特許第6442903号(P6442903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442903
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20181217BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   A61B3/10 R
   G01N21/17 630
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-157182(P2014-157182)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-32609(P2016-32609A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅和
(72)【発明者】
【氏名】羽根渕 昌明
(72)【発明者】
【氏名】古内 康寛
【審査官】 佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−268990(JP,A)
【文献】 特開2010−169503(JP,A)
【文献】 特表2011−528801(JP,A)
【文献】 特開2012−075640(JP,A)
【文献】 特開2012−075641(JP,A)
【文献】 特開2011−158309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00− 3/12
3/13− 3/16
G01N 21/00−21/01
21/17−21/61
A61B 1/00− 1/32
8/00−10/06
G01B 9/00− 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、被検眼に測定光を導くための測定光路と、参照光を生成するための参照光路と、測定光路を介して被検眼に導かれた測定光と参照光路からの参照光との干渉信号を含む検出信号を検出するための検出器と、を備える干渉光学系と、
前記光検出器からの検出信号を処理して被検眼の深さ情報を取得する演算処理器と、
を備える眼科装置であって、
前記測定光路設けられ、前記測定光一部を前記検出器に導く基準部であって、前記測定光路の光路長が異なる複数の深さ情報の位置関係を設定するために用いられる基準干渉信号を生成するための基準部を備える基準光学系と、
被検眼の第1の部位からの測定光と参照光による第1の干渉信号を含む第1の深さ情報と、前記第1の深さ情報とは異なる前記光路長にて取得され被検眼の第2の部位からの測定光と参照光による第2の干渉信号を含む第2の深さ情報との位置関係を、前記基準部からの光による干渉信号である基準干渉信号を基準として設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記演算処理器は、
前記第1の深さ情報に基づいて前記第1の部位の位置を検出し、
前記第2の深さ情報に基づいて前記第2の部位の位置を検出し、
検出された第1の部位の位置と、第2の部位の位置と、前記設定手段によって設定された位置関係と、に基づいて被検眼における第1の部位と第2の部位との間の距離を測定することを特徴とする請求項1の眼科装置。
【請求項3】
前記演算処理器は、前記第1の深さ情報と、前記第2の深さ情報とを、前記基準干渉信号に基づいて合成することによって合成深さ情報を取得することを特徴とする請求項1又は2の眼科装置。
【請求項4】
前記参照光路は、第1の参照光路と、前記第1の参照光路よりも長い光路長に設定される第2の参照光路と、を備え、
前記演算処理器は、
第1の参照光路からの参照光と前記第1の部位からの測定光による第1の干渉信号を含む深さ情報を第1の深さ情報として取得し、
第2の参照光路からの参照光と前記第2の部位からの測定光による第2の干渉信号を含む深さ情報を第2の深さ情報として取得し、
前記基準光学系は、
前記第1の干渉信号に基準干渉信号を形成させるための第1の基準部と、前記第2の干渉信号に基準干渉信号を形成させるための第2の基準部と、を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の深さ情報を取得する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フーリエドメインOCTは、タイムドメインOCTに対してAスキャンを得る速度が速く、現在では、被検眼の組織(例えば、前眼部、眼底)の断層画像を得る装置として主流になっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−75641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なフーリエドメインOCTにおいては、深さ方向の撮像範囲は、前眼部の一部の領域、あるいは眼底領域に制限される。眼全体を一度に撮像するためにコヒーレンス長が長く設定された波長可変光源を持つフーリエドメインOCTが提案されているが、装置構成が複雑であり、高価である。
【0005】
本開示は、従来技術の問題点の少なくとも一つを解決できる眼科装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
光源と、被検眼に測定光を導くための測定光路と、参照光を生成するための参照光路と、測定光路を介して被検眼に導かれた測定光と参照光路からの参照光との干渉信号を含む検出信号を検出するための検出器と、を備える干渉光学系と、
前記光検出器からの検出信号を処理して被検眼の深さ情報を取得する演算処理器と、
を備える眼科装置であって、
前記測定光路設けられ、前記測定光一部を前記検出器に導く基準部であって、前記測定光路の光路長が異なる複数の深さ情報の位置関係を設定するために用いられる基準干渉信号を生成するための基準部を備える基準光学系と、
