(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1の実施形態)
以下、印刷装置をインクジェット式プリンターに具体化した第1の実施形態を
図1〜
図27に従って説明する。本実施形態の印刷装置は、単票状の媒体の一例である単票紙に加え、長尺状の媒体の一例であるロール紙に対しても印刷することのできる装置である。なお、
図3においては、左方が「前方」であり、右方が「後方」である。また、
図3における上下方向のことを、単に「上下方向」ということもある。
【0040】
図1及び
図2に示すように、印刷装置10は、直方体状をなす筐体11と、この筐体11の後面に着脱自在に取り付けられているロール紙ユニット20とを備えている。このロール紙ユニット20が、ロール紙P2を保持する「保持装置」の一例に相当する。ロール紙ユニット20には、ユニットケース21と、ユニットケース21内に収容されているロール紙P2を支持する支持軸22とが設けられている。そして、
図1に示す矢印方向に支持軸22を回転させることによりロール紙P2がユニットケース21外に送り出される。なお、ロール紙ユニット20から筐体11内に送り出されたロール紙P2は、上方に凸となるようにカールしている。
【0041】
筐体11の前部には、前後方向及び上下方向の双方とほぼ直交する方向である走査方向に延びる軸線を中心に回動する前面パネル12が設けられている。この前面パネル12の下部が、回動可能な状態で筐体11に支持されている。
図1に示すように筐体11の前部を閉塞する前面パネル12の状態を「閉じ状態」といい、
図2に示すように筐体11の前部を開放した前面パネル12の状態を「開き状態」という。そして、前面パネル12が開き状態である場合、前面パネル12が、筐体11内から前方に排出された単票紙P1やロール紙P2などの用紙Pが載置されるスタッカー(排出トレイ)として機能する。
【0042】
また、筐体11の上部には、走査方向に延びる軸線を中心に回動する上面パネル13が設けられている。この上面パネル13の後部が、回動可能な状態で筐体11に支持されている。
図1に示すように筐体11の上部を閉塞する上面パネル13の状態を「閉じ状態」といい、
図2に示すように筐体11の上部を開放した上面パネル13の状態を「開き状態」という。そして、上面パネル13が開き状態である場合、上面パネル13が、印刷前の単票紙P1を保持する給送トレイとして機能する。
【0043】
また、
図2に示すように、筐体11の上部には、ユーザーインターフェースである操作装置14が設けられている。この操作装置14は、上面パネル13を開き状態にしたときに露出する。こうした操作装置14には、表示画面141と、操作ボタンなどで構成される被操作部142とが設けられている。この表示画面141は、回動可能な状態で筐体11の上部に取り付けられている。そして、ユーザーによって被操作部142が操作されることにより、印刷装置10が駆動する。
【0044】
なお、本実施形態の印刷装置10にあっては、印刷されたロール紙P2の先端部分であるロール紙P2の印刷済み部分を、ユーザーがはさみなどの切断手段によってロール紙P2から切断するようになっている。そして、印刷済み部分がロール紙P2から切断され、その後、ユーザーによる被操作部142の操作によって、ロール紙P2を搬送方向上流に戻すための指示が制御装置に入力されると、バックフィード処理が実施され、ロール紙P2が筐体11内に戻される。
【0045】
図3に示すように、筐体11内には、用紙Pを搬送経路に沿って搬送する搬送ユニット50と、搬送途中の用紙Pを支持する支持台40と、支持台40に支持されている用紙Pに対して印刷を施す印刷ユニット30とが設けられている。また、筐体11内には、後述する印刷ヘッド33を含むインク供給系をメンテナンスするメンテナンスユニットもまた設けられている。
【0046】
まず、
図3及び
図4を参照し、印刷ユニット30について説明する。
図3及び
図4に示すように、印刷ユニット30は、紙面直交方向でもある上記走査方向に延びるガイド部材31と、走査方向に移動可能な状態でガイド部材31に支持されているキャリッジ32と、キャリッジ32に搭載されている印刷ヘッド33とを備えている。印刷ヘッド33は、液体の一例であるインクを噴射するノズルを有している。そして、キャリッジ32を走査方向に移動させつつ印刷ヘッド33からインクを噴射させることにより、用紙Pに対して印刷を施すことができる。なお、キャリッジ32の下面において印刷ヘッド33よりも後側、すなわち印刷ヘッド33よりも搬送方向上流には、用紙Pの端部(前端、後端、側端を含む。)を検知する紙幅センサーSE1が設けられている。
【0047】
次に、
図4を参照し、支持台40について説明する。
図4(a),(b)に示すように、支持台40は、支持台ケース41と、支持台ケース41内に収納されているインク吸収材48とを備えている。また、支持台ケース41において印刷ヘッド33と対向する面(図中上面)である支持面42には、支持台ケース41の内外を連通させる2つの開口43A,43Bが設けられている。これら各開口43A,43Bは、走査方向でもある支持台ケース41の幅方向に延びている。そして、開口43A,43Bのうち、後方でもある搬送方向上流(
図4(a)では右側)に位置する上流開口43Aは、印刷ヘッド33の搬送方向上流端(
図4(a)では右端)と搬送方向で重なっている。一方、前方でもある搬送方向下流側(
図4(a)では左側)に位置する下流開口43Bは、印刷ヘッド33の搬送方向下流端(
図4(a)では左端)と搬送方向で重なっている。すなわち、本実施形態の印刷装置10にあっては、用紙Pに対する縁なし印刷が可能となっている。そして、縁なし印刷時に印刷ヘッド33から噴射されたインクのうち、用紙Pに付着しないインクはインク吸収材48に吸収される。
【0048】
また、
図4(b)に示すように、上流開口43Aよりも搬送方向上流に位置する支持面42には、搬送方向に延びる複数の上流リブ44が走査方向に並んだ状態で設けられている。また、上流開口43Aと下流開口43Bとの間に位置する支持面42には、搬送方向に延びる複数の中間リブ45が走査方向に並んだ状態で設けられている。また、下流開口43Bよりも搬送方向下流に位置する支持面42には、搬送方向に延びる複数の下流リブ46が走査方向に並んだ状態で設けられている。そして、支持台40では、上流リブ44、中間リブ45及び下流リブ46によって用紙Pが支持される。
【0049】
次に、
図3及び
図5〜
図7を参照し、搬送ユニット50について説明する。
図3に示すように、搬送ユニット50は、自動給送装置60と、自動給送装置60よりも搬送方向下流(図中左側)に位置する搬送ローラー対51と、搬送ローラー対51よりも搬送方向下流に位置する排出ローラー対52とを備えている。搬送ローラー対51は、支持台40及び紙幅センサーSE1よりも搬送方向上流(図中右側)に配置されている一方、排出ローラー対52は、支持台40よりも搬送方向下流に配置されている。
【0050】
図3及び
図5に示すように、こうした各ローラー対51,52は、搬送モーター53からの動力に基づき回転する駆動ローラー511,521と、駆動ローラー511,521の回転に伴って従動回転する従動ローラー512,522とを有している。すなわち、本実施形態の印刷装置10では、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512が「搬送ローラー」に相当し、排出ローラー対52を構成する一対のローラー521,522が「排出ローラー」に相当する。そして、ローラー対51,52を構成する駆動ローラー511,521と従動ローラー512,522とにより用紙Pを挟持(ニップ)させた状態で搬送モーター53からの動力によって駆動ローラー511,521が回転されると、ローラー対51,52によって用紙Pが搬送される。
【0051】
なお、これら各ローラー511,512,521,522は、搬送モーター53の駆動態様に基づき正逆両方向に回転可能である。そして、用紙Pを搬送方向下流に搬送する際の各ローラー511,512,521,522の回転方向を「正転方向」といい、用紙Pを搬送方向上流に戻す際の各ローラー511,512,521,522の回転方向を「逆転方向」ということもある。また、各ローラー511,512,521,522を正転方向に回転させるための搬送モーター53の駆動を「正転駆動」といい、各ローラー511,512,521,522を逆転方向に回転させるための搬送モーター53の駆動を「逆転駆動」ということもある。
【0052】
図5に示すように、搬送ローラー対51にあっては、上側に位置する従動ローラー512の回転軸(軸心)は、下側に位置する駆動ローラー511の回転軸(軸心)よりもやや搬送方向下流(図中左側)に位置している。また、駆動ローラー511と従動ローラー512との接触点は、支持台40よりも上方に位置している。これにより、搬送ローラー対51からは、前斜め下方に位置する支持台40の上流リブ44に向けて用紙Pが突出する。そのため、搬送ローラー対51によって送り出された用紙Pが上流リブ44に接触すると、用紙Pの搬送方向は、上流リブ44、中間リブ45及び下流リブ46が並ぶ方向である前方に変更される。
【0053】
図3及び
図6に示すように、自動給送装置60は、用紙Pがセットされるセット部の一例であるホッパー61を備えている。このホッパー61の走査方向における両端には外方に突出する支軸62が設けられており、ホッパー61は、支軸62を中心に傾動可能となっている。具体的には、ホッパー61は、支軸62を軸心とし、その下部が上下方向に変位するように傾動するようになっている。
【0054】
図3に示すように、このホッパー61は、用紙の搬送経路における最上流に位置している。そのため、ホッパー61には、開き状態の上面パネル13にセットされた単票紙P1の載置が可能であるとともに、ロール紙ユニット20から送り出されたロール紙P2のセットが可能である。
【0055】
なお、自動給送装置60には、ホッパー61にセットされている用紙Pを検知するセット検知センサーSE2が設けられている。このセット検知センサーSE2は、ホッパー61の下部の上方に配置されている。そのため、用紙Pの先端がホッパー61の下部に達していない場合、セット検知センサーSE2は、用紙Pを検知することができない。そして、セット検知センサーSE2によって用紙Pが検知されている場合、ホッパー61にセットされている用紙Pを、後述する給送ローラー64の回転によって搬送方向下流に給送することが可能となっている。
【0056】
ここで、
図3及び
図7に示すように、印刷装置10の筐体11内においてホッパー61よりも上斜め後方には、ロール紙ユニット20から送り出されたロール紙P2をホッパー61上に導くための案内部の一例である挿入部15が設けられている。この挿入部15は、筐体11の後面11aに開口する挿入口16と、ロール紙P2をホッパー61に導くための導入口17とを有している。すなわち、挿入口16を通じて挿入部15内に挿入されたロール紙P2は、導入口17を通じてホッパー61上に向けて送り出され、その後、ホッパー61上にセットされる。
【0057】
なお、挿入部15内には、挿入口16及び導入口17を通じて外部と連通する挿入室18が形成されている。すなわち、ロール紙P2は、挿入口16を通じて挿入室18内に進入し、導入口17を通じて挿入室18外に導出される。そして、挿入部15には、ロール紙P2の挿入室18内の通過を検知する長尺媒体検知センサーの一例であるロール紙検知センサーSE3が設けられている。
【0058】
図3及び
図6に示すように、ホッパー61の下部よりもやや前斜め上方には、ホッパー61の幅方向とほぼ一致する走査方向に延びる回転軸63と、回転軸63に固定されている給送ローラー64とが設けられている。この給送ローラー64の外郭形状は、略「D」字状をなしている。すなわち、給送ローラー64の外周面は、回転軸63を中心とする周方向に沿うとともにホッパー61上の用紙Pに接触可能な接触面641と、接触面641の周方向における一端と他端とを直線的に繋ぐとともにホッパー61上の用紙Pに接触不能な非接触面642とを有している。この接触面641の周方向における長さは、給送ローラー64から搬送ローラー対51までの用紙の搬送経路の長さよりも長い。
【0059】
