵している電子制御ユニット5020が、車体5030に搭載されている。また、振動デバイス100は、他にもキーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ブレーキシステム、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム、等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。