被検眼の第1の部位からの測定光と参照光による第1の干渉信号を含む第1の深さ情報と、前記第1の深さ情報とは異なる前記光路長にて取得され被検眼の第2の部位からの測定光と参照光による第2の干渉信号を含む第2の深さ情報との位置関係を、前記基準部からの光による干渉信号である基準干渉信号を基準として設定する設定手段と、
を備えることを特徴とする。

【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例に係る装置の制御系について説明するための図である。
図2】第1実施例に係る光学構成について説明するための図である。
図3】第1実施例に係る装置において深さ情報を合成する場合の一例を示す図である。
図4】第2実施例に係る光学構成について説明するための図である。
図5】第2実施例に係る装置において深さ情報を合成する場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る典型的な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
<概要>
本実施形態に係る眼科装置の概要について説明する。以下の説明では、眼科装置1として、OCT装置を用いた場合について説明するが、これに限定されず、典型的には、干渉光学系を備えた眼科装置に対し本実施形態が適用されうる。例えば、眼寸法測定装置に対して本実施形態が適用されうる。
【0011】
眼科装置1は、干渉光学系100と、基準光学系200とを主に備える(図1図2図4参照)。本装置は、例えば、光路長差が異なる複数の深さ情報の位置関係を、干渉光学系100と基準光学系200によって生成される基準干渉信号を基準として設定する。
【0012】
<基本的構成>
眼科装置1は、例えば、フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィー(FD−OCT)を基本的構成とする。眼科装置1は、干渉光学系100(OCT光学系)、演算制御器70を含む。FD−OCTとしては、波長掃引式OCT(SS−OCT:Swept source-OCT)、スペクトルドメインOCT(SD−OCT:Spectral Domain OCT)が代表的である。もちろん、これに限定されず、タイムドメインOCT(TD−OCT)であってもよい。
【0013】
干渉光学系100は、例えば、OCT原理を用いて被検眼Eの深さ情報を得るための干渉計に係る構成を有してもよい。より詳細には、干渉光学系100は、例えば、光源102と、スプリッタ(光分割器)、測定光路、参照光路、コンバイナ(光合成器)、光検出器(以下、検出器)を有してもよい。この場合、スプリッタ(例えば、カップラ104)は、光源からの光を測定光路と参照光路に分割する。スプリッタ、コンバイナには、ビームスプリッタ、ハーフミラー、ファイバーカップラ、サーキュレータ等が用いられる。測定光路は、被検眼に光を導くための構成(例えば、導光光学系150)を有する。参照光路は、光を装置内で進行させ、測定光と干渉させるための構成(例えば、参照光学系300)を有する。参照光路は、参照光を生成するために用いられる。コンバイナは、被検物で反射された測定光路からの測定光と、参照光路からの参照光とを合成(干渉)させる。検出器(例えば、検出器120)は、測定光路を介して眼Eに導かれた測定光と参照光路からの参照光との干渉信号を含むスペクトル信号を検出するために設けられる。
【0014】
演算制御器(例えば、制御部70)は、例えば、装置の各構成の制御処理、画像処理、演算処理、等を行ってもよい。より詳細には、演算制御器は、各波長での干渉信号を含むスペクトル信号を得て、スペクトル信号を処理してもよいし、さらに、演算制御器は、スペクトル信号を処理して深さ方向に関する被検眼のデータ(深さ情報)を得てもよい。
【0015】
測定光路には、測定光を走査させる走査部(例えば、光スキャナ156)が設けられてもよい。演算制御器は、各走査位置で得られた深さ情報を並べて、被検物の断層画像を得てもよい。演算制御器は、得られた結果を記憶部(例えば、メモリ72)に記憶してもよいし、得られた結果を表示部(例えば、表示部75)に表示してもよい。
【0016】
<光路長差可変部>
眼科装置1は、例えば、測定光路と参照光路との光路長差を変更するための光路長差可変部を備えてもよい。より詳細には、光路長差可変部は、測定光路と参照光路との光路長差を変更するために干渉光学系100の少なくとも一部を移動させる駆動部を備えてもよい。この場合、駆動部(例えば、駆動部320、駆動部320b)は、測定光路又は参照光路のいずれかに配置された光学部材(例えば、光学部材310、光学部材310b)を移動させてもよいし、干渉光学系100全体を移動させてもよい。駆動部は、例えば、演算制御器によって駆動制御される。光路長差可変部は、例えば、測定光と参照光の光路長の少なくともいずれかを変更することによって、光路長差を変更する。なお、以下の説明では、光路長差は、特段の説明がない限り、測定光路と参照光路との光路長差として説明する。
【0017】
光路長差可変部は、光路長差を調整するために干渉光学系100に配置された光学部材310の少なくとも一部を光軸方向に移動させてもよい。なお、測定光の光路長が変更される場合、例えば、測定光路中に配置された光学部材(例えば、光ファイバーの端部)が光軸方向に移動される。
【0018】
演算制御器は、光路長差可変部を制御して光路長差を変更し、光路長差が異なる複数の深さ情報を取得してもよい。つまり、測定光又は参照光の光路長の変化によって、光路長差が互いに異なる(測定光又は参照光の光路長が互いに異なる)状態で深さ情報が取得される。言い換えれば、測定光又は参照光の光路長が互いに異なる状態で深さ情報が取得される。演算制御器は、予め設定された複数の位置に光学部材を移動させることによって光路長差を変更し、予め設定された光路長差にて深さ情報を取得してもよい。なお、光路長差は、検者の手動操作によって変更されてもよい。
【0019】
<基準光学系>