また、給送ローラー64に対向する位置には、給送ローラー64とともに用紙Pを搬送方向下流に送り出すリタードローラー65が設けられている。このリタードローラー65は、トルクリミッターなどのトルク制限機構によって一定の回転負荷が付与されているとともに、ばねなどの付勢部材によって給送ローラー64側に付勢されている。また、リタードローラー65の外周面は、給送ローラー64の接触面641とは接触可能である一方で、非接触面642とは接触不能である。そして、リタードローラー65の外周面が給送ローラー64の接触面641に接触している状態で給送ローラー64が回転されると、リタードローラー65は、給送ローラー64の回転に連動して従動回転する。すなわち、給送ローラー64とリタードローラー65とにより用紙Pを挟持(ニップ)した状態でローラー64,65が回転すると、用紙Pが搬送方向下流に位置する搬送ローラー対51に向けて給送される。なお、用紙Pを搬送方向下流に給送するためのローラー64,65の回転方向を「正転方向」といい、ローラー64,65の正転方向とは反対方向を「逆転方向」というものとする。
【0060】
リタードローラー65の回転軸は、給送ローラー64の回転軸よりもやや搬送方向上流(
図3ではやや右側)に位置している。そのため、給送ローラー64とリタードローラー65とにより用紙Pを挟持(ニップ)した状態でローラー64,65が正転方向に回転すると、用紙Pは、
図3における左斜め下方に給送される。
【0061】
ちなみに、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間には、用紙の搬送経路上における用紙Pの有無を検知する用紙端部検知センサーSE4が設けられている。
【0062】
また、用紙の搬送経路には、当該搬送経路に沿った用紙Pの搬送を下方からガイドする媒体ガイド部材の一例であるガイド形成部材66が設けられている。このガイド形成部材66は、給送ローラー64とリタードローラー65とによって用紙Pを挟持する点であるニップ点よりも搬送方向下流に位置する媒体案内面67を有している。この媒体案内面67は、搬送方向における給送ローラー64から搬送ローラー対51への用紙Pの給送をガイドする面である。こうした媒体案内面67は、搬送方向下流ほど下方に位置するように形成された斜状部位671と、この斜状部位671の搬送方向下流端に接続されているフラット部位672とを有している。このフラット部位672は、印刷装置10が設置されている設置面とほぼ平行な面となっている。
【0063】
また、媒体案内面67の上方には、媒体ガイド板68が設けられている。こうした媒体ガイド板68などにより、搬送方向における給送ローラー64とリタードローラー65との間での用紙Pの浮き上がりが抑制される。
【0064】
また、
図6に示すように、自動給送装置60は、筐体11内における走査方向一端の領域に配置される給送モーター70と、給送モーター70からの動力を回転軸63に伝達するための動力伝達機構71とを備えている。この動力伝達機構71には、給送モーター70の出力軸に固定されているピニオン72と、ピニオン72と歯合する第1の二段歯車73と、第1の二段歯車73と歯合する第2の二段歯車74と、第2の二段歯車74と歯合するワンウェイクラッチ75とが設けられている。
【0065】
各二段歯車73,74は、大径部731,741と小径部732,742とを有しており、小径部732,742は大径部731,741と同軸配置されている。そして、第1の二段歯車73の大径部731がピニオン72と歯合しているとともに、第1の二段歯車73の小径部732が第2の二段歯車74の大径部741と歯合している。また、第2の二段歯車74の大径部741にはワンウェイクラッチ75の駆動側の部材が歯合している。そして、このワンウェイクラッチ75の従動側の部材が、回転軸63に連結されている。
【0066】
給送ローラー64及び回転軸63を正転方向に回転させるための給送モーター70の駆動を「正転駆動」とし、給送ローラー64及び回転軸63を逆転方向に回転させるための給送モーター70の駆動を「逆転駆動」というものとする。この場合、ワンウェイクラッチ75は、給送モーター70が正転駆動しているときには給送モーター70からの動力を回転軸63に伝達する。これにより、回転軸63及び給送ローラー64が正転方向に回転する。一方、ワンウェイクラッチ75は、給送モーター70が逆転駆動しているときには給送モーター70からの動力を回転軸63に伝達しない。これにより、給送モーター70が逆転駆動しても、回転軸63及び給送ローラー64が逆転方向に回転しない。
【0067】
また、ワンウェイクラッチ75の近傍には、所定角度範囲内で回動可能なトリガーレバー76が設けられている。このトリガーレバー76は、回転軸63、すなわち給送ローラー64の回転と連動して回動する。こうしたトリガーレバー76の先端が、ワンウェイクラッチ75の外周上の1箇所と係止可能となっている。そして、給送ローラー64が1回転する度にトリガーレバー76がワンウェイクラッチ75と係止することにより、給送ローラー64は、所定の初期状態で停止する。給送ローラー64の初期状態とは、給送ローラー64の外周面における非接触面642がリタードローラー65の外周面と対向し、搬送経路上の用紙Pと給送ローラー64とが接触しない状態(例えば、
図3に示す状態)のことである。
【0068】
なお、給送ローラー64は、ワンウェイクラッチ75とは独立してフリーで逆転方向に回転することができるようになっている。ただし、給送モーター70からの動力がワンウェイクラッチ75に伝達されていない状態で、逆転方向に回転させる方向への外力が給送ローラー64に加わった場合、ワンウェイクラッチ75を構成する給送モーター70側の部材、すなわち上記駆動側の部材が回転しにくいため、ワンウェイクラッチ75が一種のトルク制限機構として作用する。すなわち、ワンウェイクラッチ75によって給送ローラー64が逆転方向に回転しにくくなっている。しかし、給送モーター70を逆転駆動させ、同給送モーターからの動力を動力伝達機構71に伝達させると、ワンウェイクラッチ75を構成する給送モーター70側の部材が逆転方向に回転するため、ワンウェイクラッチ75から回転軸63に付与される負荷が低減される。その結果、逆転方向に回転させるための外力が給送ローラー64に付与されているときには、給送モーター70が駆動していない場合と比較して、給送ローラー64が逆転方向に回転しやすくなる。
【0069】
筐体11内での走査方向における両端側の領域のうち、上記の動力伝達機構71が配置されている領域を一端側の領域とした場合、走査方向の他端側の領域には、回転軸63の回転をホッパー61に伝達するためのカム機構77が設けられている。このカム機構77は、回転軸63に設けられているカム78と、ホッパー61に設けられているカムフォロア79とを備えている。このカムフォロア79は、カム78と係合可能に構成されている。そして、カム78がカムフォロア79に係合している場合、ホッパー61は、その下部が下方に位置する状態で待機している。しかし、回転軸63の正転方向への回転によってカム78とカムフォロア79との係合が解消されると、ホッパー61の背面側に配置されている付勢部材からの付勢力によって、ホッパー61は、その下部が上方に移動するように傾動する。その後、回転軸63の正転方向への更なる回転によってカム78がカムフォロア79に係合されると、上記付勢部材からの付勢力に抗して回転軸63の正転方向への回転に連動し、ホッパー61は、その下部が下方に移動するように傾動する。
【0070】
次に、
図7〜
図10を参照して、搬送ユニット50の動作について説明する。なお、ここでは、ロール紙P2を搬送する様子について説明する。
図7に示すように、ホッパー61上にロール紙P2がセットされると、セット検知センサーSE2によって、ホッパー61にロール紙P2がセットされたことが検知される。そして、この状態で給送モーター70の正転駆動が開始されると、給送モーター70からの動力が動力伝達機構71を通じて回転軸63に伝達され、回転軸63及び給送ローラー64が正転方向に回転し始める。すると、トリガーレバー76が回動し、トリガーレバー76とワンウェイクラッチ75との係止が解消される。
【0071】
また、
図8に示すように、回転軸63が正転方向に回転しているときには、カム機構77が駆動する。そして、カム機構77において、カム78とカムフォロア79との係合が解消されると、ホッパー61は、その下部が上方に移動するように傾動する。また、このようにホッパー61が傾動したときにおいては、ホッパー61が給送ローラー64の接触面641に接触可能となっている。そのため、ホッパー61によって、ロール紙P2の先端が給送ローラー64の接触面641に押し付けられる。
【0072】
そして、給送ローラー64の正転方向への回転によって、ロール紙P2が搬送方向下流に送り出され、
図9に示すように、このロール紙P2が給送ローラー64とリタードローラー65とにより挟持されるようになる。すると、給送ローラー64とリタードローラー65との正転方向への回転によって、ロール紙P2が搬送方向下流に位置する搬送ローラー対51に向けて給送される。なお、ロール紙P2の先端が搬送ローラー対51に到達する前に、用紙端部検知センサーSE4によってロール紙P2が検知される。
【0073】
給送ローラー64及びリタードローラー65の正転方向への回転によってロール紙P2が給送されている場合、搬送モーター53の駆動によって、搬送ローラー対51及び排出ローラー対52を構成する各ローラー511,512,521,522が、給送ローラー64の正転方向への回転に連動して回転している。そして、ロール紙P2の先端が搬送ローラー対51の位置に達すると、搬送ローラー対51を構成する各ローラー511,512によってロール紙P2が挟持され、このロール紙P2が、各ローラー511,512の正転方向への回転によって支持台40に向けて搬送される。
【0074】
その後、
図10に示すように、給送ローラー64の正転方向への1回転が完了されると、トリガーレバー76がワンウェイクラッチ75に係止され、給送モーター70の駆動が停止される。そして、給送ローラー64は、初期状態で保持される。この状態では、給送ローラー64とリタードローラー65とによるロール紙P2の挟持が解消されている。
【0075】
次に、
図11及び
図12を参照して、上記のメンテナンスユニット90について説明する。
図11に示すように、メンテナンスユニット90は、筐体11内のホームポジション領域HPに配置されている。支持台40に対向する領域を、支持台40に支持されている用紙Pに対して印刷ヘッド33によってインクを付着させることのできる印刷領域PPとした場合、ホームポジション領域HPは、走査方向において印刷領域PPよりも外側(図中右側)に位置する領域である。
【0076】
メンテナンスユニット90は、印刷ヘッド33のノズルを保護するためのキャップ91と、キャリッジ32の走査方向への移動を禁止させるためのロック部材92と、キャップ91及びロック部材92の双方を上下動させるための昇降機構93とを備えている。キャップ91及びロック部材92は、上下方向への移動、すなわち昇降が可能に構成されている。そして、下方に位置する退避位置から上方に位置するキャッピング位置にキャップ91が上昇されると、キャップ91が印刷ヘッド33に接触し、印刷ヘッド33のノズルがキャップ91によって保護されるようになる。また、下方に位置する退避位置から上方に位置するロック位置にロック部材92が移動されると、キャリッジ32に設けられているロック穴321内にロック部材92の先端が進入する。これにより、キャリッジ32の走査方向への移動が禁止される。
【0077】
昇降機構93は、搬送モーター53から動力が伝達されることにより駆動する。搬送モーター53から昇降機構93への動力伝達経路には、伝達経路切替機構94が設けられている。この伝達経路切替機構94は、例えば、走査方向においてキャップ91及びロック部材92よりも支持台40から離れた位置(図中右側)に配置されている。
【0078】
伝達経路切替機構94は、キャリッジモーター34の駆動に基づいて走査方向に移動するキャリッジ32によって、搬送モーター53からの動力の伝達経路を切り替える機構である。すなわち、伝達経路切替機構94を構成する切替レバーにキャリッジ32を接触させることにより、動力の伝達経路が切り替えられる。
【0079】
例えば、
図11及び
図12に示すように、伝達経路切替機構94によって選択可能な経路として、昇降機構93に動力を伝達するための第1の経路と、昇降機構93以外の他の機構95に動力を伝達するための第2の経路と、何れの機構93,95にも動力を伝達させないための第3の経路とが予め用意されている。そして、伝達経路切替機構94によって第1の経路が選択されている場合、搬送モーター53からの動力が昇降機構93に伝達される一方で、他の機構95には伝達されない。なお、用紙Pの搬送を行う際には、伝達経路切替機構94によって第3の経路が選択される。
【0080】