基準光学系200は、複数の深さ情報の位置関係を設定するための基準干渉信号を取得するために設けられてもよい。基準光学系200は、測定光又は参照光の一部を検出器に導く基準部(例えば、反射部206a〜反射部206e)を備えてもよい。より詳細には、基準部は、測定光路と参照光路のいずれかに設けられてもよい。基準部は、光路長差可変部によって変更される光路長差に応じて複数設けられてもよい。基準部は、測定光路と参照光路のいずれかの既定の位置に設けられてもよい。基準部は、測定光又は参照光の一部を反射又は透過して検出器に導くための構造を備えてもよく、例えば、基準反射光学系又は基準透過光学系として設けられてもよい。
【0020】
基準光学系200は、光路長差が互いに異なる複数の深さ情報の位置関係を設定するための基準となる基準光を、光源からの光を用いて生成するための光学系として設けられてもよい。
【0021】
光路長差可変部によって測定光路と参照光路の一方の光路長が変更される場合、基準光学系200は、測定光と参照光の他方の光路に設けられてもよい。
【0022】
基準部の具体的構成としては、例えば、一部の光を反射可能な光透過部材(例えば、ガラス部材、プラスチック部材)、一部の光を透過可能な光反射部材(例えば、セロハン、フィルタ)が用いられる。また、基準光学系200は、光ファイバーであってもよい。この場合、光ファイバーの所定位置に欠陥部を形成することによって、基準部が形成される。
【0023】
なお、基準部に設けられた反射面は、ARコートにて反射率が規定されてもよい。また、反射面は各面毎に反射率が違っており(例えば、研磨面と砂目面)、反射ピークのSNRを確認することで何面目の反射ピークかが特定されてもよい。また、反射面の各箇所において反射ピークの本数が異なるように形成され(例えば、セロハンの枚数を異ならせる)、反射ピークの本数を確認することで何面目の反射ピークかが特定されてもよい。なお、干渉信号の位相・分散の違いによって何面目の反射ピークかが特定されてもよい。
【0024】
基準光学系200としては、互いに長さが異なる反射光学部材を複数設け、基準光学系200での測定光路中に配置する反射光学部材を、光路長の変更に応じて切り換えるようにしてもよい。この場合、各反射光学部材の長さは、切り換えられる参照光の光路長に応じて設定される。
【0025】
なお、光路長差が変更される場合、深さ情報の取得領域が変更されうる。そこで、測定光の焦点位置を眼Eの深さ方向に関して変更するための焦点位置変更部を、測定光路(例えば、導光光学系150)に設けるようにしてもよい。焦点位置変更部としては、例えば、対物レンズ系を光軸方向に移動させたり、レンズを挿脱したり、液晶レンズによって屈折力を電気的に変更する等の手法が考えられる。
【0026】
なお、基準光学系200は、前眼部又は眼底を別々に計測する場合、測定光路から離脱されてもよい。例えば、基準光学系200の光路中に遮光部が配置されることによって、基準光学系200は、測定光路から離脱される。
【0027】
<基準干渉信号の設定>
演算制御器は、第1の深さ情報及び第2の深さ情報の位置関係を、基準光学系200によって生成される基準干渉信号(例えば、干渉信号210a)を用いて設定してもよい(図3参照)。基準干渉信号は、例えば、基準部からの光による干渉信号である。第1の深さ情報及び第2の深さ情報は、例えば、測定光路と参照光路との光路長差が異なる状態にて取得される。つまり、演算制御器は、互いに異なる光路長差にて取得された複数の深さ情報の位置関係を、基準干渉信号を用いて設定してもよい。
【0028】
位置関係の設定としては、演算制御部は、例えば、第1の深さ情報と第2の深さ情報を合成する際の位置関係の調整に基準干渉信号を用いてもよい。また、演算制御部は、基準干渉信号を用いて、第1の深さ情報と第2の深さ情報との間の光路長差を規定してもよい。
【0029】
第1の深さ情報は、眼Eの第1の部位(例えば、角膜部位)からの測定光と参照光による第1の干渉信号を含んでもよい。第2の深さ情報は、第1の深さ情報とは異なる光路長差にて取得され眼Eの第2の部位からの測定光と参照光による第2の干渉信号を含んでもよい。
【0030】
演算処理器は、第1の深さ情報に基づいて第1の部位の位置(例えば、角膜位置)を検出し、第2の深さ情報に基づいて第2の部位の位置(例えば、網膜位置)を検出してもよい。演算制御器は、検出された第1の部位の位置と、第2の部位の位置と、前述のように設定された位置関係と、に基づいて第1の部位と第2の部位との間の距離を測定してもよい。第1の部位と第2の部位との間の距離としては、例えば、眼軸長、前房深度が挙げられる。ここで、基準部を用いて形成された位置関係を活用することで、例えば、部位間の距離を適正に測定できる。
【0031】
演算処理器は、第1の深さ情報と第2の深さ情報とを、基準干渉信号に基づいて合成することによって合成深さ情報を取得してもよい。例えば、演算処理器は、同一の基準部からの光による基準干渉信号の位置が深さ方向に関して一致するように、第1の深さ情報と第2の深さ情報を合成するようにしてもよい(図2参照)。演算処理器は、例えば、異なる基準部からの光による基準干渉信号間の距離が、既知の距離である基準部間の距離に対応するように、第1の深さ情報と第2の深さ情報を合成するようにしてもよい(図4参照)。
【0032】
演算処理器は、基準干渉信号を用いた後、深さ情報に含まれる基準干渉信号を信号処理によって除去してもよい。例えば、演算処理器は、合成深さ情報を得た後、合成された深さ情報に含まれる基準干渉信号を消去してもよい。
【0033】
なお、光路長差が異なる複数の深さ情報を得る場合、光路長差を変更するために移動される光学部材が、所定位置に停止された状態で深さ情報が取得されてもよいし、移動中における所定のタイミングにて深さ情報が取得されてもよい。
【0034】
<複数の参照光路>
参照光路は、第1の参照光路(例えば、第1参照光学系300a)と、第1の参照光路よりも長い光路長に設定される第2の参照光路(例えば、第2参照光学系300b)と、を備えてもよい。例えば、第1の参照光路は、角膜の深さ情報を得るために光路長が設定され、第2の参照光路は、水晶体、眼底の少なくともいずれかの深さ情報を得るために光路長が設定されてもよい。
【0035】
演算処理器は、第1の参照光路からの参照光と第1の部位からの測定光による第1の干渉信号を含む深さ情報を第1の深さ情報として取得してもよい。演算制御器は、第2の参照光路からの参照光と第2の部位からの測定光による第2の干渉信号を含む深さ情報を第2の深さ情報として取得してもよい。
【0036】
基準光学系200は、第1の干渉信号に基準干渉信号を形成させるための第1の基準部と、第2の干渉信号に基準干渉信号を形成させるための第2の基準部と、を備えてもよい。光路長差可変部は、例えば、第2参照光路の光路長を変更することによって光路長差を変更するようにしてもよい。これによって、計測領域が、水晶体から眼底までに変更される。
【0037】
この場合、例えば、第1の部位による干渉信号と第2の部位による干渉信号を同時に検出できるので、測定中の位置ずれに対して強く、例えば、測定精度が確保される。
【0038】
また、基準光学系の200の一部を参照光路として用いるようにしてもよい。例えば、特定の基準部(例えば、反射部206a)の反射率が他の基準部に対して高く設定され、特定の基準部からの光(参照光)と、角膜からの測定光とが干渉されてもよい。この場合、第1の参照光路として、反射率の高い基準部が用いられる。
【0039】
<断層画像の取得>
走査部を制御して断層画像を取得する場合、演算制御器は、各走査位置での第1の深さ情報に基づいて第1の断層画像を生成してもよい。また、演算制御器は、各走査位置での第2の深さ情報に基づいて第2の断層画像を生成してもよい。
【0040】
演算処理器は、第1の断層画像と、第2の断層画像とを、基準干渉信号に基づいて合成することによって合成断層画像を得てもよい。演算処理器は、合成断層画像を得た後、合成断層画像に含まれる基準干渉信号を消去してもよい。
【0041】
演算処理器は、合成断層画像において第1の部位と第2の部位の位置を検出し、第1の部位と第2の部位との距離に基づいて被検眼における第1の部位と第2の部位との間の距離を測定してもよい。
【0042】
<3ステップ以上での深さ情報の取得>
光路長差可変部は、少なくとも3つ以上の異なる光路長差に設定可能であってもよい(図2図4参照)。基準光学系200は、光路長差可変部によって変更される少なくとも3つ以上の光路長差に応じて基準部を複数備えてもよい。
【0043】
演算制御器は、前述の第1の深さ情報と、第3の深さ情報との位置関係を、対応する基準干渉信号を基準として設定してもよい。第3の深さ情報は、第1の深さ情報とは異なる光路長差にて取得され被検眼の第3の部位からの測定光と参照光による第3の干渉信号を含んでもよい。また、演算制御器は、前述の第2の深さ情報と、第3の深さ情報との位置関係を、対応する基準干渉信号を基準として設定してもよい。
【0044】
演算制御器は、第1の深さ情報と、第2の深さ情報と、第3の深さ情報を、深さ方向に関して連続的に合成するようにしてもよい。
【0045】
<その他>
また、眼科装置1は、フルレンジ処理(ミラーイメージ除去処理)を行うようにしてもよい。
【0046】
<第1実施例>
本実施例では、眼科装置1として、図1及び図2に示される光コヒーレンストモグラフィー(OCT)装置が用いられる。本実施例に係るOCT装置は、例えば、波長掃引式OCT(SS−OCT:Swept Source-OCT)を基本的構成とし、波長可変光源102、干渉光学系(OCT光学系)100、演算制御器(演算制御部)70と、を含む。その他、眼科装置1には、メモリ72、表示部75、図示無き正面像観察系及び固視標投影系が設けられる。演算制御器(以下、制御部)70は、波長可変光源102、干渉光学系100、メモリ72、表示部75に接続されている。
【0047】
干渉光学系100は、導光光学系150によって測定光を眼Eに導く。干渉光学系100は、参照光学系300に参照光を導く。干渉光学系100は、眼Eによって反射された測定光と参照光との干渉、によって取得される干渉信号光を検出器(受光素子)120に受光させる。さらに、本実施例の干渉光学系100は、基準光学系200を備える(詳しくは後述する)。なお、干渉光学系100は、図示無き筐体(装置本体)内に搭載され、ジョイスティック等の操作部材を介して周知のアライメント移動機構により眼Eに対して筐体を3次元的に移動させることによって被検眼に対するアライメントが行われる。
【0048】
干渉光学系100には、SS−OCT方式が用いられ、光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長可変光源(波長走査型光源)が用いられる。光源102は、例えば、レーザ媒体、共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタが挙げられる。
【0049】
カップラー(スプリッタ)104は、光分割器として用いられ、光源102から出射された光を測定光路と参照光路に分割する。サーキュレータ103はカップラー104からの光を光ファイバー105に導光し、光ファイバー105からの光を光ファイバー119に導光する。なお、サーキュレータ103は、カップラーであってもよい。
【0050】
カップラー(スプリッタ)130は、光ファイバー105からの光(測定光)を、導光光学系150の光路と基準光学系200の光路に分割する。つまり、測定光路には、導光光学系150と基準光学系200が設けられている。カップラー(スプリッタ)130は、ビームスプリッタであってもよい。
【0051】
<導光光学系>
導光光学系150は、測定光を眼Eに導くために設けられる。導光光学系150には、例えば、光ファイバー152、コリメータレンズ154、光スキャナ156、及び対物レンズ系158が順次設けられている。
【0052】
測定光は、光ファイバー152を介して、コリメータレンズ154によって平行ビームとなり、光スキャナ156に向かう。光スキャナ156を通過した光は、対物レンズ系158を介して、眼Eに照射される。測定光は、前眼部及び後眼部の両方に照射され、各組織にて散乱・反射される。
【0053】