ただし、伝達経路切替機構94によって何れの経路が選択されている場合であっても、搬送モーター53からの動力は、搬送ローラー対51及び排出ローラー対52の双方に伝達される。例えば、伝達経路切替機構94によって第1の経路が選択され、搬送モーター53からの動力によって昇降機構93を駆動させているときでも、搬送ローラー対51及び排出ローラー対52を構成する各ローラー511,512,521,522が回転するようになっている。
【0081】
次に、
図13を参照して、本実施形態の印刷装置10の制御装置について説明する。
図13に示すように、制御装置100には、上記の各種のセンサーSE1〜SE4に加え、キャリッジ32用のリニアエンコーダーSE5と、搬送モーター53用のロータリーエンコーダーSE6と、給送モーター70用のロータリーエンコーダーSE7とが電気的に接続されている。リニアエンコーダーSE5は、キャリッジ32の移動速度、移動量及び移動方向を検出する。ロータリーエンコーダーSE6,SE7は、対象となるモーターの出力軸の回転速度、回転量及び回転方向を検出する。
【0082】
また、制御装置100には、情報の送受信が可能な状態で操作装置14が接続されている。さらに、制御装置100には、パーソナルコンピューターやモバイル端末などの外部装置と専用のインターフェースを通じて通信可能となっている。そして、制御装置100は、ユーザーによる操作装置14の被操作部142の操作に基づいた指令や外部装置から受信した指令及び印刷データPDに基づいて印刷装置10を制御する。
【0083】
図13に示すように、制御装置100は、コンピューター110、ヘッド駆動回路121及びモーター駆動回路122,123,124を備えている。ヘッド駆動回路121は、コンピューター110(詳しくは、後述するASIC112)によって生成されたヘッド制御データが入力されると、このヘッド制御データに応じて印刷ヘッド33のノズルからインクを噴射させる。また、モーター駆動回路122はキャリッジモーター34用の回路であり、モーター駆動回路123は搬送モーター53用の回路であり、モーター駆動回路124は給送モーター70用の回路である。
【0084】
コンピューター110は、CPU111、ASIC112(Application Specific IC(特定用途向けIC))、不揮発性メモリー113及びRAM114を有している。不揮発性メモリー113には、CPU111によって実行される各種のプログラム及び必要な設定データなどが記憶されている。RAM114には、CPU111が実行するプログラムや各種の演算結果などのデータが一時的に記憶される。
【0085】
CPU111は、不揮発性メモリー113から読み出したプログラムを実行し、印刷装置10での用紙の搬送制御を含む印刷制御を実施する。CPU111は、印刷制御の中で、各モーター駆動回路122〜124を介してキャリッジモーター34、搬送モーター53及び給送モーター70の駆動を制御する。このとき、CPU111は、エンコーダーSE5〜SE7によって検出される情報に基づき、モーター34,53,70の駆動を制御する。また、CPU111は、被操作部142からの入力情報に基づく各種の処理を実施したり、表示駆動回路を介して表示画面141にメニュー画面や設定画面などを表示させる表示制御を実施したりする。
【0086】
ASIC112は、印刷データPDに含まれる画像データに基づいて印刷ヘッド33からインクを噴射させるために必要なヘッド制御データを生成し、このヘッド制御データをヘッド駆動回路121に出力する。
【0087】
次に、
図14〜
図17を参照して、制御装置100の機能構成について説明する。
図14に示すように、制御装置100は、ソフトウェア及びハードウェアのうち少なくとも一方によって構成される機能部として、媒体判別部200、モード選択部210及び制御部220を備えている。
【0088】
媒体判別部200は、搬送対象となる用紙、すなわち印刷対象となる用紙がロール紙P2であるか単票紙P1であるかを判別する。例えば、媒体判別部200は、ロール紙検知センサーSE3によって用紙が検知されているときには、印刷対象となる用紙がロール紙P2であると判別する。また、媒体判別部200は、ロール紙検知センサーSE3によって用紙が検知されておらず、セット検知センサーSE2によって用紙が検知されているときには、印刷対象となる用紙が単票紙P1であると判別する。そして、媒体判別部200は、判別結果に関する情報をモード選択部210及び制御部220に出力する。
【0089】
モード選択部210は、今回の印刷対象となる用紙に応じたモードを選択し、選択したモードに関する情報を制御部220に出力する。本実施形態の印刷装置10によって選択可能なモードは、用紙のセット時における表示画面141での表示態様(報知態様の一例)に関する表示モード(報知モードの一例)と、用紙の搬送態様に関する搬送モードとを含んでいる。そのため、モード選択部210は、表示モードを選択する表示モード選択部211と、搬送モードを選択する搬送モード選択部212とを有している。
【0090】
表示モード選択部211は、媒体判別部200から入力された今回の印刷対象となる用紙に関する情報と、ロール紙検知センサーSE3及びセット検知センサーSE2による検知結果とに基づき、表示モードを選択する。そして、表示モード選択部211は、選択した表示モードに関する情報を制御部220に出力する。例えば、表示モード選択部211は、今回の印刷対象となる用紙が単票紙P1であると判別されているときには、単票紙用の表示モード(単票状の媒体用の報知モードの一例)を選択する。また、表示モード選択部211は、今回の印刷対象となる用紙がロール紙P2であると判別されているときには、ロール紙用の表示モード(長尺状の媒体用の報知モードの一例)を選択する。
【0091】
なお、ロール紙用の表示モードとしては、第1の報知モードの一例である第1の表示モードと、第2の報知モードの一例である第2の表示モードとが予め用意されている。そして、表示モード選択部211は、ロール紙検知センサーSE3及びセット検知センサーSE2の双方によって用紙が検知されているときに、第1の表示モードを選択する。一方、表示モード選択部211は、ロール紙検知センサーSE3によって用紙が検知されている一方でセット検知センサーSE2によって用紙が検知されていないときに、第2の表示モードを選択する。
【0092】
搬送モード選択部212は、媒体判別部200から入力された今回の印刷対象となる用紙に関する情報に基づいて搬送モードを選択し、選択した搬送モードに関する情報を制御部220に出力する。例えば、搬送モード選択部212は、今回の印刷対象となる用紙が単票紙P1であると判別されているときには、単票状の媒体用の搬送モードの一例である単票紙用の搬送モードを選択する。また、搬送モード選択部212は、今回の印刷対象となる用紙がロール紙P2であると判別されているときには、長尺状の媒体用の搬送モードの一例であるロール紙用の搬送モードを選択する。
【0093】
制御部220は、表示制御部230、入力処理部240、用紙情報記憶部250、画像処理部260及び印刷制御部270を有している。
表示制御部230は、表示画面141の表示態様を制御する。また、表示制御部230には、表示モード選択部211によって選択されている表示モードに関する情報が入力される。そして、表示制御部230は、選択された表示モードに基づいた表示(報知)を表示画面141に行わせる。この点で、本実施形態の印刷装置10では、表示画面141により、「報知装置」の一例が構成される。
【0094】
例えば、選択されている報知モードが単票紙用の表示モードである場合、表示制御部230は、
図15に示す画像を表示画面141に表示させる。すなわち、表示制御部230は、現時点で設定されている用紙サイズ(ここでは、A5)及び用紙種類(ここでは、普通紙)を表示(報知)するとともに、用紙サイズや用紙種類の変更を促している。なお、本実施形態の印刷装置10では、用紙サイズ及び用紙種類の双方の設定変更を促しているが、用紙サイズのみの設定変更を促すようにしてもよいし、用紙種類のみの設定変更を促すようにしてもよい。
【0095】
また、選択されている報知モードが第1の報知モードである場合、表示制御部230は、
図16に示す画像を表示画面141に表示させる。すなわち、表示制御部230は、現時点で設定されているロール紙の種類(ここでは、普通紙)を表示(報知)するとともに、ロール紙の種類の変更を促している。
【0096】
本実施形態の印刷装置10では、使用可能なロール紙のサイズは1種類のみである。しかし、複数サイズのロール紙を使用可能な印刷装置にあっては、ロール紙の種類及びサイズの双方の設定変更を促すようにしてもよいし、ロール紙のサイズのみの設定変更を促すようにしてもよいし、ロール紙の種類のみの設定変更を促すようにしてもよい。
【0097】
また、選択されている報知モードが第2の報知モードである場合、表示制御部230は、
図17に示す画像を表示画面141に表示させる。この画像が表示画面141に表示される場合としては、ロール紙P2の先端がホッパー61の下部まで達していないために同ロール紙P2をセット検知センサーSE2によって検知できていないと予測される。そのため、
図17に示す画像を表示画面141に表示させることにより、表示制御部230は、ロール紙P2のホッパー61への正しいセットを促すようにしている。
【0098】
図14に示すように、入力処理部240には、ユーザーによる被操作部142の操作に応じた情報が入力される。例えば、表示画面141に
図15に示す画像が表示されている状況下で、用紙サイズや用紙種類を変更するために被操作部142が操作されると、この操作によって選択された用紙サイズや用紙種類に関する情報が入力される。そして、入力処理部240は、このように入力された情報を解析し、その解析結果を用紙情報記憶部250に記憶させる。この用紙情報記憶部250には、媒体判別部200によって判別された用紙に関する情報も記憶される。これにより、制御部220は、印刷対象となる用紙(ここでは、単票紙P1又はロール紙P2)、同用紙のサイズ、及び同用紙の種類を把握することができる。
【0099】
画像処理部260は、外部装置から入力された印刷データPDの画像処理を行い、ヘッド制御データを生成する。そして、画像処理部260は、生成したヘッド制御データを印刷制御部270に出力する。
【0100】
印刷制御部270は、用紙の搬送も含めた用紙への印刷を司る。こうした印刷制御部270は、ヘッド制御部271、搬送制御部272及びデカール調整部273を有している。
【0101】
ヘッド制御部271は、キャリッジ32の走査方向への移動、すなわちキャリッジモーター34の駆動制御と、印刷ヘッド33からのインクの噴射制御とを実施する。なお、ヘッド制御部271は、画像処理部260から入力されたヘッド制御データに基づき、印刷ヘッド33からのインクの噴射タイミングを図っている。
【0102】
搬送制御部272は、自動給送装置60、搬送ローラー対51及び排出ローラー対52を制御する。また、搬送制御部272には、搬送モード選択部212によって選択された搬送モードに関する情報が入力される。そして、搬送制御部272は、選択されている搬送モードに基づいて用紙の搬送制御を実施する。
【0103】
例えば、選択されている搬送モードが単票紙用の搬送モードである場合、搬送制御部272は、印刷指示が入力されると、詳しくは後述する通常時給送処理を実施する。その後、搬送制御部272は、単票紙P1の先端の搬送方向における位置を調整する頭出し処理を実施し、ヘッド制御部271と協同して印刷制御を実施する。
【0104】
また、選択されている搬送モードがロール紙用の搬送モードである場合、搬送制御部272は、印刷指示又は給送指示が入力されると、詳しくは後述する第1の給送処理を実施する。そして、入力された指示が印刷指示である場合、搬送制御部272は、第1の給送処理に続き、詳しくは後述する第2の給送処理を連続して実施する。その後、搬送制御部272は、ロール紙P2の先端の搬送方向における位置を調整する頭出し処理を実施し、ヘッド制御部271と協同して印刷制御を実施する。
【0105】
一方、入力された指示が給送指示である場合、搬送制御部272は、第1の給送処理の終了後、印刷指示が入力されるまで用紙搬送を待機する。この状態で印刷指示が入力されると、搬送制御部272は、第2の給送処理と頭出し処理とを順番に実施し、ヘッド制御部271と協同して印刷制御を実施する。
【0106】
そして、用紙Pへの印刷が完了すると、搬送制御部272は、用紙Pを搬送方向下流に排出させる排出処理を実施する。