光スキャナ156は、眼E上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させる。光スキャナ156は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構によって任意に調整される。光源102から出射された光束は、その反射(進行)方向が変化され、眼底上で任意の方向に走査される。光スキャナ156としては、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。
【0054】
測定光による眼Eからの散乱光(反射光)は、対物レンズ系158、光スキャナ156、コリメータレンズ154、光ファイバー152〜サーキュレータ103、光ファイバー119を経て、カップラー350に達する。散乱光は、カップラー350にて参照光と合波されて干渉する。
【0055】
<基準光学系>
第1実施例において、基準光学系200は、複数の深さ情報を合成するための基準信号を得るために設けられる。基準光学系200は、反射光学部材204を備えてもよい。基準光学系200には、例えば、コリメータレンズ202、反射光学部材204が順次設けられている。反射光学部材204は、反射部206a〜206eを備え、反射部206a〜206eは、光軸方向に並べられている。
【0056】
反射光学部材204は、例えば、光透過部材(例えば、ガラス部材、プラスチック部材等)204a〜206eが光軸方向に貼り合わせられることによって形成される。なお、反射光学部材204としては、光透過性を持つ光反射部材(例えば、セロハン、フィルタ)を、各基準位置(第1の位置〜第4の位置)に配置するようにしてもよい。
【0057】
この場合、例えば、接合される光反射部材間において、屈折率が異なる部材が用いられることによって反射光が生じる。また、光反射性を持つコーティングを施すようにしてもよい。接合部での反射を得る場合は、接合剤と光透過部材との間の接合部の欠陥が利用されてもよい。
【0058】
第1光透過部材204aの第1面は、第1反射部206aとして用いられ、第1光透過部材204aの第2面と第2光透過部材204bの第1面との接合面は、第2反射部206bとして用いられ、第2光透過部材204bの第2面と第3光透過部材204cの第1面との接合面は、第3反射部206cとして用いられ、第3光透過部材204cの第2面と第4光透過部材204dの第1面との接合面は、第4反射部206dとして用いられ、第4光透過部材204dの第2面は、第5反射部206eとして用いられる。
【0059】
コリメータレンズ202からの光は、反射部206a〜206eにてそれぞれ反射され、コリメータレンズ202、カップラー130に戻される。反射部206a〜206eの反射光は、導光光学系150からの光と同様の経路を経て、カップラー350に達する。反射部206a〜206eの反射光は、カップラー350にて参照光と合波されて干渉する。
【0060】
反射部206a〜206eの間隔Z1は、眼科装置1のZ方向の計測範囲Z2よりも短い距離に設定される(図3参照)。Z方向の計測範囲Z2は、測定光と参照光との光路差がゼロになる位置(ゼロディレイ位置)からの計測距離として予め算出される。
【0061】
また、フルレンジ処理(ミラーイメージ除去処理)を行う場合、Z方向の計測範囲として、ゼロディレイ位置に対してプラス側の計測範囲と、ゼロディレイ位置に対してマイナス側の計測範囲とを出し合わせた距離が設定されてもよい。
【0062】
<参照光学系>
参照光学系300は、眼Eでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系300は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。
【0063】
参照光学系300は、例えば、反射光学系によって形成され、カップラー104からの光を反射光学系により反射することにより検出器120に導いてもよい。参照光学系300は、透過光学系によって形成されてもよい。この場合、参照光学系300は、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。
【0064】
本装置は、測定光と参照光との光路長差を調整するために干渉光学系100に配置された光学部材310の少なくとも一部を、光軸方向に移動させる。駆動部320は、光学部材310を移動させるために設けられている。
【0065】
例えば、参照光学系300は、参照光路中の光学部材310を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を調整する構成を有する。
【0066】
より詳細には、参照光学系300は、例えば、サーキュレータ106、光ファイバー107、コリメータレンズ305、光学部材310を備える。サーキュレータ106は、カップラー104からの光を光ファイバー107に導光し、光ファイバー107からの光を光ファイバー109に導光する。なお、サーキュレータ106は、カップラーであってもよい。
【0067】
光ファイバー107からの参照光は、コリメータレンズ305にて平行にされた後、光学部材310にて反射される。光学部材310にて反射された光は、コリメータレンズ305、光ファイバー107、サーキュレータ106、光ファイバー109を経てカップラ350に達する。参照光は、カップラー350にて測定光路からの光と合波されて干渉する。
【0068】
<光検出器>
検出器120は、測定光路からの光と参照光路からの光による干渉を検出するために設けられている。検出器120としては、平衡検出を行ってもよい。この場合、検出器120は、複数の受光素子を備え、第1受光素子からの干渉信号と第2受光素子からの干渉信号との差分を得て、干渉信号に含まれる不要なノイズを削減する。各受光素子は、受光部が一つのみからなるポイントセンサであって、例えば、アバランシェ・フォト・ダイオードが用いられる。
【0069】
<深さ情報の取得>
光源102により出射波長が変化されると、これに対応する干渉信号光が検出器120に受光され、結果的に、スペクトル信号として検出器120によって検出される。制御部70は、検出器120によって検出されたスペクトル信号を処理(フーリエ解析)し、被検眼の深さ情報を得る。
【0070】