ここで、上述したように、ロール紙P2は、筐体11内で上に凸となるようにカールしている。そのため、ロール紙P2が支持台40に達したときに、支持台40の上方域を走査方向に移動するキャリッジ32や印刷ヘッド33に接触するおそれがある。そこで、本実施形態の印刷装置10では、ロール紙P2への印刷開始の直前に実施される第2の給送処理は、ロール紙P2のカールを解消させるためのデカール処理を含んでいる。
【0107】
ロール紙P2の剛性が弱いにも拘わらずデカール処理の実施時間を長くしすぎると、ロール紙P2が反対方向にカール(すなわち、下に凸となるようにデカール)してしまうおそれがある。一方、ロール紙P2の剛性が強い場合には、デカール処理の実施時間を長くしないと、ロール紙P2のカールを適切に解消できないおそれがある。
【0108】
そこで、デカール調整部273は、用紙情報記憶部250に記憶されているロール紙P2の種類に基づき、同ロール紙P2の剛性を予測する。そして、デカール調整部273は、印刷対象となるロール紙P2の剛性が強いほどデカール処理の実施時間を長くする。なお、デカール処理の詳細については、後述する。
【0109】
次に、
図18を参照し、表示モード及び搬送モードを選択するために制御装置100が実行する処理ルーチンについて説明する。
図18に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御装置100は、印刷対象となる用紙がロール紙P2であるか単票紙P1であるかを判別する処理を実施する(ステップS1−1)。上述したように、この判別処理では、セット検知センサーSE2及びロール紙検知センサーSE3による検出結果に基づき、ロール紙P2であるか単票紙P1であるかが判別される。続いて、制御装置100は、上記ステップS1−1での判別結果に基づき、表示モードを選択し(ステップS1−2)、搬送モードを選択する(ステップS1−3)。そして、モードの選択が完了すると、制御装置100は、本処理ルーチンを終了する。
【0110】
次に、
図19を参照し、選択された表示モードに基づいた表示画面141の表示態様を制御するために制御装置100が実行する処理ルーチンについて説明する。
図19に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御装置100は、選択されている表示モードが単票紙用の表示モードであるか否かを判定する(ステップS2−1)。単票紙用の表示モードが選択されている場合(ステップS2−1:YES)、制御装置100は、単票紙用の表示処理を実施する(ステップS2−2)。すなわち、制御装置100は、上述した
図15に示す画像を表示画面141に表示させる。そして、制御装置100は、本処理ルーチンを終了する。
【0111】
一方、ロール紙用の表示モードが選択されている場合(ステップS2−1:NO)、制御装置100は、選択されている表示モードが第1の表示モードであるか否かを判定する(ステップS2−3)。第1の表示モードが選択されている場合(ステップS2−3:YES)、制御装置100は、ロール紙用の第1の表示処理を実施する(ステップS2−4)。すなわち、制御装置100は、上述した
図16に示す画像を表示画面141に表示させる。そして、制御装置100は、本処理ルーチンを終了する。
【0112】
一方、第2の表示モードが選択されている場合(ステップS2−3:NO)、制御装置100は、ロール紙用の第2の表示処理を実施する(ステップS2−5)。すなわち、制御装置100は、上述した
図17に示す画像を表示画面141に表示させる。そして、制御装置100は、その処理を前述したステップS2−3の判定処理に移行する。
【0113】
つまり、
図17に示す画像が表示画面141に表示されているときに、ユーザーがロール紙P2の先端を筐体11の内部に押し込み、このロール紙P2がセット検知センサーSE2によって検知されると、表示画面141の表示内容が、
図17に示す画像から
図16に示す画像に切り替わる。
【0114】
次に、
図20を参照し、用紙への印刷時に制御装置100が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、この処理ルーチンは、印刷指示が入力された場合、又は、給送指示が入力された場合に実行されるルーチンである。
【0115】
図20に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御装置100は、印刷対象となる用紙がロール紙P2であるか否かを判定する(ステップS3−1)。印刷対象となる用紙が単票紙P1である場合(ステップS3−1:NO)、制御装置100は、単票状の媒体用の給送処理の一例である通常時給送処理を実施する(ステップS3−2)。すなわち、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53を正転駆動させ、初期状態の給送ローラー64及び搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512の正転方向への回転を開始させる。そして、制御装置100は、給送ローラー64の1回転が終了すると、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動を停止させ、給送ローラー64を初期状態で保持させる。こうして通常時給送処理が終了すると、制御装置100は、その処理を後述するステップS3−8に移行する。
【0116】
一方、印刷対象となる用紙がロール紙P2である場合(ステップS3−1:YES)、制御装置100は、媒体給送処理の一例である第1の給送処理を実施する(ステップS3−3)。すなわち、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53を正転駆動させ、初期状態の給送ローラー64及び搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512の正転方向への回転を開始させる。そして、制御装置100は、給送ローラー64の1回転が終了すると、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動を停止させ、給送ローラー64を初期状態で保持させる。この状態で、制御装置100は、搬送モーター53を逆転駆動させることにより、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512を逆転方向に回転させる。これにより、同一対のローラー511,512によるロール紙P2の挟持が解消される。なお、第1の給送処理の詳細については後述する。
【0117】
そして、第1の給送処理が終了すると、制御装置100は、印刷指示が入力されているか否かを判定する(ステップS3−4)。印刷指示が未だ入力されていない場合(ステップS3−4:NO)、制御装置100は、印刷指示が入力されるまでステップS3−4の判定処理を繰り返し実行する。
【0118】
一方、印刷指示が既に入力されている場合(ステップS3−4:YES)、制御装置100は、後述する第2の給送処理を実施する(ステップS3−5)。そして、第2の給送処理が終了すると、制御装置100は、印刷モードとして、擦れ回避モードが選択されているか否かを判定する(ステップS3−6)。
【0119】
ここで、「擦れ回避モード」とは、ロール紙P2への印刷中において同ロール紙P2と印刷ヘッド33との接触を回避するための印刷モードである。すなわち、通常の印刷時にあっては、ロール紙P2を、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によって挟持させる一方で、排出ローラー対52を構成する一対のローラー521,522によって挟持させないで、同ロール紙P2への印刷が開始される。しかし、擦れ回避モードが選択されているときには、ロール紙P2を、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によって挟持させるとともに、排出ローラー対52を構成する一対のローラー521,522によって挟持させ、この状態で同ロール紙P2への印刷が開始される。なお、通常の印刷モードで印刷を行わせるか、擦れ回避モードで印刷を行わせるかについては、ユーザーによって選択することが可能である。
【0120】
そして、擦れ回避モードが選択されていない場合(ステップS3−6:NO)、制御装置100は、その処理を後述するステップS3−8に移行する。一方、擦れ回避モードが選択されている場合(ステップS3−6:YES)、制御装置100は、擦れ回避用の頭出し処理を実施する(ステップS3−7)。すなわち、制御装置100は、搬送モーター53の正転駆動を開始させることにより、搬送ローラー対51及び排出ローラー対52を構成する各ローラー511,512,521,522を正転方向に回転させる。この状態で、制御装置100は、搬送モーター53用のロータリーエンコーダーSE6によって検出される搬送モーター53の出力軸の回転量に基づき、ロール紙P2の先端の搬送方向における位置を監視する。そして、制御装置100は、ロール紙P2の先端が排出ローラー対52よりも搬送方向下流に位置するようになったと判断すると、搬送モーター53の駆動を停止させ、頭出し処理を終了する。その後、制御装置100は、その処理を後述するステップS3−9に移行する。
【0121】
ステップS3−8において、制御装置100は、通常時の頭出し処理を実施する。すなわち、制御装置100は、用紙の先端を搬送方向下流に移動させるときには搬送モーター53を正転駆動させる一方、用紙の先端を搬送方向上流に戻すときには搬送モーター53を逆転駆動させる。そして、頭出し処理が終了すると、制御装置100は、その処理を次のステップS3−9に移行する。
【0122】
ステップS3−9において、制御装置100は、印刷データに基づいた印刷を開始する。そして、印刷が完了すると、制御装置100は、用紙を搬送方向下流に排出する排出処理を実施し(ステップS3−10)、その後、本処理ルーチンを終了する。
【0123】
次に、
図21を参照し、上記ステップS3−3の第1の給送処理(第1の給送処理ルーチン)について説明する。
図21に示すように、第1の給送処理ルーチンにおいて、制御装置100は、給送モーター70の正転駆動を開始させ(ステップS4−1)、搬送モーター53の正転駆動を開始させる(ステップS4−2)。続いて、制御装置100は、用紙端部検知センサーSE4によってロール紙P2が検知されたか否かを判定する(ステップS4−3)。ロール紙P2が未だ検知されていない場合(ステップS4−3:NO)、制御装置100は、用紙端部検知センサーSE4によってロール紙P2が検知されるまでステップS4−3の判定処理を繰り返し実行する。
【0124】
一方、ロール紙P2が既に検知されている場合(ステップS4−3:YES)、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53の正転駆動を停止させる(ステップS4−4)。そして、制御装置100は、キャリッジモーター34を駆動させ、ロール紙P2の幅方向における中央となる位置にキャリッジ32、すなわち紙幅センサーSE1を配置させる(ステップS4−5)。続いて、キャリッジ32の位置調整が完了すると、制御装置100は、給送モーター70の正転駆動を開始させ(ステップS4−6)、搬送モーター53の正転駆動を開始させる(ステップS4−7)。
【0125】
なお、本実施形態の印刷装置10では、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動を停止させた状態で、キャリッジ32を走査方向に移動させるようにしている。しかし、これに限らず、給送モーター70及び搬送モーター53の正転駆動を継続した状態でキャリッジ32を走査方向に移動させるようにしてもよい。
【0126】
そして、給送モーター70及び搬送モーター53の双方が正転駆動している状態で、制御装置100は、給送ローラー64が初期状態になったか否か、すなわち給送ローラー64とリタードローラー65とによるロール紙P2の挟持が解消されているか否かを判定する(ステップS4−8)。給送ローラー64が未だ初期状態に戻っていない場合(ステップS4−8:NO)、制御装置100は、給送ローラー64が初期状態に戻るまでステップS4−8の判定処理を繰り返し実行する。
【0127】