スペクトル信号(スペクトルデータ)は、波長λの関数として書き換えられ、波数k(=2π/λ)に関して等間隔な関数I(k)に変換されてもよい。あるいは、初めから波数kに関して等間隔な関数I(k)として取得されてもよい(K―CLOCK技術)。演算制御器は、波数k空間でのスペクトル信号をフーリエ変換することにより深さ(Z)領域における反射率分布を得てもよい。
【0071】
さらに、フーリエ変換後の情報は、Z空間での実数成分と虚数成分を含む信号として表されてもよい。制御部70は、Z空間での信号における実数成分と虚数成分の絶対値を求めることによりAスキャン信号(深さ方向における信号強度値)を得てもよい。
【0072】
<制御系>
制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備えてもよい(図1参照)。例えば、制御部70のCPUは、眼科装置1の制御を司る。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70のROMには、眼科装置1の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。
【0073】
制御部70には、不揮発性メモリ(以下、メモリに省略する)72、操作部74、および表示部75等が電気的に接続されてもよい。メモリ72には、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体が用いられてもよい。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、眼科装置1に着脱可能に装着されるUSBメモリ等をメモリ72として使用することができる。メモリ72には、眼科装置1による深さ情報の取得及びおよび断層画像の撮影を制御するための制御プログラムが記憶されてもよい。また、メモリ72には、眼軸長の測定結果、撮影された断層画像等、撮影に関する各種情報が記憶されてもよい。操作部74には、検者による各種操作指示が入力されてもよい。操作部74は、例えば、走査位置の設定、測定モードの切換等に用いられてもよい。
【0074】
<装置の動作>
以上のような構成を備える眼科装置1において、その動作について説明する。はじめに、眼軸長を測定する場合について説明する。なお、眼軸長を測定する場合、光スキャナ156の駆動を停止する。この場合、例えば、眼Eの視軸と、測定光のビームの主光線とが一致するように、光スキャナ156の偏向角度が設定されてもよい。
【0075】
検者は、干渉光学系100を内蔵する装置本体を被検眼に対して移動させることによって、XYZ方向に関するアライメントを調整する。例えば、図示無き前眼部観察カメラによって取得された前眼部像が表示部75上に表示され、検者は、前眼部像を用いたアライメント調整を行う。
【0076】
<合成用深さ情報の取得>
制御部70は、駆動部320の駆動を制御し、参照光の光路長を変更させることによって、複数の位置にて深さ情報をそれぞれ取得する。駆動部320の駆動によって光学部材310が光軸方向に移動されると、結果として、被検眼に対する計測領域が変更される。
【0077】
本実施例の装置は、フーリエドメインOCTであるので、例えば、光学部材310がある位置に配置された状態において、計測範囲Z1に対応する深さ情報を取得できる(図3参照)。そこで、光学部材310が第1の位置330aに配置されたとき、計測範囲Z1に対応する第1の深さ情報Z10を取得できる。また、光学部材310が第2の位置330bに配置されたとき、計測範囲Z1に対応する第2の深さ情報Z20を取得できる。なお、光学部材310が第3の位置330cに配置されたとき、計測範囲Z1に対応する第3の深さ情報Z30が取得され、光学部材310が第4の位置330dに配置されたとき、計測範囲Z1に対応する第4の深さ情報Z40が取得される。
【0078】
結果として、第1の深さ情報Z10には、眼Eの前眼部に対応する干渉信号と、第1反射部206aに対応する干渉信号210aと、第2反射部206bに対応する干渉信号210bとが含まれる。
【0079】
なお、本実施例では、前眼部に対応する干渉信号として、角膜前面に対応する干渉信号ACの他、図示無き角膜後面に対応する干渉信号、水晶体前面に対応する干渉信号等が含まれる。もちろん、これに限定されず、これらの少なくともいずれかの干渉信号が検出されてもよいし、白内障眼の水晶体混濁部に対応する干渉信号が検出されてもよい。
【0080】
さらに、第2の深さ情報Z20には、第2反射部206bに対応する干渉信号210bと、第3反射部206cに対応する干渉信号210cとが検出される。第3の深さ情報Z30には、第3反射部206cに対応する干渉信号210cと、第4反射部206dに対応する干渉信号210dとが検出される。第4の深さ情報Z40には、第4反射部206dに対応する干渉信号210dと、第5反射部206eに対応する干渉信号210eとが検出される。
【0081】
また、眼Eの眼底に対応する干渉信号が取得される位置は、眼Eの眼軸長によって異なる。図1では、第4の位置330dに光学部材310が配置されたとき、眼底に対応する干渉信号が検出された例を示している。本実施例では、眼底に対応する干渉信号として、網膜表面に対応する干渉信号AR、図示無き網膜後面に対応する干渉信号PRとが含まれる。もちろん、これに限定されず、これらの少なくともいずれかの干渉信号が検出されてもよいし、網膜層の各層に対応する干渉信号、脈絡膜層に対応する干渉信号が検出されてもよい。
【0082】
光学部材320の移動間隔としては、例えば、前述のように、互いに隣接する位置にて取得される深さ情報において、互いの計測領域が重複し、かつ、重複領域において同一の反射部の干渉信号が取得される移動間隔に設定される。
【0083】
<深さ情報の合成>
制御部70は、参照光の光路長が互い異なる位置にて取得された深さ情報を、基準光学系200によって得られる基準信号を基準として合成する。反射部206a〜206eに対応する干渉信号210a〜210eは、深さ情報206a〜206eを合成する際の基準干渉信号(以下、基準信号)として用いられる。
【0084】