一方、給送ローラー64が既に初期状態に戻っている場合(ステップS4−8:YES)、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53の正転駆動を停止させる(ステップS4−9)。そして、制御装置100は、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によるロール紙P2の挟持を解消させるニップ解消処理を実施する(ステップS4−10)。すなわち、制御装置100は、搬送モーター53を逆転駆動させる。このとき、制御装置100は、ニップ解消処理の開始直前におけるロール紙P2の先端の搬送方向における位置を把握しているため、搬送モーター53用のロータリーエンコーダーSE6によって検出される搬送モーター53の出力軸の回転量に基づき、ロール紙P2の先端の搬送方向における位置を予測することができる。そして、制御装置100は、ロール紙P2の先端が搬送ローラー対51よりも搬送方向上流に位置するようになったと判断すると、搬送モーター53の逆転駆動を停止させ、ニップ解消処理を終了する。その後、制御装置100は、第1の給送処理ルーチンを終了する。
【0128】
次に、
図22を参照し、上記ステップS3−5の第2の給送処理(第2の給送処理ルーチン)について説明する。
図22に示すように、第2の給送処理ルーチンにおいて、制御装置100は、キャリッジモーター34を駆動させ、ロール紙P2の幅方向における中央となる位置にキャリッジ32、すなわち紙幅センサーSE1を配置させる(ステップS5−1)。なお、第2の給送処理ルーチンの実行に先立って、ロール紙P2の幅方向における中央となる位置にキャリッジ32が既に位置している場合、制御装置100は、キャリッジモーター34を駆動させることなく、ステップS5−1の処理を終了する。
【0129】
続いて、キャリッジ32の位置調整が完了すると、制御装置100は、紙幅センサーSE1によってロール紙P2が検知されているか否かを判定する(ステップS5−2)。ロール紙P2が検知されていない場合(ステップS5−2:NO)、制御装置100は、その処理を後述するステップS5−4に移行する。
【0130】
ここで、紙幅センサーSE1によってロール紙P2が検知されている場合、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によってロール紙P2が挟持されていることを示している。このように第1の給送処理の終了後に一対のローラー511,512によってロール紙P2が挟持されるという事象は、第1の給送処理の終了後にロール紙P2に外力が加わり、ロール紙P2の先端が筐体11内に押し込まれた場合などに生じうる。
【0131】
そのため、ステップS5−2において、ロール紙P2が検知されている場合(YES)、制御装置100は、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によるロール紙P2の挟持を解消させるニップ解消処理を実施する(ステップS5−3)。すなわち、制御装置100は、搬送モーター53を逆転駆動させる。このとき、制御装置100は、ロール紙P2を紙幅センサーSE1によって検知することができなくなるまで搬送モーター53の逆転駆動を継続させる。そして、制御装置100は、ロール紙P2を紙幅センサーSE1によって検知できなくなると、検知できなくなった時点である特定時点からの経過時間が特定時間を経過するまで搬送モーター53の逆転駆動を継続させる。すなわち、制御装置100は、経過時間が特定時間に達したときに、搬送モーター53の駆動を停止させ、ニップ解消処理を終了する。続いて、制御装置100は、その処理を次のステップS5−4に移行する。なお、特定時間は、特定時点から搬送モーター53を逆転駆動させれば、上記一対のローラー511,512によるロール紙P2の挟持を確実に解消させることの可能な時間に予め設定されている。
【0132】
ステップS5−4において、制御装置100は、給送モーター70の正転駆動を開始させる。続いて、制御装置100は、搬送モーター53の正転駆動を開始させる(ステップS5−5)。そして、制御装置100は、紙幅センサーSE1によってロール紙P2の先端が検知されたか否かを判定する(ステップS5−6)。ロール紙P2が未だ検知されていない場合(ステップS5−6:NO)、制御装置100は、紙幅センサーSE1によってロール紙P2の先端が検知されるまでステップS5−6の判定処理を繰り返し実行する。
【0133】
一方、ロール紙P2が既に検知されている場合(ステップS5−6:YES)、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動を停止させる(ステップS5−7)。続いて、制御装置100は、キャリッジモーター34を駆動させることにより、キャリッジ32をロール紙P2の搬送経路外まで退避移動させる(ステップS5−8)。そして、キャリッジ32の退避移動が終了すると、制御装置100は、給送モーター70の正転駆動を開始させ(ステップS5−9)、搬送モーター53の正転駆動を開始させる(ステップS5−10)。
【0134】
続いて、制御装置100は、ステップS5−9の処理が実行されてからの経過時間T11を取得し、この経過時間T11が予め設定されている規定時間T11Th以上であるか否かを判定する(ステップS5−11)。この規定時間T11Thは、搬送ローラー対51からのロール紙P2の搬送方向下流への突出量を規定するための時間である。そして、経過時間T11が規定時間T11Th未満である場合(ステップS5−11:NO)、制御装置100は、経過時間T11が規定時間T11Thに達するまでステップS5−11の判定処理を繰り返し実行する。
【0135】
一方、経過時間T11が規定時間T11Th以上である場合(ステップS5−11:YES)、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動を停止させる(ステップS5−12)。続いて、制御装置100は、ステップS5−12の実行によってロール紙P2の搬送方向下流への搬送が停止した時点からの経過時間T12を取得し、この経過時間T12が規定時間T12Th以上であるか否かを判定する(ステップS5−13)。経過時間T12が規定時間T12Th未満である場合(ステップS5−13:NO)、制御装置100は、経過時間T12が規定時間T12Thに達するまでステップS5−13の判定処理を繰り返し実行する。一方、経過時間T12が規定時間T12Th以上になった場合(ステップS5−13:YES)、制御装置100は、その処理を次のステップS5−14に移行する。
【0136】
なお、ステップS5−12が実行されてからS5−13の判定結果が肯定となるまでの期間では、ロール紙P2の先端が支持台40の上流リブ44に押し付けられる。したがって、本実施形態の印刷装置10では、ステップS5−12,S5−13により、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によってロール紙P2を挟持させ、ロール紙P2を支持台40の上流リブ44に押し付ける「押し付けデカール処理」の一例が構成される。
【0137】
また、規定時間T12Thは、上記デカール調整部273によって設定される実施時間の一例である。すなわち、規定時間T12Thは、搬送しているロール紙P2の剛性が強いと予測されるときほど長くされる。
【0138】
ステップS5−14において、制御装置100は、給送モーター70の逆転駆動を開始させる。続いて、制御装置100は、搬送モーター53の逆転駆動を開始させる(ステップS5−15)。そして、制御装置100は、ステップS5−15の実行によってロール紙P2の先端が搬送方向上流に戻り始めてからの経過時間T13を取得し、この経過時間T13が規定時間T13Th以上であるか否かを判定する(ステップS5−16)。経過時間T13が規定時間T13Th未満である場合(ステップS5−16:NO)、制御装置100は、経過時間T13が規定時間T13Thに達するまでステップS5−16の判定処理を繰り返し実行する。一方、経過時間T13が規定時間T13Th以上になった場合(ステップS5−16:YES)、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動を停止させる(ステップS5−17)。
【0139】
なお、上述したように、給送モーター70を逆転駆動させても、その動力は給送ローラー64に伝達されない。そのため、給送モーター70が逆転方向に回転することはほとんどない。一方、搬送モーター53を逆転駆動させると、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512が逆転方向に回転され、ロール紙P2の先端が搬送方向上流に戻される。その結果、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間で、ロール紙P2が、下方に凸となるように撓むこととなる。このとき、上記の規定時間T13Thが長いほど、ロール紙P2の撓み量が多くなる。すなわち、規定時間T13Thは、ロール紙P2の撓み量を規定するために設定された値である。
【0140】
そして、制御装置100は、ステップS5−17の実行によって、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512の逆転方向への回転が停止された時点からの経過時間T14を取得し、この経過時間T14が規定時間T14Th以上であるか否かを判定する(ステップS5−18)。経過時間T14が規定時間T14Th未満である場合(ステップS5−18:NO)、制御装置100は、経過時間T14が規定時間T14Thに達するまでステップS5−18の判定処理を繰り返し実行する。一方、経過時間T14が規定時間T14Th以上になった場合(ステップS5−18:YES)、制御装置100は、その処理を次のステップS5−19に移行する。
【0141】
ここで、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間で、ロール紙P2が下方に凸となるように撓むと、ロール紙P2が、ガイド形成部材66の媒体案内面67に押し付けられる(
図6参照)。これにより、ロール紙P2のカールが解消される。したがって、本実施形態の印刷装置10では、ステップS5−14〜S5−18により、ロール紙P2を、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によって挟持させるとともに給送ローラー64とリタードローラー65とによって挟持させる両ニップ状態にし、この両ニップ状態が維持される範囲内で一対のローラー511,512を逆転方向に回転させる「逆転デカール処理」の一例が構成される。
【0142】
なお、規定時間T14Thは、逆転デカール処理の実施時間に相当する。すなわち、規定時間T14Thは、上記デカール調整部273によって設定される実施時間の一例である。そして、この規定時間T14Thは、搬送しているロール紙P2の剛性が強いと予測されるときほど長くされる。
【0143】
ステップS5−19において、制御装置100は、給送モーター70の正転駆動を開始させる。続いて、制御装置100は、搬送モーター53の正転駆動を開始させる(ステップS5−20)。そして、制御装置100は、給送モーター70用のロータリーエンコーダーSE7による検出結果に基づき、給送ローラー64が初期状態になったか否かを判定する(ステップS5−21)。給送ローラー64が未だ初期状態になっていない場合(ステップS5−21:NO)、制御装置100は、給送ローラー64が初期状態になるまでステップS5−21の判定処理を繰り返し実行する。すなわち、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53の正転駆動を継続させる。
【0144】
一方、給送ローラー64が初期状態になった場合(ステップS5−21:YES)、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動を停止させ、給送ローラー64の初期状態を保持させる(ステップS5−22)。その後、制御装置100は、第2の給送処理ルーチンを終了する。
【0145】
次に、本実施形態の印刷装置10の作用について説明する。
始めに、単票紙P1への印刷時の作用について説明する。
ホッパー61に単票紙P1がセットされると、セット検知センサーSE2によって単票紙P1が検知される。すると、単票紙用の表示モードに応じた画像(
図15に示す画像)が表示画面141に表示される。そして、用紙サイズや用紙種類の設定が完了している状態で印刷データPDとともに印刷指示が入力されると、通常時給送処理が開始される。すると、給送モーター70及び搬送モーター53の正転駆動が開始されることにより、ホッパー61の下部が上方に移動するとともに、初期状態の給送ローラー64が正転方向に回転する。これにより、ホッパー61上の単票紙P1が、給送ローラー64の接触面641に接触し、給送ローラー64の正転方向への回転によって単票紙P1が搬送方向下流に送り出される。
【0146】
すると、単票紙P1が給送ローラー64とリタードローラー65とにより挟持され、両ローラー64,65の正転方向への回転によって、単票紙P1が搬送ローラー対51に向けて給送される。そして、単票紙P1の先端が搬送ローラー対51に達すると、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によって単票紙P1が挟持される。すると、搬送モーター53の正転駆動に伴って両ローラー511,512も正転方向に回転しているため、単票紙P1は、引き続き搬送方向下流に搬送される。その後、給送ローラー64の1回転が終了すると、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動が停止される。これにより、給送ローラー64、リタードローラー65及び一対のローラー511,512の回転が停止される。このとき、給送ローラー64は、初期状態で保持される。すなわち、このように給送ローラー64とリタードローラー65とによる単票紙P1の挟持が解消された状態で、通常時給送処理が終了される。
【0147】
そして、通常時の頭出し処理が開始されると、搬送モーター53の駆動によって、単票紙P1の先端の搬送方向における位置が調整される。そして、位置調整が完了すると、単票紙P1に対し、印刷データPDに基づいた印刷が開始される。その後、単票紙P1に対する印刷が終了されると、排出ローラー対52によって単票紙P1が前面パネル12上に排出される。
【0148】
次に、
図8〜
図10、及び
図23〜
図27を参照し、ロール紙P2への印刷時の作用について説明する。
ロール紙ユニット20から送り出されたロール紙P2が挿入部15に挿入されると、ロール紙P2がロール紙検知センサーSE3によって検知される。そして、挿入部15から導出されたロール紙P2の先端がホッパー61の下部に未だ達していない状態では、ロール紙P2がセット検知センサーSE2に未だ検知されていない。そのため、
図17に示す画像が表示画面141に表示され、ロール紙P2のホッパー61での正しいセットが促される。
【0149】
こうした状態でロール紙P2の先端がホッパー61の下部に到達されると、ロール紙P2がセット検知センサーSE2によって検知される。そのため、表示画面141に表示される画像が、
図17に示す画像から
図16に示す画像に切り替わる。そして、印刷指示又は給送指示が入力されると、第1の給送処理が開始される。すると、給送モーター70及び搬送モーター53の正転駆動が開始されることにより、ホッパー61の下部が上方に移動するとともに、初期状態の給送ローラー64が正転方向に回転する。これにより、
図8に示すように、ホッパー61上のロール紙P2が、給送ローラー64の接触面641に接触し、給送ローラー64の正転方向への回転によってロール紙P2が搬送方向下流に送り出される。
【0150】
すると、
図9に示すように、ロール紙P2が給送ローラー64とリタードローラー65とにより挟持され、両ローラー64,65の正転方向への回転によって、ロール紙P2が搬送ローラー対51に向けて給送される。そして、ロール紙P2の先端が搬送ローラー対51に達すると、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によってロール紙P2が挟持される。すると、搬送モーター53の正転駆動に伴って両ローラー511,512も正転方向に回転しているため、ロール紙P2は、引き続き搬送方向下流に搬送される。その後、給送ローラー64の1回転が終了すると、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動が停止される。これにより、給送ローラー64、リタードローラー65及び一対のローラー511,512の回転が停止される。このとき、
図10に示すように、給送ローラー64が初期状態で保持され、給送ローラー64とリタードローラー65とによるロール紙P2の挟持が解消される。
【0151】
そして、ニップ解消処理(ステップS4−10)が開始されると、搬送モーター53の逆転駆動により、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512が逆転方向に回転し始める。すると、ロール紙P2の先端が搬送方向上流に戻り、結果として、
図23に示すように、一対のローラー511,512によるロール紙P2の挟持が解消される。そして、この状態で搬送モーター53の駆動が停止され、ニップ解消処理、すなわち第1の給送処理が終了される。
【0152】
なお、給送指示の入力を契機に第1の給送処理が実施された場合にあっては、印刷指示が入力されるまで、この状態で待機される。すなわち、この後に印刷指示が入力されると、第2の給送処理が開始される。その一方で、印刷指示の入力を契機に第1の給送処理が実施された場合にあっては、第1の給送処理に連続して第2の給送処理が開始される。
【0153】
そして、第2の給送処理が開始されると、キャリッジ32がロール紙P2の搬送経路上に配置される。このとき、キャリッジ32に設けられている紙幅センサーSE1によってロール紙P2が検知されたときには、ニップ解消処理が実施される(ステップS5−3)。なお、このタイミングでニップ解消処理が実施される場合としては、第1の給送処理の終了時点から第2の給送処理の開始時点までの期間内に、ロール紙P2に外力が付与され、ロール紙P2が筐体11の内部に押し込まれた場合などを挙げることができる。
【0154】
そして、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によるロール紙P2の挟持が解消されている状態が確保されると、給送モーター70及び搬送モーターの正転駆動が開始される。すると、給送ローラー64が正転方向に回転し、給送ローラー64とリタードローラー65とによりロール紙P2が挟持され、この状態で給送ローラー64及びリタードローラー65が正転方向に回転する。これにより、ロール紙P2が搬送方向下流に給送され、このロール紙P2が、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512に挟持される。
【0155】
このとき、一対のローラー511,512もまた正転方向に回転しているため、ロール紙P2は、搬送ローラー対51から搬送方向下流に搬送される。そして、ロール紙P2の先端が紙幅センサーSE1によって検知されると、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動が停止され、給送ローラー64、リタードローラー65、及び搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512の回転が停止される。この状態で、ロール紙P2と印刷ヘッド33との接触を回避するために、キャリッジ32がロール紙の搬送経路の外に退避移動される。すると、給送モーター70及び搬送モーター53の正転駆動に基づく、給送ローラー64、リタードローラー65、及び搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512の正転方向への回転が再開される。
【0156】
上述したように、搬送ローラー対51にあっては、上方に位置する従動ローラー512の回転軸が、下方に位置する駆動ローラー511の回転軸よりも搬送方向下流である前方に位置している。そのため、
図24に示すように、搬送ローラー対51からは、ロール紙P2が前斜め下方に送り出される。その結果、搬送ローラー対51よりも搬送方向下流に位置するロール紙P2は、支持台40の上流リブ44に押し付けられる(
図5参照)。そして、給送モーター70の正転駆動が再開された時点からの経過時間T11が規定時間T11Thに達すると、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動が停止される。すなわち、搬送ローラー対51よりも搬送方向下流に位置するロール紙P2は、支持台40の上流リブ44に押し付けられた状態で保持される(押し付けデカール処理)。こうした押し付けデカール処理によって、ロール紙P2の先端部分のカールがほぼ解消される。
【0157】
そして、押し付けデカール処理の開始時点からの経過時間T12が規定時間T12Thに達すると、押し付けデカール処理が終了される。すると、逆転デカール処理が開始され、給送モーター70及び搬送モーター53が逆転駆動される。このとき、搬送モーター53の逆転駆動に基づき、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512が逆転方向に回転される。これにより、ロール紙P2が搬送方向上流に戻され、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間でロール紙P2が撓むようになる。
【0158】
このとき、給送ローラー64及びリタードローラー65には、撓んでいるロール紙P2からの反力が外力として作用している。本実施形態の印刷装置10では、給送モーター70が逆転駆動しているため、上記の反力が過大になると、同反力によって給送ローラー64及びリタードローラー65が逆転方向に回転される。その結果、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間でのロール紙P2の過剰な撓みが解消される。搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512の逆転方向への回転に伴うロール紙P2の搬送方向上流への戻りが開始された時点からの経過時間T13が規定時間T13Thに達すると、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動が停止される。
【0159】
すると、
図25に示すように、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間では、ロール紙P2が、用紙の搬送経路よりも下方に位置する媒体案内面67に押し付けられている。搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512の逆方向への回転が開始される前にあっては、ロール紙P2と媒体案内面67との間に隙間が介在している。媒体案内面67が下に凸となるように形成されているため、当該隙間が、ロール紙P2の撓みを許容するR状の撓み空間となっている。すなわち、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間では、この撓み空間内でロール紙P2が撓みつつ、同ロール紙P2が媒体案内面67に押し付けられる。これにより、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間のロール紙P2のカールが解消される(逆転デカール処理)。
【0160】
そして、逆転デカール処理の開始時点からの経過時間T14が規定時間T14Thに達すると、逆転デカール処理が終了され、給送モーター70及び搬送モーター53が正転駆動される。すると、給送ローラー64、リタードローラー65、及び搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512が正転方向に回転するため、ロール紙P2が搬送方向下流に搬送される。その後、
図26に示すように、給送ローラー64が初期状態になり、給送ローラー64とリタードローラー65とによるロール紙P2の挟持が解消されると、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動が停止され、第2の給送処理が終了される。
【0161】
その後にあっては、選択されている印刷モードに応じた頭出し処理が実施される。すなわち、通常の印刷モードが選択されているときには、通常時の頭出し処理が実施される。すると、ロール紙P2が、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によって挟持される一方で、排出ローラー対52を構成する一対のローラー521,522によって挟持されない状態で、ロール紙P2の先端の搬送方向における位置が調整される。そして、こうした位置調整が完了すると、ロール紙P2に対し、印刷データPDに基づいた印刷が開始される。
【0162】