制御部70は、各位置にて取得された深さ情報を処理し、反射部に対応する干渉信号を抽出する。反射部に対応する干渉信号の強度は既知であるから、制御部70は、例えば、深さ情報の各輝度信号に対し、反射部に対応する干渉信号を得るために設定された閾値を超えるか否を判定することによって反射部に対応する信号(基準信号)を抽出できる。
【0085】
図3は深さ情報を合成する際の一例を示す図である。制御部70は、同一の反射部に対応する信号が深さ方向に関して一致するように各深さ情報を合成する。これによって、前眼部から眼底までの干渉信号を含む連続的な深さ情報が取得される。
【0086】
より詳細には、制御部70は、第1の深さ情報Z10に含まれる干渉信号210bと、第2の深さ情報Z20に含まれる干渉信号210bとが一致するように、第1の深さ情報Z10と第2の深さ情報Z20とを合成する。なお、同様に、第2の深さ情報Z20と第3の深さ情報Z30とが合成される際、干渉信号210cが用いられ、第3の深さ情報Z30と第3の深さ情報Z40とが合成される際、干渉信号210dが用いられ、第4の深さ情報Z40と第5の深さ情報Z50とが合成される際、干渉信号210eが用いられる。
【0087】
なお、同一の反射部に対応する信号を深さ方向に関して一致させる際、制御部70は、例えば、同一の反射部に対応する信号のピーク位置に関して、第1の深さ情報Z10でのピーク位置と第2の深さ情報Z20でのピーク位置が一致するように合成位置を調整してもよい。なお、複数の深さ情報間の重複部分に関する合成について、いずれか一方の深さ情報を用いるようにしてもよいし、両方の深さ情報の平均を求めるようにしてもよい。
【0088】
制御部70は、上記のようにして合成された深さ情報(以下、合成深さ情報ZS)に基づいて被検眼の眼軸長を測定する。より詳細には、合成深さ情報ZSに含まれる干渉信号ACと干渉信号PRとの位置情報に基づいて眼軸長を測定する。制御部70は、測定結果を表示部75上に表示する。
【0089】
このようにすれば、例えば、フーリエドメインOCTにおいて、被検眼の眼軸長を簡易的な構成で取得できる。また、既知の光学配置を持つ基準光学系200が用いられることによって、異なる深さ情報間での位置関係が正確に規定され、部位間の測定が適正に行われる。
【0090】
<断層画像の取得>
なお、測定光を走査することによって眼の断層画像を取得するようにしてもよい。より詳細には、制御器70は、光スキャナ156の駆動を制御し、眼E上で測定光を横断方向に走査させる。制御器70は、各走査位置での合成深さ情報ZSを順次並べることにより合成断層画像を形成してもよい。制御部70は、形成された合成断層画像を表示部75上に表示する。合成断層画像には、前眼部断層像及び眼底断層像が含まれ、眼全体を観察できる。なお、合成断層画像は、メモリ72に記憶されてもよい。
【0091】
対物レンズ系158は、光スキャナ156と眼Eの瞳孔部とが共役関係となるように構成されてもよい。これによって、測定ビームは、瞳孔を中心として旋回される。また、対物レンズ系158は、像側テレセントリック系として構成されてもよい。これによって、光スキャナ156によって走査される測定ビームは、走査位置にかかわらず、対物レンズ系158の光軸に対して平行な位置関係が保持される。
【0092】
上記のような構成によれば、光軸方向における眼の広範囲(例えば、角膜から眼底を含む眼全体)の断層画像を簡易的な構成で取得できる。なお、制御部70は、合成断層画像を処理して眼軸長を測定するようにしてもよい。
【0093】
<第2実施例>
図4は第2実施例に係る眼科装置1の構成について説明する図である。なお、第2実施例の説明において、第1実施例と同様の番号を付した構成については、同様の機能・作用を奏するものとし、特段の説明を省略する。
【0094】
第2実施例では、参照光学系300には、複数の参照光路が設けられている。第1の参照光学系300aは、角膜に対応する干渉信号を得るために設けられている、第2の参照光学系300bは、水晶体又は眼底に対応する干渉信号を得るために設けられている。この場合、第2の参照光学系300bは、第1参照光学系300aよりも長い光路長に設定される。第1参照光学系300aは、アライメント完了時において、干渉信号の検出可能範囲(断層画像の撮像可能範囲)に角膜が含まれるように光路長が固定されている。なお、第1の参照光学系300aと第2の参照光学系300bのそれぞれの具体的構成については、第1実施例の参照光学系300と同様に、種々の変容が可能である。
【0095】
より詳細には、参照光学系300は、例えば、参照光を第1参照光と第2参照光に分割するためのビームスプリッタ360を備える。ビームスプリッタ360としては、例えば、偏光ビームスプリッタが用いられる。しかしながら、これに限定されず、カップラーであってもよい。好ましくは、第1参照光路と第2参照光路のそれぞれの光路中において、遮光部が挿脱可能に配置され、第1参照光路を用いた計測と、第2参照光路を用いた計測とを選択的に行うようにしてもよい。この場合、1フレーム単位で光路が切り換えられてもよい。また、選択的な切換としては、光スイッチが用いられてもよい。光スイッチの場合、例えば、参照光が向かう光路が、第1参照光路と第2参照光路との間で選択的に切り替えられ、角膜断層像と、水晶体断層像(又は眼底断層像)とが交互に取得される。第1参照光学系300aには、例えば、光学部材310a(例えば、参照ミラー)が固定的に配置される。
【0096】
第2参照光学系300bには、例えば、測定光と参照光との光路長差を調整するために移動される光学部材(例えば、参照ミラー)310bが配置される。駆動部320bは、光学部材310bを移動させるために設けられている。
【0097】
光ファイバー107からの参照光は、コリメータレンズ305にて平行にされた後、ビームスプリッタ360によって第1参照光と第2参照光に分割される。第1参照光は、ミラー303を介して光学部材310aによって反射された後、ミラー303〜光ファイバー109を経てカップラ350に達する。第1参照光は、カップラー350にて測定光路からの角膜反射光と合波されて干渉する。
【0098】
第2参照光は、光学部材310bにて反射された後、ビームスプリッタ360〜光ファイバー109を経てカップラ350に達する。第2参照光は、カップラ350にて測定光路からの反射光(例えば、水晶体反射光、眼底反射光)と合波されて干渉する。
【0099】
第2実施例の基準光学系200では、反射光学部材204としては、反射部206a〜206dを備え、反射部206a〜206dは、光軸方向に並べられている。反射光学部材204は、例えば、光透過部材(例えば、ガラス部材、プラスチック部材等)204a〜204dが光軸方向に貼り合わせられることによって形成される。なお、第2実施例での反射部206a〜206dの間隔Z1は、眼科装置1のZ方向の計測範囲Z2よりも長い距離に設定される。
【0100】
以下、第2実施例の装置の動作について説明する。第2実施例では、光スキャナ156を駆動させることによって断層画像を取得し、取得された断層画像に基づいて眼軸長を測定する。しかしながら、これに限定されず、第1実施例と同様、光スキャナ156の駆動を停止した状態で眼軸長を測定してもよい。
【0101】
第2実施例では、光学部材310aが第1の位置330aに固定されているので、計測範囲Z1(角膜領域を含む)に対応する第1の深さ情報Z10が定常的に取得できる。結果として、第1の深さ情報Z10には、眼Eの角膜に対応する干渉信号と、第1反射部206aに対応する干渉信号210aとが、少なくとも含まれる。
【0102】
制御部70は、駆動部320bの駆動を制御し、参照光の光路長を変更させることによって、複数の位置(第2の位置〜第4の位置)にて深さ情報Z20〜Z40をそれぞれ取得する。光学部材310bが第2の位置330bに配置されたとき、第2の深さ情報Z20が取得され、光学部材310bが第3の位置330cに配置されたとき、第3の深さ情報Z30が取得され、光学部材310bが第4の位置330dに配置されたとき、第4の深さ情報Z40が取得される。第2の深さ情報Z20には、眼Eの水晶体に対応する干渉信号が少なくとも含まれる。なお、深さ情報Z20〜Z40を取得する際、参照光路の選択動作によって第1の参照光路が一時的に選択された場合、第1の深さ情報が取得される。これにより、第1の深さ情報と、他の深さ情報が略同時に取得される。
【0103】
また、眼Eの眼底に対応する干渉信号が取得される位置は、眼Eの眼軸長によって異なる。図5では、第4の位置に光学部材310bが配置されたとき、眼底に対応する干渉信号が検出された例を示している。
【0104】
光学部材320の移動間隔としては、例えば、前述のように、互いに隣接する位置にて取得される深さ情報において、反射部の干渉信号が深さ情報の端部に検出されるような移動間隔に設定される。図5では、反射部による干渉信号が、0ディレイ位置に対して前側と後側で交互に発生されるように移動間隔が設定されている。
【0105】
図5は深さ情報を合成する際の一例を示す図である。制御部70は、参照光の光路長が互い異なる位置にて取得された深さ情報を、基準光学系200によって得られる基準信号を基準として合成する。反射部206a〜206dに対応する干渉信号210a〜210dは、深さ情報206a〜206dを合成する際の基準信号として用いられる。なお、複数の深さ情報間の重複部分に関する合成について、いずれか一方の深さ情報を用いるようにしてもよいし、両方の深さ情報の平均を求めるようにしてもよい。
【0106】
制御部70は、合成しようとする各深さ情報に含まれる基準信号間の距離が、対応する反射部間の距離に対応するように、複数の深さ情報を合成する。制御部70は、第1の深さ情報Z10に含まれる干渉信号210bと、第2の深さ情報Z20に含まれる干渉信号210bとの距離が、既知の距離である反射部206aと反射部206bの距離に対応するように、第1の深さ情報Z10と第2の深さ情報Z20とを合成する。これによって、角膜及び前眼部を含む合成深さ情報ZS1が得られる。
【0107】
制御部70は、第1の深さ情報Z10に含まれる干渉信号210aと、第3の深さ情報Z30に含まれる干渉信号210cとの距離が、既知の距離である反射部206aと反射部206cの距離に対応するように、第1の深さ情報Z10と第3の深さ情報Z30とを合成する。これによって、角膜及び眼底を含む合成深さ情報ZS2が得られる。
【0108】
制御部70は、第1の深さ情報Z10に含まれる干渉信号210aと、第4の深さ情報Z40に含まれる干渉信号210dとの距離が、既知の距離である反射部206aと反射部206dの距離に対応するように、第1の深さ情報Z10と第3の深さ情報Z40とを合成する。これによって、眼底を含む合成深さ情報ZS3が得られる。
【0109】
制御部70は、上記のようにして合成された深さ情報に基づいて被検眼の眼軸長を測定する。より詳細には、合成深さ情報に含まれる干渉信号ACと干渉信号PRとの位置情報に基づいて眼軸長を測定する。制御部70は、測定結果を表示部75上に表示する。
【0110】
より詳細には、制御部70は、合成深さ情報ZS1、ZS2、ZS3から角膜と眼底の両方が検出された合成深さ情報を特定する。制御部70は、特定された合成深さ情報における干渉信号ACと干渉信号PRとの位置情報に基づいて眼軸長を測定する。
【0111】
なお、制御部70は、合成深さ情報ZS1と、第3の深さ情報Z30及び第4の深さ情報Z40を合成するようにしてもよい。この場合、制御部70は、合成深さ情報ZS1に含まれる基準信号(例えば、干渉信号210a)と、各深さ情報に含まれる基準信号との距離が、既知の距離である反射部(例えば、反射部206aと反射部206c)間の距離に対応するように、合成処理を行うようにしてもよい。これによって、前眼部から眼底までの干渉信号を含む連続的な深さ情報が取得される。
【0112】
以上のような構成によれば、角膜のピークが定常的に検出できるので、測定中に眼が動いても、眼の寸法を精度よく測定できる。
【符号の説明】
【0113】
1 眼科装置
70 演算制御器
100 干渉光学系
150 導光光学系
200 基準光学系
206a〜206e 反射部
300 参照光学系
310 光学部材

図1
図2
図3
図4
図5