印刷データPDに基づいた印刷が完了すると、ロール紙P2において印刷の施された領域よりも搬送方向上流の部分に、切り取り線が印刷される。その後、排出ローラー対52によってロール紙P2が前面パネル12上に排出される。そして、切り取り線に沿ってユーザーがロール紙P2を切断し、ユーザーが被操作部142を操作すると、バックフィード処理が実施され、ロール紙P2が筐体11内に戻される。すると、ロール紙P2は、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512による挟持が解消された状態、すなわち第1の給送処理が終了した時点の状態と同じ状態で待機することとなる。
【0163】
その一方で、擦れ回避用の頭出し処理を含む印刷モードが選択されているときには、擦れ回避用の頭出し処理が実施される。すると、搬送モーター53が正転駆動されることにより、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512が正転方向に回転される。これにより、ロール紙P2が搬送方向下流に搬送され、
図27に示すように、ロール紙P2が、排出ローラー対52を構成する一対のローラー511,512に挟持される。すると、頭出し処理が完了し、搬送モーター53の駆動が停止される。そして、ロール紙P2に対し、印刷データPDに基づいた印刷が開始される。
【0164】
以上、上記構成及び作用によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の印刷装置10では、単票紙P1に印刷を行うときには、挿入部15を介することなく、単票紙P1がホッパー61上にセットされる。一方、ロール紙P2に印刷を行うときには、ロール紙ユニット20から送り出されたロール紙P2が、挿入部15を介してホッパー61上にセットされる。そして、ロール紙P2が挿入部15内を通過する際に、ロール紙P2がロール紙検知センサーSE3によって検知される。そのため、ロール紙検知センサーSE3による検知結果を用いることにより、用紙をホッパー61上にセットした段階で、実際に搬送される用紙が、ロール紙P2であるか否かを判別することが可能となる。そして、この判別結果に基づいたモードを選択し、同モードに応じた処理を実施することが可能となる。したがって、実際に搬送する用紙が単票紙P1であるかロール紙P2であるかを、用紙の搬送開始前までに判別することにより、同判別結果に応じた適切な処理を実施することができる。
【0165】
(2)搬送ローラー対を構成する一対のローラーの正転方向への回転に伴う用紙の搬送方向下流への搬送が開始されるまで、用紙が単票紙であるかロール紙であるかを判別することのできない印刷装置を比較例の印刷装置としたとする。この比較例の印刷装置では、用紙がホッパー61上にセットされた段階で、用紙サイズや用紙種類の設定変更を促す画像(例えば、
図15や
図16で示す画像)を表示画面141に自動的に表示させることはできない。これに対し、本実施形態の印刷装置10では、用紙がホッパー61上にセットされた段階で、用紙が単票紙であるかロール紙であるかを判別することができる。そのため、単票紙P1がホッパー61上にセットされると、
図15に示す画像を表示画面141に自動的に表示させることができる。また、ロール紙P2がホッパー61上にセットされると、
図16又は
図17に示す画像を表示画面141に自動的に表示させることができる。すなわち、比較例の印刷装置よりも、用紙がロール紙であるか単票紙であるかを早期に判別することができる分、表示画面141などの報知装置を用いてユーザーに報知することのできる内容を増やすことができる。
【0166】
(3)また、ホッパー61上にロール紙P2がセットされる際、ロール紙P2のホッパー61上でのセット状況に応じて、表示画面141の表示態様を変更することができる。すなわち、ロール紙P2がセット検知センサーSE2によって検知されているときには、ロール紙P2がホッパー61上で正しくセットされていると判断することができるため、ロール紙P2のサイズや種類の変更を促す旨のメッセージが表示画面141に表示される(
図16参照)。一方、ロール紙P2がセット検知センサーSE2によって検知されていないときには、ロール紙P2がホッパー61上で正しくセットされていないと判断することができるため、ロール紙P2を正しくセットさせる旨のメッセージが表示画面141に表示される(
図17参照)。したがって、ロール紙P2のセット状況に応じた適切なメッセージをユーザーに伝えることができ、ユーザービリティを向上させることができる。
【0167】
(4)また、本実施形態の印刷装置10では、比較例の印刷装置とは異なり、ホッパー61上に用紙がセットされた段階で、ロール紙であるか単票紙であるかを判別することができる。そのため、用紙の給送態様を、ロール紙と単票紙とで自動的に切り替えることができる。したがって、用紙(ロール紙又は単票紙)に応じた適切な態様で、用紙を給送することができる。
【0168】
(5)すなわち、ロール紙P2の給送は、第1の給送処理と、第1の給送処理の後に実施される第2の給送処理とを含んでいる。また、ホッパー61上にロール紙P2がセットされている状態での用紙の給送開始のトリガーとしては、印刷指示の入力だけではなく、給送指示の入力もある。そして、給送指示の入力を契機にロール紙P2の給送を開始する場合にあっては、第1の給送処理だけが実施される。すなわち、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によるロール紙P2の挟持が解消されている状態で、ロール紙P2が待機することとなる。これは、一対のローラー511,512によるロール紙P2の挟持が長時間継続されると、ロール紙P2が過度にデカールされ、印刷時におけるロール紙P2と印刷ヘッド33との接触が発生しやすくなるおそれがあるためである。したがって、給送指示の入力を契機に第1の給送処理が実施された後では、印刷指示が入力されるまで、一対のローラー511,512によってロール紙P2が挟持されていない状態で待機するようにしたことにより、印刷時におけるロール紙P2と印刷ヘッド33との接触が抑えられ、ひいては印刷品質の低下を抑制することができる。
【0169】
(6)また、第2の給送処理は、ロール紙P2のカールを相殺するためのデカール処理を含んでいる。すなわち、ロール紙P2への印刷を開始する直前で、ロール紙P2のカールが相殺されることとなる。そのため、印刷時にあっては、ロール紙P2と印刷ヘッド33との接触が抑制され、ひいてはロール紙P2に対する印刷品質の低下を抑制することができる。
【0170】
(7)具体的には、デカール処理は、押し付けデカール処理と、逆転デカール処理とを含んでいる。押し付けデカール処理は、ロール紙P2の先端部分を支持台40の上流リブ44に押し付けることにより、同先端部分のカールを相殺している。その結果、印刷時にあっては、ロール紙P2の先端部分と印刷ヘッド33との接触が抑制される。したがって、ロール紙P2に対する印刷品質の低下を抑制することができる。
【0171】
(8)なお、剛性の強いロール紙P2ほどカールが解消されにくいため、押し付けデカール処理の実施時間が長くされる。このようにロール紙P2の剛性に基づき、押し付けデカール処理の実施時間の適正化を図ることにより、ロール紙P2のカールを適切に解消することができる。その結果、印刷時におけるロール紙P2と印刷ヘッド33との接触を生じにくくすることができる。
【0172】
(9)また、逆転デカール処理では、上記両ニップ状態が維持される範囲内で、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512が逆転方向に回転される。すると、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間でロール紙P2が撓み、同ロール紙P2が、媒体案内面67に押し付けられる。これにより、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間に位置するロール紙P2のカールが解消される。その結果、印刷時にあっては、当該部分と印刷ヘッド33との接触が抑制される。したがって、ロール紙P2に対する印刷品質の低下を抑制することができる。
【0173】
(10)なお、剛性の強いロール紙P2ほどカールが解消されにくいため、逆転デカール処理の実施時間が長くされる。このようにロール紙P2の剛性に基づき、逆転デカール処理の実施時間の適正化を図ることにより、ロール紙P2のカールを適切に解消することができる。その結果、印刷時におけるロール紙P2と印刷ヘッド33との接触を生じにくくすることができる。
【0174】
(11)逆転デカール処理の実施時にあっては、給送モーター70もまた逆転駆動される。そのため、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間でのロール紙P2の撓みが過剰となり、ロール紙P2の反力が給送ローラー64に付与されたときには、給送ローラー64が逆転駆動しない場合と比較して、給送ローラー64及びリタードローラー65が逆転方向に回転されやすい。そして、これら各ローラー64,65が逆転方向に回転されることにより、ロール紙P2の過剰な撓みが抑制され、ロール紙P2のカールを適切に解消させることが可能となる。そのため、印刷時におけるロール紙P2と印刷ヘッド33との接触を生じにくくすることができる。
【0175】
(12)さらに、擦れ回避用の頭出し処理を含む印刷モードが選択されているときには、ロール紙P2を、排出ローラー対52を構成する一対のローラー521,522によって挟持させた状態で、同ロール紙P2への印刷が開始される。そのため、印刷時にあっては、ロール紙P2と印刷ヘッド33との接触が回避され、ひいてはロール紙P2に対する印刷品質の低下を抑制することができる。
【0176】
(第2の実施形態)
次に、印刷装置10の第2の実施形態を
図28及び
図29に従って説明する。なお、第2の実施形態では、印刷指示の入力をトリガーとしたロール紙P2の給送方法が第1の実施形態と相違している。そこで、以降の記載では、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0177】
図28を参照し、用紙への印刷時に制御装置100が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、この処理ルーチンは、印刷指示が入力された場合、又は、給送指示が入力された場合に実行されるルーチンである。
【0178】
図28に示すように、本処理ルーチンにおいて、制御装置100は、印刷対象となる用紙が単票紙P1である場合(ステップS3−1:NO)、通常時給送処理を実施し(ステップS3−2)、その処理を前述したステップS3−8に移行する。一方、制御装置100は、印刷対象となる用紙がロール紙P2である場合(ステップS3−1:YES)、印刷指示が入力されているか否かを判定する(ステップS3−11)。給送指示が入力されている場合(ステップS3−11:NO)、制御装置100は、その処理を前述したステップS3−3に移行する。すなわち、制御装置100は、第1の給送処理を実施し(ステップS3−3)、印刷指示が入力されると(ステップS3−4:YES)、第2の給送処理を実施する(ステップS3−5)。そして、制御装置100は、その処理を前述したステップS3−6に移行する。
【0179】
一方、ステップS3−11において、印刷指示が入力されている場合(YES)、制御装置100は、第1の給送処理とは異なる別の媒体給送処理の一例である第3の給送処理を実施する(ステップS3−12)。すなわち、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53を正転駆動させることにより、初期状態の給送ローラー64及び搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512の正転方向への回転を開始させる。そして、制御装置100は、給送ローラー64の1回転が終了すると、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動を停止させ、給送ローラー64を初期状態で保持させる。すなわち、第1の給送処理の終了時点とは異なり、第3の給送処理の終了時点では、ロール紙P2が、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によって挟持されている。そして、第3の給送処理を終了すると、制御装置100は、その処理を前述したステップS3−6に移行する。
【0180】
次に、
図29を参照し、上記ステップS3−12の第3の給送処理(第3の給送処理ルーチン)について説明する。
図29に示すように、第3の給送処理ルーチンにおいて、制御装置100は、給送モーター70の正転駆動を開始させ(ステップS6−1)、搬送モーター53の正転駆動を開始させる(ステップS6−2)。続いて、制御装置100は、用紙端部検知センサーSE4によってロール紙P2が検知されたか否かを判定する(ステップS6−3)。ロール紙P2が未だ検知されていない場合(ステップS6−3:NO)、制御装置100は、用紙端部検知センサーSE4によってロール紙P2が検知されるまでステップS6−3の判定処理を繰り返し実行する。
【0181】
一方、ロール紙P2が既に検知されている場合(ステップS6−3:YES)、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53の正転駆動を停止させる(ステップS6−4)。そして、制御装置100は、給送モーター70の正転駆動を開始させ(ステップS6−5)、搬送モーター53の正転駆動を開始させる(ステップS6−6)。
【0182】
続いて、制御装置100は、給送モーター70用のロータリーエンコーダーSE7による検出結果に基づき、給送ローラー64が初期状態に戻ったか否かを判定する(ステップS6−7)。給送ローラー64が未だ初期状態に戻っていない場合(ステップS6−7:NO)、制御装置100は、給送ローラー64が初期状態に戻るまでステップS6−7の判定処理を繰り返し実行する。一方、給送ローラー64が初期状態に戻っている場合(ステップS6−7:YES)、制御装置100は、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動を停止させ(ステップS6−8)、第3の給送処理ルーチンを終了する。
【0183】
次に、ホッパー61にロール紙P2がセットされている状態で、印刷データPDとともに印刷指示が入力された際に作用について説明する。
ロール紙ユニット20から送り出されたロール紙P2が挿入部15を通じてホッパー61にセットされた状態で、印刷指示が入力されると、第3の給送処理が開始される。すると、給送モーター70及び搬送モーター53の正転駆動が開始されることにより、ホッパー61の下部が上方に移動するとともに、初期状態の給送ローラー64が正転方向に回転する。すると、ホッパー61上のロール紙P2が、給送ローラー64の接触面641に接触し、給送ローラー64の正転方向への回転によってロール紙P2が搬送方向下流に送り出される。
【0184】
その結果、ロール紙P2が給送ローラー64とリタードローラー65とにより挟持され、両ローラー64,65の正転方向への回転によって、ロール紙P2が搬送ローラー対51に向けて給送される。そして、ロール紙P2の先端が搬送ローラー対51に達すると、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によってロール紙P2が挟持される。すると、搬送モーター53の正転駆動に伴って両ローラー511,512も正転方向に回転しているため、ロール紙P2は、引き続き搬送方向下流に搬送される。その後、給送ローラー64の1回転が終了すると、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動が停止される。これにより、給送ローラー64、リタードローラー65及び一対のローラー511,512の回転が停止され、第3の給送処理が終了される。このとき、給送ローラー64が初期状態で保持され、給送ローラー64とリタードローラー65とによるロール紙P2の挟持が解消される。すると、その後にあっては、選択されている印刷モードに応じた頭出し処理が実施される。なお、以降の作用については、第1の実施形態の場合とほぼ同様であるため、ここでは説明を割愛するものとする。
【0185】
以上、上記構成及び作用によれば、上記第1の実施形態の効果(1)〜(4)及び(6)〜(12)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(13)本実施形態の印刷装置10では、ロール紙P2がホッパー61上にセットされているときに、給送指示が入力された場合と印刷指示が入力された場合とで、ロール紙P2の搬送態様を異ならせている。すなわち、給送指示が入力された場合には、第1の給送処理が実施され、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によるロール紙P2の挟持が解消された状態で待機される。これにより、印刷指示がなかなか入力されない場合でも、その後の印刷時におけるロール紙P2と印刷ヘッド33との接触が抑えられ、ひいては印刷品質の低下を抑制することができる。
【0186】
一方、印刷指示が入力された場合、給送ローラー64の正転方向への回転によるロール紙P2の給送が終了されると、同ロール紙P2に対する印刷が早期に開始される。そのため、第3の給送処理の実施によって、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512によってロール紙P2が挟持されている状態で、直ぐに頭出し処理が開始される。すなわち、ロール紙P2がホッパー61上にセットされている状態で印刷指示が入力された場合には、上記第1の実施形態の場合と比較して、ロール紙P2に対する印刷が早期に開始される。したがって、印刷装置10のスループットを向上させることができる。
【0187】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・各実施形態では、通常時の頭出し処理又は擦れ回避用の頭出し処理の何れか一方の実施をユーザーに決定させているが、ロール紙P2への印刷時には、頭出し処理として擦れ回避用の頭出し処理を実施させるようにしてもよい。また、ロール紙P2への印刷時には、頭出し処理として通常時の頭出し処理を実施させるようにしてもよい。
【0188】
・各実施形態では、押し付けデカール処理の実施時間を、ロール紙P2の種類に応じて可変させるようにしているが、同実施時間を、ロール紙P2の種類、すなわちロール紙P2の剛性の強さに拘わらず一定時間としてもよい。
【0189】
・縁なし印刷の機能を有しない印刷装置の支持台では、搬送方向における上流端近傍から下流端近傍まで延びる複数のリブが、走査方向に沿って配置されていることがある。この場合、押し付けデカール処理では、ロール紙P2の先端を、リブの搬送方向上流側の部分に押し付けることにより、ロール紙P2のカールを抑えることができる。なお、ここでいう「リブの搬送方向上流側の部分」とは、リブの搬送方向における中央よりも上流側の部分のことである。
【0190】
・各実施形態において、第2の給送処理では、逆転デカール処理を実施した後に、押し付けデカール処理を実施するようにしてもよい。
・各実施形態において、第2の給送処理では、逆転デカール処理を実施するのであれば、押し付けデカール処理を実施しなくてもよい。反対に、第2の給送処理では、押し付けデカール処理を実施するのであれば、逆転デカール処理を実施しなくてもよい。また、選択されているロール紙の種類、すなわちロール紙の剛性に応じて押し付けデカール処理又は逆転デカール処理を選択し、選択したデカール処理のみを実施するようにしてもよい。
【0191】
・各実施形態では、逆転デカール処理の実施時間を、ロール紙P2の種類に応じて可変させるようにしているが、同実施時間を、ロール紙P2の種類、すなわちロール紙P2の剛性の強さに拘わらず一定時間としてもよい。
【0192】
・各実施形態において逆転デカール処理では、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512の逆転方向への回転量、すなわち搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間でのロール紙P2の撓み量を一定としている。しかし、これに限らず、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512の逆転方向への回転量を、印刷対象となるロール紙P2の剛性が強いほど多くするようにしてもよい。
【0193】
すなわち、剛性の強いロール紙P2ほどカールが解消されにくいため、逆転デカール処理の実施時には、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間でのロール紙P2の撓み量が多くされる。このようにロール紙P2の剛性に基づき、上記の撓み量の適正化を図ることにより、ロール紙P2のカールを適切に解消することができる。その結果、印刷時におけるロール紙P2と印刷ヘッド33との接触を生じにくくすることができる。
【0194】
そして、このように搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間でのロール紙P2の撓み量を、ロール紙P2の種類、すなわちロール紙P2の剛性に応じて可変とする場合、逆転デカール処理の実施時間を、ロール紙P2の種類によらず一定時間とするようにしてもよい。
【0195】
・逆転デカール処理の実施時には、給送モーター70を逆転駆動させなくてもよい。
・各実施形態では、搬送ローラー対51を構成する一対のローラー511,512を逆転方向に回転させることにより、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間でロール紙P2を撓ませた上で、デカール処理(すなわち、逆転デカール処理)を実施している。しかし、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間でロール紙P2を撓ませることができるのであれば、他の方法を採用してもよい。例えば、両ニップ状態が維持される範囲で、給送モーター70を正転駆動させ、給送ローラー64及びリタードローラー65を正転方向に回転させることにより、搬送方向における給送ローラー64と搬送ローラー対51との間でロール紙P2を撓ませるようにしてもよい。このように給送モーター70を正転駆動させるときには、搬送モーター53を逆転駆動させてもよいし、搬送モーター53の駆動を停止させてもよい。
【0196】
・デカール処理(押し付けデカール処理及び逆転デカール処理)の実施中にあっては、給送モーター70及び搬送モーター53の駆動が停止されているため、用紙搬送が停止されていることに対し、ユーザーが不快に感じるおそれがある。そこで、こうしたデカール処理の実施中にあっては、キャリッジモーター34を駆動させるようにしてもよい。また、こうしたデカール処理の実施中におけるキャリッジモーター34の駆動を、デカール処理の実施時間が長いときのみ実施させるようにしてもよい。
【0197】
・デカール処理をしなくても、印刷時にロール紙P2が印刷ヘッド33に接触しないのであれば、逆転デカール処理及び押し付けデカール処理の双方を実施しなくてもよい。
・第2の実施形態では、ロール紙P2がホッパー61上にセットされている状態で印刷指示が入力された場合、第3の給送処理の実施後に、頭出し処理が実施されるようになっている。しかし、第3の給送処理と頭出し処理との間で、押し付けデカール処理及び逆転デカール処理のうち少なくとも一方を実施するようにしてもよい。このように構成すると、印刷装置10のスループットが多少低下するものの、印刷時におけるロール紙P2と印刷ヘッド33との接触を抑制することができる。
【0198】
・印刷装置10は、セット検知センサーSE2を備えていない構成であってもよい。こうした場合であっても、ホッパー61上にセットされている用紙(ロール紙P2又は単票紙P1)に応じて搬送モードを適切に選択し、選択した搬送モードに応じた給送を実施させることができる。
【0199】
・印刷装置による報知は、表示画面141を用いた表示以外の他の方法での報知、例えばスピーカーを用いた音声による報知であってもよい。この場合、スピーカーにより、「報知装置」の一例が構成される。また、印刷データPDを印刷装置10に送信する外部装置に、報知を実施させるようにしてもよい。この場合、外部装置が、「報知装置」としても機能することとなる。
【0200】
・印刷装置は、単票紙P1だけではなくロール紙P2への印刷が可能な装置であれば、ラインヘッド方式やラテラルスキャン方式などの他の方式のプリンターであってもよい。また、印刷装置は、ラインプリンターやページプリンターであってもよい。
【0201】
・印刷装置を構成する印刷ユニットは、インクジェット方式以外の他の方式の印刷ユニットであってもよい。こうした印刷ユニットとしては、例えば、ドットインパクト方式の印刷ユニットを挙げることができる。
【0202】
・単票状の媒体としては、紙以外の他の媒体(フィルムなど)であってもよい。
・長尺状の媒体としては、紙以外の他の媒体(長い布など)であってもよい。